(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】スラリー
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20230413BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230413BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230413BHJP
B32B 23/04 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/139
B32B23/04
(21)【出願番号】P 2021506856
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2019011236
(87)【国際公開番号】W WO2020188707
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】上友 淳弘
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/135353(WO,A1)
【文献】特開2017-130451(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111103(WO,A1)
【文献】特開2015-041601(JP,A)
【文献】国際公開第2014/122847(WO,A1)
【文献】特表2005-509715(JP,A)
【文献】特表2004-533524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
B32B 23/0-23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダと繊維状物質とを少なくとも含むスラリーであって、80℃までにおける最低粘度(80℃昇温最低粘度)と25℃における粘度(25℃時粘度)の比(80℃昇温最低粘度/25℃時粘度)が0.12以上であ
り、
前記繊維状物質が、TEMPO酸化されたセルロース繊維を含み、
前記セルロース繊維が、平均太さが1~1000nm、平均アスペクト比が10~1000のセルロース繊維であることを特徴とするスラリー。
【請求項2】
前記バインダと前記繊維状物質の合計の固形分濃度が0.02~20重量%である、請求項1に記載のスラリー。
【請求項3】
前記25℃時粘度が0.6~100Pa・sであり、前記80℃昇温最低粘度が0.25~90Pa・sである、請求項1又は2に記載のスラリー。
【請求項4】
前記バインダの1重量%水溶液の粘度(25℃、60rpmにおける)が、10~5000mPa・sである、請求項1~3のいずれか1項に記載のスラリー。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のスラリーの固化物。
【請求項6】
更に、活物質を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のスラリー。
【請求項7】
前記バインダと前記繊維状物質と前記活物質の合計の固形分濃度が20~70重量%である、請求項6に記載のスラリー。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のスラリーの固化物。
【請求項9】
請求項8に記載の固化物からなる電極活物質層と集電体との積層体からなる電極。
【請求項10】
前記電極活物質層の端面の膜厚(端面膜厚)と中央部の膜厚(中央膜厚)の比(端面膜厚/中央膜厚)が0.9以上である、請求項9に記載の電極。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の電極を備えた電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー、該スラリーを用いて形成される電極活物質層と集電体の積層体を含む電極、及び前記電極を備えた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスはスマートフォンやノートパソコンなどの情報関連機器に加え、ハイブリッド車や電気自動車にも搭載することが検討されている。そのため、より小型化、高容量化、長寿命化することが求められている。特に、高容量化のためのエネルギー密度向上のために、電極を肥厚化する要望が高まっている。
【0003】
通常、電極では、活物質とバインダと溶媒とを混練して得られたスラリーを集電体上に室温付近(例えば、25℃)で塗布し、その後に高温(例えば、80℃)に昇温して塗膜を乾燥固化することによって電極活物質層(固化物)を形成し、これにより活物質を集電体に結着している。前記バインダとしては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)やカルボキシメチルセルロース(CMC)を使用することが知られている(特許文献1)。
【0004】
電極肥厚化のために上記のスラリーを集電体上に厚く塗工した場合、その後の高温乾燥条件(例えば、80℃)に昇温する際に塗膜の粘度が低下して、乾燥固化する前に塗膜自身の重みで形状が崩れ、中央部と端部の厚さが異なることで、電極活物質層における活物質の密度にばらつきが生じるという問題がある。そのため、塗膜の形状が崩れないように、まず比較的低温(例えば、40℃~60℃)で予備乾燥を行い、徐々に乾燥温度を上げることが行われているが、乾燥に長時間を要するため、生産効率が低下するという問題があった。
【0005】
一方、高温乾燥条件に昇温する際に塗膜の形状が崩れないようにスラリーの粘度を上昇させるために、増粘効果のあるCMCなどの水溶性多糖類の配合量を増やした場合、室温付近(例えば、25℃)でのスラリーの粘度が高くなりすぎて塗工性が低下し、集電体上に均一にスラリーを塗工することが困難になる、電極中の活物質量の割合が減少するという問題があった。
【0006】
このような背景から、高温下で効率的に塗膜の乾燥ができるように、温度による粘度の変化が少ない(粘度の温度依存性が低い)スラリーが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、室温付近(例えば、25℃)で塗工性が良好な粘度を有しながら、高温乾燥条件(例えば、80℃)に昇温する際の粘度の低下が抑制され、塗膜の形状が崩れにくいスラリーを提供することにある。
本発明の他の目的は、前記スラリーの固化物からなる電極活物質層と集電体との積層体からなる電極を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記電極を備える電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、スラリー中にバインダと共に繊維状物質を配合することにより、室温付近(例えば、25℃)で塗工性が良好な粘度を有しながら、高温乾燥条件(例えば、80℃)に昇温する際の粘度の低下が抑制されて塗膜の形状が崩れにくいこと、すなわち粘度の温度依存性が低いことを見いだした。さらに、このスラリーに活物質を配合し、集電体に塗布、乾燥させた電極活物質層(固化物)を有する電極を形成することにより、高容量の電池を効率的に製造することができることを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明の第1態様は、バインダと繊維状物質とを少なくとも含むスラリーであって、80℃までにおける最低粘度(80℃昇温最低粘度)と25℃における粘度(25℃時粘度)の比(80℃昇温最低粘度/25℃時粘度)が0.12以上であることを特徴とするスラリーを提供する。
