(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】解析方法およびそれに用いるアレイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/15 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
G01N33/15 Z
(21)【出願番号】P 2021179014
(22)【出願日】2021-11-01
(62)【分割の表示】P 2018549355の分割
【原出願日】2017-03-22
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/056465
(32)【優先日】2016-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517184842
【氏名又は名称】センソシェン アクティエ ボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンステット,マーリン マリー
(72)【発明者】
【氏名】ボッレベク,カール アー コア
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン,ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】アルブレクト,アン-ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ツェラー,キャサリン ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】シャウワデ,アーカッシュ
(72)【発明者】
【氏名】リンドバーグ,ティム カール シエヴェ
(72)【発明者】
【氏名】フォレリー,アンディー アンドレアス セバスチャン
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-516950(JP,A)
【文献】特表2014-524015(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0274134(US,A1)
【文献】特開2015-208295(JP,A)
【文献】JOHANSSON, H. et al.,A genomic biomarker signature can predict skin sensitizers using a cell-based in vitro alternative to animal tests,BMC GENOMICS,BIOMED CENTRAL,2011年,Vol.12, No.399,pp.1-19
【文献】GASSMANN, M. G. et al.,Growth factor - regulated expression of enzymes involved in nucleotide biosynthesis: a novel mechanism of growth factor action,Oncogene,1999年11月19日,Vol.18,pp.6667-6676
【文献】BASKETTER, D. A. et al.,Categorization of Chemicals According to Their Relative Human Skin Sensitizing Potency,DERMATITIS,2014年,Vol.25, No.1,pp.11-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
G01N 33/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤の皮膚感作効力を決定するための方法であって、
(a)樹状細胞の集合または樹状様細胞の集合を提供する工程と;
(b)工程(a)で提供された細胞を試験薬剤にさらす工程と;
(c)工程(b)の細胞において、表Aに定義される群から選択される2つ以上のバイオマーカーの発現を測定する工程
(ただし、表Aに定義されるバイオマーカーの全ての発現を測定する工程を除く)であって、CADの発現を測定することを含む工程と
を含むか、またはこれらの工程からなり、
工程(c)で測定された2つ以上のバイオマーカーの発現が、工程(b)の試験薬剤の皮膚感作効力を示す、方法。
【表1】
【表2】
【請求項2】
工程(c)で測定されたバイオマーカーのうち1つ以上が、表A(i)および/または表A(ii)に定義される群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)が、表A(i)に列挙された1つ以上のバイオマーカー
の発現を測定することを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記試験薬剤が、皮膚の感作を誘発することができることが既に知られているか、またはその可能性がある、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法によって決定された前記皮膚感作効力が、European Classification,Labelling and Packaging(CLP)Regulationに従って、すなわち、カテゴリー1A(強)、カテゴリー1B(弱)、またはカテゴリーなし(感作剤なし)に分類される;または
前記方法によって決定された前記皮膚感作効力が、Basketterら、2014、「Categorization of chemicals according to their relative human skin sensitizing potency」、Dermatitis、25(1):11-21に記載されるシステムに従って、すなわち、カテゴリー1(最も強い感作剤)、2、3、4、5または6(真の非感作剤)に分類される、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
皮膚感作がIV型過敏反応である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)が、1つ以上のバイオマーカーの核酸分子の発現を測定することを含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)において1つ以上のバイオマーカーの発現を測定することが、1つ以上の結合部分を用いて行われ、それぞれが表Aに特定されるバイオマーカーの1つをコードする核酸分子に選択的に結合することができる、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)が、工程(c)で定義される1つ以上のバイオマーカーのタンパク質の発現を測定することを含む
、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(c)がアレイを使用して行われる、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、インビトロで行われる、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
2個以上のバイオマーカーの発現が、試験薬剤にさらす前および後に、工程(a)で提供される細胞において測定され、試験薬剤にさらす前および後の2つ以上のバイオマーカーの発現の差が、工程(b)の試験薬剤の皮膚感作効力の指標である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、
(d)さらなる樹状細胞の集合または樹状様細胞の集合を提供する工程と;
(e)工程(d)で提供された細胞を、
i.ヒト皮膚を感作しない1つ以上のネガティブコントロール剤;および/または
ii.ヒト皮膚を感作する1以上のポジティブコントロール剤;および/または
iii.1つ以上の
溶媒対照群にさらす工程と;
(f)1つ以上のコントロール薬剤にさらす以外は、工程(a)で提供される細胞と同じ条件で、同じ時間インキュベートする工程と;
(g)工程(e)の細胞において、工程(c)で測定された2つ以上のバイオマーカーの発現を測定する工程と
を含み、
工程(c)で測定された2つ以上のバイオマーカーと工程(g)で測定された2つ以上のバイオマーカーとの発現の差が、試験薬剤の皮膚感作効力の指標である、方法。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、
(h)さらなる樹状細胞の集合または樹状様細胞の集合を提供する工程と;
(i)工程(h)で提供された細胞を、所定の効力を有する皮膚感作剤にさらす工程と;
(j)工程(h)の細胞において、工程(c)で測定された2つ以上のバイオマーカーの発現を測定する工程と
を含み、
工程(c)で測定された2つ以上のバイオマーカーと工程(j)で測定された2つ以上のバイオマーカーとの発現における相似が、試験薬剤の皮膚感作効力の指標である、方法。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、
(k)試験薬剤の皮膚感作効力を同定する工程を含む、方法。
【請求項16】
樹状細胞の集団または樹状様細胞の集団が、樹状様細胞の集団である、請求項1~
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項
8に記載の1つ以上の結合部分を含む、請求項1~
16のいずれか一項に記載の方法で使用するためのアレイ。
【請求項18】
薬剤の皮膚感作効力を決定するための表Aに定義される群から選択される2つ以上のバイオマーカーの使用であって、前記2つ以上のバイオマーカーはCADを含む、使用
(ただし、表Aに定義される全てのバイオマーカーの使用を除く)。
【表3】
【表4】
【請求項19】
薬剤の皮膚感作効力を決定するための表Aに定義される群から選択される2つ以上のバイオマーカーに対する特異性を有する2つ以上の結合部分の使用であって、前記2つ以上のバイオマーカーはCADを含む、使用
(ただし、表Aに定義されるバイオマーカーに対する特異性を有する結合部分の全ての使用を除く)。
【表5】
【表6】
【請求項20】
請求項1~
16のいずれか一項に記載の方法で使用するための解析キットであって、
(a)請求項
17に記載のアレイと;
(b)請求項1~
16のいずれか一項に記載の方法を行うための指示書と
を含む、解析キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験薬剤の皮膚感作効力を同定するための方法、およびそのような方法で使用するためのアレイおよび分析キットに関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性接触皮膚炎(ACD)は、人口のかなりの割合が罹患する炎症性皮膚疾患である。アレルギー性接触皮膚炎は、一般的に、社会にとってかなりの経済的負担につながるハプテンという化学物質に対する免疫反応によって生じる。化学物質に対する現在の感作試験は、動物実験に依存している。例えば医薬品産業および化粧品産業における化学物質の登録および使用に関する法律があるため、感作予測のための代替のヒト細胞系アッセイを開発するための重要な研究努力が刺激された。その目的は、動物実験を、より高い予測力を示すインビトロ試験と置き換えることである。
【0003】
ACDは、湿疹と、周期的に起こるかゆみ現象によって特徴付けられる[Akhavan,A.およびS.R.Cohen,The relationship between atopic dermatitis and contact dermatitis.Clin Dermatol,2003.21(2):p.158-62]。この疾患は、人口のかなりの割合が罹患しており、ヨーロッパでは7.2%~18.6%の有病率を有し[Mortz,C.G.ら、Prevalence of atopic dermatitis,asthma,allergic rhinitis,and hand and contact dermatitis in adolescents.The Odense Adolescence Cohort Study on Atopic Diseases and Dermatitis.Br J Dermatol,2001.144(3):p.523-32;およびNielsen,N.H.ら、Allergic contact sensitization in an adult Danish population:tWOcross-sectional surveys eight years apart(the Copenhagen Allergy Study).Acta Derm Venereol,2001.81(1):p.31-4]、感作性化学物質に繰り返しさらされることによって、発症率が増加する。ACDは、以前にさらされ、免疫学的に感作された個人において、小さな化学物質であるハプテンとの接触部位でCD8+T細胞を産生する主に反応性Tヘルパー1(Th1)およびインターフェロン(IFN)によって引き起こされるIV型の遅延型の過敏反応である。γ[Fonacier,L.S.,S.C.DreskinおよびD.Y.Leung,Allergic skin diseases.J Allergy Clin Immunol.125(2 Suppl 2):p.S138-49]。表皮中の樹状細胞(DC)は、自己分子に結合したハプテンに応答し、T細胞媒介性免疫を活性化することによって免疫反応を開始する。
【0004】
REACH(Registration,Evaluation,and Authorisation of Chemicals)規制は、有害な影響について、約30000種類の化学物質を含む欧州連合内の全ての新しい化学物質および既存の化学物質を試験する必要がある[Regulation(EC)No 1907/2006において、EC 1907/2006]。潜在的な感作剤の同定には、現在、動物試験が必要であるため、REACH法は、試験に必要な動物の数に莫大な影響を与える。さらに、7th Amendment to the Cosmetics Directive (76/768/EEC)は、2013年にヒトへの使用のための化粧品成分の大半について、動物試験の禁止を提起した。したがって、化学物質の感作能力の評価のための実験動物に代わる信頼性の高いインビトロでの代替法の開発が急務である。
【0005】
本願発明者らは、Genomic Allergen Rapid Detection(GARD)と呼ばれる、感作性化学物質の予測のためのヒト細胞系アッセイを開発した(
図8)。詳細な記載については、国際公開第2012/056236号およびJohansson Hら、The GARD assay for assessment of chemical skin sensitizers.Toxicology in vitro 2013を参照のこと(これらは参考として本明細書に組み込まれる)。樹状様細胞(例えば、MUTZ-3細胞株)のトランスクリプトームを解析することによって、強力な識別能力を有するゲノムバイオマーカーシグネチャを特定した[Johansson Hら、A genomic biomarker signature can predict skin sensitizers using a cell-based in vitro alternative to animal tests.BMC Genomics.2011;Johansson Hら、The GARD assay for assessment of chemical skin sensitizers.Toxicology in vitro 2013;およびJohansson Hら、GARD in-house validation-A proof of concept.Toxicological Sciences 2014]。さらに、シグナル伝達経路が、異なる化学反応性グループによって関与される様式は、感作効力と関係があるようである[Albrektら、Skin sensitizers differentially regulate signaling pathways in MUTZ-3 cells in relation
to their individual potency.BMC Pharmacology and Toxicology 2014]。
【0006】
しかし、今日まで、皮膚感作性の化学物質の効力を特定するための動物ではない代替法が必要とされているが、好ましいアッセイは、マウスLocal Lymph Node Assay(LLNA)である[Basketter,D.A.ら,Local lymph node assay-validation,conduct and use in practice.Food Chem Toxicol,2002.40(5):p.593-8]、その後に、モルモット最大化試験(GPMT)である[Magnusson,B.およびA.M.Kligman,The identification of contact allergens by animal assay.The guinea pig maximization test.J Invest Dermatol,1969.52(3):p.268-76]。
【0007】
これらの動物モデルに対するインビトロ代替法は、好ましくは、改善された信頼性、効力予測の精度、また、重要なことだが、ヒトの反応性との相関関係を示すだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Akhavan,A.およびS.R.Cohen,The relationship between atopic dermatitis and contact dermatitis.Clin Dermatol,2003.21(2):p.158-62
【文献】[Mortz,C.G.ら、Prevalence of atopic dermatitis,asthma,allergic rhinitis,and hand and contact dermatitis in adolescents.The Odense Adolescence Cohort Study on Atopic Diseases and Dermatitis.Br J Dermatol,2001.144(3):p.523-32;およびNielsen,N.H.ら、Allergic contact sensitization in an adult Danish population:tWOcross-sectional surveys eight years apart(the Copenhagen Allergy Study).Acta Derm Venereol,2001.81(1):p.31-4
【文献】Fonacier,L.S.,S.C.DreskinおよびD.Y.Leung,Allergic skin diseases.J Allergy Clin Immunol.125(2 Suppl 2):p.S138-49
【文献】Regulation(EC)No 1907/2006において、EC 1907/2006
【文献】Johansson Hら、The GARD assay for assessment of chemical skin sensitizers.Toxicology in vitro 2013
【文献】Johansson Hら、A genomic biomarker signature can predict skin sensitizers using a cell-based in vitro alternative to animal tests.BMC Genomics.2011
【文献】Johansson Hら、The GARD assay for assessment of chemical skin sensitizers.Toxicology in vitro 2013;およびJohansson Hら、GARD in-house validation-A proof of concept.Toxicological Sciences 2014
【文献】Albrektら、Skin sensitizers differentially regulate signaling pathways in MUTZ-3 cells in relation to their individual potency.BMC Pharmacology and Toxicology 2014
【文献】Basketter,D.A.ら,Local lymph node assay-validation,conduct and use in practice.Food Chem Toxicol,2002.40(5):p.593-8
【文献】Magnusson,B.およびA.M.Kligman,The identification of contact allergens by animal assay.The guinea pig maximization test.J Invest Dermatol,1969.52(3):p.268-76
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以前の研究に基づいて、GARDアッセイは、皮膚感作剤の同定に役立つことが証明されている。多変量モデルを用いたヒトトランスクリプトームのより広範な評価は、驚くべきことに、改善されたインビトロ効力モデルも可能であることを明らかにした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の第1の態様は、薬剤の皮膚感作効力を決定するための方法であって、
(a)樹状細胞の集合または樹状様細胞の集合を提供する工程と;
(b)工程(a)で提供された細胞を試験薬剤にさらす工程と;
(c)工程(b)の細胞において、表Aに定義される群から選択される2つ以上のバイオマーカーの発現を測定する工程とを含むか、またはこれらの工程からなり、
工程(c)で測定された2つ以上のバイオマーカーの発現が、工程(b)の試験薬剤の皮膚感作効力を示す、方法を提供する。
【0012】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)で測定されたバイオマーカーのうち1つ以上が、表A(i)および/または表A(ii)に定義される群から選択される。
【0013】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)が、表A(i)に列挙された1つ以上のバイオマーカー、例えば、表A(i)に列挙されたバイオマーカーのうち2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個の発現を測定することを含むか、またはこのことからなる。例えば、工程(c)は、表A(i)に列挙されたバイオマーカーの全ての発現を測定することを含んでいてもよく、またはこのことからなっていてもよい。
【0014】
