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特許7261789繋止されたヤーンを有する編組テキスタイルスリーブおよびその構築方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】繋止されたヤーンを有する編組テキスタイルスリーブおよびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   D04C 1/06 20060101AFI20230413BHJP
   D04C 1/02 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
D04C1/06 Z
D04C1/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020504130
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 US2018044079
(87)【国際公開番号】W WO2019023570
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】16/046,919
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/538,534
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503170721
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL POWERTRAIN LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,デイビッド・エイ
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/010730(WO,A1)
【文献】特表2016-511801(JP,A)
【文献】特開2001-064856(JP,A)
【文献】特開昭52-056393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04C1/00-7/00
D04G1/00-5/00
H02G3/00-3/04
3/22-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部間で中心長手方向軸に沿って長手方向に延在する、継ぎ目のない周方向に連続した管状壁を備え、前記管状壁は、互いに編組みされた複数のヤーンを含み、前記複数のヤーンは複数の活性化可能なヤーンと複数の活性化不可能なヤーンとを含み、前記活性化可能なヤーンは中実の1つのフィラメントヤーンであり、すべての活性化不可能なヤーンはマルチフィラメントヤーンであり、少なくともいくつかの前記活性化可能なヤーンは、活性化されたとき、溶融、固化、および前記複数のヤーンを互いに対して固定された関係で繋止して、前記管状壁の拡張を妨げるように活性化可能である、保護編組スリーブ。
【請求項2】
当該管状壁は活性化不可能なヤーンを含み、前記少なくとも1つの活性化可能なヤーンは、前記活性化不可能なヤーンと比較して低い溶融温度を有する、請求項に記載の保護編組スリーブ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、互いに等しい数の端部に設けられている、請求項に記載の保護編組スリーブ。
【請求項4】
前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、それぞれ1:1の編組パターンで編組みされており、前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている、請求項に記載の保護編組スリーブ。
【請求項5】
前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、それぞれ1:2の編組パターンで編組みされており、前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている、請求項に記載の保護編組スリーブ。
【請求項6】
前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、それぞれ1:3の編組パターンで編組みされており、前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている、請求項に記載の保護編組スリーブ。
【請求項7】
前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、それぞれ2:1の編組パターンで編組みされており、前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている、請求項に記載の保護編組スリーブ。
【請求項8】
前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、それぞれ3:1の編組パターンで編組みされており、前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている、請求項に記載の保護編組スリーブ。
【請求項9】
