(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】電子機器及び冷却モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/427 20060101AFI20230413BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20230413BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20230413BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H01L23/46 B
F28D15/02 L
F28D15/02 101M
H01L23/46 C
H05K7/20 R
H05K7/20 B
H05K7/20 H
(21)【出願番号】P 2021167313
(22)【出願日】2021-10-12
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 諒太
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓郎
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-072161(JP,A)
【文献】特開2012-141082(JP,A)
【文献】特開2018-174184(JP,A)
【文献】特開2001-024122(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105364(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36-23/473
F28D 15/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられた発熱体と、
前記筐体内に設けられ、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、
を備え、
前記冷却モジュールは、
複数本が並列されると共に、該並列された全体として前記発熱体よりも幅広に構成され、少なくとも1本が前記発熱体とオーバーラップするように配置された第1ヒートパイプと、
前記第1ヒートパイプと直交した姿勢で該第1ヒートパイプと前記発熱体との間に積層されると共に、第1面が前記発熱体と接続され、第2面が前記第1ヒートパイプと接続された第2ヒートパイプと、
2枚の金属プレートの間に形成した密閉空間に作動流体を封入したプレート型のベーパーチャンバと、
を有
し、
前記第2ヒートパイプの両端部は、前記第1ヒートパイプの外側にはみ出した状態で、前記ベーパーチャンバと接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記ベーパーチャンバは、一面に前記第1ヒートパイプが接続されると共に、他面に前記第2ヒートパイプが接続され、
前記ベーパーチャンバは、孔部を有し、
前記第2ヒートパイプは、前記孔部を跨ぐように配置されると共に、前記孔部内で前記第2面が前記第1ヒートパイプと接続され、且つ前記孔部を跨いだ前記両端部が前記ベーパーチャンバと接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の電子機器であって、
前記冷却モジュールは、
送風ファンと、
前記送風ファンの排気口に面して配置された冷却フィンと、
をさらに有し、
前記冷却フィンには、前記第1ヒートパイプが接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項
3に記載の電子機器であって、
前記第2ヒートパイプは、前記冷却フィンに接続されていない
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記第2ヒートパイプは、複数本が並列され、
各第2ヒートパイプの前記第1面は、いずれも前記発熱体と接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
冷却モジュールであって、
複数本が並列された第1ヒートパイプと、
前記第1ヒートパイプと直交した姿勢で積層された第2ヒートパイプと、
送風ファンと、
前記送風ファンの排気口に面して配置され、前記第1ヒートパイプが接続された冷却フィンと、
