(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】多軸外科用ねじおよび当該外科用ねじを埋め込むための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/70 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
A61B17/70
(21)【出願番号】P 2021559694
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 IB2020053261
(87)【国際公開番号】W WO2020208496
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】102019000005358
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】フィシュテル,マインラード
(72)【発明者】
【氏名】リヴァ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ランポン,マルコ
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0323279(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0111713(US,A1)
【文献】特表2008-502450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸外科用ねじ(1)を埋め込むための装置であって、
前記ねじ(1)は、内部中空チューリップ(101)であって、当該チューリップ(101)の内部にアクセスするための第1の開放端部(103)と、前記第1の開放端部(103)の反対側の第2の端部(104)と、前記第1の開放端部(103)と前記第2の端部(104)との間に延びる側壁(102)と、前記側壁(102)から突出するとともに前記第1の開放端部(103)から前記第2の端部(104)とは反対の方向に延びる少なくとも1つの細長いロッド(110)と、を備える内部中空チューリップ(101)を有し、
前記ねじ(1)はさらに、前記ねじの先端を規定する第1の端部(107)と、前記第1の端部(107)の反対側の第2の端部(108)であって、前記チューリップ(101)自体に対してねじ山付きシャンク(106)を方向付けるために前記チューリップ(101)の前記第2の端部(104)に接合されたボールジョイント(109)を備える第2の端部(108)と、を備えるねじ山付きシャンク(106)を有し、
前記装置は、
前記ねじ山付きシャンク(106)の前記第2の端部(108)と係合するための成形先端(201)であって、前記シャンク(106)自体をそれ自体の長手方向展開軸の周りで回転させるための成形先端(201)と、
前記成形先端(201)を支持する第1の端部(202a)と、前記第1の端部の反対側にあり且つ患者の体の外側に留まるように構成された第2の端部(202b)とを有する管状本体(202)であって、前記外科用ねじ(1)の前記細長いロッド(110)と係合するように構成された少なくとも1つの収容キャビティ(204)を備える管状本体(202)と、
前記管状本体(202)に沿って延在し且つオペレータによって作動されるように構成された、前記成形先端(201)の回転構成要素(203)と、を備え、
前記管状本体(202)が、前記外科用ねじ(1)の前記細長いロッド(110)と係合するように構成された2つの収容キャビティ(204)を備え、前記2つのキャビティ(204)は、2つの対応するアーチ型壁(205)によって離間されており、前記2つの対応するアーチ型壁(205)の各々は、前記細長いロッド(110)の長手方向縁部(114)と当接することができる2つの長手方向縁部(205a)を備え、前記2つの対応するアーチ型壁(205)は、前記細長いロッド(110)の外面(113)と共に、円形断面を有する連続する円筒形の表面(206)を規定する、装置。
【請求項2】
