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特許7261906潤滑油添加剤としての低腐食性有機化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】潤滑油添加剤としての低腐食性有機化合物
(51)【国際特許分類】
   C10M 133/16 20060101AFI20230413BHJP
   C07C 233/36 20060101ALI20230413BHJP
   C07C 233/38 20060101ALI20230413BHJP
   C07C 231/02 20060101ALI20230413BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20230413BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20230413BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230413BHJP
【FI】
C10M133/16
C07C233/36
C07C233/38
C07C231/02
C10N30:06
C10N30:12
C10N40:25
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021568534
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 US2020026350
(87)【国際公開番号】W WO2020236323
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】16/415,535
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513077173
【氏名又は名称】ヴァンダービルト ケミカルズ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(72)【発明者】
【氏名】ケ-シー、ブライアン、エム
(72)【発明者】
【氏名】ガットー、ヴィンセント、ジェイ
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公告第01061966(DE,B)
【文献】特公昭35-012097(JP,B1)
【文献】特開2007-153946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 133/16
C10M 169/04
C07C 233/36
C07C 233/38
C07C 231/02
C10N 30/06
C10N 30/16
C10N 40/25
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも80%の潤滑性ベースオイルと、0.01~5重量%の添加剤化合物を含有する潤滑性組成物であって、前記添加剤化合物が、下記式:
【化1】
[式中、R1は不飽和又は分岐の炭化水素鎖であり、R2は水素原子又は炭化水素鎖であり、m及びnはそれぞれ独立に1~5である]で示される、潤滑性組成物。
【請求項2】
前記添加剤化合物が、
(a)カルボン酸又はエステル、
(b)(i)2-アミノエチルエタノールアミン、(ii)アルキルオキシプロピル-1,3-ジアミノプロパン、(iii)アルキルオキシエチル-1,3-ジアミノプロパン、及び(iv)アルキルオキシプロピル-1,2-ジアミノエタンのいずれか一つ、及び
(c)グリシドール
の反応生成物である、請求項に記載の潤滑性組成物。
【請求項3】
前記添加剤化合物が、約0.20~2.00重量%で含有される、請求項に記載の潤滑性組成物。
【請求項4】
前記添加剤化合物が、以下:
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]アルカンアミド;
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]イソステアラミド
-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]オレアミド;
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-アルキルオキシプロピル)アミノ]プロピル]アルカンアミド;
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-アルキルオキシプロピル)アミノ]プロピル]イソステアラミド;及び
-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-アルキルオキシプロピル)アミノ]プロピル]オレアミド
のいずれか一つである、請求項に記載の潤滑性組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低腐食性で、高性能な有機モリブデン化合物の開発に係るものであり、当該有機モリブデン化合物は潤滑油中の添加剤として用いられる。これらの化合物を含有する潤滑油は、摩擦低減、摩耗保護、ならびに銅及び鉛の腐食の観点において向上された性能を示した。具体的には、本発明に係る化合物は、N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-アルコキシプロピル)アミノ]プロピル]アルキルアミド、及び不飽和又は分岐のN-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]アルキルアミドである。
【0002】
クレームされた化合物は、従来の添加剤の摩擦性能及び摩耗性能を満たすか、又は上回ることができる新しいクラスの添加剤であると同時に、観察される銅及び鉛の腐食の深刻さを大幅に軽減することができる。本発明に係るクラスの化合物は、酸化的及び加水分解的安定性の観点から、高性能でより耐久性がある摩擦調整剤及び/又は耐摩耗剤が必要とされる、乗用車用モーターオイル及び高負荷ディーゼルエンジンオイルの両方の用途において特に有用である。
【背景技術】
【0003】
先行技術の説明
