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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】電気焼物板
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20230413BHJP
   H05B 3/14 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A47J37/06 321
H05B3/14 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020567034
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 KR2019006615
(87)【国際公開番号】W WO2019231295
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】10-2018-0063426
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502235773
【氏名又は名称】バイオニア コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】パク ハン-オ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェ-ハ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュン ピョ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジウン
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0027081(KR,A)
【文献】特開2017-057246(JP,A)
【文献】特開平07-275130(JP,A)
【文献】特開2007-143804(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076390(WO,A1)
【文献】特表2016-533001(JP,A)
【文献】特開2006-325948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00-37/07
H05B 3/02- 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼物板、前記焼物板に面接触する単一の発熱層および前記発熱層と接する電極を含む電気焼物板であって、
前記発熱層は、カーボンナノチューブおよびケイ素系接着剤を含む発熱組成物で形成されることを特徴とし、
前記電極は、正極および負極で構成される複数の単位電極対を含み、前記単位電極対が互いに離隔していることに起因する離隔空間によって形成される離隔ラインを基準に温度偏差が誘発され、
複数の前記単位電極対の間の隔離距離を調節することで、単位発熱領域面の形成位置およびサイズを調節する、電気焼物板。
【請求項2】
前記発熱層は、前記単位電極対によって温度が相違するように制御される単位発熱領域面を含み、
前記発熱層と接する焼物板の他面は、前記単位発熱領域面に対応する複数の単位焼物板領域面を含み、前記単位焼物板領域面が互いに独立して温度が制御される、請求項1に記載の電気焼物板。
【請求項3】
前記単位発熱領域面または前記単位焼物板領域面に接する複数の温度センサをさらに含み、
前記温度センサにより前記単位焼物板領域面の温度が独立して制御される、請求項2に記載の電気焼物板。
【請求項4】
前記焼物板または前記発熱層に接する温度センサをさらに含む、請求項1に記載の電気焼物板。
【請求項5】
前記単位電極対に独立して電力を印加する電源部をさらに含む、請求項1に記載の電気焼物板。
【請求項6】
前記電源部は、前記発熱層に5~240Vの電圧を印加する、請求項5に記載の電気焼物板。
【請求項7】
前記発熱層の平均厚さは10μm~2mmである、請求項1に記載の電気焼物板。
【請求項8】
前記焼物板の平均厚さは5~50mmである、請求項1に記載の電気焼物板。
【請求項9】
前記焼物板の一面に前記電極が形成された後、前記発熱組成物が前記電極を覆って塗布される、請求項1に記載の電気焼物板。
【請求項10】
前記焼物板の一面に前記発熱組成物が塗布されて発熱層が形成された後、前記発熱層に前記電極が接着組成物により接合される、請求項1に記載の電気焼物板。
【請求項11】
前記発熱組成物は、バインダーをさらに含む、請求項1に記載の電気焼物板。
【請求項12】
前記発熱組成物は、カーボンナノチューブ1~50重量%、ケイ素系接着剤1~30重量%、バインダー1~20重量%、分散剤1~20重量%および有機溶媒1~90重量%を含む、請求項11に記載の電気焼物板。
【請求項13】
前記バインダーは、エチルセルロースおよびニトロセルロースから選択されるいずれか一つ以上の有機バインダーを含み、
前記分散剤は、アミノ含有オリゴマーまたはポリマーのホスホラスエステル塩;リン酸のモノエステルまたはジエステル;酸性ジカルボン酸モノエステル;ポリウレタン-ポリアミン付加物;およびポリアルコキシル化モノアミンまたはジアミン;から選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含み、
前記有機溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、アニリン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールエチルエーテルおよびテルピネオールから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む、請求項12に記載の電気焼物板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気焼物板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、家庭や飲食点で食べ物を調理するか肉を焼く装置としては、通常、ガスレンジまたはガスバーナが多く使用されている。かかるガスをエネルギーとして使用する従来の発熱装置は、施設の普及がよくできており、使用が容易で燃料費が安いという利点があるが、ガス配管施設が必須であるため、使用場所に限界がある。また、ガスをエネルギーとして使用する装置は、直接燃焼により熱を発生させるため、爆発や火事の危険性が非常に高く、最近、家庭では、安全性の高い電気エネルギーを使用する発熱装置、例えば、電気焼物板が多く普及されている。
【0003】
電気焼物板は、電気エネルギーの供給を受けて熱を発生させる電気ヒータに属する。電気ヒータは、通常、本体の内部に電気エネルギーを用いて熱を発生させる電熱部が存在し、その上部に金属板や石板などの焼物板が備えられて、電熱部の熱が上部の焼物板に伝達されるように構成されている。
【0004】
