(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】接合方法、接合半導体装置及び半導体部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20230413BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20230413BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20230413BHJP
H01L 25/065 20230101ALI20230413BHJP
B23K 20/10 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H01L21/52 D
H01L25/04 C
H01L25/08 Y
B23K20/10
(21)【出願番号】P 2022510862
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2021040126
(87)【国際公開番号】W WO2022092291
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2020183148
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520273980
【氏名又は名称】佐藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/071138(WO,A1)
【文献】特開2016-203251(JP,A)
【文献】特開2019-033226(JP,A)
【文献】特開2006-216940(JP,A)
【文献】特開2012-235081(JP,A)
【文献】特開昭57-138146(JP,A)
【文献】特開2005-303018(JP,A)
【文献】特開2007-250566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/58
H01L 21/48
H01L 21/60-21/607
H01L 23/12-23/15
H01L 23/34-23/40
H01L 23/48-23/50
H01L 25/00-25/18
B23K 20/10
H05K 3/32- 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体部材に第1金属部材及び第2金属部材を接合して接合半導体装置を作成する接合方法であって、
前記半導体部材は、半導体チップであり、
前記半導体チップは、SiCチップ又はSiチップであり、
接合装置が、音エネルギーを利用して、前記半導体チップの異なる面に前記第1金属部材及び前記第2金属部材を接合して前記接合半導体装置を作成する接合ステップを含み、
接合ステップにおいて、前記接合装置は、前記半導体チップと前記第1金属部材との間に第1接合部材を挟み、前記半導体チップと前記第2金属部材との間に第2接合部材を挟んで、前記音エネルギーを利用して前記半導体チップに前記第1金属部材及び前記第2金属部材を接合し、
前記第1接合部材及び前記第2接合部材は、前記音エネルギーを利用した複数材料間の接合に用いられる接合部材であ
り、
前記接合半導体装置において、
前記第1接合部材と前記半導体チップ自体と
の間は通電せず、
前記第2接合部材と前記半導体チップ自体との間は通電せず、
前記第1接合部材及び前記第2接合部材との間は前記半導体チップを経由して通電す
る、接合方法。
【請求項2】
前記第1接合部材及び前記第2接合部材は、前記音エネルギーを利用した複数材料間の接合に用いられる金属である、請求項1記載の接合方法。
【請求項3】
前記第1接合部材は、アルミ及び/又は銅であり、
前記第2接合部材は、アルミ及び/又は銅である、請求項1又は2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記半導体チップは、前記第1金属部材及び前記第2金属部材を接合する面とは異なる場所に電極を備え、
前記電極は、前記接合半導体装置において前記半導体チップを経由して前記第1金属部材と通電する、請求項1から3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
前記半導体部材は、複数の半導体チップを
含み、
