(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】装置の位置を推定するシステム、方法及びプログラム、基地局、中継装置、並びに、無線電力伝送のシステム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 3/48 20060101AFI20230413BHJP
G01S 5/02 20100101ALI20230413BHJP
G01S 5/14 20060101ALI20230413BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20230413BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20230413BHJP
H04W 88/04 20090101ALI20230413BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20230413BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20230413BHJP
H02J 50/23 20160101ALI20230413BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20230413BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20230413BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20230413BHJP
H02J 50/50 20160101ALI20230413BHJP
【FI】
G01S3/48
G01S5/02 Z
G01S5/14
H04W64/00 130
H04W64/00 110
H04W16/26
H04W88/04
H04W16/28
H01Q21/06
H02J50/23
H02J50/40
H02J50/90
H02J50/80
H02J50/50
(21)【出願番号】P 2022059107
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-04-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/完全ワイヤレス社会実現を目指したワイヤレス電力伝送の高周波化および通信との融合技術」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】平川 昂
(72)【発明者】
【氏名】中本 悠太
(72)【発明者】
【氏名】太田 喜元
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-128211(JP,A)
【文献】特開2011-71963(JP,A)
【文献】特開2018-148285(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0158162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00- 3/74
G01S 5/00- 5/14
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
H01Q 21/06
H02J 50/23
H02J 50/40
H02J 50/90
H02J 50/80
H02J 50/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の位置を推定する方法であって、
基地局のアンテナ装置の複数のアンテナ素子により、前記基地局と対象装置との間のエリアに位置する中継装置から近傍界の電波を受信することと、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれについて、前記中継装置からの電波の受信結果に基づいて、前記アンテナ素子の位置を基準にした前記中継装置の方向の角度を算出することと、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれの前記角度の算出結果と、前記アンテナ装置における前記アンテナ素子の位置情報とに基づいて、前記中継装置の位置を推定することと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、
前記位置を推定した複数の中継装置により、前記対象装置からの電波を受信することと、
前記複数の中継装置のそれぞれについて、前記対象装置からの電波の受信結果に基づいて、前記中継装置の位置を基準にした前記対象装置の方向の角度情報又は前記対象装置の距離情報を算出することと、
前記複数の中継装置のそれぞれの前記角度情報又は前記距離情報の算出結果と、前記複数の中継装置のそれぞれの位置情報とに基づいて、前記対象装置の位置を推定することと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
無線電力伝送方法であって、
前記基地局が、請求項2の方法で推定した前記中継装置の位置の推定結果と前記対象装置の位置の推定結果とに基づいて、前記対象装置に向けてビームを形成し、前記ビームを介して前記対象装置に送電する、ことを含むことを特徴とする無線電力伝送方法。
【請求項4】
請求項3の無線電力伝送方法において、
前記中継装置の位置の推定結果と前記対象装置の位置の推定結果とに基づいて、前記対象装置に向かうビームのチルト角を決定することを含む、ことを特徴とする無線電力伝送方法。
【請求項5】
通信網に接続された基地局を備えるシステムであって、
前記基地局と対象装置との間のエリアに位置する中継装置を備え、
前記基地局は、