前記チューリップ(101)は、互いに平行な且つ間隔を置いて配置された2つの細長いロッド(110)を備え、前記2つのロッド(110)は、前記チューリップ(101)の内部にアクセスするための前記第1の開放端部(103)と連通するチャネル(111)を規定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各ロッド(110)は「C」字形の断面を有し、前記2つのロッド(110)は互いに向き合うそれぞれの凹状内面(112)と、前記それぞれの凹状内面(112)と反対側のそれぞれの凸状外面を備え、前記それぞれの外面(113)は、円形断面を有するそれぞれの円筒形の展開面に沿って位置している、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記2つのロッド(110)が、前記チューリップ(101)の前記第1の開放端部(103)から前記ロッド(110)自体の末端端部(115)まで延びる対応する長手方向縁部(114)を備え、第1のロッドの各長手方向縁部(114)は、第2のロッド(110)の前記長手方向縁部(114)に面し且つ前記チャネル(111)への開放アクセス領域(116)を規定する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記チューリップ(101)の近くの前記2つのロッド(110)の前記凹状内面(112)および前記側壁(102)の円筒形の内面(102a)に形成されたねじ部(117)を含み、前記円筒形の内面(102a)および前記凹状内面(112)は隣接しており且つシームレスである、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
2本の脆弱線(118)を含み、前記2本の脆弱線(118)の各々が細長いロッド(110)と前記側壁(102)との間に延在して、前記ロッド(110)自体と前記チューリップ(101)との間の分離領域を規定する、請求項2から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
各脆弱線(118)が、前記ロッド(110)の長手方向の展開に対して横方向に延在し且つ対応するロッド(110)の前記外面(113)に形成された溝を含み、前記溝は、前記ロッド(110)の減少した厚さを規定する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記2つのアーチ型壁(205)が、前記管状本体(202)の前記第1の端部(202a)を規定する対応する端部を有し、前記第1の端部(202a)は、前記成形先端(201)のスライド穴を有するカラー(207)を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記回転構成要素(203)は、前記管状本体(202)を通って延在し且つ前記管状本体(202)自体の内部で回転する作動シリンダ(208)を備え、前記作動シリンダ(208)は、前記ねじ山付きシャンク(106)の係合構成において前記成形先端(201)自体を回転させるために前記成形先端(201)で係合されている、請求項
5に記載の装置。
【請求項10】
前記回転構成要素(203)はまた、少なくとも部分的にねじ切りされた外面(210)を備えるブッシュ(209)を含み、前記ブッシュ(209)は、前記管状本体(202)の内部に収容され、前記作動シリンダ(208)を収容するための長手方向の貫通キャビティを備え、前記ブッシュ(209)の前記ねじ切りされた外面(210)は、前記外科用ねじ(1)の前記円筒形の内面(102a)および前記凹状内面(112)に形成された前記ねじ部(117)にねじ込まれるように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ブッシュ(209)が共通の長手方向軸に沿って前記作動シリンダ(208)に取り付けられ、前記共通の長手方向軸の周りで前記作動シリンダ(208)に対して回転可能である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記回転構成要素(203)は、前記管状本体(202)の外側の対応する第2の端部(202b)に配置された環状スリーブ(211)を備え、前記環状スリーブ(211)は、前記ブッシュ(209)を回転させるために前記ブッシュ(209)に係合され且つオペレータによって把持されるように構成されており、前記作動シリンダ(208)は、前記管状本体(202)の前記第2の端部(202b)から突出し且つオペレータによって把持されるように構成された把持部分(212)を備える、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の多軸外科用ねじ
(1)を埋め込むための装置を備えた、前記多軸外科用ねじ(1)を埋め込むためのキットであって、
前記キットは、前記細長いロッド(110)を収容するように構成された内部中空保持要素(3)であって、当該要素(3)自体の内部に前記細長いロッドを係合するように構成された内部中空保持要素(3)を
さらに備え、前記内部中空保持要素(3)は、オペレータによって手動で保持されるように構成された円筒形の外面(301)を有する、キット。
【請求項14】
