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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】撮像リングを含む放射線治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20230413BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61B6/03 321K
A61B6/03 377
A61B6/03 321Q
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022524151
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2020080467
(87)【国際公開番号】W WO2021084045
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】19206319.6
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318004198
【氏名又は名称】イオン ビーム アプリケーションズ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Ion Beam Applications S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】デバティ,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】デシー,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】クレルボ,イヴ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0085640(US,A1)
【文献】米国特許第04741015(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0005027(US,A1)
【文献】国際公開第2003/018132(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療システムの治療区域内の標的組織へのエネルギービームの送出のための放射線治療装置において、
a)前記放射線治療装置は、アイソセンターIを中心とする円であってガントリー(1)の回転軸Z1に垂直な円を中心にビーム送出システムの端(2)を回転させための回転可能なガントリー(1)を含み、前記ビーム送出システムの前記端(2)と前記アイソセンターIとの間の経路は、前記回転軸Z1を中心とする前記ガントリー(1)のあらゆる回転角におけるビーム中心軸Z2を定義し;
b)前記放射線治療装置は撮像リング(3)を含み、前記撮像リング(3)は、中央穴(4)を含み、そして前記中央穴(4)に沿って延伸する穴軸X1によりそして撮像リング面(X2,X3)を定義する第1及び第2の主軸X2,X3により定義され、前記軸X1,X2,X3は、前記撮像リング(3)の中心Rにおいて直交及び交差し、前記撮像リング(3)は以下のもの:
i.撮像システムであって、当該撮像システムの撮像区域内で患者の画像を取得し、前記撮像区域は前記穴軸X1と交差する、撮像システム;
ii.前記撮像リング(3)を通るエネルギービームの通路のチャネル(51)を有するビームライン部(5)
を含み;
c)前記撮像リング(3)は、その撮像区域が前記ガントリーの前記回転軸Z1と交差し、そして前記撮像リング(3)が機械的構造(6)を介し前記回転可能なガントリー(1)へ機械的に結合されるように前記放射線治療装置内に位置し、以下:
i.前記機械的構造(6)は、前記機械的構造(6)が前記ビーム中心軸Z2を中心に前記ガントリー(1)に対して回転可能であるように前記ガントリ(1)へ機械的に結合され、
ii.前記撮像リング(3)は、以下:
●前記撮像リング(3)中心Rは前記ビーム中心軸Z2上に位置し;
●前記撮像リング(3)は前記撮像リング(3)の第2の回転軸Y2を中心に前記機械的構造(6)に対して回転可能であり、前記回転軸Y2は前記撮像リング面(X2,X3)に属し、前記回転軸Y2は前記ビーム中心軸Z2に対し垂直であるように前記機械的構造(6)へ機械的に結合される
ことを特徴とする、放射線治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線治療装置において、
a)前記撮像リング(3)は、前記第2の回転軸Y2が前記ビーム中心軸Z2に対し垂直であるように前記機械的構造(6)へ機械的に結合され;
