(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】慣らし装置
(51)【国際特許分類】
B65G 17/06 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
B65G17/06 A
(21)【出願番号】P 2022076391
(22)【出願日】2022-05-06
【審査請求日】2022-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307036801
【氏名又は名称】株式会社 ダイケン
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】戸村 太一
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-105012(JP,A)
【文献】登録実用新案第3200446(JP,U)
【文献】特開2020-144028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 17/00-17/48
B65G 47/22-47/32
B65G 19/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積状態で搬送されるバラ物野菜の中に挿入される複数の慣らしピンを備える慣らし要素と、
円弧状の移動軌跡に沿って前記慣らし要素を周回移動させる移動機構と、を備え
、
前記慣らし要素が周回移動する過程において、前記慣らしピンは鉛直方向に対する姿勢が維持されることを特徴とする慣らし装置。
【請求項2】
前記移動機構は、
自転が拘束される太陽回転体と、
前記太陽回転体と噛み合いながら前記太陽回転体の周囲を公転しながら自転する第1遊星回転体と、
前記第1遊星回転体のそれぞれと噛み合いながら前記太陽回転体の周囲を公転しながら自転する第2遊星回転体と、を有する遊星回転体列を備え、
前記慣らし要素は、前記第2遊星回転体に固定される、
請求項1に記載の慣らし装置。
【請求項3】
前記移動機構は、
一対の前記第1遊星回転体と、
一対の前記第2遊星回転体と、を備え、
前記太陽回転体の中心軸、一対の前記第1遊星回転体のそれぞれの回転中心、一対の前記第2遊星回転体のそれぞれの回転中心が一直線上に並び、
一対の前記第2遊星回転体のそれぞれに、前記慣らし要素が固定される、
請求項2に記載の慣らし装置。
【請求項4】
前記遊星回転体列は、遊星歯車列からなる、
請求項2または請求項3に記載の慣らし装置。
【請求項5】
前記遊星歯車列は、
前記太陽回転体に対応する太陽歯車と、
前記第1遊星回転体に対応する第1遊星歯車と、
前記第2遊星回転体に対応する第2遊星歯車と、を備え、
前記太陽歯車の歯数と前記第2遊星歯車の歯数が等しい、
請求項4に記載の慣らし装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モヤシ、カット野菜などのバラ物野菜が搬送される過程で慣らす慣らし装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送手段としてのコンベアで搬送されるバラ物野菜を例えば計量手段としての計量ホッパへ投入し、投入されたバラ物野菜の重量が予め設定された所定量に達すると、所定量ごとにバラ物野菜を小分けして計量ホッパから排出して袋詰め野菜が生産される。コンベアを搬送されるバラ物野菜の堆積状態がばらついて粗密が生じることがある。粗密が生じたままでバラ物野菜が計量ホッパに投入されると、所定量に達する時間にばらつきが生じてしまい、袋詰め野菜の生産効率が低下してしまうのに加えて、それぞれの袋詰め野菜の計量の精度が低下する。
【0003】
コンベアで搬送されるバラ物野菜の粗密状態を解消するために、例えば特許文献1に開示されるように、バラ物野菜を均すことが行われる。この均し(ならし)は、慣らしと表記されることもあれば、類似表現として解し(ほぐし)が用いられることもあるが、以下では慣らしと表現する。
