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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ファンガイドユニット
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/10 20060101AFI20230413BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
F01P11/10 C
B60K11/04 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020549271
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2019037521
(87)【国際公開番号】W WO2020067123
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2018180062
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220217
【氏名又は名称】東京ラヂエーター製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢真
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-178888(JP,A)
【文献】特開2017-81244(JP,A)
【文献】特開2016-114005(JP,A)
【文献】特開2012-97589(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0147257(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/10
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の周縁に周方向に沿うように設けられた嵌合部と、前記嵌合部に設けられ、前記周方向に交差する方向に突出した少なくとも一つの突起部と、を有するファンガイドと、
前記ファンガイドの嵌合部に対応して設けられた被嵌合部を有するファンカバーと、
を備え、
前記ファンカバーの前記被嵌合部には、前記ファンガイドの突起部に対応して設けられた少なくとも一つの貫通穴が設けられている、
熱交換器用のファンガイドユニット。
【請求項2】
前記ファンガイドの前記開口部は、略円形であり、
前記嵌合部は、前記開口部の周縁から径方向に延びており、
前記突起部は、前記嵌合部の先端から前記径方向に延びている、請求項1に記載のファンガイドユニット。
【請求項3】
前記ファンガイドの前記突起部は、前記周方向の断面において略矩形を有し、
前記径方向の長さより前記周方向の幅が大きい、請求項2に記載のファンガイドユニット。
【請求項4】
前記ファンカバーは、環状部を有し、前記被嵌合部は、前記環状部の周縁に周方向に沿うように設けられ、
前記ファンカバーの前記貫通穴の前記周方向の幅は、前記ファンガイドの前記突起部の前記嵌合部側の前記周方向の幅よりも大きい、請求項2又は3に記載のファンガイドユニット。
【請求項5】
前記ファンカバーは、環状部を有し、前記被嵌合部は、前記環状部の周縁に周方向に沿うように設けられ、
前記ファンガイドの前記突起部は、前記周方向の断面において、前記嵌合部側の前記周方向の幅よりも先端側の前記周方向の幅の方が大きく、
前記ファンカバーの前記貫通穴は、前記周方向の幅が、前記ファンガイドの前記突起部の前記周方向の最小幅より大きく、前記ファンガイドの前記突起部の前記周方向の最大幅より小さい、請求項2に記載のファンガイドユニット。
【請求項6】
前記ファンガイドの前記突起部は、リブを有し、該リブは、前記ファンカバーを前記ファンガイドに取付けた場合、少なくとも一部が前記ファンカバーから露出する、請求項1から5の何れか一項に記載のファンガイドユニット。
【請求項7】
前記リブは、前記周方向に延びており、前記ファンカバーを前記ファンガイドに取付けた場合、前記リブ全体が前記ファンカバーから露出する、請求項6に記載のファンガイドユニット。
【請求項8】
前記ファンカバーは、弾性体からなり、
前記ファンガイドの前記突起部は、前記ファンガイドの下部に位置する、請求項1から7の何れか一項に記載のファンガイドユニット。
【請求項9】