2枚の金属プレートの間に形成した密閉空間に作動流体を封入したプレート型のベーパーチャンバと、
を備え
、
前記第2ヒートパイプの両端部は、前記第1ヒートパイプの外側にはみ出した状態で、前記ベーパーチャンバと接続されている
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の冷却モジュールであって、
前記ベーパーチャンバは、一面に前記第1ヒートパイプが接続されると共に、他面に前記第2ヒートパイプが接続され、
前記ベーパーチャンバは、孔部を有し、
前記第2ヒートパイプは、前記孔部を跨ぐように配置されると共に、前記孔部内で前記第1ヒートパイプと接続され、且つ前記孔部を跨いだ前記両端部が前記ベーパーチャンバと接続されている
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項8】
請求項6
又は7に記載の冷却モジュールであって、
前記第2ヒートパイプは、前記冷却フィンに接続されていない
ことを特徴とする冷却モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却モジュールを備えた電子機器及び冷却モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPUやGPU等の発熱体と、これら発熱体を冷却するための冷却モジュールとを搭載している。冷却モジュールとしては、ヒートパイプを備えた構成が一般的である(例えば、特許文献1参照)。ヒートパイプは、発熱体が発生する熱を効率よく吸熱し、冷却フィン及び送風ファンまで効率よく輸送することを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成のように、ヒートパイプは、複数本を並列して用いることで、その熱輸送量を高めることができる。ところが、このような構成では、ヒートパイプの幅や並列本数によっては、並列したヒートパイプがCPU等の発熱体よりも幅広となる場合がある。この場合、発熱体から離れた位置にあるヒートパイプは、発熱体に近い位置にあるヒートパイプよりも受熱量が小さくなり、並列したヒートパイプ全体としての熱効率が低下する要因となる。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、複数本のヒートパイプを並列して用いる場合であっても高い冷却効率を得ることができる冷却モジュールを備えた電子機器及び冷却モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、前記筐体内に設けられ、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、を備え、前記冷却モジュールは、複数本が並列されると共に、該並列された全体として前記発熱体よりも幅広に構成され、少なくとも1本が前記発熱体とオーバーラップするように配置された第1ヒートパイプと、前記第1ヒートパイプと直交した姿勢で該第1ヒートパイプと前記発熱体との間に積層されると共に、第1面が前記発熱体と接続され、第2面が前記第1ヒートパイプと接続された第2ヒートパイプと、を有する。
【0007】
本発明の第2態様に係る冷却モジュールは、複数本が並列された第1ヒートパイプと、前記第1ヒートパイプと直交した姿勢で積層された第2ヒートパイプと、送風ファンと、前記送風ファンの排気口に面して配置され、前記第1ヒートパイプが接続された冷却フィンと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、複数本のヒートパイプを並列して用いる場合であっても高い冷却効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、冷却モジュールを斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、冷却モジュールを斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、第1ヒートパイプグループと第2ヒートパイプグループによる熱輸送動作を模式的に示す説明図である。
【
図5】