前記複数の半導体チップは、第1半導体チップと、第2半導体チップを含み、
前記半導体チップは、SiCチップ又はSiチップであり、
前記接合ステップにおいて、接合装置は、音エネルギーを利用して、
前記第1半導体チップと前記第2半導体チップとを、直接に又はこれらの間に他の一つ又は複数の半導体チップがある状態で接合し、
前記
第1半導体チップ
と前記第1金属部材との間に第1接合部材を挟んだ状態で、前記第1半導体チップに前記第1金属部材を接合し、
前記
第2半導体チップ
と前記第2金属部材との間に第2接合部材を挟んだ状態で、前記第2半導体チップに前記第2金属部材を接合して前記接合半導体装置を作成し、
前記接合半導体装置において、
前記第1金属部材及び前記第2金属部材との間は、前記半導体
部材を経由して通電するものである、請求項1記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法、接合半導体装置及び半導体部材に関し、特に、半導体部材に第1金属部材及び第2金属部材を接合して接合半導体装置を作成する接合方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、例えば特許文献1及び2に記載されているように、接合材を利用して、音エネルギーによりセラミックス部材などと金属部材とを接合する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-039169号公報
【文献】特開2019-058910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらは、一つの面を接合するものであった。
【0005】
よって、本発明は、音エネルギーを利用して、半導体部材に、複数の金属部材を接合する接合方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の第1の側面は、半導体部材に第1金属部材及び第2金属部材を接合して接合半導体装置を作成する接合方法であって、前記半導体部材は、少なくとも第1面及び第2面を有し、接合装置が、音エネルギーを利用して前記半導体部材の前記第1面及び前記第2面に、それぞれ、前記第1金属部材及び前記第2金属部材を接合して接合半導体装置を作成する接合ステップを含む。
【0007】
本願発明の第2の側面は、第1の側面の接合方法であって、前記接合ステップにおいて、接合装置が、音エネルギーを利用して前記半導体部材の前記第1面及び前記第2面にそれぞれ第1接合部材及び第2接合部材により前記第1金属部材及び前記第2金属部材を接合して、接合後の前記第1接合部材及び/又は前記第1金属部材と接合後の前記第2接合部材及び/又は前記第2金属部材との間が通電する接合半導体装置を作成する。
【0008】
本願発明の第3の側面は、第1又は第2の側面の接合方法であって、前記半導体部材は、一つの半導体チップを含み、又は、前記半導体部材は、前記第1面とも前記第2面とも異なる面で接合された複数の半導体チップを含み、前記複数の半導体チップは、前記接合ステップにおいて接合され、若しくは、前記接合ステップとは異なる処理によって接合されるものである。
【0009】
本願発明の第4の側面は、第1から第3のいずれかの側面の接合方法であって、前記接合半導体装置において、前記半導体部材は電極を有する半導体チップを含み、前記電極は、前記第1金属部材、前記第2金属部材、前記第1金属部材を接合するための第1接合部材、及び、前記第2金属部材を接合するための第2接合部材の少なくとも一部と通電する。
【0010】
本願発明の第5の側面は、第1から第4のいずれかの側面の接合方法であって、前記半導体部材が含む半導体チップは、SiCチップ及び/又はSiチップであり、前記第1金属部材を接合するための第1接合部材及び前記第2金属部材を接合するための第2接合部材は、アルミ及び/又は銅である。
【0011】
本願発明の第6の側面は、第1から第5のいずれかの側面の接合方法であって、前記半導体部材は、複数存在し、前記接合ステップにおいて、接合装置は、前記各半導体部材の前記第1面に前記第1金属部材を接合する処理及び/又は前記各半導体部材の前記第2面に前記第2金属部材を接合する処理を一括して行う。
【0012】
本願発明の第7の側面は、第6の側面の接合方法であって、複数の前記半導体部材の少なくとも一部において、接合後の前記第1金属部材を接合するための第1接合部材と接合後の前記第2金属部材を接合するための第2接合部材との間で通電する。