特許文献1に開示される慣らしは、その
図1に示されるように、コンベアの搬送方向の概ね中間に設けられる慣らしローラにより実現される。慣らしローラは、コンベアに載せられて搬送されてくるバラ物野菜、例えばモヤシの堆積状態を慣らして粗密を解消することができる。特許文献1の慣らしローラは、駆動源によって回転させられる円筒状または円柱状の部材であり、この慣らしローラの円弧面の外周面には径方向に突出する複数の針状をなす慣らしピンが設けられている。この慣らしピンが搬送されるバラ物野菜の中に入ってかき分けることにより、バラ物野菜の粗密が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上説明した特許文献1の慣らしローラは、慣らしローラの外周面が円形であり、そこから慣らしピンが径方向の外側に向けて延びる。したがって、慣らしローラを回転させると、慣らしピンは姿勢を360°にわたって変えながら円弧状の軌跡を周回移動する。この慣らしピンの円弧状の移動軌跡はある種のバラ物野菜、具体例として全長の大きい長尺な刺身のつまを慣らすことは困難を極める。円弧状の軌跡を移動する慣らしピンに刺身のつまが絡みつくからである。
【0006】
以上より、本発明は、長尺なバラ物野菜であっても慣らしピンに絡みつくのを抑えることのできる慣らし装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の慣らし装置は、堆積状態で搬送されるバラ物野菜の中に挿入される複数の慣らしピンを備える慣らし要素と、慣らしピンの姿勢が維持されながら、かつ、円弧状の移動軌跡に沿って慣らし要素を周回移動させる移動機構と、を備える。
【0008】
本発明における慣らし装置の移動機構は、好ましくは、自転が拘束される太陽回転体と、太陽回転体と噛み合いながら太陽回転体の周囲を公転しながら自転する第1遊星回転体と、第1遊星歯車のそれぞれと噛み合いながら太陽回転体の周囲を公転しながら自転する第2遊星回転体と、を有する遊星回転体列を備え、慣らし要素は、第2遊星回転体に固定される。
【0009】
本発明における慣らし装置の移動機構は、好ましくは、一対の第1遊星回転体と、一対の第2遊星回転体と、を備え、太陽回転体の中心軸、一対の第1遊星回転体のそれぞれの回転中心、一対の第2遊星回転体のそれぞれの回転中心が一直線上に並び、一対の第2遊星回転体のそれぞれに、慣らし要素が固定される。
【0010】
本発明における遊星回転体列は、好ましくは、遊星歯車列からなる。
【0011】
本発明における遊星歯車列は、好ましくは、太陽回転体に対応する太陽歯車と、第1遊星回転体に対応する第1遊星歯車と、第2遊星回転体に対応する第2遊星歯車と、を備え、太陽歯車の歯数と第2遊星歯車の歯数が等しい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、慣らしピンの姿勢が維持されながら周回移動することにより、刺身のつまといった長尺なバラ物野菜であっても、慣らしピンに絡みつくのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る慣らし機構を備える搬送装置の概略構成を示す側面図である。
【
図2】実施形態に係る慣らし機構およびその周囲を示す正面図である。
【
図3】実施形態に係る慣らし機構の回転要素を示す正面図である。
【
図4】実施形態に係る慣らし機構を示す、(a)正面図および(b)側面図である。
【
図5】実施形態に係る慣らし機構の慣らし要素を示す、(a)正面図、(b)平面図および(c)側面図である。
【
図6】実施形態に係る慣らし装置の一連の動作を示す側面図である。
【
図7】
図6の動作のSTEP1およびSTEP2を拡大して示す図である。
【
図8】
図6の動作のSTEP3およびSTEP4拡大して示す図である。
【
図9】
