(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】新規ロールインマーガリン
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20230413BHJP
A21D 2/16 20060101ALI20230413BHJP
A21D 13/16 20170101ALI20230413BHJP
A23D 7/04 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A23D7/00 500
A21D2/16
A21D13/16
A23D7/04 500
(21)【出願番号】P 2020515499
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2019017318
(87)【国際公開番号】W WO2019208597
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-06-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2018087144
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018141365
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 洋平
【合議体】
【審判長】大島 祥吾
【審判官】磯貝 香苗
【審判官】平塚 政宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-233547(JP,A)
【文献】横関油脂工業株式会社 化粧用主要製品,「硬化油」,2013年3月,p.12
【文献】日本油化学会誌,1996,vol.45,no.1,p.29-36
【文献】Baker’s digest,1986,p.26
【文献】マテリアルライフ,2000,vol.12,no.1,p.8-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールインマーガリンに含まれる油脂の構成脂肪酸全体中、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下、Sの含有量が40~70重量%、P含有量/S含有量(重量比)が
0.75~1であり、
エステル交換されていないパーム油及び/又はパーム分別油を、前記油脂全体中60~95重量%含有し、
エステル交換油の含有量が前記油脂全体中10重量%以下であり、前記油脂中のトリグリセリド全体中、SSSを10~
17重量%、SUSを15~50重量%含有し、SSU含有量/SUS含有量(重量比)が0.1~1であり、且つ、
油相部の融点から20℃~40℃低い温度に冷却し、捏和後、15~30℃で10~100時間テンパリング処理され、その後-30~25℃で24時間以上静置されたロールインマーガリン。
P:パルミチン酸、
S:C16以上の飽和脂肪酸、
U:C16以上の不飽和脂肪酸、
SSS:Sが3分子結合しているトリグリセリド、
SUS:1,3位にS、2位にUが結合しているトリグリセリド、
SSU:1,2位又は2,3位にS、1位又は3位にUが結合しているトリグリセリド
【請求項2】
エステル交換油を含まない、請求項1に記載のロールインマーガリン。
【請求項3】
ロールインマーガリンに含まれる油脂の構成脂肪酸全体中、S及びUの合計含有量が80~100重量%である、請求項1又は2に記載のロールインマーガリン。
【請求項4】
請求項1~
3何れかに記載のロールインマーガリンを用いてなる層状食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールインマーガリン、及び、これを用いた層状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
以前は、マーガリンやショートニングといった可塑性油脂には、トランス脂肪酸を含む部分水素添加油が使用されてきたが、トランス脂肪酸は多量に摂取すると動脈硬化等のリスクを高めることから、昨今その使用が難しくなっている。そこで近年は、可塑性油脂を構成する油脂成分として、パーム油やその分別油をエステル交換した油脂が広く使用されている。
【0003】
一方、エステル交換がされていないパーム油やその分別油は、製造コストを抑えることができるため価格面で有利であるが、これを可塑性油脂の主な油脂成分として使用すると、通常テンパリング処理を行なわないため、可塑性油脂が経時的に硬くなって品質が低下する場合があった。これは、パーム油のトリグリセリド中に約38重量%含まれるSUS(1位及び3位に炭素数16以上の飽和脂肪酸、2位に炭素数16以上の不飽和脂肪酸が結合しているトリグリセリド)は結晶化が遅いためと考えられている。
【0004】
そこで、エステル交換がされていないパーム油やその分別油を多く含む可塑性油脂は、急冷捏和後に、保温庫にて一定時間保持する熟成工程(テンパリングとも呼ばれる)を経ることで、品質を安定化させることが行なわれている。この熟成工程は、可塑性油脂の中でも、パンや菓子の生地と一緒に練り込んだり、焼成品にフィリングしたりするのに用いられるマーガリンやショートニング等に対して適用されていた。
【0005】
しかし、可塑性油脂の中でも、デニッシュやクロワッサン等の層状食品を製造するために使用されるシート形状のロールインマーガリンでは、層状食品の作製時における良好な作業性も求められるため、従来、熟成工程を行なっても品質を安定化させることが困難であった。
【0006】
特許文献1では、パーム系油脂を60~87重量%、乳脂肪を5~35重量%、液油を2.5~30重量%含有する冷凍生地用ロールインマーガリンが開示されている。しかし、この文献では、パーム系油脂として、パーム油やパーム分別油をエステル交換した油脂や、当該エステル交換油の分別油が使用されており、エステル交換されていないパーム油やその分別油を使用するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