前記ファンガイドは、3つの前記突起部を有し、前記3つの突起部は、前記ファンガイドの下側半分の領域に設けられている、請求項8に記載のファンガイドユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファンガイドユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の熱交換器(例えば、ラジエーター)の後方には、放熱量を高めるために冷却風を吸引する冷却用ファンが配置される。また、ラジエーターの後面にはファンガイドユニットが取り付けられ、冷却用ファンによって吸引される冷却風を整流することによりラジエーターへの送風効率を上昇させている。
【0003】
ファンガイドユニットは、ファンガイドとファンカバーを有する。ファンガイドは、ラジエーターの後面を覆うように取り付けられ、また、ラジエーターからの冷却風を後方に導く略円形の開口部を有する。ファンカバーは、環状部を有し、ファンガイドの開口部に取り付けられる。ファンカバーは、ファンガイドと冷却用ファンを囲むファンリング(図示せず)との間を繋ぎ、冷却風の洩れを防いでいる。
【0004】
特許文献1では、ファンカバーの周縁に沿って形成された挟持部に、ファンガイドの開口部の周縁に沿って形成された凸条部を嵌合させることにより、ファンカバーをファンガイドの開口部に取り付ける。また、ファンガイドの凸条部の前側(ラジエーター側)に設けられて中心方向に凹んだ凹部に、ファンカバーの嵌合部を嵌合させることにより、エンジンの振動等によるファンカバーの回転を抑制している。
【0005】
特許文献2では、ファンカバーに周方向に等間隔で設けられた複数のストッパーに、ファンガイドの開口部の周縁に沿って形成された嵌合部を嵌合させることにより、ファンカバーをファンガイドの開口部に取り付ける。また、ファンカバーのストッパーに設けられた半球状の膨出部をファンガイドの嵌合部に設けられた取付穴に嵌め込むことにより、ファンカバーの遠心方向への抜けを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開2017-81244号公報
【文献】日本国特開2012-97589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のファンカバーの取付構造では、回転方向に力が働くと、ファンカバーの膨出部がファンガイドの取付穴から外れて回転してしまう可能性がある。また、特許文献1のファンカバーの取付構造では、回転方向に強い力が働くと、ファンカバーの嵌合部がファンガイドの凹部の周囲に乗り上がり回転してしまう可能性がある。したがって、ファンカバーの回転を抑制する構造は、依然として改善の余地があった。
【0008】
本開示は、ファンカバーの回転を抑制することができるファンガイドユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る熱交換器用のファンガイドユニットは、
開口部の周縁に周方向に沿うように設けられた嵌合部と、前記嵌合部に設けられ、前記周方向に交差する方向に突出した少なくとも一つの突起部と、を有するファンガイドと、
前記ファンガイドの嵌合部に対応して設けられた被嵌合部を有するファンカバーと、
を備え、
前記ファンカバーの前記被嵌合部には、前記ファンガイドの突起部に対応して設けられた少なくとも一つの貫通穴が設けられている。
【0010】
上記構成によれば、ファンガイドに設けられた突起部をファンカバーに設けられた貫通穴に嵌合させることにより、ファンカバーの回転を抑制することができる。
【0011】
また、前記ファンガイドの前記開口部は、略円形であり、
前記嵌合部は、前記開口部の周縁から径方向に延びており、
前記突起部は、前記嵌合部の先端から前記径方向に延びてもよい。
【0012】
上記構成によれば、被嵌合部を嵌合部に嵌合させる方向と、貫通穴を突起部に嵌合させる方向が同じ径方向であるため、ファンカバーの取付作業性が向上する。
【0013】
また、前記ファンガイドの前記突起部は、前記周方向の断面において略矩形を有し、
前記径方向の長さより前記周方向の幅が大きくてもよい。
【0014】
上記構成によれば、突起部の回転方向に対する剛性を高めることができる。また、突起部が貫通穴から径方向に外れることを抑制することができる。
【0015】
また、前記ファンカバーは、環状部を有し、前記被嵌合部は、前記環状部の周縁に周方向に沿うように設けられ、
前記ファンカバーの前記貫通穴の前記周方向の幅は、前記ファンガイドの前記突起部の前記嵌合部側の前記周方向の幅よりも大きくてもよい。
【0016】
