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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/53 20060101AFI20230413BHJP
   F16K 31/528 20060101ALI20230413BHJP
   F16H 25/06 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
F16K31/53
F16K31/528
F16H25/06 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022101986
(22)【出願日】2022-06-24
【審査請求日】2022-12-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
(72)【発明者】
【氏名】丸山 智弘
(72)【発明者】
【氏名】川俣 達
(72)【発明者】
【氏名】廣野 幸治
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-122425(JP,A)
【文献】実開昭60-149576(JP,U)
【文献】実公昭61-16460(JP,Y2)
【文献】中国特許出願公開第112682541(CN,A)
【文献】特許第7203178(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/44-31/62
F16H 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ装置であって、
第1中心軸まわりに回転する第1弁体と、前記第1中心軸と平行な第2中心軸まわりに回転する第2弁体と、前記第1弁体と前記第2弁体とを連動させて流路を切り替える切替機構と、を備え、
前記切替機構は、アクチュエータの駆動力によって前記第1弁体と連動して回転する駆動側ギアと、前記駆動側ギアの回転が伝達されて前記第2弁体と連動して回転する従動側ギアと、を有し、
前記従動側ギアは、外周の一部に形成される従動歯部と、前記従動歯部よりも径方向の外側へ向けて延出するリンクと、前記リンクから軸方向に突出するピンと、を有し、
前記駆動側ギアは、前記従動歯部と噛み合う駆動歯部と、前記駆動歯部が前記従動歯部と噛み合った状態で前記ピンが外周から径方向に挿入される挿入溝と、前記挿入溝と連続して前記駆動側ギアの回転軸を中心とする円弧状に形成され、前記駆動歯部と前記従動歯部との噛み合いが解除された状態で前記ピンが挿入され、前記ピンの径方向への移動を規制すると共に周方向への移動を許容するカム溝と、を有する、
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ装置であって、
前記駆動側ギアは、前記アクチュエータの駆動力によって前記第1弁体と一体に回転する主駆動ギアと噛み合うと共に、前記第2弁体と一体に回転する前記従動側ギアと噛み合って前記主駆動ギアと前記従動側ギアとを連動させる、
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のバルブ装置であって、
前記駆動側ギアは、前記挿入溝の縁に形成され、前記挿入溝を通過する前記ピンに当接して前記従動側ギアを前記駆動側ギアの回転によって駆動する当接部を有する、
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のバルブ装置であって、
前記駆動側ギアと前記従動側ギアと前記主駆動ギアとは、ピッチ円直径が同じである、
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項5】
請求項2に記載のバルブ装置であって、
前記駆動側ギアの回転軸と前記従動側ギアの回転軸と前記主駆動ギアの回転軸とが同一の直線上に配置される、
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のバルブ装置であって、
前記駆動側ギアは部分歯車であり、前記駆動歯部が設けられていない領域には、前記第1中心軸方向に窪む凹部と前記凹部の底部が形成する段差面とが設けられ、前記段差面には、前記挿入溝と前記カム溝とが形成され、
前記従動側ギアは部分歯車であり、前記リンクは、前記従動歯部が設けられていない外周の入り部から径方向の外側に向けて延出し、
前記駆動歯部が前記従動歯部と噛み合った状態で前記従動側ギアの前記リンクが前記凹部に侵入し前記ピンが前記挿入溝に挿入される、
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項7】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のバルブ装置であって、
前記駆動側ギアは部分歯車であり、前記駆動歯部が設けられていない領域には、前記第1中心軸方向に窪む凹部と前記凹部の底部が形成する段差面とが設けられ、前記段差面には、前記挿入溝と前記カム溝とが形成され、
前記従動側ギアは部分歯車であり、前記リンクは、前記従動歯部が設けられていない外周の入り部から径方向の外側に向けて延出し、
前記駆動歯部が前記従動歯部と噛み合った状態で前記従動側ギアの前記リンクが前記凹部に侵入し前記ピンが前記挿入溝に挿入され、
前記駆動側ギアは、前記段差面を境とした前記第1中心軸方向の一方側に設けられるとともに前記駆動歯部よりも円周方向の広い範囲に形成された広域歯部を有し、前記広域歯部は、前記主駆動ギアと噛み合う、
ことを特徴とするバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、滑り弁が開示されている。滑り弁は、弁体を構成する断面調節部材及び駆動断面調節部材を備える。断面調節部材及び駆動断面調節部材は、歯車で駆動される。断面調節部材及び駆動断面調節部材は、互いに連動する連動動作と、断面調節部材のみが単独で回転する単独動作とで作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2010-507762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この滑り弁において、連動動作では、歯車と断面調節部材の歯部及び駆動断面調節部材の歯部とが噛み合っているが、単独動作では、歯車と駆動断面調節部材の歯部とは噛み合っていない。