図6の動作のSTEP4およびSTEP5を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付する
図1から
図9を参照しながら、搬送部3および慣らし部5を備え、バラ物野菜を処理する実施形態に係る処理装置1について説明する。
処理装置1において、慣らし対象物としてのバラ物野菜は、搬送方向(FD)および幅方向(WD)に散らばり、かつ、厚さ方向(TD)に堆積した状態で搬送部3により搬送される。搬送部3により搬送される過程において、バラ物野菜は慣らし部5により慣らされる。慣らし部5は、慣らしピン21が一定の姿勢を維持しながら周回移動することにより、長尺なバラ物野菜であっても、慣らしピンに絡みつくのを抑えながら慣らすことができる。処理装置1において処理されるバラ物野菜は、処理装置1よりも下流側に設けられる機器、例えば計量ホッパに投入され、その後に袋詰めなどの処理がなされる。
【0015】
本実施形態において、この一定の姿勢を維持しながら周回移動する慣らしピン21の動作は、一例として、慣らし部5が備える遊星歯車列40により実現される。遊星歯車列40は、太陽歯車41と、太陽歯車41にそれぞれが噛み合う一対の第1遊星歯車43A,43Bと、第1遊星歯車43A,43Bのそれぞれに噛み合う第2遊星歯車45A,45Bと、を備える。第1遊星歯車43Aと第1遊星歯車43Bおよび第2遊星歯車45Aと第2遊星歯車45Bは、太陽歯車41の中心軸C41を中心にして点対称の位置に配置される。
【0016】
以下、搬送部3および慣らし部5の順に処理装置1の構成を説明した後に、処理装置1の特徴部分といえる慣らし部5の動作を説明し、さらに処理装置1が奏する効果を説明する。
【0017】
[搬送部3:
図1,
図2]
図1および
図2を参照しながら、搬送部3を説明する。
搬送部3は、バラ物野菜を掻き上げながら鉛直方向Vの上向きに搬送する。なお、処理装置1および搬送部3において、バラ物野菜が搬送される向きを基準にして、上流(U)および下流(L)が特定されるものとするが、この上流(U)および下流(L)は相対的な意味を有する。つまり、搬送部3は、上流(U)から下流(L)に向けた搬送経路CRに沿ってバラ物野菜を搬送する。この搬送経路CRは、最も上流(U)の領域および最も下流(L)の領域が概ね水平方向Hに沿って設けられており、その中間の領域が鉛直方向Vの斜め上方に向けて設けられている。搬送部3は、上流(U)から下流(L)に向けてバラ物野菜を搬送する往路ORと、バラ物野菜を下流(L)において次の工程に受け渡した後に戻る復路IRと、を有する。
【0018】
搬送部3は、一例として周回軌道するチェーン式のコンベアから構成される。搬送部3は、当該周回軌道に沿って設けられる無端状のチェーンベルト11を備える。チェーンベルト11は、上流(U)の側の折り返し端部が上部スプロケット13に巻き回され、下流(L)の側の折り返し端部が下部スプロケット15に巻き回される。また、チェーンベルト11は、上流(U)と下流(L)の中間位置において、図示を省略するスプロケットに支持されている。チェーンベルト11、上部スプロケット13、下部スプロケット15は、幅方向WDに間隔をあけて一対ずつが設けられている。
【0019】
上部スプロケット13および下部スプロケット15の少なくとも一方は、図示が省略される回転電機によって回転駆動される。この回転駆動により、上部スプロケット13および下部スプロケット15に巻き回されるチェーンベルト11は、上部スプロケット13および下部スプロケット15に案内されながら、周回軌道をなす搬送経路CRを走行する。
【0020】
一対のチェーンベルト11,11には、幅方向WDに薄い板状部材であるスラット12が掛け渡されている。スラット12は、一対のチェーンベルト11,11の延長方向に隙間なく設けられている。スラット12を備えるスラット・コンベアは、搬送部3の要素として好ましい形態ではあるが、他の形態のコンベアを用いることもできる。
【0021】