【0011】
第1態様のスラリーにおいて、前記バインダと前記繊維状物質の合計の固形分濃度は0.02~20重量%であってもよい。
【0012】
第1態様のスラリーにおいて、前記繊維状物質はセルロース繊維であってもよい。
【0013】
第1態様のスラリーにおいて、前記繊維状物質の平均太さは1~1000nm、平均アスペクト比は10~1000であってもよい。
【0014】
また、本発明は、第1態様のスラリーの固化物を提供する。
【0015】
また、本発明の第2態様は、更に、活物質を含む前記第1態様のスラリーを提供する。
【0016】
第2態様のスラリーにおいて、前記バインダと前記繊維状物質と前記活物質の合計の固形分濃度は20~70重量%であってもよい。
【0017】
また、本発明は、第2態様のスラリーの固化物を提供する。
【0018】
また、本発明は、第2態様のスラリーの固化物からなる電極活物質層と集電体との積層体からなる電極を提供する。
【0019】
前記電極において、前記電極活物質層の端面の膜厚(端面膜厚)と中央部の膜厚(中央膜厚)の比(端面膜厚/中央膜厚)が0.9以上であってもよい。
【0020】
さらに、本発明は、前記電極を備えた電池を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のスラリーは、上記の構成を有するため、室温付近(例えば、25℃)で塗工性が良好な粘度を有し、被着体(例えば、集電体)に均一で厚い塗膜を効率的に形成することができる一方、形成された塗膜は高温条件(例えば、80℃)に昇温する際でも粘度の低下が抑制されており、形状が崩れにくいので、スラリーを被着体に厚く塗工した後に、直ちに80℃に昇温・乾燥しても塗膜の形状が崩れることなく、均一で厚い塗膜(固化物)を効率的に形成することができる。
【0022】
本発明のスラリーにさらに活物質を配合し、集電体に塗布、乾燥させた電極活物質層を有する電極を形成することにより、高容量の電池を効率的に製造することができる。このように、本発明のスラリーを使用して得られる電池は、効率的に電池容量を大きくすることができるため、スマートフォンやノートパソコンなどの情報関連機器、ハイブリッド車や電気自動車等に好適に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[スラリー]
本発明のスラリーは、バインダと繊維状物質とを少なくとも含むスラリーであって、80℃までにおける最低粘度(80℃昇温最低粘度)と25℃における粘度(25℃時粘度)の比(80℃昇温最低粘度/25℃時粘度)が0.12以上であることを特徴とする。本発明のスラリーはバインダと繊維状物質以外にも他の成分を含有していても良い。例えば、本発明のスラリーを電池電極の電極活物質層を形成するために使用する場合は、さらに活物質を含有することが好ましい。
【0024】
本発明のスラリーにおいて、繊維状物質は、バインダ中に分散して互いに絡まりあって、三次元的な網目構造を形成する。このような三次元網目構造は高温(例えば、80℃)に昇温する際でも保持されるため粘度の低下が抑制され、すなわちスラリー粘度の温度依存性が低くなる。その結果、室温付近(例えば、25℃)で塗工性が良好な粘度に調整して、厚い塗膜を形成し、その後に直ちに高温乾燥条件(例えば、80℃)に昇温・乾燥しても塗膜の粘度の低下が抑制されて形状が崩れにくいので、均一で厚い塗膜(固化物)を効率的に形成することができる。
【0025】
<バインダ>
本発明におけるバインダは、粘着性を発揮して、スラリーを被着体に塗布、乾燥させる際に、塗膜を被着体の表面に固着させる作用を有する化合物である。バインダは、環境負荷の面から水性バインダが好ましく、例えば、20℃の水に対する溶解性が1g/L以上の水性バインダ、又は20℃の水に粒子径(粒子径の測定方法:レーザー回折法による)1μm以下で分散する水性バインダが好ましい。
【0026】
バインダは耐熱性に優れることが好ましく、融点(融点がないものは分解温度)が、例えば160℃以上(好ましくは180℃以上、特に好ましくは200℃以上)であるバインダが好ましい。尚、バインダの融点(融点がないものは分解温度)の上限は、例えば400℃である。
【0027】
バインダは、粘度調整機能を持っても良い。本発明におけるバインダは、1重量%水溶液の粘度(25℃、60rpmにおける)が、例えば10~5000mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは50~3000mPa・s、最も好ましくは100~2000mPa・sである。バインダの1重量%水溶液の粘度が上記範囲にあることにより、少量の添加でスラリーに塗工に適した粘度を持たせることが出来るようになる。
【0028】
前記バインダとしては、例えば、多糖類誘導体(1)、下記式(2)で表される構成単位を有する化合物、下記式(3)で表される構成単位を有する化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化1】
(式中、Rは水酸基、カルボキシル基、フェニル基、N-置換又は無置換カルバモイル基、又は2-オキソ-1-ピロリジニル基を示す)
【化2】
(式中、nは2以上の整数を示し、Lはエーテル結合又は(-NH-)基を示す)
【0029】
前記N-置換カルバモイル基としては、-CONHCH(CH3)2、-CON(CH3)2基等の、N-C1-4アルキル置換カルバモイル基が挙げられる。
【0030】
前記カルボキシル基はアルカリと塩を形成していてもよい。
【0031】
前記nは2以上の整数であり、例えば2~5の整数、好ましくは2~3の整数である。従って、式(3)中の[CnH2n]基は炭素数2以上のアルキレン基であり、ジメチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、トリメチレン基等が挙げられる。
【0032】
上記式(2)で表される構成単位を有する化合物、及び上記式(3)で表される構成単位を有する化合物は、それぞれ、式(2)で表される構成単位や式(3)で表される構成単位以外の構成単位を有していてもよい。
【0033】
上記式(2)で表される構成単位を有する化合物としては、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、メタクリル酸メチル・ブタジエンゴム(MBR)、ブタジエンゴム(BR)等のジエン形ゴム;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合体・ナトリウム塩、アクリル酸/スルホン酸共重合体・ナトリウム塩等のアクリル系ポリマー;ポリアクリルアミド、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、ポリ-N,N-ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系ポリマー;ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0034】
上記式(3)で表される構成単位を有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0035】