そのため、この単独動作において、流体からの影響で駆動断面調節部材の回転角度が変動するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、単独動作のときに弁体の回転角度の変動を抑制可能なバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、バルブ装置であって、第1中心軸まわりに回転する第1弁体と、前記第1中心軸と平行な第2中心軸まわりに回転する第2弁体と、前記第1弁体と前記第2弁体とを連動させて流路を切り替える切替機構と、を備え、前記切替機構は、アクチュエータの駆動力によって前記第1弁体と連動して回転する駆動側ギアと、前記駆動側ギアの回転が伝達されて前記第2弁体と連動して回転する従動側ギアと、を有し、前記従動側ギアは、外周の一部に形成される従動歯部と、前記従動歯部よりも径方向の外側へ向けて延出するリンクと、前記リンクから軸方向に突出するピンと、を有し、前記駆動側ギアは、前記従動歯部と噛み合う駆動歯部と、前記駆動歯部が前記従動歯部と噛み合った状態で前記ピンが外周から径方向に挿入される挿入溝と、前記挿入溝と連続して前記駆動側ギアの回転軸を中心とする円弧状に形成され、前記駆動歯部と前記従動歯部との噛み合いが解除された状態で前記ピンが挿入され、前記ピンの径方向への移動を規制すると共に周方向への移動を許容するカム溝と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
上記態様では、第2弁体と連動して回転する従動側ギアは、ピンを有するリンクを備えている。また、駆動側ギアは、駆動歯部が従動側ギアの従動歯部と噛み合った状態でピンが挿入される挿入溝と、挿入溝と連続したカム溝とを備えている。カム溝は、駆動歯部と従動歯部との噛み合いが解除された状態で、ピンの径方向への移動を規制すると共に周方向への移動を許容する。
【0008】
そのため、駆動歯部と従動歯部との噛み合いが解除された状態において、従動側ギアは、リンクに設けられたピンがカム溝によって、駆動側ギアの径方向への移動が規制されるので、予期せぬ回転が抑制される。したがって、単独動作のときに弁体の回転角度の変動を抑制可能なバルブ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係るバルブ装置の斜視図である。
図2図2は、バルブ装置の分解斜視図である。
図3図3は、バルブ装置の平面図である。
図4図4は、バルブ装置の伝達機構の各歯車を示す斜視図である。
図5図5は、連動動作から単独動作へ移行する際の伝達機構の動作について説明する図である。
図6図6は、図5に続く伝達機構の動作について説明する図である。
図7図7は、図6に続く伝達機構の動作について説明する図である。
図8図8は、バルブ装置が第1モードに切り換えられたときの伝達機構の動作について説明する図である。
図9図9は、第1モードに切り換えられたバルブ装置の断面図である。
図10図10は、バルブ装置が第2モードに切り換えられたときの伝達機構の動作について説明する図である。
図11図11は、第2モードに切り換えられたバルブ装置の断面図である。
図12図12は、バルブ装置が第3モードに切り換えられたときの伝達機構の動作について説明する図である。
図13図13は、第3モードに切り換えられたバルブ装置の断面図である。
図14図14は、第一変形例に係るバルブ装置の伝達機構の各歯車を示す斜視図である。
図15図15は、第一変形例に係るバルブ装置の伝達機構の動作について説明する図である。
図16図16は、図15に続く伝達機構の動作について説明する図である。
図17図17は、図16に続く伝達機構の動作について説明する図である。
図18図18は、図17に続く伝達機構の動作について説明する図である。
図19図19は、第二変形例に係るバルブ装置の伝達機構の動作について説明する図である。
図20図20は、図19に続く伝達機構の動作について説明する図である。
図21図21は、図20に続く伝達機構の動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1から図13を参照して、本発明の実施形態に係るバルブ装置101について説明する。
【0011】
バルブ装置101は、例えば、車両に搭載される温度制御システムで用いられる。温度制御システムは、例えば、車室内の空調を行うと共に、循環する冷却媒体の流れを切り替えることで駆動系発熱体としての駆動用モータや蓄電池の温度を調整する。
【0012】
まず、図1から図3を参照して、バルブ装置101の構成について説明する。図1は、バルブ装置101の斜視図である。図2は、バルブ装置101の分解斜視図である。図3は、バルブ装置101の平面図である。
【0013】
図2に示すように、バルブ装置101は、ハウジング110と、一対の弁体120と、シール部材130と、伝達機構140と、カバー部材150と、アクチュエータ160と、を有する。バルブ装置101は、一対の弁体120と、弁体120を回転可能に収容するハウジング110と、を備える。バルブ装置101は、流路を切り替えるロータリ弁であり、バルブ装置101は、流路がそれぞれ異なる第1モードと第2モードと第3モードとに切り替える。
【0014】
図1に示すように、ハウジング110は、角部が曲面状に形成される略直方体形状の箱である。ハウジング110は、一対の弁体120を収容する。図2に示すように、ハウジング110は、一対の弁体収容部111と、複数(ここでは6つ)の接続孔112と、連通孔113と、を有する。ハウジング110は、第1ハウジング110Aと、第2ハウジング110Bと、に分割されて形成される。
【0015】
第1ハウジング110Aは、一対の弁体収容部111と、6つの接続孔112と、連通孔113と、を有する。第1ハウジング110Aは、弁体収容部111に弁体120を収容すると共にシール部材130を挿入可能なように、天面が開口して形成される。
【0016】
第2ハウジング110Bは、第1ハウジング110Aの開口部を閉塞する蓋である。第2ハウジング110Bは、第1ハウジング110A内に形成される弁体収容部111の開口部を閉塞する。第2ハウジング110Bは、第1ハウジング110Aとの間でシール部材130を押圧する。第2ハウジング110Bは、複数のボルト110Cが締結されることによって第1ハウジング110Aに固定される。第2ハウジング110Bにおける第1ハウジング110Aの反対側には、伝達機構140を収容する歯車収容室115が形成される。
【0017】
弁体収容部111は、弁体120が回転可能に配置される円筒状の空間である。弁体収容部111は、一方の弁体120Aを収容する弁体収容部111Aと、他方の弁体120Bを収容する弁体収容部111Bと、を有する。各々の弁体収容部111には、3つの接続孔112と連通孔113とが周方向に十字状になるように配置される。
【0018】