アンテナ装置の複数のアンテナ素子により、前記中継装置から近傍界の電波を受信し、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれについて、前記中継装置からの電波の受信結果に基づいて、前記アンテナ素子の位置を基準にした前記中継装置の方向の角度を算出し、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれの前記角度の算出結果と、前記アンテナ装置における前記アンテナ素子の位置情報とに基づいて、前記中継装置の位置を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5のシステムにおいて、
前記中継装置を複数備え、
前記複数の中継装置はそれぞれ、
前記対象装置からの電波を受信し、
前記対象装置からの電波の受信結果に基づいて、前記中継装置の位置を基準にした前記対象装置の方向の角度情報又は前記対象装置の距離情報を算出し、
前記角度情報又は前記距離情報の算出結果を前記基地局に送信し、
前記基地局は、
前記複数の中継装置のそれぞれの前記角度情報又は前記距離情報の算出結果と、前記複数の中継装置のそれぞれの位置情報とに基づいて、前記対象装置の位置を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項5のシステムにおいて、
前記中継装置を複数備え、
前記複数の中継装置はそれぞれ、
前記対象装置からの電波を受信し、
前記対象装置からの電波の受信結果を前記基地局に送信し、
前記基地局は、
前記複数の中継装置のそれぞれについて、前記対象装置からの電波の受信結果に基づいて、前記中継装置の位置を基準にした前記対象装置の方向の角度情報又は前記対象装置の距離情報を算出し、
前記複数の中継装置のそれぞれの前記角度情報又は前記距離情報の算出結果と、前記複数の中継装置のそれぞれの位置情報とに基づいて、前記対象装置の位置を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6又は7のシステムにおいて、
前記基地局は、前記複数の中継装置の位置の推定結果と前記対象装置の位置の推定結果とに基づいて、前記対象装置に向けてビームを形成し、前記ビームを介して前記対象装置に無線送電する、ことを含むことを特徴とする無線電力伝送方法。
【請求項9】
請求項8のシステムにおいて、
前記基地局は、前記中継装置の位置の推定結果と前記対象装置の位置の推定結果とに基づいて、前記対象装置に向かうビームのチルト角を決定する、ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項5のシステムに備える基地局であって、
前記アンテナ装置の複数のアンテナ素子により、前記中継装置から近傍界の電波を受信する手段と、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれについて、前記中継装置からの電波の受信結果に基づいて、前記アンテナ素子の位置を基準にした前記中継装置の方向の角度を算出する手段と、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれの前記角度の算出結果と、前記アンテナ装置における前記アンテナ素子の位置情報とに基づいて、前記中継装置の位置を推定する手段と、
を備える、ことを特徴とする基地局。
【請求項11】
請求項10の基地局において、
前記複数の中継装置の位置の推定結果と前記対象装置の位置の推定結果とに基づいて、前記対象装置に向けてビームを形成し、前記ビームを介して前記対象装置に無線送電する手段を備える、ことを特徴とする基地局。
【請求項12】
請求項11の基地局において、
前記中継装置の位置の推定結果と前記対象装置の位置の推定結果とに基づいて、前記対象装置に向かうビームのチルト角を決定する手段を備える、ことを特徴とする基地局。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかの基地局において、
当該基地局は、前記対象装置への無線送電機能を有する移動通信システムの基地局である、ことを特徴とする基地局。
【請求項14】
請求項10乃至12のいずれかの基地局において、
前記アンテナ装置は、複数のアンテナ素子が2次元的に又は3次元的に配置されたアレーアンテナである、ことを特徴とする基地局。
【請求項15】
請求項14の基地局において、
前記アンテナ装置は、前記中継装置の位置の推定に用いる互いに離間した測位用アンテナ素子を有する、ことを特徴とする基地局。
【請求項16】
請求項6のシステムに備える中継装置であって、
前記対象装置からの電波を受信する手段と、
前記対象装置からの電波の受信結果に基づいて、前記中継装置の位置を基準にした前記対象装置の方向の角度情報又は前記対象装置の距離情報を算出する手段と、
前記角度情報又は前記距離情報の算出結果を前記基地局に送信する手段と、
を備える、ことを特徴とする中継装置。
【請求項17】
請求項7のシステムに備える中継装置であって、
前記対象装置からの電波を受信する手段と、
前記対象装置からの電波の受信結果を前記基地局に送信する手段と、
を備える、ことを特徴とする中継装置。
【請求項18】
請求項16又は17の中継装置において、
当該中継装置は、移動通信システムの端末装置又はアクセスポイント装置である、ことを特徴とする中継装置。
【請求項19】
請求項10の基地局に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