前記多糖類誘導体(1)は、2個以上の単糖類がグリコシド結合によって重合してなる化合物である。本発明においては、なかでも、グルコース(例えば、α-グルコース、又はβ-グルコース)がグリコシド結合によって重合してなる化合物、若しくはその誘導体が好ましく、特に、セルロース、デンプン、グリコーゲン、若しくはこれらの誘導体から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0036】
前記多糖類誘導体(1)としては、とりわけ、セルロース又はその誘導体を使用することが耐熱性、粘着力に優れ、少量を添加することにより、スラリーに塗工に適した粘度を持たせることが出来るようになる点で好ましい。
【0037】
前記セルロース、又はその誘導体としては、例えば、下記式(1-1)で表される構成単位を有する化合物が挙げられる。
【化3】
(式中、R
1~R
3は、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する炭素数1~5のアルキル基を示す。尚、前記ヒドロキシル基及びカルボキシル基はアルカリと塩を形成していてもよい)
【0038】
前記炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
【0039】
前記ヒドロキシル基及びカルボキシル基はアルカリと塩を形成していてもよく、例えば、ナトリウムやアンモニウム、窒素含有複素環式化合物(イミダゾール等)と塩を形成していてもよい。
【0040】
前記セルロースの誘導体としては、具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びこれらのアルカリ塩(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウム)等が挙げられる。
【0041】
本発明におけるバインダとしては、なかでも、粘性付与効果に優れ、少量の添加でスラリーに塗工に適した粘度を持たせることが出来るようになる点、及び、耐熱性、粘着力に優れる点で、多糖類誘導体(1)が好ましく、とりわけセルロース又はその誘導体が好ましい。
【0042】
<繊維状物質>
本発明における繊維状物質は、スラリー中においても繊維状の形状を保持し、互いに絡まりあって、三次元的な網目構造を形成する。このような三次元網目構造は高温(例えば、80℃)に昇温する際でも保持されるため粘度の低下が抑制され、すなわちスラリー粘度の温度依存性が低くなる。その結果、室温付近(例えば、25℃)で塗工性が良好な粘度に調整して、厚い塗膜を形成し、その後に直ちに高温乾燥条件(例えば、80℃)に昇温・乾燥しても塗膜の粘度の低下が抑制されて形状が崩れにくいので、均一で厚い塗膜(固化物)を効率的に形成することができる。
【0043】
本発明のスラリーは、繊維状物質の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
【0044】
前記繊維状物質としては、例えば、セルロース繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ポリ-p-フェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、液晶ポリマー繊維等が挙げられる。
【0045】
また、前記繊維状物質は導電性を有する繊維状物質であってもよく、導電性を有する繊維状物質を構成する素材としては、例えば、金属、半導体、炭素材料、導電性高分子等が挙げられる。
【0046】
上記金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、コバルト、錫、及びこれらの合金等の公知乃至慣用の金属を挙げることができる。
【0047】
上記半導体としては、例えば、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等の公知乃至慣用の半導体を挙げることができる。
【0048】
上記炭素材料としては、例えば、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の公知乃至慣用の炭素材料を挙げることができる。
【0049】
上記導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリp-フェニレン、ポリp-フェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、及びこれらの誘導体(例えば、共通するポリマー骨格にアルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エチレンジオキシ基等の置換基を有するもの;具体的には、ポリエチレンジオキシチオフェン等)等が挙げられる。
【0050】
前記繊維状物質の平均太さ(平均径D)は、特に限定されないが、例えば1~1000nmであり、なかでも、バインダ中で繊維状物質同士が互いに絡まりあって安定した三次元網目構造を形成し、スラリーの粘度の温度依存性を低く制御できる点で、3~500nmが好ましく、特に好ましくは3~200nmである。尚、繊維状物質の平均太さは、電子顕微鏡(SEM、TEM)や原子間力顕微鏡(AFM)を用いて十分な数(例えば、10個以上)の繊維状物質について、これらの繊維状物質の太さ(直径)を計測し、算術平均することにより求められる。
【0051】
前記繊維状物質の平均長さ(平均長L)は、特に限定されないが、例えば0.01~1000μmであり、なかでも、バインダ中で繊維状物質同士が互いに絡まりあって安定した三次元網目構造を形成し、スラリーの粘度の温度依存性を低く制御できる点で、0.3~200μmが好ましく、特に好ましくは0.5~100μm、最も好ましくは1~20μmである。尚、繊維状物質の平均長さは、電子顕微鏡(SEM、TEM)を用いて十分な数(例えば、10個以上)の繊維状物質について、これらの繊維状物質の長さを計測し、算術平均することにより求められる。繊維状物質の長さは、直線状に伸ばした状態で計測すべきであるが、現実には屈曲しているものが多いため、電子顕微鏡像から画像解析装置を用いて繊維状物質の投影径及び投影面積を算出し、円柱体を仮定して下記式から算出するものとする。
長さ=投影面積/投影径
【0052】
前記繊維状物質の平均アスペクト比(平均長さ/平均太さ)は、特に限定されないが、例えば10~1000であり、なかでも、バインダ中で繊維状物質同士が互いに絡まりあって安定した三次元網目構造を形成し、スラリーの粘度の温度依存性を低く制御できる点で、15~500が好ましく、特に好ましくは20~100である。
【0053】
前記繊維状物質としては、なかでも、電池の酸化還元反応により劣化しにくいものが、経時安定性に優れる点で好ましく、特に、セルロース繊維、アラミド繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブから選択される少なくとも1種が好ましく、とりわけ、バインダ中で繊維状物質同士が互いに絡まりあって安定した三次元網目構造を形成できる点で、セルロース繊維及び/又はアラミド繊維が好ましく、特にセルロース繊維が好ましい。
【0054】
(セルロース繊維)
前記セルロース繊維は、原料パルプの粉砕、摩砕、解砕、爆砕等の公知の方法によって製造することができる。また、前記原料パルプには、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)が使用できる。
【0055】
前記セルロース繊維としては、例えば、微小繊維状セルロース「セリッシュ」(ダイセルファインケム(株)製)等の市販品を使用しても良い。