上記構成によれば、貫通穴と突起部との間で周方向の位置ずれや形状誤差が発生しても、貫通穴に突起部を嵌合することができる。また、貫通穴の周方向両端では嵌合部および被嵌合部が嵌合している。このため、突起部と貫通穴との間に隙間が存在していても周囲の嵌合部および被嵌合部で隙間が塞がれるため、冷却風が隙間から漏れることを防止できる。
【0017】
また、前記ファンカバーは、環状部を有し、前記被嵌合部は、前記環状部の周縁に周方向に沿うように設けられ、
前記ファンガイドの前記突起部は、前記周方向の断面において、前記嵌合部側の前記周方向の幅よりも先端側の前記周方向の幅の方が大きく、
前記ファンカバーの前記貫通穴は、前記周方向の幅が、前記ファンガイドの前記突起部の前記周方向の最小幅より大きく、前記ファンガイドの前記突起部の前記周方向の最大幅より小さくてもよい。
【0018】
上記構成によれば、貫通穴と突起部との間で周方向の位置ずれや形状誤差が発生しても、貫通穴に突起部を嵌合することができる。また、貫通穴の周方向両端では嵌合部および被嵌合部が嵌合していることから、突起部と貫通穴との間に隙間が存在していても周囲の嵌合部及び被嵌合部で隙間が塞がれるため、冷却風が隙間から漏れることを防止できる。また、突起部が貫通穴から径方向に外れることをさらに抑制することができる。
【0019】
また、前記ファンガイドの前記突起部は、リブを有し、該リブは、前記ファンカバーを前記ファンガイドに取付けた場合、少なくとも一部が前記ファンカバーから露出してもよい。
【0020】
上記構成によれば、ファンカバーの取付後にリブが目視可能かを確認することにより、ファンカバーがファンガイドに対して正しく装着されているか否かを判断することができる。
【0021】
また、前記リブは、前記周方向に延びており、前記ファンカバーを前記ファンガイドに取付けた場合、前記リブ全体が前記ファンカバーから露出してもよい。
【0022】
上記構成によれば、周方向に延びたリブ全体がファンカバーから露出するため、リブを簡単に目視することができる。また、突起部が貫通穴から径方向に外れることを抑制することができる。
【0023】
また、前記ファンカバーは、弾性体からなり、
前記ファンガイドの前記突起部は、前記ファンガイドの下部に位置してもよい。
【0024】
上記構成によれば、ファンカバー自体を伸ばしながら行う取付作業は、通常、ファンガイドの下部から行われる。このため、取付の初期段階で、貫通穴に突起部が差込まれて引っ掛かり、ファンカバーを簡単に取り付けることができる。
【0025】
また、前記ファンガイドは、3つの前記突起部を有し、前記3つの突起部は、前記ファンガイドの下側半分の領域に設けられてもよい。
【0026】
上記構成によれば、ファンガイドは、3つの突起部を有しているため、ファンカバーの回転をより抑制することができる。また、取付の初期段階で、3つの貫通穴に3つの突起部が差込まれて引っ掛かり、ファンカバーをより簡単に取り付けることができる。
なお、ファンガイドの下側半分の領域とは、ファンガイドの上下方向中心よりも下側の領域である。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、ファンカバーの回転を抑制することができるファンガイドユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係るファンガイドユニットが取り付けられた熱交換器の全体構成を説明するための斜視図である。
図2A】本実施形態に係るファンガイドユニットを示す図である。
図2B図2Aのファンガイドユニットからファンカバーを外した状態(ファンガイド)を示す図である。
図3A図2Aのファンガイドユニットの下部における部分拡大斜視図である。
図3B図3AのファンガイドユニットのA-A断面斜視図である。
図4】ファンガイドの突起部を説明するための概略図である。
図5A図3BのファンガイドユニットのB-B断面斜視図である。
図5B図5Aのファンガイドユニットからファンカバーを外した状態(ファンガイド)を示す断面斜視図である。
図6A】変形例に係るファンガイドユニットの下部における部分拡大斜視図である。
図6B図6AのファンガイドユニットのC-C断面図である。
図7A】突起部の変形例を説明するための概略図である。
図7B】突起部の別の変形例を説明するための概略図である。
図7C】突起部のさらに別の変形例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施形態(以下、本実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0030】