スラット12は、チェーンベルト11が周回移動するのに伴って移動する。スラット12の表裏の面のうちおもて面がバラ物野菜を載せる搬送面TPを構成する。往路ORにおける搬送面TPの移動軌跡が搬送経路CRを構成する。搬送経路CRに沿って搬送されるバラ物野菜は、互いに絡み合った状態で搬送面TPに載せられて下流(L)に向けて搬送される。
【0022】
搬送部3は、往路ORにおける搬送経路CRが上向きに傾斜している。この上向きの搬送経路CRにおいてバラ物野菜が上流(U)の側に滑り落ちるのを防ぐために、搬送部3はスラット12の搬送面TPに複数の係止ピン17を備えている。複数の係止ピン17は、搬送面TPから一例としてスラット12に対して垂直に立設されており、スラット12の幅方向WDおよび搬送経路CRの延長方向に均等な間隔を隔てて設けられている。複数の係止ピン17は、幅方向WDにおいて、均等な間隔を空けて一例として12本で一列を構成している。
【0023】
上流(U)の側で受け取られたバラ物野菜は、搬送面TPに載せられるとともに、係止ピン17により滑り落ちるのが防がれながら、下流(L)に向けて搬送経路CRを搬送される。搬送経路CRを搬送される堆積状態のバラ物野菜には粗密が生じている。この粗密を解消するために、以下で説明する慣らし部5が設けられる。
【0024】
[慣らし部5:
図2~
図9]
慣らし部5は、搬送部3で搬送されるバラ物野菜の中に慣らしピン21がバラ物野菜の中に入ってかき分けることにより、堆積されているバラ物野菜の粗密を解消する。慣らし部5の慣らしピン21は周回移動しながらバラ物野菜の粗密を解消するが、この周回移動の際に慣らしピン21は一定の姿勢を保つことで、刺身のつまなどの全長が大きい長尺なバラ物野菜の慣らしピン21への絡みつきを避けることができる。
以下、
図2~
図5を参照して慣らし部5の構成を説明した後に、
図6~
図9を参照してその動作につい言及する。
【0025】
慣らし部5は、慣らしピン21を備える一対の慣らし要素20(20A,20B)と、一対の慣らし要素20A,20Bを駆動させる慣らし移動機構30と、を備える。慣らし部5は搬送部3によるバラ物野菜の搬送経路CRの中間的な位置に設けられる。
慣らし部5は、
図2に示すように、一対の慣らし要素20A,20Bを備える。一対の慣らし要素20A,20Bは後述する主軸51を中心にして点対称の位置に配置されており、主軸51の回転角度でいうならば180°だけ位相がずれている。したがって、一対の慣らし要素20A,20Bの例えば一方の慣らし要素20Aがバラ物野菜を慣らした後に主軸51が180°だけ回転すると他方の慣らし要素20Bがバラ物野菜を慣らす。この慣らしの動作は、追って詳しく説明する。なお、一対の慣らし要素20A,20Bを区別する必要がないときには、慣らし要素20と総称する。
【0026】
[慣らし要素20:
図2,
図5]
慣らし要素20は、
図5に示すように、複数本の慣らしピン21と、慣らしピン21を支持する支持フレーム23と、支持フレーム23を慣らし移動機構30に取り付けられる一対の支持軸25A,25Bと、を備える。これらの慣らし要素20の要素は、好ましくは、耐食性を有するステンレス鋼などの金属材料から構成される。
慣らしピン21は、堆積されたバラ物野菜の中に挿入される先端21Tと、支持フレーム23に固定される後端21Eと、を備え、後端21Eから先端21Tまで真っ直ぐに延びている。先端21Tは、好ましい形態として、堆積するバラ物野菜の中に挿入しやすいようにとがっている。
【0027】
慣らし要素20A,20Bのそれぞれの支持フレーム23は、一例として、幅方向WDに11本の慣らしピン21を支持する。この11本で一列をなす慣らしピン21が、支持フレーム23の前後方向Yに複数列、具体的には三列配置されており、一つの支持フレーム23で17本の慣らしピン21が支持されている。一列で5本または6本で千鳥配列をなし三列で合わせて17本の慣らしピン21は、
図2に示すように、搬送部3に設けられる6本の係止ピン17の列が二列で千鳥配列される合せて12本の係止ピン17の幅方向WDの間隙にその先端21Tが入り込む。つまり、慣らしピン21と係止ピン17の先端同士が干渉状態をなすことにより、バラ物野菜の慣らし効果を向上できる。