当該方法は、HIST1H2BMの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H4Bの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H1Dの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、PAICSの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H4Dの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H2AL///HIST1H2BNの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、PLK1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、PHGDHの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、MCM2の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、MCM7の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CD53の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、KIFC1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、WEE1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、TMPOの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、MCM4の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、PSRC1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、RNF149の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、MCM6の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、MCM5の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、FANCAの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。
【0015】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)が、表A(ii)に列挙された1つ以上のバイオマーカー、例えば、表A(ii)に列挙されたバイオマーカーのうち2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個または25個の発現を測定することを含むか、またはこのことからなる。例えば、工程(c)は、表A(ii)に列挙されたバイオマーカーの全ての発現を測定することを含んでいてもよく、またはこのことからなっていてもよい。
【0016】
当該方法は、CADの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、MRTO4の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、TOE1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CDC20の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、PM20D2の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、LOC344887の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、UNGの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CDKN1Aの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H2BFの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H1Bの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、転写物ID7896697の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、JADE1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、KIAA0125の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CHRNA5の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CHAF1B///MORC3の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、SEL1L3の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、SSRP1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、FOXM1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、LMNB1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H2AKの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CENPAの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、NCAPHの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H2BBの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、ATP6V1B2の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、TRAP1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。
【0017】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)は、表A(iii)に列挙された1つ以上のバイオマーカー、例えば、表A(iii)に列挙されたバイオマーカーのうち1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個の発現を測定することを含んでいてもよく、またはこのことからなっていてもよい。例えば、工程(c)は、表A(iii)に列挙されたバイオマーカーの全ての発現を測定することを含んでいてもよく、またはこのことからなっていてもよい。
【0018】
当該方法は、PFASの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、TMEM97の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、DHCR24の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、FTH1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H2AEの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、NQO1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CD44の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。
【0019】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)が、表Aに列挙された3つ以上のバイオマーカー、例えば、表Aに列挙されたバイオマーカーのうち4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、または52個の発現を測定することを含むか、またはこのことからなる。例えば、工程(c)は、表Aに列挙されたバイオマーカーの全ての発現を測定することを含んでいてもよく、またはこのことからなっていてもよい。
【0020】
当該方法は、HIST1H2BMの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H4Bの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H1Dの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、PAICSの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H4Dの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H2AL///HIST1H2BNの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、PLK1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、PHGDHの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、MCM2の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、MCM7の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CD53の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、KIFC1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、WEE1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、TMPOの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、MCM4の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、PSRC1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、RNF149の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、MCM6の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、MCM5の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、FANCAの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。
【0021】
当該方法は、CADの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、MRTO4の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、TOE1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CDC20の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、PM20D2の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、LOC344887の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、UNGの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CDKN1Aの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H2BFの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H1Bの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、転写物ID7896697の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、JADE1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、KIAA0125の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CHRNA5の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CHAF1B///MORC3の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、SEL1L3の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、SSRP1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、FOXM1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、LMNB1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H2AKの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CENPAの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、NCAPHの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H2BBの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、ATP6V1B2の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、TRAP1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。
【0022】
当該方法は、PFASの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、TMEM97の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、DHCR24の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、FTH1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H2AEの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、NQO1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、CD44の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。
【0023】
当該方法は、MCM7、PFAS、HIST1H2AEのうち1つ以上の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。
【0024】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)は、表Bに列挙された1つ以上のバイオマーカーの発現を測定することを含んでいてもよく、またはこのことからなっていてもよい。例えば、工程(c)は、表Bに列挙されたバイオマーカーのうち2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個の発現を測定することを含んでいてもよく、またはこのことからなっていてもよい。例えば、工程(c)は、表Bに列挙されたバイオマーカーの全ての発現を測定することを含んでいてもよく、またはこのことからなっていてもよい。
【0025】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)は、表Bに列挙されたバイオマーカーのうち少なくとも2個、例えば、表Bに列挙されたバイオマーカーのうち3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上または18個以上の発現を測定することを含むか、またはこのことからなる。
【0026】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)は、表B(i)に列挙された1つ以上のバイオマーカー、例えば、表B(i)に列挙されたバイオマーカーのうち2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、または16個以上の発現を測定することを含むか、またはこのことからなる。
【0027】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)は、表B(ii)に列挙された1つ以上のバイオマーカー、例えば、表B(ii)に列挙されたバイオマーカーのうち2個の発現を測定することを含むか、またはこのことからなる。
【0028】
当該方法は、CCNA2の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、転写物ID8151252の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、PIGWの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、SNRPD1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、ARHGAP19///ARHGAP19-SLIT1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H2ABの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、LRCH2の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、PKP4///PKP4の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、RAVER2///RAVER2の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、DUT///DUTの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、AURKAの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、転写物ID8055309の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、NDC1の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、KIF22///KIF22の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、OK/SW-CL.58の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、転写物ID7994343の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HIST1H2AB///HIST1H2AEの発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。当該方法は、HMGB3の発現を測定することを含んでいてもよく、または除外していてもよい。
【0029】
「発現」とは、バイオマーカーの存在、レベルおよび/または量を意味する。
【0030】
「バイオマーカー」とは、その測定によって、感作効力を決定するのに有用な情報を与えることができる生体分子、またはその構成要素またはフラグメントを含む。したがって、表Aの内容において、バイオマーカーは、核酸分子、例えば、mRNAまたはcDNAであってもよい。または、バイオマーカーは、核酸分子または炭水化物部分によってコードされるタンパク質、またはその抗原成分またはフラグメントであってもよい。
【0031】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、試験薬剤は、皮膚の感作を誘発することができることが既に知られているか、またはその可能性がある。
【0032】
例えば、試験薬剤は、当該技術分野で既に知られている方法、例えば、国際公開第2012/056236号および/またはJohansson Hら、The GARD assay for assessment of chemical skin sensitizers.Toxicology in vitro 2013(これらは参考として本明細書に組み込まれる)に記載される方法によって、皮膚の感作を誘発することができることが既に知られていてもよい。
【0033】
代替の実施形態またはさらなる実施形態において、当該方法は、試験薬剤の皮膚感作効力および皮膚感作剤/非感作剤の状態を特定するためのものである(すなわち、試験物質が感作剤であるか否かを特定し、皮膚感作剤としてのその効力を特定する)。代替の実施形態または追加の実施形態において、当該方法は、国際公開第2012/056236号および/またはJohansson Hらに記載の方法を用いて試験薬剤が感作剤であるかどうかを同定することを含む。
【0034】
「皮膚感作効力」とは、薬剤の皮膚感作効力の強さを含み、または意味する。例えば、薬剤の感作能力の相対的な効力または強さから、最も効力が高いものから最も効力の低いものまでの試験薬剤群、またはその逆の試験薬剤群の順序を導き、および/または1つ以上の既知の規制またはシステムに従った分類を導く。
【0035】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、この方法によって決定された皮膚感作効力は、European Classification,Labelling and Packaging(CLP)Regulation(EC)1272/2008(http://echa.europa.eu/clp-2015)に従って分類される。このシステムは、国連のGlobally Harmonised System(GHS)に基づいており、これは、2015年の6月から、物質および混合物の分類およびラベリングに適用する唯一の規制である。これらを市場に出す前に、製品を適切に分類し、ラベリングし、包装する企業が必要である。1A(強)、1B(弱)、またはカテゴリーなし(非感作剤)のカテゴリーを与える。
【0036】
例えば、この方法は、
(i)効力カテゴリー1Aの1つ以上の薬剤;
(ii)効力カテゴリー1Bの1つ以上の薬剤;および/または
(iii)効力カテゴリーのカテゴリーがない1つ以上の薬剤を提供してもよい。
【0037】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、前記方法によって決定された皮膚感作効力は、Basketterら、2014、「Categorization of chemicals according to their relative human skin sensitizing potency」、Dermatitis、25(1):11-21に記載されるシステムに従って、すなわち、カテゴリー1(最も強い感作剤)、2、3、4、5または6(真の非感作剤)に分類される(例えば、表4、
図4)。
【0038】
例えば、この方法は、
(i)効力カテゴリー1の1つ以上の薬剤;
(ii)効力カテゴリー2の1つ以上の薬剤;
(iii)効力カテゴリー3の1つ以上の薬剤;
(iv)効力カテゴリー4の1つ以上の薬剤;
(v)効力カテゴリー5の1つ以上の薬剤;および/または