我々は、エステル交換されていないパーム油やその分別油を主な油脂成分として用いても経時的に硬くなりにくく、しかも、層状食品の作製時における作業性が良好なロールインマーガリンの作製を可能にすべく、検討した。層状食品の作製時における良好な作業性とは、ロールインマーガリンが生地上で均一に伸び、生地に折り込む作業が短時間で行なえることを意味する。また、ロールインマーガリンを用いて作製した層状食品は、ジューシーな食感を有し、また、層状食品の各層の間に隙間があって浮きが良好であることが求められる。
【0009】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、油脂中のSUS含有量が多く、エステル交換油の含有量が少ないにも関わらず、経時的な硬さの変化が抑制され、層状食品の作製時に作業性が良好で、作製された層状食品でジューシーな食感、及び良好な浮きを達成できる、低トランス脂肪酸含量のロールインマーガリンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ロールインマーガリンに含まれる油脂の構成脂肪酸全体中、トランス脂肪酸の含有量を低減するとともに、S含有量、及び、P含有量/S含有量(重量比)を特定の範囲とし、前記油脂全体中、エステル交換油の含有量も低減し、SSS含有量、SUS含有量、及び、SSU含有量/SUS含有量(重量比)を特定の範囲とし、且つ、油相部の融点から特定範囲の低い温度に冷却し、捏和後、特定温度で特定時間テンパリング処理され、その後、特定温度で特定時間静置されたロールインマーガリンにすることで、油脂中のSUS含有量が多く、エステル交換油の含有量が少ないにも関わらず、経時的な硬さの変化が抑制され、層状食品の作製時に作業性が良好で、作製された層状食品でジューシーな食感、及び良好な浮きを達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の第一は、ロールインマーガリンに含まれる油脂の構成脂肪酸全体中、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下、Sの含有量が25~70重量%、P含有量/S含有量(重量比)が0.6~1であり、エステル交換油含有量が前記油脂全体中10重量%以下であり、前記油脂中のトリグリセリド全体中、SSSを10~20重量%、SUSを15~50重量%含有し、SSU含有量/SUS含有量(重量比)が0.1~1であり、且つ、油相部の融点から20℃~40℃低い温度に冷却し、捏和後、15~30℃で10~100時間テンパリング処理され、その後-30~25℃で24時間以上静置されたロールインマーガリンに関する。
P:パルミチン酸、
S:C16以上の飽和脂肪酸、
U:C16以上の不飽和脂肪酸、
SSS:Sが3分子結合しているトリグリセリド、
SUS:1,3位にS、2位にUが結合しているトリグリセリド、
SSU:1,2位又は2,3位にS、1位又は3位にUが結合しているトリグリセリド。該ロールインマーガリンは、好ましくは、エステル交換油を含まない。好ましくは、ロールインマーガリンに含まれる油脂の構成脂肪酸全体中、S及びUの合計含有量が80~100重量%である。好ましくは、パーム油及び/又はパーム分別油を、ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中50~95重量%含有する。
本発明の第二は、本発明の第一に係るロールインマーガリンを用いてなる層状食品に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に従えば、油脂中のSUS含有量が多く、エステル交換油の含有量が少ないにも関わらず、経時的な硬さの変化が抑制され、層状食品の作製時に作業性が良好で、作製された層状食品でジューシーな食感、及び良好な浮きを達成できる、低トランス脂肪酸含量のロールインマーガリンを提供することができる。また、それを用いた層状食品を安価に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明のロールインマーガリンは、特定の構成脂肪酸を特定量含有すると共に、特定の油脂組成を有し、冷却捏和後、特定の条件でテンパリング処理され、特定の条件で静置されることを特徴とする。
【0014】
本発明のロールインマーガリンは、水相が油相に分散するタイプの乳化物であり、通常、ロールインマーガリン全体中の油相の量は30~99.5重量%、水相の量は0.5~70重量%である。本発明のロールインマーガリンは、前記油中水型乳化油脂組成物を固体状に晶析せしめたものであり、前記油中水型乳化油脂組成物と同様、ロールインマーガリン中の油相の量は30~99.5重量%、水相の量は0.5~70重量%である。よって、本発明でいうロールインマーガリンには、油分が80%を超えるマーガリンの他、油分が80%未満のファットスプレッドも包含される。
【0015】
本発明のロールインマーガリンは、健康上の観点から、油脂の構成脂肪酸にトランス脂肪酸を多量に含有しないことが好ましい。ここで、トランス脂肪酸とは、トランス型の二重結合を持つ不飽和脂肪酸のことをいう。具体的には、トランス脂肪酸は、ロールインマーガリンに含まれる油脂の構成脂肪酸全体中、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。最も好ましくは、トランス脂肪酸を実質的に含有しないことである。トランス脂肪酸の含有割合を少なくするには、ロールインマーガリンに配合する水素添加油の量を低減すればよく、トランス脂肪酸を実質的に含有しないロールインマーガリンは、水素添加油を配合しないことで製造することができる。なお、トランス脂肪酸の含有量は、AOCS Ce 1f-96に準じて測定できる。
【0016】
本発明のロールインマーガリンに含まれる油脂の構成脂肪酸には炭素数16以上の飽和脂肪酸:Sが含まれており、前記油脂の構成脂肪酸全体に対するSの含有量は25~70重量%が好ましく、30~65重量%がより好ましく、35~60重量%がさらに好ましく、40~55重量%が特に好ましい。Sの含有量が25重量%より少ないと、ロールインマーガリンが軟らかすぎて生地への折り込みに適した物性が得られない場合があり、70重量%より多いと、ロールインマーガリンが硬すぎて生地への折り込みに適した物性が得られない場合がある。
【0017】