前記活性化可能なヤーンの少なくともいくつかは熱収縮性ヤーンであり、前記熱収縮性ヤーンは活性化されて本来の非活性化状態の長さの10%以上である、請求項1に記載の保護編組スリーブ。
【請求項10】
保護編組スリーブを構築する方法であって、
複数の活性化可能なヤーンを提供することと、
複数の活性化不可能なヤーンを提供することとを含み、
前記活性化可能なヤーンは中実の1つのフィラメントであり、前記活性化不可能なヤーンはマルチフィラメントヤーンであり、前記方法はさらに、
前記複数の活性化可能なヤーンと前記複数の活性化不可能なヤーンとを互いに編組みして、中心長手方向軸に沿って長手方向に延在する継ぎ目のない管状壁を形成することと、
保護されている長尺部材の周りに継ぎ目のない管状壁を配置することと、
前記継ぎ目のない管状壁を軸方向に伸張して軸方向に細長く径方向に収縮された状態にし、前記継ぎ目のない管状壁は前記長尺部材の周囲でフィットさせることと、
活性化するステップにおいて前記活性化可能なヤーンを活性化して、前記活性化可能なヤーンの少なくともいくつかを溶融、固化、および前記管状壁のヤーンを互いに対して繋止することとを含む、方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンを互いに等しい数の端部に編組みすることをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンをそれぞれ1:1の編組パターンで編組みすることをさらに備え、前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンをそれぞれ1:2の編組パターンで編組みすることをさらに備え、前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンをそれぞれ1:3の編組パターンで編組みすることをさらに備え、前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンをそれぞれ2:1の編組パターンで編組みすることをさらに備え、前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンをそれぞれ3:1の編組パターンで編組みすることをさらに備え、前記活性化可能なヤーンおよび前記活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記活性化するステップにおいて前記少なくともいくつかの活性化可能なヤーンを本来の非活性化状態の長さの10%以上とすることをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年7月28日に出願された米国仮特許出願番号第62/538,534号および2018年7月26日に出願された米国特許出願番号第16/046,919号の利益を主張するものであり、これらの出願の全体を引用により本明細書に援用する。
【0002】
発明の背景
1.技術分野
本発明は、概してテキスタイルスリーブに関し、特に編組テキスタイルスリーブに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
結束および引き回し目的で、さまざまな環境条件および影響に対して長尺部材を編組テキスタイルスリーブで保護することが知られている。編組スリーブは一般に、「閉鎖」壁とも呼ばれることのある、周方向に連続した継ぎ目のない壁として編組みされた壁を有する。閉鎖された編組構造の1つの知られている利点は、壁の両端部を手動で押し、圧縮された状態で物理的に保持することによって、壁を周方向に拡張して長尺部材上で壁を摺動しやすくできることである。両端部を互いに押し、壁を軸方向に圧縮された状態で手動で保持することによって、編組壁は、直径が増加し、長さが減少する。直径が増加した状態で、壁を長尺部材上に容易に配設することができる。その後、スリーブを長尺部材上に設置した後で、設置者は壁の解放および伸張を行い、それにより、壁は周方向に直径が減少し、長さが増加する。その後、スリーブを「意図した通り」の設置状態で維持するために、通常、ヤーンのシフトおよび拡張を防ぐためにテープがスリーブの少なくとも一部の周囲に巻かれて、スリーブを所望の位置に固定する。また、一般に、テープはスリーブによって保護されている長尺部材の外面に付着されて、さらにスリーブをその所望の位置に固定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
編組壁のヤーンをそれらの意図された位置に固定するという、およびスリーブを長尺部材上の意図された位置にテープを介して固定するという前述の能力は、欠点を伴う可能性がある。たとえば、テープは個別に購入し棚卸する必要があるため、利用に際して費用がかさむ。さらに、テープは組立て中および使用中に損傷および/または汚染されることがあるため、ヤーンおよびスリーブをそれらの意図された固定位置に維持するという能力に影響を及ぼす。さらに、テープは利用の際に見苦しいことがある、または他の態様では、時間が経過するにつれて見苦しくなることがある。その上、テープの利用は大きな労力を要するため、利用に際してさらに費用がかさむ。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明のある態様によると、保護テキスタイルスリーブは、両端部間で中心長手方向軸に沿って長手方向に延在する、継ぎ目のない周方向に連続した管状壁を備える。管状壁は、互いに編組みされた複数のヤーンを含み、少なくとも1つの活性化可能なヤーンの選択的な活性化に際して複数のヤーンを互いに固定された関係で結合して活性化に際して編組壁の拡張を妨げるように、複数のヤーンのうち少なくとも1つまたは複数は活性化可能なヤーンであり、それによって、第2の固定機構を必要とすることなく、組立てに際して壁を所望の確認された状態に保つ。