b)前記標的組織を照射する前記エネルギービームの前記通路の前記チャネル(51)は前記第2の回転軸Y2に対し垂直な軸上に位置することを特徴とする放射線治療装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線治療装置において、前記撮像リング中心Rは前記アイソセンターIに位置することを特徴とする放射線治療装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の放射線治療装置において、前記撮像システムは、前記撮像リング(3)の前記中心Rを中心に円状経路に沿って前記撮像リング(3)に対して平行移動及び/又は回転され得るように前記撮像リング(3)へ可動的に取り付けられるいくつかの可動撮像デバイスを含むことを特徴とする放射線治療装置。
【請求項5】
請求項4に記載の放射線治療装置において、X線管などの2つの可動X線生成器(31a、31b)及び平面パネル検出器などの2つの可動X線検出器(32a、32b)を含むことを特徴とする放射線治療装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の放射線治療装置において、前記可動撮像デバイスは前記撮像リング(3)の外殻(31)内に封入されることを特徴とする放射線治療装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の放射線治療装置において、ビーム測定デバイス(52)が、前記エネルギービームの前記通路の前記チャネル全体にわたって前記撮像リング(3)の前記ビームライン部内に設けられることを特徴とする放射線治療装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の放射線治療装置において、前記放射線治療システムは粒子ビーム装置であり、前記ビーム送出システムの前記端(2)は粒子ビームノズル(2n)の出口に対応することを特徴とする放射線治療装置。
【請求項9】
請求項8に記載の放射線治療装置において、前記撮像リング(3)の前記ビームライン部(5)の外側表面は前記粒子ビームノズル(2n)を収容するための凹部(53)を含むことを特徴とする放射線治療装置。
【請求項10】
請求項9に記載の放射線治療装置において、ビーム測定デバイス(52)が前記凹部(53)内に設けられることを特徴とする放射線治療装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の放射線治療装置において、前記機械的構造(6)は、前記ビーム中心軸Z2を有する面を形成するとともに前記機械的構造(6)の中央部分(60)へ強固に結合される2つのアーム(6a,6b)を含み、
前記中央部分(60)は、前記機械的構造(6)が前記ビーム中心軸Z2を中心に前記ガントリー(1)に対して回転可能であるように前記ガントリー(1)へ機械的に結合され、前記中央部分(60)はビーム送出システムの端(2)を囲み、前記第2の回転軸Y2は前記2つのアーム(6a,6b)の両端と交差することを特徴とする放射線治療装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の放射線治療装置において、前記撮像リングは前記ガントリー(1)上の基盤又は第2の結合点へ機械的に結合されることを特徴とする放射線治療装置。
【請求項13】
寝台などの患者支持部を含む患者測位システムを含む請求項1乃至12の何れか一項に記載の放射線治療装置において、前記患者測位システムは、前記患者支持部の運動と前記ガントリー(1)及び前記撮像リング(3)の運動とを同期させるためのコントローラを含むことを特徴とする放射線治療装置。
【請求項14】
請求項13に記載の放射線治療装置において、前記患者測位システムは前記撮像リング(3)へ機械的に結合されることを特徴とする放射線治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能なガントリーを含み且つ撮像能力を有する放射線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガントリーベース放射線治療装置では、ガントリーは、アイソセンターを中心とする円であって一般的には水平方向である回転軸Zに垂直な円を中心にビーム輸送システムの端を回転させるように患者の周囲を移動する。治療用ビーム輸送システムの端とアイソセンターとの間の経路は、回転軸Zを中心とするあらゆる角度でビーム中心軸を定義する。治療用ビームにより処理される腫瘍などの標的組織は通常はアイソセンター近くに位置決めされる。これは「ガントリーの任意の角度位置に関し、標的組織が、適切な技術的手段(例えば粒子治療装置の場合には走査磁石)のおかげでビーム中心軸に対する治療用ビームの小さな偏向により照射され得る」という点で有利である。
【0003】
このような放射線治療装置では、患者は、ガントリー回転軸Zと通常は交差する寝台又は任意の他の支持部上に横たわり得る。患者が受ける治療の特異性に依存して、患者の寝台又は任意の他の支持部及び最終的には患者の体はガントリー回転軸Zに対して様々な配向を有し得る。共面放射線治療では、患者は仰向け状態にあり、患者の体はガントリー回転軸Zと位置合わせされる。非共面放射線治療では、患者の体の長手軸はガントリー回転軸Zと同軸ではない。
