(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】曖気検出装置及び曖気監視システム
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
A01K29/00 D
(21)【出願番号】P 2022180023
(22)【出願日】2022-11-10
【審査請求日】2022-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】栗本 優
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0061656(US,A1)
【文献】特表2014-525738(JP,A)
【文献】国際公開第2022/023367(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の胃袋内で圧力センサが検出する胃袋内圧力の
単位時間当りの降圧量が、予め定められた基準降圧量を超えたことを条件にして前記動物の曖気を検出する曖気検出装置
において、
曖気による排ガス量と前記胃袋内圧力の降圧量とを対応させた第1データテーブルと、
前記曖気が検出された場合の前記降圧量と、前記第1データテーブルとに基づいて曖気による前記排ガス量を特定する排ガス量特定部と、を有する曖気検出装置。
【請求項2】
動物の胃袋内で圧力センサが検出する胃袋内圧力の単位時間当り
の降圧量が、予め定められた基準降圧量を超えたことを条件にして前記
動物の曖気を検出する
曖気検出装置において、
曖気による排ガス量と前記胃袋内圧力の降圧量とを対応させた第1データテーブルと、
予め定められた一定期間内における前記曖気が検出された場合の前記降圧量の累積値を演算する累積量演算部と、
前記降圧量の累積値と、前記第1データテーブルとに基づいて曖気による前記排ガス量を特定する排ガス量特定部と、を有する曖気検出装置。
【請求項3】
予め定められた一定期間内の前記曖気の発生回数を計数する曖気カウンタを備える請求項1又は2に記載の曖気検出装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の曖気検出装置と圧力センサとを有し、前記動物の胃袋内に配置されて外部に前記排ガス量の情報を無線送信することが可能な胃袋内端末と、
前記動物から離れた場所に配置され、無線装置を介して前記胃袋内端末と通信を行うことが可能な監視端末と、
を含む曖気監視システムであって、
前記圧力センサは、第1周期で前記動物の胃袋内圧力を検出し、
前記胃袋内端末は、前記第1周期の複数周期分より長い第2周期で、その第2周期の1周期分の前記排ガス量の情報を前記監視端末に送信する曖気監視システム。
【請求項5】
前記胃袋内端末は、複数備えられてそれぞれ識別データを有すると共に、前記識別データと共に前記排ガス量の情報を前記監視端末に送信し、
前記監視端末は、前記識別データと、前記動物の胃袋の大きさの個体差を補正するための補正値とを対応させた第2データテーブルと、
各前記胃袋内端末から受信する情報に含まれる前記識別データに基づいて前記第2データテーブルから前記補正値を決定し、前記情報に含まれる前記排ガス量を補正する請求項4に記載の曖気監視システム。
【請求項6】
請求項3に記載の曖気検出装置と圧力センサとを有し、前記動物の胃袋内に配置されて外部に前記曖気カウンタの計数結果の情報を無線送信することが可能な胃袋内端末と、
前記動物から離れた場所に配置され、無線装置を介して前記胃袋内端末と通信を行うことが可能な監視端末と、を含む曖気監視システムであって、
前記圧力センサは、第1周期で前記動物の胃袋内圧力を検出し、
前記胃袋内端末は、前記第1周期の複数周期分より長い第2周期で、その第2周期の1周期分の前記曖気カウンタの計数結果を前記監視端末に送信する曖気監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動物の曖気を検出する曖気検出装置及び曖気監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、牛のような動物が出す曖気(所謂、ゲップ)に含まれるメタンガスの発生が地球温暖化に影響を及ぼすことが問題となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-067684号公報(段落[0007])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して、動物が出す曖気を検出する技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本開示の第1の態様は、動物の胃袋内で圧力センサが検出する胃袋内圧力の単位時間当りの降圧量が、予め定められた基準降圧量を超えたことを条件にして前記動物の曖気を検出する曖気検出装置において、曖気による排ガス量と前記胃袋内圧力の降圧量とを対応させた第1データテーブルと、前記曖気が検出された場合の前記降圧量と、前記第1データテーブルとに基づいて曖気による前記排ガス量を特定する排ガス量特定部と、を有する曖気検出装置である。