前記Sには炭素数16の飽和脂肪酸であるパルミチン酸:Pが多く含まれており、前記油脂の構成脂肪酸全体に対するP含有量とS含有量の比率、すなわちP/S(重量比)は、0.6~1が好ましく、0.75~0.95がより好ましく、0.8~0.9がさらに好ましい。P/Sが0.6より小さいと、ロールインマーガリンを用いて層状食品を作製する際の焼成時に融解した油脂が焼成後の放冷で再結晶化し易くなるため、作製された層状食品の食感が硬くなり、ジューシーな食感が得られない場合がある。なお、パーム油やその分別油を本発明のロールインマーガリンの油脂成分として使用した場合、P/Sの上限値は0.95となる。
【0018】
さらに、層状食品の食感が硬くならずにジューシーな食感を得るためには、ロールインマーガリンに含まれる油脂の構成脂肪酸全体に対するS及びUの合計含有量が80~100重量%であることが好ましい。なお、前記P、S及びU含有量は、基準油脂分析試験法2.4.4.3-2013に準拠して測定することができる。本発明におけるP、S及びUは、以下の通りである。
P:パルミチン酸
S:炭素数16以上の飽和脂肪酸(好ましくは炭素数24以下)
U:炭素数16以上の不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数24以下)。
【0019】
S及びUの合計含有量が80重量%未満であると、ロールインマーガリンに含まれる油脂の構成脂肪酸全体に対する炭素数12の飽和脂肪酸(即ちラウリン酸)の割合が大きくなり、ロールインマーガリンを用いて層状食品を作製する際の焼成時に融解した油脂が焼成後の放冷で再結晶化し易くなるため、作製された層状食品の食感が硬くなり、ジューシーな食感が得られない場合がある。
【0020】
本発明のロールインマーガリンは、前記ロールインマーガリンに含まれる油脂中のトリグリセリド全体中のSSS含有量、SUS含有量、及びSSU含有量/SUS含有量(重量比)が特定の範囲内である。なお、本発明におけるSSS、SUS及びSSUは、以下のことを示す。
SSS:構成脂肪酸としてSが3分子結合しているトリグリセリド
SUS:グリセリンの1位及び3位に構成脂肪酸としてSが、2位にUが結合しているトリグリセリド
SSU:グリセリンの1位及び2位、又は、2位及び3位に構成脂肪酸としてSが、1位又は3位にUが結合しているトリグリセリド。
【0021】
前記SSS含有量は、前記ロールインマーガリンに含まれる油脂中のトリグリセリド全体中10~20重量%であることが好ましく、より好ましくは10~17重量%であり、更に好ましくは10~15重量%である。SSS含有量が10重量%より少ないと、ロールインマーガリンが十分な硬さやコシを達成できず、層状食品作製時の作業性や、作製された層状食品で浮きが悪い場合があり、20重量%より多いと、層状食品を作製する際の焼成時に融解した油脂が焼成後の放冷で再結晶化し易くなるため、作製された層状食品の食感が硬くなり、ジューシーな食感が得られない場合がある。なお、前記SSS含有量は、基準油脂分析試験法2.4.6.2-2013に準拠して測定することができる。
【0022】
前記SUS含有量は、前記ロールインマーガリンに含まれる油脂中のトリグリセリド全体中15~50重量%であることが好ましく、より好ましくは20~50重量%であり、更に好ましくは29~40重量%である。SUS含有量が15重量%より少ないと、ロールインマーガリンを用いて作製された層状食品でジューシーな食感が得られない場合があり、50重量%より多いと層状食品作製時の作業性が悪い場合がある。
【0023】
前記SSU含有量/SUS含有量(重量比)は、前記ロールインマーガリンに含まれる油脂中のトリグリセリド全体において、0.1~1であることが好ましく、より好ましくは0.1~0.35であり、更に好ましくは0.1~0.3であり、最も好ましくは0.1~0.25である。SSU含有量/SUS含有量が0.1より小さいと、層状食品作製時の作業性が悪い場合があり、1より大きいと、作製された層状食品でジューシーな食感が得られない場合がある。なお、前記SUS含有量及びSSU含有量/SUS含有量(重量比)は、「Journal of the American Oil Chemists Society,68,289-293,1991」記載の条件に準じて、HPLCを用いて硝酸銀カラムにより分析することができる。
【0024】
以上のトリグリセリド組成を満足するロールインマーガリンを製造するには、油脂成分として、エステル交換されていないパーム油及び/又はパーム分別油を多く配合すればよい。これにより、上記トリグリセリド組成を容易に達成することができる。具体的には、本発明のロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、エステル交換されていないパーム油及び/又はパーム分別油を合計で50~95重量%含有することが好ましく、55~95重量%含有することがより好ましく、60~85重量%含有することがさらに好ましい。パーム油及び/又はパーム分別油の含有量が50重量%より少ないと、作製された層状食品でジューシーな食感が得られない場合があり、95重量%より多いと層状食品作製時の作業性が悪い場合がある。さらに、ハンドリング、コストメリットや食感の観点を加味すると、該ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、エステル交換されていないパーム油を50~95重量%含有することが好ましく、65~95重量%含有することがより好ましく、75~85重量%含有することがさらに好ましい。なお、パーム分別油とは、パーム油を原料に分別されてできる油脂であり、例えば、パームステアリン、パームハードステアリン、パームオレイン、パームダブルオレイン、パームスーパーオレイン、パームトップオレイン、パーム中融点部等が挙げられる。
【0025】
本発明のロールインマーガリンを構成する油脂としては、前記トリグリセリド組成を満たす限り、パーム油及び/又はパーム分別油以外の食用油脂を適宜使用することができる。このような食用油脂としては、例えば、パーム核油、ヤシ油などのラウリン系油脂、牛脂、液油、乳脂;これらの分別油、エステル交換油、水素添加油;パーム油及び/又はパーム分別油のエステル交換油、水素添加油からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。なお、液油とは、20℃において液状である油脂であり、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、サフラワー油、綿実油、米油等が挙げられる。