【0004】
放射線治療システムに付随するのは、セットアップしそしていくつかの例では放射線送出手順を誘導するとともに治療中(in-treatment)標的運動を追跡するために使用される治療中画像を提供する撮像システムである。様々なシステム及び撮像技術がこのような目的のために使用され得る。
【0005】
従来技術の一構成では、X線管及びパネルなどの撮像デバイスが、ガントリーへ強固に取り付けられ得る、又はその代わりに、ガントリー回転軸と共軸の回転軸を中心にガントリーに対し独立に回転され得るようにガントリーへ結合され得る(米国特許出願第20110085640A1号に開示されるように)。しかし、これらの配置は、撮像デバイスが患者の体(その長手軸はガントリー回転軸Zと共軸ではない)を適切に撮像するために必要な機械的自由度を有しないので、ガントリーと患者支持部とのほぼ共面な構成で治療中撮像を行うことを可能にするだけである。仰向け患者を適切に撮像するために、撮像デバイスは患者の体長手軸と共軸な回転軸を中心に回転され得るということが実際には一般的に必要である。
【0006】
他の治療中撮像システムは、撮像源及び検出器を移動するための独立(ロボット化)連節システムを含む。このようなシステムは、患者測位システムとは完全に独立であってもよいしそれへ結合されてもよい。しかし、このようなシステムの運動は、制御するのが全く複雑であり、そしてこのようなシステムは患者をアイソセンターにおいて撮像するのに適切ではない。このような独立連節システムはシステム自体の基準系において移動するので、画像座標を放射線治療装置の基準系内で変換することも必要である。さらに、このようなシステムが通常含む複数の可動要素が、明らかな安全上の理由のために満足されるものではないガントリー又は患者との衝突のリスクを誘起する。このようなロボット化連節システムは例えば米国特許出願第2009/0074151号明細書に記載されている。
【0007】
欧州特許第2,539,020号明細書は画像誘導型放射線治療(IGRT:image-guided radiation treatment)のシステムを開示する。記載されたシステムは、回転可能なガントリーの第1の端と第2の端との間に延伸するいくつかのビーム部材の存在に依存する。放射線治療ヘッドは、非共面放射線治療を実現するためのこれらのビーム部材の1つの上に可動的に取り付けられ、一方、撮像源及び検出器はこれらのビーム部材の他に2つの上に取り付けられる。患者の周囲にケージ状構造を形成する様々なビーム部材を有するこのような配置はかなり厄介である。さらに、この文書において説明される配置はあらゆる放射線治療技術へは適用され得ない。実際、ガントリーへ取り付けられる可動治療ヘッドは例えば粒子ビーム装置により現実的には実現可能ではなく、ビーム輸送/送出システムはガントリーへ強固に結合される複雑且つ重い機器に依存する。
【0008】
米国特許出願第2013/0158382号明細書は非共面能力を有する医療システムを開示する。特に、このシステムは少なくとも1つの治療ヘッドを含む治療リングを含む。このシステムはさらに、ビームストッパの前側に又はその代わりに位置決めされ得る撮像デバイスを含み得る。治療リングは、回転可能なガントリーに等価である回転部材へ接続されており、そして旋回点において或る傾斜角だけ回転部材から角度的に移動され得る。旋回点は、回転部材に対する治療リングの傾斜を容易にするピン、蝶番、又は任意の他の機構であり得る。治療リングはさらに、自身の軸を中心に回転され得、治療デバイスは特定周縁場所へ固定される。代替的に、治療リングは自身の軸を中心に回転しないが、その代わりに治療デバイスが治療リングに対し治療リングの軸を中心に回転する。この回転は例えば、治療リング内の周縁トラックに沿って移動する治療デバイスにより達成され得る。この従来技術文書に記載される配置は、ガントリー回転軸に対する患者寝台配向の変化にではなく、非共面治療を届けるための治療リングとガントリーとの間の傾斜角の存在に依存する。この文書において説明される配置はあらゆる放射線治療技術へは適用され得ない。実際、治療ヘッドを含む治療リングとガントリーとの間のこのような傾斜角は例えば、粒子ビーム装置により現実的には実現可能ではなく、ビーム輸送/送出システムは、ガントリーへ強固に結合される複雑且つ重い機器に依存する。
【0009】
米国特許第4,741,015号明細書は、患者の生体構造の完全な三次元又は断面写真が利用可能にされるように、水平方向に配置された静止状態の患者の体の周囲の複数の方向にビーム発射するための装置を開示する。前記文書ではいかなる治療ビームも設けられていない。
【0010】
米国特許出願第2004/0005027号明細書は、回転接続を介し回転可能に支持されるC字形顎部を含む構造を開示する。リング部が、回転可能な支持体を介しC字形顎部へ回転可能に取り付けられる。
【0011】