図5は、第2ヒートパイプグループを備えた冷却モジュールと、第2ヒートパイプグループを備えない冷却モジュールとの冷却能力の実験結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、変形例に係る冷却モジュールを示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器及び冷却モジュールについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。本実施形態に係る電子機器10は、ディスプレイ筐体12と筐体14とをヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。電子機器は、ノート型PC以外、例えばデスクトップ型PC、タブレット型PC、又はゲーム機等でもよい。
【0012】
ディスプレイ筐体12は、薄い扁平な箱体である。ディスプレイ筐体12には、ディスプレイ18が搭載されている。ディスプレイ18は、例えば有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)や液晶で構成される。
【0013】
以下、筐体14及びこれに搭載された各要素について、筐体14の上面に搭載されたキーボード20を使用する姿勢を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向(筐体14の厚み方向)を上下、と呼んで説明する。これらの各方向は説明の便宜上のものであり、実際の製品の方向は筐体14の使用状態等によって変化することは言うまでもない。
【0014】
筐体14は、薄い扁平な箱体である。筐体14の上面には、キーボード20及びタッチパッド21が設けられている。筐体14の後端部は、ヒンジ16を用いてディスプレイ筐体12と連結されている。筐体14の内部には、冷却モジュール22と、CPU24及びGPU25を実装したマザーボード26(
図4参照)と、バッテリ装置とが搭載されている。筐体14の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品が搭載されている。
【0015】
CPU(Central Processing Unit)24は、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う。GPU(Graphics Processing Unit)25は、3Dグラフィックス等の画像描写に必要な演算を行う。
図4中の参照符号25aは、GPU(ダイ)25が実装されるパッケージ基板である。
【0016】
CPU24及びGPU25は、筐体14内に搭載された電子部品中で最大級の発熱量の発熱体である。そこで、冷却モジュール22は、CPU24及びGPU25が発生する熱を吸熱及び拡散し、さらに筐体14外へと排出する。冷却モジュール22は、CPU24等を実装したマザーボードの下面(CPU24等の実装面の下)に積層される。
【0017】
図2は、冷却モジュール22を斜め上方から見た斜視図である。
図3は、冷却モジュール22を斜め下方から見た斜視図である。
【0018】
図2及び
図3に示すように、冷却モジュール22は、3本1組で構成された第1ヒートパイプグループ27と、3本1組で構成された第2ヒートパイプグループ28と、2本1組で構成された第3ヒートパイプグループ29とを備える。さらに冷却モジュール22は、左右に並んだベーパーチャンバ30,31と、左右一対の冷却フィン32,33と、左右一対の送風ファン34,35とを備える。
【0019】
図2及び
図3に示すように、ベーパーチャンバ30,31は、熱拡散用のプレート状部材である。2つのベーパーチャンバ30,31は大きさや形状が異なるが、基本的な構成は共通している。ベーパーチャンバ30,31は、2枚の薄い金属プレート(例えば銅又はアルミニウム)の間に密閉空間を形成し、この密閉空間に作動流体を封入したプレート型の熱輸送デバイスである。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。作動流体は、密閉空間内で相変化を生じながら流通する。密閉空間内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィックが配設される。ベーパーチャンバ30,31は、銅やアルミニウム等のプレートで代用してもよい。
【0020】
一方のベーパーチャンバ30は、CPU24と上下方向にオーバーラップしている。このベーパーチャンバ30の上面は、受熱板38を介してCPU24と接続される(
図2参照)。受熱板38は、銅やアルミニウム等の熱伝導率が高い金属で形成されたプレートである。受熱板38は省略してもよいし、熱伝導グリース等のサーマルインターフェースマテリアル(TIM)で代用してもよい。