(vi)効力カテゴリー6の1つ以上の薬剤を提供してもよい(例えば、本明細書の表8および/またはBasketterら、2014(前出)を参照)。
【0039】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、皮膚感作効力は、局所リンパ節アッセイ(LLNA)分類、モルモット最大化試験(GPMT)または無有害作用量(NOEL)に従って分類される。
【0040】
LLNAの詳細な説明は、本明細書に参考として組み込まれるBasketter,D.A.ら、Local lymph node assay-validation,conduct and use in practice.Food Chem Toxicol,2002.40(5):p.593-8を参照。モルモット最大化試験の詳細な記載については、本明細書に参考として組み込まれるMagnusson,B.およびA.M.Kligman,The identification of contact allergens by animal assay.The guinea pig maximization test.J Invest Dermatol,1969.52(3):p.268-76を参照のこと。皮膚感作効力に関連する無有害作用量(NOEL)試験の詳細な記載については、本明細書に参考として組み込まれるBasketterら、2005,‘Evaluation of the skin sensitizing potency of chemicals by using the existing methods and considerations of relevance for elicitation」Contact Dermatitis,52(1):39-43;およびGriem,P.ら、2003,「Proposal for a risk assessment methodology for skin sensitization based on sensitization potency data.」Regul.Toxicol.Pharmacol.,38:269-290を参照のこと。NOELと効力レベルとの相関関係については、本明細書に参考として組み込まれるWHO Library Cataloguing-in-Publication Data.Skin sensitization in chemical risk assessment.(IPCS harmonization project document:no.5),ISBN 978 92 4 156360 4(特に、26-28ページの表1)も参照のこと。CLPの詳細な記載については本明細書に参考として組み込まれる(http://echa.europa.eu/clp-2015)を参照のこと。
【0041】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)で測定された1つ以上のバイオマーカーの発現は、所定の効力を有する皮膚感作剤にさらす前および後に、工程(a)で提供される細胞において測定され、試験薬剤にさらす前とさらした後の1つ以上のバイオマーカーの発現の差が、工程(b)の皮膚感作剤の効力の指標である。
【0042】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)で測定された1つ以上のバイオマーカーの発現は、所定の効力を有する皮膚感作剤にさらす前および後に、工程(a)で提供される細胞において測定され、工程(c)の前と後の1つ以上のバイオマーカーの発現の差が、工程(b)の皮膚感作剤の効力の指標である。
【0043】
「発現の差」は、第1のサンプル(例えば、試験薬剤サンプル)における存在および/または量が、第2のサンプル(例えば、コントロール薬剤サンプル)の存在および/または量と異なることを含む。好ましくは、存在および/または量は、比較サンプルの40%以下、例えば、39%以下、38%以下、37%以下、36%以下、35%以下、34%以下、33%以下、32%以下、31%以下、30%以下、29%以下、28%以下、27%以下、26%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下または0%である。
【0044】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、1つ以上のバイオマーカーは、試験薬剤にさらさられる前と後に工程(a)で提供される細胞において測定され、試験薬剤にさらさられる前と後の1つ以上のバイオマーカーの発現の差は、工程(b)の試験薬剤の皮膚感作効力の指標である。したがって、工程(a)において提供される細胞は、ネガティブコントロールおよび試験結果の両方を提供し得る。
【0045】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、1つ以上のバイオマーカーは、試験薬剤にさらさられる前と後に工程(a)で提供される細胞において測定され、工程(c)の前と後の1つ以上のバイオマーカーの発現の差は、工程(b)の試験薬剤の皮膚感作効力の指標である。したがって、工程(a)において提供される細胞は、ネガティブコントロールおよび試験結果の両方を提供し得る。
【0046】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、この方法は、さらに、
(d)さらなる樹状細胞の集合または樹状様細胞の集合を提供する工程と;
(e)工程(d)で提供された細胞を、
i.ヒト皮膚を感作しない1つ以上のネガティブコントロール剤;および/または
ii.ヒト皮膚を感作する1以上のポジティブコントロール剤;および/または
iii.1つ以上の溶媒対照群にさらす工程と;
(f)1つ以上のコントロール薬剤にさらす以外は、工程(a)で提供される細胞と同じ条件で、同じ時間インキュベートする工程と;
(g)工程(e)の細胞において、工程(c)で測定された2つ以上のバイオマーカーの発現を測定する工程と
を含み、
工程(c)で測定された2つ以上のバイオマーカーと工程(e)で測定された2つ以上のバイオマーカーとの発現の差が、試験薬剤の皮膚感作効力の指標である。
【0047】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、この方法は、さらに、
(d)さらなる樹状細胞の集合または樹状様細胞の集合を提供する工程と;
(e)工程(d)で提供された細胞を、
i.ヒト皮膚を感作しないネガティブコントロール薬剤;
ii.溶媒対照群;または
iii.所定の皮膚感作効力を有する薬剤にさらす以外は、工程(a)で提供される細胞と同じ条件で、同じ時間でのインキュベートにさらす工程と;
(f)工程(e)の細胞において、工程(c)で測定された2つ以上のバイオマーカーの発現を測定する工程と
を含み、
工程(c)で測定された2つ以上のバイオマーカーと工程(e)で測定された2つ以上のバイオマーカーとの発現の差が、試験薬剤の皮膚感作効力の指標である。
【0048】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、溶媒対照群は、DMSOを含む。
【0049】
「発現の差」は、第1のサンプル(例えば、試験薬剤サンプル)における存在および/または量が、第2のサンプル(例えば、コントロール薬剤サンプル)の存在および/または量と異なることを含む。好ましくは、存在および/または量は、比較サンプルの40%以下、例えば、39%以下、38%以下、37%以下、36%以下、35%以下、34%以下、33%以下、32%以下、31%以下、30%以下、29%以下、28%以下、27%以下、26%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下または0%である。
【0050】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、この方法は、さらに、
(h)さらなる樹状細胞の集合または樹状様細胞の集合を提供する工程と;
(i)工程(h)で提供された細胞を、所定の効力を有する皮膚感作剤にさらす工程と;
(j)工程(i)の細胞において、工程(c)で測定された2つ以上のバイオマーカーの発現を測定する工程とを含み、
工程(c)で測定された2つ以上のバイオマーカーと工程(j)で測定された2つ以上のバイオマーカーとの発現における相似が、試験薬剤の皮膚感作効力の指標である。
【0051】
「発現における相似」とは、第1のサンプル(例えば、試験薬剤サンプル)における存在および/または量が、第2のサンプル(例えばコントロールサンプル)における存在および/または量と類似しているか、または同一であることを含む。好ましくは、存在および/または量は、コントロールサンプルの少なくとも60%、例えば少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%である。
【0052】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、この方法は、さらに、
(k)試験薬剤の皮膚感作効力を同定する工程を含む。
【0053】
同定は、当該技術分野で公知の任意の適切な統計学的方法または機械学習アルゴリズム、例えば、ランダムフォレスト(RF)、サポートベクターマシン(SVM)、主成分分析(PCA)、通常最小二乗法(OLS)、部分的最小二乗回帰(PLS)、直交部分的最小二乗回帰(O-PLS)および他の多変量統計解析(例えば、後方段階的ロジスティック回帰モデル)を用いて行われてもよい。多変量統計解析の総説については、例えば、本明細書に参考として組み込まれるSchervish,Mark J.(1987年11月)「A Review of Multivariate Analysis」Statistical Science 2 (4):396-413を参照のこと。好ましくは、Random Forestモデルが使用される(実施例Aに詳細に記載されるように)。
【0054】
本発明の方法のさらなる実施形態または代替の実施形態において、ROC AUCが少なくとも0.45、例えば、ROC AUCが少なくとも0.50、少なくとも0.55、少なくとも0.60、少なくとも0.65、少なくとも0.70、少なくとも0.75、少なくとも0.80、少なくとも0.85、少なくとも0.86、少なくとも0.87、少なくとも0.88、少なくとも0.89、少なくとも0.90、少なくとも0.91、少なくとも0.92、少なくとも0.93、少なくとも0.94、少なくとも0.95、少なくとも0.96、少なくとも0.97、少なくとも0.98、少なくとも0.99、またはROC AUCが1.00である感作効力が決定される。好ましくは、ROC AUCが少なくとも0.80、より好ましくは、少なくとも0.85、さらにより好ましくは少なくとも0.88の皮膚感作効力が決定される。
【0055】
好ましくは、本発明の方法は、精度が、少なくとも60%、例えば、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%である。
【0056】
好ましくは、本発明の方法は、感度が、少なくとも60%、例えば、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%である。
【0057】
好ましくは、本発明の方法は、特異性が、少なくとも60%、例えば、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%である。
【0058】
「精度」とは、ある方法の正しい結果の割合を意味し、「感度」とは、全ての陽性化学物質のうち、陽性と正しく分類される化学物質の割合を意味し、「特異性」とは、全ての陰性の化学物質のうち、陰性と正しく分類される化学物質の割合を意味する。
【0059】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、この方法は、さらに、
(l)工程(h)~(j)(存在する場合には、工程(k))の1回以上の繰り返し工程を含む。
【0060】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(a)~(c)(および存在する場合、工程(d)~(f/g))のそれぞれの繰り返しは、同時に(すなわち、元の工程(a)~(c)(および存在する場合、工程(d)~(f/g)と共に)行われる。さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(a)~(c)(および存在する場合、工程(d)~(f/g))のそれぞれの繰り返しは、連続して行われる。
【0061】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(j)は、以下の1つ以上の繰り返しを含むか、または以下の1つ以上の繰り返しからなる。
(I)1つ以上の他の繰り返しについて、工程(i)で提供される所定の皮膚感作効力を有する同じ薬剤;または
(II)1つ以上の他の繰り返しについて、工程(i)で提供される所定の皮膚感作効力を有する異なる薬剤。
【0062】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(i)で提供される所定の皮膚感作効力を有する異なる薬剤は、以下からなる群から選択される。
(I)工程(i)で提供される所定の皮膚感作効力を有する異なる薬剤と同じ感作効力を有する薬剤;または
(II)工程(i)で提供される所定の皮膚感作効力を有する異なる薬剤とは異なる感作効力を有する薬剤。
【0063】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(a)~(c)(および存在する場合、工程(f/g))は、少なくとも1回、例えば、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、11回以上、12回以上、13回以上、14回以上、15回以上、16回以上、17回以上、18回以上、19回以上、20回以上、21回以上、22回以上、23回以上、24回以上、25回以上、26回以上、27回以上、28回以上、29回以上、30回以上、40回以上、50回以上、60回以上、70回以上、80回以上、90回以上、100回以上、150回以上、200回以上、250回以上、300回以上、350回以上、400回以上、450回以上、500回以上、600回以上、700回以上、800回以上、900回以上または1000回以上繰り返される。
【0064】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、各工程または工程の繰り返しは、実験誤差を制御するために、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回繰り返されてもよい。
【0065】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、測定された2つ以上のバイオマーカーの発現は、皮膚感作効力の全範囲にわたり、所定の皮膚感作効力を有する薬剤について測定される。
【0066】
「皮膚感作効力の全範囲」には、使用される分類システムにおける最も高い皮膚感作カテゴリーの感作剤および最も低い皮膚感作カテゴリーの感作剤を評価することを含む。好ましくは、感作剤は、使用される分類システムにおける各感作剤カテゴリーで評価される。
【0067】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、所定の効力を有する皮膚感作剤は、表2に定義される群からなる群から選択される1つ以上の薬剤を含むか、またはそれからなる。例えば、当該方法は、表2に定義された薬剤のうち2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、または11個以上を測定することを含んでいてもよい。
【0068】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、所定の効力を有する皮膚感作剤は、表8、表9および/または表8、例えば、表8のみ、表9のみ、表10のみ、表8と9、表8と10、表9と10、または表8、9および10に定義される群からなる群から選択される薬剤を含むか、またはそれらからなる。例えば、当該方法は、表8、9および10に定義されるコントロール剤のうち2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上、20個以上、21個以上、22個以上、23個以上、24個以上、25個以上、26個以上、27個以上、28個以上、29個以上、30個以上、31個以上、32個以上、33個以上、34個以上、35個以上、36個以上、37個以上、38個以上、39個以上、40個以上、41個以上、42個以上、43個以上、44個以上、45個以上、46個以上、47個以上、48個以上、49個以上、50個以上、51個以上、52個以上、53個以上、54個以上、55個以上、56個以上、57個以上、58個以上、59個以上、60個以上、61個以上、62個以上、63個以上、64個以上、65個以上、66個以上、67個以上、68個以上、69個以上、70個以上、71個以上、72個以上、73個以上、74個以上、75個以上、76個以上、77個以上、78個以上、79個以上、80個以上、81個以上、82個以上、83個以上、84個以上、85個以上、86個以上、87個以上、88個以上、89個以上、90個以上、91個以上、92個以上、93個以上、94個以上、95個以上、96個以上、97個以上、98個以上、99個以上、100個以上、101個以上、102個以上、103個以上、104個以上、105個以上、106個以上、107個以上、108個以上、109個以上、110個以上、111個以上、112個以上、113個以上、114個以上、115個以上、116個以上、117個以上、118個以上、119個以上、120個以上、121個以上または122個以上を測定することを含んでいてもよい。
【0069】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、所定の効力を有する皮膚感作剤は、1-ブタノール、4-アミノ安息香酸、ベンズアルデヒド、クロロベンゼン、フタル酸ジエチル、ジメチルホルムアミド、エチルバニリン、グリセロール、イソプロパノール、乳酸、サリチル酸メチル、オクタン酸、プロピレングリコール、フェノール、p-ヒドロキシ安息香酸、過マンガン酸カリウム、サリチル酸、ドデシル硫酸ナトリウム、Tween 80、硫酸亜鉛、2,4-ジニトロクロロベンゼン、オキサゾロン、二クロム酸カリウム、Kathon CG(MC/MCI)、ホルムアルデヒド、2-アミノフェノール、2-ニトロ-1,4-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ヘキシルシンナムアルデヒド、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-メルカプトベンゾチアゾール、グリオキサール、シンナムアルデヒド、イソオイゲノール、エチレンジアミン、レゾルシノール、シンナミルアルコール、オイゲノール、ペニシリンG、ゲラニオールおよびDMSOからなる群から選択される薬剤を含むか、これらの薬剤からなる。
【0070】
好ましい実施形態において、工程(c)は、バイオマーカーのうち1つ以上の核酸分子の発現を測定することを含むか、またはこのことからなる。核酸分子は、cDNA分子またはmRNA分子であってもよい。好ましくは、核酸分子は、mRNA分子である。しかし、核酸分子は、cDNA分子であってもよい。
【0071】
一実施形態において、工程(c)においてバイオマーカーのうち1個以上の発現を測定することは、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、定量リアルタイムPCR(qRT-PCR)、ナノアレイ、マイクロアレイ、マクロアレイ、オートラジオグラフィーおよびin situハイブリダイゼーションからなる群から選択される方法を用いて行われる。好ましくは、1つ以上のバイオマーカーの発現は、DNAマイクロアレイを用いて測定される。
【0072】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)で測定された1つ以上のバイオマーカーは、アレイ(例えば、DNAアレイ)を用いて測定される。さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)で測定された1つ以上のバイオマーカーは、全ゲノムアレイを用いて測定される(例えば、Affymetrix Human Gene 1.0 STアレイまたはAffymetrix Human Gene 2.0 STアレイ)。さらなる実施形態または代替の実施形態において、Nanostring nCounterシステムが使用される(例えば、全ゲノムアレイからの選択に基づくカスタムNanostring nCounterコードセット(例えば、Affymetrix Human Gene 1.0 STアレイまたはAffymetrix Human Gene 2.0 STアレイ)。
【0073】
当該方法は、それぞれが表Aで特定されるバイオマーカーのうち1つをコードする核酸分子に選択的に結合することができる1つ以上の結合部分を用い、工程(c)において1つ以上のバイオマーカーの発現を測定することを含んでいてもよい。
【0074】
一実施形態において、1つ以上の結合部分はそれぞれ、核酸分子を含むか、または核酸分子からなる。さらなる実施形態において、1つ以上の結合部分はそれぞれ、DNA、RNA、PNA、LNA、GNA、TNAまたはPMOを含むか、またはそれからなる。好ましくは、1つ以上の結合部分はそれぞれ、DNAを含むか、またはDNAからなる。一実施形態において、1つ以上の結合部分は、5~100ヌクレオチド長である。しかし、代替の実施形態において、1つ以上の結合部分は、15~35ヌクレオチド長である。
【0075】
1つ以上の結合部分は、Human Gene 1.0 ST Array(Affymetrix,Santa Clara,CA,USA)由来の1つ以上のプローブを含んでいてもよく、またはそれからなっていてもよい。プローブ識別番号は、本明細書の表Aに示されており、ここではそれらを「転写物クラスターID」と呼ばれる。
【0076】
適切な結合剤(結合分子または結合部分とも呼ばれる)は、後述するように、所与の核酸、タンパク質またはアミノ酸モチーフに結合する能力に基づいて、ライブラリーから選択されてもよく、またはスクリーニングされてもよい。
【0077】
好ましい実施形態において、結合部分は、検出可能な部分を含む。
【0078】
「検出可能な部分」とは、その存在および/または相対的な量および/または位置(例えば、アレイ上の位置)を直接的または間接的に決定することが可能な部分を含む。
【0079】
適切な検出可能な部分は、当技術分野において周知である。
【0080】
例えば、検出可能な部分は、特定の条件にさらされたときに検出され得る蛍光部分および/または発光部分および/または化学発光部分であってもよい。このような蛍光部分は、蛍光部分の励起を引き起こすために特定の波長および強度で放射線(すなわち、光)にさらされる必要があり、それによって、検出可能な特定の波長で検出可能な蛍光を発することができるだろう。
【0081】
または、検出可能な部分は、基質(好ましくは検出不可能なもの)を、可視化および/または検出することができる検出可能な生成物に変換することができる酵素であってもよい。適切な酵素の例は、例えば、ELISAアッセイに関連して以下により詳細に議論される。
【0082】
したがって、検出可能な部分は、蛍光部分、発光部分、化学発光部分;放射性部分(例えば、放射性原子);または酵素部分からなる群から選択されてもよい。好ましくは、検出可能な部分は、放射性原子を含むか、または放射性原子からなる。放射性原子は、テクネチウム-99m、ヨウ素-123、ヨウ素-125、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、リン-32、硫黄-35、重水素、トリチウム、レニウム-186、レニウム-188およびイットリウム-90からなる群から選択されてもよい。