【0026】
本発明のロールインマーガリンにおいては、製造コストの観点から、エステル交換油の含有量が少ないほど好ましい。具体的に、エステル交換油の含有量は、ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは6重量%以下であり、更に好ましくは3重量%以下である。最も好ましくは、エステル交換油を含有しないことである。
【0027】
また、ハラルの観点から、本発明のロールインマーガリンは、ラードを含まないことが好ましい。
【0028】
本発明のロールインマーガリンは、前記油脂と水以外に、通常ロールインマーガリンに配合される成分を適宜含有することができる。そのような成分としては、例えば、乳化剤、香料、酸化防止剤、着色料、糖類、食塩、増粘安定剤、甘味料、酸味料、呈味素材等を挙げることができる。
【0029】
前記乳化剤としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0030】
前記香料としては、バターフレーバー、ミルクフレーバー等を挙げることができる。
【0031】
前記酸化防止剤としては、トコフェロール、β-カロテン、茶抽出物(カテキン等)等を挙げることができる。
【0032】
前記着色料としては、β-カロテン、カラメル、紅麹色素等を挙げることができる。
【0033】
前記糖類としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖、トレハロース、糖アルコール等を挙げることができる。
【0034】
前記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉等を挙げることができる。
【0035】
前記甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア粉末等を挙げることができる。
【0036】
前記酸味料としては、酢酸、乳酸、グルコン酸等を挙げることができる。
【0037】
前記呈味素材としては、前記糖類、前記甘味料、前記酸味料は除かれ、乳製品、風味エキス類、その他呈味を有する原料等を挙げることができる。前記乳製品としては、全粉乳、脱脂粉乳、練乳粉、乳脂の加熱処理物や酵素処理物、牛乳、加糖練乳、発酵乳、生クリーム、チーズ等を挙げることができる。前記風味エキス類としては、昆布エキス、発酵調味料等を挙げることができる。前記その他呈味を有する原料としては、卵黄、全卵、コーヒー、カカオ原料、抹茶、緑茶、餡類、果汁、果肉、野菜ペースト、粉末野菜等を挙げることができる。
【0038】
本発明のロールインマーガリンは、1以上の油脂成分を併用して全体として前記構成脂肪酸組成及びトリグリセリド組成を満足する油脂を構成し、該油脂を加熱融解し、必要に応じて乳化剤などの油溶性成分を添加して油相を調製し、該油相に、水や、必要に応じて食塩、香料や呈味素材などの水溶性成分を加えて攪拌した水相を加え乳化させた後、冷却捏和後、テンパリング処理と静置されることで得られるロールインマーガリンである。
【0039】
油相と水相を混合してから、乳化する前後何れかで殺菌処理を行なうことが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でもよい。
【0040】
前記冷却捏和に用いる装置としては、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機である密閉型連続式チューブ冷却機、プレート型熱交換機、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組合せ等の冷却機器または冷却捏和装置が挙げられる。
【0041】
前記冷却時の温度は、油相部の融点から20~40℃低い温度が好ましく、油相部の融点から30~40℃低い温度がより好ましく、油相部の融点から30~35℃低い温度が更に好ましい。油相部の融点から20℃未満の温度まで冷却すると、油脂が十分に結晶化せず、作製された層状食品で浮きが悪い場合があり、油相部の融点から40℃を超える温度まで冷却すると、冷却のためのコストがかかりすぎる場合がある。ただし、冷却時の温度が0℃未満になると、乳化物中の水分が凍結して設備を傷める場合があるので、冷却時の温度が0℃未満になるような冷却はしないほうが好ましい。
【0042】
前記テンパリング処理は、15~30℃で10~100時間行なうことが好ましい。テンパリング処理温度は18~27℃がより好ましく、20~25℃が更に好ましい。テンパリング時の温度が15℃未満であるとテンパリング効果が十分に得られないため、テンパリング処理によるロールインマーガリンの物性改善が不十分となり、層状食品作製時の作業性が悪い場合があり、30℃を超えると、ロールインマーガリンが必要以上に軟化したり、油浸を起こすため、ロールインマーガリンの品質が悪くなり、作製された層状食品でジューシーな食感を達成できず、良好な浮きが得られない場合がある。テンパリング処理時間は18~72時間がより好ましく、24~48時間が更に好ましい。10時間未満であるとテンパリング効果が十分に得られない場合があり、一方、100時間を超えてテンパリングしても効果が頭打ちとなり、生産性が落ちる場合がある。テンパリング処理設備としては、温調庫等を使用できる。
【0043】
前記テンパリング処理後には、テンパリング処理温度より低い温度で特定時間以上静置する。これにより、ロールインマーガリン中の油脂の結晶化を進行させ、結晶を安定化させて、経時的な硬さの変化が抑制されたロールインマーガリンを実現することができる。静置する際の温度は、テンパリング処理温度より低い温度であって、かつ、-30~25℃が好ましく、-20~25℃がより好ましく、0~10℃が更に好ましい。-30℃より低いと保管コストの点で不利であり、層状食品作製時にロールインマーガリンが伸展しにくく、作業性が悪かったり、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合がある。25℃を超えると、層状食品作製時にロールインマーガリンが伸展しにくく、作業性が悪かったり、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合がある。
【0044】