【0006】
本発明の他の態様によると、活性化可能なヤーンに加えて編組ヤーンは、熱収縮ヤーンが収縮すると複数のヤーンを互いに対して繋止しやすくするように熱収縮ヤーンが非熱収縮ヤーンに対して方向付けられた状態で、熱収縮ヤーンおよび非熱収縮ヤーンを含んでもよい。
【0007】
本発明の他の態様によると、活性化可能なヤーンは、UV活性化可能である、熱活性化可能である、または化学活性化可能である、のうち少なくとも1つである。
【0008】
本発明の他の態様によると、活性化可能なヤーンは、コアと活性化可能な外側シースとを含む複合フィラメントでもよく、外側シースはホットメルト材料でもよく、ホットメルト材料は、外側シースが溶融するとコアが溶融しない状態に維持されてスリーブに安定性および構造をもたらすように、コアと比較して低い溶融温度を有する。
【0009】
本発明の他の態様によると、バイコンポーネントが設けられてもよく、内側コアは熱硬化可能であり、外側シースおよび内側コアは、同じ温度でそれぞれ溶融および熱硬化するように活性化可能である。
【0010】
本発明の他の態様によると、少なくとも1つの活性化可能なヤーンは、当該複数のヤーンのうち隣接するヤーンの溶融、固化、および互いの結合を行うように設けられた低溶融ヤーン(少なくとも部分的にホットメルト材料を介して構築されている)を含んでもよい。
【0011】
本発明の他の態様によると、管状壁は活性化不可能なヤーンを含んでもよく、少なくとも1つの活性化可能なヤーンのホットメルト材料は、活性化不可能なヤーンと比較して低い溶融温度を有する。
【0012】
本発明の他の態様によると、少なくとも1つの活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、互いに等しい数の端部に設けられてもよい。
【0013】
本発明の他の態様によると、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、それぞれ1:1の編組パターンで編組みされてもよく、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている。
【0014】
本発明の他の態様によると、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、それぞれ1:2の編組パターンで編組みされてもよく、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっており、このため、より大きな含有量の活性化可能なヤーンを有するスリーブと比較して溶融および固化した材料の量を減らすことによって、活性化不可能なヤーンと比較して高価な活性化可能なヤーンの含有量が減少し、スリーブの可撓性が増加する。
【0015】
本発明の他の態様によると、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、それぞれ1:3の編組パターンで編組みされてもよく、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている。
【0016】
本発明の他の態様によると、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、それぞれ2:1の編組パターンで編組みされてもよく、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっており、このため、活性化不可能なヤーンと比較して活性化可能なヤーンの数を多くすることによって、ヤーン間の結合力が増加する。
【0017】
本発明の他の態様によると、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、それぞれ3:1の編組パターンで編組みされてもよく、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている。
【0018】
本発明の他の態様によると、複数のヤーンは全体に、複数のヤーンのうち隣接するヤーンの溶融、固化、および互いの結合を行うように設けられた低溶融材料を含んでもよい。
【0019】
本発明の他の態様によると、所望される種類の保護および固定をスリーブにもたらすように求められているように、スリーブのヤーンのうち少なくとも1つを、活性化不可能なモノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントとして設けることができる。
【0020】
本発明の他の態様によると、少なくとも1つの活性化可能なヤーンは熱収縮性でもよい。
【0021】
本発明の他の態様によると、編組テキスタイルスリーブを構築する方法は、複数のヤーンを互いに編組みして、中心長手方向軸に沿って長手方向に延在する、継ぎ目のない管状壁を形成することを備えてもよく、複数のヤーンのうち少なくとも一部は、活性化されるとスリーブのヤーンと結合しこれらを互いに繋止する活性化可能なヤーンとして設けられ、これによって、第2の固定機構を必要とすることなく、組み立てに際して管状壁を所望の構成に維持する。