先行技術であるDE1061966及びJP35012097は、一般的に本発明に係るクラスの化合物に関連している。しかしながら、不飽和及び分岐のN-[2-[(2,3-ジヒドロキシ-プロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]アルキルアミドの例のいずれについても予期しておらず、また、N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-アルコキシプロピル)アミノ]プロピル]アルキルアミドについての開示も無い。さらに、DE1061966及びJP35012097のいずれも、本発明に係るクラスの化合物を、摩擦調整又は摩耗保護のための添加剤として潤滑油中で使用することを予期していない。
【0004】
DE1061966は、関係する2,3-ジヒドロキシ化合物の調製に関して中間体アルキルアミド、N-[2-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]-をα-クロロヒドリン又はエピクロロヒドリンと反応させることを開示している。この工程は、苛性塩基の使用を必要とする場合があり、ハロゲン化された廃棄物を生成する。ここに開示される発明では、中間体アルキルアミドアミンは、代わりにエタノール存在下でグリシドールと反応させられる。これらの反応は、完全に原子的に経済的であり、廃棄物を生成しないという利点がある。エタノールは、簡単な蒸留により反応系から回収でき、工程に再利用できる。
【0005】
US5397486は、本発明に係る化合物を形成する反応において使用されるグリシドール付加体が異なる反応を開示している。この文献では、Xが酸素、硫黄、又は窒素であり、Rが4~50個の炭素原子を含むヒドロカルビルラジカルである以下の式で示されるグリシドール付加物を用いている。
【0006】
【化1】
【0007】
本発明に係る化合物のクラスは、US5397486に開示されるクラスとは化学的に全く異なる。さらに、US5397486には、特に銀表面のエンジン部品を有するディーゼルエンジンでの銀摩耗防止添加剤の用途として、上記クラスの化合物を含む潤滑油組成物が開示されている。US9464252は、グリシドール付加体を開示してはいるが、摩擦調整剤の性能、一般的な摩耗保護、あるいは銅及び鉛の腐食に対する影響の観点から、その役割を予期していない。
【0008】
米国特許US5560853、US5672727、US9321976、US9464252は、本発明に係る化合物を形成する反応において使用されるグリシドール付加体が異なる反応を開示している。本発明に係るクラスの化合物は、これらの特許に開示されるクラスとは化学的に全く異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】DE1061966(B)
【文献】特許第3501297号
【文献】米国特許第5397486号
【文献】米国特許第5560853号
【文献】米国特許第5672727号
【文献】米国特許第9321976号
【文献】米国特許第9464252号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明のクラスの化合物は、式I:
【0011】
【化2】
【0012】
[式中、R1は炭化水素鎖であり、R2は水素原子又は炭化水素鎖である]で示される。R1基は、1~21個の炭素原子を含有する不飽和の、及び/又は飽和の、及び/又は直鎖状の、及び/又は分岐の炭化水素鎖からなる。R1基は、不飽和であるか、又は分岐していることが好ましい。R1基は、飽和であり、且つ分岐していることがさらに好ましい。R1基が、11~21個の炭素原子を含有する炭化水素鎖からなることも好ましい。R基は、水素原子であるか、又は1~20個の炭素原子を含有する、直鎖状の、環状の、又は分岐の炭化水素鎖であり得る。メチレンスペーサ基の数(n及びm)は、それぞれ独立に1~5である。好ましくは、メチレンスペーサ基の数(n及びm)は、それぞれ独立に2又は3である。
【0013】
本発明のクラスの化合物は、一般的な反応スキームIにより調製され得る。
【0014】
【化3】
【0015】
第一のステップにおいて、カルボン酸、カルボン酸エステル、又はトリグリセリドのようなカルボニル含有化合物を、1級/2級アミン含有化合物の混合物と反応させて、2級アミドを得る。第二のステップにおいて、2級アミド中間体をさらにグリシドールと反応させて式Iで示される最終生成物を提供する。第二のステップは、メタノール又はエタノールのようなプロトン性溶媒の存在下で実施し、反応効率を向上させてもよい。
【0016】
上述のように、本発明のクラスの化合物は、(a)カルボン酸又はエステル又はトリグリセリド、(b)1級/2級アミン含有化合物の混合物、及び(c)グリシドールの反応生成物として記述することができる。本発明に係る化合物の非限定的な例は、以下のものを含む。
【0017】
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]ラウラミド
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]ミリストアミド
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]パルミタミド
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]ステアラミド
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]イソステアラミド
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]ミリストアミド
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]パルミトオレアミド
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]オレアミド