かかる電気焼物板は、電気施設だけ備えられたところであれば、どこでも使用が可能であり、ガス配管施設と比較して相対的に普及が非常によくできており、使用場所に制限がほとんどないという利点がある。また、ガスを用いる装置と比較して相対的に安全性が高いことは言うまでもなく、優れた便宜性を有する。それにもかかわらず、電気焼物板は、ガスを用いる装置に比べて使用率が著しく低いが、これは、相対的に低い火力による調理品質の低下が主な理由であると言える。
【0005】
具体的には、従来の電気焼物板は、通常、石や金属材質の厚い焼き板である焼物板と、前記焼物板の下側に所定の間隔離れて位置した電熱部とを備える。この際、使用される電熱部は、線状であり通常熱線と称し、ジグザグ状に数回折り曲げられた状態で配置される。かかる熱線が使用された従来の電気焼物板は、焼物板に印加される熱エネルギーが均一に伝達されないという問題がある。また、焼物板と熱線との間に形成される離隔空間が存在するため、焼物板に直接熱が加えられない領域によって熱損失が大きいという問題がある。かかる問題によって熱線が使用される従来の電気焼物板は、ガスを用いた装置よりも昇温速度が非常に遅いことから適正な温度で調理するためには予熱する時間が長くなり、そのため、食べ物の調理品質が非常に劣化する。
【0006】
また、局所的に熱が加えられるため、焼物板に使用される物質の種類にもその物質の比熱によって限界がある。例えば、石板を焼物板として使用する場合、比較的高い比熱によって局所的な温度差がひどく、温度差がひどくなる場合、石板に亀裂が発生するという致命的な問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
KR10-2014-0131757A(2014.11.14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の従来の問題を解消するためのものであって、熱効率に優れ、目標温度まで逹する反応時間が速くて予熱時間が短縮され、調理品質に優れる電気焼物板を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、温度の上昇時に焼物板の面積による温度偏差の発生を実質的に防止することができ、耐久性と安全性が高い電気焼物板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による電気焼物板は、焼物板、前記焼物板に面接触する発熱層および前記発熱層と接する電極を含む電気焼物板であって、前記発熱層は、カーボンナノチューブおよびケイ素系接着剤を含む発熱組成物で形成される。
【0011】
本発明の一例において、前記電極は、正極および負極で構成される複数の単位電極対を含むことができ、前記単位電極対は、互いに離隔して位置することができる。
【0012】
本発明の一例において、前記発熱層は、前記単位電極対によって温度が相違するように制御される単位発熱領域面を含むことができ、前記発熱層と接する焼物板の他面は、前記単位発熱領域面に対応する複数の単位焼物板領域面を含むことができ、前記単位焼物板領域面が互いに独立して温度が制御され得る。
【0013】
本発明の一例による電気焼物板は、前記焼物板または前記発熱層に接する温度センサをさらに含むことができる。
【0014】
本発明の一例による電気焼物板は、前記単位発熱領域面または前記単位焼物板領域面に接する複数の温度センサをさらに含むことができ、前記温度センサにより前記単位焼物板領域面の温度が独立して制御され得る。
【0015】
本発明の一例において、前記単位発熱領域面は、組成または組成比が互いに異なることができ、前記組成または組成比の差によって前記単位発熱領域面の温度が独立して制御され得る。
【0016】
本発明の一例による電気焼物板は、前記焼物板または前記発熱層に接する温度センサをさらに含むことができる。
【0017】
本発明の一例による電気焼物板は、前記単位電極対に独立して電力を印加する電源部をさらに含むことができる。
【0018】
本発明の一例において、前記電源部は、前記発熱層に5~240Vの電圧を印加するものであってもよい。
【0019】
本発明の一例において、前記発熱層の平均厚さは10μm~2mmであってもよい。
【0020】
本発明の一例において、前記焼物板の平均厚さは5~50mmであってもよい。
【0021】
本発明の一例において、前記焼物板の一面に前記電極が形成された後、前記発熱組成物が前記電極を覆って塗布されてもよい。
【0022】
本発明の一例において、前記焼物板の一面に前記発熱組成物が塗布されて発熱層が形成されてもよい。
【0023】
本発明の一例において、前記発熱組成物は、バインダーをさらに含むことができる。
【0024】
本発明の一例において、前記発熱組成物は、カーボンナノチューブ1~50重量%、ケイ素系接着剤1~30重量%、バインダー1~20重量%、分散剤1~20重量%および有機溶媒1~90重量%を含むことができる。
【0025】
本発明の一例において、前記バインダーは、エチルセルロースおよびニトロセルロースなどから選択されるいずれか一つ以上の有機バインダーを含むことができ、前記分散剤は、アミノ含有オリゴマーまたはポリマーのホスホラスエステル塩;リン酸のモノエステルまたはジエステル;酸性ジカルボン酸モノエステル;ポリウレタン-ポリアミン付加物;およびポリアルコキシル化モノアミンまたはジアミン;などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができ、前記有機溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、アニリン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールエチルエーテルおよびテルピネオールなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明による電気焼物板は、熱損失を最小化して熱効率に優れ、目標温度まで逹する反応時間が速くて予熱時間が短縮され、調理品質に優れるという効果がある。
【0027】
また、本発明による電気焼物板は、温度の上昇時に焼物板の面積による温度偏差の発生を実質的に防止することができ、耐久性と安全性が高いという効果がある。
【0028】
本発明で明示的に言及されていない効果であっても、本発明の技術的特徴によって期待される明細書に記載の効果およびその内在的な効果は、本発明の明細書に記載のものと同様に取り扱われる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施例1で製造された電気焼物板の実際のイメージである。
図2】実施例1で製造された電気焼物板を熱画像カメラで観察した熱画像イメージである。
図3】実施例1で製造された電気焼物板の各電圧での時間による焼物板の温度の変化を示すグラフである。
図4】実施例1で製造された電気焼物板の各電圧の変化で時間による焼物板の温度の変化を示すグラフである。
図5】同じ印加電圧で実施例1および実施例2で製造された電気焼物板の焼物板の厚さによる焼物板の昇温速度の変化を示すグラフである。