【0013】
本願発明の第8の側面は、第1から第7のいずれかの側面の接合方法であって、前記接合ステップにおいて、接合装置は、音エネルギーを利用して、第2半導体部材が有する第4面及び第3面に、それぞれ、第3金属部材及び前記第2金属部材を接合する。
【0014】
本願発明の第9の側面は、半導体部材と、第1金属部材と、第2金属部材を備える接合半導体装置であって、前記半導体部材の第1面と前記第1金属部材とが第1接合部材によって接合し、前記半導体部材の第2面と前記第2金属部材とが第2接合部材によって接合し、前記第1接合部材と、前記第2接合部材との間が通電する。
【0015】
本願発明の第10の側面は、第9の側面の接合半導体装置であって、前記半導体部材は、一つの半導体チップを含み、又は、前記半導体部材は、前記第1面とも前記第2面とも異なる面で接合された複数の半導体チップを含む。
【0016】
本願発明の第11の側面は、第9又は第10の側面の接合半導体装置であって、前記半導体部材は、複数存在し、複数の前記半導体部材の少なくとも一部は、接合後の前記第1面の第1接合部材と接合後の前記第2面の第2接合部材との間が通電する。
【0017】
本願発明の第12の側面は、第9から第11のいずれかの側面の接合半導体装置であって、第2半導体部材と、第3金属部材を備え、前記第2半導体部材の第3面と前記第2金属部材とが接合し、前記第2半導体部材の第4面と前記第3金属部材とが接合する。
【0018】
本願発明の第13の側面は、第1面と第2面を有する半導体部材であって、前記第1面及び前記第2面には、それぞれ、接合処理のための第1接合部材及び第2接合部材が存在し、前記第1接合部材と、前記第2接合部材との間が通電する。
【0019】
なお、本願発明の接合ステップにおいて、第1面の接合処理と第2面の接合処理は、同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。第1面、第2面、第3面及び第4面の接合処理も、同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本願発明の各観点によれば、接合部材を利用して、音エネルギー(例えば、音波振動(20kHz未満)、超音波振動(20kHz以上))により半導体部材の複数の面に複数の金属部材を接合することができる。特に、音エネルギーを利用することによって、例えば、異なる面での接合部材間などでの通電を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本願発明の実施の形態に係る接合半導体装置を作成する工程を説明するための図である。
【
図2】
図1の接合半導体装置について通電テストを行った具体例を説明するための図である。
【
図3】本願発明の実施の形態に係る複数の階層を備える接合半導体装置の例を示す図である。
【
図4】本願発明の実施の形態に係る複数の階層を備える接合半導体装置の他の例を示す図である。
【
図5】
図4の接合半導体装置について具体的に説明するための図である。
【
図6】発明者が実際に作成した接合半導体装置を示す図である。
【
図7】発明者が実際に作成した他の接合半導体装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
図1は、本願発明の実施の形態に係る接合半導体装置を作成する工程を説明するための図である。
【0024】
図1(a)及び(b)を参照して、第1金属部材1は、例えば、ヒートシンクのためのものであり、放熱・吸熱を目的とした金属部材である。例えば、Niめっき銅板、銅板、アルミニウム板などである。
【0025】
図1(c)及び(d)を参照して、第1接合部材を利用して、第1金属部材1の上に、一つ又は複数の半導体部材3を接合する。半導体部材3は、半導体チップを含むものであり、例えば、Siチップ、SiCチップである。第1接合部材は、例えばアルミシートである。半導体部材3と第1金属部材1との間に第1接合部材を挟んだ3次元構造の異種材料間音波接合を行う。半導体部材3と第1金属部材1は、大気中常温の環境で音エネルギーのみで原子が励起されてジョイントする。
図1(c)及び(d)では、4つの半導体部材3
1、3
2、3
3及び3
4を、マルチ材料間の溶解拡散接合で一括接合する。(以下では、符号の添え字は、省略する場合がある。)なお、第1接合部材は、複数の半導体部材3に同じものを使用してもよく、異なるものを使用してもよい。