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]リノレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-イソトリデシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ラウラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-イソトリデシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ミリストアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-イソトリデシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]パルミタミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-イソトリデシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ステアラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-イソトリデシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]イソステアラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-イソトリデシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ミリストアミド
【0018】
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-イソトリデシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]パルミトオレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-イソトリデシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]オレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-イソトリデシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]リノレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-ブチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ラウラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-ブチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ミリストアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-ブチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]パルミタミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-ブチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ステアラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-ブチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]イソステアラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-ブチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ミリストアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-ブチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]パルミトオレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-ブチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]オレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-ブチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]リノレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-オクチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ラウラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-オクチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ミリストアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-オクチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]パルミタミド
【0019】
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-オクチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ステアラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-オクチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]イソステアラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-オクチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ミリストアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-オクチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]パルミトオレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-オクチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]オレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-オクチルオキシプロピル)アミノ]プロピル]リノレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-デシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ラウラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-デシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ミリストアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-デシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]パルミタミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-デシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ステアラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-デシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]イソステアラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-デシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ミリストアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-デシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]パルミトオレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-デシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]オレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-デシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]リノレアミド
【0020】
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-デシルオキシプロピル)アミノ]エチル]オレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-デシルオキシエチル)アミノ]プロピル]オレアミド
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-ヒドロキシプロピル)アミノ]エチル]オレアミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]プロピル]オレアミド
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-デシルオキシプロピル)アミノ]エチル]イソステアラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-デシルオキシエチル)アミノ]プロピル]イソステアラミド
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-ヒドロキシプロピル)アミノ]エチル]イソステアラミド
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]プロピル]イソステアラミド
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
以下の2ステップの手順は、本発明に記載されているクラスの化合物を調製するための代表的な例である。温度プローブ、メカニカルスターラー、コンデンサー付き蒸留トラップを備えた3口フラスコに、664mmolのオレイン酸を加える。フラスコに664mmolの2-アミノエチル-エタノールアミンを加え、反応系を窒素雰囲気下とする。反応系を150℃に加熱し、生成する水を蒸留トラップで回収する。約6時間加熱した後、反応系を冷却し、アミド生成物を精製することなく次のステップで直接使用する。
【0022】
前のステップの生成物271mmolを、温度プローブ及びメカニカルスターラーを備えた3口フラスコに加える。フラスコに、275mLのエタノールを加え、還流冷却器を取り付ける。70mLのエタノール中の258mmolのグリシドールからなる溶液を調製し、還流冷却器の上部に取り付けた窒素導入口付きの添加漏斗に移す。反応系を、窒素雰囲気下に置き、還流まで加熱する(約80℃)。グリシドールの溶液を、30分かけてフラスコに滴下する。添加が完了した後、反応系をさらに6時間還流させる。反応系を、ロータリーエバポレーターにより全てのエタノールが除かれるまで濃縮して、所望の生成物を得る。
【0023】
上述の反応を実施するに際し、一般的な反応スキームIに記載されているあらゆる出発原料を使用できる。第一のステップにおいて、カルボン酸、カルボン酸エステル、又はトリグリセリドのようなカルボニル含有化合物が用いられ得る。カルボン酸において、1~21個の炭素原子からなるR1基は、直鎖状の、環状の、又は分岐した飽和の炭化水素、あるいは不飽和の、及び/又は多価不飽和の炭化水素、あるいはこれらの混合物であってもよい。カルボン酸エステルにおいて、1~21個の炭素原子からなるR1基は、直鎖状の、環状の、又は分岐した飽和の炭化水素、あるいは不飽和の、及び/又は多価不飽和の炭化水素、あるいはこれらの混合物であってもよい。トリグリセリドにおいて、1~21個の炭素原子からなるR1基は、直鎖状の、環状の、又は分岐した飽和の炭化水素、あるいは不飽和の、及び/又は多価不飽和の炭化水素、あるいはこれらの混合物であってもよい。カルボン酸又はカルボン酸エステルと1級アミン含有化合物との反応において、反応量論比は、典型的には1.0モルのカルボン酸又はカルボン酸エステルに対して1.0モルの1級アミン含有化合物であり、所望の2級アミドを生成する。