図6】実施例1および実施例2で製造された電気焼物板に対する対照群である従来の熱線を用いた電気焼物板の同じ印加電圧で時間による焼物板の温度の変化を示すグラフである。
図7】本発明の一例による電気焼物板を示した斜視図であって、電気焼物板の下部を下側から見た視点での斜視図、すなわち、発熱層が面接触する焼物板の他面が見える視点での斜視図である。
図8】本発明の一例による電気焼物板において、発熱層および電極が位置する焼物板の下部を下側から見た視点での図、すなわち、電気焼物板の下面を示す図である。
図9】本発明の一例による電気焼物板において、発熱層および電極が位置する焼物板の下部を下側から見た視点での図、すなわち、電気焼物板の下面を示す図である。
図10】本発明の一例による電気焼物板において、発熱層および電極が位置する焼物板の下部を下側から見た視点での図、すなわち、電気焼物板の下面を示す図である。
図11】本発明の一例による電気焼物板において、食材料対象が収容される電気焼物板の上面を示す図であり、焼物板の上部を上側から見た視点での図ある。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照して、本発明による電気焼物板について詳細に説明する。
【0031】
本明細書に記載されている図は、当業者に本発明の思想が十分伝達されるようにするために例として提供されるものである。したがって、本発明は、提示される図に限定されず、他の形態に具体化することもでき、前記図は、本発明の思想を明確にするために誇張して図示され得る。
【0032】
本明細書で使用される技術用語および科学用語において他の定義がない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付の図面で本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0033】
本明細書で使用される用語の単数形態は、特別な指示がない限り、複数形態も含むと解釈され得る。
【0034】
本明細書で特別な言及なしに使用された%の単位は、特別な定義がない限り、重量%を意味する。
【0035】
本明細書で言及される「層」、「板」または「膜」の用語は、各材料が連続体(continuum)をなし、幅と長さに比べ厚さが相対的に小さいディメンション(dimension)を有するものを意味する。したがって、本明細書で前記用語によって、二次元の平らな平面に解釈されてはならない。
【0036】
本発明による電気焼物板は、焼物板と、前記焼物板に面接触する発熱層と、前記発熱層と接する電極とを含む電気焼物板であって、前記発熱層が、カーボンナノチューブおよびケイ素系接着剤を含む発熱組成物で形成されることを特徴とする。
【0037】
本発明による電気焼物板は、カーボンナノチューブおよびケイ素系接着剤を含む発熱組成物で形成される発熱層20と面接触する焼物板10を含むことで、熱損失を最小化して熱効率に優れ、目標温度まで逹する反応時間が速くて熱エネルギーが伝達される対象の温度を迅速に増加させることができる。それだけでなく、温度の上昇時に焼物板10の面積による温度偏差の発生を最小化し、耐久性と安全性が高いという効果がある。したがって、前記電気焼物板は、目標温度まで逹する反応時間が速くて予熱時間が短縮され、高い火力で調理対象に高い熱エネルギーが速く伝達されることから調理対象の味を一層アップグレードさせることができる。
【0038】
前記発熱層20が面接触する焼物板10の他面は、熱エネルギーが伝達される対象が接触および収容される領域を含む。本明細書で言及される「対象」は、電気焼物板を用いて熱処理されなければならないものであれば制限されず、一例として、食材料を意味し得る。
【0039】
前記発熱層と接する焼物板10の他面は、互いに異なる温度に調節され得る領域面を有することで、前記領域面に位置した複数の対象に互いに異なる値の熱エネルギーが印加されるようにすることがより好ましい。このための手段として、電極30は、正極および負極で構成される複数の単位電極対31,32、33、34を含むことができ、前記単位電極対31,32、33、34は、前記焼物板10の面に接しながら互いに離隔して位置することができる。この場合、互いに離隔して位置した単位電極対31,32、33、34に互いに異なる電力量(電圧)を印加することで、発熱層20に単位電極対31,32、33、34の間の離隔空間によって形成される離隔ラインを基準に、発熱層20に局所的な温度偏差を誘発することができる。かかる手段により、発熱層20は、互いに異なる温度を有することができる複数の単位発熱領域面を含むことができる。すなわち、前記発熱層20は、前記単位電極対31,32、33、34によって温度が相違するように制御されて、互いに異なる温度を有することができる単位発熱領域面を含むことができる。この際、前記単位発熱領域面は、互いに温度偏差を有することができ、前記発熱層20に対応する各単位発熱領域面は、実質的に同一の物質であってもよく、組成または組成比が異なる相違する物質であってもよい。前記単位発熱領域面が、組成または組成比が異なる相違する物質の場合、これらは、互いに隣接、すなわち、互いに離隔するか、互いに接するか、または一体型であってもよく、製造効率の面で一体型であることが好ましいが、これに制限されないことは言うまでもない。
【0040】
一電極対31,32、33、34において、正極と負極との間に位置する領域およびこれを含む発熱層20は、前記正極および前記負極に印加される電圧によって発熱し、この際、前記領域は、上述の単位発熱領域面を意味し得る。したがって、前記電極対31、32、33、34の間の隔離距離を調節することで、単位発熱領域面の形成位置およびサイズを調節することができる。
【0041】
前記発熱層と接する焼物板10の他面は、前記単位発熱領域面に対応する複数の単位焼物板領域面を含むことができる。この際、前記複数の単位焼物板領域面は、区切られていてもよく、区切られていなくてもよい。上述のように、単位発熱領域面が独立して温度の制御が可能になり、これより熱エネルギーが伝達される焼物板10は、温度が独立して制御される単位焼物板領域面を含むことができる。前記単位焼物板領域面は、互いに同一の物質であることが好ましいが、同一の物質ではないことも可能であることは言うまでもない。
【0042】
上述のように、前記発熱層20が面接触する焼物板10の他面は、単位発熱領域面と対応する位置に単位焼物板領域面が形成され得る。すなわち、焼物板10は、複数の単位焼物板領域面を含むことができ、前記単位焼物板領域面は、互いに独立して温度が制御され得る。具体的には、発熱層20は、第1単位発熱領域面~第n単位発熱領域面を含むことができ、焼物板10は、第1単位焼物板領域面~第n単位焼物板領域面を含むことができ、前記nは、2以上の自然数である。このように独立して温度の調節が可能な単位焼物板領域面を含む構造を有する場合、例えば、第1単位焼物板領域面を野菜類、第2単位焼物板領域面を海産物類、第3単位焼物板領域面を肉類、第4単位焼物板領域面をソース類などの用途に使用するような例として、対象の種類によって区切られた単位焼物板領域面を有する電気焼物板を提供することができる。しかし、上述の用途は、好ましい一例として説明しただけであって、前記用途に限定されるものではなく、各単位焼物板領域面に様々な種類の対象が収容され得ることは言うまでもない。さらには、各単位焼物板領域面当たり1種類以上の対象が収容されることもなり、例えば、2以上の対象が各単位焼物板領域面に収容されることもある。