前記要素(3)は管状構造を有し、前記管状構造は、断面においてアーチ型且つ凹状構造を有する一対の内面(304)を内部に備えており、各表面(304)は、対応する細長いロッド(110)の凸状外面(113)と当接するように構成されている、請求項13に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸外科用ねじおよびこの外科用ねじを埋め込むための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、脊椎の外科手術は、2つ以上の椎骨が単一の骨塊に融合することを容易にするために、脊椎路の一部の安定化をしばしば必要とする。
【0003】
この種の手術は、例えば、変性円板疾患、脊柱側弯症、脊柱管狭窄症などの多くの脊椎病変を矯正するために頻繁に用いられる。
【0004】
これらの矯正手術は、主に、特に骨移植片などのインプラントの使用を必要とする。脊椎を安定させると、椎間領域での骨の成長が可能になる。このようにして、脊椎の一部が融合して単一の骨に融合される。
【0005】
長年にわたり、脊椎の安定化は広範な研究の対象であり、脊椎を安定化するために解剖学的構造のこの部分に特徴的な多数の病状を矯正し、様々なレベルで椎骨融合を促進するための様々な方法および装置が開発されてきた。
【0006】
従来技術で知られているそのようなシステムの1つは、当該領域において脊椎の長さに沿って長手方向に配置されるロッドの挿入を含む。ロッドは、健康な脊椎の特定の路の正しい解剖学的構造に従って配置される。
【0007】
したがって、この方法では、ロッドは、必要に応じて、いくつかの椎骨と係合するように脊椎に沿って配置される。この種の外科手術は通常、脊椎の中央部分の両側に配置される2つの平行なロッドの使用を伴うことに留意されたい。したがって、そのような外科手術の間、一対のロッドは、例えば、骨構造に、典型的には椎骨脚(vertebral peduncle)に、適切に固定されるねじを含む様々な固定手段を使用して脊椎に固定される。
【0008】
ロッドの角度、したがって固定ねじの位置は、必要な矯正の種類によって異なり、椎骨ごとに明らかに異なる。手術を成功させるには、矯正ロッドと矯正ロッドを固定するために使用されるねじとを明らかに正しく挿入する必要がある。
【0009】
前記要素の正しい配置を得るために、患者の必要に応じて、多軸ねじが使用され、多軸ねじは、横軸に沿って作動することができ、ねじ自体の展開軸と一致しない。
【0010】
前記多軸ねじ、ロッド、および必要な固定手段の埋め込みは、通常、侵襲的な外科的処置を必要とし、その後、患者の皮膚および筋肉組織に病変が生じる。したがって、この手術は通常、かなり長期間の入院とリハビリテーションを必要とする。
【0011】
手術の侵襲性を低くするために、外科的外傷を大幅に軽減する低侵襲性の外科的技術が開発された。そのような手術は、患者にとっては、例えば、入院期間の短縮、術後の痛みの軽減、リハビリテーションの軽減という利点を有し、病院にとっては、入院期間の短縮、コストの削減、リハビリテーションのためのリソースの削減という形での利点を有する。この種の低侵襲手術のニーズを満たすために、外科医が患者の体の小さな切開を通してさえ前記多軸ねじを所望の位置に固定することを可能にする器具であって、当該器具を使用して前記ロッドを所望の位置に埋め込むことを可能にする器具が開発された。
【0012】
この種の手術器具の例は、同じ出願人の国際特許出願WO2015/145343によって説明されている。
【0013】
この文書では、特に上記のロッドを固定するために多軸ねじを適用するための、低侵襲手術手順を容易にするためのツールが公表されている。
【0014】
したがって、「チューリップ」と呼ばれる第1の基本的に管状の本体が提供され、これは、ねじ頭部と干渉するように設計された一端に機械的な連結システムを備える。
【0015】
特に、連結システムは、チューリップの外面に形成された対応する開口部に係合および係合解除するために弾性的に変形可能な、第1の管状本体の2つの端部からなる。
【0016】
次に、チューリップを管状本体の端部に挿入することにより、端部から突出する対応するピンが上記のチューリップの開口部に挿入されるまで、端部が拡大され変形する。
【0017】
続いて、第2の管状本体を第1の管状本体に取り付けて、2つの端部をロックし、それらをチューリップの外面に当接させて保持する。
【0018】
さらに、第2の管状本体は、第1の管状本体の外面から出る突起に係合して2つの本体間の回転結合を規定することができる溝を有する。言い換えれば、第2の管状本体は、ねじを任意の方向に動かし且つねじが埋め込まれる椎骨の領域にねじを正しく配置するために、第1の本体と一体である。
【0019】
さらに、これらの管状本体の中空構造により、ドライバーを挿入することができ、ヘッドに挿入されると、ドライバーはねじ付き先端を回転させることができる。この状況において、ねじのねじ付き先端の位置を変更することなく、2つの管状本体をオペレータが方向付けることができることに留意されたい。言い換えれば、球形のヘッドとチューリップとの間の結合のおかげで、ねじは多軸である。