接続孔112は、弁体収容部111とハウジング110の外部とを連通させる。接続孔112は、第1ハウジング110Aから外部に向けて突出する円筒状の管部材の内周に形成される。接続孔112は、弁体収容部111の内周面に開口する。接続孔112は、弁体収容部111における弁体120の周方向に並べて配置される。接続孔112は、一対の弁体120のいずれかにおける後述する一方側通路121又は他方側通路122と連通する(図9参照)。
【0019】
図3に示すように、接続孔112は、一方の弁体120Aを挟むように設けられる第1接続孔としての接続孔112A及び第2接続孔としての接続孔112Bを有する。接続孔112は、他方の弁体120Bを挟むように設けられる第3接続孔としての接続孔112C及び第4接続孔としての接続孔112Dを有する。接続孔112は、一方の弁体120Aと他方の弁体120Bとを挟むように設けられる第5接続孔としての接続孔112E及び第6接続孔としての接続孔112Fを有する。
【0020】
弁体収容部111Aには、接続孔112Aと接続孔112Eと接続孔112Bと連通孔113とが、周方向に90度間隔で順に設けられる。即ち、接続孔112Aと接続孔112Bとは同じ直線上に設けられ、接続孔112Eと連通孔113とは同じ直線上に設けられ、これらの直線は互いに直角に交差する。弁体収容部111Bには、接続孔112Dと接続孔112Fと接続孔112Cと連通孔113とが、周方向に90度間隔で順に設けられる。即ち、接続孔112Cと接続孔112Dとは同じ直線上に設けられ、接続孔112Fと連通孔113とは同じ直線上に設けられ、これらの直線は互いに直角に交差する。
【0021】
一方の弁体収容部111Aと他方の弁体収容部111Bに各々連通する隣り合う一対の接続孔112A,112Cは、例えば、第1冷却水回路50によって連結される。一方の弁体収容部111Aに連通する一対の接続孔112B,112Eは、例えば、第3冷却水回路70によって連結される。他方の弁体収容部111Bに連通する一対の接続孔112D,112Fは、例えば、第2冷却水回路60によって連結される。
【0022】
図2に示すように、連通孔113は、各々の弁体収容部111の間を連通させる。具体的には、連通孔113は、一方の弁体収容部111Aと他方の弁体収容部111Bとの最も近い位置の壁部が切り欠かれることで連通する通路である。連通孔113は、接続孔112Eと接続孔112Fとを結ぶ直線上に設けられる。連通孔113は、弁体収容部111の内周面に開口する。
【0023】
弁体120は、回転中心軸まわりに回転可能に一対設けられる。弁体120は、略円柱状に形成される。弁体120は、一方の弁体収容部111Aに収容される弁体120Aと、他方の弁体収容部111Bに収容される弁体120Bと、を有する。一対の弁体120は、各々の回転中心軸が互いに平行になるように並べて配置される。
【0024】
弁体120Aは、第2弁体を構成し、弁体120Bは、第1弁体を構成する。弁体120Bの回転中心軸を構成する第1中心軸C1と、弁体120Aの回転中心を構成する第2中心軸C2とは、互いに平行になるように並べて配置される。
【0025】
例えば図9に示すように、弁体120には、回転中心を挟んで一方側通路121と他方側通路122とが内部に画成される(図9参照)。これらの一方側通路121と他方側通路122とが、弁内通路に該当する。これに限らず、弁体120には、一対の弁内通路に限らず、少なくとも一つの弁内通路が内部に画成されればよい。
【0026】
一方側通路121の一対の開口部は、弁体120の外周に周方向に90度間隔で設けられる。また、他方側通路122の一対の開口部は、弁体120の外周に周方向に90度間隔で設けられる。即ち、一方側通路121の一対の開口部と他方側通路122の一対の開口部とは、弁体120の外周に周方向に90度間隔で並べて配置される。
【0027】
各々の弁体120内の一方側通路121及び他方側通路122と連通孔113とによって、ハウジング110内には、接続孔112を2つずつ連通させる3つの流路が形成される。
【0028】
このように、バルブ装置101では、回転中心周りに回転可能な一対の弁体120と、一対の弁体120を収容するハウジング110と、が設けられ、弁体120が収容される各々の弁体収容部111が連通孔113を介して連通している。
【0029】
そのため、一対の弁体120を各々回転させることで、弁体120内に画成される弁内通路(一方側通路121及び他方側通路122)を通じて複数の接続孔112どうしを直接接続する。又は一対の弁体120を各々回転させることで、弁内通路(一方側通路121及び他方側通路122)及び連通孔113を介して複数の接続孔112を接続する。これにより、多くのモードの切り換えが可能である。したがって、簡素な構成で多くのモードの切り換えが可能なバルブ装置101を提供することができる。
【0030】
図2に示すように、一対の弁体120は、単一のアクチュエータ160によって共に回転駆動される。これにより、簡素な構成で弁体120を回転駆動できると共に、別々のアクチュエータで駆動する場合の協調制御が不要になる。弁体120Aは、アクチュエータ160によって第1位置と第2位置と第3位置とに切り換えられる。弁体120Bは、アクチュエータ160によって第1位置と第2位置とに切り換えられる。弁体120の位置の切り換えについては、図8から図13を参照しながら、後で詳細に説明する。
【0031】
シール部材130は、第1シール部材131と、一対の第2シール部材132と、を有する。第1シール部材131は、楕円形に形成され一対の弁体収容部111の外周をシールする。第2シール部材132は、円形に形成され各々の弁体120の回転軸の外周をシールする。
【0032】
伝達機構140は、駆動歯車141と、第1従動歯車142と、第2従動歯車143と、を有する。伝達機構140は、各歯車141,142,143を駆動して弁体120A,120Bを連動させて流路を切り替える切替機構を構成する。
【0033】
駆動歯車141は、アクチュエータ160の出力軸に連結される。駆動歯車141は、アクチュエータ160の駆動力によって回転する。駆動歯車141は、主駆動ギアを構成する。駆動歯車141は、他方の弁体120Bの回転軸に連結される。駆動歯車141は、第1従動歯車142と噛み合っている。
【0034】
第1従動歯車142は、駆動歯車141が回転することによって回転する。第1従動歯車142は、第2従動歯車143と噛み合っている。第1従動歯車142は、第2従動歯車143を駆動する駆動側ギアを構成する。
【0035】
第2従動歯車143は、第1従動歯車142が回転することによって回転する。第2従動歯車143は、第1従動歯車142によって駆動される従動側ギアを構成する。第2従動歯車143は、一方の弁体120Aの回転軸に連結される。
【0036】