【0022】
本発明の他の態様によると、この方法は、露出されたホットメルト材料を少なくとも部分的に含んで形成されたような、熱溶融性ヤーン(本明細書では低溶融ヤーンと呼ぶ)として編組活性化可能なヤーンのうち少なくとも1つまたは複数を設けることを備えてもよい。
【0023】
本発明の他の態様によると、この方法はさらに、熱収縮ヤーンおよび非熱収縮ヤーンとしてヤーンを設けることを含んでもよく、熱収縮ヤーンは、熱収縮ヤーンが収縮するとヤーンの互いに対する繋止を容易にするように、非熱収縮ヤーンに対して方向付けられている。
【0024】
本発明の他の態様によると、この方法はさらに、実質的に均衡のとれた含有量の熱収縮ヤーンおよび非熱収縮ヤーンをスリーブに設けるように、スリーブの周囲で逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になる関係で熱収縮ヤーンおよび非熱収縮ヤーンを編組みすることを備えてもよい。
【0025】
本発明の他の態様によると、この方法はさらに、活性化可能なヤーンを、UV活性化可能なヤーン、熱活性化可能なヤーン、または化学的に活性化可能なヤーンのうち少なくとも1つとして設けることを備えてもよい。
【0026】
本発明の他の態様によると、この方法はさらに、コアと活性化可能な外側シースとを含む複合フィラメントとして活性化可能なヤーンを設けることを備えてもよく、外側シースは、コアと比較して低い溶融温度を有するホットメルト材料でもよい。
【0027】
本発明の他の態様によると、この方法はさらに、外側シースを溶融するために用いられる温度と同じ温度で熱硬化可能なコアを設けることを備えてもよい。
【0028】
本発明の他の態様によると、この方法はさらに、少なくとも1つの活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンを互いに同じ数の端部に編組みすることを備えてもよい。
【0029】
本発明の他の態様によると、この方法はさらに、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンをそれぞれ1:1の編組パターンで編組みすることを備えてもよく、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている。
【0030】
本発明の他の態様によると、1:1の比率を超えて活性化可能なヤーンの可撓性を向上させコストを減少させるために、この方法はさらに、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンをそれぞれ1:2の編組パターンで編組みすることを備えてもよく、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている。
【0031】
本発明の他の態様によると、1:2の比率を超えて活性化可能なヤーンの可撓性を向上させコストを減少するために、この方法はさらに、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンをそれぞれ1:3の編組パターンで編組みすることを備えてもよく、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている。
【0032】
本発明の他の態様によると、1:1の比率を超えてヤーン間の剛性および結合力を向上させるために、この方法はさらに、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンをそれぞれ2:1の編組パターンで編組みすることを備えてもよく、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている。
【0033】
本発明の他の態様によると、2:1の比率を超えてヤーン間の剛性および結合力を向上させるために、この方法はさらに、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンをそれぞれ3:1の編組パターンで編組みすることを備えてもよく、活性化可能なヤーンおよび活性化不可能なヤーンは、逆のSおよびZ螺旋方向に互いに交互になっている。
【0034】
本発明のこれらの、ならびに他の局面、特徴、および利点は、現在好ましい実施形態および最良の形態の以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲、ならびに添付の図面との関連で考慮すると、より容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】軸方向に圧縮され、事前に活性化された第1の状態で示される、本発明のある実施形態に従って構築された管状編組スリーブの概略斜視図である。
図2】軸方向に伸張され活性化された第2の状態で示される、管状編組スリーブを有する図1と同様の図である。
図3A】本開示のある態様に係る管状編組スリーブの壁の一部の平面図である。
図3B】本開示のある態様に係る管状編組スリーブの壁の一部の平面図である。
図3C】本開示のある態様に係る管状編組スリーブの壁の一部の平面図である。
図3D】本開示のある態様に係る管状編組スリーブの壁の一部の平面図である。
図3E】本開示のある態様に係る管状編組スリーブの壁の一部の平面図である。
図3F】本開示のある態様に係る管状編組スリーブの壁の一部の平面図である。
図4A】本開示のある態様に係る管状編組スリーブの構築で用いられる活性化可能なモノフィラメントの部分図である。