【0026】
接合処理は、例えば、特許文献1及び2などに記載の音エネルギーを利用した接合装置によって実現することができる。具体的には、
図1(e)を参照して、接合装置6は、加圧部7並びに共振部8及び振動子9を備える。第1金属部材1と半導体部材3との間に第1接合部材を介在させ、加圧部7が上下方向から加圧して、共振部8が、音波振動及び/又は超音波振動を利用した振動子9の振動に共振して横方向に振動することにより、接合処理を実現することができる。このとき、SiCチップやSiチップに直接ホーンや受け治具が接触して破壊するおそれがある場合には、レジンなどの弾性体を用いる。
【0027】
図1(f)及び(g)を参照して、接合装置は、第2金属部材5を、第2接合部材を利用して半導体部材3に接続する。半導体部材3は、下及び上に、第1金属部材1及び第2金属部材5が両面接合する。なお、第2接合部材は、複数の半導体部材に同じものを使用してもよく、異なるものを使用してもよい。この接合処理は、半導体部材3と第1金属部材1との接合処理が行われた状態で、さらに行われるものである。発明者は、
図1(e)と同様にして、第2金属部材5と半導体部材3との間に第2接合部材を介在させて音エネルギーによる接合処理を行うことにより実現できることを確認した。
【0028】
図1では、半導体部材3の上下に位置する第1面及び第2面に対してそれぞれ第1金属部材1及び第2金属部材5を両面接合する処理を、上下別に行うことを説明した。発明者は、半導体部材3と第1金属部材1との間に第1接合部材を介在させ、半導体部材3と第2金属部材5との間に第2接合部材を介在させた状態で、接合装置が音エネルギーによる接合処理を行うことにより、半導体部材3の上下両面の接合処理ができることを確認した。一度に行うことにより、SiCチップやSiチップに直接ホーンや受け治具が接触せずに破壊しないため、レジンなどの弾性体が不要となる。このように、半導体部材3と第1金属部材1の接合処理と、半導体部材3と第2金属部材5との接合処理とは、別々に行ってもよく、一度に行ってもよい。
【0029】
図2を参照して、通電テストを行った具体例を説明する。
【0030】
図2(a)を参照して、比較のために行った通電テストを説明する。半導体部材13
1及び13
2は、SiCチップである。接合部材15
1及び15
2は、アルミシートである。金属部材11は、NiめっきCu板(Ni plated Cu plate)である。半導体部材13
1及び13
2の上面には、アルミスパッタ層17
1及び17
2が形成されている。接合部材15
1とアルミスパッタ層17
1及び金属部材11との間には、半導体部材13
1が存在する。この場合、アルミスパッタ層17
1と金属部材11との間は、通電しなかった。
【0031】
図2(b)を参照して、通電テストを行った具体例のアプリケーション構造を説明する。第1金属部材21及び第2金属部材25は、NiめっきCu板である。2つの半導体部材23
1及び23
2は、SiCチップである。半導体部材23
1は、第1アルミシート27
1及び第2アルミシート29
1を利用して、それぞれ、下及び上に、第1金属部材21及び第2金属部材25が両面接合されている。半導体部材23
2は、第1アルミシート27
2及び第2アルミシート29
2を利用して、それぞれ、下及び上に、第1金属部材21及び第2金属部材25が両面接合されている。
【0032】
図2(c)は、第2金属部材25を剥がして行った通電テストの結果を示す。第2アルミシート29
1及び29
2の一部である上面アルミシート31
1及び31
2は、それぞれ、半導体部材23
1及び23
2に接合したままである。第2アルミシート29
1及び29
2の残部33
1及び33
2は、第2金属部材25に接合したままである。
【0033】
通電テストを行ったところ、半導体部材23
1と上面アルミシート31
1との間、半導体部材23
1と第1アルミシート27
1との間、及び、半導体部材23
1と半導体部材23
2との間は、通電しなかった。他方、上面アルミシート31
1と第1アルミシート27
1との間は、
図2(a)の場合とは異なり通電した。同様に、上面アルミシート31
1と第1金属部材21との間及び上面アルミシート31
1と上面アルミシート31
2との間は、通電した。
【0034】