伝達機構140は、バルブ装置101を第1モードと第2モードと第3モードとに切り換え可能な構成を例示するものである。これに代えて、バルブ装置101を第1モードと第2モードと第3モードとに加えて第4モードにも切り換え可能な伝達機構140を設けてもよい。この場合の伝達機構140の動作については、図15から図18を参照しながら、後で詳細に説明する。
【0037】
カバー部材150は、第2ハウジング110Bの歯車収容室115を閉塞する蓋である。カバー部材150は、複数のボルト150Aが締結されることによって第2ハウジング110Bに固定される。
【0038】
アクチュエータ160は、カバー部材150における第2ハウジング110Bの反対側に設けられる。アクチュエータ160は、複数のボルト160Aが締結されることによってカバー部材150に固定される。アクチュエータ160の出力軸は、カバー部材150を挿通して駆動歯車141に連結される。アクチュエータ160は、コントローラからの指令信号によって回転して伝達機構140のモードを切り換え、バルブ装置101を各モードに切り換える。
【0039】
<伝達機構>
図4から図7を参照して、伝達機構140を構成する駆動歯車141と、第1従動歯車142と、第2従動歯車143とについて説明する。
【0040】
図4は、バルブ装置101の伝達機構140の各歯車141,142,143を示す斜視図である。図5は、連動動作から単独動作へ移行する際の伝達機構140の動作について説明する図である。図6は、図5に続く伝達機構140の動作について説明する図である。図7は、図6に続く伝達機構140の動作について説明する図である。
【0041】
[駆動歯車]
図4に示すように、駆動歯車141の外周面には、補助歯部を構成する歯141aが全周にわたって形成されている。駆動歯車141の一面の中心部からは、軸部141bが延出している。軸部141bの先端部には、アクチュエータ160(図2参照)の出力軸に連結される歯141cが形成されている。
【0042】
駆動歯車141は、アクチュエータ160の駆動力によって他方の弁体120Bと一体に回転する主駆動ギアを構成する(図2参照)。
【0043】
[第1従動歯車]
第1従動歯車142は、部分歯車である。部分歯車とは、歯車の周方向において歯(上部は142a-1)が形成された部分と歯(上部歯142a-1)が形成されない部分とがある歯車をいう。
【0044】
第1従動歯車142の外周面には、歯142aが形成されている。歯142aは、第1従動歯車142の軸方向において、アクチュエータ160に近い側を構成する上部歯142a-1と、アクチュエータ160から離れた側を構成する下部歯142a-2とを有する。
【0045】
上部歯142a-1は、第1従動歯車142の外周面の一部のみに形成される。
【0046】
下部歯142a-2は、段差面142cを境とした第1中心軸C1方向(図2参照)の一方側に設けられる。下部歯142a-2は、駆動歯部である上部歯142a-1よりも円周方向の広い範囲に形成された広域歯部を構成する。具体的に説明すると、下部歯142a-2は、第1従動歯車142の外周面の全周にわたって形成される。下部歯142a-2は、主駆動ギアである駆動歯車141の歯141aと噛み合う。
【0047】
下部歯142a-2が形成された領域において、上部歯142a-1は、下部歯142a-2の延長上に配置され、上部歯142a-1と下部歯142a-2とは、一体的に形成される。
【0048】
上部歯142a-1は、第2従動歯車143の歯143aと噛み合う駆動歯部を構成する。第1従動歯車142は、一方の弁体120Aと一体に回転する第2従動歯車143と噛み合って、駆動歯車141と第2従動歯車143とを連動させる。
【0049】
第1従動歯車142の一面の周縁部には、第1中心軸C1方向(図2参照)に窪む円弧状の凹部142bが形成されている。凹部142bは、上部歯142a-1を備えない領域に形成される。この凹部142bの底部は、段差面142cを構成し、第1従動歯車142には、段差面142cが形成される。
【0050】
段差面142cには、径方向に延在する挿入溝142dが形成されている。挿入溝142dは、第1従動歯車142の外周面142eに達し、挿入溝142dの端部は外周面142eに開口する。外周面142eは、上部歯142a-1を備えない曲面状のすべり面を構成する。段差面142cには、挿入溝142dと連続すると共に第1従動歯車142の回転軸を中心とする円弧状のカム溝142fが形成されている。
【0051】
[第2従動歯車]
第2従動歯車143は、部分歯車である。部分歯車とは、歯車の周方向において歯143aが形成された部分と歯143aが形成されない部分とがある歯車をいう。
【0052】
第2従動歯車143は、外周面の一部のみに形成される従動歯部である歯143aを有する。第2従動歯車143は、歯143aが第1従動歯車142の上部歯142a-1と噛み合っている間は、第1従動歯車142と連動して回転する。第2従動歯車143は、歯143aが第1従動歯車142の上部歯142a-1から離れている間は回転しない。
【0053】
第1従動歯車142の上部歯142a-1と第2従動歯車143の歯143aとを噛み合わせ、駆動歯車141と第2従動歯車143とを連動させることで、弁体120Aと弁体120Bとが連動する連動動作が実現される。また、第1従動歯車142の上部歯142a-1と第2従動歯車143の歯143aとの噛み合いを解除して第2従動歯車143の回転を停止させることで、弁体120Bが単独で回転する単独動作が実現される。
【0054】
第2従動歯車143は、歯143aが設けられない外周の一部から径方向の外側へ向けて板状のリンク143bが延出する。リンク143bは、歯143aが設けられていない外周の入り部143eから延出する。
【0055】
入り部143eとは、端に設けられた歯143aに近接した位置を示し、リンク143bは、各歯143aの並び方向に配置される。
【0056】
リンク143bの先端部には、当該第2従動歯車143の軸方向に突出するピン143cが設けられている。ピン143cは、円柱状である。また、リンク143bには、外周面142eと合致する曲面状の摺接面143dを有する。
【0057】
図5に示すように、第2従動歯車143のリンク143bは、第1従動歯車142の上部歯142a-1が第2従動歯車143の歯143aと噛み合って回転する際に、第1従動歯車142の凹部142bに侵入する。このとき、第2従動歯車143のピン143cは、第1従動歯車142の外周から挿入溝142dの径方向に挿入される。その後、第1従動歯車142の上部歯142a-1は、第2従動歯車143の歯143aとの噛み合いが解除される。
【0058】