静置する時間は、24時間以上であることが好ましい。24時間未満であると、油脂の結晶が十分に析出せず、または安定しておらず、製造されたロールインマーガリンの物性が不十分となり、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合がある。静置時間の上限としては、保管コストの観点から2年が好ましいが、特にこれに限定されない。
【0045】
本発明のロールインマーガリンは、シート状に成形してもよい。その場合、例えば混合乳化後、冷却し、可塑化した本発明のロールインマーガリンを、成型器に導入すればよい。
【0046】
本発明のロールインマーガリンは、従来の製造方法で製造したロールインマーガリンと同様に、生地に包み込んで伸展し、その後、焼成することにより、層状食品の作製に用いることができる。
【0047】
該層状食品としては、例えばデニッシュ、クロワッサン、パイ等が挙げられるが、特に限定されない。
【0048】
また、該層状食品における本発明のロールインマーガリンの配合量は、製造する層状食品の種類によって異なり、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、層状食品全体中15~40重量%が好ましい。
【0049】
本発明の層状食品の製造方法は、特に限定されず、本発明のロールインマーガリンを用いること以外は、公知の原料を使用し、公知の配合および公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0051】
実施例及び比較例で使用した原料は以下のとおりである。
1)(株)カネカ製「パーム油」
2)(株)カネカ製「パームステアリン」
3)太陽油脂(株)製「パーム極度硬化油」
4)(株)カネカ製「パーム核油」
5)(株)カネカ製「菜種油」
6)(株)カネカ製「パーム核極度硬化油」
7)(株)カネカ製「菜種極度硬化油」
8)(株)カネカ製「パームスーパーオレイン」
9)(株)カネカ製「パームダブルオレイン」
10)(株)カネカ製「パームオレイン」
11)理研ビタミン(株)製「エマルジーMS」
12)J-オイルミルズ(株)製「大豆レシチン」
13)高砂香料(株)製「バターフレーバー」
14)雪印メグミルク(株)製「脱脂粉乳」
15)財団法人塩事業センター製「精製塩」
16)(株)カネカ製「ラード」
17)(株)カネカ製「パーム中融点部」
18)(株)カネカ製「カカオバター」
19) 日清製粉(株)製「ミリオン」
20) 日清製粉(株)製「バイオレット」
21) (株)カネカ製「GK」
22) 日新製糖(株)製「上白糖P」
23) (株)赤城鶏卵GPセンター製「卵」
24) (株)カネカ製「エバーライトG」
25) (株)カネカ製「ニューフードC」
【0052】
<経時的な硬さ変化の評価>
実施例1~15及び比較例1~12で得られた各ロールインマーガリンを下記所定時間冷蔵した後、ぺネ缶に採取した。ぺネ缶の両端をバターナイフで面切りし、15℃の恒温水槽に浸漬して3時間後にペネトロメーター(ELEX SCIENTIFIC社製「PENETRO METER」)でペネ値を測定し、以下の基準で評価した。なお、測定で得られるペネ値は、小数点以下は四捨五入されている。
5点:テンパリング処理後、24時間冷蔵した後と2週間冷蔵した後の15℃におけるペネ値の差が15未満
4点:テンパリング処理後、24時間冷蔵した後と2週間冷蔵した後の15℃におけるペネ値の差が15以上30未満
3点:テンパリング処理後、24時間冷蔵した後と2週間冷蔵した後の15℃におけるペネ値の差が30以上50未満
2点:テンパリング処理後、24時間冷蔵した後と2週間冷蔵した後の15℃におけるペネ値の差が50以上70未満
1点:テンパリング処理後、24時間冷蔵した後と2週間冷蔵した後の15℃におけるペネ値の差が70以上
【0053】
<デニッシュ作製時の作業性>
実施例16~30及び比較例13~24のデニッシュの作製において、15℃で3時間温調した実施例1~15及び比較例1~12のロールインマーガリンを、それぞれ生地に折り込んだ際の作業性を以下の基準で評価した。
5点:生地の中でロールインマーガリンが均一に伸び、作業時間が非常に短い。
4点:ロールインマーガリンの伸び方に偏りは殆ど見られず、作業時間は短い。
3点:ロールインマーガリンの伸び方に少し偏りが見られるが、作業時間は短い。
2点:ロールインマーガリンが均一に伸びていない部分が多く、作業時間が長い。
1点:ロールインマーガリンが伸びず、生地にロールインマーガリンの塊が見られ、作業時間が非常に長い。
【0054】
<ジューシーな食感>
実施例16~30及び比較例13~24で作製したデニッシュを、熟練した10名のパネラーが食して、以下の基準で評価した。各人の評価値の平均点を示した。
5点:ジューシーな食感を非常に強く感じる。
4点:ジューシーな食感を強く感じる。
3点:ジューシーな食感を感じる。
2点:ジューシーな食感をあまり感じない。
1点:ジューシーな食感を感じない。
【0055】
<浮き>
実施例16~30及び比較例13~24で作製したデニッシュを切断し、熟練した10名のパネラーがその断面を観察して、以下の基準で評価した。各人の評価値の平均値を示した。
5点:非常に浮きが良く、各層の間に十分な隙間がある。
4点:浮きが良く、ほとんどの層の間に十分な隙間がある。
3点:浮きが良く、各層の間に十分な隙間のない部分がある。
2点:浮きが悪く、各層の間に十分な隙間のない部分が多い。
1点:非常に浮きが悪く、ほとんどの生地と生地の間に十分な隙間がない。
【0056】
<総合評価>
ロールインマーガリンの経時的な硬さ変化、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュのジューシーな食感、及び浮きの各評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:ロールインマーガリンの経時的な硬さ変化、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュのジューシーな食感、及び浮きが全て4.0点以上5.0点以下を満たすもの。
B:ロールインマーガリンの経時的な硬さ変化、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュのジューシーな食感、及び浮きが全て3.5点以上5.0点以下であって、且つ3.5以上4.0未満が少なくとも一つあるもの。