図4B】本開示のある態様に係る管状編組スリーブの構築で用いられる活性化可能な複合フィラメントの部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
現在好ましい実施形態の詳細な説明
図面をより詳細に参照すると、図1および図2は、本発明のある態様に従って構築された管状編組保護テキスタイルスリーブ(以後、スリーブ10と呼ぶ)を示す図である。1つの連続した編組プロセスにおいて編組みされたようなスリーブ10は、編組みされた、周方向に連続した継ぎ目のない管状壁12を有し、管状壁12は、開口した両端部16、18間で中心長手方向軸14に沿って長手方向に延在する貫通流路(空隙13とも呼ばれる)の境界をつける。壁12は組立て非活性化第1の状態を得るために軸方向に圧縮可能であり、非活性の第1状態によって、編組ヤーン20の伸張された相対移動を介して壁12が軸方向に圧縮されて減少した長さL1および増加した直径D1を有するように(図1)、かつ、編組ヤーン20の収縮された相対移動を介して増加した長さL2および減少した直径D2を有するように軸方向に拡張可能になるように(図2)、概して20で示される、壁12を形成する複数の(2つ以上のヤーンであり、ヤーン全体以下であることが意図されている)編組ヤーンが互いに自由にシフト(摺動とも呼ばれる)する。壁12が少なくとも部分的にまたは完全に偏って軸方向に圧縮された組み立てが容易な第1の状態である間は、壁12を長尺部材22の周囲で容易に組立てて保護することが可能であり、壁12、およびそれゆえ空隙13は、長尺部材22に対して大きな直径を有し、その後、軸方向に拡張された第2の状態の間は、壁12を形成する編組ヤーン20のうち少なくとも1つまたは複数の端部(従来技術で理解されているように、端部は1つのヤーンフィラメントである)は、活性化されると選択的にヤーン20を互いに対して固定する活性化可能なヤーン20´として設けられて、ヤーン20を維持しそれらの互いに対するシフトを防ぎ、それによって、壁12をその所望の組立てられた構成(長さおよび直径)でおよび長尺部材22に対する位置で維持する。したがって、スリーブ10は、テープおよびタイラップなどの第2の固定機構を必要とすることなく、長尺部材22に沿った組立て位置として意図された位置にとどまることが可能になり、これによって、組立て効率が増大し、コストが減少し、かつ、その使用可能な寿命にわたって組立品の全体的な外観が向上する。
【0037】
壁12全体を形成する編組ヤーン20は、もっぱら活性化可能なヤーン20´として設けることができる(図3A)。他の態様では、壁12を形成するヤーン20のうちわずか1つまたは複数だが全体よりも少ないヤーン20を、活性化可能なヤーン20´として設けることが可能であり、残りのヤーン20は、活性化不可能なヤーン20´´として設けられる。活性化可能なヤーン20´は、活性化不可能なヤーン20´´の溶融温度よりも低い溶融温度を有するホットメルト材料からなるような熱溶融性ヤーン、および/または、架橋熱収縮ヤーン(熱収縮は、活性化されて本来の非活性化状態の長さの10%以上、最大で90%まで収縮可能なヤーンを表すと意図されている)などの熱溶融性ヤーンのうちの少なくとも1つとして設けられる。また、説明されたように、壁12の一部を形成するヤーン20は、活性化不可能なヤーン20´´を含んでもよく、組み込まれた場合、モノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントであろうとなかろうと、活性化不可能なヤーン20´´が容易に熱溶融可能でもなければ(容易に加熱されて溶融できず、冷却されると溶融および固化できない)、熱収縮可能でもない(本来の長さの10%も収縮可能でない)ように、任意の所望の種類の活性化不可能なヤーンとして設けることができる。活性化可能なヤーン20´および活性化不可能なヤーン20´´は、活性化不可能なヤーン20´´が設けられる場合、所望の数の相対端部(端部は、1つのヤーンとして知られている)に設けられる。これらの相対端部は、意図された利用に求められるような、かつ、活性化可能なヤーン20´および活性化不可能なヤーン20´´を互いに固定する所望の力に必要とされるような、実質的に周方向に均整のとれた含有量の活性化可能なヤーン20´および活性化不可能なヤーン20´´をスリーブ10に設けるように、一例だがこれらに制限されることはない、1:1(図3B)、1:2(図3C)、1:3(図3D)、3:1(図3E)、または2:1(図3F)などの、活性化不可能なヤーン20´´に対する活性化可能なヤーン20´の端部の所望のそれぞれの比率で逆のSおよびZ螺旋方向(テキスタイル技術の当業者が本明細書の開示を見れば理解できるであろう、図3Aに示すSおよびZ方向)にスリーブ10の周囲で互いに交互になっていて、より含有量の多い活性化可能なヤーン20´が、ヤーン20を互いに強く結合させている。活性化可能なヤーン20´は、UV活性化可能である、熱活性化可能である、流体活性化可能である、または他の態様のうち少なくとも1つでもよい。
【0038】
本発明の他の態様によると、1つ(または複数の)活性化可能なヤーン20´を、1つの材料フィラメント(図4A)および/または(活性化可能である、たとえば、熱硬化可能で熱硬化形状を呈する、または活性化不可能な)内側コア24と内側コア24を取り囲む外側シース26とを含む複合フィラメント(図4B)の中実の一体構造の部分として設けることができ、一例として、外側シース26は、内側コア24の材料と比較して低い溶融温度を有するホットメルト材料でもよい。