本開示の第2の態様は、動物の胃袋内で圧力センサが検出する胃袋内圧力の単位時間当りの降圧量が、予め定められた基準降圧量を超えたことを条件にして前記動物の曖気を検出する曖気検出装置において、曖気による排ガス量と前記胃袋内圧力の降圧量とを対応させた第1データテーブルと、予め定められた一定期間内における前記曖気が検出された場合の前記降圧量の累積値を演算する累積量演算部と、前記降圧量の累積値と、前記第1データテーブルとに基づいて曖気による前記排ガス量を特定する排ガス量特定部と、を有する曖気検出装置である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の曖気検出装置では、動物が曖気を出したときに胃袋内圧力が変化することを利用し、動物の胃袋内に配置された圧力センサから胃袋内圧力の情報を取得してその胃袋内圧力の変化に基づいて動物の曖気を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る曖気監視システムの全体構成を示す概略図
【
図2】胃袋内端末及び監視端末の電気的な構成を示すブロック図
【
図10】第2実施形態の胃袋内端末の制御的な構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
本開示の曖気監視システム100に係る第1実施形態について、
図1~
図9を参照して説明する。
図1に示した本実施形態の曖気監視システム100は、複数頭の牛10の胃袋10S(具体的には、第1胃又は第2胃)内に配置される複数の胃袋内端末20と、胃袋内端末20が取得した牛10の情報を監視する監視端末50と、監視端末50を介して胃袋内端末20が取得した情報の提供を受ける外部端末70と、を備えている。これらは、無線基地局400,401を含んだ通信ネットワーク101を介して接続されている。
【0009】
胃袋内端末20は、
図2に示すように、圧力センサ21、装置制御部22及び無線回路23等を備え、これらは、胃袋10S内のルーメン液や食渣等から保護するための図示しないケースに収容されている。
【0010】
圧力センサ21は、牛10の胃袋内圧力P1を計測し、その計測結果を装置制御部22に送信する。装置制御部22は、圧力センサ21から取得した計測結果に基づく信号を無線回路23に無線送信させる。なお、胃袋内端末20に、圧力センサ21の他に、例えば、温度センサや加速度センサ等を備えて、牛10の情報として胃袋内圧力P1以外の情報も無線送信する構成であってもよい。
【0011】
装置制御部22は、CPU22Aとメモリ22Bとからなる。CPU22Aは、圧力センサ21及び無線回路23等の機器に接続されて、それら機器を制御して後述する送信制御プログラムPG1及び排ガス量特定プログラムPG2等を実行する。メモリ22Bは、胃袋内端末20毎に設定された識別データ等を格納するデータ記憶部29Aと、送信制御プログラムPG1及び排ガス量特定プログラムPG2等を格納するプログラム記憶部29Bを有する(
図3参照)。
【0012】
なお、胃袋内端末20は、圧力センサ21、装置制御部22及び無線回路23等に電源を供給する図示しない電池を備えている。また、ケース内には図示しない錘が収容されており、牛10の口から投入された胃袋内端末20が胃袋10S内に安定して留置されるようになっている。
【0013】
送信制御プログラムPG1は、装置制御部22に電池から電力が供給されている間実行される。そして、CPU22Aが、送信制御プログラムPG1を実行することで
図3に示される第1トリガ生成部24A、第2トリガ生成部24B、データ取得部25、データ解析部27及びデータ送信部28等の制御ブロックとして機能する。
【0014】
第1トリガ生成部24Aでは、所定の間隔(例えば、10[秒])で第1トリガTG1を生成し、第1トリガTG1が生成される度に、圧力センサ21が胃袋内圧力P1の計測を行う。そして、圧力センサ21の計測結果を、データ取得部25が受け取って圧力データD1を生成する。圧力データD1には胃袋内圧力P1と計測時刻tの情報が含まれ、生成された圧力データD1は一時的にバッファ26に蓄えられる。なお、所定の間隔が特許請求の範囲の「第1周期」に相当する。
【0015】
第2トリガ生成部24Bでは、一定期間N1(例えば、10[分])毎に第2トリガTG2を生成し、第2トリガTG2が生成される度に、データ解析部27が、バッファ26から読み出した複数の圧力データD1に基づいて排ガス量データD2を生成し、データ送信部28に付与する。データ解析部27は、前述の排ガス量特定プログラムPG2を実行することにより排ガス量データD2を生成するが、詳細については後述する。
【0016】
データ送信部28は、予め定められたデータ長さのデータフレームに、胃袋内端末20の識別データと排ガス量データD2とを格納して送信データD3を生成し、無線回路23を使用して無線送信する。なお、一定期間N1が特許請求の範囲の「第2周期」に相当する。なお、胃袋内圧力P1以外の牛10の情報も取得する場合には、送信データD3にそれらの情報も格納してもよい。
【0017】
以下、
図4を参照して、胃袋内端末20のCPU22Aが実行する送信制御プログラムPG1について説明する。CPU22Aは、図示しない発振回路から出力される周期信号の1つとしての例えば0.1[秒]周期の割込信号を受ける度に、送信制御プログラムPG1を実行する。送信制御プログラムPG1の「L1」は、時間をカウントするためのカウンタであり、また、「S1」は、上記した一定期間N1の長さを決定するための設定値であり、本実施形態では、一定期間N1を10分にするためにS1は6000(=10分×60秒/0.1秒)に設定されている。また、MOD(L,Y)は、LをYで割った余りを出力する関数である。また、「FLG1」はフラグであって、初期状態で「0」になっている。