【0021】
他方のベーパーチャンバ31は、GPU25の周囲を囲むように配置されている。このベーパーチャンバ31は、GPU25が挿入される矩形状の孔部31aを有する。
図2及び
図3中の参照符号36は、ベーパーチャンバ31の前縁部に連結され、前方に突出した銅やアルミニウムの金属プレートである。
【0022】
図2及び
図3に示すように、冷却フィン32,33は、ヒートパイプグループ27,29が輸送した熱を放熱する部品である。2つの冷却フィン32,33は大きさや形状が異なるが、基本的な構成は共通している。冷却フィン32,33は、複数のプレート状のフィンをプレートの表面で左右方向に等間隔に並べた構造である。各フィンは、上下方向に起立し、前後方向に延在している。隣接するフィンの間には、送風ファン34,35から送られた空気が通過する隙間が形成されている。冷却フィン32,33は、アルミニウムや銅のような高い熱伝導率を有する金属で形成されている。
【0023】
一方の冷却フィン32は、ベーパーチャンバ30の側部で送風ファン34の後面(排気口34a)に面して配置される。他方の冷却フィン33は、ベーパーチャンバ31の側部で送風ファン35の後面(排気口35a)に面して配置される。
【0024】
図2及び
図3に示すように、送風ファン34,35は、冷却フィン32,33を送風するためのファンである。2つの送風ファン34,35は大きさや形状が異なるが、基本的な構成は共通している。送風ファン34,35は、ファン筐体の内部に収容されたインペラをモータによって回転させる遠心ファンである。送風ファン34は、冷却フィン32の直前に配置されている。送風ファン35は、冷却フィン33の直前に配置されている。
図2及び
図3中の参照符号34b,35bは、それぞれファン筐体の下面を形成する金属カバーであり、冷却フィン32,33やヒートパイプ27a,29b等の取付台を兼用している。
【0025】
送風ファン34は、ファン筐体の上下面にそれぞれ吸気口34c,34dが開口している。送風ファン35は、ファン筐体の上下面にそれぞれ吸気口35c,35dが開口している。送風ファン34,35は、それぞれ各吸気口34c,34d,35c,35dから吸い込んだ筐体14内の空気を排気口34a,35aから排出する。排気口34a,35aからの送風は、冷却フィン32,33を通過し、放熱を促進する。
【0026】
図2及び
図3に示すように、第1ヒートパイプグループ27は、主としてGPU25の熱を冷却フィン33に輸送するためのパイプ型の熱輸送デバイスである。第1ヒートパイプグループ27は、3本の第1ヒートパイプ27a~27cを並列したものである。第1ヒートパイプグループ27を構成する第1ヒートパイプは、2本以上であればよい。
【0027】
第1ヒートパイプ27a~27cは、金属パイプを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成したものであり、金属パイプ内に形成された密閉空間に作動流体が封入されている。金属パイプの材質及び作動流体の種類は、上記したベーパーチャンバ30,31のものと同一又は同様でよい。作動流体は、密閉空間内で相変化を生じながら流通する。密閉空間内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィックが配設される。ウィックは、例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや微細流路等の多孔質体で形成される。
【0028】
第1ヒートパイプグループ27は、一部に第1ヒートパイプ27a~27cが並列した並列部27Aを有する。並列部27Aは、少なくともGPU25と上下方向にオーバーラップする位置に設けられる。並列部27Aは、3本の第1ヒートパイプ27a~27cが並列した全体幅がGPU25よりも幅広である。つまり並列部27Aは、平面視でGPU25の外側にはみ出している。
【0029】
第1ヒートパイプグループ27は、少なくとも1本の第1ヒートパイプ(例えば中央の第1ヒートパイプ27b)がGPU25とオーバーラップしていればよい。例えば
図4に示す構成例では、中央にある2本の第1ヒートパイプ27b,27cがGPU25とオーバーラップし、両端の第1ヒートパイプ27a,27dはGPU25とオーバーラップしていない。なお、
図3に示す構成例では、各第1ヒートパイプ27a~27cがGPU25とオーバーラップしている。
【0030】