【0028】
支持フレーム23は、
図5に示すように、慣らしピン21を支持する平坦な基板23Aと、基板23Aの前後方向Yの一方端である前端から基板23Aに対して垂直に立ち上がる前板23Bと、を備える。支持フレーム23は、また、基板23Aの幅方向WDの両端から基板23Aに対して垂直に立ち上がり、慣らし移動機構30との支持に関わる支持体23C,23Cを備える。支持フレーム23は、一方の支持体23Cが後述する支持軸25Aを介して第2遊星歯車45に支持され、他方の支持体23Cが支持軸25Bを介して第1支持フレーム53Bに支持される。
【0029】
[慣らし移動機構30:
図3,
図4]
次に、その姿勢を維持しながら慣らし要素20を周回移動させることのできる慣らし移動機構30を
図3および
図4を参照しながら説明する。
慣らし移動機構30は、遊星歯車列40と、遊星歯車列40を支持する支持構造50と、を備える。遊星歯車列40により慣らし要素20はその姿勢を維持しながら周回動作を行うことができる。
【0030】
遊星歯車列40は、
図4(a),(b)に示すように、太陽歯車41と、太陽歯車41にそれぞれが噛み合う一対の第1遊星歯車43A,43Bと、第1遊星歯車43A,43Bのそれぞれに噛み合う第2遊星歯車45A,45Bと、を備える。太陽歯車41、第1遊星歯車43A,43Bおよび第2遊星歯車45A,45Bは、それぞれの中心軸C41,回転軸C43A,C43B、C45A,C45Bが一直線上に並ぶ。その中で、第1遊星歯車43Aと第1遊星歯車43Bは太陽歯車41を中心にして点対称の位置に配置され、かつ、第2遊星歯車45Aと第2遊星歯車45Bは太陽歯車41を中心にして点対称の位置に配置される。遊星歯車列40は、太陽歯車41と第1遊星歯車43A,43Bの噛み合いの関係および第1遊星歯車43A,43Bと第2遊星歯車45A,45Bの相互の噛み合い関係を維持しながら、太陽歯車41を中心にして回転(公転)する。この公転に伴って、遊星歯車列40に固定される慣らし要素20はその慣らしピン21の姿勢を維持しながら周回移動する。なお、第1遊星歯車43Aと第1遊星歯車43Bとを区別して説明する必要がないときには単に第1遊星歯車43と称する。第2遊星歯車45A,45Bについても同様である。
【0031】
遊星歯車列40は、太陽歯車41、第1遊星歯車43および第2遊星歯車45を収容する歯車筐体47を備える。
太陽歯車41は、主軸51に軸受を介して回転可能に支持されているが、後述する第2支持フレーム55Aに回り止めされており、歯車筐体47の内部において自転は拘束されるが、主軸51による歯車筐体47の回転に対して相対的に回転がなされる。また、第1遊星歯車43および第2遊星歯車45は、歯車筐体47にそれぞれが回転可能に支持されている。回転可能に支持する手段は任意であり、第1遊星歯車43および第2遊星歯車45の回転中心に軸受を設けて軸受を歯車筐体47で支持することもできるし、第1遊星歯車43および第2遊星歯車45を軸支する回転軸を歯車筐体47で支持することもできる。本実施形態においては、第1遊星歯車43が軸受42を介して歯車筐体47に回転可能に支持され、第2遊星歯車45は軸受46を介して歯車筐体47に回転可能に支持されている。この軸受46は、慣らし要素20の支持軸25Aを支持する。
歯車筐体47は、
図3に示すように、第1遊星歯車43A,43Bを回転軸C43A,C43Bを介して支持し、第2遊星歯車45A,45Bを回転軸C45A,C45Bを介して支持する。
【0032】
以上説明した通りであり、太陽歯車41は歯車筐体47との機械的な接続関係を有しておらず、第1遊星歯車43A,43Bおよび第2遊星歯車45A,45Bは歯車筐体47に回転可能に支持されている。また、歯車筐体47は、主軸51に固定されており、主軸51の回転に伴って回転される。
この前提の下、