【0056】
(アラミド繊維)
前記アラミド繊維は2個以上の芳香環がアミド結合を介して結合した構造を有するポリマー(すなわち、全芳香族ポリアミド)からなる繊維であり、前記全芳香族ポリアミドにはメタ型及びパラ型が含まれる。前記全芳香族ポリアミドとしては、例えば、下記式(a)で表される構成単位を有するポリマーが挙げられる。
【化4】
【0057】
上記式中、Ar1、Ar2は同一又は異なって芳香環、又は2個以上の芳香環が単結合又は連結基を介して結合した基を示す。前記芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等の炭素数6~10の芳香族炭化水素環が挙げられる。また、前記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基(例えば、炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数3~18の二価の脂環式炭化水素基等)、カルボニル基(-CO-)、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、-NH-、-SO2-等が挙げられる。また、前記芳香環は種々の置換基[例えば、ハロゲン原子、アルキル基(例えば、C1-4アルキル基)、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、C1-4アルコキシ基、C1-4アシルオキシ基等)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(例えば、C1-4アルコキシカルボニル基)、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基(例えば、モノ又はジC1-4アルキルアミノ基)、スルホ基等]を有していてもよい。更に、前記芳香環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
【0058】
前記アラミド繊維は、例えば、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸のハロゲン化物に、少なくとも1種の芳香族ジアミンを反応させる(例えば、溶液重合、界面重合等)ことにより製造することができる。
【0059】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、3,3'-ビフェニルジカルボン酸、4,4'-ジフェニルエーテルジカルボン酸等が挙げられる。
【0060】
前記芳香族ジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノビフェニル、2,4-ジアミノジフェニルアミン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルアミン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ナフタレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン等が挙げられる。
【0061】
前記アラミド繊維は、上記全芳香族ポリアミドを周知慣用の方法により(例えば、紡糸、洗浄、乾燥処理等の工程を経て)繊維状に紡糸することにより製造できる。また、繊維状に紡糸された後は、必要に応じて解砕処理等を施すことができる。例えば、超高圧ホモジナイザー等により強力な機械的剪断力を加えミクロフィブリル化することができる。
【0062】
前記アラミド繊維としては、例えば、繊維状物質状アラミド「ティアラ」(ダイセルファインケム(株)製)等の市販品を使用しても良い。
【0063】
<80℃昇温最低粘度/25℃時粘度>
本発明のスラリーの80℃までにおける最低粘度(80℃昇温最低粘度)と25℃における粘度(25℃時粘度)は、それぞれ、25℃~80℃において、MCRレオメータを用いて周波数1Hzの条件で測定した複素粘度である。
「80℃までにおける最低粘度」とは、例えば、本発明のスラリーを25℃から80℃に15℃/分で昇温した際における粘度推移で最も低い値を示す粘度である。
【0064】
本発明のスラリーは上記のバインダと繊維状物質を含むため粘度の温度依存性が低く制御されており、80℃昇温最低粘度と25℃時粘度の比(80℃昇温最低粘度/25℃時粘度)が0.12以上である。本発明のスラリーの(80℃昇温最低粘度/25℃時粘度)が0.12以上であることにより、室温付近(例えば、25℃)で塗工性が良好な粘度に調整して、厚い塗膜を形成し、その後に直ちに高温乾燥条件(例えば、80℃)に昇温・乾燥しても塗膜の粘度の低下が抑制されて形状が崩れにくいので、均一で厚い塗膜を効率的に形成することができる。スラリーの粘度の温度依存性をさらに低く制御して、均一で厚い塗膜を効率的に形成できる観点から、スラリーの(80℃昇温最低粘度/25℃時粘度)は、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上、より好ましくは0.25以上、より好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上である。
【0065】
本発明のスラリーを80℃に昇温する際の粘度は、通常25℃時粘度より低い値で推移するが、温度の上昇と共にスラリーが一部ゲル化して、逆に粘度が25℃時粘度より上昇する場合があり得る。高温でスラリーがゲル化すると乾燥しにくくなり、乾燥に長時間を要して効率が低下する場合もある。従って、高温で効率的に乾燥できるという観点から、本発明のスラリーの80℃までにおける最高粘度(80℃昇温最高粘度)と25℃における粘度(25℃時粘度)の比(80℃時最高粘度/25℃時粘度)は3.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下である。
「80℃までにおける最高粘度」とは、例えば、本発明のスラリーを25℃から80℃に15℃/分で昇温した際における粘度推移で最も高い値を示す粘度である。
【0066】
本発明のスラリーの25℃時粘度は、例えば0.6~100Pa・s(好ましくは0.8~50Pa・s、特に好ましくは1.0~30Pa・s)であることが塗布性に優れる点で好ましい。スラリーの25℃時粘度は、例えば、溶媒を添加することにより上記範囲に調整することができる。前記溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類;N,N-ジメチルホルミアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどの鎖状アミド類;N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなどの環状アミド類;メチルスルホキシドなどのスルホキシド類等が挙げられる。なかでも、水を使用することが、環境負荷が小さく、安全性に優れる点で好ましい。
【0067】
本発明のスラリーの80℃昇温最低粘度は、高温乾燥条件に昇温する際に塗膜の形状が保持されやすいという観点から、例えば0.25~90Pa・sが好ましく、より好ましくは0.5~45Pa・s、特に好ましくは1~30Pa・sである。
【0068】
<活物質>