このように、SiCチップの異なる面である第1面及び第2面のそれぞれに対して、無垢のアルミシートを利用して音エネルギーにより第1金属部材及び第2金属部材を接合することにより、第1面のアルミシートと第2面のアルミシートとの間にはSiCチップが存在するにもかかわらず、通電が検出された。Siチップであっても、無垢のアルミシートを利用して音エネルギーで複数の金属部材と接合することにより同様の通電結果が得られた。
【0035】
接合部材と半導体部材の材料の組み合わせによっては、アルミシートの場合と同様に音エネルギーを利用した接合を行っても、半導体部材を介した通電が得られない場合も考えられる。例えば、発明者の現時点での実験では、SiチップでもSiCチップでも、無垢のアルミシートを利用した場合には、接合性も導電性も確認できている。また、銅シートでも、接合性及び導電性が認められた。他方、白金シートは、接合性がよいが、現時点では導電性は確認されていない。ただし、発明者のこの実験は、白金を使用した場合に、導電性を否定するものではないことに留意されたい。例えば、複数のSiCチップに対して、一部のSiCチップについてはアルミシートを利用し、他のSiCチップについては白金シートを利用して同様に接合処理を行うことにより、アルミシートを利用したSiCチップでは導電性を得、白金シートを利用したSiCチップでは導電性を得ないような接合処理を実現することができることを示している。スパッタ層を利用したり音エネルギーなどの接合条件を変えたりすることにより、同様に、複数のSiCチップの一部では導電性を得、残りのSiCチップでは導電性を得ないようなことも可能である。
【0036】
このように、例えば、複数の半導体部材が存在する場合に、第1金属部材及び/第2金属部材を剥がした状態での第1接合部材と第2接合部材との間で、すべての半導体部材において通電するようにしてもよく、すべての半導体部材において通電しないようにしてもよく、一部の半導体部材において通電して他の半導体部材において通電しないようにしてもよい。
【0037】
図3は、複数の階層を備える接合半導体装置の例を示す。
図3では、半導体部材108
1は半導体チップ103
1及び104
1を含み、半導体部材108
2は半導体チップ103
2及び104
2を含む。
図3では、各半導体部材において複数の半導体チップが上下に存在している。
【0038】
半導体部材1081において下に位置する半導体チップ1031は、その下面に、第1接合部材1091を介して第1金属部材101が接合している。半導体部材1081において上に位置する半導体チップ1041は、その上面に、第2接合部材1131を介して第2金属部材107が接合している。半導体チップ1031の上面と半導体チップ1041の下面は、第3接合部材1111を介して接合している。
【0039】
半導体部材1082において下に位置する半導体チップ1032は、その下面に、第1接合部材1092を介して第1金属部材101が接合している。半導体部材1082において上に位置する半導体チップ1042は、その上面に、第2接合部材1132を介して第2金属部材107が接合している。半導体チップ1032の上面と半導体チップ1042の下面は、第3接合部材1112を介して接合している。
【0040】
半導体チップ1031、1041、1032及び1042の各面の接合処理は、同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。
【0041】
半導体チップ1041には、電極1051及び1053が形成されている。半導体チップ1042には、電極1052及び1054が形成されている。
【0042】
実験では、半導体チップ1031、1032、1041及び1042としてSiCチップを利用した。
【0043】
最初の実験は、第1金属部材101及び第2金属部材107がNiめっき銅板であり、第1接合部材109、第2接合部材113、第3接合部材111がアルミシートであり、電極105がアルミ電極である場合である。
図3(c)及び(d)は、実際に作成したものの断面図及びその拡大図である。この場合、第1金属部材101と第2金属部材107との間、第1金属部材101と電極105
1との間、第2金属部材107と電極105
1との間及び電極105
3と電極105
2との間では通電を確認した。他方、半導体チップ103
1と第1金属部材101との間、半導体チップ103
1と第2金属部材107との間、半導体チップ103
1と電極105
1との間、半導体チップ103
1と103
2の間では、通電を確認できなかった。
【0044】