前記アンテナ装置の複数のアンテナ素子により、前記中継装置から近傍界の電波を受信するためのプログラムコードと、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれについて、前記中継装置からの電波の受信結果に基づいて、前記アンテナ素子の位置を基準にした前記中継装置の方向の角度を算出するためのプログラムコードと、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれの前記角度の算出結果と、前記アンテナ装置における前記アンテナ素子の位置情報とに基づいて、前記中継装置の位置を推定するためのプログラムコードと、
を含む、ことを特徴とするプログラム。
【請求項20】
請求項16の中継装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
前記対象装置からの電波を受信するためのプログラムコードと、
前記対象装置からの電波の受信結果に基づいて、前記中継装置の位置を基準にした前記対象装置の方向の角度情報又は前記対象装置の距離情報を算出するためのプログラムコードと、
前記角度情報又は前記距離情報の算出結果を前記基地局に送信するためのプログラムコードと、
を含む、ことを特徴とするプログラム。
【請求項21】
請求項17の中継装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
前記対象装置からの電波を受信するためのプログラムコードと、
前記対象装置からの電波の受信結果を前記基地局に送信するためのプログラムコードと、
を含む、ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の位置を推定するシステム、方法及びプログラム、基地局、中継装置、並びに、無線電力伝送のシステム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線フレームに設定された複数の無線リソースの少なくとも一部を用いて基地局(通信中継装置)と端末装置との間で通信を行う通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の通信システムの基地局や無線LANアクセスポイント装置等の通信中継装置に接続して通信する端末装置として、内蔵電池から供給される電力を主に利用する携帯型の端末装置がある。この端末装置では、内蔵電池の残量が少なくなったときに内蔵電池を充電する煩雑な作業が必要である。また、内蔵電池ではなく有線接続の電源ラインから供給される電力を利用する端末装置は、そのような電源ラインを利用可能な場所での使用に制限される。このように基地局などの通信中継装置に接続して通信を行う様々な端末装置への給電をまかなうことができるような給電インフラが未整備である。
【0005】
第5世代及びその後の次世代の通信システムでは、基地局や無線LANアクセスポイント装置等の通信中継装置に接続して通信する端末装置(例えば、ユーザ装置、IoTデバイス等)が急増してくるのが予想され、膨大なトラフィックを捌く通信インフラの整備が進められている。しかしながら、上記通信を行う膨大な数の端末装置への給電をまかなうことができる給電インフラは未整備のままである。特に、複数の端末装置のそれぞれに対して効率的に給電することが課題になっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る方法は、装置の位置を推定する方法である。この方法は、基地局のアンテナ装置の複数のアンテナ素子により、前記基地局と対象装置との間のエリアに位置する中継装置から近傍界の電波を受信することと、前記複数のアンテナ素子のそれぞれについて、前記中継装置からの電波の受信結果に基づいて、前記アンテナ素子の位置を基準にした前記中継装置の方向の角度を算出することと、前記複数のアンテナ素子のそれぞれの前記角度の算出結果と、前記アンテナ装置における前記アンテナ素子の位置情報とに基づいて、前記中継装置の位置を推定することと、を含む。
【0007】
前記方法において、前記位置を推定した複数の中継装置により、前記対象装置からの電波を受信することと、前記複数の中継装置のそれぞれについて、前記対象装置からの電波の受信結果に基づいて、前記中継装置の位置を基準にした前記対象装置の方向の角度情報又は前記対象装置の距離情報を算出することと、前記複数の中継装置のそれぞれの前記角度情報又は前記距離情報の算出結果と、前記複数の中継装置のそれぞれの位置情報とに基づいて、前記対象装置の位置を推定することと、を含んでもよい。
【0008】
本発明の他の態様に係る無線電力伝送方法は、前記基地局が、前記方法で推定した前記中継装置の位置の推定結果と前記対象装置の位置の推定結果とに基づいて、前記対象装置に向けてビームを形成し、前記ビームを介して前記対象装置に送電する、ことを含む。
【0009】
前記無線電力伝送方法において、前記中継装置の位置の推定結果と前記対象装置の位置の推定結果とに基づいて、前記対象装置に向かうビームのチルト角を決定することを含んでもよい。
【0010】
本発明の更に他の態様に係るシステムは、通信網に接続された基地局を備えるシステムである。このシステムは、前記基地局と対象装置との間のエリアに位置する中継装置を備える。前記基地局は、アンテナ装置の複数のアンテナ素子により、前記中継装置から近傍界の電波を受信し、前記複数のアンテナ素子のそれぞれについて、前記中継装置からの電波の受信結果に基づいて、前記アンテナ素子の位置を基準にした前記中継装置の方向の角度を算出し、前記複数のアンテナ素子のそれぞれの前記角度の算出結果と、前記アンテナ装置における前記アンテナ素子の位置情報とに基づいて、前記中継装置の位置を推定する。
【0011】
前記システムにおいて、前記中継装置を複数備え、前記複数の中継装置はそれぞれ、前記対象装置からの電波を受信し、前記対象装置からの電波の受信結果に基づいて、前記中継装置の位置を基準にした前記対象装置の方向の角度情報又は前記対象装置の距離情報を算出し、前記角度情報又は前記距離情報の算出結果を前記基地局に送信し、前記基地局は、前記複数の中継装置のそれぞれの前記角度情報又は前記距離情報の算出結果と、前記複数の中継装置のそれぞれの位置情報とに基づいて、前記対象装置の位置を推定してもよい。