本発明のスラリーを電池電極の電極活物質層を形成するために使用する場合は、さらに活物質を含むことが好ましい。活物質としては、例えば、炭素材(カーボン)、金属単体、珪素単体(シリコン)、珪素化合物、鉱物質(ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪成土、タルク、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレーなど)、金属炭酸塩(炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなど)、金属酸化物(アルミナ、酸化亜鉛、二酸化マンガン、二酸化チタン、二酸化鉛、酸化銀、酸化ニッケル、リチウム含有複合酸化物(LiCoO2、チタン酸リチウム等))、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ニッケル、水酸化カドミウムなど)、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。活物質としては、中でも、金属酸化物、リチウム含有複合酸化物、珪素単体、珪素化合物、炭素材が好ましい。
【0069】
活物質は、電池の種類に応じて選択して使用することが好ましい。リチウムイオン電池においては、正極活物質としてリチウム含有複合酸化物(特に、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム及びその合金)が好ましく、負極活物質としては珪素単体、珪素化合物、炭素材(特に黒鉛)、及び金属酸化物、リチウム含有複合酸化物(特に、チタン酸リチウム、ニオブチタン系酸化物)から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0070】
前記珪素単体としては、例えば、無定形珪素(アモルファスシリコン)、低結晶性シリコンなどのシリコン等が挙げられる。
【0071】
前記珪素化合物としては、例えば、酸化硅素(SiOなど)、金属珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウムなど)、シリコンと遷移金属(スズ、チタンなど)との合金、シリコン複合化物(シリコンとSiOとの複合化物など)、炭化珪素等が挙げられる。
【0072】
炭素材としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、アモルファスカーボン、ハードカーボン、グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。
【0073】
負極に用いられる金属酸化物としては、例えば、Ti、Sn、Coの合金や酸化物などが挙げられる。
【0074】
<その他の成分>
本発明のスラリーは、上記成分以外にも更に他の成分を1種又は2種以上含有していても良い。他の成分としては、例えば、導電付与材等が挙げられる。前記導電性付与材としては、例えば、金属粉、導電性ポリマー、アセチレンブラック等が挙げられる。
【0075】
本発明のスラリーは、自公転式撹拌脱泡装置、ホモディスパー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、ビーズミル等の一般的に知られる混合用機器を使用して上記成分を均一に混合することにより製造することができる。尚、各成分は、同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。
【0076】
本発明のスラリーに含まれる不揮発分全量におけるバインダの含有量は、例えば0.01~2.0重量部、好ましくは0.1~1.5重量部、特に好ましくは0.3~1.0重量部である。
【0077】
本発明のスラリーに含まれる不揮発分全量における繊維状物質の含有量は、例えば0.01~5.0重量%、好ましくは0.1~3.0重量%、特に好ましくは0.3~1.5重量%である。
【0078】
本発明のスラリーに含まれる不揮発分全量における繊維状物質とバインダの合計含有量は、例えば0.01~10.0重量%、好ましくは0.1~5.0重量%、特に好ましくは0.5~2.0重量%である。
【0079】
本発明のスラリーにおいて、繊維状物質の含有量は、バインダを含む場合、バインダの含有量の0.5~5.0倍程度が好ましく、特に好ましくは1.0~3倍、最も好ましくは1.0~2.0倍である。
【0080】
本発明のスラリーにおいて、バインダと繊維状物質の合計の固形分濃度は、例えば0.02~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%である。本発明のスラリーがこのような構成を有することにより、塗工性が良好となる25℃時粘度に調整しやすくなると共に、スラリー粘度の温度依存性を低く制御しやすくなるため、好適である。
【0081】
本発明のスラリーが活物質を含む場合、スラリーに含まれる不揮発分全量(100重量%)における、活物質の割合は、例えば90重量%以上、好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。本発明のスラリーが活物質この範囲で活物質を含むことにより、本発明のスラリーを用いて得られる電極の電池容量を高めることができる。
【0082】
本発明のスラリーが活物質とバインダを含む場合、本発明のスラリーにおけるバインダの含有量は、スラリーに含まれる活物質100重量部に対して0.01~10.0重量部であり、好ましくは0.1~5.0重量部、特に好ましくは0.3~2.0重量部である。本発明のスラリーはバインダを上記範囲で含有することにより、電池容量の低下を抑制しつつ、集電体への密着性を向上することができる。バインダの含有量が上記範囲を上回ると、集電体への密着性は向上するが、電池容量の低下を引き起こす傾向がある。一方、バインダの含有量が上記範囲を下回ると、集電体への密着性が不十分となり、電極活物質層が集電体から剥がれ落ちる等により、電池容量の低下を引き起こす傾向がある。
【0083】
本発明のスラリーが活物質を含む場合、バインダと繊維状物質と活物質の合計の固形分濃度は、例えば20~70重量%、好ましくは35~60重量%である。本発明のスラリーがこのような構成を有することにより、塗工性が良好となる25℃時粘度に調整しやすくなると共に、スラリー粘度の温度依存性を低く制御しやすくなるため、好適である。
【0084】
本発明のスラリーが活物質を含む場合、スラリーを遠心分離(例えば、5000rpm×5分)して得られる上澄み液中のバインダ含有量は、前記スラリーに含まれるバインダ全量の45重量%以上であり、好ましくは60重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは95重量%以上である。本発明のスラリーがこのような構成を有することにより、バインダの含有量を増量せずとも、若しくは、従来より減量しても、優れた密着性を発揮することができるため、活物質の含有割合を低下することなく、若しくは活物質の含有割合を従来より増加させつつ、密着性を向上することができ、優れた密着性と、高電池容量とを兼ね備える電極を形成することができる。
【0085】
本発明のスラリーは前記の通り、繊維状物質がバインダ中に分散して互いに絡まりあって、三次元的な網目構造を形成する。このような三次元網目構造は高温(例えば、80℃)に昇温する際でも保持されるため粘度の低下が抑制され、すなわちスラリー粘度の温度依存性が低くなる。その結果、室温付近(例えば、25℃)で塗工性が良好な粘度に調整して、厚い塗膜を形成し、その後に直ちに高温乾燥条件(例えば、80℃)に昇温・乾燥しても塗膜の粘度の低下が抑制されて形状が崩れにくいので、均一で厚い塗膜(固化物)を効率的に形成することができる。スラリーが繊維状物質を含まず、バインダのみを含む場合は、スラリー粘度の温度依存性が高くなり、塗膜の形状が崩れやすくなるため、均一で厚い塗膜(固化物)を効率的に形成することが困難となる。