図5から図6に示すように、ピン143cが挿入溝142dを通過する際には、第1従動歯車142の回転に伴って、ピン143cが挿入溝142dの縁に形成された当接部142gに当接する。これにより、ピン143cは、第1従動歯車142の回転方向へ移動される。このため、第2従動歯車143は、第1従動歯車142の上部歯142a-1と第2従動歯車143の歯143aと噛み合いが解除された状態であっても、第1従動歯車142の回転によって回転駆動される。
【0059】
図6から図7に示すように、第2従動歯車143は、ピン143cが当接部142gに押されて回転するので、ピン143cがカム溝142fに挿入される。図7に示すように、ピン143cがカム溝142fに挿入された状態において、当接部142gとピン143cとの当接による第2従動歯車143の駆動は終了する。
【0060】
当接部142gとピン143cによる第2従動歯車143の駆動が終了した後において、ピン143cは、第1従動歯車142の回転によってカム溝142f内に配置される。カム溝142f内に配置されたピン143cは、カム溝142fの縁によって第1従動歯車142の径方向への移動が規制される共に、第1従動歯車142の周方向への移動が許容される。
【0061】
これにより、ピン143cとカム溝142fとは、第1従動歯車142の周方向への相対移動が許容されるので、第1従動歯車142は、カム溝142f内にピン143cを保持した状態で回転可能である。
【0062】
当接部142gによる第2従動歯車143の駆動が終了した状態で、第2従動歯車143の歯143aの端の歯143a-eは、第1従動歯車142が反時計回りに回転された際に、第1従動歯車142の上部歯142a-1と噛み合い可能な位置に維持される。
【0063】
図4に示すように、各歯車141,142,143に沿った仮想直線KLを想定した際に、駆動歯車141の回転軸と、第1従動歯車142の回転軸と、第2従動歯車143の回転軸とは、仮想直線KL上に配置される。
【0064】
なお、本実施形態では、駆動歯車141の回転軸と第1従動歯車142の回転軸と第2従動歯車143の回転軸とが仮想直線KL上に配置される場合について説明するが、本実施形態は、この構成に限定されるものではない。駆動歯車141の回転軸と第1従動歯車142の回転軸と第2従動歯車143の回転軸とは、仮想直線KL上に配置されなくてもよい。
【0065】
また、駆動歯車141と第1従動歯車142と第2従動歯車143とは、各歯車141,142,143の歯のピッチ点を結んだ円の直径を示すピッチ円直径が同じである。これにより、各歯車141,142,143間でのギア比を等しくすることができ、各歯車141,142,143に加わるトルクを考慮した設計が容易となる。
【0066】
<バルブ装置の各モード>
続いて、図8から図13を参照して、バルブ装置101の第1モード、第2モード、及び第3モードについて各々説明する。
【0067】
まず、図8及び図9を参照して、バルブ装置101の第1モードについて説明する。図8は、バルブ装置101が第1モードに切り換えられたときの伝達機構140の動作について説明する図である。図9は、第1モードに切り換えられたバルブ装置101の断面図である。
【0068】
図8に示すように、伝達機構140では、駆動歯車141の歯141aと第1従動歯車142の下部歯142a-2とが噛み合っており、第1従動歯車142の上部歯142a-1と第2従動歯車143の歯143aとが噛み合っている。
【0069】
このとき、図9に示すように、弁体120Aは、一方側通路121が接続孔112Aと接続孔112Eとを連通させ、他方側通路122が接続孔112Bと連通孔113とを連通させている。また、弁体120Bは、一方側通路121が接続孔112Cと連通孔113とを連通させ、他方側通路122が接続孔112Dと接続孔112Fとを連通させている。このとき、接続孔112Bと接続孔112Cとは、弁体120Aの他方側通路122と連通孔113と弁体120Bの一方側通路121とを介して連通している。このときの弁体120Aと弁体120Bとの位置は、共に第1位置である。
【0070】
これにより、第1冷却水回路50と第3冷却水回路70とが連結され、第2冷却水回路60は独立した状態になる(図3参照)。
【0071】
次に、図10及び図11を参照して、バルブ装置101の第2モードについて説明する。図10は、バルブ装置101が第2モードに切り換えられたときの伝達機構140の動作について説明する図である。図11は、第2モードに切り換えられたバルブ装置101の断面図である。
【0072】
図8及び図9に示す状態からアクチュエータ160(図1参照)を作動させ、駆動歯車141を反時計回りに90度回転させると、第1従動歯車142が時計回りに90度回転すると共に第2従動歯車143が反時計回りに90度回転して、図10に示す状態になる。このとき、駆動歯車141と共に弁体120Bも反時計回りに90度回転し、第2従動歯車143と共に弁体120Aも反時計回りに90度回転して、図11に示す状態になる。
【0073】
図10に示すように、伝達機構140では、駆動歯車141の歯141aと第1従動歯車142の下部歯142a-2とが噛み合っているのに対して、第1従動歯車142の上部歯142a-1と第2従動歯車143の歯143aとは噛み合っていない。第1従動歯車142と第2従動歯車143とは、上部歯142a-1が形成されていない外周面142eと摺接面143dとが摺接している(図4参照)。この状態から、第1従動歯車142が更に回転しても、第2従動歯車143は回転しない。
【0074】
このとき、図11に示すように、弁体120Aは、一方側通路121が接続孔112Aと連通孔113とを連通させ、他方側通路122が接続孔112Bと接続孔112Eとを連通させている。また、弁体120Bは、一方側通路121が接続孔112Cと接続孔112Fとを連通させ、他方側通路122が接続孔112Dと連通孔113とを連通させている。このとき、接続孔112Aと接続孔112Dとは、弁体120Aの一方側通路121と連通孔113と弁体120Bの他方側通路122とを介して連通している。このときの弁体120Aと弁体120Bとの位置は、共に第2位置である。
【0075】
これにより、第1冷却水回路50と第2冷却水回路60とが連結され、第3冷却水回路70は独立した状態になる(図3参照)。
【0076】
次に、図12及び図13を参照して、バルブ装置101の第3モードについて説明する。図12は、バルブ装置101が第3モードに切り換えられたときの伝達機構140の動作について説明する図である。図13は、第3モードに切り換えられたバルブ装置101の断面図である。
【0077】