国際公開第00/74779号パンフレットは外側ガントリー部分及び内側ガントリー部分を含む照射デバイスを開示しており、内側ガントリー部分は2つの支持場所において外側ガントリー部分により回転可能に支持される。いかなる撮像手段もここでは説明されていない。
【0012】
米国特許出願第2004/0184579号明細書は、撮像リングが水平又は垂直軸を中心に回転可能である放射線治療装置の実施形態を開示する。
【0013】
米国特許出願第2012/0307973号明細書は、治療室の側壁へ不動的に固定された投射アーム内に設けられる放射源を有する放射線治療システムを開示する。いかなる回転可能なガントリーもこの文書では設けられていない。
【0014】
米国特許出願第2013/0256551号明細書は放射線治療装置を開示しており、ここでは、撮像システムは、アーク状副レールに対して回転的にスライド可能であるように構成され、そして、水平軸を中心に回転可能な近位側ガントリー上に取り付けられる。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、回転可能なアイソセントリックガントリーへ取り付けられたビーム送出システムを有し且つアイソセンターに位置する標的組織の画像を提供し得る撮像システムを含む放射線治療装置を提供することである。放射線治療装置の撮像システムは、ビーム送出システムの存在にもかかわらず、その長手軸がガントリー回転軸と共軸でない患者の体を撮像するための方向、ガントリー軸に対し垂直な面から離れる方向、及びビーム軸に近い又はそれと共軸である方向を含む広範な方向に沿って撮像ビームを導くことによりガントリーの任意の角度位置のアイソセンターにおける画像を提供することができるべきである。放射線治療装置はまた、患者及び医療スタッフのために信頼でき且つ安全であるべきである。
【0016】
本発明は添付された独立請求項において定義される。好ましい実施形態は従属請求項において定義される。
【0017】
特に、本発明は、放射線治療システムの治療区域内の標的組織へのエネルギービームの送出のための放射線治療装置に関し、
a)放射線治療装置は、アイソセンターIを中心とする円であってガントリーの回転軸Z1に垂直な円を中心にビーム送出システムの端を回転させるための回転可能なガントリーを含み、ビーム送出システムの端とアイソセンターIとの間の経路は、回転軸Z1を中心にガントリーのあらゆる回転角におけるビーム中心軸Z2を定義し;
b)放射線治療装置は撮像リングを含み、前記撮像リングは、中央穴を含み、そして前記中央穴に沿って延伸する穴軸X1によりそして撮像リング面(X2,X3)を定義する第1及び第2の主軸X2,X3により定義され、前記軸X1,X2,X3は、前記撮像リングの中心Rにおいて直交及び交差し、前記撮像リングは以下のものを含み:
i.前記撮像システムの撮像区域内で患者の画像を取得するための撮像システムであって、前記撮像区域は穴軸X1と交差する、撮像システム;
ii.撮像リングを通るエネルギービームの通路のチャネルを有するビームライン部;
c)撮像リングは、その撮像区域がガントリーの回転軸Z1と交差するように放射線治療装置内に位置し、撮像リングは機械的構造を介し回転可能なガントリーへ機械的に結合され、
i.機械的構造は、ビーム中心軸Z2を中心にガントリーに対して回転可能であるようにガントリーへ機械的に結合され、
ii.撮像リングは、以下の意味で機械的構造へ機械的に結合される:
●撮像リング中心Rがビーム中心軸Z2上に位置し;
●撮像リングは撮像リングの第2の回転軸Y2を中心に機械的構造に対して回転可能であり、前記回転軸Y2は撮像リング面(X2,X3)に属し、前記回転軸Y2は前記ビーム中心軸Z2に対し垂直である。
【0018】
機械的構造は、ビーム送出システムの端とアイソセンターとの間の経路が機械的構造により妨げられないようなやり方でガントリーへ機械的に結合され得る。
【0019】
有利な実施形態では、撮像リングは、以下の意味で機械的構造へ機械的に結合される:第2の回転軸Y2はビーム中心軸Z2に対し垂直であり、前記標的組織を照射するエネルギービームの通路のチャネル51は第2の回転軸Y2に対し垂直な軸上に位置する。
【0020】
有利な実施形態では、撮像リング中心RはアイソセンターIに位置する。
【0021】
有利な実施形態では、撮像システムは、撮像リングの中心Rを中心に円状経路に沿って撮像リングに対して平行移動及び/又は回転され得るように撮像リングへ可動的に取り付けられるいくつかの可動撮像デバイスを含む。
【0022】
有利な実施形態では、撮像システムはX線管などの2つの可動X線生成器と平面パネル検出器などの2つの可動X線検出器とを含む。
【0023】
有利な実施形態では、可動撮像デバイスは撮像リングの外殻内に封入される。
【0024】
有利な実施形態では、ビーム測定デバイスがエネルギービームの通路のチャネル全体にわたって撮像リングのビームライン部内に設けられる。
【0025】
有利な実施形態では、放射線治療システムは粒子ビーム装置であり、ビーム送出システムの端は粒子ビームノズルの出口に対応する。
【0026】