【0018】
CPU22Aは、送信制御プログラムPG1を実行すると、
図4に示すように、カウンタL1を1つインクリメントし(S11)、割込信号のカウント数が100と一致したかを、ステップS12の関数MOD(L1,100)で判定する。そして、関数MOD(L1,100)の判定によりカウント数が100と一致しない場合は(S12でNO)、そのまま送信制御プログラムPG1から抜け、カウント数が100と一致すれば(S12でYES)、圧力計測処理が実行される(S13)。このとき、ステップS12を実行しているときのCPU22Aが前述の第1トリガ生成部24Aをなし、ステップS12でYESと判定することが、第1トリガTG1の生成に相当する。そして、CPU22Aは、圧力計測処理(S13)を実行すると前述のデータ取得部25になり、圧力センサ21の計測結果を受け取って圧力データD1を生成する。
【0019】
そして、CPU22Aは、圧力計測処理(S13)の実行後に、カウント数がS1と一致したかを判定し(S14)、そこでYESであれば、FLG1を「0」から「1」に切り替える(S15)と共に、データ解析処理を実行する(S16)。ここで、ステップS14を実行しているときのCPU22Aが、前述の第2トリガ生成部24Bに相当し、ステップS14でYESと判定することが、第2トリガTG2の生成に相当する。また、データ解析処理(S16)を実行しているときのCPU22Aが前述のデータ解析部27に相当し、排ガス量データD2を生成する。
【0020】
そして、CPU22Aは、データ解析処理(S16)の実行後に、送信処理を実行する(S17)。送信処理(S17)を実行しているときのCPU22Aがデータ送信部28に相当し、排ガス量データD2を格納した送信データD3を生成して無線送信する。そして、送信処理(S17)を実行後、FLG1を「1」から「0」に切り替える(S18)と共に、カウンタL1を「0」にリセットして送信制御プログラムPG1は終了する(S19)。
【0021】
さて、前述したように、第2トリガ生成部24Bが第2トリガTG2を生成する毎に、データ解析部27が排ガス量特定プログラムPG2を実行して排ガス量データD2を生成する。データ解析部27は、圧力変化量演算部27Aと、曖気特定部27Bと、累積量演算部27Cと、排ガス量特定部27Dとを有する。
【0022】
圧力変化量演算部27Aは、バッファ26に蓄積された複数の圧力データD1を読み出して、計測時刻t毎の胃袋内圧力P1を取得し、単位時間Δt当り(本実施形態では10[秒])の胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtを演算する。具体的には、計測時刻t(n)における単位時間Δt当りの胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtは、胃袋内圧力P1(n)を、その直前の計測時刻t(n-1)における胃袋内圧力P1(n-1)から差し引いた差分で算出される。
【0023】
曖気特定部27Bは、圧力変化量演算部27Aが演算した単位時間Δt当りの胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtに基づいて牛10の曖気を検出する。具体的には、牛10が曖気を出す前後で胃袋内圧力P1が急激に低下することを利用し、単位時間Δt当りの胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtが、予め定められた基準降圧量V1を超えて大きくなったとき、つまり、胃袋内圧力P1が単位時間Δtで基準降圧量V1を超えて降圧したときに、牛10が曖気を出したと特定する。基準降圧量V1は、データ記憶部29Aに記憶されている。
【0024】
累積量演算部27Cは、曖気を出したと特定されたときの単位時間Δt当りの胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtを一定期間N1において積算し、累積値Paとして算出する。
【0025】
排ガス量特定部27Dは、曖気に含まれるメタンガスの排出量M1(以下、「排ガス量」という)を特定する。本実施形態では、排ガス量特定部27Dは、胃袋10S内に発生する排ガス量M1を実測せずに、累積量演算部27Cが演算した累積値Paに基づいて排ガス量M1を推定する。
【0026】
本実施形態では、排ガス量の特定を行うために、データ記憶部29Aに、
図5に示された第1データテーブルT1が格納されている。第1データテーブルT1には、曖気を出したときに生じる胃袋内圧力P1の降圧量Iに対応する排ガス量M1が設定されている。そして、排ガス量特定部27Dは、第1データテーブルT1から、一定期間N1の累積値Paに対応する排ガス量M1を特定し、排ガス量データD2を生成する。
【0027】
ここで、胃袋内圧力P1の降圧量Iと排ガス量M1との対応関係は、曖気を出したときのメタンガスの排出量を実際に計測することで実験的に求めることができる。また、曖気により生じた胃袋内圧力P1の降圧量Iとその曖気に含まれる排ガス量の理論式が組み込まれたシミュレータによっても求めることができるし、人工知能によって求めることもできる。本実施形態は、実験的に求めており、例えば、降圧量Iは、曖気を出したと特定されたときの単位時間Δt当りの胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtの一定期間N1の累積値Paにより算出し、その間の排ガス量M1を、特開2005-98817号公報に記載される方法により計測することにより、第1データテーブルT1を設定している。