第1ヒートパイプ27a~27cの大部分はベーパーチャンバ31の下面に半田付け等で接合されている。このうち、2本の第1ヒートパイプ27a,27bは、全長に亘って互いに並列し、平面視で略L字状に延在している。残りの第1ヒートパイプ27cは、平面視で略J字状に延在している。
【0031】
第1ヒートパイプ27a,27bは、前端部付近が受熱部(蒸発部)27Bとなる。第1ヒートパイプ27cは、後端部及びその周辺部が受熱部27Bとなる。つまり第1ヒートパイプグループ27は、第1ヒートパイプ27a~27cが並列した並列部27Aが受熱部27Bとなる。この受熱部27Bは、ベーパーチャンバ31の孔部31a内で第2ヒートパイプグループ28と積層され、互いに半田付け等で接合される。
【0032】
第1ヒートパイプ27a,27bは、右端部及びその周辺部が放熱部(凝縮部)27Cとなる。放熱部27Cは、冷却フィン32の下面に半田付け等で接合される。第1ヒートパイプ27cは、前端部及びその周辺部が放熱部(凝縮部)27Dとなる。放熱部27Dは、金属プレート36の下面に半田付け等で接合される。なお、第1ヒートパイプ27a,27bの前端部も金属プレート36の下面に半田付け等で接合される。
【0033】
図2及び
図3に示すように、第2ヒートパイプグループ28は、GPU25が発生する熱を第1ヒートパイプ27a~27cに均等に分配するためのパイプ型の熱輸送デバイスである。第2ヒートパイプグループ28は、3本の第2ヒートパイプ28a~28cを並列したものである。第2ヒートパイプグループ28を構成する第2ヒートパイプは、1本以上であればよい。
【0034】
第2ヒートパイプ28a~28cは、長さや経路が異なる以外、基本的な構成は上記した第1ヒートパイプ27a~27cと同一である。すなわち第2ヒートパイプ28a~28cについても、扁平に潰した金属パイプ内の密閉空間にウィックを配設し、作動流体を封入したものである。
【0035】
第2ヒートパイプ28a~28cは、それぞれ直線状に延在し、その全長で互いに並列している。第2ヒートパイプ28a~28cは、その延在方向(左右方向)が第1ヒートパイプグループ27の並列部27Aの延在方向(前後方向)と直交した姿勢とされている。換言すれば、第1ヒートパイプ27a~27cの並列部27Aでの熱輸送方向と、第2ヒートパイプ28a~28cの熱輸送方向とが互いに直交している。なお、ヒートパイプは、完全な直線に形成することは難しく、また複数本のヒートパイプを完全に平行に配置することも難しい。従って、本出願において、両パイプが直交しているとは、厳密な意味ではなく、両パイプが90度で直交している場合の他、多少の角度や向きの違いも含む概念である。
【0036】
第2ヒートパイプ28a~28cは、GPU25と第1ヒートパイプグループ27の並列部27Aとの間に積層されている。第2ヒートパイプ28a~28cは、その上面(第1面40a)が受熱板41を介してGPU25と接続される(
図2参照)。第2ヒートパイプグループ28は、これを構成する全ての第2ヒートパイプ28a~28cの第1面40aがいずれも受熱板41と当接することで、各第2ヒートパイプ28a~28cがそれぞれGPU25からの熱を効率よく受け取ることができる。受熱板41は、銅やアルミニウム等の熱伝導率が高い金属で形成されたプレートである。受熱板41は省略してもよいし、熱伝導グリース等のサーマルインターフェースマテリアルで代用してもよい。
【0037】
第2ヒートパイプ28a~28cは、その長手方向の略中央部がGPU25とオーバーラップする位置にある。つまり第2ヒートパイプ28a~28cは、GPU25と接続された長手方向の略中央部が受熱部(蒸発部)28Aとなり、長手方向の中央部以外の両端部分が放熱部(凝縮部)28Bとなる。第2ヒートパイプ28a~28cの両端は、第1ヒートパイプ27a~27cの外側にはみ出している。
【0038】
第2ヒートパイプ28a~28cは、その下面(第2面)40bが第1ヒートパイプ27a~27cの並列部27A及びベーパーチャンバ31の上面と半田付け等で接合される。第2ヒートパイプ28a~28cと第1ヒートパイプ27a~27cとは、熱伝導グリース等のサーマルインターフェースマテリアルで接続されてもよい。第2ヒートパイプ28a~28cは、孔部31aを跨ぐように配置されている。このため、第2ヒートパイプ28a~28cは、中央の受熱部28Aが孔部31a内で第1ヒートパイプグループ27の並列部27Aと接続される。
【0039】
第2ヒートパイプ28a~28cは、孔部31aを跨いだ両側の放熱部28Bがベーパーチャンバ31に半田付け等で接続されている。