次の実験は、第1金属部材101及び第2金属部材107がアルミ板であり、第1接合部材109、第2接合部材113、第3接合部材111がアルミシートであり、電極105がアルミ電極である場合である。この場合も、同様に、第1金属部材101と第2金属部材107との間、第1金属部材101と電極1051との間、第2金属部材107と電極1051との間及び電極1053と電極1052との間では通電を確認した。他方、半導体チップ1031と第1金属部材101との間、半導体チップ1031と第2金属部材107との間、半導体チップ1031と電極1051との間、半導体チップ1031と1032の間では、通電を確認できなかった。
【0045】
このように、半導体チップ自体は通電しなくても、半導体チップに電極を設けることにより通電を得ることができる。
【0046】
図4は、複数の階層を備える接合半導体装置の他の例を示す。例えば、
図1(f)及び(g)では、第1金属部材1に接合した状態の半導体部材3に対して、第2金属部材5を接合している。同様の接合処理によって、第2金属部材5に対して、さらに半導体部材を接合して、さらに金属部材を接合させることにより、複数の階層を備える接合半導体装置を作成することができる。
【0047】
図4(a)を参照して、第1金属部材41は、放熱・吸熱を目的とした部材である。例えば、Niめっき銅板、銅板などである。
【0048】
図4(b)を参照して、第1接合部材を利用して、第1金属部材41の上に、一つ又は複数の半導体部材43を接合する。半導体部材43は、例えば、SiCチップ、Siチップである。第1接合部材は、例えばアルミシートである。半導体部材43と第1金属部材41との間に第1接合部材を挟んだ3次元構造の異種材料間音波接合を行う。半導体部材43と第1金属部材41は、大気中常温の環境で音エネルギーのみで原子が励起されてジョイントする。
図4(b)では、4つの半導体部材43
1、43
2、43
3及び43
4を、マルチ材料間の溶解拡散接合で一括接合する。なお、第1接合部材は、複数の半導体部材に共通のものを使用してもよく、異なるものを使用してもよい。
【0049】
図4(c)を参照して、第2金属部材45を、第2接合部材を利用して半導体部材43に接続する。半導体部材43は、上下に、第1金属部材41及び第2金属部材45が両面接合する。なお、第2接合部材は、複数の半導体部材に共通のものを使用してもよく、異なるものを使用してもよい。
【0050】
図4(d)を参照して、第3接合部材を利用して、第2金属部材45の上に、一つ又は複数の半導体部材47を接合する。半導体部材47は、例えば、SiCチップ、Siチップなどである。第3接合部材は、例えばアルミシートである。半導体部材47と第2金属部材45との間に第3接合部材を挟んだ3次元構造の異種材料間音波接合を行う。半導体部材47と第2金属部材45は、大気中常温の環境で音エネルギーのみで原子が励起されてジョイントする。
図4(d)では、4つの半導体部材47
1、47
2、47
3及び47
4を、マルチ材料間の溶解拡散接合で一括接合する。なお、第3接合部材は、複数の半導体部材に共通のものを使用してもよく、異なるものを使用してもよい。
【0051】
図4(e)を参照して、第3金属部材49を、第4接合部材を利用して半導体部材47に接続する。半導体部材47は、上下に、第2金属部材45及び第3金属部材49が両面接合する。なお、第4接合部材は、複数の半導体部材に共通のものを使用してもよく、異なるものを使用してもよい。
【0052】
【0053】
図5(a)を参照して、第1金属部材51、第2金属部材55及び第3金属部材59は、例えば、Cu板、NiめっきCu板などである。半導体部材53
1及び53
2並びに57
1及び57
2は、例えば、Siチップ、SiCチップなどである。
【0054】
半導体部材531は、第1接合部材611及び第2接合部材631を利用して、それぞれ、下及び上に、第1金属部材51及び第2金属部材55が両面接合されている。半導体部材532は、第1接合部材612及び第2接合部材632を利用して、それぞれ、下及び上に、第1金属部材51及び第2金属部材55が両面接合されている。
【0055】
半導体部材571は、第3接合部材651及び第4接合部材671を利用して、それぞれ、下及び上に、第2金属部材55及び第3金属部材59が両面接合されている。半導体部材572は、第3接合部材652及び第4接合部材672を利用して、それぞれ、下及び上に、第2金属部材55及び第3金属部材59が両面接合されている。
【0056】