【0028】
以下、
図6を参照して、胃袋内端末20のCPU22Aが実行する排ガス量特定プログラムPG2について説明する。
【0029】
図6に示すように、CPU22Aは、排ガス量特定プログラムPG2を実行すると、FLG1が「1」であるか否かを判別し(S21)、「1」でなければ直ちに排ガス量特定プログラムPG2から抜ける(S21でNO)。つまり、CPU22Aは、送信制御プログラムPG1でFLG1が「1」にセットされたときにのみ(第2トリガ生成部24Bが第2トリガTG2を生成したときにのみ)、排ガス量特定プログラムPG2を実行する。そして、FLG1が「1」の場合には(S21でYES)、圧力変化量演算処理が実行される(S22)。ここで、圧力変化量演算処理(S22)を実行しているときのCPU22Aが前述の圧力変化量演算部27Aに相当する。
【0030】
そして、CPU22Aは、圧力変化量演算処理(S22)を実行後、曖気特定処理(S23)、累積量演算処理(S24)、排ガス量特定処理(S25)を順に実行して排ガス量特定プログラムPG2は終了する。ここで、曖気特定処理(S23)を実行しているときのCPU22Aが曖気特定部27Bに相当し、累積量演算処理(S24)を実行しているときのCPU22Aが累積量演算部27Cに相当し、排ガス量特定処理(S25)を実行しているときのCPU22Aが排ガス量特定部27Dに相当する。
【0031】
ところで、複数の胃袋内端末20が無線送信した送信データD3は、監視端末50で受信される。具体的には、
図1に示すように、胃袋内端末20からの送信データD3は、まず、複数の牛10を飼育している牛舎や牧場に設置されたゲートウェイ500で受信される。ゲートウェイ500は、中継基地局としての機能と、プロトコル変換の機能を備えている。そして、ゲートウェイ500は、胃袋内端末20からの送信データD3を汎用通信回線300を介して監視端末50に送信する。本実施形態では、1つのゲートウェイ500が1つの監視端末50に接続されているが、例えば牛舎や牧場毎にゲートウェイ500を設置し、複数のゲートウェイ500が1つの監視端末50に接続されていてもよい。
【0032】
監視端末50は、サーバコンピュータやパーソナルコンピュータ等のコンピュータによって構成されており、送信データD3に含まれる牛10の情報に基づいて、識別データ毎に牛10を監視し、外部端末70にその情報を通知するようになっている(
図1参照)。なお、監視端末50は、複数のサーバーからなるクラウドサーバーでもよい。
【0033】
監視端末50は、
図2に示すように、少なくとも、通信回路51と、CPU52とメモリ59を含む制御部50Aと、記憶媒体60等を有してなる。
【0034】
通信回路51は、汎用通信回線300を介して胃袋内端末20からの送信データD3の受信を行うと共に、外部端末70にデータの送信を行う。
【0035】
記憶媒体60は、RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等で構成されており、データ記憶部61及びプログラム記憶部62を有する(
図7参照)。データ記憶部61には、各胃袋内端末20の識別データが格納されて、識別データから各胃袋内端末20を特定することが可能となっている。プログラム記憶部62には、後述する排ガス量補正プログラムPG3等が格納されており、CPU52に排ガス量補正プログラムPG3を実行させることで、
図7に示されるデータ取込部53、データ補正部54、異常判別部55、情報送信部56等の制御ブロックとして機能する。
【0036】
なお、排ガス量補正プログラムPG3は、上記構成に限られず、例えば、非一時的な記憶媒体であるCD-ROMやUSBメモリ等に記憶させておいてそれらから読み出して実行する構成でもよいし、汎用通信回線300を通じてアプリケーション等のサービスを利用して実行する構成でもよい。
【0037】
データ取込部53は、各胃袋内端末20から送信されてきた送信データD3を通信回路51を通して受信し、各送信データD3に含まれる排ガス量M1の情報に受信時刻を付加して識別データ毎に分けてバッファ53Aに蓄える。
【0038】
データ補正部54は、胃袋内端末20から送信された排ガス量M1を牛10の個体差に基づいて補正する。具体的には、データ記憶部61に、牛10の体重に対応する補正値が設定された第2データテーブルT2(
図8参照)が格納されている。また、データ記憶部61には、各識別データに、その識別データの胃袋内端末20が留置されている牛10の家畜特定情報(例えば、雌雄の別や体重、年齢等)を紐づけて格納されている。そして、データ補正部54は、各識別データに対して、その識別データの体重に対応する補正値を第2データテーブルT2から決定する。そして、決定した補正値をその識別データの排ガス量M1に乗算して補正排ガス量Mcを算出する。
【0039】