【0039】
使用において、活性化可能なヤーン20´が編組みされ最初に非活性化第1の状態で維持された状態のスリーブ10は、長尺部材22の周囲に配設される。スリーブ10を長尺部材22の周囲に配設する間に、ヤーン20´、20´´(設けられている場合)は、壁12が容易に軸方向に圧縮され径方向に拡張されて長尺部材22を収容するために広げられた貫通空隙13を設けるように、自由に互いに対して移動およびシフトする(図1)。その後、スリーブ10を長尺部材22の周囲で所望の位置に位置決めすると、壁12は、長尺部材22の周囲でぴったりフィットしたまたは接近した関係になるように、軸方向に伸張されて軸方向に細長く径方向に収縮された状態になる(図2)。その後、1つ(または複数)のヤーン20´が、好適な熱、UV、または化学品が加えられることによって、たとえば、これらを加える任意の所望プロセスを介して活性化可能であり、活性化された1つ(または複数)のヤーン20´は、溶融および/または収縮されて、ヤーン20全体を互いに対して繋止する。溶融した場合、ヤーン20は、ヤーン20´の溶融し固化した材料を介して互いに結合され、収縮された場合、長尺部材22によることもあるヤーン20間に与えられた摩擦が、効果的にヤーン20を互いに対して繋止する。したがって、ヤーン20全体が互いに対して繋止された状態で、壁12は、長尺部材22の意図された位置にとどまることが保証される。さらに、複合ヤーン20´が設けられる場合、内側コア24は熱硬化されてその螺旋形状を保持して、径方向の剛性を増大させ、スリーブ10の破砕およびフープ強度を増大させる一方で、上述のように、外側シース26は溶融および固化して、ヤーン20を互いに繋止する。なお、複合ヤーン20´の活性化は、内側コア24の熱硬化および外側シース26の溶融に好適な1つの温度で行うことができる。
【0040】
本開示の他の態様によると、編組テキスタイルスリーブ10を構築する方法が提供される。この方法は、複数のヤーン20を互いに編組みして、中心長手方向軸14に沿って長手方向に延在する継ぎ目のない管状壁12を形成することを備え、ヤーン20のうち少なくとも一部は、熱源もしくは化学薬品が加えられると、またはUV照射によって活性化されると、使用される活性化可能なヤーン20´の種類に応じてスリーブ10のヤーン20を互いに対して繋止する活性化可能なヤーン20´として設けられ、これによって、ヤーン20の脱落および径方向の拡張を防ぐ。したがって、壁12が、それを通って延在する長尺部材22に対して意図された構成および位置で維持される。
【0041】
この方法は、ホットメルト材料からなるような熱溶融性ヤーンとして活性化可能な編組ヤーン20'のうち少なくとも1つまたは複数を設けることを備えてもよい。この方法はさらに、熱収縮ヤーンとして活性化可能なヤーン20´のうち1つまたは複数を設けることを備えてもよく、熱溶融性ヤーン20´および/または熱収縮ヤーン20´は、非熱溶融性ヤーン20´´が加熱され、溶融され、溶解されると、および/または熱収縮ヤーン20´´が収縮されると、ヤーン20の互いに対する繋止を容易にするように、非熱溶融性ヤーン20´´(設けられている場合)および/または非熱収縮ヤーン20´(設けられている場合)に対して方向付けられている。熱収縮ヤーン20´が熱溶融性ヤーン20´と組み合わされて設けられる場合、この方法は、共通の温度を使用して収縮および溶融を活性化するようにヤーン20´を設けることを備えてもよく、これによってプロセスが簡略化され、活性化不可能なヤーン20´´は、それぞれのヤーン20´を収縮および溶融させるために用いられる温度の影響を受けない。
【0042】
本開示の他の態様によると、この方法はさらに、スリーブの周囲で互いに交互になる関係で活性化可能な熱溶融性ヤーン20´および/または熱収縮ヤーン20´および活性化不可能な非熱収縮ヤーン20´´を編組みして、実質的に均衡のとれた含有量の熱溶融性ヤーン20´および/または熱収縮ヤーン20´および非熱収縮ヤーン20´´をスリーブ10に設けることを備えてもよい。
【0043】
本開示の他の態様によると、この方法はさらに、UV活性化可能なヤーン、熱活性化可能なヤーン、または他の態様のヤーンのうち少なくとも1つとして活性化可能なヤーン20´を設けることを備えてもよい。
【0044】
本開示の他の態様によると、この方法はさらに、活性化不可能なまたは活性化可能な(熱硬化可能で、溶融することなく熱硬化形状を呈する)コア24と活性化可能な外側シース26とを含む複合フィラメントとして活性化可能なヤーン20´を設けることを備えてもよく、外側シース26は、コア24の材料の溶融温度よりも低い溶融温度を有するホットメルト溶融性材料でもよく、内側コア24および外側シース26は、内側コア24の熱硬化および外側シース26の溶融の両方に好適な同じ温度で活性化可能である。
【0045】
上記教示に照らして、本発明の多くの修正例および変形例が可能である。なお、さらに、本発明のさまざまな態様に従って構築された編組管状壁は、例示でありこれらに限定されるわけではない保護部材または結束部材を含む多数の用途を呈する。したがって、本発明は詳細に説明された以外の態様で実施されてもよいこと、および、本発明の範囲は最終的に許可された特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B