C:ロールインマーガリンの経時的な硬さ変化、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュのジューシーな食感、及び浮きが全て3.0点以上5.0点以下であって、且つ3.0以上3.5未満が少なくとも一つあるもの。
D:ロールインマーガリンの経時的な硬さ変化、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュのジューシーな食感、及び浮きが全て2.0点以上5.0点以下であって、且つ2.0以上3.0未満が少なくとも一つあるもの。
E:ロールインマーガリンの経時的な硬さ変化、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュのジューシーな食感、及び浮きの評価において、2.0未満が少なくとも一つあるもの。
【0057】
(実施例1)
表1に示す配合に従って、パーム油55.0重量部、パームステアリン8.1重量部、パーム極度硬化油1.6重量部、パーム核油8.1重量部、菜種油8.1重量部を混合した。この油脂混合物にモノグリセライド0.5重量部、大豆レシチン0.5重量部、バターフレーバー0.1重量部を加え、70℃で融解後、65~70℃に保持して油相とした。油相の融点は38℃であった。また、水16.5重量部に食塩1.0重量部、脱脂粉乳0.5重量部を加えて攪拌し、80~85℃で20分殺菌後、65~70℃に保持して水相とした。水相を油相に加えて20分以上乳化させて乳化物を得た。
【0058】
得られた乳化物を、-30~-50℃/分の冷却速度で捏和しながら10℃まで急冷した後、成型装置に導入してシート形状のマーガリンに成形した。このマーガリンを20℃で24時間テンパリング処理した後、4℃で2週間冷蔵保管してロールインマーガリンを得た。得られたロールインマーガリンの経時的な硬さ変化について評価した。
【0059】
【0060】
(実施例2)
表1の配合に従って、油脂の配合を、パーム油32.4重量部、パームステアリン9.7重量部、菜種油12.1重量部、パーム核極度硬化油20.2重量部、菜種極度硬化油6.5重量部とし、パーム極度硬化油とパーム核油を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は43℃であった。
【0061】
(実施例3)
表1の配合に従って、油脂の配合を、パーム油60.7重量部、パームステアリン16.2重量部、菜種油4.0重量部とし、パーム極度硬化油とパーム核油を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は42℃であった。
【0062】
(実施例4)
表1の配合に従って、油脂の配合を、パーム油8.1重量部、パームステアリン16.2重量部、パーム極度硬化油1.6重量部、パーム核油8.1重量部、菜種油8.1重量部、パームオレイン38.8重量部とした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は42℃であった。
【0063】
(実施例5)
表1の配合に従って、油脂の配合を、パーム油20.3重量部、パームステアリン24.3重量部、パーム極度硬化油4.0重量部、菜種油28.3重量部、パームスーパーオレイン4.0重量部とし、パーム核油を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は45℃であった。
【0064】
(比較例1)
表1の配合に従って、油脂の配合を、パーム油を24.3重量部、菜種油を11.3重量部、パーム核極度硬化油を17.0重量部、菜種極度硬化油を12.1重量部、パームスーパーオレインを16.2重量部とし、パームステアリン、パーム極度硬化油及びパーム核油を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は46℃であった。
【0065】
(比較例2)
表1の配合に従って、油脂の配合を、パーム油を42.9重量部、パームステアリンを4.0重量部、パーム極度硬化油を1.6重量部、菜種油を8.1重量部、パーム核極度硬化油16.2重量部、パームダブルオレインを8.1重量部とし、パーム核油を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は36℃であった。
【0066】
(比較例3)
表1の配合に従って、油脂の配合を、パーム油を16.1重量部、パームステアリンを24.3重量部、パーム極度硬化油を8.1重量部、菜種油を24.3重量部、パームスーパーオレインを8.1重量部とし、パーム核油を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は47℃であった。
【0067】
表1で示した評価結果より、実施例1~5、比較例1及び3のロールインマーガリンは経時的な硬さ変化が見られず非常に良好で、比較例2のロールインマーガリンも経時的な硬さ変化はほとんど見られず良好であった。
【0068】
(実施例6)
表2の配合に従って、油脂の配合を、パームステアリン13.8重量部、パーム極度硬化油1.6重量部、菜種油9.7重量部、パーム核極度硬化油8.9重量部、パームスーパーオレイン10.5重量部、パームダブルオレイン16.2重量部、ラード20.2重量部とし、パーム油とパーム核油を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は36℃であった。
【0069】
【0070】
(実施例7)
表2の配合に従って、油脂の配合を、パーム油16.2重量部、パームステアリン8.1重量部、パーム極度硬化油4.0重量部、菜種油4.0重量部、パーム中融点部48.6重量部とし、パーム核油を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は38℃であった。
【0071】
(実施例8)
表2の配合に従って、油脂の配合を、パーム油36.4重量部、パームステアリン16.2重量部、パーム極度硬化油4.0重量部、パームスーパーオレイン8.1重量部、カカオバター16.2重量部とし、パーム核油と菜種油を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は44℃であった。
【0072】
(実施例9)