図4(b)において、主軸51が例えば時計回りに回転し、歯車筐体47も時計回りに回転すると、太陽歯車41は歯車筐体47に対して相対的にかつ反時計回りに回転する。
太陽歯車41に噛み合う第1遊星歯車43は、時計回りに回転する。この太陽歯車41によるに第1遊星歯車43の回転は、その回転軸C43を中心とするため、自転という。また、第1遊星歯車43は、歯車筐体47の回転に追従して、太陽歯車41を中心にして時計回りに回転する。この回転は、公転という。
第1遊星歯車43に噛み合う第2遊星歯車45は、第1遊星歯車43の自転に追従して反時計回りに回転する。この第1遊星歯車43による第2遊星歯車45の回転は、回転軸C45を中心とするため、自転ということができる。また、第2遊星歯車45は、歯車筐体47の回転に追従して、太陽歯車41を中心にして時計回りに回転する。この回転は、公転という。
【0033】
以上の遊星歯車列40の自転、回転を整理すると以下の通りである。
太陽歯車41:歯車筐体47に対する相対的な回転をするが、自転はしない
第1遊星歯車43:
自転;太陽歯車41との噛み合いによる
公転;歯車筐体47の回転による
第2遊星歯車45:
自転;第1遊星歯車43との噛み合いによる
公転;歯車筐体47の回転による
【0034】
支持構造50は、太陽歯車41を貫通して設けられ、歯車筐体47に固定される主軸51と、間隔を空けた位置で主軸51を回転可能に支持する一対の第1支持フレーム53A,53Bと、を備える。また、支持構造50は、第1支持フレーム53A,53Bの幅方向WDの外側において、主軸51を2点で支持する第2支持フレーム55A,55Bを備え、この第2支持フレーム55A,55Bは、その下端部において搬送部3を介して床面に支持される。
【0035】
主軸51は、遊星歯車列40が設けられる側の一端側において図示を省略する回転電機に接続されることで回転する。この回転は主軸51にとって自転である。この回転電機の回転動作により主軸51が回転し、さらに主軸51に固定される歯車筐体47が主軸51を中心にして回転(自転)する。なお、太陽歯車41は第2支持フレーム55Aには回り止めされているものの主軸51とは機械的な接続がなされていないのに加えて、主軸51は歯車筐体47に固定されているので、太陽歯車41は主軸51の回転に伴って歯車筐体47に対して相対的に回転する。
【0036】
第1支持フレーム53Aと第1支持フレーム53Bは、両者の間には2台の慣らし要素20が支持されている。慣らし要素20は、前述したように、主軸51の回転角度でいうならば180°だけ位相がずれた位置に配置される。一対の慣らし要素20は、それぞれの一方の支持軸25Aが第1支持フレーム53Aおよび歯車筐体47を貫通して、第2遊星歯車45A,45Bに固定、支持される。また、一対の慣らし要素20は、それぞれの他方の支持軸25Bが第1支持フレーム53Bを貫通し、その内部で回転可能に支持される。したがって、慣らし要素20は、第2遊星歯車45A,45Bの回転に伴った動作をする。
【0037】
[慣らし要素20の動作:
図6,
図7,
図8,
図9]
次に、
図6~
図9を参照して、慣らし要素20の動作について説明する。
図6は、一例として、慣らし要素20が鉛直方向Vに沿った初期状態(STEP1)から慣らし要素20の動作が始まり、初期状態と同様に慣らし要素20が鉛直方向Vに沿うまで180°だけ回転して1周期の周回動作を終える(STEP5)。
図6は、周回動作を45°の単位に区分して、STEP1、STEP2、STEP3、STEP4およびSTEP5として示してある。
【0038】