【0086】
本発明のスラリーを塗布する被着体は、特に限定されず、例えば、金属基材、プラスチック基材、セラミックス基材、半導体基材、ガラス基材、紙基材、木基材(木製基材)などの表面が塗装表面である公知乃至慣用の各種基材を用いることができる。特に、本発明のスラリーが活物質を含む場合、集電体としての金属箔を被着体として電極活物質層を形成することが好ましい。
【0087】
本発明のスラリーの塗布厚みは、乾燥後の厚みが、例えば5μm以上が好ましく、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm、特に好ましくは200μm以上である。本発明のスラリーは粘度の温度依存性が低いため、高温下でも粘度が低下しにくく、塗膜の膜厚を100μm以上にしても効率的に乾燥・固化して膜厚が均一な厚い塗膜(固化物)を形成することができる。一方、高温下での塗膜の形状を保持するという観点から、乾燥後の厚みは、例えば500μm以下が好ましい。
【0088】
スラリーの塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷法、マスク印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、スタンピング、ディスペンス、スキージ印刷法、シルクスクリーン印刷法、噴霧、刷毛塗り等が挙げられる。また、スラリーの塗布には、フィルムアプリケーター、バーコーター、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター、ブレードコーター等が使用できる。
【0089】
本発明のスラリーは粘度の温度依存性が低いため、塗布後直ちに高温に昇温・乾燥しても塗膜の形状が維持されるため、短時間で効率的に塗膜を乾燥・固化することができる。塗布されたスラリーを乾燥させる方法としては、特に限定されないが、加熱、減圧、送風等により乾燥させる方法が挙げられる。乾燥温度は、効率的に乾燥・固化させる観点から、70℃~150℃が好ましく、より好ましくは80~120℃である。乾燥時間は、前記乾燥温度条件下で、例えば1分~5時間、好ましくは10分~1時間である。その他、減圧度や減圧時間、送風量、送風速度、送風温度、送風する気体の種類や乾燥度、送風する対象となる領域、送風の方向等は、任意に選択することができる。
【0090】
本発明のスラリーが活物質を含む場合、電池の電極活物質層を形成する用途に好適に使用することができる。そして、本発明のスラリーを使用すれば、高電池容量の電極を効率的に形成することができる。
本発明のスラリーは、電池の電極以外に、被着体に塗布・乾燥・固化させる各種用途、例えば、塗料、食品、薬品の添加剤などでも好適に使用することができる。
【0091】
[電極]
本発明の電極は、活物質を含む上記スラリーの固化物からなる電極活物質層と集電体との積層体からなる。本発明の電極はスラリーの固化物と集電体以外の構成要素を含んでいても良い。
【0092】
本発明の電極は、例えば、上記スラリーを集電体の少なくとも一方の表面に塗布し、乾燥して前記スラリーを固化させることにより製造できる。
【0093】
前記集電体には正極集電体と負極集電体が含まれ、前記正極集電体は、例えば、アルミ箔等で形成される。また、負極集電体は、例えば、銅箔等で形成される。
【0094】
集電体へのスラリーの塗布量、乾燥後の厚み、塗布方法、乾燥・固化条件等は、被着体に対する上記条件と同様である。
【0095】
本発明のスラリーは、粘度の温度依存性が小さいため、高温に昇温して塗膜を乾燥・固化させても、端面の膜厚(端面膜厚)と中央部の膜厚(中央膜厚)の差が小さい電極活物質層を形成することができる。すなわち、電極活物質層の端面膜厚と中央膜厚の比(端面膜厚/中央膜厚)は、好ましくは0.9以上であり、より好ましくは0.95以上であり、さらに好ましくは0.98以上である。電極活物質層の(端面膜厚/中央膜厚)を0.9以上とすることにより、電極活物質層における活物質の密度を均一にすることができ、高容量・高品質の電極とすることができる。
【0096】
上述の電極活物質層の端面膜厚と中央膜厚の比(端面膜厚/中央膜厚)は、以下の方法により測定することができる。
本発明のスラリーを厚み15μm、一辺150mmの正方形の銅箔の片面に、乾燥後の厚みが50μm以上になるように均一に塗布する。その後、塗膜を上面にして、80℃に昇温して1時間乾燥・固化させて電極活物質層を形成する。形成された電極活物質層の端面の最も膜厚が薄い箇所の膜厚を端面膜厚、中央部の最も膜厚が厚い箇所の膜厚を中央膜厚として、端面膜厚と中央膜厚の比(端面膜厚/中央膜厚)を算出する。電極活物質層の端面膜厚、中央膜厚は、例えば、マイクロメータ(株式会社ミツトヨ)により測定することができる。
【0097】
本発明の電極は、上記スラリーの固化物からなる電極活物質層と集電体との密着性が特に優れ、剥離強度は例えば2.0N/m以上、好ましくは3.0N/m以上、特に好ましくは3.5N/m以上である。尚、剥離強度の上限は、例えば70.0N/mである。そのため、充放電の繰り返しにより電極が膨張・収縮しても、電極活物質層が集電体から剥がれ落ちるのを防止することができ、長期に亘って安定的に電池容量を高く維持することができる。
【0098】
また、本発明の電極は上記スラリーの固化物からなる電極活物質層を備え、膜厚が厚い(例えば、電極活物質層の膜厚が50μm以上、望ましくは80μm以上、更に望ましくは100μm以上の)電極活物質層を効率的に形成することができる。そのため、本発明の電極を使用することのより、高容量を有する電池を効率的に製造することができる。
【0099】
[電池]
本発明の電池は、上記電極を備えることを特徴とする。本発明の電池は、電極(正極、及び負極)とセパレータを積層して巻回したものを、電解液と共に缶などの容器に封入した巻回型電池であっても、電極(正極、及び負極)とセパレータを積層したシート状物を、電解液と共に、比較的柔軟な外装体内部に封じ込めた積層型電池であってもよい。
【0100】
本発明の電池には、リチウムイオン電池、ニッケル・水素充電池、ニッケル・カドミウム蓄電池等の二次電池;マンガン乾電池、アルカリマンガン電池、リチウム一次電池等の一次電池;電気二重層キャパシタ等が含まれる。
【0101】
本発明の電池は、膜厚が厚い(例えば、電極活物質層の膜厚が50μm以上の)電極活物質層が集電体上に効率的に形成できるため、電池容量を効率的に高くすることができる。そのため、本発明の電池は、スマートフォンやノートパソコンなどの情報関連機器、ハイブリッド車や電気自動車等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。実施例1は、参考例として記載するものである。
【0103】
調製例1(セルロースナノファイバー(CNF)スラリー液の調製)
市販の広葉樹パルプを水で懸濁して、1重量%スラリー液(1)100Lを得た。
次いで、得られたスラリー液に、ディスクリファイナー(長谷川鉄工(株)製、商品名「SUPERFIBRATER400-TFS」)を用いて、クリアランス0.15mm、ディスク回転数1750rpmとして10回叩解処理してリファイナー処理を施した。
リファイナー処理後の1重量%スラリー液に、更に、破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザー(ゴーリン社製、商品名「15M8AT」)を用いて、処理圧50MPaで50回ホモジナイズ処理を施した。