【0012】
前記システムにおいて、前記中継装置を複数備え、前記複数の中継装置はそれぞれ、前記対象装置からの電波を受信し、前記対象装置からの電波の受信結果を前記基地局に送信し、前記基地局は、前記複数の中継装置のそれぞれについて、前記対象装置からの電波の受信結果に基づいて、前記中継装置の位置を基準にした前記対象装置の方向の角度情報又は前記対象装置の距離情報を算出し、前記複数の中継装置のそれぞれの前記角度情報又は前記距離情報の算出結果と、前記複数の中継装置のそれぞれの位置情報とに基づいて、前記対象装置の位置を推定してもよい。
【0013】
前記システムにおいて、前記基地局は、前記複数の中継装置の位置の推定結果と前記対象装置の位置の推定結果とに基づいて、前記対象装置に向けてビームを形成し、前記ビームを介して前記対象装置に無線送電してもよい。
【0014】
前記システムにおいて、前記基地局は、前記中継装置の位置の推定結果と前記対象装置の位置の推定結果とに基づいて、前記対象装置に向かうビームのチルト角を決定してもよい。
【0015】
本発明の更に他の態様に係る基地局は、前記アンテナ装置の複数のアンテナ素子により、前記中継装置から近傍界の電波を受信する手段と、前記複数のアンテナ素子のそれぞれについて、前記中継装置からの電波の受信結果に基づいて、前記アンテナ素子の位置を基準にした前記中継装置の方向の角度を算出する手段と、前記複数のアンテナ素子のそれぞれの前記角度の算出結果と、前記アンテナ装置における前記アンテナ素子の位置情報とに基づいて、前記中継装置の位置を推定する手段と、を備える。
【0016】
前記基地局において、前記複数の中継装置の位置の推定結果と前記対象装置の位置の推定結果とに基づいて、前記対象装置に向けてビームを形成し、前記ビームを介して前記対象装置に無線送電する手段を備えてもよい。
【0017】
前記基地局において、前記中継装置の位置の推定結果と前記対象装置の位置の推定結果とに基づいて、前記対象装置に向かうビームのチルト角を決定する手段を備えてもよい。
【0018】
前記基地局は、前記対象装置への無線送電機能を有する移動通信システムの基地局であってもよい。
【0019】
前記基地局において、前記アンテナ装置は、複数のアンテナ素子が2次元的に又は3次元的に配置されたアレーアンテナであってもよい。
【0020】
前記基地局において、前記アンテナ装置は、前記中継装置の位置の推定に用いる互いに離間した測位用アンテナ素子を有してもよい。
【0021】
本発明の更に他の態様に係る中継装置は、前記対象装置からの電波を受信する手段と、前記対象装置からの電波の受信結果に基づいて、前記中継装置の位置を基準にした前記対象装置の方向の角度情報又は前記対象装置の距離情報を算出する手段と、前記角度情報又は前記距離情報の算出結果を前記基地局に送信する手段と、を備える。
【0022】
本発明の更に他の態様に係る中継装置は、前記対象装置からの電波を受信する手段と、前記対象装置からの電波の受信結果を前記基地局に送信する手段と、を備える。
【0023】
前記中継装置は、移動通信システムの端末装置又はアクセスポイント装置であってもよい。
【0024】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、前記基地局に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記アンテナ装置の複数のアンテナ素子により、前記中継装置から近傍界の電波を受信するためのプログラムコードと、前記複数のアンテナ素子のそれぞれについて、前記中継装置からの電波の受信結果に基づいて、前記アンテナ素子の位置を基準にした前記中継装置の方向の角度を算出するためのプログラムコードと、前記複数のアンテナ素子のそれぞれの前記角度の算出結果と、前記アンテナ装置における前記アンテナ素子の位置情報とに基づいて、前記中継装置の位置を推定するためのプログラムコードと、を含む。
【0025】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、前記中継装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記対象装置からの電波を受信するためのプログラムコードと、前記対象装置からの電波の受信結果に基づいて、前記中継装置の位置を基準にした前記対象装置の方向の角度情報又は前記対象装置の距離情報を算出するためのプログラムコードと、前記角度情報又は前記距離情報の算出結果を前記基地局に送信するためのプログラムコードと、を含む。
【0026】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、前記中継装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記対象装置からの電波を受信するためのプログラムコードと、前記対象装置からの電波の受信結果を前記基地局に送信するためのプログラムコードと、を含む。
【0027】
また、前記中継装置や前記対象装置の位置の推定に用いるプログラムは、機械学習によって作成された学習済モデルであってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、通信網に接続された基地局と、対象装置との無線通信を中継する中継装置とが連携することにより、対象装置の位置を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態に係るシステムの概略構成の一例を示す説明図。
【
図2】実施形態に係るシステムを構成する基地局、中継装置及び対象装置の配置の一例を示す説明図。
【
図3】実施形態に係るシステムにおける中継装置及び対象装置の位置推定手法の概要の一例を示す説明図。