【0043】
それだけでなく、サイズが大きい食材料対象が2以上の単位焼物板領域面を含む大面積領域にわたって収容されることもある。この場合、2以上の単位焼物板領域面の間に区切りラインが突出または窪んだ形態で段差が形成される場合、食材料対象がグリルに焼かれたような効果を付与することができる。この際、区切りラインの幅が細くなるほど、食材料対象がグリルに焼かれたような効果がより向上することができる。
【0044】
上述のように、前記単位焼物板領域面は、区切られていなくてもよく、区切られていてもよい。具体的には、前記単位発熱領域面が区切られる場合、単位焼物板領域面の間に形成される区切りラインによって区切られ得、その構造は、特に制限されるものではなく、様々な形態を有することができ、一例として、線形(縦形、横形)、同心円形、同心四角形、格子(碁盤)形、曲線形などの様々な形態として適用され得る。また、単位発熱領域面を含む発熱層20の面積は、調理容器のサイズ、対象の量によって適宜調節され得る。
【0045】
前記区切りラインは、単位焼物板領域面を区分して区切るためのものであり、区切りは、区切りラインが突出または窪んだ段差によって形成されることもあり、段差なしに識別部材(ペイント層、フィルム層など)などで区切られることもあり、好ましくは、段差によって形成されることが好適である。好ましい一例として、区切りラインが突出して形成される場合、単位焼物板領域面に収容される対象が液状である場合にも対象が他の単位焼物板領域面に移動することを防止できる面で好ましい。単位焼物板領域面が互いに離隔して形成される場合、その隔離距離、すなわち、区切りラインの幅は、特に制限されず、適宜調節され得、例えば、2~50mm、具体的には、3~30mmが挙げられる。区切りラインが突出または窪んで形成される場合、突出高さまたは窪み高さは、特に制限されるものではなく、例えば、2~50mm、具体的には、3~30mmが挙げられる。しかし、これは、具体的な一例として説明されただけであって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0046】
また、前記単位焼物板領域面は、互いの間に高さが異なる段差を有することができる。具体的な一例として、第n単位焼物板領域面よりも高いか低い高さとして第n+1単位焼物板領域面が形成され得、前記nは、1以上の自然数である。
【0047】
それだけでなく、前記焼物板10は、食材料対象の安定した収容のための面で、区切りラインと同様、単位焼物板領域面、例えば、最外側単位焼物板領域面を囲む突出ライン10sを含むことができる。前記突出ラインの形態、構造、規格、サイズなどは、前記区切りラインで説明したとおりである。
【0048】
前記発熱層20は、一体型であることが好ましいが、単位発熱領域面は、互いに離隔して区切られてもよい。単位発熱領域面の隔離距離、すなわち、離隔した線の幅は、特に制限されず適宜調節され得、例えば、1~50mm、具体的には、1~30mmが挙げられる。しかし、これは、具体的な一例として説明されただけであって、本発明がこれに制限されない。
【0049】
前記区切りライン、前記離隔ライン、前記離隔した線は、直線、曲線またはこれらが組み合わされて形成され得、ラインまたは線の中間が一部途切れたか閉鎖された形態、例えば、単位発熱領域面、単位焼物板領域面または電極30の一部が互いに離隔することなく連結される構造も可能であることは言うまでもない。単位焼物板領域面に対する一例として、単位焼物板領域面の一部が互いに離隔することなく連結される部分が排出流路として、食材料対象から排出される液状物質がスルーホール10hなどに排出されるようにすることができる。
【0050】
前記電気焼物板は、前記焼物板10または前記発熱層20に接する温度センサをさらに含むことができる。温度センサにより焼物板10の温度を実時間で測定することができ、測定された値から発熱層20に印加される電力量を調節して焼物板10の温度を制御することができる。具体的には、目的温度に予め設定された焼物板10から対象に熱エネルギーが伝達される時に瞬間的に焼物板10の温度が減少するか、その他の環境条件によって焼物板10の温度が変化し、対象に熱エネルギーを要求量で精密に伝達しにくいことがある。しかし、前記温度センサにより焼物板10の温度を実時間で測定できることによって、発熱層20が焼物板10に伝達する熱エネルギー量を実時間で補正できるようにすることで、目的温度を維持するようにするなどの精密な制御が可能である。特に、本発明による電気焼物板は、前記発熱層20が焼物板10の一面に面接触する構造を有することで、1個または少数の温度センサだけでも局所的な温度偏差なしに精密に温度の測定が可能で、焼物板10の広い面積をカバーすることができる。
【0051】
また、前記温度センサは、2以上が備えられ得、この場合、温度センサは、焼物板10または発熱層20上に所定の間隔で離隔して位置することができる。これにより、局所的な温度偏差を感知することができ、焼物板10または発熱層20が損傷したか否かなどの確認が可能であり、精密な温度の制御が可能である。
【0052】
さらには、前記温度センサが2以上使用されて、焼物板10の特定の領域面の温度を独立して制御することができる。具体的には、単位発熱領域面または単位焼物板領域面にそれぞれ温度センサが対応して備えられ得る。すなわち、前記電気焼物板は、前記単位発熱領域面または前記単位焼物板領域面に接する複数の温度センサをさらに含むことができ、前記温度センサにより前記単位発熱領域面または前記単位焼物板領域面の温度が独立して制御され得る。したがって、温度センサにより焼物板10の各単位焼物板領域面の温度を実時間で測定することができ、測定された値から各単位発熱領域面または電極30に印加される電力量を調節して、焼物板10の各単位焼物板領域面の温度を独立して制御することができる。
【0053】
前記単位発熱領域面は、組成または組成比が同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。単位発熱領域面の組成または組成比が同一であるか、または異なっていても、上述のように、各単位発熱領域面または電極30に印加される電力量を調節して、焼物板10の各単位焼物板領域面の温度を独立して制御することができる。
【0054】
前記単位発熱領域面が、組成または組成比が異なる場合、前記単位発熱領域面ごとに電気エネルギーから熱エネルギーに変換する熱転換効率が異なることで、前記単位発熱領域面にそれぞれ対応する焼物板10の特定の領域面の温度が自動変化するようにすることができる。例えば、熱転換効率が高い単位発熱領域面に対応する焼物板10の領域面は、熱転換効率が低い単位発熱領域面に対応する焼物板10の領域面よりも高い温度を維持する。したがって、発熱層20に印加される電力量の調節なく、または発熱層20に印加される電力量が同一でも焼物板10の領域面ごとに異なる温度を付与することができる。前記単位発熱領域面の組成または組成比が異なるようにする手段として、後述する発熱組成物の組成または組成比を異ならせて発熱組成物から発熱層20が形成されることで可能になる。