【0020】
したがって、外科手術は可能な限り低侵襲性であり、オペレータは患者の体に形成された微小切開を通して2つの管状本体を挿入することができ、それでも椎骨に対してねじを正しく配置することができる。
【0021】
しかしながら、上記の従来技術の解決策にはいくつかの欠点がある。
【0022】
実際、チューリップと第1の管状部分との間の結合は、特に傾斜および回転の間、特に安定した結合を保証しないことに留意されたい。
【0023】
特に、弾性部分によって形成された結合は、(管状本体の長手方向軸に沿った)軸方向の応力に対して耐性があり安定しているものの、非常に高い回転およびせん断応力にさらされると分離につながる。
【0024】
これらの応力は、チューリップの内側に補強ロッドを挿入するときに発生する。この場合、実際には、オペレータは、チューリップの側面の開口部をロッドが挿入される方向に合わせて、椎骨に挿入されるねじ山付きシャンクに対して正しい位置にチューリップを傾ける必要がある。この作業により、ねじのねじ山付きシャンクに対するチューリップの傾斜によってせん断応力が発生する。したがって、この状況では、オペレータは、患者の体から装置全体を取り出して、多軸ねじを第1の管状本体に正しく再結合しなければならない。管状本体からのねじのこの偶発的な分離は、場合によっては、患者に偶発的な傷害をもたらし、外科用ねじの誤った配置をもたらし、手術の成功を損なう可能性がある。
【0025】
患者の体の切開のサイズが小さいことに加えて、この手術の難しさはまた、手術部位での外科医の視界を妨げ、ツールの結合中に周囲の軟組織が「挟まれる」リスクを伴う、血液などの体液の存在による。
【0026】
上記の既知の解決策の追加の重大な欠点は、第1および第2の管状本体とねじを組み立てることを含む操作が特に複雑であり、外科医の側である程度の手先の器用さを必要とすることである。
【0027】
チューリップを第1の管状本体に挿入するためのステップは、弾性部分を変形させることができるように、オペレータによってある程度の力で実行されなければならないことに留意されたい。さらに、この操作では、オペレータは、ピンをシートに正しく挿入するために、ねじが弾性部分に対して正しい方向に向いていることを確認する必要がある。しかしながら、可能な限り低侵襲で手術を行う必要性からまさに来ている非常に小さいサイズの外科用ねじは、第1の管状本体に対するねじの正確且つ精密な配置および取り扱いを特に複雑にする。
【0028】
さらに、第1の管状部分の周りに第2の管状部分を挿入することはまた、先行技術で知られている装置を実施するために、使用に関して追加の困難を伴う。
【発明の概要】
【0029】
本発明の目的は、上記の欠点を克服することである。
【0030】
本発明の1つの目的は、対応するねじインプラント装置に対して安定して結合および分離することができる多軸外科用ねじを提供することである。より詳細には、本発明の1つの目的は、互いに確実に接合することができ、したがって、ねじり、回転、座屈、および引張応力を受けた場合でも安定した結合を維持できる装置およびねじを提供することである。
【0031】
本発明の追加の目的は、対応するねじインプラント装置に容易かつ迅速に結合することができる外科用ねじを提供することである。
【0032】
本発明の別の目的は、装置の機械的結合を含む作業を患者の体から取り除き、前記作業中にそれらを軟組織から遠ざけることである。
【0033】
本発明の追加の目的は、特定された装置と、容易かつ迅速に使用でき、頑丈な構造を有し、そして便利な価格である外科用ねじとを提供することである。
【0034】
これらの目的に照らして、本発明は、多軸外科用ねじおよびこのねじを埋め込むための装置を提供し、その特徴は、独立請求項に記載されている。
【0035】
さらに有利な特徴は、従属請求項に記載されている。
【0036】
この文書では、すべての請求項が完全に引用されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
次に、本発明は、単に例として提供される添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【
図1】本発明による多軸外科用ねじの斜視図である。
【
図3-4】
図1および2の多軸ねじのそれぞれの側面図を示している。
【
図3a-4a】本発明による且つ
図3および4による多軸外科用ねじの長手方向の断面図である。
【
図5】上の図に示されているねじのインプラント装置の斜視図を示している。
【
図6a-6b】対応する多軸外科用ねじに結合する2つのそれぞれのステップにおける
図5の装置の斜視図を示す。
【
図6c】
図6bに示されるようにねじに結合された装置の側面図を示す。