【0083】
明らかに、検出される薬剤(例えば、本明細書に記載の試験サンプル中および/またはコントロールサンプル中の1つ以上のバイオマーカー、および/または選択されたタンパク質を検出する際に使用するための抗体分子)は、検出可能な部分を容易に検出可能にするために、十分な適切な同位体原子を含んでいなければならない。
【0084】
代替の好ましい実施形態において、結合部分の検出可能な部分は、蛍光部分である。
【0085】
放射性標識または他の標識は、本発明の方法のサンプルおよび/または本発明の結合部分に既知の方法で存在するバイオマーカーに組み込まれてもよい。例えば、結合剤がポリペプチドである場合、結合剤は、生合成されてもよく、または、例えば水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を用いた化学的なアミノ酸合成によって合成されてもよい。99mTc、123I、186Rh、188Rhおよび111Inなどの標識は、例えば、結合部分のシステイン残基を介して結合させることができる。イットリウム-90は、リジン残基を介して結合することができる。IODOGEN法(Frakerら(1978)Biochem.Biophys.Res.Comm.80,49-57)を使用して123Iを組み込むことができる。参考文献(「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」,J-F Chatal,CRC Press,1989)は、他の方法を詳細に記載している。他の検出可能な部分(例えば、酵素、蛍光、発光、化学発光または放射性部分)をタンパク質に接合させる方法は、当技術分野で周知である。
【0086】
試験されるサンプル中のバイオマーカーは、上述のタンパク質の存在、量および/または位置の決定を間接的に補助する部分で標識されてもよいことは、当業者には理解されるであろう。したがって、この部分は、多成分検出可能な部分の1つの成分を構成していてもよい。例えば、試験されるサンプル中のバイオマーカーは、ビオチンで標識されていてもよく、これにより、検出可能な標識に融合または他の方法で結合されたストレプトアビジンを用いたその後の検出を可能にする。
【0087】
本発明の第1の態様で提供される方法は、工程(c)において、表Aに定義される1つ以上のバイオマーカーのタンパク質の発現を決定することを含んでいてもよく、またはこのことからなっていてもよい。当該方法は、それぞれが表Aで特定されるバイオマーカーのうち1つに選択的に結合することができる1つ以上の結合部分を用い、工程(c)において1つ以上のバイオマーカーの発現を測定することを含んでいてもよい。1つ以上の結合部分は、抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、モノクローナル抗体またはそのフラグメント)を含んでいてもよく、またはそれらからなっていてもよい。
【0088】
「抗体」との用語は、任意の合成抗体、組換え抗体または抗体ハイブリッドを含み、例えば、限定されないが、免疫グロブリン軽鎖および/または重鎖の可変領域および/または定常領域のファージディスプレイによって作られる単鎖抗体分子、または当業者に公知のイムノアッセイ形式で抗原に結合することができる他の免疫相互作用分子を含む。
【0089】
アフィボディーやアプタマーなどの抗体様結合剤の使用も含まれる。
【0090】
その特異的結合部位を保持する抗体フラグメントの合成に関与する技術の一般的な総説は、Winter & Milstein(1991)Nature 349,293-299中に見出される。
【0091】
これに加えて、またはこれに代えて、第1の結合分子のうち1つ以上がアプタマーであってもよい(Collettら、2005,Methods 37:4-15を参照のこと)。
【0092】
分子ライブラリー、例えば、抗体ライブラリー((Clacksonら,1991,Nature 352,624-628;Marksら,1991,J Mol Biol 222(3):581-97)、ペプチドライブラリー(Smith,1985,Science 228(4705):1315-7)、発現cDNAライブラリー(Santiら(2000)J Mol Biol 296(2):497-508)、抗体レームワーク以外(例えば、アフィボディ)に関するライブラリー(Gunneriussonら,1999,Appl Environ Microbiol 65(9):4134-40)、またはアプタマーに基づくライブラリー(Kenanら,1999,Methods Mol Biol 118,217-31)を、本発明の方法に使用するために選択される所与のモチーフに特異的な結合分子の供給源として使用してもよい。
【0093】
分子ライブラリーは、原核細胞においてインビボで発現させてもよい(Clacksonら,1991,前掲;Marksら,1991,前掲)または真核細胞においてインビボで発現させてもよく(Kiekeら,1999,Proc Natl Acad Sci USA,96(10):5651-6)、または、細胞の関与なしにインビトロで発現させてもよい(Hanes & Pluckthun,1997,Proc Natl Acad Sci USA 94(10):4937-42;He & Taussig,1997,Nucleic Acids Res 25(24):5132-4;Nemotoら,1997,FEBS Lett,414(2):405-8)。
【0094】
タンパク質に基づくライブラリーが使用される場合には、潜在的な結合分子のライブラリーをコードする遺伝子は、ウイルス中に封入されることが多く、潜在的な結合分子は、ウイルス表面に提示される(Clacksonら、1991、前出;Marksら,1991、前出;Smith,1985,前出)。
【0095】
おそらく、最も一般的に使用されるディスプレイ系は、その表面に抗体フラグメントをディスプレイする繊維状バクテリオファージであり、抗体フラグメントは、バクテリオファージのマイナーコートタンパク質との融合体として発現される(Clacksonら、1991、前出;Marksら,1991,前出)。しかし、ディスプレイのための他の適切な系としては、他のウイルスを用いるもの(EP39578)、細菌を用いるもの(Gunneriussonら,1999前出;Daughertyら,1998,Protein Eng 11(9):825-32;Daughertyら,1999,Protein Eng 12(7):613-21)および酵母を用いるもの(Shustaら,1999,J Mol Biol 292(5):949-56)が挙げられる。
【0096】
また、ディスプレイ系は、いわゆるリボソームディスプレイ系において、ポリペプチド産物がそのコードするmRNAに接続するのを利用したものが開発されており(Hanes & Pluckthun,1997,前出;He & Taussig,1997,前出;Nemotoら,1997,前出)、またはその代替として、ポリペプチド産物が、そのコードするDNAに接続するのを利用したものが開発されている(米国特許第5,856,090号および国際公開第98/37186号を参照のこと)。
【0097】
抗体の可変重鎖(VH)ドメインおよび可変軽鎖(VL)ドメインは、抗原認識に関与しており、この事実は、早期プロテアーゼ消化実験によって最初に認識されたものである。げっ歯類抗体の「ヒト化」により、さらなる確認が行われた。げっ歯類由来の可変ドメインは、得られた抗体がげっ歯類親抗体の抗原特異性を保持するように、ヒト由来の定常ドメインに融合することができる(Morrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,6851-6855)。
【0098】
その抗原特異性は、可変ドメインによって与えられ、定常ドメインとは無関係であることが、全てが1つ以上の可変ドメインを含む抗体フラグメントの細菌発現を含む実験から知られている。これらの分子は、Fab様分子(Betterら(1988)Science 240,1041);Fv分子(Skerraら(1988)Science 240,1038);VHおよびVLパートナードメインが可撓性オリゴペプチドを介して連結する単鎖Fv(ScFv)分子(Birdら(1988)Science 242,423;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,5879)および単離されたVドメインを含む単一ドメイン抗体(dAbs)(Wardら(1989)Nature 341,544)を含む。その特異的結合部位を保持する抗体フラグメントの合成に関与する技術の一般的な総説は、Winter & Milstein(1991)Nature 349,293-299中に見出される。
【0099】
抗体または抗原フラグメントは、インタクトな抗体、Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合したFv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント,Fab’フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)、単一可変ドメイン(例えば、VHおよびVLドメイン)およびドメイン抗体(dAb、単一フォーマットおよび二重フォーマット[すなわち、dAb-リンカー-dAbを含む)からなる群から選択されてもよい。好ましくは、抗体またはその抗原結合フラグメントは、単鎖Fv(scFv)である。
【0100】
1つ以上の結合部分は、抗体様結合剤、例えばアフィボディーまたはアプタマーを含んでいてもよく、またはそれらからなっていてもよい。
【0101】
「scFv分子」とは、VHおよびVLパートナードメインが、可撓性オリゴペプチドを介して連結されている分子を意味する。
【0102】
全抗体ではなく、抗体フラグメントを使用する利点は、数倍にも及ぶ。フラグメントのサイズが小さいほど、改善された薬理学的特性(例えば、固形組織へのより良好な浸透)がもたらされるだろう。補体結合のような全抗体のエフェクター機能が除去される。Fab、Fv、ScFvおよびdAb抗体フラグメントは、全てE.Coliで発現され、E.Coliから分泌されるため、上述のフラグメントの大量生産が容易になる。
【0103】
全抗体およびF(ab’)2フラグメントは、「二価」である。「二価」とは、前記抗体およびF(ab’)2フラグメントが2つの抗原結合部位を有することを意味する。これとは対照的に、Fab、Fv、ScFvおよびdAbフラグメントは一価であり、1つの抗原結合部位のみを有する。
【0104】
抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってもよい。適切なモノクローナル抗体は、既知の技術、例えば、「Monoclonal Antibodies:A manual of techniques」,H Zola(CRC Press,1988)および「Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and applications」,J G R Hurrell(CRC Press,1982)に開示される技術(両方とも本明細書に参考として組み込まれる)によって調製されてもよい。
【0105】
潜在的な結合分子がライブラリーから選択される場合、規定のモチーフを有する1つ以上のセレクターペプチドが通常用いられる。結合分子との相互作用を可能にするペプチドまたは帯電した極性または疎水性の側鎖における柔軟性を下げる構造を与えるアミノ酸残基を、セレクターペプチドのモチーフの設計に使用してもよい。例えば、
(i)プロリンは、その側鎖が、アルファ炭素と窒素の両方に結合しているため、ペプチド構造を安定化し得る。
(ii)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンは、芳香族側鎖を有し、きわめて疎水性であり、一方、ロイシンおよびイソロイシンは、脂肪族側鎖を有し、これも疎水性である。
(iii)リジン、アルギニンおよびヒスチジンは、塩基性側鎖を有し、中性pHで正に帯電し、一方、アスパラギン酸およびグルタミン酸は、酸性側鎖を有し、中性pHで負に帯電する。
(iv)アスパラギンおよびグルタミンは、中性pHで中性であるが、水素結合に関与し得るアミド基を含む。
(v)セリン、トレオニンおよびチロシン側鎖は、ヒドロキシル基を含み、このヒドロキシル基は、水素結合に関与し得る。
【0106】
典型的には、結合分子の選択は、結合分子の種類に対応するスポットへの結合を解析するためのアレイ技術およびシステムの使用を含んでいてもよい。
【0107】
1つ以上のタンパク質結合部分は、検出可能な部分を含んでいてもよい。検出可能な部分は、蛍光部分、発光部分、化学発光部分、放射性部分および酵素部分からなる群から選択されてもよい。
【0108】
本発明の方法のさらなる実施形態において、工程(c)は、1つ以上のタンパク質に結合することができる第2の結合剤を含むアッセイを用いて行われてもよく、第2の結合剤も、検出可能な部分を含んでいる。好適な第2の結合剤は、第1の結合剤に関連して上に詳細に記載されている。
【0109】
したがって、試験されるサンプル中の目的のタンパク質は、まず、第1の結合剤を用いて単離および/または固定化された後、第2の結合剤を用い、バイオマーカーの存在および/または相対量を決定することができる。
【0110】
一実施形態において、第2の結合剤は、抗体またはその抗原結合フラグメントであり、典型的には、組換え抗体またはそのフラグメントである。簡便には、抗体またはそのフラグメントは、scFv;Fab;免疫グロブリン分子の結合ドメインからなる群から選択される。 適切な抗体およびフラグメント、およびこれらを製造するための方法は、上に詳細に記載されている。
【0111】
または、第2の結合剤は、抗体様結合剤(例えば、アフィボディーまたはアプタマー)であってもよい。
【0112】
または、試験されるサンプル中のタンパク質上の検出可能な部分が、特定の結合対(例えば、ビオチン)のメンバーを含むか、またはこのメンバーからなる場合、第2の結合剤は、特定の結合対の相補体(例えば、ストレプトアビジン)を含んでいてもよく、またはこの相補体からなっていてもよい。
【0113】
検出アッセイが使用される場合、検出可能な部分は、蛍光部分;発光部分;化学発光部分;放射性部分;酵素部分からなる群から選択される。本発明の方法における使用に適切な検出可能な部分の例は、上に記載されている。
【0114】
血清または血漿タンパク質を検出するための好ましいアッセイには、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫ラジオメトリックアッセイ(IRMA)および免疫酵素アッセイ(IEMA)(モノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体を用いるサンドイッチアッセイを含む)が挙げられる。 例示的なサンドイッチアッセイは、Davidらによって、米国特許第4,376,110号および第4,486,530号に記載されており、本明細書に参考として組み込まれる。 スライド上での細胞の抗体染色は、当業者によく知られているように、細胞研究室の診断試験で周知の方法で使用することができる。
【0115】
したがって、一実施形態において、アッセイは、典型的には、通常は固相アッセイにおいて有色反応生成物を与える酵素の使用を含むELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)である。西洋ワサビペルオキシダーゼおよびホスファターゼなどの酵素が広く使用されている。ホスファターゼ反応を増幅する方法は、NADPを基質として使用し、第2の酵素系の補酵素として作用するNADを生成することである。Escherichia coli由来のピロフォスファターゼは、この酵素が組織内に存在せず、安定であり、良好な反応色を与えるため、良好なコンジュゲートを与える。ルシフェラーゼなどの酵素に基づく化学発光システムも使用することができる。
【0116】
ビタミンであるビオチンとのコンジュゲート化は、酵素によって結合したアビジンまたはストレプトアビジンとの反応によって容易に検出することができ、大きな特異性およびアフィニティで結合するので、頻繁に使用される。
【0117】
別の実施形態において、タンパク質検出に使用されるアッセイは、簡便には、蛍光定量アッセイである。したがって、第2の結合剤の検出可能な部分は、Alexaフルオロフォア(例えば、Alexa-647)などの蛍光部分であってもよい。
【0118】
好ましくは、第1の態様に記載される方法の工程(c)、(g)、(f)および/または(j)は、アレイを用いて行われる。アレイは、ビーズ系アレイまたは表面系アレイであってもよい。アレイが、マクロアレイ、マイクロアレイ、ナノアレイからなる群から選択されてもよい。
【0119】
アレイ自体は、当該技術分野において周知である。典型的には、アレイは、空間があけられた(すなわち、離間した)領域(「スポット」)を有し、それぞれが有限な領域を有し、固体支持体表面に作られる線形または二次元構造で作られる。アレイは、ビーズ構造であってもよく、各ビーズは、分子コードまたはカラーコードによって特定され得るか、または連続フローで特定され得る。解析は、サンプルが溶液からその分子群を吸着する一連のスポットの上を通過する場合に、順次実行することもできる。固体支持体は、典型的にはガラスまたはポリマーであり、最も一般的に使用されるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンである。固体支持体は、チューブ、ビーズ、ディスク、シリコンチップ、マイクロプレート、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、他の多孔質膜、非多孔質膜(例えば、プラスチック、ポリマー、パースペックス、シリコン)、複数のポリマーピン、または複数のマイクロタイターウェル、またはタンパク質、ポリヌクレオチドおよび他の適切な分子を固定化し、および/またはイムノアッセイを実施するのに適した他の任意の表面の形態であってもよい。結合プロセスは当該技術分野において周知であり、一般にタンパク質分子、ポリヌクレオチドなどを固体支持体に共有結合または物理吸着によって架橋することからなる。または、アフィニティタグまたは類似の構築物を介したプローブのアフィニティカップリングを使用してもよい。接触印刷または非接触印刷、マスキングまたはフォトリソグラフィのような周知の技術を使用することによって、各スポットの位置を定義することができる。総説については、Jenkins,R.E.,Pennington,S.R.(2001,Proteomics,2,13-29)およびLalら(2002,Drug Discov Today 15;7(18 Suppl):S143-9)を参照のこと。
【0120】
典型的には、アレイは、マイクロアレイである。「マイクロアレイ」とは、少なくとも約100/cm2、好ましくは少なくとも約1000/cm2の離間した領域の密度を有する領域のアレイの意味を含む。マイクロアレイ内の領域は、約μ10~250μmの範囲の典型的な寸法(例えば直径)を有し、アレイ内の他の領域からほぼ同じ距離だけ離れている。または、アレイは、マクロアレイまたはナノアレイであってもよい。
【0121】
適切な結合分子(上述)が同定され、単離されると、当業者は、分子生物学の分野で周知の方法を用いてアレイを製造することができる。
【0122】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)で測定される1つ以上のバイオマーカーは、ヒト細胞によって発現される1つ以上の相同遺伝子産物を含むか、またはヒト細胞によって発現される1つ以上の相同遺伝子産物からなる。さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)で測定される1つ以上のバイオマーカーは、タンパク質またはポリペプチドである。さらなる実施形態または代替の実施形態において、工程(c)で測定される1つ以上のバイオマーカーは、核酸(例えば、DNA、mRNAまたはcDNAなど)である。
【0123】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、当該方法は、インビトロ、インビボ、エクスビボまたはインシリコで行われる。例えば、当該方法は、特に、インビトロで行われてもよい。
【0124】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、皮膚感作は、過敏反応(例えば、細胞媒介性過敏反応)である。さらなる実施形態または代替の実施形態において、過敏反応は、IV型過敏反応である。さらなる実施形態または代替の実施形態において、過敏反応は、アレルギー性接触皮膚炎(ACD)である。
【0125】
「試験薬剤」には、感作効力および/または感作状態が決定される任意の化学物質(または化学物質の混合物)が含まれる。
【0126】
「感作状態」とは、化学物質(または化学物質の混合物)が感作剤(例えば、皮膚感作剤および/または呼吸器感作剤)であるか否かを含むか、または意味する。
【0127】
「皮膚感作剤」とは、哺乳動物においてIV型の遅延型過敏反応を誘発し、引き起こす能力を有する任意の薬剤を意味する。好ましくは、IV型の遅延型過敏反応は、DC媒介性である。
【0128】
一実施形態において、1つ以上の「皮膚感作剤」は、哺乳動物における表皮接触部位でIV型の遅延型過敏反応を誘発し、引き起こす能力を有する薬剤である。
【0129】
哺乳動物は、家畜または農場動物であってもよい。好ましくは、哺乳動物は、ラット、マウス、モルモット、ネコ、イヌ、ウマまたは霊長類である。最も好ましくは、哺乳動物はヒトである。上述のように、感作を決定するインビボ法は、当技術分野で公知である。好ましい方法は、局所リンパ節アッセイである(詳細については、Basketter,D.A.ら、Local lymph node assay-validation,conduct and use in practice.Food Chem Toxicol,2002.40(5):p.593-8を参照のこと)。さらに好適な、しかしあまり好ましくはない方法は、モルモット最大化試験である(詳細については、Magnusson,B.およびA.M.Kligman,The identification of contact allergens by animal assay.The guinea pig maximization test.J Invest Dermatol,1969.52(3):p.268-76を参照のこと)。
【0130】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、樹状細胞の集団または樹状様細胞の集団は、樹状様細胞の集団である。さらなる実施形態または代替の実施形態において、樹状様細胞は、骨髄樹状様細胞である。さらなる実施形態または代替の実施形態において、骨髄樹状様細胞は、骨髄樹状細胞に由来する。さらなる実施形態または代替の実施形態において、骨髄樹状細胞に由来する細胞は、骨髄性白血病由来細胞である。さらなる実施形態または代替の実施形態において、骨髄性白血病由来細胞は、KG-1、THP-1、U-937、HL-60、Monomac-6、AML-193およびMUTZ-3からなる群より選択される。さらなる実施形態または代替の実施形態において、樹状様細胞は、MUTZ-3細胞である。MUTZ-3細胞は、Deutsche Sammlung fur Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)(ブラウンシュヴァイク、ドイツ)から入手可能なヒト急性骨髄単球性白血病細胞である(www.dsmz.de;DMSZ No.ACC 295)。