【0055】
前記温度センサから前記単位焼物板領域面または単位発熱領域面の温度情報を受信し、前記単位発熱領域面または電極30に印加される電力量を独立して調節して、前記単位焼物板領域面の温度を独立して制御する制御部をさらに含むことができる。温度センサから測定された各温度値からユーザが単位焼物板領域面の温度を調節するようにするか、または自動的に単位焼物板領域面の温度を調節するようにする様々な制御手段が使用され得る。かかる制御部の具体的な構造および備えられる位置は、広く公知の技術であり、公知の技術を参考すれば良く、例えば、電気焼物板の内部、外部または外部と離れて備えられてもよく、これに制限されないことは言うまでもない。例えば、制御部は、アナログ型、デジタル型またはこれらの混合型であってもよく、また、ユーザが簡単に制御するようにする物理調節部がさらに備えられ得る。前記物理調節部は、ボタン式、回転式などの機械的形態を有するか、電子式などの様々な形態に具現され得る。また、場合に応じて、公知の手段により、焼物板10から伝導される熱を最小化できる熱伝導減少部材などがさらに備えられてもよい。それだけでなく、前記電気焼物板は、前記温度センサから受信した温度値を表示するディスプレイ部をさらに備えることができる。ディスプレイ部の具体的な構造および備えられる位置は、広く公知の技術であり、公知の技術を参考すれば良く、例えば、電気焼物板の外面または外部と離れて備えられてもよく、これに制限されないことは言うまでもない。
【0056】
前記温度センサは、接触式センサ、非接触式センサまたはこれらの両方が使用され得るが、好ましくは、接触式センサであることが、温度制御の精度を著しく向上させる面で好適である。具体的には、温度センサは、その種類が特に制限されず、一例として、半導体(Semiconductor)型、熱電対(Thermocouple)型、抵抗温度センサ(Resistance temperature detector、RTD)型、NTCサーミスタ(NTC Thermistor)型などが挙げられる。
【0057】
前記電気焼物板は、前記電極30に電力を印加する電源部をさらに含むことができる。この際、電源部は、電気エネルギーを供給することができる手段として、既に公知のものであるため制限されない。電源部の具体的な構造および備えられる位置は、広く公知の技術であり、公知技術を参考すれば良く、例えば、電気焼物板の内部、外面または外部と離れて備えられてもよく、これに制限されないことは言うまでもない。
【0058】
前記電極30は、伝導性のある公知の電極30の材料であればよく、通常、電解銅箔、圧延銅箔、銅箔などの銅系電極30が主に使用され得るが、その他にも、様々な金属または伝導性のある物質が使用され得る。また、電極30の形態および構造も伝導性があれば良いため、制限されない。電極30の厚さも適当な耐久性を有することができるほどであれば適宜設定され得るため、制限されず、例えば、1~1,000μmが挙げられる。しかし、これは、具体的な一例として説明されただけであって、本発明はこれに必ずしも制限して解釈されるものではない。
【0059】
前記電極30は、正極31a、32a、33a、34aおよび負極31b、32b、33b、34bとして電極対で発熱層20に接することができる。すなわち、電極30は、単位発熱領域面にそれぞれ接する複数の単位電極対31,32、33、34を含むことができる。具体的には、第1単位電極対31a、31bは、互いに離隔して第1単位発熱領域面21に接して備えられ得、第2単位電極対32a、32bは、互いに離隔して第2単位発熱領域面22に接して備えられ得、第3単位電極対33a、33bは、互いに離隔して第3単位発熱領域面23に接して備えられ得、第4単位電極対34a、34bは、互いに離隔して第4単位発熱領域面24に接して備えられ得る。この際、前記単位電極対31,32、33、34は、互いに独立して電源部から電力が印加され得る。すなわち、電源部からそれぞれ異なる電力量の電気エネルギーが単位電極対31,32、33、34に印加され得る。
【0060】
具体的な一例として、電極対31,32、33、34の正極または負極は両端が繋がっていない形態であってもよく、両端が繋がった閉鎖した形態であってもよい。正極または負極が閉鎖した形態の場合、すなわち、両端が繋がった場合、両端が繋がって形成される内部の空間に対電極(正極または負極)が位置することができる。かかる構造を有する場合、より効果的な熱効率および性能を有することができる。より具体的には、図9に図示されているように、閉鎖した曲線を有するリング状の電極(正極または負極)と、前記電極の内部に対電極(負極または正極)が位置することができる。
【0061】
前記電極30は、発熱層20と接して電気エネルギーが印加され得ると、その形態、構造および形成方法は、特に制限されず、一例として以下のような方法が例示され得る。具体的な一例として、焼物板10の一面に電極30が形成された後、発熱層20を形成するための発熱組成物が前記電極30を覆って塗布される方法または焼物板10の一面に前記発熱組成物が塗布されて発熱層20が形成された後、電極30が前記発熱層20に形成される方法などが挙げられる。この際、電極30が焼物板10または発熱層20に形成(接合)される方法は、発熱組成物が硬化して発熱層20が形成される過程での接合特性によるものであってもよく、公知の伝導性接着組成物によって接合されるものであってもよい。伝導性接着組成物の一例として、カーボンナノチューブ-銀複合体を含むエポキシ樹脂組成物が挙げられる。しかし、これは、好ましい一例として説明されただけであって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0062】
本発明による電気焼物板は、熱線である発熱部が焼物板10に形成された従来の電気焼物板とは異なり、発熱部が層として焼物板10の一面に直接面接触して存在することで、従来と比較して、焼物板10と発熱部との接触面積が大きく、高い熱エネルギーを焼物板10に迅速に印加することができる。具体的な一例として、本発明の一例による電気焼物板は、下記関係式1を満たすことができる。下記関係式1中、Aは、焼物板10と接する発熱層20の面積であり、Aは、焼物板10の全面積である。ここで、「焼物板10の全面積」は、単位面積当たり熱伝導率が類似しているか実質的に同一である、熱が伝導される焼物板10の全面積を意味し得、具体的には、熱エネルギーが伝達される対象が収容される全領域に対応する焼物板10の全面積、すなわち、前記単位焼物板領域面の全面積を意味し得る。
【0063】
[関係式1]
0.5≦A/A≦1
【0064】