図10及び図11に示す状態からアクチュエータ160(図1参照)を作動させ、駆動歯車141を反時計回りに更に90度回転させると、第1従動歯車142が時計回りに90度回転するが第2従動歯車143は回転せず、図12に示す状態になる。このとき、駆動歯車141と共に弁体120Bも反時計回りに90度回転し、弁体120Aは回転せず、図13に示す状態になる。
【0078】
図12に示すように、伝達機構140では、駆動歯車141の歯141aと第1従動歯車142の下部歯142a-2とが噛み合っているのに対して、第1従動歯車142の上部歯142a-1と第2従動歯車143の歯143aとは噛み合っていない。第1従動歯車142と第2従動歯車143とは、上部歯142a-1が形成されていない外周面142eと摺接面143dとが摺接している(図4参照)。この状態から、第1従動歯車142が更に回転しても第2従動歯車143は回転しない。
【0079】
なお、この状態から駆動歯車141を時計回りに回転して第1従動歯車142を反時計周りに回転させると、第1従動歯車142の上部歯142a-1と第2従動歯車143の歯143aとが再び噛み合い、第2従動歯車143は時計回りに回転することができる。
【0080】
このとき、図13に示すように、弁体120Aは、一方側通路121が接続孔112Dと接続孔112Fとを連通させ、他方側通路122が接続孔112Cと連通孔113とを連通させている。また、弁体120Bは、一方側通路121が接続孔112Aと連通孔113とを連通させ、他方側通路122が接続孔112Bと接続孔112Eとを連通させている。このとき、接続孔112Aと接続孔112Cとは、弁体120Aの一方側通路121と連通孔113と弁体120Bの他方側通路122とを介して連通している。このときの弁体120Bの位置は、第3位置であり、弁体120Aの位置は、第2位置のままである。
【0081】
これにより、第1冷却水回路50と第2冷却水回路60と第3冷却水回路70とがすべてが独立した状態になる(図3参照)。
【0082】
以上のように伝達機構140が作動することで、単一のアクチュエータ160を用いた場合にも、弁体120Aを第1位置と第2位置とに切り換え、弁体120Bを第1位置と第2位置と第3位置とに切り換えることができる。これにより、バルブ装置101を第1モードと第2モードと第3モードとに切り換えることができる。
【0083】
<作用効果>
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0084】
バルブ装置101は、第1中心軸C1まわりに回転する第1弁体である弁体120Bと、第1中心軸C1と平行な第2中心軸C2まわりに回転する第2弁体である弁体120Aとを備える。バルブ装置101は、弁体120Aと弁体120Bとを連動させて流路を切り替える切替機構としての伝達機構140を備える。
【0085】
伝達機構140は、アクチュエータ160の駆動力によって弁体120Bと連動して回転する駆動側ギアである第1従動歯車142と、第1従動歯車142の回転が伝達されて弁体120Aと連動して回転する従動側ギアである第2従動歯車143とを有する。
【0086】
第2従動歯車143は、外周の一部に形成される従動歯部である歯143aと、歯143aよりも径方向の外側へ向けて延出するリンク143bと、リンク143bから軸方向に突出するピン143cとを有する。
【0087】
第1従動歯車142は、歯143aと噛み合う駆動歯部である上部歯142a-1と、上部歯142a-1が歯143aと噛み合った状態でピン143cが外周から径方向に挿入される挿入溝142dとを有する。第1従動歯車142は、挿入溝142dと連続して第1従動歯車142の回転軸を中心とする円弧状に形成されたカム溝142fを有する。カム溝142fは、上部歯142a-1と歯143aとの噛み合いが解除された状態でピン143cが挿入され、ピン143cの径方向への移動を規制すると共に周方向への移動を許容する。
【0088】
この態様によれば、弁体120Aと連動して回転する第2従動歯車143は、ピン143cを有するリンク143bを備えている。また、第1従動歯車142は、上部歯142a-1が第2従動歯車143の歯143aと噛み合った状態でピン143cが挿入される挿入溝142dと、挿入溝142dと連続したカム溝142fとを備えている。カム溝142fは、上部歯142a-1と歯143aとの噛み合いが解除された状態で、ピン143cの径方向への移動を規制すると共に周方向への移動を許容する。
【0089】
そのため、第1従動歯車142と第2従動歯車143との噛み合いが解除された状態において、第2従動歯車143は、リンク143bのピン143cが第1従動歯車142のカム溝142fによって第1従動歯車142の径方向への移動が規制される。これにより、第2従動歯車143は、予期せぬ回転が抑制される。
【0090】
したがって、例えば第2従動歯車143と連動して回転する弁体120Aが流体からの力を受け、第2従動歯車143に当該第2従動歯車143を回転させようとする力が伝達された場合であっても、第2従動歯車143の回転を抑制することができる。これにより、弁体120Aの回転角度の変動が抑制可能となる。
【0091】
また、第1従動歯車142の上部歯142a-1と第2従動歯車143の歯143aとが噛み合って第1従動歯車142と第2従動歯車143とが連動する連動動作へ移行する際に生じ得る噛み合い不良の抑制も可能となる。
【0092】
バルブ装置101において、駆動側ギアである第1従動歯車142は、アクチュエータ160の駆動力によって第1弁体である弁体120Bと一体に回転する主駆動ギアである駆動歯車141と噛み合う。第1従動歯車142は、第2弁体である弁体120Aと一体に回転する従動側ギアである第2従動歯車143と噛み合う。そして、第1従動歯車142は、駆動歯車141と第2従動歯車143とを連動させる。
【0093】
この態様によれば、弁体120Bと一体に回転する駆動歯車141と、弁体120Aと一体に回転する第2従動歯車143との間に配置された第1従動歯車142によって駆動歯車141と第2従動歯車143とを連動させることができる。
【0094】
このため、例えば、弁体120Bと一体に回転する駆動歯車141と、弁体120Aと一体に回転する第2従動歯車143とを直接噛み合わせる場合と比較して、各歯車141,143を小径化することができ、バルブ装置101の小型化を可能とする。
【0095】
バルブ装置101において、駆動側ギアである第1従動歯車142は、挿入溝142dの縁に形成された当接部142gを有する。当接部142gは、挿入溝142dを通過するピン143cに当接して従動側ギアである第2従動歯車143を第1従動歯車142の回転によって駆動する。
【0096】