【
図6d】
図6cに示される装置の経路B_Bに沿った長手方向の断面図を示す。
【
図7a-7b】対応する多軸外科用ねじに結合する2つのそれぞれのステップにおける保持要素の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
上記の図を参照すると、参照番号1は、全体として、本発明の主題である多軸外科用ねじを示している。対照的に、参照番号2は、また本発明の主題である、外科用ねじ1を埋め込むための装置を示している。
【0039】
本発明はまた、装置2およびねじ1の保持要素3を含む、ねじ1を埋め込むためのキットに関する。保持要素3は、この議論の後半でより良く説明される。
【0040】
特に
図1から4を参照すると、多軸外科用ねじ1は、「カップ」形状の側壁102によって規定される内部中空チューリップ101を備える。
【0041】
換言すれば、側壁102は、基本的に円錐台形状を有し、チューリップ101の内部にアクセスするための第1の開放端部103から、第1の開放端部とは反対側の第2の端部104まで延びる。第2の端部104はまた開いており、第1の端部103のアクセス部分よりも小さい。この構造では、側壁102は、好ましくは先細になっており、第2の端部104に向かって収束している。
【0042】
チューリップ101はまた、チューリップ101自体の内部に矯正ロッド(本発明の一部ではないため、添付の図には示されていない)を収容するために側壁に形成された2つの貫通開口部105を備える。
【0043】
特に、2つの開口部105は、ロッドが側壁102の長手方向の展開に垂直な方向に沿ってチューリップ101を貫通することを可能にするために、両側に配置されている。
【0044】
2つの開口部105は、第1のアクセス端部103で側壁102を中断するべく、第1の端部103まで延びる。
【0045】
ねじ1はまた、骨組織に挿入されるように設計されたねじの先端を規定する第1の端部107を備えたねじ山付きシャンク106を備える。第1の端部107の反対側で、チューリップ101の第2の端部104に挿入された球形のヘッドまたはボールジョイント109を備えた第2の端部108が延びる。ボールジョイント109は、シャンク106、およびそれに対応する長手方向の展開軸が、チューリップ101に対して方向付けられることを可能にする。
【0046】
チューリップ101はまた、有利には、側壁102から突出し且つ第1の端部103から第2の端部104とは反対方向に延びる少なくとも1つの細長いロッド110を含む。
【0047】
チューリップは、好ましくは、平行であり且つ互いに間隔を置いて配置された2つの細長いロッド110を含む。2つのロッド110は、チューリップ101の内部にアクセスするための第1の端部103と連通しているそれらの間のチャネル111を規定する。
【0048】
より詳細には、各ロッド110は、「C」字形の断面を有し、当該断面において、凸状外面113の反対側の凹状内面112が規定されている。
【0049】
それぞれの内面112は互いに向き合い、上記のチャネル111を規定する。それぞれの外面113は、円形断面を有する同じ円筒形の展開面に沿って位置している。
【0050】
さらに、各ロッド110は、チューリップ101の第1の端部103から、チューリップ101の遠位にあるロッド110自体の末端端部115まで延びる2つの長手方向縁部114を有する。
【0051】
この状況において、各ロッド110の長手方向縁部114は、互いに向き合い、互いに離間して、上記のチャネル11にアクセスするための開放アクセス領域116を規定する。
【0052】
したがって、2つの開放領域116は、外面113が位置する円筒形の展開面に沿って延びる2つのロッド110の間に形成される。
【0053】
ねじ部117はまた、好ましくは、チューリップ101の近くのロッド110の凹状内面112に形成されて提供される。
【0054】
より詳細には、ねじ部117はまた、側壁102の円筒形の内面102aに沿って延びる。
図3aおよび4aの断面図から最もよくわかるように、円筒形の内面102aおよび凹状内面112は隣接しており且つシームレスである。
【0055】
さらに、有利には、各々が細長いロッド110と側壁102との間に延びる2本の脆弱線118が存在する。2本の脆弱線118は、ロッド110自体とチューリップ101との間の分離領域、すなわち、チューリップ101に対する各ロッド110の座屈の結果として、ロッド110を外科用ねじ1の残りの部分から分離することが可能である領域を規定する。
【0056】
この目的のために、2本の脆弱線118は、ロッド110の長手方向の展開に対して横方向に延び且つロッド110の対応する外面113に形成される溝からなる。
【0057】
したがって、溝は、座屈を受けた場合にチューリップ101から分離することができるように、ロッド110の厚さの減少を規定する。