ここで、牛10の体重と補正値との対応関係は、体重の異なる複数の牛10に対して曖気を出したときの排ガス量M1を実際に計測することで実験的に求めることができる。また、牛10の体重と排ガス量M1の理論式が組み込まれたシミュレータによっても求めることができるし、人工知能によって求めることもできる。本実施形態は、実験的に求めており、体重の異なる複数の牛10に対して、例えば、所定期間の排ガス量M1を、特開2005-98817号公報に記載される方法により計測することにより、第2データテーブルT2を設定している。
【0040】
異常判別部55は、異常な排ガス量M1を送信した胃袋内端末20を判別する。具体的には、データ記憶部61には、牛10の体重毎の平均排ガス量と基準差分値が格納されており、データ補正部54により算出された補正排ガス量Mcと平均排ガス量との差分が基準差分値より小さい場合には異常なしと判別する一方、基準差分値より大きい場合には異常ありと判別する。
【0041】
情報送信部56は、データ補正部54により算出した補正排ガス量Mcを外部端末70に通知する。このとき、異常判別部55により異常ありと判別された場合にはその旨も通知する。具体的には、識別データに対応する胃袋内端末20を特定し、その胃袋内端末20と、補正排ガス量Mcと、異常判別部55による異常が判別された旨の情報とを含んだ送信データD4を生成して、通信回路51を介して外部端末70に通知する。
【0042】
なお、外部端末70は、例えば、畜主等が所有し、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどの携帯情報端末であり、監視端末50と通信可能な一般的な通信手段であればよい。外部端末70は、前述したように、監視端末50から送信データD4の通知を受信する。また、外部端末70から監視端末50にアクセスして、各牛10の情報について、自由に閲覧できるように構成されていてもよい。
【0043】
なお、本実施形態では、特許請求の範囲の「曖気検出装置」のうち、各胃袋内端末20に、曖気を検出して排ガス量M1を特定する部分まで備えられ、監視端末50に、排ガス量M1を補正する部分が備えられたものとなっている。
【0044】
以下、
図9を参照して、監視端末50のCPU52が実行する排ガス量補正プログラムPG3について説明する。
【0045】
排ガス量補正プログラムPG3は、胃袋内端末20から送信データD3を受信する度に実行される(S31)。そして、送信データD3を受信すると(S31でYES)、データ取込処理が実行される(S32)。ここで、データ取込処理(S32)を実行しているときのCPU52が前述のデータ取込部53に相当する。
【0046】
そして、CPU52は、データ取込処理(S32)を実行後、データ補正処理(S33)、異常判別処理(S34)、送信処理(S35)を順に実行して排ガス量補正プログラムPG3を終了する。ここで、データ補正処理(S33)を実行しているときのCPU52がデータ補正部54に相当し、異常判別処理(S34)を実行しているときのCPU52が異常判別部55に相当し、送信処理(S35)を実行しているときのCPU52が情報送信部56に相当する。
【0047】
本実施形態の曖気監視システム100の構成に関する説明は以上である。本実施形態の曖気監視システム100では、複数の牛10の胃袋10S内に胃袋内端末20が留置されて、胃袋内端末20が備える圧力センサ21により胃袋内圧力P1が計測される。本実施形態では、牛10が曖気を出したときに胃袋内圧力P1が変化することを利用し、胃袋内端末20は、その胃袋内圧力P1の変化に基づいて、牛10が曖気を出したことを検出することができる。具体的には、牛10が曖気を出す前後で胃袋内圧力P1が急激に低下することを利用し、単位時間Δt当りの胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtが、予め定められた基準降圧量V1を超えて大きくなったときに牛10が曖気を出したと特定する。これにより曖気の頻度や曖気の間隔を特定することもできる。
【0048】
また、本実施形態では、牛10の曖気に地球温暖化に影響を及ぼすメタンガスが含まれることに鑑み、曖気により生じた胃袋内圧力P1の降圧量Iに対応するメタンガスの排出量M1(排ガス量)が予め設定されている。これにより、本実施形態では、一定期間N1に排出される排ガス量M1を実測しなくとも、一定期間N1中に曖気と特定された胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtの累積値Paにより降圧量Iを算出することで、排ガス量M1を特定することが可能になる。
【0049】
また、本実施形態では、牛10が出した曖気で生じる胃袋内圧力P1の降圧量Iに対応する排ガス量M1は牛10の個体差の影響を受けることに鑑み、本実施形態では、牛10の体重に対応する補正値が予め設定され、累積値Paから特定された排ガス量M1を補正するようになっている。これにより、累積値Paから特定された排ガス量M1の信頼性を向上させることができる。また、その補正は、胃袋内端末20ではなく監視端末50で実行されるので、胃袋内端末20の電力消費を抑えることが可能になる。
【0050】