本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「上下方向」、「前後方向」について適宜言及する。これらの方向は、図1に示すファンガイドユニット4について設定された相対的な方向である。これらの方向は、ファンガイドユニット4が取り付けられた熱交換器1が車両に設置された状態での方向に対応している。ここで、「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。前後方向は、上下方向に直交する方向である。左右方向は、前後方向及び上下方向に直交する方向である。添付の図面において、矢印Uは上方向、矢印Dは下方向、矢印Lは左方向、矢印Rは右方向、矢印Fは前方向、矢印Bは後方向を示している。
【0031】
<ファンガイドユニットが取り付けられた熱交換器の全体構成>
図1は、本実施形態に係るファンガイドユニット4が取り付けられた熱交換器1の全体構成を説明するための斜視図である。
熱交換器1は、例えば、車両の前部(例えば、エンジンルーム内)に配置されて、車両前方から取り込んだ冷却風により熱交換器1内を循環する圧縮空気や冷却水を冷却する。熱交換器1の後方には、放熱量を高めるため、冷却風を吸引する冷却用ファン(図示せず)が配置される。ファンガイドユニット4は、前後方向において、熱交換器1と冷却用ファンとの間に配置される。ファンガイドユニット4は、熱交換器1の後面に取り付けられている。冷却風は、熱交換器1の前方から吸い込まれて、熱交換器1、ファンガイドユニット4を順に通過して冷却用ファンを介して後方へ流出する。ファンガイドユニット4は、冷却用ファンによって吸引される冷却風を整流することにより熱交換器1への冷却風の送風効率(すなわち、熱交換器1の冷却効率)を上昇させている。
【0032】
熱交換器1は、インタークーラ2とラジエーター3を有する。インタークーラ2とラジエーター3は、冷却風の流れ方向に順に設置されている。インタークーラ2は、エンジンへ圧縮空気を送る過給器からの圧縮空気を冷却する。ラジエーター3は、エンジンなどの熱源を冷却するための冷却水を冷却する。尚、熱交換器1は、インタークーラ2とラジエーター3から構成されるものに限定されない。また、インタークーラ2は、ラジエーター3の前方側に配置したが、ラジエーター3の後方に配置されてもよい。
【0033】
ファンガイドユニット4は、ファンガイド5と、ファンカバー6を有する。ファンガイド5は、ラジエーター3の後面を覆うように取り付けられ、冷却用ファンによって吸引される冷却風を整流する。ファンカバー6は、ファンガイド5と冷却用ファンを囲むファンリング(図示せず)との間を繋ぎ、冷却風の洩れを防ぐ。
【0034】
<ファンガイドユニットの全体構成>
次に、主に図2Aから図2Bを参照しながら、本実施形態に係るファンガイドユニット4の構成について説明する。
図2Aは、本実施形態に係るファンガイドユニット4を示す図である。図2Bは、図2Aのファンガイドユニット4からファンカバー6を外した状態(ファンガイド5)を示す図である。図2A及び図2Bは、後方から視た図である。
【0035】
ファンガイド5は、合成樹脂からなり、正面視で略正方形状を有する。ファンガイド5の冷却用ファン側の後面には、ラジエーター3からの冷却風を後方に導く略円形の開口部8が設けられている。開口部8の中心は、ファンガイド5の後面の中心から若干下方にずれている。ファンガイド5のラジエーター3側の前面は、冷却風の通路として開放されている。ファンガイド5は、ラジエーター3側の端部周縁と開口部8の周縁とを連結するガイド体9により、冷却用ファンによって吸引される冷却風を整流するための空間を形成している。尚、開口部8の周囲に沿った方向を「周方向」、開口部8の半径に沿った方向を「径方向」という場合がある。また、「径方向」において、開口部8の外から中心位置に向かう方向を「中心方向」といい、中心位置から開口部8の外に向かう方向を「遠心方向」という場合がある。添付の図面において、矢印Cは周方向、矢印RAは径方向を示している。
【0036】
ファンガイド5は、ラジエーター3側の端部周縁に、フランジ部7を有する。フランジ部7には、取付孔や取付部が設けられている。ファンガイド5は、フランジ部7にてボルト等によりラジエーター3の後面に固定される。
【0037】
ファンカバー6は、ファンガイド5の開口部8の周縁に取り付けられる。ファンカバー6は、弾性体(例えば、ゴム)からなる。
【0038】