僅かに過剰なカルボン酸又はカルボン酸エステル、あるいは1級アミン含有化合物を用いることが可能であるが、一般的には必要ではなく、また好ましくもない。好ましいカルボン酸エステルは、脂肪酸メチルエステル(FAME’s)及び脂肪酸エチルエステルであり、これらはバイオディーゼルとも称される。バイオディーゼル源は、以下に記載される脂肪油である。トリグリセリドと1級アミン含有化合物との反応において、反応量論比は、1.0モルのトリグリセリドに対して1.0~3.0モルの1級アミン含有化合物の範囲で変化させることができ、所望の2級アミド及び/又は所望の2級アミドと対応するモノ-及びジアルキルグリセラートとの混合物を生成する。上述のカルボニル含有化合物の例における炭素鎖は、ヤシ油、水素添加ヤシ油、魚油、水素添加魚油、獣脂、水素添加獣脂、コーン油、菜種油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、サフラワー油、ゴマ油、ヒマワリ油、キャノーラ油、大豆油などの脂肪油に由来する。1級/2級アミン含有化合物の混合物において、R2基は水素原子であるか又は1~20個の炭素原子を含有する、直鎖状の、環状の、又は分岐の炭化水素鎖であり、メチレンスペーサ基の数(n及びm)は、1~5の範囲で変化し得る。
【0024】
以下の実施例は、上述の代表的な手順により調製された。
【0025】
実験例1(Ex.1)
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-エチル]オレアミドの調製手順は、代表的な手順と同一であった。
【0026】
実験例2(Ex.2)
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-イソトリデシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]オレアミドの調製手順は、2-アミノエチルエタノールアミンの代わりにイソトリデシルオキシプロピル-1,3-ジアミノプロパンを用いた点以外は代表的な手順と同一であった。
【0027】
実験例3(Ex.3)
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]ココアミドの調製手順は、オレイン酸の代わりにヤシ油メチルエステルを用いた点以外は代表的な手順と同一であった。
【0028】
実験例4(Ex.4)
N-[3-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(3-イソトリデシルオキシプロピル)アミノ]プロピル]ココアミドの調製手順は、オレイン酸の代わりにヤシ油メチルエステルを用い、2-アミノエチルエタノールアミンの代わりにイソトリデシルオキシプロピル-1,3-ジアミノプロパンを用いた点以外は代表的な手順と同一であった。
【0029】
実験例5(Ex.5)
N-[2-[(2,3-ジヒドロキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]イソステアラミドの調製手順は、オレイン酸の代わりにイソステアリン酸を用いた点以外は代表的な手順の最初の二つのステップと同一であった。
【0030】
以下の化合物は、本明細書に開示された発明に対する比較例として含まれる。
【0031】
比較実験例1(CEx.1)
グリセロールモノオレート(Afton Chemical社のHiTEC 7133(登録商標))
【0032】
比較実験例2(CEx.2)
12以上の炭素原子を有する脂肪油1.0モルと、ジエタノールアミン1.0~2.5モルとの反応による生成物を含む市販の有機摩擦調整剤
【0033】
発明に係るクラスの分子の個々の化合物は、摩擦低減及び/又は追加の摩耗保護用の潤滑油中の添加剤として、全潤滑性組成物の一部として重量パーセントで約0.01~5.00wt%、好ましくは約0.10~3.00%、さらに好ましくは約0.20~2.00%、さらにより好ましくは約0.40~1.00%の添加割合で使用できる。さらに、これらの化合物は、例えば分散剤、洗浄剤、粘度調整剤、酸化防止剤、その他の摩擦調整剤、摩耗防止剤、腐食抑制剤、防錆剤、脂肪酸の塩(石鹸)、及び極圧添加剤のような他の添加剤と組み合わせて使用することもできる。
【0034】
使用できる分散剤には、ポリイソブチレンモノ-スクシンイミド分散剤、ポリイソブチレンジ-スクシンイミド分散剤、ポリプロピレンモノ-スクシンイミド分散剤、ポリプロピレンジ-スクシンイミド分散剤、エチレン/プロピレンコポリマーモノ-スクシンイミド分散剤、エチレン/プロピレンコポリマージ-スクシンイミド分散剤、マンニッヒ分散剤、分散剤・酸化防止剤・オレフィン共重合体、低分子量エチレン・プロピレン・スクシンイミド分散剤、カルボキシル分散剤、アミン分散剤、ホウ素分散剤、モリブデン含有分散剤が含まれる。
【0035】
使用できる洗浄剤には、中性スルホン酸カルシウム洗浄剤、中性スルホン酸マグネシウム洗浄剤、オーバーベーススルホン酸カルシウム洗浄剤、オーバーベーススルホン酸マグネシウム洗浄剤、中性フェネートカルシウム洗浄剤、中性フェネートマグネシウム洗浄剤、オーバーベースフェネートカルシウム洗浄剤、オーバーベースフェネートマグネシウム洗浄剤、中性サリチル酸カルシウム洗浄剤、中性サリチル酸マグネシウム洗浄剤、オーバーベースサリチル酸カルシウム洗浄剤、オーバーベースサリチル酸マグネシウム洗浄剤、スルホン酸ナトリウム洗浄剤、スルホン酸リチウム洗浄剤が含まれる。
【0036】
任意のタイプの高分子粘度指数改質剤が使用できる。高分子粘度指数改質剤の例としては、オレフィンコポリマー(ОCP)、ポリアルキルメタクリレート(PAMA)、ポリイソブチレン(PIB)、スチレンブロックポリマー(スチレン・イソプレン、スチレン・ブタジエンなど)、エチレン・α-オレフィンコポリマーなどをベースにしたポリマーが挙げられる。
【0037】