熱線である発熱部が焼物板10に形成された従来の電気焼物板は、熱線と焼物板10との接着手段として接合組成物が使用され、熱線と焼物板10との間に離隔空間が存在する部位があるか、初期に前記部位がなくても長期間使用されることによって前記離隔空間が以降形成される確率が高い。したがって、従来の熱線を用いた電気焼物板は、非常に低い熱効率を有することは言うまでもなく、昇温速度が非常に低いなどの限界がある。しかし、本発明による電気焼物板は、前記発熱組成物に形成される発熱層20を含むことで、焼物板10と発熱層20が直接面接合して高い熱効率を有することは言うまでもなく、昇温速度が非常に高いという効果がある。
【0065】
本発明による電気焼物板は、前記発熱組成物で発熱層20が焼物板10の一面に面接触して形成され、形成(製造)過程で、焼物板10の一面が平坦でないか滑らかでないなどの表面粗さがある程度高い状態でも高い密着力および接合力で形成される。したがって、発熱層20と焼物板10との離隔空間が実質的にないことによって、高い熱効率および反応速度を具現することができる。一例として、発熱層20が面接触しなければならない焼物板10の一面が100~1,000μmの表面粗さは有しても、高い密着力および接合力で、発熱層20と焼物板10との離隔空間を形成することなく製造可能である。
【0066】
前記焼物板10および前記発熱層20の厚さは、要求目的および規模に応じて適宜調節され得る事項であるが、各厚さは、後述する範囲の平均厚さを有することが好ましい。
【0067】
前記発熱層20の平均厚さは、10μm~2mmであり得る。これを満たす場合、薄過ぎる厚さによって高電圧が求められる問題および厚過ぎる厚さによって発熱層20に亀裂が発生するか、シート抵抗が大幅に低くなって発熱が現実的に難しいという問題を防止することができる。
【0068】
前記焼物板10の平均厚さは、5~50mm、具体的には、5~30mmであってもよい。これを満たす場合、薄過ぎる厚さによって保温性が低下し、外部へと熱が簡単に損失されるという問題および厚過ぎる厚さによって長い予熱時間および電力消耗が大きくなるという問題を最小化することができる。
【0069】
前記焼物板10の材質は、熱エネルギーが伝達される対象の種類に応じて適宜調節され得る。具体的には、5~350℃で長期間耐えられる耐熱性を有し、発熱層20によって熱伝導が可能な物質であれば特に制限されない。
【0070】
前記焼物板10の種類として、金属系、セラミック系、炭素系および高分子系から選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むものが使用され得る。前記金属系の具体的な一例として、ステンレス、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウムおよびこれらの合金などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。前記セラミック系の具体的な一例として、花崗岩、大理石、火山石、玉石、角閃石などの各種の岩石類または鉱物類;ガラス、パイレックス(登録商標)、石英、陶磁器などの鉱物由来の塑性類と、Ti、Mg、Cu、Au、Ag、Cr、Pt、Fe、AlおよびSiなどから選択される金属の酸化物類;などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。前記炭素系の具体的な一例として、黒鉛、カーボンナノチューブ、炭素繊維、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(Diamond-like carbon、UDC)およびグラフェンなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。前記高分子系の具体的な一例として、合成高分子類、天然高分子類、木材類および紙などのパルプ類などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。前記焼物板10は、通常、食材料を焼くことができ、食材料を焼くことができる程度の十分な耐熱性を有するものであれば特に制限されないが、上述の岩石類または鉱物類が使用されることが、食材料の味をより向上させる面で好ましい。しかし、これは、具体的な一例として説明されただけであって、熱エネルギーが伝達される対象の具体的な種類によって適宜調節され得るため、本発明はこれに必ずしも制限して解釈されるものではない。
【0071】
前記焼物板の形態は、制限されず、円形、楕円形、n角形(nは、3以上)、曲面と平面を有する形態など、様々な形態を有することができることは言うまでもない。
【0072】
前記電気焼物板は、発熱層20および/または電極30を覆う絶縁膜をさらに含むことができる。絶縁膜は、発熱層20および/または電極30を覆い、求められていない経路に電気が流れることを防止することができるものであって、電気抵抗が高いものが好ましく、その具体的な種類としては、公知の文献を参考にすれば良い。具体的な一例として、通常知られている絶縁ペーストを塗布し硬化して絶縁層を発熱層20および電極30上に形成することができる。前記絶縁ペーストの具体的な例として、絶縁セラミック粉末および有機バインダーを含むことができ、25℃で1,000~80,000cpsの粘度を有するものが挙げられる。しかし、これは、好ましい一例として説明されただけであって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0073】
前記発熱層20に印加される電圧は発熱層20の厚さ、電極30の間の隔離距離などの様々な条件によって制御され得、目的温度に逹することができる程度であれば適宜調節され得、例えば、5~240Vであってもよいが、これに制限されないことは言うまでもない。具体的には、本発明の一例による電気焼物板は、電圧が50~70V印加されるときに、最初の10分間8~30℃/minの昇温速度を有することができる。また、発熱層20の組成を調節することで、12Vの低電圧のDC電源としても使用可能な効果がある。
【0074】
上述のように、本発明による電気焼物板は、発熱層20が焼物板10と面接触して、前記発熱層がカーボンナノチューブおよびケイ素系接着剤を含む発熱組成物によって形成されることで上述の効果が具現される。
【0075】
また、前記発熱層20は、その組成または組成比によって熱転換効率が異なるようにすることができ、これにより、各単位発熱領域面ごとに互いに異なる温度を自動維持することができるという効果がある。
【0076】
以下、前記発熱層20と、これを形成する発熱組成物の組成/組成比およびその形成方法についてより具体的に説明する。
【0077】
前記発熱組成物は、カーボンナノチューブおよびケイ素系接着剤を含む。
【0078】
前記カーボンナノチューブ(carbon nano tube、CNT)は、通常知られているものを使用すればよい。カーボンナノチューブの具体的な例として、単一壁カーボンナノチューブ(Single wall CNT)、二重壁カーボンナノチューブ(Double wall CNT)および多重壁カーボンナノチューブ(Multi wall CNT)などが挙げられ、これらを二つ以上含むこともできる。カーボンナノチューブの平均直径および平均長さは、特に制限されず、一例として、それぞれ0.9~3.0nmおよび0.1~30μmであってもよい。しかし、これは、具体的な一例として説明されただけであって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0079】