半導体部材531、532、571及び572は、全部が通電しないように接合されていてもよく、全部が通電するように接合されていてもよく、一部が通電して残部は通電しないように接合されていてもよい。
【0057】
図5(b)を参照して、従来は、線71
1にあるように、必要な精度で半導体部材をカットできなかった。そのため、設計に不要な制限が生じ、さらに、前処理及び後処理が必要になっていた。それに対し、発明者により高精度なカッターが実現でき(特願2020-125474参照)、線71
2にあるように半導体部材を含めてカットできるようになった。これにより、前処理及び後処理の一部又は全部を省略して、シンプルな工程によって接合半導体装置を作成することができることとなった。
【0058】
図6及び
図7は、発明者が実際に作成した接合半導体装置を示す。
【0059】
図6(a)は、SiCチップの上下にNiめっき銅板のヒートシンクを両面接合した両面ダイボンドの内部構造のイメージを示す。4個のSiCチップ(SiC Chip)161が、2面のNiめっき銅板(Nickel-plated copper plate)163及び165の間に両面ダイボンドされたSiCパッケージである。
【0060】
図6(b)は、音波接合による両面ダイボンド後のものである。
図6(c)は、音波両面接合の断面の観察例である。
図6(d)は、
図6(c)の接合部の拡大である。異種材料を重ねた「3DB(3D structure sound bonding)&DMB(Different Materials Bonding)」接合が実現されている。SiCチップ171とNiめっき銅板(ヒートシンク)(Nickel-plated copper plate (Joint marked surface))167及び169の間にアルミシート173及び175を挟み、SiCチップ171の両面接合を実現する。音エネルギーのみで接合でき、接着剤や金属ペーストの加熱が不要である。ヒートショックテスト(―50~600℃)をクリアし、各チップの水平押し接合強度は500N以上であった。これは、大気中常温接合で実現でき、接合のエネルギー源は電気とエアーのみであり、デスクトップ接合である。
【0061】
図7(a)は、SiCチップの上下に銅板のヒートシンクを両面接合した両面ダイボンドの内部構造のイメージを示す。4個のSiCチップ(SiC Chip)181が、2面の銅板(Copper plate)183及び185の間に両面ダイボンドされたSiCパッケージである。
【0062】
図7(b)は、音波接合による一面のダイボンド後のものである。アルミシート191を用いて4つのSiCチップ187が銅板189に接合されている。SiCチップは、一辺が5.0mmの正方形で、厚さt=0.35mmである。アルミシートは、厚さt=100μmである。銅板は、20mm×30mmの長方形であり、厚さt=2mmである。
図7(b)の状態に対して、銅板193を重ねて接合する。
図7(c)は、音波接合による両面ダイボンド後のものである。
【0063】
図7(d)は、音波両面接合の断面の観察例である。
図7(e)は、
図7(d)の接合部の拡大である。SiCチップ187と銅板189及び193の間にアルミシート191及び195を挟み、SiCチップ187の両面接合を実現する。3D構造の異種材料間音波接合であり、大気中常温の環境で音エネルギーのみで原子が励起されジョイントされる複数材料間の溶解拡散接合である。ヒートショックテスト(―50~600℃)をクリアし、各チップの水平押し接合強度は500N以上であった。
【符号の説明】
【0064】
1,21,41,51,81,101 第1金属部材、3,13,23,43,47,53,57,108 半導体部材、5,25,45,55,85,107 第2金属部材、6 接合装置、7 加圧部、8 共振部、9 振動子、11 金属部材、15 接合部材、17,89 アルミスパッタ層、27 第1アルミシート、29 第2アルミシート、31 上面アルミシート、33 残部、49,59 第3金属部材、61 第1接合部材、63 第2接合部材、65 第3接合部材、67 第4接合部材、71 線、83,161,171,181,187 SiCチップ、87 チタンスパッタ層、91,93 アルミシート、103,104 半導体チップ、105 電極、109 第1接合部材、111 第3接合部材、113 第2接合部材、163,165,167,169 Niめっき銅板、173,175,191,195 アルミシート、183,185,189,193 銅板