モリブデンベースの摩擦調整剤は、本発明のクラスの化合物の全体的な性能を補完又は強化するために使用することができる。使用可能な代替摩擦調整剤の例には、脂肪油、ジエタノールアミン、及びモリブデン源を反応させて調製されるモリブデン錯体、モリブデン酸エステル、単核モリブデンジチオカルバメート、二核モリブデンジチオカルバメート、三核モリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫黄及びモリブデン含有化合物、アミン及びモリブデン含有化合物、モリブデンホスホロジチオエート、硫化オキシモリブデンジチオホスフェート、テトラアルキルアンモニウムチオモリブデート、モリブデンカルボキシレート、モリブデンキサンテート、モリブデンチオキサンテート、イミダゾリウムオキシチオモリブデート、4級アンモニウムオキシチオモリブデートが含まれる。モリブデンベースの摩擦調整剤の典型的な添加割合は、完成した潤滑油の配合剤に対してモリブデンが50ppm~800ppmの範囲で添加される。
【0038】
脂肪油由来のグリセロールモノオレート及び有機摩擦調整剤、ならびにジエタノールアミンのような添加剤は存在しないことが好ましい。なぜなら、後述するように、これらの種類の有機摩擦調整剤は、高温腐食ベンチテスト(HTCBT、ASTM D6594)で判定されるように、銅や鉛に対して高い腐食性を示すからである。したがって、本発明は、脂肪油由来のグリセロールモノオレート及び有機摩擦調整剤を含有しない潤滑性組成物をも含む。
【0039】
使用可能な好ましい耐摩耗剤には、第一級及び/又は第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、トリフェニルホスホロチオエート、ジアルキルリン酸アミン塩、モノアルキルリン酸アミン塩、ジアルキルジチオリン酸スクシナート、ジチオリン酸エステル又はカルボン酸、トリアルキルボレートエステル、脂肪酸誘導体のボレートエステル、メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)が含まれる。
【0040】
使用可能な好ましい酸化防止剤には、ジノニルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、ブチルオクチルジフェニルアミン、モノブチルジフェニルアミン、ジブチルジフェニルアミン、ノニル化フェニル-α-ナフチルアミン、オクチル化フェニル-α-ナフチルアミン、ドデシル化フェニル-α-ナフチルアミン、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4,4-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート、イソトリデシル-3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート、イソオクチル-3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が含まれる。
【0041】
使用可能な好ましい腐食及び錆防止剤には、エトキシル化フェノール、アルケニルコハク酸、ポリアルキレングリコール、ベンゾトリアゾールの誘導体、トルトリアゾールの誘導体、トリアゾールの誘導体、ジメルカプトチアジアゾールの誘導体、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾールの脂肪酸誘導体、中性カルシウムジノニルナフタレンスルホン酸塩、中性亜鉛ジノニルナフタレンスルホン酸塩、中性アルカリ土類スルホン酸塩が含まれる。
【0042】
使用可能な好ましい極圧添加剤には、硫化イソブチレン、硫化α-オレフィン、脂肪族アミンリン酸塩、芳香族アミンリン酸塩、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、亜鉛ジアルキルジチオカルバメート、ジアルキルアンモニウムジアルキルジチオカルバメート、アンチモンジアルキルジチオカルバメートが含まれる。
【0043】
上述の全ての添加剤の添加量は、用途、添加剤の溶解性、ベース液の種類、及び完成した溶液の要求性能に応じて大きく変化し得る。典型的な添加量は、開発される潤滑油の種類に応じて通常0.05wt%~10.00wt%の間で変化し得る。ベースとなる液体には、APIのベースストック分類であるグループI、グループII、グループIII、グループIV、グループVに該当するあらゆる液体を含む、石油系又は合成のストックが含まれる。合成の液体には、ポリ-α-オレフィン、ポリオール、エステル、バイオベースの潤滑油、及びこれらの任意の組み合わせが含まれる。潤滑性ベースオイルは、潤滑性組成物全体の少なくとも約80%の量で存在する。
【0044】
本発明に係る実施例及び比較例の性能評価の結果を実験例6~9に記載する。実験例6~8では、SAE 0W-20の乗用車用モーターオイル(0W-20 PCMO)に、0.40~1.00重量%の添加割合で本発明にかかる実施例及び比較例を配合した。このオイルは、有機又は有機金属の摩擦調整剤(FM)を含まない点を除いて完全に配合されていた。実験例9では、本発明にかかる実施例及び比較例を、0.75重量%の添加割合で、市販のCK-4相当のSAE 15W-40高負荷ディーゼルエンジンオイル(15W-40 HDDEO)にブレンドした。
【0045】
実験例6
SRVによるトライボロジー性能試験
ASTM D5707(Standard Test Method for Measuring Friction and Wear Properties of Lubricating Grease Using a High-Frequency, Linear-Oscillation (SRV) Test Machine)に規定される試験方法に従って、表1に記載される性能データを取得した。表1に示されるデータは、本発明に係る実施例及び比較例の両方が、付加的な摩耗保護を与えることを明確に示しており、これはFMを含有しない0W-20 PCMO基準オイルと比較して摩耗量が減っていることから理解される。本発明に係る実施例による向上は、摩耗量の40~56%の減少を与える。さらに、本発明に係るEx.2及びEx.4は、0W-20 PCMO基準オイルと比較して摩擦係数の小幅な向上を与えた。
【0046】
【表1】
【0047】
実験例7
四球試験によるトライボロジー性能試験
ASTM D4172 B(Standard Test Method for Wear Preventive Characteristics of Lubricating Fluid (Four-Ball Method))に記載されている試験方法に従って、表2に示す性能データを作成した。これらの条件下において、本発明に係る4つの実施例の全てが、FMを含有しない0W-20 PCMO基準オイルと比較して低い平均摩擦係数を与えた。さらに、Ex.2及びEx.4は、摩耗痕の直径の減少により示されるように、改善された摩耗保護を与えた。