リファイナー処理及びホモジナイズ処理を施した後の1重量%スラリー液をガーゼで繰り返し濾して、不揮発分濃度9.9重量%のスラリー液を得た。
得られた9.9重量%スラリー液に水を添加し、ホモディスパー(特殊機化工業(株)製、モデルL)を用いて3000rpmで5分間撹拌することで、1.2重量%のスラリー液を得た。得られた1.2重量%スラリー液をCNFスラリー液(1)とする。
得られたCNFスラリー液(1)に含まれる繊維を任意に10本選び出し、選び出された繊維を、電子顕微鏡(SEM、TEM)を用いて観察し繊維長と繊維径を測定した。その結果、10本の繊維の平均太さは79.2nm、平均長さは6.14μm、平均アスペクト比(平均長さ/平均太さ)は78であった。
【0104】
調製例2(セルロースナノファイバー(CNF)スラリー液の調製)
市販の針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維3gを297gのイオン交換水で十分攪拌後、パルプ3gに対し、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル、ALDRICH、Free radical、98%)1.25重量%、臭化ナトリウム12.5重量%(富士フイルム和光純薬(株))、次亜塩素酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)、Cl:5%)56.8重量%をこの順で添加し、pHスタットを用い、0.5M水酸化ナトリウムの滴下にてpHを10.5に保持し、温度20℃で酸化反応を行った。次に、120分の酸化時間で滴下を停止し、酸化パルプを得た。該酸化パルプをイオン交換水にて十分洗浄し、脱水処理を行い20℃の雰囲気下で自然乾燥した。その後、酸化パルプ1.2gとイオン交換水98.8gをホモディスパー(特殊機化工業(株)製、モデルL)を用いて3000rpmで10分間攪拌することにより、繊維の微細化処理を行い、スラリー液を得た。得られたスラリー液中の酸化パルプの固形分濃度は、1.2重量%であった。得られた1.2重量%スラリー液をCNFスラリー液(2)とする。
得られたCNFスラリー液(2)に含まれる繊維を任意に10本選び出し、選び出された繊維を、電子顕微鏡(SEM、、TEM)を用いて観察し繊維長と繊維径を測定した。その結果、10本の繊維の平均太さは3.1nm、平均長さは1.00μm、平均アスペクト比(平均長さ/平均太さ)は323であった。
【0105】
実施例1
調製例1で得られたCNFスラリー液(1)84gをポリプロピレン製容器に入れ、1.5重量%のCMC水溶液(CMC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、1重量%水溶液の25℃、60rpmにおける粘度:1500~3000mPa・s、ダイセルファインケム(株)製、品番2200)67.5gを添加し、活物質としての人造黒鉛(平均粒子径:約20μm)99.0gを更に加えて、ホモディスパー(特殊機化工業(株)製、モデルL)を用いて3000rpmで30分間撹拌して、スラリー(1)を得た。
得られたスラリー(1)の粘度を、MCRレオメータを用いて周波数1Hzの条件で、25℃時の複素粘度(25℃時粘度)及び25℃から80℃に15℃/分で昇温した際の最低複素粘度(80℃昇温最低粘度)を測定した。25℃時粘度、80℃昇温最低粘度、80℃昇温最低粘度/25℃時粘度比を表1に示す。
【0106】
実施例2
スラリー(1)の代わりに、調製例2で得られたCNFスラリー液(2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、スラリー(2)を得、25℃時粘度及び80℃昇温最低粘度を測定した。25℃時粘度、80℃昇温最低粘度、80℃昇温最低粘度/25℃時粘度比を表1に示す。
【0107】
実施例3
スラリー(1)の代わりに、セルロースナノクリスタル(CelluForce NCC、CelluForce社製、1.2重量%水スラリー液、平均太さ:7.1nm、平均長さ:0.15μm、平均アスペクト比(平均長さ/平均太さ):21)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、スラリー(3)を得、25℃時粘度及び80℃昇温最低粘度を測定した。25℃時粘度、80℃昇温最低粘度、80℃昇温最低粘度/25℃時粘度比を表1に示す。
【0108】
比較例1
スラリー(1)の代わりに、SBR水分散液(製品名TRD2001、JSR社)を2g用いて、固形分濃度が40%となるように水分調整したこと以外は、実施例1と同様にしてスラリーを調製し、25℃時粘度及び80℃昇温最低粘度を測定した。25℃時粘度、80℃昇温最低粘度、80℃昇温最低粘度/25℃時粘度比を表1に示す。
【0109】
【0110】
実施例4
活物質としての人造黒鉛を配合しないこと以外は、実施例1と同様にして、スラリー(4)を得、25℃時粘度及び80℃昇温最低粘度を測定した。25℃時粘度は3.678Pa・s、80℃昇温最低粘度は0.700Pa・s、80℃昇温最低粘度/25℃時粘度比は0.190であった。
【0111】
比較例2
活物質としての人造黒鉛を配合しないこと以外は、比較例1と同様にして、スラリーを得、25℃時粘度及び80℃昇温最低粘度を測定した。25℃時粘度は0.883Pa・s、80℃昇温最低粘度は0.049Pa・s、80℃昇温最低粘度/25℃時粘度比は0.055であった。
【0112】
試験例1
実施例1~3で得られたスラリー(1)~(3)及び比較例1で得られたスラリーを、それぞれ、厚み15μm、一辺150mmの正方形の銅箔に、乾燥後の厚みが50μm以上となるようにアプリケーターにより塗布した。その後、塗膜を上面にして、80℃に15℃/分で昇温して1時間乾燥・固化させて電極活物質層を銅箔の片面に形成した電極を作製した。得られる電極の電極活物質層の膜厚をマイクロメータ(株式会社ミツトヨ)により測定した。電極活物質層の端面の最も膜厚が薄い箇所の膜厚を(端面膜厚)、中央部の最も膜厚が厚い箇所の膜厚を(中央膜厚)として、端面膜厚と中央膜厚の比(端面膜厚/中央膜厚)を算出した。結果を表2に示す。
【0113】
【0114】
上記で説明した本発明のバリエーションを以下に付記する。
[1]バインダと繊維状物質とを少なくとも含むスラリーであって、80℃までにおける最低粘度(80℃昇温最低粘度)と25℃における粘度(25℃時粘度)の比(80℃昇温最低粘度/25℃時粘度)が0.12以上(好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上、より好ましくは0.25以上、より好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上)であることを特徴とするスラリー。
[2]80℃までにおける最高粘度(80℃昇温最高粘度)と25℃における粘度(25℃時粘度)の比(80℃時最高粘度/25℃時粘度)が3.0以下(好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下)である、上記[1]に記載のスラリー。
[3]25℃時粘度が、0.6~100Pa・s(好ましくは0.8~50Pa・s、より好ましくは1.0~30Pa・s)である、上記[1]または[2]に記載のスラリー。
[4]80℃昇温最低粘度が、0.25~90Pa・s(好ましくは0.5~45Pa・s、より好ましくは1~30Pa・s)である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のスラリー。