【0058】
外科用ねじ1が配置されて骨組織に正しく係合されると、患者の体の外側に突出するロッド110は、有利には、それらを取り外すためにオペレータによって曲げられる。
【0059】
本発明はまた、上記の外科用ねじ1を埋め込むための装置2に言及している。
【0060】
図5および6aから6cによく示されている装置2は、ねじ山付きシャンク106の第2の端部108で係合してシャンク106をその長手方向展開軸の周りで回転させるための成形先端201を備える。この回転により、ねじ1が骨組織にねじ込まれ、ねじ1が埋め込まれる。
【0061】
特に、成形先端201は、ボールジョイント109の内側に形成された対応する成形シート109a(
図2でより良く見られる)に挿入することができる「トルクス(登録商標)」タイプのヘッド201aを有する。
【0062】
装置2はまた、管状本体202を備え、管状本体202は、成形先端201を支持するための第1の端部202aと、第1の端部202aの反対側にあり且つ患者の体の外側に留まるように構成された第2の端部202bとを有する。
【0063】
装置2はまた、管状本体202に沿って延在し且つオペレータによる手動動作を可能にしてねじ1を締めることができるように構成された、成形先端201の回転構成要素203を有する。
【0064】
より詳細には、管状本体202は、外科用ねじ1のロッド110と係合するように構成された少なくとも1つの収容キャビティ204を有する。
【0065】
間隔を置いて配置された2つの収容キャビティ204が提供され、収容キャビティの各々は、好ましくは、外科用ねじ1の対応する細長いロッド110と係合するように構成される。
【0066】
2つのキャビティ204は、ねじ1のロッド110と基本的に同じサイズである細長いプロファイルを有する2つの対応するアーチ型壁205によって離間されている。
【0067】
図6aおよび6bにより良く示されるように、キャビティ204は、装置2とねじ1との間の結合を規定するためにロッド110を収容するように設計されている。
【0068】
この状況において、各アーチ型壁205は、細長いロッド110の長手方向縁部114に当接することができる2つの長手方向縁部205aを有する。
【0069】
図6bおよび6cに示される壁205とロッド110との間の連結構造では、アーチ型壁205は、細長いロッド110の外面113と共に、円形断面を有する連続した円筒面206を規定する。
【0070】
アーチ型壁205はまた、管状本体202の第1の端部202aを規定する対応する端部部分を有する。
【0071】
これらの端部は、上記の成形先端201のためのスライド穴を備えたカラー207を支持する。このようにして、壁205によって堅固に支持されたカラー207は、軸方向にスライドし且つカラー207の内部で回転する先端201を案内および支持する。
【0072】
回転構成要素203は、好ましくは、管状本体202を通って延在し且つ本体202自体の内部で回転する作動シリンダ208を備える。
【0073】
シリンダ208は、(
図6dの断面図により良く示されているように)先端201に係合して、ねじ山付きシャンク106の係合構成において先端201自体を回転させる。
【0074】
換言すれば、シリンダ208の長手方向軸の周りのシリンダ208の回転は、ねじ1のシャンク106を骨組織にねじ込むための先端201の回転を決定する。
【0075】
また、
図6dから、先端201もまた、シリンダ208に対して軸方向にスライドすることに留意されたい。
【0076】
さらに、回転構成要素203は、外面210が少なくとも部分的にねじ切りされたブッシュ209を備える。
【0077】
中空シリンダ(
図6d)の形状で作られたブッシュ209もまた、管状本体202の内部に配置され且つ上記の作動シリンダ208を収容するように設計されている。
【0078】
ブッシュ209のねじ切り面210は、先端201の近くに形成され、凹状内面112に形成されたねじ部117と係合し、ロッド110の内側にねじ込むように構成される。
【0079】
この状況において、ブッシュ209の内側で延びる作動シリンダ208はまた、共通の長手方向軸に沿ってブッシュ209自体に拘束され、一方、ブッシュ209に対して自由に回転する。
【0080】
言い換えれば、ブッシュ209およびシリンダ208は、独立して回転することができるが、軸方向に拘束されて、ねじ1に向かって/ねじ1から離れるようにスライドする。
【0081】
装置2がねじ1に係合されている状態では(
図6bおよび6d)、ブッシュ209は、有利には、成形先端201をシャンク106のボールジョイント109に向かって徐々に前進させるために、ねじ部117にねじ込まれる。
【0082】
このようにして、ヘッド201aは、制御され且つ精密な態様で、シート109aの内部に徐々に挿入される。