【
図4】近傍界を利用した中継装置の位置推定の一例を示す説明図。
【
図5】(a)~(d)はそれぞれ、実施形態に係る基地局のアンテナ装置の一例を示す説明図。
【
図6】(a)及び(b)は、近傍界を利用した中継装置の位置推定の一例を示す説明図。
【
図7】実施形態に係るシステムにおける複数の中継装置を介した対象装置の位置推定の一例を示す説明図。
【
図8】実施形態に係るシステムにおける複数の中継装置を介した対象装置の位置推定の他の例を示す説明図。
【
図9】実施形態に係るシステムにおける対象装置の位置推定に用いる複素ベクトルを用いて表現した推定モデルの一例を示す説明図。
【
図10】
図9の推定モデルにおける未知数Ds1,Ds2の推定の一例を示す説明図。
【
図11】3次元空間における対象装置の位置推定における座標及び平面の定義の一例を示す説明図。
【
図12】3次元空間における対象装置の位置推定の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、移動通信網に接続された無線電力伝送(WPT)の無線送電装置としての機能を有する基地局と、対象装置(例えばIoTデバイス、子機)との無線通信を中継する中継装置(例えば、固定アクセスポイント装置、移動通信の端末装置(UE)、親機)とが連携することにより、対象装置の位置を精度よく推定することができるシステムである。また、本実施形態のシステムでは、位置を推定した対象装置に無線電力伝送用のビーム(以下「WPTビーム」ともいう。)を向けて基地局から対象装置に電力を効率よく給電することができる。
【0031】
なお、以下の実施形態では、移動通信の基地局が無線送電装置として兼用して無線電力伝送(WPT)システムを構成した場合について説明するが、移動通信の基地局とは別に設けた無線送電装置を移動通信網に接続し、その無線送電装置から端末装置へ給電する無線電力伝送(WPT)システムを構成してもよい。また、実施形態のシステムは、移動通信の基地局を有する測位システムや通信システムとして構成してもよい。
【0032】
図1は、本実施形態に係るシステムの概略構成の一例を示す説明図である。本実施形態のシステムは、通信エリア(セル)10Aを形成するセルラー方式の基地局10と、単数又は複数の中継装置20と、を有する。本実施形態に係るシステムは、通信エリア10Aに在圏しているときに基地局10に接続して基地局10と無線通信可能な対象装置30を更に有してもよい。
【0033】
基地局10は、例えば、現在の移動通信で運用されている第5世代などの移動通信システムの標準規格又はそれ以降の世代(例えばB5G(Beyond 5G)又は6G)の移動通信システムの標準規格に準拠した基地局(例えば、eNodeB、gNodeB)である。基地局10は、WPTの無線送電装置としての機能を有してもよい。
【0034】
中継装置20は、第1の無線通信方式によって基地局10との間で無線通信する第1の通信機能と、第2の無線通信方式によって対象装置30との間で無線通信する第2の通信機能と、を有する。中継装置20は、例えば、通信エリア(セル)10A内又はその近傍のエリアに固定配置された無線接続(例えば無線LAN接続)のアクセスポイント装置、又は、対象装置(子機)30に対する親機としての機能を有する移動通信の移動局としてのスマートフォンなどの端末装置(UE)である。
【0035】
なお、
図1及び後述の図の例におけるシステムは、3台の中継装置20(1)~20(3)を有しているが、中継装置20の数は1台又は2台であってもよいし、4台以上であってもよい。複数の中継装置を互いに区別する場合は、中継装置20(1)~20(3)のように識別番号を付し、単数の中継装置について説明する場合又は複数の中継装置に共通する事項について説明する場合は、識別番号を付さないで説明する。
【0036】
対象装置30は、例えば、移動通信システムの移動局としての端末装置(「UE」(ユーザ装置)ともいう。)である。対象装置30は、基地局10と無線通信可能な通信装置(例えば移動通信モジュール)と各種デバイスとを組み合わせたものであってもよい。対象装置30は、基地局10を介してインターネットに接続可能なIoTデバイスであってもよい。
【0037】
対象装置30は、基地局10との間で無線通信する機能のほか、前記第2の無線通信方式によって中継装置20との間で無線通信する機能を有する。また、対象装置30は、無線電力伝送(WPT)の無線受電装置としての機能を有してもよい。
【0038】
中継装置20と基地局10との間の第1の無線通信方式は、例えば、現在の移動通信で運用されている第5世代などの移動通信システムの標準規格又はそれ以降の世代(例えばB5G(Beyond 5G)又は6G)の移動通信システムの標準規格に準拠した無線通信方式である。
【0039】
中継装置20と対象装置30との間の第2の無線通信方式は、例えば、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信方式、又は、無線媒体としてUWB(超広帯域)無線の電波を用いる通信方式である。UWBは、広帯域(例えば、数GHz帯中の任意の周波数を中心とした数百MHzの帯域幅)の微弱電波での通信技術であり、IEEE802.15.4で定義されている。
【0040】
対象装置30へ給電する無線電力伝送(WPT)の無線媒体は、例えば、マイクロ波又はミリ波の電波である。
【0041】
図2は、本実施形態に係るシステムを構成する基地局10、中継装置20及び対象装置30の配置の一例を示す説明図である。
図2において、基地局10は、主に無線電力伝送(WPT)に用いることができるアンテナ装置としてのアレーアンテナ110を備える。アレーアンテナ110は、2次元的に又は3次元的に配置された複数のアンテナ素子111を有する大開口(例えば数10cm×数10cmのサイズ)のアンテナ(レクテナアレイ)である。無線電力伝送(WPT)を行っているとき、アレーアンテナ110の複数のアンテナ素子111それぞれの単体での送信電力は、例えば、数100μW~数10mWである。