表2の配合に従って、油脂の配合を、パーム油24.3重量部、パームステアリン8.1重量部、パーム極度硬化油1.6重量部、パーム核油4.0重量部、菜種油4.0重量部、パームオレイン8.1重量部、ラード30.8重量部とした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は36℃であった。
【0073】
(比較例4)
表2の配合に従って、油脂の配合を、パーム極度硬化油13.7重量部、菜種油8.1重量部、パームスーパーオレイン40.5重量部、ラード18.6重量部とし、パーム油、パームステアリン及びパーム核油を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は46℃であった。
【0074】
(比較例5)
表2の配合に従って、油脂の配合を、パーム油12.2重量部、パームステアリン8.1重量部、パーム極度硬化油4.0重量部、菜種油8.1重量部、パーム中融点部20.2重量部、カカオバター28.3重量部とし、パーム核油を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は36℃であった。
【0075】
(比較例6)
表2の配合に従って、油脂の配合を、パームステアリン4.0重量部、パーム極度硬化油8.1重量部、パームスーパーオレイン40.5重量部、カカオバター28.3重量部とし、パーム油、パーム核油及び菜種油を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は42℃であった。
【0076】
(比較例7)
表2の配合に従って、油脂の配合を、パーム油32.4重量部、パームステアリン8.1重量部、パーム極度硬化油3.2重量部、ラード37.2重量部とし、パーム核油と菜種油を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。なお、油相の融点は43℃であった。
【0077】
表2で示した評価結果より、実施例6及び9、比較例4及び7のロールインマーガリンは経時的な硬さ変化が見られず非常に良好で、実施例7及び8のロールインマーガリンも経時的な硬さ変化はほとんど見られず良好であった。比較例5及び6は経時的な硬さ変化が見られたが、問題ないレベルだった。
【0078】
(実施例10)
表3の製造条件に従って、油相部の融点と急冷後の品温の差が22℃になるように急冷した以外は、実施例1と同じ配合及び製造条件でロールインマーガリンを得た。
【0079】
【0080】
(実施例11)
表3の製造条件に従って、油相部の融点と急冷後の品温度の差が36℃になるように急冷した以外は、実施例1と同じ配合及び製造条件でロールインマーガリンを得た。
【0081】
(実施例12)
表3の製造条件に従って、テンパリング処理時の温度を17℃とした以外は、実施例1と同じ配合及び製造条件でロールインマーガリンを得た。
【0082】
(実施例13)
表3の製造条件に従って、テンパリング処理時の温度を28℃とした以外は、実施例1と同じ配合及び製造条件でロールインマーガリンを得た。
【0083】
(実施例14)
表3の製造条件に従って、テンパリング処理の時間を12時間とした以外は、実施例1と同じ配合及び製造条件でロールインマーガリンを得た。
【0084】
(実施例15)
表3の製造条件に従って、テンパリング処理の時間を96時間とした以外は、実施例1と同じ配合及び製造条件でロールインマーガリンを得た。
【0085】
(比較例8)
表3の製造条件に従って、油相部の融点と急冷後の品温の差が13℃になるように急冷した以外は、実施例1と同じ配合及び製造条件でロールインマーガリンを得た。
【0086】
(比較例9)
表3の製造条件に従って、テンパリング処理時の温度を10℃とした以外は、実施例1と同じ配合及び製造条件でロールインマーガリンを得た。
【0087】
(比較例10)
表3の製造条件に従って、テンパリング処理時の温度を35℃とした以外は、実施例1と同じ配合及び製造条件でロールインマーガリンを得た。但し、このロールインマーガリンは一部に油浸が見られた。
【0088】
(比較例11)
表3の製造条件に従って、テンパリング処理の時間を6時間とした以外は、実施例1と同じ配合及び製造条件でロールインマーガリンを得た。
【0089】
(比較例12)
表3の製造条件に従って、テンパリング処理を行なわなかった以外は、実施例1と同じ配合及び製造条件でロールインマーガリンを得た。
【0090】
表3で示した評価結果より、実施例11、12及び15のロールインマーガリンは経時的な硬さ変化が見られず非常に良好で、実施例10、13及び14、比較例8のロールインマーガリンも経時的な硬さ変化はほとんど見られず良好であった。比較例10のロールインマーガリンには経時的な硬さ変化が見られたが、問題ないレベルだった。比較例9及び11のロールインマーガリンには品質上問題となるレベルの経時的な硬さ変化が見られ、比較例12のロールインマーガリンでは、比較例9及び11よりも大きい経時的な硬さ変化が見られた。
【0091】
(実施例16~30、比較例13~24)デニッシュの作製
実施例1~15、比較例1~12で得られた各ロールインマーガリンを用いてデニッシュを作製した。即ち、表4に示す配合に従って、ロールインマーガリンとショートニングを除いた原料をミキサーにて低速3分間、中高速3分間ミキシングした後、ショートニングを混合し、更に低速3分間、中高速3分間ミキシングし、捏ね上げ温度を25℃とした。室温で30分間生地を発酵させた後、生地を1℃で5時間冷却した。
【0092】
冷却後の生地1916gを成形してから、15℃に温調したロールインマーガリン500gを静置し、包み込んだ。このとき、ロールインマーガリンを包んだ伸展前の生地のサイズは、36cm(縦)×14.4cm(横)×5cm(厚)であった。この生地を、リバースシーターを用いて10mm厚になるまでは5mmごとに段階的に伸展し、その後は2mmごとに段階的に伸展し、最後は4mm厚に調整したリバースシーターを用いて、生地を4mm厚に伸展した。続けて生地を3つ折りした後、3mm厚に調整したリバースシーターを用い、生地を3mm厚に伸展した。得られた生地を1℃で10時間冷却後、更に3つ折りした後、2.5mm厚に調整したリバースシーターを用いて生地を2.5mm厚に伸展した。生地を成形後、35℃、湿度70%のホイロで1時間最終発酵した後、200℃のオーブンで15分間焼成し、デニッシュを得た。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュのジューシーな食感及び浮きについて評価し、その結果を表5にまとめた。