この態様によれば、第1従動歯車142と第2従動歯車143との噛み合いが解除された後であっても、挿入溝142dに挿入されたピン143cを当接部142gで押すことで、第2従動歯車143を継続して回転させることができる。これにより、挿入溝142dに挿入されたピン143cをカム溝142fへ案内することができる。
【0097】
バルブ装置101において、駆動側ギアである第1従動歯車142と従動側ギアである第2従動歯車143と主駆動ギアである駆動歯車141とは、ピッチ円直径が同じである。
【0098】
この態様によれば、各歯車141,142,143間でのギア比を等しくすることができ、各歯車141,142,143に加わるトルクを考慮した設計が容易となる。
【0099】
バルブ装置101において、駆動側ギアである第1従動歯車142の回転軸と従動側ギアである第2従動歯車143の回転軸と主駆動ギアである駆動歯車141の回転軸とが同一の仮想直線KL上に配置される。
【0100】
この態様によれば、各歯車141,142,143の配置が容易となる。
【0101】
バルブ装置101において、駆動側ギアである第1従動歯車142は部分歯車である。駆動歯部である上部歯142a-1が設けられていない領域には、第1中心軸C1方向に窪む凹部142bと凹部142bの底部が形成する段差面142cとが設けられ、段差面142cには、挿入溝142dとカム溝142fとが形成される。従動側ギアである第2従動歯車143は部分歯車であり、リンク143bは、従動歯部である歯143aが設けられていない外周の入り部143eから径方向の外側に向けて延出する。駆動歯部である上部歯142a-1が従動歯部である歯143aと噛み合った状態で、従動側ギアである第2従動歯車143のリンク143bは、凹部142bに侵入し、ピン143cが挿入溝142dに挿入される。
【0102】
この態様によれば、第2従動歯車143の一面から突出するリンク143bのピン143cを、第1従動歯車142の一面に形成された挿入溝142d及びカム溝142fに挿入する場合と比較して、第2従動歯車143の軸方向の寸法を抑えることができる。
【0103】
バルブ装置101において、駆動側ギアである第1従動歯車142は部分歯車である。駆動歯部である上部歯142a-1が設けられていない領域には、第1中心軸C1方向に窪む凹部142bと凹部142bの底部が形成する段差面142cとが設けられ、段差面142cには、挿入溝142dとカム溝142fとが形成される。従動側ギアである第2従動歯車143は部分歯車であり、リンク143bは、従動歯部である歯143aが設けられていない外周の入り部143eから径方向の外側に向けて延出する。駆動歯部である上部歯142a-1が従動歯部である歯143aと噛み合った状態で、従動側ギアである第2従動歯車143のリンク143bは、凹部142bに侵入し、ピン143cが挿入溝142dに挿入される。駆動側ギアである第1従動歯車142は、段差面142cを境とした第1中心軸C1方向の一方側に設けられる下部歯142a-2を有する。下部歯142a-2は、駆動歯部である上部歯142a-1よりも円周方向の広い範囲に形成された広域歯部を構成する。広域歯部である下部歯142a-2は、主駆動ギアである駆動歯車141と噛み合う。
【0104】
この態様によれば、弁体120Bと一体に回転する駆動歯車141と、弁体120Aと一体に回転する第2従動歯車143との間に配置された第1従動歯車142によって駆動歯車141と第2従動歯車143とを連動させることができる。
【0105】
そして、このような構造であっても、第2従動歯車143の軸方向の寸法を抑えることができる。
【0106】
<伝達機構の第一変形例>
次に、図14から図18を参照して、伝達機構140の第一変形例について説明する。第一変形例は、各弁体120A,120bの回転領域を広げたものであり、前述した構成と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を割愛すると共に、異なる部分についてのみ説明する。
【0107】
なお、第一変形例で説明するバルブ装置101の第1モードから第3モードは、必ずしも前述した第1モードから第3モードと同じ状態を示すものではない。
【0108】
図14は、第一変形例に係るバルブ装置101の伝達機構140の各歯車を示す斜視図である。図15は、第一変形例に係るバルブ装置101の伝達機構140の動作について説明する図である。図16は、図15に続く伝達機構140の動作について説明する図である。図17は、図16に続く伝達機構140の動作について説明する図である。図18は、図17に続く伝達機構140の動作について説明する図である。
【0109】
[第1従動歯車]
第1従動歯車142の周面には、駆動歯部を構成する歯142aが形成されている。歯142aは、第1従動歯車142の軸方向において、アクチュエータ160に近い側を構成する上部歯142a-1と、アクチュエータ160から離れた側を構成する下部歯142a-2とを有する。
【0110】
下部歯142a-2は、第1従動歯車142の周面の全周にわたって形成される。上部歯142a-1は、第1従動歯車142の周面の一部に形成される。この上部歯142a-1が形成された周方向の領域は、前述した構成よりも広い。
【0111】
段差面142cには、径方向に延在する挿入溝142dが形成されている。この挿入溝142dは、段差面142cの周方向の一方側に形成されており、挿入溝142dが段差面142cの周方向の他方側に形成された前述の構成と比較して、挿入溝142dの形成位置が異なる。
【0112】
[第2従動歯車]
第2従動歯車143は、外周の一部に形成される従動歯部である歯143aを有する。この歯143aが形成された周方向の領域は、前述した構成よりも広い。
【0113】
図15に示すように、伝達機構140では、駆動歯車141の歯141aと第1従動歯車142の下部歯142a-2とが噛み合っており、第1従動歯車142の上部歯142a-1と第2従動歯車143の歯143aとが噛み合っている。このとき、バルブ装置101は、第1モードである。
【0114】
図15に示すように、駆動歯車141を時計回りに90度回転させると、第1従動歯車142が反時計回りに90度回転すると共に第2従動歯車143が時計回りに90度回転して、図16に示す状態になる。このとき、駆動歯車141と共に弁体120Bも時計回りに90度回転し、第2従動歯車143と共に弁体120Aも時計回りに90度回転して、バルブ装置101は、第2モードとなる。
【0115】
そして、駆動歯車141を更に時計回りに90度回転させると、第1従動歯車142が反時計回りに90度回転すると共に第2従動歯車143が時計回りに90度回転して、図17に示す状態になる。このとき、駆動歯車141と共に弁体120Bも時計回りに90度回転し、第2従動歯車143と共に弁体120Aも時計回りに90度回転して、バルブ装置101は、第3モードとなる。