【0131】
「樹状様細胞」とは、樹状細胞に特徴的な機能特性および表現型特性(例えば、形態学的特性)、共刺激分子およびMHCクラスII分子の発現、マクロファージを貪食する能力および休止T細胞を活性化する能力を示す非樹状細胞を意味する。
【0132】
一実施形態において、樹状様細胞は、サイトカインでの刺激後、CD1d、MHCクラスIおよびIIを介して抗原を提示し、および/または特異的T細胞増殖を誘発する。
【0133】
一実施形態において、樹状様細胞は、CD34+樹状細胞前駆細胞である。場合により、CD34+樹状細胞前駆体は、サイトカイン刺激の際に、CD1d、MHCクラスIおよびIIを介して抗原を提示する表現型を獲得し、特異的T細胞増殖を誘発し、および/または炎症性メディエーターで刺激されたときに成熟した転写および表現型プロフィール(すなわち、未成熟樹状細胞またはランゲルハンス様樹状細胞と同様の表現型)を示す。
【0134】
一実施形態において、樹状細胞の集団または樹状様細胞の集団は、樹状細胞の集団である。好ましくは、樹状細胞は、原発性樹状細胞である。好ましくは、樹状細胞は、骨髄樹状細胞である。
【0135】
樹状細胞は、機能、表現型によって、および/または遺伝子発現パターンによって、特に細胞表面表現型によって認識され得る。これらの細胞は、その特徴的な形態、高レベルの表面MHCクラスII発現およびCD4+および/またはCD8+T細胞、特にナイーブT細胞に抗原を提示する能力によって特徴付けられる(Steinmanら(1991)Ann.Rev.Immunol.9:271)。
【0136】
樹状細胞の細胞表面は特有のベール様突起を伴った珍しい形状であり、細胞表面マーカーCD11cおよびMHCクラスIIの発現を特徴とする。ほとんどのDCは、T細胞、B細胞、単球/マクロファージおよび顆粒球を含む他の白血球系列のマーカーに対して陰性である。樹状細胞の亜集団は、33D1、CCR1、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CD1a-d、CD4、CD5、CD8alpha、CD9、CD11b、CD24、CD40、CD48、CD54、CD58、CD80、CD83、CD86、CD91、CD117、CD123(IL3Ra)、CD134、CD137、CD150、CD153、CD162、CXCR1、CXCR2、CXCR4、DCIR、DC-LAMP、DC-SIGN、DEC205、E-カドへリン、ランゲリン、マンノースレセプター、MARCO、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9および数種類のレクチンを含め、さらなるマーカーも発現する場合がある。
【0137】
これらの細胞表面マーカーの発現パターンは、樹状細胞の成熟度、それらの由来組織および/またはそれらの由来種とともに変化し得る。未成熟樹状細胞は、低レベルのMHCクラスIIを発現するが、抗原タンパク質を細胞内に取り込み、MHCクラスII分子との複合体の状態で提示するために処理することができる。活性化樹状細胞は、高レベルのMHCクラスII、ICAM-1およびCD86を発現し、例えば、混合白血球反応(MLR)において、同種異系ナイーブT細胞の増殖を刺激することができる。
【0138】
機能的には、樹状細胞または樹状様細胞は、抗原提示の決定のための任意の簡便なアッセイによって同定されてもよい。そのようなアッセイは、試験抗原の提示、その後のT細胞増殖の決定、IL-2の放出などによって、抗原感作および/またはナイーブT細胞を刺激する能力を試験することを含んでいてもよい。
【0139】
タンパク質および/または核酸の濃度を検出および/または測定する方法は、当業者に周知である(例えば、SambrookおよびRussell,2001,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照のこと)。
【0140】
タンパク質の検出および/または測定のための好ましい方法としては、ウエスタンブロット、ノースウェスタンブロット、免疫吸着アッセイ(ELISA)、抗体マイクロアレイ、組織マイクロアレイ(TMA)、免疫沈降、インサイチュハイブリダイゼーションおよび他の免疫組織化学技術、ラジオイムノアッセイ(RIA)、イムノラジオメトリックアッセイ(IRMA)および免疫酵素アッセイ(IEMA)(モノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体を用いるサンドイッチアッセイを含む)が挙げられる。 例示的なサンドイッチアッセイは、Davidらによって、米国特許第4,376,110号および第4,486,530号に記載されており、本明細書に参考として組み込まれる。 スライド上での細胞の抗体染色は、当業者によく知られているように、細胞研究室の診断試験で周知の方法で使用することができる。
【0141】
典型的には、ELISAは、通常は固相アッセイにおいて有色反応生成物を与える酵素の使用を含む。西洋ワサビペルオキシダーゼおよびホスファターゼなどの酵素が広く使用されている。ホスファターゼ反応を増幅する方法は、NADPを基質として使用し、第2の酵素系の補酵素として作用するNADを生成することである。Escherichia coli由来のピロフォスファターゼは、この酵素が組織内に存在せず、安定であり、良好な反応色を与えるため、良好なコンジュゲートを与える。ルシフェラーゼなどの酵素に基づく化学発光システムも使用することができる。
【0142】
ビタミンであるビオチンとのコンジュゲート化は、酵素によって結合したアビジンまたはストレプトアビジンとの反応によって容易に検出することができ、大きな特異性およびアフィニティで結合するので、頻繁に使用される。
【0143】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に係る方法で使用するためのアレイであって、本発明の第1の態様で定義された1つ以上の結合部分を含むアレイを提供する。
【0144】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、アレイは、本発明の第1の態様で定義されるようなそれぞれのバイオマーカーのための1つ以上の結合部分を含む。
【0145】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、1つ以上の結合部分は、固定化される。
【0146】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、アレイは、ビーズ系アレイである。さらなる実施形態または代替の実施形態において、アレイは、表面系アレイである。
【0147】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、アレイは、マクロアレイ、マイクロアレイ、ナノアレイからなる群から選択される。
【0148】
本発明の第2の態様のアレイは、それぞれ第1の態様で定義したバイオマーカーに選択的に結合することができる1つ以上、好ましくは2つ以上の結合部分を含んでいてもよい。したがって、アレイは、第1の態様で定義されるバイオマーカーの任意の特定の選択と相関関係がある、バイオマーカーに特異的な結合部分の特定の選択を含んでいてもよく、またはその特定の選択からなっていてもよい。
【0149】
本発明の第3の態様は、薬剤の皮膚感作能を決定するための、本発明の第1の態様で定義される2つ以上のバイオマーカーの使用を提供する。
【0150】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、薬剤の皮膚感作効力を決定するための表Aに定義される群から選択されるバイオマーカーの使用であって、好ましくは、バイオマーカーは、表A(i)および/または表A(ii)に定義される群から選択される、使用が提供される。
【0151】
さらなる実施形態または代替の実施形態において、薬剤の皮膚感作効力を決定するための表Aに定義される群から選択されるバイオマーカーに対する特異性を有する結合部分の使用であって、好ましくは、結合部分は、表A(i)および/または表A(ii)に定義される群から選択されるバイオマーカーに対する特異性を有する、使用が提供される。
【0152】
本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様に係る方法で使用するための解析キットであって、
(a)本発明の第2の態様に係るアレイと;
(b)本発明の第1の態様で定義した方法を行うための指示書(任意)とを含む解析キットを提供する。
さらなる実施形態または代替の実施形態において、解析キットは、本発明の第1の態様において定義される1つ以上のコントロール薬剤をさらに含む。
【0153】
本発明の第5の態様は、患者のI型過敏反応(ACDなど)を治療または予防する方法であって、
(a)患者がさらされるか、または既にさらされた1つ以上の試験薬剤を提供する工程と;
(b)工程(a)で提供された1つ以上の試験薬剤が、皮膚感作剤であるか、および/または本発明の方法を用いて感作剤としての効力があるかどうかを決定する工程とを含み、
(c)1つ以上の試験薬剤が、皮膚感作剤であるか、および/または特定の効力を有する皮膚感作剤であると同定された場合、その1つ以上の試験薬剤に患者がさらされるのを減らすか、または予防し、および/または感作の症状の適切な治療を行う方法を提供する。
【0154】
好ましくは、患者がさらされるか、または既にさらされた1つ以上の試験薬剤は、患者が、現在、少なくとも1ヶ月に1回、例えば2週間に少なくとも1回、毎週少なくとも1回、または毎日少なくとも1回、さらされる薬剤である。
【0155】
感作の症状の治療には、例えば、局所ステロイドが挙げられる。
【0156】
好ましくは、治療方法は、本発明の第1の態様に記載された方法、およびそこに記載された1つ以上の実施形態と一致する。
【0157】
本発明の第6の態様は、本発明の方法を操作するための、例えば、工程(c)(およびその後の発現測定工程)の発現データを解釈し、それによって、1つ以上の試験薬剤が呼吸感作剤であるかどうか、および/または1つ以上の試験薬剤の感作効力を決定するためのコンピュータプログラムを提供する。コンピュータプログラムは、プログラム化されたSVMであってもよい。コンピュータプログラムは、当業者に公知の適切なコンピュータ可読媒体に記録されてもよい。適切なコンピュータ可読媒体は、コンパクトディスク(CD-ROM、DVD、ブルーレイなどを含む)、フロッピーディスク、フラッシュメモリドライブ、ROMまたはハードディスクドライブを含んでいてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムを実行するのに適したコンピュータにインストールされていてもよい。
【0158】
当業者であれば、矛盾しない全ての実施形態を組み合わせて使用することができることを理解するであろう。したがって、本発明の1つの態様の実施形態は、本発明の第2の態様にも等しく適用され得る。
【0159】
本発明の特定の態様を具体化する好ましい非限定的な実施例を、以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【
図1A】GARDアッセイを用いたバイナリ予測。(A)ベンチマーク化学物質(実線)と、37の新しい化学物質(点線)のバイナリ予測のためのROC評価。(B)GARD SVM決定値(DV)は、CLP効力(37化学物質、11の1A、19の1B、7のカテゴリーなし)と相関関係にある。効力の増加は、DVの増加と関係がある。
【
図1B】GARDアッセイを用いたバイナリ予測。(A)ベンチマーク化学物質(実線)と、37の新しい化学物質(点線)のバイナリ予測のためのROC評価。(B)GARD SVM決定値(DV)は、CLP効力(37化学物質、11の1A、19の1B、7のカテゴリーなし)と相関関係にある。効力の増加は、DVの増加と関係がある。
【
図2A】52変数を使用した、ランダムフォレストモデルを開発するために使用されたトレーニングデータセットの可視化。(A)化学物質のCLP分類に従って着色された別個の生物学的複製物を含むトレーニングセットのPCAプロット。(B)階層的にクラスタリングされたサンプルの複製物を含むトレーニングセットのヒートマップ。ここで、グレースケールは、相対的な遺伝子発現強度を表す。
【
図2B】52変数を使用した、ランダムフォレストモデルを開発するために使用されたトレーニングデータセットの可視化。(A)化学物質のCLP分類に従って着色された別個の生物学的複製物を含むトレーニングセットのPCAプロット。(B)階層的にクラスタリングされたサンプルの複製物を含むトレーニングセットのヒートマップ。ここで、グレースケールは、相対的な遺伝子発現強度を表す。
【
図3A】52変数を使用したテストデータセットの可視化。(A)CLP分類に従って着色された別個の生物学的複製物を含む試験セットのPCAプロット。トレーニングセットに対してPCAが構築され、試験セットは、PCAに影響を与えることなくプロットされた。(B)階層的にクラスタリングされたサンプルを含む試験セットのヒートマップ。ここで、グレースケールは、相対的な遺伝子発現強度を表す。
【
図3B】52変数を使用したテストデータセットの可視化。(A)CLP分類に従って着色された別個の生物学的複製物を含む試験セットのPCAプロット。トレーニングセットに対してPCAが構築され、試験セットは、PCAに影響を与えることなくプロットされた。(B)階層的にクラスタリングされたサンプルを含む試験セットのヒートマップ。ここで、グレースケールは、相対的な遺伝子発現強度を表す。
【
図4A】CLP効力モデルは、ヒト効力に関する情報を含む。(A)ヒト効力に応じて着色された利用可能なヒト効力分類を有する複写物のトレーニングセットおよび試験セットサンプルのPCAプロット。PCAは、入力として52のランダムフォレスト変数に基づいており、トレーニングセットに対してPCAが構築された。(B)試験セットのみを可視化するPCAプロット。
【
図4B】CLP効力モデルは、ヒト効力に関する情報を含む。(A)ヒト効力に応じて着色された利用可能なヒト効力分類を有する複写物のトレーニングセットおよび試験セットサンプルのPCAプロット。PCAは、入力として52のランダムフォレスト変数に基づいており、トレーニングセットに対してPCAが構築された。(B)試験セットのみを可視化するPCAプロット。
【
図5】3つのCLP分類の多群比較からの883の最も重要な遺伝子の投入に基づく経路分析。
【
図6】経路分析によって同定された場合の、各タンパク質反応性群に固有の経路。
【
図7A】Venn3つの異なるタンパク質反応性分類の共通遺伝子(A)および生物学的経路(B)のVennダイアグラム[82]。MA=マイケル受容体;SB=シッフ塩基生成;SN=二分子求核置換/求核芳香族置換。
【
図7B】Venn3つの異なるタンパク質反応性分類の共通遺伝子(A)および生物学的経路(B)のVennダイアグラム[82]。MA=マイケル受容体;SB=シッフ塩基生成;SN=二分子求核置換/求核芳香族置換。
【
図8】ゲノムアレルゲン迅速検出(GARD)-ワークフロー。SVMモデルは、GARD予測シグネチャを表す200遺伝子の遺伝子発現データに基づいて、化学的に処理された細胞に由来する各RNAサンプルの決定値を計算する。決定値は、化学物質のバイナリ分類に使用される[3]。
【
図9】GARD決定値と人間効力分類との関係。化学物質は、人間の効力分類に従ってソートされており、三つ組から導かれたそれぞれの平均SVM決定値はY軸上に見出すことができる。X軸上の数字は、表8の化学物質の数を示す。
【
図10】197サンプルに基づくO-PLSモデル(Y=ヒト効力および感作剤/非感作剤)の散布図。ヒト効力分類は、Basketterら(2014)に記載されており、分類1は、最高効力を表し、6は、非感作剤を表す。
【
図11】O-PLSモデルの順列プロットY-観測の順序がランダムに並べ替えられたいくつかのモデルとの、元のモデルのフィッティングおよび予測の良さの比較。プロットは、モデルが偶然によって得られていないことを強く示している。
【
図12】Y予測値に対してプロットされたY観測値。RMSEE(推定の二乗平均平方根誤差)は、モデルに対する観測値の適合誤差を示す。RMSEcvも同様の測定値であるが、相互検証を使用して推定される。
【
図13A】PCAプロットとヒートマップランダムフォレストモデルによって同定された18の変数の入力に基づいて、トレーニングセット(A)、トレーニングおよび試験セット(B)および試験セットのみ(C)のPCA。それぞれの円は、CLP分類(黄色=1A、ピンク色=1B、青色=カテゴリーなし)に従って着色された化学物質を表す。(D)トレーニングセットのヒートマップ、(E)18の同定されたバイオマーカーの発現に基づく試験セットのヒートマップ。
【
図13B】PCAプロットとヒートマップランダムフォレストモデルによって同定された18の変数の入力に基づいて、トレーニングセット(A)、トレーニングおよび試験セット(B)および試験セットのみ(C)のPCA。それぞれの円は、CLP分類(黄色=1A、ピンク色=1B、青色=カテゴリーなし)に従って着色された化学物質を表す。(D)トレーニングセットのヒートマップ、(E)18の同定されたバイオマーカーの発現に基づく試験セットのヒートマップ。
【
図13C】PCAプロットとヒートマップランダムフォレストモデルによって同定された18の変数の入力に基づいて、トレーニングセット(A)、トレーニングおよび試験セット(B)および試験セットのみ(C)のPCA。それぞれの円は、CLP分類(黄色=1A、ピンク色=1B、青色=カテゴリーなし)に従って着色された化学物質を表す。(D)トレーニングセットのヒートマップ、(E)18の同定されたバイオマーカーの発現に基づく試験セットのヒートマップ。
【
図13D-1】PCAプロットとヒートマップランダムフォレストモデルによって同定された18の変数の入力に基づいて、トレーニングセット(A)、トレーニングおよび試験セット(B)および試験セットのみ(C)のPCA。それぞれの円は、CLP分類(黄色=1A、ピンク色=1B、青色=カテゴリーなし)に従って着色された化学物質を表す。(D)トレーニングセットのヒートマップ、(E)18の同定されたバイオマーカーの発現に基づく試験セットのヒートマップ。
【
図13D-2】PCAプロットとヒートマップランダムフォレストモデルによって同定された18の変数の入力に基づいて、トレーニングセット(A)、トレーニングおよび試験セット(B)および試験セットのみ(C)のPCA。それぞれの円は、CLP分類(黄色=1A、ピンク色=1B、青色=カテゴリーなし)に従って着色された化学物質を表す。(D)トレーニングセットのヒートマップ、(E)18の同定されたバイオマーカーの発現に基づく試験セットのヒートマップ。
【
図13D-3】PCAプロットとヒートマップランダムフォレストモデルによって同定された18の変数の入力に基づいて、トレーニングセット(A)、トレーニングおよび試験セット(B)および試験セットのみ(C)のPCA。それぞれの円は、CLP分類(黄色=1A、ピンク色=1B、青色=カテゴリーなし)に従って着色された化学物質を表す。(D)トレーニングセットのヒートマップ、(E)18の同定されたバイオマーカーの発現に基づく試験セットのヒートマップ。
【
図13E】PCAプロットとヒートマップランダムフォレストモデルによって同定された18の変数の入力に基づいて、トレーニングセット(A)、トレーニングおよび試験セット(B)および試験セットのみ(C)のPCA。それぞれの円は、CLP分類(黄色=1A、ピンク色=1B、青色=カテゴリーなし)に従って着色された化学物質を表す。(D)トレーニングセットのヒートマップ、(E)18の同定されたバイオマーカーの発現に基づく試験セットのヒートマップ。
【発明を実施するための形態】
【0161】
実施例A
序論
皮膚感作と、関連する疾患(例えば、接触性アレルギー)は、一般的な集団のかなりの部分が罹患しており、先進国では、推定有病割合は15~20%である[1]。IV型過敏反応であるアレルギー性接触皮膚炎(ACD)は、定期的に化学物質にさらされるか、または水仕事に関わる特定の職業集団で一般的である[2]。しかし、化粧品や家庭用製品にも、多くの皮膚感作性の化学物質が含まれている可能性がある。異なる法的枠組みを通じて、欧州連合は、化粧品とその成分に関する動物試験を禁止しており[3]、REACHの観点では、60,000を超える化学物質に試験のための必要条件を課している[4]。分類と副分類の規制要件を満たすために、化学物質の皮膚感作能と効力に関する情報を提供しなければならない。これらの要求を満たす、動物を用いない代替アッセイが緊急に必要とされている。
皮膚感作、その結果、ACDを引き起こす分子事象は、ある化学物質によって引き起こされる多数の連続的な事象(KE)によって特徴付けることができ、OECDによって記載されているように、有害性発現経路(AOP)としてまとめられてきた[5]。開始事象(KE1)は、より深い皮膚層に入り込んだ後の皮膚感作性化学物質による共有結合性のタンパク質修飾であると定義される。その後のKE2は、ケラチノサイト活性化時の炎症反応を表す。KE3は、樹状細胞の活性化に対応しており、次に、T細胞の活性化および増殖が起こる(KE4)。感作剤に再びさらされると、ACDの発生が引き起こされる場合があり、ACDは、特定のTh1およびCD8+T細胞によって誘発される皮膚病変によって特徴付けられる有害な結果である。AOPのKEは十分に記述されているが、個々の重要な事象の基礎となる生物学の詳細な機構的理解はまだない[5]。
【0162】
マウス局所リンパ節アッセイ(LLNA)[6]は、皮膚感作効力情報を含むハザード同定と特性評価のためのデータを提供することができるため、長年、皮膚感作試験の好ましい代替手段であった。しかし、このアッセイは、溶媒の影響に対する感受性や、偽陽性結果に関する問題などの特定の制限を特徴とする[7]。最近まとめられているように、ハザード同定のための異なるテストプラットフォームからのデータを統合するための計算手法を含む化学試験に使用される動物実験を減らすために、いくつかの非動物予測方法が開発された[8]。OECDでは、ARE-NRF2ルシフェラーゼ法(KeratinoSens(商標))アッセイ[9、10]、Direct Peptide Reactivity Assay(DPRA)[11]およびヒト細胞系活性化試験(h-ClAT)[12]といった皮膚感作のための3つの試験方法が試験ガイドラインとして許容されている。ハザード同定に加えて、定量的なリスクアセスメントと曝露限界の定義を可能にするためには、皮膚感作剤の効力に関する情報が不可欠である。皮膚感作剤効力の予測に関するいくつかの手法が発表されており、例えば、KE2を標的とするアッセイ(表皮等価感作剤効力アッセイ[13]、SENS-IS[14])およびU-SENSアッセイモデリングKE3[15]など、近年、[8]にまとめられている。さらに、多くはいくつかのインビトロ法からの情報と組み合わせたインシリコモデルが記載されている。例えば、QSAR[16]、人工ニューラルネットワーク[17]、ベイズモデルを含む確率論的モデルと統合テスト戦略(ITS)アプローチ[18-21]。
【0163】
化学物質の皮膚感作能力の評価のための代替アッセイであるゲノムアレルゲン迅速検出(GARD)は、非感作性のコントロールと比較して、化学物質を感作することによって誘発されるヒト骨髄細胞株の差次的発現の全体的な転写分析に基づく。得られたバイオマーカーシグネチャであるGARD予測シグネチャ(GPS)は、200の転写物からなり、リファレンス化学物質のセットでトレーニングされたサポートベクトルマシン(SVM)モデルへの入力として使用される[22]。転写の変化は、感作中の樹状細胞(KE3)の成熟および活性化に関連し得る。26の盲検化された化学物質に基づく社内試験では、アッセイの精度は89%と推定された[23]。以前の観察結果は、GARDアッセイが効力評価にも関連する情報を提供できることを示した。第1に、シグナル伝達経路は、化学反応性基のサブセットの効力に応じて、異なる様式で制御された[24]。第2に、より強力な感作剤は、一般的に、弱い感作剤と比較してより高いGARD SVM決定値が割り当てられ、このことは、効力情報(未発表の観察結果)に寄与するシグネチャ内に遺伝子が存在することを示している。しかし、GARD予測シグネチャの情報は、Classification,Labelling and Packaging(CLP)Regulationに記載されるような十分に定義された効力グループに完全に階層化するには十分なものではなかった[25]。