尚、ファンガイド5は、ラジエーター3の後面の形状に対応して正面視で略正方形状を有しているが、これに限定されない。熱交換器1に取り付けられる端部の形状が熱交換器1の形状に対応している限りにおいて、その形状は特に限定されるものではない。また、開口部8の形状・位置は、これに限定されない。冷却用ファン及びファンリングの形状・位置に対応している限りにおいて、その形状・位置は特に限定されるものではない。
【0039】
<ファンガイドとファンカバーの取付構造>
次に、主に図3Aから図5Bを参照しながら、本実施形態に係るファンガイド5とファンカバー6の取付構造について説明する。
図3Aは、図2Aのファンガイドユニット4の下部における部分拡大斜視図である。図3Bは、図3Aのファンガイドユニット4のA-A断面斜視図である。図4は、ファンガイドの突起部を説明するための概略図である。尚、図4は、突起部の周方向の断面の形状を示す概略図である。図5Aは、図3Bのファンガイドユニット4のB-B断面斜視図である。図5Bは、図5Aのファンガイドユニット4からファンカバー6を外した状態(ファンガイド5)を示す断面斜視図である。
【0040】
ファンガイド5は、図3Bに示すように、開口部8の周縁に、嵌合部10と、突条部12を有する。嵌合部10は、開口部8の周縁に、周方向に沿うように且つ遠心方向に延びて設けられている。嵌合部10は、その先端部は後方に屈曲しており、周方向に直交する断面が略L字状となっている。突条部12は、開口部8の周縁の嵌合部10より前側の位置に、周方向に沿うように且つ遠心方向に延びて設けられている。
【0041】
ファンカバー6は、図3Bに示すように、環状部6aと被嵌合部13を有する。環状部6aは、ファンリングの一部を囲むように構成されている。環状部6aの後部は、中心方向に向かって延びており、その先端はファンリングと嵌合する。被嵌合部13は、環状部6aの前端部の周縁に設けられている。被嵌合部13は、周方向に沿うように且つ中心方向に延びて設けられた前側被嵌合部13aおよび後側被嵌合部13bを有する。被嵌合部13は、前側被嵌合部13aおよび後側被嵌合部13bで嵌合部10を前後から挟むように嵌合部10に嵌合する。後側被嵌合部13bは、その先端が前方に屈曲し、周方向に直交する断面は略L字状となっており、嵌合部10の略L字状の先端と係合する。
【0042】
ファンガイド5の嵌合部10は、ファンカバー6の被嵌合部13により前後から挟むように嵌合される。このような取付構造は、ファンカバー6がファンガイド5から後方へ移動することを抑制することができる。また、嵌合部10の先端は、後側被嵌合部13bの先端に係止されるため、ファンカバー6がファンガイド5から遠心方向に外れることが抑制される。また、突条部12は、嵌合部10に平行に設けられているため、突条部12は、被嵌合部13を嵌合部10に嵌合させる際に被嵌合部13を中心方向に案内することができる。
【0043】
本実施形態では、さらに、ファンガイド5は嵌合部10に設けられた少なくとも一つの突起部11を有し、ファンカバー6は突起部11に対応する被嵌合部13に設けられた少なくとも一つの貫通穴14を有している。突起部11および貫通穴14により、エンジンの振動等によるファンカバー6の回転を抑制することができる。
【0044】
例えば、図3Aに示すように、ファンガイド5は、複数(本例では三つ)の突起部11を有する。三つの突起部11は、ファンガイド5の下側半分の領域に設けられている。一つの突起部11は、開口部8の周縁の一番下の部分(下部の一例)に設けられており(図2B参照)、その左右に二つの突起部11が所定の間隔で設けられている。ファンカバー6は、ファンガイド5の突起部11に対応する複数(本例では三つ)の貫通穴14を有している。
【0045】
突起部11は、図4に示すように、周方向の断面において、略矩形を有し、径方向の長さL1より周方向の幅W2が大きくなるように形成されている。また、突起部11は、図5Aおよび図5Bに示すように、径方向及び前後方向の断面において、前後方向の幅W1が、嵌合部10の先端の前後方向の幅W0と同じになるように形成されており、嵌合部10の先端から周方向の所定の長さに渡って遠心方向に突出している。
【0046】
貫通穴14は、図4に示すように、周方向の幅W3が、ファンガイド5の突起部11の嵌合部10側の周方向の幅W2よりも大きくなるように形成されている。また、貫通穴14の前後方向の幅は、突起部11の前後方向の幅と同じになるように形成されている。ファンカバー6をファンガイド5に取り付けた状態では、貫通穴14の前後方向の幅は、突起部11の前後方向の幅と同じであるため、貫通穴14に突起部11が嵌合する。
【0047】