【0040】
図2及び
図3に示すように、第3ヒートパイプグループ29は、主としてCPU24の熱を冷却フィン32,33に輸送するためのパイプ型の熱輸送デバイスである。第3ヒートパイプグループ29は、2本の第3ヒートパイプ29a,29bを並列したものである。第3ヒートパイプグループ29を構成する第3ヒートパイプは、1本以上であればよい。
【0041】
第3ヒートパイプ29a,29bは、長さや経路が異なる以外、基本的な構成は上記したヒートパイプ27a~27c,28a~28cと同一である。すなわち第3ヒートパイプ29a,29bについても、扁平に潰した金属パイプ内の密閉空間にウィックを配設し、作動流体を封入したものである。
【0042】
第3ヒートパイプ29aは、中央部が前側に湾曲しており、全体として左右方向に延在している。第3ヒートパイプ29bは、略M字状に湾曲している。第3ヒートパイプ29a,29bは、受熱部となる略中央部が互いに並列し、CPU24とオーバーラップした位置でベーパーチャンバ30の下面に半田付け等で接合される。第3ヒートパイプ29aは、左端部(放熱部)が冷却フィン32の半下面に田付け等で接合され、右端部(受熱部)が冷却フィン33の下面に田付け等で接合される。第3ヒートパイプ29bは、左端部(放熱部)が冷却フィン32の下面に田付け等で接合され、前端部(放熱部)が第1ヒートパイプ27aの側方でベーパーチャンバ31及び金属プレート36の下面に半田付け等で接合される。
【0043】
以上のように構成された冷却モジュール22では、CPU24が発生した熱は、ベーパーチャンバ30で吸熱及び拡散されると共に、第3ヒートパイプ29a,29bを介して冷却フィン32,33まで効率よく輸送された後、送風ファン34,35の送風によって筐体14の外部へと排出される。また、第3ヒートパイプ29bは、その前端部からベーパーチャンバ31や金属プレート36へも放熱する。
【0044】
一方、GPU25が発生した熱は、その直下に受熱板41を介して接続された第2ヒートパイプグループ28に伝達された後、各ヒートパイプ28a~28cで輸送されつつ、第1ヒートパイプグループ27に伝達される。その結果、GPU25の熱は、第1ヒートパイプ27a,27bを介して冷却フィン33まで効率よく輸送された後、送風ファン35の送風によって筐体14の外部へと排出される。また、第1ヒートパイプ27cに伝達された熱は、ベーパーチャンバ31や金属プレート36へも放熱される。
【0045】
ここで、
図4及び
図5を参照して、互いの熱輸送方向が直交配置されたヒートパイプグループ27,28による熱輸送動作及びその作用効果についてより具体的に説明する。
【0046】
図4は、第1ヒートパイプグループ27と第2ヒートパイプグループ28による熱輸送動作を模式的に示す説明図である。
図4では、第1ヒートパイプグループ27として4本の第1ヒートパイプ27a~27dを並列し、第2ヒートパイプグループ28として3本の第2ヒートパイプ28a~28dを並列した構成を例示している。
図4中に1点鎖線で示す矢印は、熱の流れを模式的に示したものである。
【0047】
図4に示すように、本実施形態に係る冷却モジュール22では、GPU25が発生した熱は、先ず受熱板41を介して第2ヒートパイプ28a~28cが効率よく吸熱する。第2ヒートパイプ28a~28cは、その下に積層された第1ヒートパイプ27a~27dと直交した姿勢で配置されている。このため、第2ヒートパイプ28a~28cは、GPU25から受けた熱を第1ヒートパイプ27a~27dの並び方向(左右方向)に沿って高効率に輸送する。この際、第2ヒートパイプ28a~28cが輸送する熱は、その下面に積層された第1ヒートパイプ27a~27dで適宜吸熱される。そして、第1ヒートパイプ27a~27dは、第2ヒートパイプ28a~28cから受けた熱を冷却フィン33等に高効率に輸送する。
【0048】
以上より、本実施形態の冷却モジュール22は、
図3及び
図4に示すように、第1ヒートパイプグループ27が複数本の第1ヒートパイプ27a~27c(27d)で構成されている。第1ヒートパイプグループ27は、全体での熱輸送量を十分に確保すると同時に、冷却フィン33や金属プレート36等の各方面に迅速に熱輸送する必要があるためである。このため、複数本が並列された第1ヒートパイプ27a~27c(27d)は、平面視でGPU25からはみ出してしまう。この部分はGPU25の熱を直接受けることができず、隣接するヒートパイプとの接触部分のみで熱を受けることとなり、熱効率が低い。