【0116】
また、伝達機構140は、駆動歯車141の歯141aと第1従動歯車142の下部歯142a-2とが噛み合っているのに対して、第1従動歯車142の上部歯142a-1と第2従動歯車143の歯143aとは噛み合っていない。このとき、第2従動歯車143のリンク143bに形成されたピン143cは(図14参照)、第1従動歯車142のカム溝142f内に配置される。
【0117】
そして、駆動歯車141を更に時計回りに90度回転させると、第1従動歯車142が反時計回りに90度回転して、図18に示す状態になる。このとき、第1従動歯車142の上部歯142a-1と第2従動歯車143の歯143aとは噛み合っておらず、第2従動歯車143は回転しない。このため、駆動歯車141と共に弁体120Bは時計回りに90度回転し、弁体120Aは回転せず、バルブ装置101は、第4モードとなる。
【0118】
<作用効果>
以上の第一変形例であっても、第1従動歯車142と第2従動歯車143との噛み合いが解除された状態において、第2従動歯車143のピン143cの第1従動歯車142の径方向への移動を第1従動歯車142のカム溝142fで規制することができる。これにより、第2従動歯車143の回転を抑制できるので、前述と同様の作用効果を奏することができる。
【0119】
また、各弁体120A,120bの回転領域を広げることによって、バルブ装置101が切替可能なモード数を増加することができる。
【0120】
<伝達機構の第二変形例>
次に、図19から図21を参照して、伝達機構140の第二変形例について説明する。第二変形例は、弁体120Aと弁体120Bとを連動させる歯車を、駆動側ギアである駆動側歯車200と、従動側ギアである従動側歯車202とで構成したものである。
【0121】
図19は、第二変形例に係るバルブ装置101の伝達機構140の動作について説明する図である。図20は、図19に続く伝達機構140の動作について説明する図である。図21は、図20に続く伝達機構140の動作について説明する図である。
【0122】
[従動側歯車]
従動側歯車202は、外周の一部に形成される従動歯部である歯202aを有する。従動側歯車202は、弁体120Aの回転軸に連結される。従動側歯車202は、弁体120Aと一体に回転する。
【0123】
従動側歯車202は、前述と同様に、歯202aが設けられない外周の一部から径方向の外側へ向けて延出するリンク202bと、リンク202bから軸方向に突出するピン202cとを有する。
【0124】
[駆動側歯車]
駆動側歯車200は、アクチュエータ160の出力軸に連結される。駆動側歯車200は、アクチュエータ160の駆動力によって回転する。駆動側歯車200は、弁体120Bの回転軸に連結される。駆動側歯車200は、弁体120Bと一体に回転する。
【0125】
駆動側歯車200は、外周の一部に形成される駆動歯部である歯200aを有する。駆動側歯車200の歯200aは、従動側歯車202の歯202aと噛み合う。駆動側歯車200は、従動側歯車202を駆動する。
【0126】
駆動側歯車200は、前述と同様に、従動側歯車202と噛み合った状態で従動側歯車202のピン202cが外周から径方向に挿入される挿入溝200bを備える。駆動側歯車200は、挿入溝200bと連続して駆動側歯車200の回転軸を中心とする円弧状に形成されたカム溝200cを有する。カム溝200cは、駆動側歯車200の歯200aと従動側歯車202の歯202aとの噛み合いが解除された状態でピン202cが挿入され、ピン202cの径方向への移動を規制すると共に周方向への移動を許容する。
【0127】
図19に示すように、第1モードにおいて、駆動側歯車200を時計回りに90度回転すると、従動側歯車202は、反時計回りに90度回転して、図20に示す状態になる。これにより、バルブ装置101は、第1モードから第2モードになる。
【0128】
このとき、駆動側歯車200の歯200aと従動側歯車202の歯202aとの噛み合いは解除される。また、従動側歯車202のピン202cが駆動側歯車200の外周から挿入溝200bの径方向に挿入され、カム溝200cに達する。これにより、ピン202cは、駆動側歯車200の径方向への移動が規制される共に周方向への移動が許容される。
【0129】
次に、図20から図21に示すように、駆動側歯車200を更に時計回りに90度回転させても従動側歯車202は回転せず、図21に示す状態になる。これにより、バルブ装置101は、第2モードから第3モードになる。
【0130】
<作用効果>
以上の第二変形例であっても、駆動側歯車200と従動側歯車202との噛み合いが解除された状態において、従動側歯車202の予期せぬ回転を抑制することができるので、前述と同様の作用効果を奏することができる。
【0131】
また、伝達機構140を、図4に示すように、駆動歯車141と第1従動歯車142と第2従動歯車143とで構成した場合と比較して、部品点数を削減できる。
【0132】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0133】
101 バルブ装置
120A 弁体
120B 弁体
140 伝達機構
141 駆動歯車
141a 歯
142 第1従動歯車
142a 歯
142a-1 上部歯
142a-2 下部歯
142d 挿入溝
142f カム溝
142g 当接部
143e 入り部
143 第2従動歯車
143a 歯
143b リンク
143c ピン
160 アクチュエータ
200 駆動側歯車
200a 歯
200b 挿入溝
200c カム溝
202 従動側歯車
202a 歯
202b リンク
202c ピン
C1 第1中心軸
C2 第2中心軸
KL 仮想直線
【要約】
【課題】連動動作への移行時に生じ得る噛み合い不良の抑制が可能なバルブ装置を提供する。
【解決手段】バルブ装置101の伝達機構140は、弁体120Bと連動する駆動側ギアである第1従動歯車142と、弁体120Aと連動して回転する第2従動歯車143とを有する。第2従動歯車143は、径方向の外側へ向けて延出するリンク143bと、リンク143bから軸方向に突出するピン143cとを有する。第1従動歯車142は、上部歯142a-1が歯143aと噛み合った状態でピン143cが外周から径方向に挿入される挿入溝142dと、挿入溝142dと連続して第1従動歯車142の回転軸を中心とする円弧状に形成されたカム溝142fを有する。カム溝142fは、上部歯142a-1と歯143aとの噛み合いが解除された状態でピン143cが挿入され、ピン143cの径方向への移動を規制すると共に周方向への移動を許容する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21