さらに、本実施形態では、胃袋内端末20は、圧力センサ21から10[秒]毎に胃袋内圧力P1を取得するが、胃袋内圧力P1を計測する度に、排ガス量M1を特定して監視端末50に無線送信するのではなく、無線送信の間隔を10[分]に1回とすることで胃袋内端末20の電力消費を抑えることが可能になる。しかも、10[分]間に計測される複数の胃袋内圧力P1に対して、計測の度に排ガス量M1を特定して、特定された複数の排ガス量M1のデータを送信するのではなく、10[分]間に計測される複数の胃袋内圧力P1から、曖気と特定された胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtを積算した累積値Paを算出し、その累積値Paに対応する排ガス量M1を特定し、1つのデータを送信するのでデータ量も少なく、一層胃袋内端末20の電力消費を抑えることが可能になる。さらに、無線送信の間隔は10[分]間隔ではあるが、圧力センサ21の計測間隔は、10[秒]毎と短く設定されているので、曖気を見逃す虞も軽減することができる。
【0051】
また、本実施形態では、監視端末50に異常判別部55を備えて、異常な排ガス量M1を送信した識別データを判定することができる。本実施形態において、排ガス量M1を補正した補正排ガス量Mcが平均排ガス量との差分が大きい場合に異常と判別するので、メタンガスの発生が過剰である異常を判別することができ、例えば、飼料の与えすぎや、病気に罹っている等の異常を特定することができる。これにより、給餌の量や給餌環境の改善、又は治療等を行うことができる。
【0052】
[第2実施形態]
図10には、本開示の第2実施形態の胃袋内端末20Uが示されている。以下、この胃袋内端末20Uの構成について、第1実施形態と相違する点に関してのみ説明する。この胃袋内端末20Uでは、データ解析部27は、累積量演算部27Cを備えない代わりに、カウンタ記憶部27Eを備えた構成となっている。そして、本実施形態の曖気特定部27Bは、曖気の発生回数を計数する曖気カウンタを有し、単位時間Δt当りの胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtが基準降圧量V1を超えたときに曖気カウンタの値を1つインクリメントしてカウンタ記憶部27Eに記憶させる。
【0053】
本実施形態では、1回当りの曖気に含まれる排ガス量M1が予めデータ記憶部29Aに記憶されており、排ガス量特定部27Dは、カウンタ記憶部27Eに記憶された曖気カウンタの計数結果に基づいて一定期間N1に排出された排ガス量M1を特定する。
【0054】
なお、1回当りの曖気に含まれる排ガス量M1は、実験や、シミュレータ又は人工知能によって求めることができ、本実施形態では、前記第1実施形態と同様に実験的に求めている。
【0055】
[他の実施形態]
(1)前記第1実施形態では、各胃袋内端末20に、曖気を検出して排ガス量M1を特定する部分まで備えられ、監視端末50に、排ガス量M1を補正する部分が備えられた構成であったが、監視端末50に、排ガス量M1を特定して、補正する部分が備えられた構成であってもよい。例えば、胃袋内端末20は、データ解析部27に圧力変化量演算部27A、曖気特定部27B、累積量演算部27Cを備えて、曖気と特定された単位時間Δt当りの胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtの累積値Paまでは算出して監視端末50に送信する構成とすれば、排ガス量M1の特定を行わないので、胃袋内端末20の電力消費を抑えることが可能になる。
【0056】
また、胃袋内端末20は、データ解析部27に圧力変化量演算部27A、曖気特定部27Bを備えて、曖気を特定してその単位時間Δt当りの胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtのデータを監視端末50に送信する構成としてもよいし、胃袋内端末20は、データ解析部27に圧力変化量演算部27Aのみを備え、監視端末50が曖気の特定から行う構成としてもよい。
【0057】
また、胃袋内端末20はデータ解析部27を備えず、圧力センサ21が一定期間N1に計測した胃袋内圧力P1のデータを監視端末50に送信する構成としてもよい。この場合、胃袋内圧力P1を取得する度に監視端末50に送信する構成であってもよい。なお、本構成では、監視端末50が特許請求の範囲の「曖気検出装置」に相当する。
【0058】
(2)前記第1実施形態では、胃袋内端末20は、一定期間N1において曖気と特定された胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtの累積値Paを算出し、その累積値Paから排ガス量M1を特定していたが、圧力センサ21から胃袋内圧力P1を取得する度に排ガス量M1を特定して、一定期間N1毎に、複数の排ガス量M1のデータを送信する構成であってもよいし、その複数の排ガス量M1の積算値を送信する構成であってもよい。
【0059】
(3)前記第2実施形態の胃袋内端末20において、曖気カウンタの計数結果から排ガス量M1を特定して、それを監視端末50に送信していたが、曖気カウンタの計数結果も送信してもよい。
【0060】
(4)前記第2実施形態では、各胃袋内端末20に、曖気を検出して排ガス量M1を特定する部分まで備えられ、監視端末50に、排ガス量M1を補正する部分が備えられた構成であったが、監視端末50に、排ガス量M1を特定して、補正する部分が備えられた構成であってもよい。例えば、胃袋内端末20は、データ解析部27に圧力変化量演算部27A、曖気特定部27B、カウンタ記憶部27Eを備えて、曖気カウンタの計数結果を監視端末50に送信する構成とすれば、排ガス量M1の特定を行わないので、胃袋内端末20の電力消費を抑えることが可能になる。
【0061】