【0083】
さらに、回転構成要素203は、対応する第2の端部202bで管状本体202の外側に配置された環状スリーブ211を有する。スリーブ211は、有利には、ブッシュ209に係合して、管状本体202に対して回転し、ブッシュ209の回転を規定する。
【0084】
スリーブ211は、好ましくは人間工学的形状を有し、それにより、ねじ1に形成されたねじ部117にブッシュ209を手動で係合させるオペレータによってより良く把持され得る。
【0085】
作動シリンダ208は、管状本体202の第2の端部202bの外側に突出し且つまた、オペレータによって把持されるように構成された把持部分212を備える。
【0086】
さらに、把持部分212は、オペレータがねじ山付きシャンクを位置決めするのを支援するために、ハンドル(通常はT字型)と結合することができる。
【0087】
この状況において、ヘッド201aがねじ1のシート109aに挿入されると、把持部分212に作用するオペレータがシャンク106を骨組織にねじ込むことに留意されたい。
【0088】
図7aおよび7bを参照すると、保持要素3は、上記の装置2によって作動されるねじ1の埋め込み後にのみ、多軸外科用ねじ1に係合される。
【0089】
特に、要素3は、ねじ1のロッド110を収容し且つそれらを要素3自体の内部に係合させるために、内部が中空である。
【0090】
使用中、患者の体の外側に突出する要素3は、好ましくは、オペレータによって手動で保持されるように構成された円筒形の外面302を有する。
【0091】
要素3は、管状構造を有し、断面において、好ましくは、対応するより小さな面302が外側に丸みを帯びた基本的に長方形の形状を有する。
【0092】
上記の小さな面302には、要素3の構造を軽くし且つロッド110に挿入されたときにねじが見えるように設計された開口部303がある(
図7a)。
【0093】
小さな面302は、アーチ型および凹状断面を有する対応する内面304を有する。
【0094】
これらの内面304は、対応する細長いロッド110の凸状外面113に当接するように設計されている。
手術
ねじ1は、最初に、対応するロッド110を壁205の間に規定されるキャビティ204に挿入することによって装置2と係合される(
図6a)。この操作は、細長いロッド110の展開によって案内されるねじ1に対する装置の正しい係合を確実にする。したがって、ねじ1全体は、装置2の展開と正しく位置合わせされる。
【0095】
この時点で、ブッシュ209はスリーブ211を介して回転する。したがって、ブッシュ209は、ねじ部117にねじ込まれると、成形先端201をねじ山付きシャンク106の近くにもたらす。この場合も、先端201に接近する動作は、ねじ1と安定して且つ精密に位置合わせされる。
【0096】
ヘッド201aがボールジョイント109のシート109aに挿入されると、オペレータは、シリンダ208の把持部分212に作用することによって、先端201を回転させる。このようにして、シャンク106は、それが所望の位置に到達するまで骨組織にねじ込まれる。ねじ1が固定されると、ねじ部117から装置を外すべく反対側にブッシュ209を回転させて、装置が引き抜かれる。このようにして、管状本体202は、装置2が完全に外れるまで、ねじ1の細長いロッド110から引き抜かれる。
【0097】
さらに、保持要素3は、要素3自体の内側に細長いロッド110を取り付けることによって挿入することができる。続いて、矯正ロッド(図示せず)が挿入されると、オペレータは、患者の体の外側に突出する保持要素3のおかげで、保持要素3を操作してそれを方向付けることによってチューリップ101を配置することができる。したがって、固定ねじ付きブッシュ(図示せず)は、上記のロッドを固定するためにねじ部117にねじ込まれるように設計されて、チューリップ101に挿入することができる。
【0098】
ロッドが固定されると、要素3はロッド110から引き抜かれ、ロッドは、脆弱線118に沿って折ることによってチューリップ101から分離される。特に、細長いロッド110の分離は、チューリップ101に対してロッド110自体を曲げることによって作動される。このようにして、脆弱線118は、ロッド110を容易に折ることを可能にし、したがって、ロッド110の引き抜きを可能にし、チューリップ101およびねじ山付きシャンク106のみを患者の体内に残す。
【0099】
当業者は、本発明がどのように上記の目的を有利に達成し、前述のような従来技術の欠点を克服するかを直ちに理解するであろう。
【0100】
本発明の保護の範囲から、したがってこの工業特許の領域から逸脱することなく、本明細書に記載され且つ単に非限定的な例として示される本発明の形態に多くの変更を加えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】