【0049】
そこで、冷却モジュール22は、第2ヒートパイプ28a~28cを備えることにより、GPU25からの熱を第1ヒートパイプ27a~27c(27d)のそれぞれに効率よく且つ均等に伝達することができる。その結果、冷却モジュール22は、複数本の第1ヒートパイプ27a~27c(27d)を用いた場合でも、各第1ヒートパイプ27a~27c(27d)がGPU25からの熱を略均等に受熱でき、全体として高い熱輸送量が得られ、高い冷却効率が得られる。
【0050】
図5は、第2ヒートパイプグループ28を備えた冷却モジュール22と、第2ヒートパイプグループ28を備えない冷却モジュールとの冷却能力の実験結果(シミュレーション結果)を示すグラフである。
図5中に実線で示すグラフ(1)は、本実施形態の冷却モジュール22でのGPU25の温度の時間変化を示す。
図5中に破線で示すグラフ(2)は、冷却モジュール22から第2ヒートパイプグループ28を除いた比較例に係る構成でのGPU25の温度の時間変化を示す。
図5において、横軸は経過時間(分)であり、縦軸はGPU25の温度(℃)である。
【0051】
グラフ(1)に示されるように、本実施形態の冷却モジュール22は、
図5中のグラフ(2)に示される比較例と比べて、時間経過に対するGPU25の温度上昇率が抑えられ、常に低温状態を維持できることが分かった。このことから、第2ヒートパイプグループ28による第1ヒートパイプグループ27への熱分配効果がGPU25の冷却に対して極めて有効であることが示された。
【0052】
すなわち、当該冷却モジュール22は、GPU25の熱を迅速に第2ヒートパイプ28a~28cで吸熱し、第1ヒートパイプ27a,27bで冷却フィン33まで輸送できる。このため、第2ヒートパイプグループ28を持たない従来の構成に比べて、本実施形態の冷却モジュール22は、GPU25の吸熱時のタイムラグが少なく、GPU25の温度上昇のスピードを抑制でき、ターボ運転時間を延長できる。その結果、当該冷却モジュール22は、GPU25のパフォーマンスを最大限に発揮させることができる。
【0053】
また、グラフ(1)に係る本実施形態の冷却モジュール22は、環境温度25℃、発生ノイズ48dB、CPU出力55W、及びGPU出力45Wの実験条件での定常運転において、CPU24の温度は60.1℃であり、GPU25の温度は59.4℃であった。一方、同一条件下、グラフ(2)に係る比較例では、CPU24の温度は59.6℃であったが、GPU25の温度は65.6℃であった。つまり当該定常運転時、本実施形態の冷却モジュール22は、比較例の構成に比べて、CPU24よりも高温になり易いGPU25の温度を6.2℃低下させることができた。なお、本実施形態の冷却モジュール22のCPU24の温度が比較例の場合よりも僅かに高温であったのは、実験による誤差の範囲であると推測できる。
【0054】
メインの熱輸送手段となる第1ヒートパイプグループ27への熱分配を行うサブの熱輸送手段となる第2ヒートパイプグループ28と同様な構成は、第3ヒートパイプグループ29に適用してもよい。この場合は、CPU24とオーバーラップする位置に、第2ヒートパイプグループ28と同様な1又は複数のヒートパイプを第3ヒートパイプ29a,29bと直交するように配置すればよい。勿論、第1ヒートパイプグループ27及び第2ヒートパイプグループ28をCPU24の冷却に用いた構成としてもよい。なお、第3ヒートパイプグループ29は必須ではない。また、第1ヒートパイプグループ27の熱輸送先は、冷却フィン以外、例えば筐体14内の低温領域としてもよい。つまり冷却フィン32,33、送風ファン34,35、ベーパーチャンバ30,31、及び金属プレート36も、冷却モジュール22や筐体14内の構成等によっては適宜省略される。
【0055】
ところで、従来、第3ヒートパイプグループ29のように、GPU25やCPU24の熱をベーパーチャンバで広げつつ、ヒートパイプで冷却フィンまで輸送する構成は提案されている。ところが、ベーパーチャンバは、ヒートパイプに比べてコストが高い。この点、本実施形態は、第2ヒートパイプグループ28で熱を広げる構成としているため、コストも抑制できる。さらにベーパーチャンバは、熱源から同心円状に熱を広げる特性を有するが、ヒートパイプは直線的に指向性を持った熱輸送を行う。このため、当該冷却モジュール22は、GPU25の熱を第2ヒートパイプ28a~28cで第1ヒートパイプ27a~27c(27d)の並列方向に迅速に広げることができ、ベーパーチャンバを用いた構成よりも熱効率が高い。