ファンカバー6をファンガイド5に取り付ける作業では、先ず、作業者は、貫通穴14と突起部11とを対応させるように、ファンカバー6のファンガイド5に対する回転方向(周方向)の位置を定める。次に、ファンガイド5の一番下に位置する突起部11を貫通穴14に嵌合させるとともに、その周辺において、被嵌合部13で嵌合部10を前後方向から挟むように、被嵌合部13を嵌合部10に嵌合させる。作業者は、必要に応じて、ファンカバー6を復元力に抗して前後方向に伸ばしながら、貫通穴14を突起部11に挿入し、ファンカバー6を復元させながら、突起部11を貫通穴14に嵌合させていく。
【0048】
次に、作業者は、必要に応じて、ファンカバー6を復元力に抗して周方向に伸ばしながら、また、ファンカバー6を復元させながら、下方から上方に向かって、被嵌合部13を嵌合部10に嵌合させていく。尚、途中、残りの二つの突起部11を貫通穴14に嵌合させるが、二つの突起部11の位置と貫通穴14の位置が周方向に多少ずれていても、貫通穴14の周方向の幅が突起部11の幅より広いため、突起部11を貫通穴14に嵌合させることができる。そして、周方向のすべての被嵌合部13を嵌合部10に嵌合させることにより、ファンカバー6をファンガイド5に取り付けることができる。
【0049】
このように、本実施形態では、ファンガイド5に設けられた突起部11をファンカバー6に設けられた貫通穴14に嵌合させることにより、ファンカバー6の回転を抑制することができる。
【0050】
また、突起部11は、嵌合部10の先端から遠心方向に延びているため、貫通穴14を突起部11に嵌合させる方向が被嵌合部13を嵌合部10に嵌合させる方向と同じ方向となり、ファンカバー6の取付作業性が向上する。
【0051】
また、突起部11は、周方向の断面において略矩形を有し、径方向の長さより周方向の幅が大きいため、突起部11の回転方向に対する剛性を高めることができる。また、突起部11が貫通穴14から中心方向に外れることを抑制することができる。
【0052】
また、貫通穴14の周方向の幅は、突起部11の嵌合部側の周方向の幅よりも大きいため、貫通穴14と突起部11との間で周方向の位置ずれや形状誤差が発生しても、貫通穴14に突起部11を嵌合することができる。また、貫通穴14の周方向両端では嵌合部10および被嵌合部13が嵌合している。このため、突起部11と貫通穴14との間に隙間が存在していても、その隙間は周囲の嵌合部10および被嵌合部13で塞がれるため、冷却風が隙間から漏れることを防止できる。
【0053】
また、ファンガイド5は、三つの突起部11を有しているため、ファンカバー6の回転をより抑制することができる。また、三つの突起部11は、ファンガイド5の下側半分の領域に設けられている。ファンカバー6自体を伸ばしながら行う取付作業は、ファンガイド5の下部から行われるため、取付の初期段階で、貫通穴14に突起部11が差込まれて引っ掛かり、ファンカバーを簡単に取り付けることができる。
【0054】
<ファンガイドユニットの変形例>
次に、ファンガイドユニット4の変形例について説明する。図6Aは、変形例に係るファンガイドユニット4’の下部における部分拡大斜視図である。図6Bは、図6Aのファンガイドユニット4’のC-C断面図である。尚、変形例の説明では、本実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。変形例1は、ファンガイド5’の突起部11’がリブ15を有する点が本実施形態のファンガイド5と異なる。
【0055】
ファンガイド5’の突起部11’は、ファンカバー6側の面に周方向に延びたリブ15を有する。リブ15は、ファンカバー6をファンガイド5’に取付けた場合、嵌合部10に対して被嵌合部13が正常に嵌合された状態において、リブ15全体がファンカバー6から露出する位置に設けられている。
【0056】
このように、突起部11’がリブ15を有するため、取付作業を行う作業者は、ファンカバー6の取付後にリブ15が目視可能かを確認することができる。このため、作業者はファンカバー6がファンガイド5’に対して正しく装着されているか否かを判断することができる。また、リブ15は、突起部11’が貫通穴14から径方向に外れることを抑制することができる。
【0057】
尚、リブ15は、ファンカバー6をファンガイド5’に取付けた場合、少なくとも一部がファンカバー6から露出する限りにおいて、その数、配置場所及び形状は特に限定されるものではない。
【0058】
<ファンガイドの突起部の変形例>
次に、ファンガイド5の突起部11の変形例について説明する。図7Aから図7Cは、突起部11A~11Cの変形例を説明するための概略図である。図7Aから図7Cは、突起部11A~11Cの周方向の断面の形状を示す概略図である。