ここで、太陽歯車41、第1遊星歯車43(43A,43B)および第2遊星歯車45(45A,45B)の歯数をそれぞれZ41、Z43およびZ45とすると、以下に示すようにこれらの3種類の歯車は歯数が等しく作製されている。したがって、太陽歯車41が1回転すれば、第1遊星歯車43および第2遊星歯車45も1回転するが、その回転の向きは以下の通りであり、太陽歯車41と第2遊星歯車45は同じ向きに回転する。第1遊星歯車43は、第2遊星歯車45が太陽歯車41と同じ向きに回転させるために、太陽歯車41と第1遊星歯車43の間に配置される。ただし、前述したように、太陽歯車41は、自転することはないが、歯車筐体47に対する相対的な回転をする。また、第1遊星歯車43および第2遊星歯車45は、歯車筐体47に対して自転をするとともに、太陽歯車41の周囲を円弧状の軌跡に従って回転(公転)をする。なお、ここでは一例としてZ41=Z43=Z45としたが、Z41=Z45の条件を満たしていれば本実施形態の慣らし動作を実現できるので、Z43は任意である。
【0039】
歯数の関係:Z41=Z43=Z45
回転の向き(太陽歯車41が反時計回りに1回転したとする):
第1遊星歯車43(43A,43B);時計回りに1回転
第2遊星歯車45(45A,45B);半時計回りに1回転
【0040】
以上の、太陽歯車41、第1遊星歯車43および第2遊星歯車45の回転(自転、公転)の関係を前提にして、慣らし要素20を伴う遊星歯車列40の動作を
図7~
図9を参照しながら説明する。
図7は、遊星歯車列40および慣らし要素20の慣らしピン21の双方が鉛直方向Vに沿っている初期状態(STEP1)から動作が始まり、遊星歯車列40の歯車筐体47が45°だけ回転した状態(STEP2)を示している。STEP1からSTEP2に至る過程で、歯車筐体47が時計回りに45°だけ回転すると、太陽歯車41は歯車筐体47に対して相対的に反時計回りに45°だけ回転することになる。第1遊星歯車43および第2遊星歯車45は歯車筐体47に回転可能に支持されているために、太陽歯車41の当該相対的な回転に伴って、第1遊星歯車43は歯車筐体47に対して時計回りに45度だけ回転(自転)し、第2遊星歯車45は歯車筐体47に対して反時計回りに45度だけ回転(自転)する。つまり、第2遊星歯車45は歯車筐体47の時計回りの回転とは逆向きの反時計回りに回転することにより、慣らしピン21の姿勢は初期状態を維持して鉛直方向Vに沿ったままである。
【0041】
図8は、さらに遊星歯車列40の動作が進み、初期状態から歯車筐体47が90°だけ回転した状態(STEP3)と初期状態から歯車筐体47が135°だけ回転した状態(STEP4)を示している。また、
図9はさらに遊星歯車列40の動作が進み、初期状態から歯車筐体47が180°だけ回転した状態(STEP5)を示している。なお、
図9には、STEP4も併記している。
以上の遊星歯車列40の動作の進展においても、歯車筐体47が時計回りに所定角度θだけ回転すると、太陽歯車41は歯車筐体47に対して相対的に反時計回りに所定角度θだけ回転する。第1遊星歯車43および第2遊星歯車45は歯車筐体47に回転可能に支持されているために、太陽歯車41の当該相対的な回転に伴って、第1遊星歯車43は歯車筐体47に対して時計回りに所定角度θだけ回転(自転)し、第2遊星歯車45は歯車筐体47に対して反時計回りに所定角度θだけ回転(自転)する。こうして、第2遊星歯車45は歯車筐体47の時計回りの回転とは逆向きの反時計回りに回転することにより、慣らしピン21の姿勢は初期状態から1周期の周回動作を終えるまで鉛直方向Vに沿ったままである。
【0042】
ここで、STEP1からSTEP3までは慣らし要素20Aがバラ物野菜の慣らしを担うが、それが終わりSTEP3からSTEP5までは慣らし要素20Bがバラ物野菜の慣らしを担う。慣らし要素20Bによるバラ物野菜の慣らしを終えると、今度は慣らし要素20Aによるバラ物野菜の慣らしが始まる。以後は、慣らし要素20B、慣らし要素20A…というように、慣らし要素20Aと慣らし要素20Bによる慣らしが間隔を空けることなく交互に行われる。
このように、慣らし機構5は、一対の慣らし要素20(20A,20B)が主軸51の回転角でいうと180°だけ位相がずれて設けられているために、慣らし要素20Aと慣らし要素20Bとで、交互にバラ物野菜の慣らしを担うことができる。
【0043】
[効果]
処理装置1が奏する効果について説明する。