【0042】
アレーアンテナ110は、マイクロ波又はミリ波の電波を介して複数のUE20との間でmassive MIMO(mMIMO)伝送方式の通信を行うアンテナ装置として兼用してもよい。
【0043】
基地局10の通信エリア10Aの全部又は一部は、基地局10から対象装置30に向けてビームフォーミングで形成したフォーカス・ビーム10Bを介して給電可能な無線電力伝送エリア(以下「WPTエリア」という。)になっている。基地局10から10m程度離れた位置にある対象装置30に向けて送信された給電用の電波がミリ波の場合は、WPTエリアにおける電界は、遠方界ではなく近傍界になっている。
【0044】
対象装置30は、主に無線電力伝送(WPT)に用いることができるアンテナ装置としてのアレーアンテナ310を備えてもよい(後述の
図3参照)。対象装置30のアレーアンテナ310は、例えば2次元的に又は3次元的に配置された100素子程度以下の複数のアンテナ素子311を有する微弱レクテナアレイである。複数のアンテナ素子の一部は、測位用のアンテナ素子312であってもよい。無線電力伝送(WPT)を行っているとき、アレーアンテナの複数のアンテナ素子それぞれの単体での受信電力は、例えば、数10μW~数100μWである。この場合、基地局10から所定距離(例えば10m程度)離れている対象装置30において、対象装置30のアレーアンテナの全体として、例えば1mW以上の電力を受電することができる。
【0045】
図2において、基地局10及び対象装置30との間でそれぞれ見通し内環境(LOS環境)による所定の無線通信方式で通信可能な位置に、複数の中継装置として、固定のアクセスポイント(AP)装置20(1),20(2)と、利用者や車両などとともに移動可能な移動通信の移動局である端末装置(UE)20(3)が配置されている。端末装置(UE)からなる中継装置20(3)は、基地局10と対象装置(子機)30との通信を中継する親機として機能する。
【0046】
基地局10は、複数の中継装置20(1)~20(3)のそれぞれとの間で、見通し内環境(LOS環境)の経路12P(1)~12P(3)を介して電波を送受信することができる。また、複数の中継装置20(1)~20(3)はそれぞれ、対象装置30との間で、見通し内環境(LOS環境)の経路23P(1)~23P(3)を介して電波を送受信することができる。
【0047】
本実施形態では、以下に示すように、移動通信網に接続された基地局10及び複数の中継装置20(1)~20(3)を介して対象装置30の位置を推定し、その推定結果に基づいて、基地局10から対象装置30へのWPTビーム10Bのチルト角(θWPT)を決定している。
【0048】
図3は、本実施形態に係るシステムにおける中継装置20及び対象装置30の位置推定手法の概要の一例を示す説明図である。
図3の例は、電波の受信角度(AoA:Angle of Arrival)検知を利用して中継装置20及び対象装置30の位置(方向θ、距離D)を推定する場合の例である。
【0049】
図3における中継装置20の測位時には、複数の中継装置20(1)~20(3)それぞれの第1アンテナ210から送信された所定周波数の電波が、LOS環境の経路12P(1)~12P(3)を介して、基地局10の複数のアンテナ素子111で受信される。その電波の受信結果に基づいて、基地局10の複数のアンテナ素子111で受信された電波の位相差Δφを算出し、算出した位相差Δφと複数のアンテナ素子間の位置関係の情報に基づいて、基地局10の位置を基準にした中継装置20(1)~20(3)それぞれの位置(方向θと距離D)を算出して推定することができる。前記位相差Δφの算出や中継装置20(1)~20(3)の位置(方向θと距離D)の算出は、基地局10の信号処理部120で行われて記憶され、WPTビーム10Bのチルト角(θ
WPT)の決定に用いられる。中継装置20(1)~20(3)の位置(方向θと距離D)の情報は、移動通信網を介してクラウドサービスシステム40にアップロードしてもよい。
【0050】
なお、前記位相差Δφの算出や中継装置20(1)~20(3)の位置(方向θと距離D)の算出は、クラウドサービスシステム40で行い、その算出結果を基地局10がダウンロードしてWPTビーム10Bのチルト角(θWPT)の決定に用いるようにしてもよい。
【0051】
また、
図3における対象装置30の測位時には、対象装置30から送信された所定周波数の電波が、LOS環境の経路23P(1)~23P(3)を介して、複数の中継装置20(1)~20(3)それぞれの複数の第2アンテナ220で受信される。その電波の受信結果に基づいて、複数の中継装置20(1)~20(3)それぞれの複数の第2アンテナ220で受信された電波の位相差Δφを算出し、算出した位相差Δφと複数のアンテナ素子間の位置関係の情報に基づいて、複数の中継装置20(1)~20(3)それぞれの位置を基準にした対象装置30の位置(方向θと距離D)を算出して推定することができる。前記位相差Δφの算出や対象装置30の位置(方向θと距離D)の算出は、各中継装置20(1)~20(3)で行い、その算出結果を基地局10に送信して記憶され、WPTビーム10Bのチルト角(θ
WPT)の決定に用いられる。対象装置30の位置(方向θと距離D)の情報は、移動通信網を介してクラウドサービスシステム40にアップロードしてもよい。
【0052】
なお、前記位相差Δφの算出や対象装置30の位置(方向θと距離D)の算出は、クラウドサービスシステム40で行い、その算出結果を基地局10がダウンロードしてWPTビーム10Bのチルト角(θWPT)の決定に用いるようにしてもよい。
【0053】
図4は、近傍界を利用した中継装置(AP装置又は親機)20の位置推定の一例を示す説明図である。