また、胃袋内端末20は、データ解析部27に圧力変化量演算部27Aのみを備えて、監視端末50が曖気の特定から行う構成としてもよいし、胃袋内端末20は、データ解析部27を備えず、圧力センサ21が一定期間N1に計測した胃袋内圧力P1のデータを監視端末50に送信する構成としてもよい。この場合、胃袋内圧力P1を取得する度に監視端末50に送信する構成であってもよい。この場合、監視端末50が特許請求の範囲の「曖気検出装置」に相当する。
【0062】
(5)前記実施形態において、監視端末50のデータ補正部54は、胃袋内端末20により特定された排ガス量M1を牛10の体重差に基づいて設定された補正値で補正していたが、雌雄の別、年齢差又はこれら以外の個体差に基づいて設定された補正値で補正してもよい。また、これらのうち2つ以上の個体差に基づいて設定された補正値で補正してもよい。
【0063】
(6)前記実施形態において、特定された排ガス量M1に対する牛10の個体差に基づく補正を監視端末50で行っていたが、胃袋内端末20で行ってもよい。この場合、識別データ毎にその識別データの特徴に合わせて補正値が設定されていてもよい。
【0064】
(7)前記実施形態において、特定された排ガス量M1に対して牛10の個体差に基づく補正を行っていたが、牛10の個体差に基づく補正を行わなくてもよい。
【0065】
(8)前記実施形態では、監視端末50に異常判別部55を備えていたが、備えていなくてもよい。
【0066】
(9)前記実施形態では、胃袋内端末20を牛10の胃袋10Sに留置する構成であったが、他の動物の胃袋10S内に留置してもよい。
【0067】
(10)前記実施形態では、所定の間隔として10[秒]毎に胃袋内圧力P1を取得し、一定期間N1として10[分]毎に無線送信していたが、所定の間隔や一定期間N1の長さはこれらに限られない。
【0068】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、これら特徴群は、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0069】
本願出願には、後述する複数の特徴が含まれている。なお、これら特徴の記載においてカッコ内の数字は、上記実施形態において対応する符号である。
【0070】
[特徴1]
動物(10)の胃袋(10S)内で圧力センサ(21)が検出する胃袋内圧力(P1)の情報を取得し、前記胃袋内圧力(P1)の変化に基づいて動物(10)の曖気を検出する曖気検出装置(20,50)。
【0071】
[特徴2]
単位時間(Δt)当りの前記胃袋内圧力(P1)の降圧量(ΔPt)が、予め定められた基準降圧量(V1)を超えたことを条件にして前記曖気を検出する特徴1に記載の曖気検出装置(20,50)。
【0072】
[特徴3]
曖気による排ガス量(M1)と前記胃袋内圧力(P1)の降圧量(I)とを対応させた第1データテーブル(T1)と、
前記曖気が検出された場合の前記降圧量(ΔPt)と、前記第1データテーブル(T1)とに基づいて曖気による前記排ガス量(M1)を特定する排ガス量特定部(27D)と、を有する特徴2に記載の曖気検出装置(20,50)。
【0073】
[特徴4]
曖気による排ガス量(M1)と前記胃袋内圧力(P1)の降圧量(I)とを対応させた第1データテーブル(T1)と、
予め定められた一定期間(N1)内における前記曖気が検出された場合の前記降圧量(ΔPt)の累積値(Pa)を演算する累積量演算部(27C)と、
前記降圧量(ΔPt)の累積値(Pa)と、前記第1データテーブル(T1)とに基づいて曖気による前記排ガス量(M1)を特定する排ガス量特定部(27D)と、を有する特徴2に記載の曖気検出装置(20,50)。
【0074】
[特徴5]
予め定められた一定期間(N1)内の曖気の発生回数を計数する曖気カウンタを備える特徴1から4の何れか1の特徴に記載の曖気検出装置(20,50)。
【0075】
[特徴6]
特徴3又は4に記載の曖気検出装置(20,50)と圧力センサ(21)とを有し、動物(10)の胃袋(10S)内に配置されて外部に前記排ガス量(M1)の情報を無線送信することが可能な胃袋内端末(20)と、
前記動物(10)から離れた場所に配置され、無線装置(51)を介して前記胃袋内端末(20)と通信を行うことが可能な監視端末(50)と、
を含む曖気監視システムであって、
前記圧力センサ(21)は、第1周期で前記動物(10)の胃袋内圧力(P1)を検出し、
前記胃袋内端末(20)は、前記第1周期の複数周期分より長い第2周期(N1)で、その第2周期(N1)の1周期分の前記排ガス量(M1)の情報を前記監視端末(50)に送信する曖気監視システム。
【0076】
[特徴7]
前記胃袋内端末(20)は、複数備えられてそれぞれ識別データを有すると共に、前記識別データと共に前記排ガス量(M1)の情報を前記監視端末(50)に送信し、
前記監視端末(50)は、前記識別データと、前記動物(10)の胃袋(10S)の大きさの個体差を補正するための補正値とを対応させた第2データテーブル(T2)と、
各前記胃袋内端末(20)から受信する情報に含まれる前記識別データに基づいて前記第2データテーブル(T2)から前記補正値を決定し、前記情報に含まれる前記排ガス量(M1)を補正する特徴6に記載の曖気監視システム。
【0077】
[特徴8]
特徴5に記載の曖気検出装置(20,50)と圧力センサ(21)とを有し、動物(10)の胃袋(10S)内に配置されて外部に前記曖気カウンタの計数結果の情報を無線送信することが可能な胃袋内端末(20)と、