【0048】
【表2】
【0049】
実験例8
小型牽引機(MTM)によるトライボロジー性能試験
小型牽引機(MTM)を使用して、「ボールオンディスク」構成により境界潤滑領域及び混合潤滑領域における潤滑油の摩擦特性を評価した(ストリベック曲線)。MTMは、回転する52100スチールボールを、潤滑油に浸された独立して回転する52100スチールディスクに押し付けることで構成されている。ボールとディスクを駆動するシャフトの回転速度を個別に制御して動作条件を設定することにより、転がり速度とスライド/ロール比の特定の組み合わせを得た。また、接触力とオイルバスの温度を制御することで動作条件を設定した。小型牽引機(MTM)により、表3~6に記載されている摩擦性能データを得るために使用した試験方法のパラメータは以下のとおりである。35Nの荷重(~1GPa)、スライドとロールの比率50%、3000mm/s~10mm/sの速度、52100スチール。各配合について、40℃、60℃、80℃、100℃、120℃、140℃において3本のストリベック曲線を作成した。各温度において、3回の実施による平均値を得た。
【0050】
表3は、FMを含有しない0W-20 PCMO基準オイルと比較した、本発明に係る実施例における境界摩擦係数の向上を示している。特に、温度が80℃以上となると、本発明に係る5つの実施例全てが、より低い境界係数を与えた。中でも注目すべきことには、本発明に係るEx.1は、評価した全ての添加剤について60℃以上において最も低い境界摩擦係数を与えた。表4は、各温度において、オイルについて得られたストリベック係数の結果を示している。100℃以上の温度では、本発明に係るすべての実施例が、FMを含有しない組成物と比較して、オイルの摩擦性能が有意に改善された。注目すべきは、本発明に係るEx.1及びEx.5の両方が、摩擦調整剤を含有しない基準オイル及びいずれかの比較例を含有するオイルと比較して低いストリベック係数を60℃以上において与えたことである。境界潤滑領域における摩擦性能データと同様に、評価した80~140℃において、本発明に係るEx.1を含有するオイルは、他の各摩擦調整剤と比較して顕著に低いストリベック係数を与えた。これらの結果は,本発明に係るEx.1が境界潤滑領域だけでなく、混合領域や弾性流体領域においても摩擦性能を向上させることを示している。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
表5は、摩擦調整剤を含有しない0W-20 PCMO基準オイルと比較した本発明に係る実施例の境界摩擦係数の向上を示している。これらの研究において、本発明に係る実施例又は比較例のいずれかを含有する組成物を、3つの異なる添加割合において評価した。表5に示されるデータより、80℃以上の温度において本発明に係る実施例3つの全てが、最も少ない添加割合(0.40wt%)においてさえも、FMを含有しない基準オイルと比較して低い境界係数を与えたことが理解される。表6は、各温度と添加割合のオイルで得られたストリベック係数の結果を示している。ここでも、80℃以上の温度において、本発明に係る実施例3つの全てが、各添加割合についてより低いストリベック係数から示唆されるように、FMを含有しない0W-20 PCMO基準オイルと比較して摩擦性能が向上されていることが理解される。上記の表4に示されるデータから理解されるように、本発明に係るEx.1は、格別な摩擦低減を特により高い実施温度及び添加割合において与える。特に、本発明に係るEx.1は、評価した100~140℃において、最も高い添加割合について最も低いストリベック係数を与えた。表5及び6中のこれらのデータは、ここにおいても、本発明に係るEx.1が境界潤滑領域だけでなく,混合領域や弾性流体領域においても特定の範囲の添加割合に渡って摩擦性能を向上させることを示している。
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
実験例9
高温腐食ベンチテスト(HTCBT)による銅及び鉛の腐食試験
ASTM D6594(Standard Test Method for Evaluation of Corrosiveness of Diesel Engine Oil at 135 °C)に記載された試験方法に従い、表7に示す銅及び鉛の腐食データを作成した。API CK-4カテゴリー及びこれと同様のオイルについては、HTCBTに合格するための基準は、銅が最大20ppm、鉛が最大120ppm、銅のレーティングが最大で3である。表7に示されたデータから、本発明に係る実施例は、比較例と比べて、銅及び鉛の腐食に関し顕著に向上されていることが理解される。このデータから、15W-40 HDDEO中にFM添加剤としてCEx.1を配合すると、銅及び鉛の腐食の両方の腐食が有意な量で発生することが明らかになった。純粋なエステル系添加剤であるCEx.1を含む配合物は、銅の腐食については合格には不十分な性能であり、鉛の腐食については合格には大幅に性能が不十分であった。これに対して、CEx.2は、アミド-及びエステル-系の化合物両方の混合物である。CEx.2では、銅の腐食に対しては合格となり得る性能であった。CEx.2を含有するオイルは依然として鉛の腐食において合格には大幅に性能が不十分であったが、鉛について観測された値は70%以上減少していた。本発明に係る実施例は、純粋なアミド系材料である。Ex.1は、配合物は銅の腐食については合格であるが、鉛の腐食については合格ラインに達しなかった。しかしながら、本発明に係るEx.2又はEx.5のいずれかを含有する組成物は、銅及び鉛の腐食の両方について合格し得る性能を有し、また、比較対象である15W-40 HDDEOと同等の銅レーティングであった。本発明に係るEx.2及びEx.5は、CEx.1と比較して、銅の腐食については75%の減少、鉛の腐食については90%近い減少を与えた。さらに、本発明に係るEx.2及びEx.5は、CEx.2と比較して鉛の腐食について60%より減少するという利点がある。
【0057】
【表7】
【0058】
摩擦性能、摩耗保護、及び腐食試験の結果から、本発明に係る実施例は、従来の添加剤の摩擦性能および耐摩耗性を満たすか、それを上回ることができる新しいクラスの添加剤であると同時に、観察された銅及び鉛の腐食の深刻さを大幅に軽減することができることが示される。