【0093】
【0094】
【0095】
表5に、使用した油脂の構成脂肪酸全体中のP含有量/S含有量(重量比)及びトリグリセリド全体中のSSSの含有量が異なるロールインマーガリンで作製したデニッシュの結果をまとめた。
【0096】
表5より、実施例16~20で得られたデニッシュは、使用した油脂のP含有量/S含有量(重量比)が0.6~1、且つSSSの含有量が10~20重量%の範囲にあるロールインマーガリン(実施例1~5)で作製されたものである。その結果、全てのデニッシュにおいて、ロールインマーガリンの伸び方に偏りは殆ど見られずデニッシュ作製時の作業性は良好で、ジューシーな食感を強く感じ、浮きも良く、ほとんどの層の間に十分な隙間があるものであった。
【0097】
一方、比較例13で得られたデニッシュは、使用した油脂のP含有量/S含有量(重量比)が0.54と小さいロールインマーガリン(比較例1)で作製されたもので、デニッシュのジューシーな食感の評価項目で不十分な結果となった。
【0098】
さらに、比較例14で得られたデニッシュは、使用した油脂のSSSの含有量が8重量%と少ないロールインマーガリン(比較例2)で作製されたもので、デニッシュの浮きの評価項目で不十分な結果となった。
【0099】
また、比較例15で得られたデニッシュは、使用した油脂のSSSの含有量が22重量%と多いロールインマーガリン(比較例3)で作製されたもので、デニッシュのジューシーな食感の評価項目で不十分な結果となった。
【0100】
【0101】
表6に、使用した油脂のトリグリセリド全体中のSUSの含有量、及びSSU含有量/SUS含有量(重量比)が異なるロールインマーガリンで作製したデニッシュの結果をまとめた。
【0102】
表6より、実施例16,21~24で得られたデニッシュは、使用した油脂のSUSの含有量が15~50重量%、且つSSU含有量/SUS含有量(重量比)が0.1~1の範囲にあるロールインマーガリン(実施例1,6~9)で作製されたものである。その結果、全てのデニッシュにおいて、ロールインマーガリンの伸び方に偏りは殆ど見られずデニッシュ作製時の作業性は良好で、ジューシーな食感を強く感じ、浮きも良く、ほとんどの層の間に十分な隙間があるものであった。
【0103】
一方、比較例16で得られたデニッシュは、使用した油脂のSUSの含有量が13重量%と少ないロールインマーガリン(比較例4)で作製されたもので、デニッシュのジューシーな食感の評価項目で不十分な結果となった。
【0104】
さらに、比較例17で得られたデニッシュは、使用した油脂のSUSの含有量が55重量%と多いロールインマーガリン(比較例5)で作製されたもので、デニッシュ作製時にロールインマーガリンが均一に伸びていない部分が多く、作業性の評価項目で不十分な結果となった。
【0105】
また、比較例18で得られたデニッシュは、使用した油脂のSSU含有量/SUS含有量(重量比)が0.08と小さいロールインマーガリン(比較例6)で作製されたもので、デニッシュ作製時にロールインマーガリンが均一に伸びていない部分が多く、作業性の評価項目で不十分な結果となった。
【0106】
さらには、比較例19で得られたデニッシュは、使用した油脂のSSU含有量/SUS含有量(重量比)が1.1と大きいロールインマーガリン(比較例7)で作製されたもので、デニッシュのジューシーな食感の評価項目で不十分な結果となった。
【0107】
【0108】
表7に、配合は同じで、製造時における冷却時の温度、及びテンパリング処理時の温度と時間が異なるロールインマーガリンで作製したデニッシュの結果をまとめた。
【0109】
表7より、実施例16,25~30で得られたデニッシュは、製造時における冷却時の温度が油相部の融点から20~40℃低い範囲にあり、且つテンパリング処理の温度が15~30℃、時間が10~100時間の範囲にあるロールインマーガリン(実施例1,10~15)で作製されたものである。その結果、全てのデニッシュにおいて、ロールインマーガリンの伸び方に偏りは殆ど見られずデニッシュ作製時の作業性は良好で、ジューシーな食感を強く感じ、浮きも良く、ほとんどの層の間に十分な隙間があるものであった。
【0110】
一方、比較例20で得られたデニッシュは、冷却時の温度が油相部の融点から13℃低い温度で冷却されたロールインマーガリン(比較例8)で作製されたものである。冷却時の温度が油相部の融点から28℃低い温度で冷却されたロールインマーガリン(実施例1)で作製されたデニッシュ(実施例16)は全ての評価項目が良好であったのに対して、比較例20のデニッシュは、デニッシュの浮きの評価項目で不十分な結果となった。
【0111】
さらに、比較例21で得られたデニッシュは、テンパリング処理の温度が10℃と低いロールインマーガリン(比較例9)で作製されたものである。テンパリング処理の温度が20℃のロールインマーガリン(実施例1)で作製されたデニッシュ(実施例16)は全ての評価項目が良好であったのに対して、比較例21のデニッシュは、デニッシュ作製時にロールインマーガリンが均一に伸びていない部分が多く、作業性の評価項目で不十分な結果となった。また、比較例22で得られたデニッシュは、テンパリング処理の温度が35℃と高いロールインマーガリン(比較例10)で作製されたものであり、デニッシュのジューシーな食感と浮きの評価項目で不十分な結果となった。
【0112】
さらには、比較例23で得られたデニッシュは、テンパリング処理の時間が6時間と短いロールインマーガリン(比較例11)で作製されたものである。テンパリング処理の時間が24時間のロールインマーガリン(実施例1)で作製されたデニッシュ(実施例16)は全ての評価項目が良好であったのに対して、比較例23のデニッシュは、デニッシュ作製時にロールインマーガリンが均一に伸びていない部分が多く、作業性の評価項目で不十分な結果となった。また、比較例24で得られたデニッシュは、テンパリング処理を行なわなかったロールインマーガリン(比較例12)で作製されたものであり、デニッシュ作製時にロールインマーガリンが伸びず、生地にロールインマーガリンの塊が見られ、作業性の評価項目で不十分な結果となった。