【0164】
CLP規制は、Globally Harmonised Systemに基づいており[25]、化学物質分類のために、非感作剤にはカテゴリーなし(no cat)、弱い感作剤にはカテゴリー1B、強い感作剤にはカテゴリー1Aの3つの分類を使用する。上に記載した観察結果に照らして、GARDを、CLPカテゴリーを対象とした化学的皮膚感作剤の効力予測のためのツールにさらに発展させることができるという仮説が立てられた。確立されたGARD Support Vector Machineモデルは、複数分類の問題に適用することができないため、ランダムフォレストモデリング[26]に基づく別の手法を使用した。ランダムフォレストは、決定木に基づく方法であり、マイクロアレイデータに十分に適している[27]。ランダムサブサンプリング(ブートストラッピング)により、データセットを内部的に繰り返しトレーニングセットと試験セットに分割する。試験セット中のサンプル(アウト・オブ・バッグ・サンプルと呼ばれる)は、データセット全体の約3分の1を含み、アウト・オブ・バッグ(OOP)エラー(すなわち、分類エラー)を推定するために使用される。
【0165】
ここでは、ランダムフォレストモデルを用いた監視付き機械学習に基づき、CLPカテゴリーに従って皮膚感作効力を予測する新しい手法を提示する。第1に、68の固有の化学物質と2の溶媒対照群サンプルを含むトレーニングセットからの全体的な遺伝子発現データを、ランダムフォレストモデルの入力として使用した。続いて、ランダムフォレストモデルを後方変数除去のためのアルゴリズムと組み合わせた。アルゴリズムは、最初に、マイクロアレイからの各遺伝子の変数重要度をランク付けし、次いで、前の繰り返しから最も重要度が低い変数を除去しつつ、次のランダムフォレストに繰り返し適合させた。この戦略を使用し、トレーニングセットからアウト・オブ・バッグサンプルを予測すると、最小のOOBエラー率で52遺伝子のセットを同定することができた。52遺伝子の予測性能は、以前はモデルには見られなかった18の化学物質を含む独立した試験セットを用いて挑戦された。この試験セット中の化学物質は、全体的な精度78%で予測することができた。この予測モデルに加え、細胞レベルでの皮膚感作効力の機構的理解をさらに改善するために経路分析を行うことにより、細胞の全トランスクリプトーム解析の多様性も実証し、このことは、異なる化学反応性分類が、別個のシグナル伝達経路を誘発するという仮説を裏付けるものである。
【0166】
材料および方法
細胞およびフローサイトメトリー
この試験で使用した骨髄細胞株は、MUTZ-3(DSMZ、ブラウンシュヴァイク、ドイツ)に由来し、[22、28]に記載されているように維持された。各実験の前の細胞の表現型制御分析を、細胞の未熟状態を確認するためにフローサイトメトリーによって実施した。モノクローナル抗体は、以下のものを使用した:CD1a(DakoCytomation、グロストルプ、デンマーク)、CD34、CD86、HLA-DR(BD Biosciences、サンノゼ、米国)、全てFITCコンジュゲート化されている;CD14(DakoCytomation)、CD54、CD80(BD Biosciences)、全てPEコンジュゲート化されている。FITCおよびPEコンジュゲート化マウスIgG1(BD Biosciences)は、アイソタイプコントロールとして用いられ、ヨウ化プロピジウムは、非生存細胞のマーカーとして用いられた(BD Biosciences)。3バッチの細胞を独立した実験で24時間さらし、生存率およびCD86の発現をフローサイトメトリーによって評価した。全てのFACSサンプルを、データ収集のためにFACS Divaソフトウェアを用いてFACSCanto II機器で分析した。10,000事象を取得し、さらなる解析をFCS Express V4(De Novo Software、ロサンゼルス、CA)で行った。RNA抽出のための細胞をTRIzol(登録商標)(Life Technologies/Thermo Fisher Scientific、ウォルサム、米国)に溶解し、さらに使用するまで-20℃で保存した。
【0167】
化学物質と刺激
全ての化学物質は、Sigma Aldrich(米国セントルイス)から高純度で購入されたか、またはCosmetics Europeから提供されたものであった。全ての化学物質は、供給業者の推奨に従って保存された。細胞の化学的刺激は、先に記載したように行われた[28]。簡単に言えば、GARD投入濃度は、化学物質の溶解度および細胞毒性特性によって規定された。細胞毒性がなく、可溶性の化学物質では、最終濃度500μMが目標となり、溶解度が制限されている(媒体中、500μM未満)化学物質では、可能な最も高い濃度が目標となった。細胞毒性のある化学物質は、細胞の相対生存率90%を目標とした濃度で使用した。大部分の化学物質は、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはオートクレーブ処理されたMilliQ水で1000倍に予備希釈してから使用された。溶媒としてのDMSO濃度は、決して0.1%を超えなかった。この試験では、DMSOサンプルおよびMilliQサンプルが溶媒対照群として含まれ、したがって、これらは、非感作剤サンプルのグループに属する。
【0168】
RNA抽出、cDNAおよびアレイハイブリダイゼーション
TRIzol(登録商標)に溶解した細胞からのRNA単離を、製造者の指示に従って行った。標識されたセンスDNAは、推奨されるキットとコントロールを用い、Affymetrix(Affymetrix、クリーブランド、米国)のプロトコルに従って合成した。cDNAをHuman Gene 1.0 STアレイ(Affymetrix)にハイブリダイズし、さらに処理し、供給業者の推奨に従ってスキャンした。
【0169】
バイナリ分類
学習アルゴリズム[22]への変数入力としてGPSからのSCAN標準化された[29、30]発現データを用い、SVMに基づく既に確立されたモデルを用い、表1にまとめた37の化学物質を感作剤または非感作剤に分類するバイナリ分類を行った。モデル構築の前に、トレーニングセットと試験化学物質との間の潜在的なバッチ効果は、トレーニングセットに対する試験化学物質のアレイ発現値をスケーリングすることによって除外された。トレーニングセットのDMSO溶媒対照群サンプル中の各遺伝子に関する平均発現値と、試験化学物質の由来となるバッチ中のDMSOサンプル中の同じ遺伝子に関する平均発現値の比率を計算することによって、スケーリングファクターを作成した。次いで、各遺伝子に関するスケーリングファクターに、試験化学物質中の対応する遺伝子に関する遺伝子発現値を掛け算した。SVM予測は、既に記載されているように行った[22、31]。簡単に言うと、線形カーネルに基づくSVMモデルは、GPSの同定中に使用された元のトレーニングセットからの参照化学物質についてトレーニングされた[22]。トレーニングされたモデルは、その後、各試験化学物質にSVM決定値(SVM DV)を割り当てるために適用された。全ての試験化学物質について得られたSVM DVを用い、受信者操作特性(ROC)曲線を作成し、得られた曲線下面積(AUC)を分類尺度として使用した[32]。追加のパッケージe1071[33]およびROCR[34]を使用し、R統計的環境でSVMモデリングおよびROC曲線の可視化を行った。モデルの最終的な予測性能を評価する前に、[31]に記載されているように、表2のベンチマークサンプルの分類中に得られた最大予測性能のために、試験化学物質の個々の複製物ごとのSVM DVをカットオフに対して較正した。続いて較正されたSVM DVを最終的な分類に使用し、複製物の出力値の中央値が0より大きければ、その試験化学物質を感作物質として分類した。精度、感度および特異性は、Cooper統計を用いて推定された[35]。ノンパラメトリックTWOSample Wilcoxon検定は、CLPカテゴリー1A、1BとカテゴリーなしのSVM DV分布が有意に異なるかどうかを決定するために実施された。
【0170】
データ処理と統計解析
ランダムフォレストモデルを構築するために、68の化学物質と2の溶媒対照群サンプルをトレーニングセットと定義し、18の化学物質(各CLPカテゴリーから6)が独立した試験セットに含まれていた。試験セット中の化学物質は、モデルの構築には含まれなかった。目標は、3種類全てのCLPカテゴリー(表3)および異なる化学反応性グループ(表4)を表すバランスのとれたトレーニングセットを得ることであった。試験セット中の化学物質の大部分(18のうち14)は、以前にGARDアッセイを用いて調査されなかった37の化学物質を含む、最新の実験キャンペーン(表1)に由来していた。トレーニングセットでは、この最新のデータセットからサンプルの約3分の1(68のうち23)を得た。溶媒サンプルは、全てのプロジェクトの一部であったため、より高い複製数で表される。
【0171】
新しいマイクロアレイデータを従来のデータ[22、23]と併合し、品質管理を行った。品質が悪いため、4つのアレイが除外された。しかし、生物学的複製より少ない化学物質は存在しなかった。アレイデータをR統計環境にインポートし、SCANfastアルゴリズム[29、30]を用いて正規化した。いくつかの実験的キャンペーンを組み合わせる必要があったため、サンプル間のバッチ効果を除去するために、このデータセットをComBatメソッド[36、37]を使用して正規化した。この時点で、トレーニングセット中のサンプルは、試験セット中のサンプルから分離された。過剰適合を避けるために、予測バイオマーカーシグネチャの特定中に、分類子へのパラメータ適合のために、指定されたトレーニングセットのサンプルのみが使用され、試験セット中のサンプルは、特定されたシグネチャおよび特定の分類子の性能を検証するために別にされた。予測バイオマーカーシグネチャは、トレーニングセット中の個々のサンプルから、正規化され、バッチ補正された転写物強度を、ランダムフォレストモデルに供給し[26]、これをR/Bioconductorバージョン3.1.2のvarSelRFパッケージ[38]中の後方除外手順と組み合わせることによって特定された。変数重要度のランク付けに使用された最初のフォレストは、2000個のツリーに成長し、他の全てのパラメータは、デフォルト設定に維持された。このパッケージは、最小の重要な変数の20%を繰り返し落としつつ、フィッティングを繰り返し、ランダムフォレストモデルを評価する。変数の最良の実施セットは、最小誤差解からの1つの標準誤差(すなわち、1.seルール)内の遺伝子の最小数として、全てのフィッティングしたランダムフォレストからのOOBエラー率に基づいて選択された。変数選択手順は、100ブートストラップサンプルを用い、varSelRFパッケージの.632+ブートストラップ法による予測エラー率を推定することによって検証され、バイオマーカーシグネチャ中の個々の転写物の重要性は、ブートストラップサンプルの出現頻度VCF(Validation Call Frequencies(VCF)と呼ばれる)によって検証された。同定されたバイオマーカーシグネチャの予測性能は、トレーニングセット中のサンプルと、変数入力としてバイオマーカーシグネチャ中の選択された転写物だけを用い、以前のパラメータに基づいてランダムフォレストパッケージに新しいフォレストを構築することによって検証された[39]。このモデルを適用し、試験セット中の個々の複製サンプルをCLPカテゴリーに割り当て、各化学物質の生物学的複製刺激についての多数決を予測カテゴリーとして受け入れた。ヒートマップおよび主成分分析(PCA)プロットをQlucore Omics Explorer(Qlucore AB、ルンド、スウェーデン)で構築した。
【0172】
経路解析
経路解析は、例えば遺伝子発現データなどを調べるための経路解析ワークフローを提供する、Key Pathway Advisor(KPA)ツール[40]バージョン16.6を用いて実施された。これは、生物学的解釈を可能にするために、差次的に発現される遺伝子を、上流プロセスおよび下流プロセスの両方に関連付ける。観察したデータセットは、試験セットとトレーニングセットのSCANfastおよびComBatの正規化された発現値からなり、全308サンプル中、約3分の1が残るまで、一貫して低い分散を有する変数を除去するために、最初に分散フィルタリングした(10009変数、σ/σmax=0.1478)。次いで、差次的に制御された転写物を同定するために、CLPのカテゴリーなし、1Bおよび1Aに属するサンプルを比較するマルチグループ比較(ANOVA)を適用した。最も重要な883遺伝子(誤発見率FDR=10-9;p=8.53×10-11)をKPAへの入力として使用した(Affymetrix Exon IDおよびそれぞれのp値、過剰連結性分析)。タンパク質反応性に関連する経路を同定するために、同じ分散フィルタリングしたデータセットを、2群比較に基づいてフィルタリングした(t-検定、Toxtree結合分類の「結合なし」の非感作剤(81サンプル)対「マイケル受容体」の感作剤(MA、63サンプル)、「結合なし」対「シッフ塩基生成」(SB、29サンプル)、「結合なし」対「二分子求核置換/求核芳香族置換の組み合わせ」(SN、25サンプル)。各比較からの500個の最も著しく調節された変数を有するリストを、p値および倍数変化(因果推論分析)とともに、各タンパク質反応性群についてKPAツールに入力した。最小p値は、MAサンプルを「結合なし」と比較したときに達し(FDR=3.65x10-7)、その次は、SB(FDR=2.3x10-5)および(FDR=2.44x10-5)であった。
【0173】
スクリプト
以下は、正規化と効力予測に使用されるスクリプトである。
スクリプト1:モデル構築前にさまざまなプロジェクト間でバッチ効果に対処するために使用される。
【0174】
【0175】
【0176】
スクリプト2 :初期効力モデルの構築に使用される
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
結果
37の化学物質のバイナリ分類
51の化学物質の過去のGARDデータを補完し、化学反応性の分類および消費者製品における使用という観点でバランスをとりつつ、関連する化学物質の選択を表すために、37の十分に特徴付けられた化学物質を含む新規なデータセット(表1)を選択した。この新規な化学物質は、European Chemical Agency CLPデータベースおよび文献[15、41]に基づき、27の化学物質を提供して下さったSkin Tolerance Task Force of Cosmetics Europe (CE)と協力して選択された。この37の新規化学物質は、GPSと、SVM分類に基づく既に確立されたプロトコルを用いて感作剤または非感作剤であると予測された。SVMモデルを適用し、個々の複製物サンプルにSVM DVを割り当てた。最終的な分類の前に、37のサンプルからのSVM DVを、まず、試験化学物質と同じサンプルバッチに含まれる11のベンチマークサンプル(表2)に対して較正した。バイナリ予測を評価する目的で、利用可能な場合には、CLP分類の代わりに、ヒトのデータ[41]を優先することを決定した。この場合、1から4の分類は、感作剤に対応しており、5と6は非感作剤に対応している。37の化学物質を予測するモデルの性能は、AUC ROC 0.88によってまとめられており、
図1Aに示されるように(ベンチマーク化学物質-実線;37の化学物質-点線)、良好な識別能力を示している。Cooper統計に基づく感度、特異性および精度は、それぞれ73%、80%および76%と推定された。既に発表されているデータ[23]と組み合わせて、皮膚感作物質のバイナリ分類に対するGARDの更新された予測精度は、合計74の化学物質を含むデータセットに基づき、84%と推定される。表1の化学物質をCLP分類に従ってグループ化し、37の化学物質の分類中に得られたそれぞれのSVM DV値を
図1Bに示すようにボックスプロットにまとめると、カテゴリー1Bの弱い感作剤と、カテゴリーなしの非感作剤と比較して、強い感作剤には大きなSVM DVが割り当てられたため、効力の勾配が生じた。SVM DVサンプル分布を比較するノンパラメトリックTWOSample Wilcoxon試験によれば、これらのグループは有意に異なっていた(カテゴリーなし対1B:p=2.8
-5;1B対1A p=2.8
-6、カテゴリーなし対1A p=3.5
-12)。グループ間の差は有意であったが、個々の化学物質間にいくつか重なりが存在し、このことは、この情報が、サンプルを十分に規定された効力グループに完全に層別化するのに十分ではなかったことを示している。
【0184】
CLPカテゴリーの予測のためのランダムフォレストモデル
CLPカテゴリーの予測のためのバイオマーカーシグネチャを確立するために、37の新規化学物質を含むデータセットを、51の化学物質を含む過去のデータセットと併合した。合計で、データセットは、CLP(表3)に記載されているように、カテゴリー1Aおよび1Bおよび非感作剤(カテゴリーなし)に関してバランスのとれた、86の固有の化学物質(表4)および2の溶媒参照群からなっていた。4つの化学物質について、CLP分類1Bは、3つの理由のうち1つのために、表4に示されるソースに従ってカテゴリーなし/非感作剤に変更された。(i)以前のGARDプロジェクトとの一貫性を保持するため(ベンズアルデヒド、キシレン)、(ii)非感作性の濃度で溶媒として使用されるため(DMSO)、LLNA中で十分に記載された擬陽性であるため(ドデシル硫酸ナトリウム)。
【0185】
3つのCLPカテゴリーの予測のためのランダムフォレストモデルは、2つの
溶媒参照群を含む70の固有のサンプルからなるトレーニングセットに基づいて開発された。CLP分類には、52の予測変数(表5)が最適であると特定された。ブートストラッピングから導き出されたモデルの予測誤差率は0.225と推定され、これがモデル性能の指標を与える。モデルを開発するために使用されたデータセットを可視化するために、主成分分析(PCA)を行った。全ゲノムアレイ解析に基づくランダムフォレストによって同定された52の変数を入力として使用し、PCAをトレーニングセット上に構築した(
図2A)。
図2Aは、CLPカテゴリーに従って着色された生物学的複製物を有する化学物質に基づいており、第1主成分に沿って、カテゴリーなしから強い感作剤(1A)までの明確な勾配を観察することができる。
図2Bの変数の階層的クラスタリングを伴うトレーニングセットのヒートマップは、それぞれの化学およびCLPカテゴリーに関連する遺伝子の調節を例示する。
【0186】
独立した試験セットの予測
モデルの性能は、以前はモデルには見られなかった18の化学物質を含む独立した試験セットのCLPカテゴリーを予測することによってさらに評価された。CLPカテゴリーに従って着色した試験セットを、52の同定された変数に基づき、PCA成分に影響を与えずに、PCAプロットで可視化した(
図3A)。
図3Bは、ヒートマップの形態で、正規化された試験セットにおける52個の遺伝子の制御を可視化する。複製物を別個に予測し、多数の投票を使用してそれぞれの化学物質を分類すると、18の化学物質のうち14が正しいCLPカテゴリーに割り当てられ(表6、表1)、結果全体の精度は78%となった(表7)。4つの誤って分類された化学物質は、マレイン酸ジエチル、ブチルグリシジルエーテル、リラールおよび塩化シアヌルであった。唯一の偽陰性の予測は、塩化シアヌルであり、CLPでは1Aに分類され、本願発明者らのモデルではカテゴリーなしと分類され、一方、残りの3つの化学物質は、CLPで1Bと分類されたが、1Aと予測された。トレーニングセットと試験セットの選択は偏っておらず、予測モデルがトレーニングセットの構成に完全には依存していないことを確認する次の工程では、18の代替となるランダムフォレストモデルを構築し、ここでは、トレーニングセットと試験セットの中の化学物質の組成をランダムにシャッフルした。それぞれの新しいモデルについて、上述の変数選択の完全なプロセスを繰り返した。各化学刺激に対し利用可能な複製物サンプルの数に依存して、トレーニングセットおよび試験セットそれぞれのサンプルの合計数が変動したが、各セットの中の化学物質の数と、CLP分布は一定に保った。この代替モデルは全て有意であり、ブートストラッピング手順から得られた平均予測エラー率は0.22で初期モデルと同一であり、このことは、トレーニングセットと試験セットの偏った選択に起因して、提示されたモデルが得られたのではなかったことを裏付けている。
【0187】
CLP効力モデルは、ヒト効力予測に関連する情報を含む
次に、ヒト効力カテゴリーに関連する情報[41]を用いて52の変数(表5)がどのように機能するかを調べるために、PCAを利用した。ヒト効力(クラス1~6、6=真の非感作剤、1=最も強い感作剤)に従って、70のトレーニングセットと18の試験セットサンプルを着色し、ヒト効能カテゴリーが利用できなかったサンプルを除去した(表4を参照)。このモデルは、CLP効力カテゴリーを予測するために開発されているが、
図4A、Bに示すように、ヒト効力に関する情報も含む。
【0188】
ランダムフォレストモデル変数の属性
ランダムフォレストによって特定された52の変数(表5)は、異なる細胞区画および異なる機能的役割に属する転写物を表す。これらのうち5つは、GARD予測シグネチャと重なっている。ブートストラッピングプロセスで最も頻繁に選択され、最も高い検証呼び出し頻度(表5)を有する上位10個のマーカーのうちの5つは、HIST1H2AB[42]などのヒストンクラスター1メンバーである。ヒストンは高度に保存されており、クロマチン構造を維持するだけでなく、遺伝子制御にも重要な役割を果たす[43]。PFASおよびPAICSはプリン生合成に関与しており[44、45]、TMEM97はコレステロールレベルの調節因子であり[46]、これは、RNA干渉実験による神経膠腫細胞モデルにおける細胞周期調節、細胞移動および浸潤に関与することがさらに記載されている[47]。DHCR24は、小胞体(ER)に局在化する多機能酵素であり、コレステロール合成の最終段階を触媒する[48]が、例えば、ERストレス下での神経細胞で示されるような抗アポトーシス活性も有する[49]。キナーゼであるPLK1は、TLR活性化に応答してリン酸化されることが示されており、RNA干渉の結果は、PLK1シグナル伝達がTLR誘発性の炎症応答に関与していることを示唆していた[50]。PLK1は、TNF誘発性のサイクリンD1発現を阻害することによって細胞周期制御に関与することがさらに報告されており、TNF誘導NF-κB活性化を低下させる可能性があった[51]。残りの転写産物の多くは核タンパク質であり、従って複製、転写、スプライシングおよび細胞周期制御などのDNA依存性のプロセスに関与している可能性が高い。シグネチャには、免疫応答および/または感作に関与することが知られているタンパク質(NQO1など)をコードするいくつかの転写産物がさらにあり、皮膚感作剤に対する細胞応答の役割について十分に説明されている[52]。CD53は、テトラスパニンファミリーに属し、例えば、細胞接着、遊走およびシグナル伝達において複数の機能を有する膜貫通タンパク質であり、それぞれ健康なコントロールと比較して、アトピー性湿疹患者の末梢血由来の単球[54]と同様に、アトピー性皮膚炎患者個体からのFcεRI陽性皮膚DCについて上昇することが示されている[53]。CD44は、細胞表面の糖タンパク質であり、接着やヒアルロナン受容体[55]は、多くの細胞種によって発現し、例えば、炎症組織への白血球移動を媒介することによって炎症応答に関与し[56]、このことは、アレルギー性皮膚炎のマウスモデルで示されている[57]。