【0056】
なお、例えば、第2ヒートパイプグループ28を省略し、第1ヒートパイプを1本構成としてパイプ径を太くすることで熱輸送量を高める構成も考えられる。ところが、この場合は、第1ヒートパイプの素管径が太くなるため、扁平に潰した際の幅が広くなる。その結果、冷却フィン33の奥行(前後寸法)を大きくする必要を生じ、マザーボード26やバッテリ装置の設置スペースを圧迫する懸念がある。この点、当該冷却モジュール22は、第1ヒートパイプを幅広にしなくても高い冷却性能が得られるため、システム寸法・システムレイアウトへの影響を最小限に抑えることができるという利点もある。
【0057】
ところで、通常、ヒートパイプの両端は、封止のために潰されており、熱伝達や熱輸送にほとんど寄与しないデッドスペースとなっている。そこで、本実施形態の冷却モジュール22は、
図2~
図4に示すように、第2ヒートパイプ28a~28cの両端を第1ヒートパイプ27a~27c(27d)よりも外側にはみ出させている。その結果、第2ヒートパイプ28a~28cと第1ヒートパイプ27a~27c(27d)との間の熱伝達効率が一層向上する。なお、第2ヒートパイプ28a~28cが第1ヒートパイプ27a~27c(27d)からはみ出した部分は、ベーパーチャンバ31に接続されている。このため、第2ヒートパイプ28a~28cは、第1ヒートパイプ27a~27cと熱交換されなかった余剰の熱をベーパーチャンバ31に放熱可能となっている。
【0058】
図6は、変形例に係る冷却モジュール50を示す模式的な平面図である。
図6において、
図1~
図4に示される参照符号と同一の参照符号は、同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略する。
【0059】
図6に示すように、冷却モジュール50は、4本の第1ヒートパイプ27a~27dを1組とする第1ヒートパイプグループ27を左右対称に2セット備える。そして、冷却モジュール50は、左右の第1ヒートパイプグループ27の並列部27A,27Aを跨ぐように第2ヒートパイプグループ28を構成する第2ヒートパイプ28a~28cを積層している。この場合も、第2ヒートパイプグループ28は、CPU24又はGPU25と第1ヒートパイプグループ27,27との間に積層されている。CPU24とGPU25は隣接して並べて配置してもよい。
【0060】
冷却モジュール50では、第1ヒートパイプグループ27の本数が多いため、特に第1ヒートパイプ27b~27dはCPU24又はGPU25から遠く離間している。しかしながら、このような冷却モジュール50においても、第2ヒートパイプグループ28の熱分配効果により、各第1ヒートパイプ27a~27dをいずれも有効に活用した熱輸送が可能となる。
【0061】
なお、
図6では、図中で左端の第1ヒートパイプ27dを送風ファン35の側部まで延出し、送風ファン35の側部に設けた第2排気口35eに面した冷却フィン52に接合した構成も例示している。すなわち、
図2及び
図3に示す冷却モジュール22においても、送風ファン34,35の側部に第2排気口及び冷却フィンを設け、例えば冷却フィン33に接続されない第1ヒートパイプ27cをここに接続してもよい。
【0062】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
10 電子機器
14 筐体
22,50 冷却モジュール
24 CPU
25 GPU
27 第1ヒートパイプグループ
27a~27d 第1ヒートパイプ
28 第2ヒートパイプグループ
28a~28c 第2ヒートパイプ
32,33,52 冷却フィン
34,35 送風ファン
【要約】
【課題】複数本のヒートパイプを並列して用いる場合であっても高い冷却効率を得ることができる冷却モジュールを備えた電子機器及び冷却モジュールを提供する。
【解決手段】電子機器は、筐体と、筐体内に設けられた発熱体と、筐体内に設けられ、発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールとを備える。冷却モジュールは、複数本が並列されると共に、並列された全体として発熱体よりも幅広に構成され、少なくとも1本が発熱体とオーバーラップするように配置された第1ヒートパイプと、第1ヒートパイプと直交した姿勢で第1ヒートパイプと発熱体との間に積層されると共に、第1面が発熱体と接続され、第2面が第1ヒートパイプと接続された第2ヒートパイプとを有する。
【選択図】
図4