処理装置1は、慣らし部5が慣らし動作を行う過程において、慣らしピン21が同じ姿勢を維持することができる。そして、この姿勢を選択することにより、処理装置1は、例えば長尺な刺身のつまを慣らしても、慣らしピン21に絡みつくことがない。したがって、処理装置1によれば、袋詰め野菜の生産効率の低下を招くことなく、かつ、それぞれの袋詰め野菜における計量の精度を確保できる。
【0044】
また慣らし機構5は、一対の慣らし要素20A,20Bを備え、慣らし要素20Aと慣らし要素20Bとで、交互にバラ物野菜の慣らしを担うことができる。したがって、慣らし機構5によれば、慣らしピン21に絡みつかせることなく、例えば長尺な刺身のつまを継続的に慣らすことができる。
【0045】
以上説明した処理装置1は、遊星歯車列40を採用する例を説明したが、慣らしピン21の姿勢を維持することができるのであれば、歯車以外の動力伝達手段を用いることができる。つまり、動力伝達手段としての例えばチェーン、ベルト類を歯車の歯の代替として用いることができ、特にタイミングチェーン、タイミングベルトを用いることが好ましい。この場合、太陽歯車41に対応する太陽タイミングプーリを設け、第2遊星歯車45に対応して遊星タイミングプーリを設ける。これらタイミングプーリが遊星回転体列を構成し、それぞれが太陽回転体、第1遊星回転体、第2遊星回転体を構成する。また、タイミングプーリ同士は直に噛み合うことはないものの、本発明においてはタイミングチェーン、タイミングベルトを介して噛み合うと位置づけられる。
【0046】
また、処理装置1においては、鉛直方向Vに沿って慣らしピン21の姿勢が維持される好ましい例を説明したが、長尺なバラ物野菜が絡みつくのを抑えながら慣らすことができるのであれば、鉛直方向Vに対して傾く他の姿勢を採用できる。この姿勢は、慣らしの対象物の種類、搬送経路CRの傾斜角度などの条件に応じて設定することができる。このことを考慮すると、第2遊星歯車45に対して慣らし要素20を固定する角度を変更できる角度変更機構を備えることが好ましい。
【0047】
さらに、以上の説明においては長尺なバラ物野菜としての刺身のつまを例にしたが、本発明の処理装置の処理対象は刺身のつまに限ることなく、短尺なバラ物野菜を対象として慣らしを行うことができるし、バラ物野菜以外の対象物を慣らすことができる。
【符号の説明】
【0048】
1 処理装置
3 搬送部
5 慣らし機構(慣らし装置)
11 チェーンベルト
12 スラット
13 上部スプロケット
15 下部スプロケット
17 係止ピン
20,20A,20B 慣らし要素
21 慣らしピン
21E 後端
21T 先端
23 支持フレーム
23A 基板
23B 前板
23C 支持体
25A 支持軸
25A,25B 支持軸
25B 支持軸
30 移動機構
40 遊星歯車列
41 太陽歯車
42,46 軸受
43,43A,43B 第1遊星歯車
C43,C43A,C43B 回転軸
45,45A,45B 第2遊星歯車
C45,C45A,C45B 回転軸
47 歯車筐体
50 支持構造
51 主軸
53A,53B 第1支持フレーム
55A,55B 第2支持フレーム
CR 搬送経路
IR 復路
OR 往路
TP 搬送面
【要約】
【課題】刺身のつまといった長尺なバラ物野菜であっても、慣らしピンに絡みつくのを抑えながら慣らすことができる装置を提供すること。
【解決手段】本発明の慣らし装置5は、堆積状態で搬送されるバラ物野菜の中に挿入される複数の慣らしピン21を備える慣らし要素20と、前記慣らしピン21の姿勢が維持されながら、かつ、円弧状の移動軌跡に沿って慣らし要素20を周回移動させる移動機構30と、を備える。移動機構30は、自転が拘束される太陽回転体41と、太陽回転体41と噛み合いながら太陽回転体41の周囲を公転しながら自転する第1遊星回転体43と、第1遊星回転体43のそれぞれと噛み合いながら太陽回転体41の周囲を公転しながら自転する第2遊星回転体45と、を有する遊星回転体列40を備え、慣らし要素20は、第2遊星回転体45に固定される。
【選択図】
図6