【0189】
共通で独特の制御された経路は、タンパク質反応性が異なる感作剤によって誘発される
33の主要経路を、KPA分析(
図5)におけるCLPカテゴリー間のマルチグループ比較(FDR=10
-9)後に、883の最も重要な調節遺伝子の入力によって同定し、52の変数の機能グループのいくつかのミラーを遺伝子制御、細胞周期制御および代謝などのランダムフォレストによって定義した。「細胞増殖、生存、分化および代謝のIL-4誘発性制御因子」および「JAK/STAT、p38、JNKおよびNF-κBを介した免疫応答_IL-3シグナル伝達」などの免疫応答関連経路は、50%の最も大幅に制御されたものであった。
【0190】
次に説明する解析は、求核置換(SN)、マイケル付加(MA)およびシッフ塩基(SB)生成を含む、本データセットの3つの最大の化学反応性グループに焦点を当てたものである。含まれている化学物質の中で、「カテゴリーなし」と表示された化学物質の大部分は、タンパク質結合特性を有していなかった。しかし、少数のSB生成およびSN化学物質が存在した。カテゴリー1Bでは、ほぼ全ての種類のタンパク質反応性が示されたが、一方、カテゴリー1Aでは、MA化学物質が明らかに優勢であった。
【0191】
それぞれの関連するタンパク質反応性について、
図6に示すように、それぞれのタンパク質反応性グループに属する感作性化学物質について固有の経路を同定することができた。これらの結果は、入力データからの差次的に制御された遺伝子を、いわゆるキーハブ(入力遺伝子の発現レベルを制御することができる分子)と組み合わせる。その制御は、活性変化(例えばキナーゼの場合)などの他の生物学的レベルで見ることができるか、または変化が非常に短期間であるか、大きさが小さい場合があるため、これらを遺伝子発現実験によって必ずしも同定することができるわけではない。合計で、173遺伝子は、全ての3つの反応性グループについて共通しており(
図7A)、全ての3つの反応性グループには6の経路が存在した(
図7B)。「細胞周期:細胞周期制御におけるAPCの役割」、「細胞周期:細胞周期制御におけるSCF複合体の役割」、「発生:顆粒球発生の転写調節」、「細胞周期:細胞周期(ジェネリックスキーマ)」、「DNA損傷:G1/SチェックポイントのATM/ATR調節」および「乳癌におけるエストラジオール/ ESR1(核)の分裂促進作用」。ここでも、細胞周期経路は非常によく表された。酸化ストレス応答は、MAおよびSB化学物質についてのみ、主要な経路の結果の一部として特定された(
図6)。MA感作剤化学群では、KEAP1とNRF2が標的遺伝子NQO1とHMOX1[52、58]およびAHR[59、60]と同様にキーハブとして発見された。MA化学物質では、標的遺伝子NQO1、HMOX1およびCES1[61]も入力遺伝子レベルでさえ存在していた。入力レベルでは、SN化学物質についてもCES1が存在したが、NQO1、NRF2およびAHRのみがキーハブとして識別された。KEAP1は、SBおよびSN KPA分析においてキーハブとして見出されず、AHRは、3つのタンパク質反応性グループの全てで同定された唯一のキーハブであった。NF-κBサブユニット(RelBまたはp52)は、MA化学物質を除く全ての反応性グループにおいて予測されたキーハブであった。
【0192】
まとめると、細胞周期やDNA損傷に関連する化学物質曝露そのものには共通する機構的な反応があるようであるが、本願発明者らによって以前に観察されたように[24]、また他の実験系において[14、21、62、63]、経路解析結果も、異なる化学反応性分類が、以前に観察されたような異なるシグナル伝達経路を誘発するという仮説を裏付けている。いくつかの経路は、皮膚感作に関連することが知られているプロセスに関連している。
【0193】
議論
感作を誘発する、さらされた皮膚領域あたりの化学物質の量は、著しく変化する[41]。したがって、正確なリスク評価のためには、皮膚感作剤の効力情報が不可欠である。代替試験法の開発者は、ヒトの感作性の高い予測性を達成するためにヒトの臨床データに依存しているが、この種のデータはむしろ不十分であり、最も有用なデータはLLNAから得られる[64]。動物モデルは皮膚感作などの全身性疾患の複雑さを反映しているという事実にもかかわらず、インビトロデータは、今までに、動物モデルよりも十分に相関関係があり、特にITSと組み合わせた場合には良好である[65]。さらに、代替の試験システムは、全動物を用いた試験が提供できないという機械的な洞察を提供する可能性がある[66]。
【0194】
ここでは、樹状細胞(DC)モデルおよび転写プロファイリングに基づくCLPシステムを用いて、皮膚感作剤の効力を予測する手法を提示する。CLPカテゴリーは、経験的に決定され、任意に定義されたカテゴリーであり、異なる化学物質の多様性、その分子特徴、感作特性があること、またはないことに関与する機構を表していない。しかし、CLPカテゴリーは、化学物質を分類し、標識するために、現在は規制が必要である。したがって、これらの新しいデータと過去のデータセットを組み合わせるために、以前に標準GARDアッセイで試験されていなかった37の追加の化学物質を調べた。確立されたGARDモデルによるこれらの新しい化学物質のバイナリ分類では、誤って分類された4つの感作性化学物質(すなわち、アニリン、ベンゾカイン、リモネンおよびブチルグリシジルエーテル)は、ベンチマークサンプルによって定義されるカットオフに近かった。このうち3つは、ヒト効力分類4に属しており、効力と十分に相関することが多いSVM値を正確な分類に変換するために、モデルのカットオフが重要であることを示している。過去の予測と合わせて、GARDは、バイナリ分類の全体として84%と高い精度を示す。
【0195】
次に、各CLPカテゴリーについてのランダムフォレストモデルを開発するために、新しいデータと従来のデータの両方を使用し、カテゴリーなしについて96%、カテゴリー1Aについて79%、カテゴリー1Bについて75%のバランスのとれた精度を示す(複製物を基準とする性能について、多数決に基づく。表7を参照。)[67]。ブチルグリシジルエーテル、マレイン酸ジエチル、塩化シアヌルおよびリラールは誤って分類された。唯一の偽陰性予測は、塩化シアヌルについて、1Aではなく、カテゴリーなしであった。しかし、塩化シアヌルは水と発熱反応して塩化水素を形成し、おそらく他の反応生成物を生成する。DMSO(水を含む)中におそらく既に起こっているこの加水分解反応のために、このアッセイに存在する塩化シアヌルおよび反応生成物の量は不明である。この化学物質は、GARDプラットフォーム系のアッセイの適用可能ドメイン外にある可能性がある。しかし、品質管理やその他の事前モデリング解析では、これらのサンプルの除去が動機付けられていなかった。マレイン酸ジエチルおよびリラールは、CLPによれば1Bと分類されるが、本願発明者らのモデルでは1Aと分類され、ここでも、Basketterらによって記載されるように[41]、これらのヒト効力カテゴリーであるカテゴリー2により良く適合しているようである。誤って分類された第4の化学物質であるブチルグリシジルエーテルは、ヒト効力カテゴリー3である。明らかに1Bの予測、すなわち弱い感作剤の予測が最も困難な部分であるように思われた。LLNAにおいても、弱い感作剤の効力予測は強い感作剤の効力予測よりも大きく変動する[8、68、69]。さらに、1Bは、カテゴリー1Bにまとめられた化学物質に関連するLLNA EC3濃度およびヒト効力カテゴリーの範囲を考慮して、非常に異種混合したグループである。
【0196】
U-SENS(商標)アッセイ(以前のMUSST)は、感作剤と非感作剤を区別するために、別の骨髄細胞株、U937、およびCD86の測定値を使用する。著者らがCLPカテゴリーを予測するために、CD86を、細胞毒性データおよび特定のカットオフレベルと組み合わせたときに、カテゴリー1Aで82%(41/50)、カテゴリー1B/カテゴリーなしで73%(85/116)の正しい予測が報告された[15]。しかし、カテゴリーなしとカテゴリー1Bの間のさらに挑戦的な識別がどのようになるかは依然として不明である。Cottrezら[70]は、近年、ある試験を公表し、ここでは、代替的なアッセイであるSENS-IS(3D再構成表皮モデル)が、皮膚感作剤効力の予想に非常によく機能することを報告しているが、CLPカテゴリーは対象としていない。CLPカテゴリーを予想するために規定された52の変数入力に純粋に基づいて
図4から判断すると、本願発明者らのモデルも、ヒト効力分類に関連する情報を含むように思われる。もっと多くの化学物質がヒト効力分類を得たら、GARDプラットフォームに基づいてヒト効力モデルを円滑に開発することが可能になるはずである。
【0197】
KPA経路分析は、制御されたいくつかの経路が、皮膚感作において既知の役割を有するため(例えば、サイトカインシグナル伝達および酸化ストレス応答)、提示されたデータセットにおける生物学的に関連する事象を同定した(
図5~6)。DCは、インビボでのタンパク質修飾の主要な標的ではないが、本願発明者らは、異なるタンパク質反応性分類がDCトランスクリプトームに差次的に影響を及ぼすと仮定した。タンパク質の反応性は、化学物質の最も重要な特徴の1つであり、皮膚感作能力と効力を特定の限界で定義している[63]。反応性グループMA、SB、およびSNによって誘発された最も有意に調節された遺伝子の比較によって明らかにされるように、タンパク質反応性に特異的なパターンが検出可能であった。興味深いことに、NF-κBサブユニットは、MA化学物質を除いて全ての反応性グループのキーハブであると予測されたが、このことは、この種の化学物質のNF-κBシグナル伝達に対する上述の阻害効果を反映している可能性がある[71]。いくつかの経路は、「乳癌におけるエストラジオール/ESR1(核)の有糸分裂作用」などの文脈に適合していないように見えるが、調節された分子を詳しく見ると、他の経路についても確かに関連していることがわかる。この場合、例えばp21、c-myc、E2F1、SGOL2(シュゴシン2)およびCAD(カルバモイルホスフェートシンセターゼ)が関与しており、この中で、最初のp21は、既知の細胞周期調節因子/転写因子であり[72]、染色体分離(SGOL2)において役割を果たす[73]。一方、酵素CADは、ピリミジンヌクレオチドの生合成において律速であるが、最近、細胞シグナル伝達経路とも協働して関与しており[74]、ヒト腸上皮細胞における細菌センサーNOD2(ヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン2)抗菌作用を阻害するようである[75]。これらの例は、本願発明者らのトランスクロプトームデータが、さらなる関心を寄せ、さらに詳細な解析をする価値があることを示しているだろう。この種の解析は、異なるバイオインフォマティクスのツールおよび最終的には機能解析を使用して、生物学的プロセスと疾患の根本である機構を解明するのに役立つだろう。
【0198】
既に上述したように、効力が弱いか、または中程度の化学物質に正確な効力分類を割り当てることは、より一般的な課題のようである。Benigniら[76]は、実験的なインビボシステムでさえ、一般にヒトのデータとよく相関するが、中程度の効力を有する感作剤についてはあまりうまく機能しないことを示すデータを提示した。彼らは、さらに、タンパク質修飾工程が全感作過程の律速段階であり、他のAOP事象を標的とするインビトロ試験では、多くの情報をつけ加えないと主張している。一方、モデルペプチドによる動態プロファイリングによって決定されるMA感作剤の速度定数とLLNAにおけるそれらの効力との間には、弱い関係しか存在しない[71]。このことは、反応性とともに増加するNF-κBシグナル伝達を阻害することによって、MA化学物質の抗炎症効果に関連すると記載されている。しかし、皮膚感作AOPの重要な事象を考慮すると、感作過程自体は連続するものとして理解することができ、従って隔離された事象によって特徴付けられるだけではない。もちろん、実際には、このプロセスは、皮膚に浸透する化学物質から始める必要がある。この文脈において、化学物質が角質層に効率的に浸透する能力は、その皮膚感作能力にとって重要であるという概念があることに留意すべきであり、効力は近年誤って証明されている[77]。さらに、下層皮膚層へのアクセスは、実際には、水仕事および小さな創傷に起因して、皮膚障壁機能の障害によって、大幅に促進される場合がある。興味深いことに、多くの強力な感作剤は、細胞毒性と相関する刺激特性を有しており、細胞毒性は、感作剤の効力に寄与しているようである[18]。これも本願発明者らのデータセットに反映されている(データは示さず)。細胞毒性は、化学物質のタンパク質反応性にも関連している。すなわち、強いシステイン反応性を有する化学物質は、一般的に細胞毒性があるため、重要な酵素機能を妨害する可能性がある[18、78]。同時に、刺激作用は、細胞外ATPまたはヒアルロン酸分解産物などの危険な信号を生成する場合があり[79、80]、これはDCを活性化し、その結果、ナイーブT細胞をプライミングする役割を果たす可能性がある。さらに、既存の炎症や他の物質への同時曝露(アレルギー感作において確かに役割を果たす)などの他の要因は、いずれの試験システムにおいても実施するのが困難であろう。インビトロでのアッセイは費用効果が高く、実行が容易であるという要求にさらに対応しなければならないため、インビトロで達成できることは明らかな制限があるが、これまでの試験のパフォーマンスは非常に有望である[76]。タンパク質の反応性は非常に重要であるかもしれないが、細胞系システムは、ペプチドの反応性に加えて、特定のさらなる事象を繰り返すことができなければならない。代替アッセイの性能は、皮膚感作のより詳細な機構が明らかになり、適用領域と隠れた危険性の両方をより容易に特定できるようになるので、さらに改善される可能性が最も高い。
【0199】
結論として、本願発明者らは、現在の規制で要求されるように、皮膚感作性化合物をCLP群に分類するための52の転写物を含む予測バイオマーカーシグネチャを同定した。18の独立した試験化合物で試験した場合、このアッセイは効力予測の78%について正確な結果を与えた。さらに、12のうち11の感作剤が正しく同定された場合、このことは、保存的であることを示し、すなわち、偽陰性の予測を回避することを示す。提示されたバイオマーカーシグネチャは、バイナリハザード分類だけでなく、効力予測について最適化されるため、[18]で提案されているのと同様に、正確な効力予測についてのIntegrated Testing Strategy内での本願発明者らのモデルの適用可能性を示唆している。さらに、この結果は、GARDセットアップの柔軟性と汎用性を効果的に示す。細胞の完全なトランスクリプトームの測定は、感作の経路を同定するための行動様式に基づく試験を行う機会を与えるだけでなく、バイナリ皮膚感作予測や呼吸器感作のために以前に示してきた予測バイオマーカーシグネチャを同定する機会を提供する。したがって、ここでは、CLP群を対象とする効力モデルの概念の最初の証拠を提示するが、これは、より多くのサンプルが分析され、より正確なヒト参照データが出現するにつれて、改変し、改善することができる。
【0200】
参考文献
1. Peiser,M.ら、Allergic contact dermatitis:epidemiology,molecular mechanisms,in vitro methods and regulatory aspects.Current knowledge assembled at an international workshop at BfR,Germany.Cell Mol Life Sci,2012.69(5):p.763-81.
2.Behroozy,A.およびT.G.Keegel、Wet-work Exposure:A Main Risk Factor for Occupational Hand Dermatitis.Saf Health Work,2014.5(4):p.175-80.
3.European Parliament,C.o.t.E.U.,REGULATION (EC)No 1223/2009 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL.2009.
4.Hartung,T.およびC.Rovida,Chemical regulators have overreached.Nature,2009.460(7259):p.1080-1.
5.OECD,The Adverse Outcome Pathway for Skin Sensitisation Initiated by Covalent Binding to Proteins.Part 1:Scientific Evidence.2012:p.1-59.
6.Gerberick,G.F.ら、Local lymph node assay(LLNA)for detection of sensitization capacity of chemicals.Methods,2007.41(1):p.54-60.
7.Anderson,S.E.,P.D.SiegelおよびB.J.Meade,The LLNA:A Brief Review of Recent Advances and Limitations.J Allergy(Cairo),2011.2011:p.424203.
8.Ezendam,J.,H.M.BraakhuisおよびR.J.Vandebriel,State of the art in non-animal approaches for skin sensitization testing:from individual test methods towards testing strategies.Arch Toxicol,2016.
9.Andreas,N.ら、The intra- and inter-laboratory reproducibility and predictivity of the KeratinoSens assay to predict skin sensitizers in vitro:Results of a ring-study in five laboratories.Toxicology in Vitro,2011.25(3):p.733-744.
10.Natsch,A.およびR.Emter,Skin sensitizers induce antioxidant response element dependent genes:application to the in vitro testing of the sensitization potential of chemicals.Toxicol Sci,2008.102(1):p.110-9.
11.Gerberick,G.F.ら、Development of a peptide reactivity assay for screening contact allergens.Toxicol Sci,2004.81(2):p.332-43.
12.Ashikaga,T.ら、Development of an in vitro skin sensitization test using human cell lines:the human Cell Line Activation Test(h-CLAT).I.Optimization of the h-CLAT protocol.Toxicol In Vitro,2006.20(5):p.767-73.
13.Teunis,M.A.ら、International ring trial of the epidermal equivalent sensitizer potency assay:reproducibility and predictive-capacity.ALTEX,2014.31(3):p.251-68.
14.Cottrez,F.ら、Genes specifically modulated in sensitized skins allow the detection of sensitizers in a reconstructed human skin model.Development of the SENS-IS assay.Toxicol In Vitro,2015.29(4):p.787-802.
15.Piroird,C.ら、The Myeloid U937 Skin Sensitization Test(U-SENS)addresses the activation of dendritic cell event in the adverse outcome pathway for skin sensitization.Toxicol In Vitro,2015.29(5):p.901-16.
16.Dearden,J.C.ら、Mechanism-Based QSAR Modeling of Skin Sensitization.Chem Res Toxicol,2015.28(10):p.1975-86.
17.Tsujita-Inoue,K.ら、Skin sensitization risk assessment model using artificial neural network analysis of data from multiple in vitro assays.Toxicol In Vitro,2014.28(4):p.626-39.
18.Jaworska,J.S.ら、Bayesian integrated testing strategy(ITS)for skin sensitization potency assessment:a decision support system for quantitative weight of evidence and adaptive testing strategy.Arch Toxicol,2015.89(12):p.2355-83.
19.Jaworska,J.ら、Bayesian integrated testing strategy to assess skin sensitization potency:from theory to practice.J Appl Toxicol,2013.33(11):p.1353-64.
20.Luechtefeld,T.ら、Probabilistic hazard assessment for skin sensitization potency by dose-response modeling using feature elimination instead of quantitative structure-activity relationships.J Appl Toxicol,2015.35(11):p.1361-71.
21.Natsch,A.ら、Predicting skin sensitizer potency based on in vitro data from KeratinoSens and kinetic peptide binding:global versus domain-based assessment.Toxicol Sci,2015.143(2):p.319-32.
22.Johansson,H.ら、A genomic biomarker signature can predict skin sensitizers using a cell-based in vitro alternative to animal tests.BMC Genomics,2011.12:p.399.
23.Johansson,H.ら、Genomic allergen rapid detection in-house validation--a proof of concept.Toxicol Sci,2014.139(2):p.362-70.