図4の例では、基地局10のアンテナ装置110の互いに離れた3箇所に配置した測位用のアンテナ素子112(1)~112(3)を用いて中継装置20(1)の位置を推定する場合の例である。測位用のアンテナ素子112(1)~112(3)はそれぞれ、単一のアンテナ素子で構成してもよいし、2以上の複数のアンテナ素子で構成してもよい。
図4において、3箇所のアンテナ素子112(1)~112(3)のそれぞれと中継装置20(1)との間の複数の経路12P(1,1)、12P(1,2)、12P(1,3)の長さ(距離)に基づいて、基地局10の位置を基準にした中継装置20(1)の位置を計算して推定することができる。
【0054】
図5(a)~
図5(d)はそれぞれ、本実施形態に係る基地局10のアンテナ装置110の一例を示す説明図である。前述の
図4に例示した中継装置(AP装置又は親機)20の位置推定手法では、複数の測位用のアンテナ素子112の間隔が大きいほど、中継装置20の位置推定の精度が高まるので、
図5(a)~
図5(d)に示すように複数の測位用のアンテナ素子112を離して配置してもよい。
【0055】
図5(a)の例では、複数の測位用のアンテナ素子として、アンテナ装置110の本体の複数のアンテナ素子110の中央部に位置する3つのアンテナ素子112Cと、当該本体の上方にアーム部材113を介して配置した2つのアンテナ素子112Uと、当該本体の右側方にアーム部材113を介して配置した2つのアンテナ素子112Rとを設けている。
【0056】
図5(b)の例では、複数の測位用のアンテナ素子として、前述の中央部の3つのアンテナ素子112C、上方の2つのアンテナ素子112U及び右側方の2つのアンテナ素子112Rのほか、当該本体の下方にアーム部材113を介して配置した2つのアンテナ素子112Dと、当該本体の左側方にアーム部材113を介して配置した2つのアンテナ素子112Lとを設けている。
【0057】
図5(c)の例では、複数の測位用のアンテナ素子として、アンテナ装置110の本体の複数のアンテナ素子110のうち、中央部分に位置する3つのアンテナ素子112Cと、上部分に位置する2つのアンテナ素子112Uと、右部分に位置する2つのアンテナ素子112Rとを設けている。
【0058】
図5(d)の例では、複数の測位用のアンテナ素子として、中央部の3つのアンテナ素子112C、上部分の2つのアンテナ素子112U及び右部分の2つのアンテナ素子112Rのほか、下部に位置する2つのアンテナ素子112Lと、左部分に位置する2つのアンテナ素子112Lとを設けている。
【0059】
図6(a)及び(b)は、近傍界を利用した中継装置20の位置推定の一例を示す説明図である。
図6(a)は中継装置20の位置推定例に用いた中央部のアンテナ素子112Cと上部のアンテナ素子112Uとの位置関係を示すアンテナ装置110の斜視図である。
図6(b)は、中継装置20の位置推定に用いたモデルの一例を示す説明図である。
図6の例では、基地局10のアンテナ装置110のサイズを無視できない近傍界領域を用いて、中央部のアンテナ素子112Cと上部のアンテナ素子112Uとの間のアンテナ素子間位相差により、基地局10のアンテナ装置110の中央から見た中継装置20(1)の位置(方向θ、距離D)を推定している。
【0060】
図6(a)において、中央部のアンテナ素子112Cから見た中継装置20(1)の方向θ
ulは、次の(1)式で表される。ここで、Δφ
ulは、中央部のアンテナ素子112Cの2つのアンテナ素子間の受信位相差であり、kは電波の波数であり、rはアンテナ素子間の間隔である。
【数1】
【0061】
また、上部のアンテナ素子112Uから見た中継装置20(1)の方向θ
1は、次の(2)式で表される。ここで、Δφ
1は、上部のアンテナ素子112Uの2つのアンテナ素子間の受信位相差である。
【数2】
【0062】
また、上部のアンテナ素子112Uと中継装置20(1)との間の距離は、次の(3)式で表される。ここで、Δφは、中央部のアンテナ素子112Cと上部のアンテナ素子112Uとの間のアンテナ素子間の受信位相差である。
【数3】
【0063】
アンテナ装置110の本体の表面に沿った仮想アンテナ面と中継装置20(1)との間の最短距離D'は次の(4)式で表されるので、最終的に求める基地局10のアンテナ装置110の中央と中継装置20(1)との距離Dは、下記の(5)式で算出して推定することができる。
【数4】
【数5】
【0064】
基地局10のアンテナ装置110の中央から見た他の中継装置20(2)、20(3)の位置(方向θ、距離D)についても、同様に計算して推定することができる。
【0065】
図7は、本実施形態に係るシステムにおける複数の中継装置20(1)~20(3)を介した対象装置30の位置推定の一例を示す説明図である。
図7において、前述の位置推定などによって中継装置20(1)~20(3)の位置は既知である。中継装置20(1)~20(3)はそれぞれ、対象装置30から受信した所定信号の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)又は対象装置30に送信して対象装置30が受信した所定信号の受信信号強度(RSSI)に基づいて、各中継装置20(1)~20(3)と対象装置30との距離Ds1~Ds3を計算して算出することができる。更に、所定の座標系において、各中継装置20(1)~20(3)を中心として距離Ds1~Ds3を半径とした仮想円20C(1)~20C(3)の交点の座標を、対象装置30の位置として一意に算出して推定することができる。
【0066】
図8は、本実施形態に係るシステムにおける複数の中継装置を介した対象装置30の位置推定の他の例を示す説明図である。
図8の例は、電波の受信角度(AoA)検知のみを利用した角測型の位置推定手法の例である。