【0059】
図7Aの突起部11Aは、周方向の断面において、嵌合部10側の周方向の幅W5よりも先端側の周方向の幅W6の方が広く、T字形状となっている。貫通穴14Aは、周方向の断面において、周方向の幅W4は、突起部11Aの嵌合部10側の周方向の幅W5よりも大きく、先端側の周方向の幅W6よりも小さくなるように形成されている。
【0060】
図7Bの突起部11Bは、周方向の断面において、嵌合部10側から先端側に向かって周方向の幅が徐々に広くなっている。貫通穴14Bは、周方向の断面において、周方向の幅W7は、突起部11Aの嵌合部10側の周方向の幅W8よりも大きく、先端側の周方向の幅W9よりも小さくなるように形成されている。
【0061】
図7Cの突起部11Cは、周方向の断面において、嵌合部10側から遠心方向に所定の位置までは周方向同一の幅を有し、所定の位置から先端側に向かって周方向の幅が徐々に広くなっている。貫通穴14Cは、周方向の断面において、周方向の幅W10が、突起部11Aの所定の位置の周方向の幅W11よりも大きく、先端側の周方向の幅W12よりも小さくなるように形成されている。
【0062】
このように、ファンガイド5の突起部11A~11Cは、周方向の断面において、嵌合部10側の周方向の幅よりも先端側の周方向の幅の方が大きい。また、ファンカバー6の貫通穴14A~14Cの周方向の幅は、ファンガイドの突起部11A~11Cの周方向の最小幅より大きく、ファンガイド5の突起部11A~11Cの周方向の最大幅より小さい。このため、貫通穴14A~14Cと突起部11A~11Cとの間で周方向の位置ずれや形状誤差が発生しても、貫通穴14A~14Cに突起部11A~11Cを嵌合することができる。また、貫通穴14A~14Cの周方向両端では嵌合部10および被嵌合部13が嵌合していることから、突起部11A~11Cと貫通穴14A~14Cとの間に隙間が存在していても、その隙間は周囲の嵌合部10及び被嵌合部13で塞がれるため、冷却風が隙間から漏れることを防止できる。また、突起部11A~11Cが貫通穴14A~14Cから遠心方向に外れることをさらに抑制することができる。
【0063】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本開示の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本開示の技術的範囲は請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0064】
上記実施形態では、ファンガイド5は、開口部8の周縁に突条部12を有するが、本開示は、これに限らない。ファンガイド5は、突条部12を有していなくてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、複数の突起部11は、同一形状を有するが、これに限定されない。複数の突起部11は、それぞれ異なる形状を有してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、突起部11は、ファンガイド5の下部に設けられているが、これに限定されない。例えば、ファンガイド5の上からファンカバー6が取付られる場合には、突起部11は、ファンガイド5の上部に設けられてもよい。また、ファンガイド5は、3つの突起部11を有しているが、これに限定されない。例えば、ファンガイド5は、一つまたは二つの突起部、あるいは、4つ以上の突起部を有してもよい。また、複数(本例では三つ)の突起部11は、ファンガイド5の下側半分の領域に設けられているが、これに限定されない。例えば、一つの突起部11がファンガイド5の下側半分の領域に設けられ、残りの突起部11がファンガイド5の上側半分の領域に設けられてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、突起部11は、嵌合部10の先端から周方向に垂直な遠心方向に突出するように形成されているが、これに限定されない。例えば、径方向に対して所定の角度で傾斜した方向に突出してもよい。尚、突起部11は、ガイド体9の内部に形成された空間へ突出しないことが好ましい。突起部11をガイド体9の内部に形成された空間へ突出させる場合には、冷却風の流れの妨げにならない箇所に突出させることが望ましい。
【0068】
本出願は、2018年9月26日出願の日本特許出願2018-180062号に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C