前記ケイ素系接着剤は、ケイ素(Si)原子と酸素(O)原子が交互になっているポリシロキサン主鎖を有する高分子であってもよく、主に、それぞれのケイ素原子に通常2個のアルキル基(メチル、エチル、プロピルなど)またはフェニル基(-C)などの有機原子団が結合している構造を有することができる。具体的な一例として、ケイ素系接着剤は、ポリシロキサン主鎖に水素、ヒドロキシ基、メチル基および/またはフェニル基が結合し得る。この際、ポリシロキサン主鎖、すなわち、SiOの含量は、全体ケイ素系接着剤の全重量に対して45~65重量%、好ましくは47~63重量%であることが好ましい。
【0080】
好ましい一例として、前記ケイ素系接着剤は、官能基のヒドロキシ基を有するシラノール(silanol)基を有することが好適であり、好ましくは、ケイ素系接着剤の全重量に対して0.1~10重量%、より好ましくは1~6重量%であることが好適である。これを満たす場合、焼物板と発熱層20の接合特性をより向上させることができ、熱伝導率をさらに向上させることができ、乾燥性、強度、柔軟性、加工性の低下を防止することができる。しかし、これは、好ましい一例として説明されただけであって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0081】
好ましい一例として、前記ケイ素系接着剤は、熱安定性をさらに向上させるために、メチル基とフェニル基の比率が所定の範囲に属することが好ましい。具体的には、前記メチル基とフェニル基の比率は、メチル基1モル比に対してフェニル基0.3~2.5モル比、好ましくはメチル基1モル比に対してフェニル基0.4~2.0モル比であることが好ましい。これを満たす場合、電気焼物板、具体的には、焼物板10の耐久性をより向上させることができ、より高い温度で長期間使用可能であり、急激な温度の変化による焼物板の耐久性の低下を減少させることができる。また、機械的強度および耐熱性の低下と撥水性および加工性の低下を防止することができる。しかし、これは、好ましい一例として説明されただけであって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0082】
前記ケイ素系接着剤は、加熱によって官能基間の結合が発生して硬化され得、好ましくは、架橋度55~80%、重量平均分子量1,000~400,000であることが、加工性および機械的な物性の面で好ましい。しかし、これは、好ましい一例として説明されただけであって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0083】
前記組成物の組成比は、特に制限されるものではないが、好ましくは、カーボンナノチューブ1~50重量%およびケイ素系接着剤1~30重量%、より具体的には、カーボンナノチューブ3~40重量%およびケイ素系接着剤2~20重量%を含むことができる。この際、前記組成物は、有機溶媒をさらに含むことができ、その含量は、残量として使用され得る。
【0084】
前記有機溶媒は、制限されず、一例として、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、アニリン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールエチルエーテルおよびテルピネオールなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0085】
好ましい一例において、前記発熱組成物は、バインダーおよび分散剤などから選択されるいずれか一つ以上をさらに含むことが好ましい。前記バインダーが発熱組成物に含まれる場合、発熱組成物の加工性を向上させ、発熱組成物が焼物板10に塗布されて発熱層20が形成される場合、この過程で、焼物板10との密着性がより向上することができる。
【0086】
前記バインダーは、製造方法などが限定されないが、所定の範囲の粘度を有することが、発熱組成物の塗布性を向上させる面で好ましい。具体的な一例として、前記バインダーは、25℃で10~50,000cps(centipoise)の粘度を有することができる。
【0087】
前記バインダーは、エチルセルロースおよびニトロセルロースなどから選択されるいずれか一つ以上の有機バインダーを含むことができる。かかる有機バインダーは、高温に強く、接着および耐久性に優れるだけでなく、相対的に低い電圧でも効率的に発熱可能であるという効果がある。しかし、これは、好ましい一例として説明されただけであって、本発明はこれに必ずしも制限して解釈されるものではない。
【0088】
前記バインダーが発熱組成物に含まれる場合、発熱組成物の全重量に対して1~20重量%、好ましくは3~15重量%含まれることが好ましい。しかし、これは好ましい一例として説明されただけであって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0089】
前記分散剤は、アミノ含有オリゴマーまたはポリマーのホスホラスエステル塩;リン酸のモノエステルまたはジエステル;酸性ジカルボン酸モノエステル;ポリウレタン-ポリアミン付加物;およびポリアルコキシル化モノアミンまたはジアミン;などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができるが、これに本発明が制限されないことは言うまでもない。
【0090】
前記分散剤が組成物に含まれる場合、組成物の全重量に対して1~20重量%、好ましくは2~10重量%で含まれたことが好ましい。しかし、これは、好ましい一例として説明されただけであって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0091】
好ましい一例において、前記発熱組成物がバインダー、分散剤および有機溶媒をさらに含む場合、その組成比は、カーボンナノチューブ1~50重量%、ケイ素系接着剤1~30重量%、有機バインダー1~20重量%、分散剤1~20重量%および有機溶媒1~90重量%を含むことが好ましい。しかし、これは、好ましい一例として説明されただけであって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0092】
前記発熱層20は、その形成方法が制限されず、一例として、カーボンナノチューブおよびケイ素系接着剤を含む発熱組成物が焼物板10の一面に塗布されて形成される方法、前記発熱組成物に製造されたフィルムが前記焼物板10の一面に接合されて形成される方法などの様々な方法がある。具体的には、発熱層20の形成方法は、発熱組成物を焼物板10の一面にコーティングして硬化する方法、発熱組成物を硬化して製造されたフィルムを焼物板10の一面に付着する方法などがある。コーティングは、公知の様々な手段を用いることが好ましく、一例として、スプレー法、ディップコーティング法、塗布法など、様々な方法が挙げられる。硬化は、熱硬化、自然硬化、光硬化などの公知の様々な方法を使用することができ、発熱組成物の硬化に適する方法を使用すれば良い。また、コーティングを2回以上行ってもよく、フィルムを2段以上さらに積層して発熱層20を形成することもできる。