図8において、複数の中継装置20(1),20(2)はそれぞれ、対象装置30から送信された電波を受信し、その受信結果と、各中継装置20(1),20(2)の高さ(h1,h2)とに基づいて、各中継装置20(1),20(2)から見た対象装置30の方向の角度(φ1,θ1,φ2,θ2)を算出することができる。この角度(φ1,θ1,φ2,θ2)の算出結果に基づいて、対象装置30の位置座標を算出して推定することができる。
【0067】
なお、
図8の例では、2つの中継装置20(1),20(2)の受信結果を用いているが、3又は4以上の中継装置20の受信結果を用いてもよい。
【0068】
図9は、本実施形態に係るシステムにおける対象装置30の位置推定に用いる複素ベクトルを用いて表現した推定モデルの一例を示す説明図である。
図10は、
図9の推定モデルにおける未知数Ds1,Ds2の推定の一例を示す説明図である。
図9及び
図10は、2次元空間の場合の角測型の位置推定モデルの例である。
【0069】
図9において、基地局10のアンテナ装置110から複数の中継装置20(1)20(2)のそれぞれに向かうベクトルD
m1、D
m2はそれぞれ、次の(6)式及び(7)式で表され、前述の近傍界でのAoA検出手法により推定することができる。
【数6】
【数7】
【0070】
また、複数の中継装置20(1)20(2)のそれぞれから対象装置30を見た方向の角度θs1、θs2はそれぞれ、前述の中継装置20(1)20(2)と対象装置30との間のAoA検出手法により推定することができる。
【0071】
基地局10のアンテナ装置110から対象装置30に向かうベクトルDは、次の(8)式で表される。ここで、(8)式中のD
s1,D
s2が未知数である。
【数8】
【0072】
図10において、前述のベクトルD
m1、D
m2と角度θ
s1、θ
s2を用いて、角度θ
1、θ
2及びθ
3はそれぞれ、次の(9)式、(10)式及び(11)式で表される。
【数9】
【数10】
【数11】
【0073】
上記(9)式~(11)式を用いて、前述の(8)式中の未知数であるD
s1,D
s2は次の(12)式及び(13)式で表される。
【数12】
【数13】
【0074】
この(12)式及び(13)式で求められるDs1,Ds2を前述の(8)式に適用することにより、基地局10のアンテナ装置110から対象装置30に向かうベクトルD(方向と距離)を算出して推定することができる。
【0075】
図11は、3次元空間における対象装置30の位置推定における座標及び平面の定義の一例を示す説明図である。
図12は、3次元空間における対象装置30の位置推定の一例を示す説明図である。
図11に示すように、基地局10のアンテナ装置110において定義されるyz平面において、アンテナ装置110から対象装置30に向かうベクトルD
yz(方向と距離)を算出する。更に、基地局10のアンテナ装置110において定義されるxz平面において、アンテナ装置110から対象装置30に向かうベクトルD
xz(方向と距離)を算出する。これらの2つのベクトルD
yz及びD
xzを用いることにより、
図12及び次の(14)式に示すように、3次元空間における対象装置30を基準にした対象装置30の位置(方向と距離)を算出して特定することができる。
【0076】
【0077】
以上、本実施形態によれば、通信網に接続された基地局と、無線電力伝送などの対象装置(IoTデバイス)との無線通信を中継する中継装置とが連携することにより、対象装置の位置を精度よく推定することができる。更に、位置を推定した対象装置に無線電力伝送用のビームを向けて対象装置に対して電力を効率よく給電することができる。
【0078】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに無線送電装置、基地局、中継装置、対象装置、通信システム及び無線電力伝送システムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0079】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、基地局装置(Node B、Node G)、端末装置、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0080】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0081】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0082】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0083】
10 :基地局AP
10A :通信エリア(WPTエリア)
10B :ビーム
12P :測位電波の経路
20 :中継装置
20(1):アクセスポイント装置
20(2):アクセスポイント装置
20(3):移動通信システムの端末装置(親機)
23P :測位電波の経路
30 :対象装置(子機、IoTデバイス)
40 :クラウドコンピュータシステム
100 :基地局装置
110 :アンテナ装置(アレーアンテナ)
111 :無線電力伝送(WPT)用アンテナ素子
112 :位相測定用アンテナ素子
210 :アンテナ
220 :アンテナ
310 :アンテナ
311 :アンテナ素子
【要約】
【課題】無線電力伝送などの対象装置の位置を精度よく推定することができる方法を提供する。
【解決手段】基地局のアンテナ装置の複数のアンテナ素子により、基地局と対象装置との間のエリアに位置する中継装置から近傍界の電波を受信し、複数のアンテナ素子のそれぞれについて、中継装置からの電波の受信結果に基づいて、アンテナ素子の位置を基準にした中継装置の方向の角度を算出し、複数のアンテナ素子のそれぞれの角度の算出結果と、アンテナ装置におけるアンテナ素子の位置情報とに基づいて、中継装置の位置を推定する。
【選択図】
図1