24.Albrekt,A.S.ら、Skin sensitizers differentially regulate signaling pathways in MUTZ-3 cells in relation to their individual potency.BMC Pharmacol Toxicol,2014.15:p.5.
25.European Parliament,C.o.t.E.U.,http://echa.europa.eu/sv/regulations/clp/.2016年7月13日にアクセスされた
26.Breiman,L.,Random forests.Machine Learning,2001.45.
27.Diaz-Uriarte,R.およびS.Alvarez de Andres,Gene selection and classification of microarray data using random forest.BMC Bioinformatics,2006.7(1):p.1-13.
28.Johansson,H.ら、The GARD assay for assessment of chemical skin sensitizers.Toxicol In Vitro,2013.27(3):p.1163-9.
29.Piccolo,S.R.ら、A single-sample microarray normalization method to facilitate personalized-medicine workflows.Genomics,2012.100(6):p.337-44.
30.Stephen R.Piccolo,A.H.B.,W.Evan Johnson.https://www.bioconductor.org/packages/release/bioc/html/SCAN.UPC.html.[2016年10月14日に引用];Bioconductor version:Release (3.3):[
31.Forreryd,A.ら、From genome-wide arrays to tailor-made biomarker readout-Progress towards routine analysis of skin sensitizing chemicals with GARD.Toxicol In Vitro,2016.
32.Lasko,T.A.ら、The use of receiver operating characteristic curves in biomedical informatics.J Biomed Inform,2005.38(5):p.404-15.
33.Dimitriadou,E.,Hornik,K.,Leisch,F.,Meyer,D.,Weingessel,A.,e1071:Misc functions of the Department of statistics(q1071).TU Wien.R package version 1.6,2011.http://CRAN.R-project.org/package=e1071.
34.Sing,T.ら、ROCR: visualizing classifier performance in R.Bioinformatics,2005.21(20):p.3940-1.
35.Cooper,J.A.,2nd,R.SaracciおよびP.Cole,Describing the validity of carcinogen screening tests.Br J Cancer,1979.39(1):p.87-9.
36.Jeffrey T.Leek,W.E.J.,Hilary S.Parker,Andrew E.Jaffe,John D.Storey,sva:Surrogate Variable Analysis.R package version 3.10.0.,2014.
37.Johnson,W.E.,C.LiおよびA.Rabinovic,Adjusting batch effects in microarray expression data using empirical Bayes methods.Biostatistics,2007.8(1):p.118-27.
38.Diaz-Uriarte,R.,GeneSrF and varSelRF:a web-based tool and R package for gene selection and classification using random forest.BMC Bioinformatics,2007.8:p.328.
39.Wiener,A.L.a.M.,Classification and Regression by randomForest.R News,2002.2(3),18--22.
40.Key Pathway Advisor by Clarivate Analytics (Formerly the IP & Science business of Thomson Reuters).http://ipscience.thomsonreuters.com/product/metacore/.2016.
41.Basketter,D.A.ら、Categorization of chemicals according to their relative human skin sensitizing potency.Dermatitis,2014.25(1):p.11-21.
42.Singh,R.ら、Increasing the complexity of chromatin:functionally distinct roles for replication-dependent histone H2A isoforms in cell proliferation and carcinogenesis.Nucleic Acids Res,2013.41(20):p.9284-95.
43.Harshman,S.W.ら、H1 histones:current perspectives and challenges.Nucleic Acids Res,2013.41(21):p.9593-609.
44.Lane,A.N.およびT.W.-M.Fan,Regulation of mammalian nucleotide metabolism and biosynthesis.Nucleic Acids Research,2015.
45.Li,S.X.ら、Octameric structure of the human bifunctional enzyme PAICS in purine biosynthesis.J Mol Biol,2007.366(5):p.1603-14.
46.Bartz,F.ら、Identification of cholesterol-regulating genes by targeted RNAi screening.Cell Metab,2009.10(1):p.63-75.
47.Qiu,G.ら、RNA interference against TMEM97 inhibits cell proliferation,migration,and invasion in glioma cells.Tumour Biol,2015.36(10):p.8231-8.
48.Waterham,H.R.ら、Mutations in the 3beta-hydroxysterol Delta24-reductase gene cause desmosterolosis,an autosomal recessive disorder of cholesterol biosynthesis.Am J Hum Genet,2001.69(4):p.685-94.
49.Lu,X.ら、3 beta-hydroxysteroid-Delta 24 reductase(DHCR24)protects neuronal cells from apoptotic cell death induced by endoplasmic reticulum(ER)stress.PLoS One,2014.9(1):p.e86753.
50.Hu,J.ら、Polo-like kinase 1(PLK1)is involved in toll-like receptor(TLR)-mediated TNF-alpha production in monocytic THP-1 cells.PLoS One,2013.8(10):p.e78832.
51.Higashimoto,T.ら、Regulation of I(kappa)B kinase complex by phosphorylation of(gamma)-binding domain of I(kappa)B kinase(beta)by Polo-like kinase 1.J Biol Chem,2008.283(51):p.35354-67.
52.Ade,N.ら、HMOX1 and NQO1 genes are upregulated in response to contact sensitizers in dendritic cells and THP-1 cell line:role of the Keap1/Nrf2 pathway.Toxicol Sci,2009.107(2):p.451-60.
53.Peng,W.M.ら、Tetraspanins CD9 and CD81 are molecular partners of trimeric FcvarepsilonRI on human antigen-presenting cells.Allergy,2011.66(5):p.605-11.
54.Jockers,J.J.およびN.Novak,Different expression of adhesion molecules and tetraspanins of monocytes of patients with atopic eczema.Allergy,2006.61(12):p.1419-22.
55.Lee-Sayer,S.S.ら、The where,when,how,and why of hyaluronan binding by immune cells.Front Immunol,2015.6:p.150.
56.Johnson,P.およびB.Ruffell,CD44 and its role in inflammation and inflammatory diseases.Inflamm Allergy Drug Targets,2009.8(3):p.208-20.
57.Gonda,A.ら、CD44,but not l-selectin,is critically involved in leucocyte migration into the skin in a murine model of allergic dermatitis.Exp Dermatol,2005.14(9):p.700-8.
58.Natsch,A.,The Nrf2-Keap1-ARE toxicity pathway as a cellular sensor for skin sensitizers--functional relevance and a hypothesis on innate reactions to skin sensitizers.Toxicol Sci,2010.113(2):p.284-92.
59.Schulz,V.J.ら、Aryl hydrocarbon receptor activation affects the dendritic cell phenotype and function during allergic sensitization.Immunobiology,2013.218(8):p.1055-62.
60.Kohle,C.およびK.W.Bock,Coordinate regulation of Phase I and II xenobiotic metabolisms by the Ah receptor and Nrf2.Biochem Pharmacol,2007.73(12):p.1853-62.
61.Roberts,D.W.,A.O.AptulaおよびG.Patlewicz,Electrophilic chemistry related to skin sensitization.Reaction mechanistic applicability domain classification for a published dataset of 106 chemicals tested in the mouse local lymph node assay.Chem Res Toxicol,2007.20(1):p.44-60.
62.Migdal,C.ら、Reactivity of chemical sensitizers toward amino acids in cellulo plays a role in the activation of the Nrf2-ARE pathway in human monocyte dendritic cells and the THP-1 cell line.Toxicol
Sci,2013.133(2):p.259-74.
63.Chipinda,I.,J.M.HettickおよびP.D.Siegel,Haptenation:chemical reactivity and protein binding.J Allergy(Cairo),2011.2011:p.839682.
64.Basketter,D.A.ら、Nothing is perfect,not even the local lymph node assay:a commentary and the implications for REACH.Contact Dermatitis,2009.60(2):p.65-9.
65.Urbisch,D.ら、Assessing skin sensitization hazard in mice and men using non-animal test methods.Regul Toxicol Pharmacol,2015.71(2):p.337-51.
66.Natsch,A.ら、Chemical basis for the extreme skin sensitization potency of (E)-4-(ethoxymethylene)-2-phenyloxazol-5(4H)-one.Chem Res Toxicol,2010.23(12):p.1913-20.
67.Brodersen,K.H.ら、The Balanced Accuracy and Its Posterior Distribution,in Proceedings of the 2010 20th International Conference on Pattern Recognition.2010,IEEE Computer Society.p.3121-3124.
68.Dumont,C.ら、Analysis of the Local Lymph Node Assay(LLNA)variability for assessing the prediction of skin sensitisation potential and potency of chemicals with non-animal approaches.Toxicol In Vitro,2016.34:p.220-8.
69.Hoffmann,S.,LLNA variability:An essential ingredient for a comprehensive assessment of non-animal skin sensitization test methods and strategies.ALTEX,2015.32(4):p.379-83.
70.Cottrez,F.ら、SENS-IS,a 3D reconstituted epidermis based model for quantifying chemical sensitization potency:Reproducibility and predictivity results from an inter-laboratory study.Toxicol In Vitro,2016.32:p.248-60.
71.Natsch,A.,T.HauptおよびH.Laue,Relating skin sensitizing potency to chemical reactivity:reactive Michael acceptors inhibit NF-kappaB signaling and are less sensitizing than S(N)Ar- and S(N)2-reactive chemicals.Chem Res Toxicol,2011.24(11):p.2018-27.
72.Buchmann,A.M.,S.SwaminathanおよびB.Thimmapaya,Regulation of cellular genes in a chromosomal context by the retinoblastoma tumor suppressor protein.Mol Cell Biol,1998.18(8):p.4565-76.
73.Xu,Z.ら、Structure and function of the PP2A-shugoshin interaction.Mol Cell,2009.35(4):p.426-41.
74.Huang,M.およびL.M.Graves,De novo synthesis of pyrimidine nucleotides;emerging interfaces with signal transduction pathways.Cell Mol Life Sci,2003.60(2):p.321-36.
75.Richmond,A.L.ら、The nucleotide synthesis enzyme CAD inhibits NOD2 antibacterial function in human intestinal epithelial cells.Gastroenterology,2012.142(7):p.1483-92 e6.
76.Benigni,R.,C.BossaおよびO.Tcheremenskaia,A data-based exploration of the adverse outcome pathway for skin sensitization points to the necessary requirements for its prediction with alternative methods.Regul Toxicol Pharmacol,2016.78:p.45-52.
77.Fitzpatrick,J.M.,D.W.RobertsおよびG.Patlewicz,What determines skin sensitization potency:Myths,maybes and realities.The 500 molecular weight cut-off:An updated analysis.J Appl Toxicol,2016.
78.Bohme,A.ら、Kinetic glutathione chemoassay to quantify thiol reactivity of organic electrophiles--application to alpha,beta-unsaturated ketones,acrylates,and propiolates.Chem Res Toxicol,2009.22(4):p.742-50.
79.Esser,P.R.ら、Contact sensitizers induce skin inflammation via ROS production and hyaluronic acid degradation.PLoS One,2012.7(7):p.e41340.
80.Martin,S.F.ら、Mechanisms of chemical-induced innate immunity in allergic contact dermatitis.Allergy,2011.66(9):p.1152-63.
81.Roggen,E.L.およびB.J.Blaauboer,Sens-it-iv:A European Union project to develop novel tools for the identification of skin and respiratory sensitizers.Toxicology in Vitro,2013.27(3):p.1121.
82.Heberle,H.ら、InteractiVenn:a web-based tool for the analysis of sets through Venn diagrams.BMC Bioinformatics,2015.16:p.169.
【0201】
実施例1
序論
以前の試験に基づき、本願発明者らは、GARDアッセイによって皮膚感作物質の効力を予測することができると仮定した。効力予測モデルを開発するために、2つの手法を並行して行った。バイナリ分類を提供するためにトレーニングされた、本願発明者らの確立されたサポートベクターマシン(SVM)を利用する[1-3]。他の手法は、潜在構造に対する直交部分最小二乗投影法(O-PLS)の線形回帰モデル(Simca、Umetrics、スウェーデン)に基づいている。O-PLS[5]は、主成分分析に関連した投影法であり、したがって、全ゲノムRNAマイクロアレイデータ(29,000を超える転写物)の場合のように、観測値(またはサンプル)よりも多くの変数を有する行列に十分に適している。O-PLSは、マトリックスXの構造化された変動性を予測(Yと相関する)および直交情報(Yと相関しない)に分け、残留変動を加えるように設計された、PLS法(Wold、1975)の変法である。これにより、潜在変数(元の変数の線形結合)の解釈可能性が向上し得る。
【0202】
結果
34の化学物質のセットとコントロールのGARD SVM決定値とヒト効力分類との関係を
図9に示す。SVMモデルは、バイナリ分類(感作剤対非感作剤)のために開発された。
【0203】
Simcaソフトウェアを使用して、多変量解析手法で複数のモデルを調べた。ヒト効力[6]は、部分的に化学的に非常に異なる物質を1つの効力カテゴリーに組み合わせる利用可能なヒトデータに基づく化学物質の分類であり、クラス1は最も高い効力を表し、クラス6は真の非感作剤を表す。
【0204】
ここでは、2つのY、すなわちヒト効力および感作剤/非感作剤を予測するように設計されたO-PLSモデルを提示する。
図10の散布図は、感作剤と非感作剤の分離と、第2の軸に沿って、感作剤を高効力クラスターと低効力クラスターにグループ分けしたものを示す。
【0205】
クロスバリデーション(Q2cum)後にこのモデルによって説明することができる全変動の割合は0.478であり、これは許容可能/良好とみなされる値である。並べ替えられたY観察値を用いたいくつかのモデルのフィッティングに対して、それぞれの元のモデルのフィッティングおよび予測の良さを比較すると(
図11)、元のモデルが有効であることが強く示される。Y
観察値対Y
予測値を
図12にプロットしている。
【0206】
議論
本願発明者らの分析では、本願発明者らのマイクロアレイデータとヒト効力との間に明確な関係があることがわかる。さらなるモデル開発が進行中であり、試験された化学物質の数と種類によって性能が向上することが期待される。また、多変量解析法を機能選択ツールとして検討し、最終的に感作剤の効力に関連する機構についての新たな洞察を導き、精度の高い化学物質のヒト効力の予測を改善する手段を提供する。
【0207】
実施例1の参考文献
1.Johansson Hら、A genomic biomarker signature can predict skin sensitizers using a cell-based in vitro alternative to animal tests.BMC Genomics.2011.
2.Johansson Hら、The GARD assay for assessment of chemical skin sensitizers.Toxicology in vitro 2013.
3.Johansson Hら、GARD in-house validation - A proof of concept.Toxicological Sciences 2014.
4.Albrektら、Skin sensitizers differentially regulate signaling pathways in MUTZ-3 cells in relation to their individual potency.BMC Pharmacology and Toxicology 2014.
5.TryggおよびWold.Orthogonal projections to latent structures(O-PLS).Journal of Chemometrics 2002.
6.Basketterら、Categorization of chemicals according to their relative human skin sensitizing potency.Dermatitis 2014.
【0208】
実施例2
序論
以前の試験に基づき、本願発明者らは、GARDアッセイによって皮膚感作物質の効力を予測することができると仮定した。効力予測モデルを開発するために、2つの手法を並行して行った。バイナリ分類を提供するためにトレーニングされた、本願発明者らの確立されたサポートベクターマシン(SVM)を利用し[1-3]、
図9に示すように、34の化学物質のセットとコントロールのGARD SVM決定値とヒト効力分類[4]との相関関係を示す。SVMモデルは、バイナリ分類(感作剤対非感作剤)のために開発された。
【0209】
他の手法は、観測値よりも変数の多いデータセットに適した決定木に基づく方法であるランダムフォレスト(RF)モデリングに基づく。変数がノイズの多い場合であっても良好な予測性能が得られ(事前選択が必要ではない)、変数重要度を返す[5]。
【0210】
結果
化学物質の感作効力に関し、European Chemical Agency(ECHA)は、1A(強い感作剤)、1B(弱い感作剤)およびカテゴリーなし(非感作剤)からなる、化学物質および混合物の分類、標識および包装に関する規制(EC)No 1272/2008に従うカテゴリー化(CLP)を提案しており、[7]。ここでは、供給された.632+ブートストラップ方法によって推定されたエラー率を有するR/Bioconductorバージョン3.1.2のランダムフォレストvarSelRFパッケージ[6]を使用し、トレーニングデータ中の複製物からの転写強度の算術平均に基づいて作成されたRFモデルを提示する。複製物の転写強度から直接構築することもできる。このモデルを表9に記載したトレーニングセット(70物質)を用いてトレーニングし、次いで、表10に示す試験(18物質)で試験した。モデル性能のまとめを表11に示す。
図13は、記述されたランダムフォレストモデルの主成分分析およびヒートマップ結果を含む。同定された効力バイオマーカーのリストを表12に示す。
【0211】
議論
本願発明者らの分析では、本願発明者らのマイクロアレイデータと効力情報(ヒト効力とCLPを両方とも含む)との間に明確な関係があることがわかる。多変量解析法を特徴選択ツールとして使用し、感作剤の効力に関連する機構に対する新たな洞察が得られる。さらに、化学物質の感作剤の効力を高精度に予測することができる。
【0212】
実施例2の参考文献
7.Johansson Hら、A genomic biomarker signature can predict skin sensitizers using a cell-based in vitro alternative to animal tests.BMC Genomics.2011.
8.Johansson Hら、The GARD assay for assessment of chemical skin sensitizers.Toxicology in vitro 2013.
9.Johansson Hら、GARD in-house validation - A proof of concept.Toxicological Sciences 2014.
10.Basketterら、Categorization of chemicals according to their relative human skin sensitizing potency.Dermatitis 2014
11.Diaz-Uriarte R,Alvarez de Andres S.Gene selection and classification of microarray data using random forest.BMC Bioinformatics.2006.
12.Diaz-Uriarte R.GeneSrF and varSelRF:a web-based tool and R package for gene selection and classification using random forest.BMC Bioinformatics 2007
13.https://echa.europa.eu/documents/10162/13562/clp_en.pdf.
【0213】
表
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】