【0115】
[5]前記バインダが、20℃の水に対する溶解性が1g/L以上の水性バインダ、又は20℃の水に粒子径(粒子径の測定方法:レーザー回折法による)1μm以下で分散する水性バインダである、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のスラリー。
[6]前記バインダが、融点(融点がないものは分解温度)が、160℃以上(好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、上限は、好ましくは400℃)であるバインダである、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のスラリー。
[7]前記バインダが、1重量%水溶液の粘度(25℃、60rpmにおける)が、10~5000mPa・s(好ましくは50~3000mPa・s、より好ましくは100~2000mPa・s)であるバインダである、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のスラリー。
[8]前記バインダが、多糖類誘導体(1)、上記式(2)で表される構成単位を有する化合物、及び上記式(3)で表される構成単位を有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種(好ましくは、多糖類誘導体(1))である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載のスラリー。
[9]前記多糖類誘導体(1)が、セルロース又はその誘導体(好ましくは、上記式(1-1)で表される構成単位を有する化合物)である、上記[8]記載のスラリー。
[10]前記セルロース又はその誘導体が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びこれらのアルカリ塩(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウム)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[9]記載のスラリー。
【0116】
[11]前記繊維状物質が、セルロース繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ポリ-p-フェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、液晶ポリマー繊維、金属、半導体、炭素材料、及び導電性高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種(好ましくはセルロース繊維及び/又はアラミド繊維、より好ましくはセルロース繊維)である、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載のスラリー。
[12]前記繊維状物質の平均太さ(平均径D)が、1~1000nm(好ましくは3~500nm、より好ましくは3~200nm)である、上記[1]~[11]のいずれか1つに記載のスラリー。
[13]前記繊維状物質の平均長さ(平均長L)が、0.01~1000μm(好ましくは0.3~200μm、より好ましくは0.5~100μm、さらに好ましくは1~20μm)である、上記[1]~[12]のいずれか1つに記載のスラリー。
[14]前記繊維状物質の平均アスペクト比(平均長さ/平均太さ)が、10~1000(好ましくは15~500、より好ましくは20~100)である、上記[1]~[13]のいずれか1つに記載のスラリー。
【0117】
[15]前記スラリーに含まれる不揮発分全量におけるバインダの含有量が、0.01~2.0重量部(好ましくは0.1~1.5重量部、より好ましくは0.3~1.0重量部)である、上記[1]~[14]のいずれか1つに記載のスラリー。
[16]前記スラリーに含まれる不揮発分全量における繊維状物質とバインダの合計含有量が、0.01~10.0重量%(好ましくは0.1~5.0重量%、より好ましくは0.5~2.0重量%)である、上記[1]~[15]のいずれか1つに記載のスラリー。
[17]前記繊維状物質の含有量が、バインダの含有量の0.5~5.0倍(好ましくは1.0~3倍、より好ましくは1.0~2.0倍)である、上記[1]~[16]のいずれか1つに記載のスラリー。
[18]前記バインダと前記繊維状物質の合計の固形分濃度が、0.02~20重量%(好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%)である、上記[1]~[17]のいずれか1つに記載のスラリー。
[19]上記[1]~[18]のいずれか1つに記載のスラリーの固化物。
【0118】
[20]更に、活物質を含む、上記[1]~[18]のいずれか1つに記載のスラリー。
[21]前記活物質が、金属酸化物、リチウム含有複合酸化物、珪素単体、珪素化合物、及び炭素材からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[20]記載のスラリー。
[22]前記スラリーに含まれる不揮発分全量(100重量%)における、活物質の割合が、90重量%以上(好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上)である、上記[20]または[21]に記載のスラリー。
[23]前記バインダの含有量が、前記活物質100重量部に対して0.01~10.0重量部(好ましくは0.1~5.0重量部、より好ましくは0.3~2.0重量部)である、上記[20]~[22]のいずれか1つに記載のスラリー。
[24]前記バインダと前記繊維状物質と前記活物質の合計の固形分濃度が20~70重量%(好ましくは35~60重量%)である、上記[20]~[23]のいずれか1つに記載のスラリー。
[25]前記スラリーを遠心分離(例えば、5000rpm×5分)して得られる上澄み液中のバインダ含有量が、前記スラリーに含まれるバインダ全量の45重量%以上(好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上)である、上記[20]~[24]のいずれか1つに記載のスラリー。
[26]、上記[20]~[25]のいずれか1つに記載のスラリーの固化物。
【0119】
[27]上記[26]に記載の固化物からなる電極活物質層と集電体との積層体からなる電極。
[28]前記電極活物質層の端面の膜厚(端面膜厚)と中央部の膜厚(中央膜厚)の比(端面膜厚/中央膜厚)が0.9以上(好ましくは0.95以上、より好ましくは0.98以上)である、上記[27]記載の電極。
[29]電極活物質層の膜厚が50μm以上(好ましくは80μm以上、より好ましくは100μm以上)である、上記[27]に記載の電極。
[30]、上記[27]~[29]のいずれか1つに記載の電極を備えた電池。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のスラリーは、被着体に塗布・乾燥・固化させる各種用途、例えば、塗料、食品、薬品の添加剤などでも好適に使用することができる。本発明のスラリーが活物質を含む場合、電池の電極活物質層を形成する用途に好適に使用することができる。本発明の電池は、スマートフォンやノートパソコンなどの情報関連機器、ハイブリッド車や電気自動車等に好適に使用することができる。