【0093】
前記発熱組成物は、焼物板10に発熱層20が形成される前にスラリー状またはフィルム状であってもよい。具体的には、発熱組成物が焼物板10の一面に塗布されて発熱層20が形成される場合、前記発熱組成物は、スラリー状であってもよい。発熱組成物がスラリー状である場合、焼物板10に発熱層20が形成される過程で、発熱組成物は、固体と液体の中間硬度を有する状態の粘度を有することができる。
【0094】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらは本発明をより詳細に説明するためのものであって、本発明の権利範囲は下記の実施例によって限定されるものではない。
【0095】
[製造例1]
<発熱組成物の製造>
三角フラスコにカーボンナノチューブ((株)ハンファナノテック)1.5gを入れ、有機溶媒であるアルファ-テルピネオール(α-terpineol)33.75g、エチルセルロース(Ethylcellulose)1.25g、ケイ素系接着剤(RSN-0806、ダウコーニング)5gおよび分散剤(DISPERBYK-192、BYK)0.75gを投入した。次いで、前記三角フラスコを撹拌機に装着して60分間撹拌して十分に分散させ、発熱組成物を製造した。
【0096】
[実施例1]
300mm×195mmの面積と20mmの厚さを有する石板(Jangsu Gopdol)を焼物板として準備した。焼物板の表面をエタノールで洗浄し、250℃で30分間熱処理して、焼物板の表面に存在し得る異物などを除去した。
【0097】
前記熱処理した焼物板の下面に前記製造例1で製造された発熱組成物を湿潤厚さ600μmで塗布し、300℃で30分間熱硬化し、発熱層を焼物板に面コーティングした。かかるコーティング過程をもう一度繰り返して、最終的に湿潤厚さ1.2mmの発熱層が焼物板の下面に面コーティングされた電気焼物板を製造した。この際、前記発熱層の面積は220mm×160mmであった。
【0098】
また、前記発熱層の両端部にそれぞれ銅電極一対を接合し、この際、図7に図示されているように発熱層の最外側端部から内側の方向に1cmになる幅の銅電極が両端部を長さ方向として線状で接合された。銅電極と発熱層との接合は、エポキシシルバーペースト(ELCOAT,CANS,Cat.No.:A-200)を使用した。
【0099】
前記銅電極および発熱層の全面積の断熱および絶縁のために、絶縁ペースト(AccuPasteTM Insulating Paste、(株)バイオニア、Cat.No.:TC-5000)を銅電極および発熱層に塗布し、絶縁膜を形成した。
【0100】
[実施例2]
実施例1で厚さが20mmである焼物板の代わりに厚さが15mmである焼物板を使用した以外は、実施例1と同様に行った。
【0101】
[実験例1]
<電気焼物板の電圧による昇温速度の評価>
実施例1で製造された電気焼物板の電圧による昇温速度をテストするために、電気焼物板の電極の両端にスライダックスを連結して印加電圧をそれぞれ50、60および70V印加し、熱画像カメラ(TiS50、FLUKE)で電気焼物板の石板の温度を測定した。
【0102】
結果、図2に図示されているように、所定の電圧を印加した時に石板が均一に発熱することを確認することができ、面積による温度偏差の発生を実質的に防止することができた。
【0103】
図3は各印加電圧で時間による石板の温度を示すグラフであり、これより印加電圧が増加するほど石板の温度も増加することを確認することができる。具体的には、50Vで電圧が印加された場合、240℃に逹する時間が約43分、60Vで電圧が印加された場合、約18分、70Vで電圧が印加された場合、約12分が必要となった。0~10分までの昇温速度を比較すると、50Vの印加電圧で約9.5℃/min、60Vの印加電圧で約13.1℃/min、70Vの印加電圧で約18℃/minの昇温速度を有することを確認した。
【0104】
[実験例2]
<電気焼物板の電圧による温度維持の評価>
実施例1で製造された電気焼物板の温度が電圧によって一定に維持されるかを評価するために、70Vの印加電圧で10分間維持した後、40Vに減少させて計60分間電圧を印加し、熱画像カメラ(TiS50、FLUKE)で石板の温度を測定した。
【0105】
結果、図4に図示されているように、約45分後、220℃を維持することを確認した。これより実施例1で製造された電気焼物板は、印加電圧により精密に温度を制御できることが分かる。
【0106】
[実験例3]
<焼物板の厚さによる昇温速度の評価>
電気焼物板の焼物板の厚さによる昇温速度の評価のために、実施例1および実施例2で製造された厚さのみ互いに異なる各電気焼物板に70Vの電圧を印加し、240℃まで昇温する時間を測定した。
【0107】
結果、図5に示されているように、焼物板の厚さが20mmである場合には240℃まで達する時間が約14分程度かかり、焼物板の厚さが15mmである場合には240℃まで逹する時間が10分前後と昇温速度がより速くなることが分かる。実施例1および実施例2に対する0~10分までの昇温速度を比較すると、焼物板の厚さが20mmである場合、18℃/minの昇温速度を有し、焼物板厚さが15mmである場合、24℃/minの昇温速度を有することが分かる。そのため、電気焼物板の焼物板厚さがより薄くなることによって焼物板の予熱時間がより短くなることが分かる。
【0108】
[実験例4]
<従来熱線ヒータを用いた電気焼物板との比較評価>
実施例1で製造された電気焼物板と対照群として従来の熱線ヒータを用いた電気焼物板との熱効率特性を評価するために、所定の電圧で時間による焼物板の温度の変化を熱画像カメラ(TiS50、FLUKE)で測定した。
【0109】
従来の熱線ヒータを用いた電気焼物板は、熱線ヒータを設置し、その上に焼物板をおいて加熱する方式である。かかる従来の電気焼物板は、熱線ヒータだけ発熱するため、焼物板の全体を昇温させるために時間が長くかかることを確認することができた。
【0110】
具体的には、図6に図示されているように、従来の電気焼物板は、240℃に逹することができず、約180℃を維持することを確認した。また、最大温度に逹する時間が25分を超えることを確認することができた。一方、実施例1および実施例2で製造された電気焼物板は、従来の熱線ヒータを用いた電気焼物板に比べて、240℃に逹する昇温速度が著しく高いことを図6から確認することができる。
【0111】
したがって、本発明による電気焼物板は、低電圧でも、熱線ヒータ方式の従来の電気焼物板に比べて、目標温度に逹する速度が相対的に速く、非常に優れた熱効率を有することが分かる。
【符号の説明】
【0112】
10 焼物板、
10s 突出ライン
10h スルーホール
20 発熱層
30 電極
31a(31b) 第1単位電極
32a(32b) 第2単位電極
33a(33b) 第3単位電極
34a(34b) 第4単位電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11