前記動物(10)から離れた場所に配置され、無線装置(51)を介して前記胃袋内端末(20)と通信を行うことが可能な監視端末(50)と、を含む曖気監視システムであって、
前記圧力センサ(21)は、第1周期で前記動物の胃袋内圧力(P1)を検出し、
前記胃袋内端末(20)は、前記第1周期の複数周期分より長い第2周期(N1)で、その第2周期(N1)の1周期分の前記曖気カウンタの計数結果を前記監視端末(50)に送信する曖気監視システム。
【0078】
[各特徴による効果]
特徴1の曖気検出装置(20,50)によれば、動物(10)が曖気を出したときに胃袋内圧力(P1)が変化することを利用し、動物(10)の胃袋(10S)内に配置される圧力センサ(21)により胃袋内圧力(P1)を取得し、その胃袋内圧力(P1)の変化に基づいて、動物(10)が曖気を出したことを検出することができる。胃袋内圧力(P1)の変化は、例えば、特徴2のように、動物(10)が曖気を出す前後で胃袋内圧力(P1)が急激に低下することを利用し、単位時間(Δt)当りの胃袋内圧力(P1)の降圧量(ΔPt)が、予め定められた基準降圧量(V1)を超えて大きくなったときに動物(10)が曖気を出したと特定することができる。
【0079】
また、動物(10)の曖気に地球温暖化に影響を及ぼすメタンガスが含まれることに鑑み、特徴3のように、曖気により生じた胃袋内圧力(P1)の降圧量(I)とメタンガスの排ガス量(M1)とを対応させた第1データテーブル(T1)を予め設定しておき、第1データテーブル(T1)に基づいて排ガス量(M1)を特定すれば、胃袋内圧力(P1)の降圧量(ΔPt)を算出することで、排ガス量(M1)を実測しなくとも特定することが可能になる。このとき、特徴4のように、予め定められた一定期間(N1)の曖気で生じる胃袋内圧力(P1)の降圧量(ΔPt)の累積値(Pa)を演算し、累積値(Pa)と第1データテーブル(T1)に基づいて一定期間(N1)の排ガス量(M1)を特定してもよい。
【0080】
これら特徴3,4の曖気検出装置(20,50)は、動物(10)の胃袋(10S)内に配置されて胃袋内圧力(P1)を計測する圧力センサ(21)を備えて無線送信することが可能な胃袋内端末(20)と、無線装置(51)を介して胃袋内端末(20)と通信を行う監視端末(50)と、を含む曖気監視システムに備えてもよい。この場合、監視端末(50)が排ガス量(M1)を特定してもよいし、特徴6の曖気監視システムのように、胃袋内端末(20)が排ガス量(M1)を特定してもよい。また、監視端末(50)が排ガス量(M1)を特定する場合、胃袋内端末(20)は胃袋内圧力(P1)の計測結果を監視端末(50)に送信してもよいし、曖気を特定して、曖気により生じた胃袋内圧力(P1)の降圧量(ΔPt)を監視端末(50)に送信してもよい。
【0081】
また、動物(10)が出した曖気で生じる胃袋内圧力(P1)の降圧量(ΔPt)に対応する排ガス量(M1)は動物(10)の個体差の影響を受けることに鑑み、特徴7の曖気監視システムのように、監視端末(50)は、動物(10)の個体差に対応する補正値が予め設定された第2データテーブル(T2)を備えて排ガス量(M1)を補正してもよい。
【0082】
また、曖気検出装置(20,50)のように、特徴5のように、予め定められた一定期間(N1)の曖気の発生回数を計数する曖気カウンタを備えてもよい。この場合、1回当りの曖気に含まれる排ガス量を予め設定しておけば、曖気カウンタの計数結果に基づいて一定期間(N1)の排ガス量(M1)を特定することができる。この場合、特徴8の曖気監視システムのように、曖気カウンタを胃袋内端末(20)に備えて、曖気の発生回数を計数して監視端末(50)に送信し、監視端末(50)が排ガス量(M1)を特定してもよいし、胃袋内端末(20)が曖気の発生回数を計数して排ガス量(M1)まで特定して監視端末(50)に送信してもよい。また、曖気カウンタを監視端末(50)に備えて、監視端末(50)が、胃袋内端末(20)から送信された胃袋内圧力(P1)の計測結果から曖気の発生回数を計数してもよい。
【0083】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0084】
10 牛(動物)
10S 胃袋
20 胃袋内端末(曖気検出装置)
21 圧力センサ
27C 累積量演算部
27D 排ガス量特定部
50 監視端末(曖気検出装置)
51 通信回路(無線装置)
V1 基準降圧量
M1 排ガス量
N1 一定期間(第2周期)
P1 胃袋内圧力
Pa 累積値
Δt 単位時間
T1 第1データテーブル
T2 第2データテーブル
【要約】
【課題】動物が出す曖気を検出する技術を提供する。
【解決手段】本実施形態の曖気監視システム100では、複数の牛10の胃袋10S内に胃袋内端末20が留置されて、胃袋内端末20が備える圧力センサ21により胃袋内圧力P1が計測される。本実施形態では、牛10が曖気を出したときに胃袋内圧力P1が変化することを利用し、胃袋内端末20は、その胃袋内圧力P1の変化に基づいて、牛10が曖気を出したことを検出することができる。具体的には、牛10が曖気を出す前後で胃袋内圧力P1が急激に低下することを利用し、単位時間Δt当りの胃袋内圧力P1の圧力変化量ΔPtが、予め定められた基準降圧量V1を超えて大きくなったときに牛10が曖気を出したと特定する。
【選択図】
図3