有利な実施形態では、撮像リングのビームライン部の外側表面は粒子ビームノズルを収容するための凹部を含む。
【0027】
有利な実施形態では、ビーム測定デバイスは前記凹部内に設けられる。
【0028】
有利な実施形態では、機械的構造は、ビーム中心軸Z2を有する面を形成するとともに前記機械的構造の中央部分へ強固に結合される2つのアームを含み、前記中央部分は、以下の意味でガントリーへ機械的に結合される:機械的構造はビーム中心軸Z2を中心にガントリーに対して回転可能であり、前記中央部分はビーム送出システムの端を囲み、第2の回転軸Y2は前記2つのアームの両端と交差する。
【0029】
有利な実施形態では、撮像リングはガントリー上の基盤又は第2の結合点へ機械的に結合される。
【0030】
有利な実施形態では、放射線治療装置は寝台などの患者支持部を含む患者測位システムを含み、前記患者測位システムは、患者支持部の運動とガントリー及び撮像リングの運動とを同期させるためのコントローラを含む。
【0031】
有利な実施形態では、患者測位システムは撮像リングへ機械的に結合される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明のこれら及び別の態様は一例としてそして添付図面を参照してより詳細に説明されることになる。
図1図1は、共面構成の本発明による放射線治療装置の図である。
図2図2は、非共面構成の本発明による放射線治療装置の図である。
図3図3は、患者支持部が概略的に表される本発明による放射線治療装置の図である。
図4図4は、本発明による放射線治療装置からの撮像リングの図である。
図5図5は、本発明による放射線治療装置からの撮像リングの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面は原寸に比例して描かれていない。
【0034】
図1及び2は、前記放射線治療システムの治療区域内の標的組織へのエネルギービームの送出のための本発明による放射線治療装置の例を示す。
【0035】
放射線治療装置は、アイソセンターIを中心とする円であってガントリー1の回転軸Z1に垂直な円を中心にビーム送出システムの端2を回転させための回転可能なガントリー1を含む。ビーム送出システムの端2とアイソセンターIとの間の経路は、回転軸Z1を中心とするガントリー1のあらゆる回転角におけるビーム中心軸Z2を定義する。図1に表すように、ビーム送出システムの端2は、回転可能なガントリー1上に取り付けられるノズル2nの先端であり得る。
【0036】
放射線治療装置の1つの必須特徴は撮像リング3である。撮像リングは中央穴4を含む。撮像リング3は、前記中央穴4に沿って延伸する穴軸X1によりそして撮像リング面(X2,X3)を定義する第1及び第2の横軸X2,X3により定義される。軸X1,X2,X3は前記撮像リング3の中心Rにおいて直交及び交差する。撮像リング3は以下のものを含む:
i.前記撮像システムの撮像区域内で患者の画像を取得するための撮像システムであって、撮像区域が穴軸X1と交差する、撮像システム;
ii.撮像リング3を通るエネルギービームの通路のチャネル51を有するビームライン部5。
【0037】
撮像リング3は、その撮像区域がガントリーの回転軸Z1と交差し、そして撮像リング3が機械的構造6を介し回転可能なガントリー1へ機械的に結合されるように放射線治療装置内に位置し:
i.機械的構造6は、前記機械的構造6がビーム中心軸Z2を中心にガントリー1に対して回転可能であるようにガントリー1へ機械的に結合され、
ii.撮像リング3は、以下の意味で機械的構造6へ機械的に結合される:
1.撮像リング3中心Rがビーム中心軸Z2上に位置し;
2.撮像リング3が撮像リング3の第2の回転軸Y2を中心に機械的構造6に対して回転可能であり、前記回転軸Y2は撮像リング面(X2,X3)に属し、前記回転軸Y2はビーム中心軸Z2に対し垂直である。
【0038】
撮像リング3上の撮像システムの取り付けは極めて有利な機械的構成を提示する。撮像リング3はガントリー1に対してビーム中心軸Z2及び第2の回転軸Y2を中心に回転可能であるので、有利には、機械的アクチュエータ及び専用制御システムのおかげで、撮像システムは、ガントリーの任意の角度位置に関してそしてガントリーの回転軸に対する患者の共面及び非共面構成の両方の構成に関してアイソセンターにおいて画像を取得するために使用され得る。撮像リング3は実際に、リング穴軸X1が患者支持部の非共面構成に関してしたがってガントリー1の任意の角度位置に関してすら患者支持部長手軸と共軸であるように、2つの回転軸Z2、Y2を中心に回転され得る。
【0039】
「独立な連接撮像システム機械的支持体が、放射線治療装置が位置する部屋の床に対応する固定基準系に対し移動される」従来技術と比較して、撮像リング3の回転可能なガントリー1への機械的結合は、撮像リング3へ専用化される必要がある自由度を最少化することを可能にする。実際、撮像リング3を通るエネルギービームの通路のチャネル51を有するビームライン部5の存在と共に軸Z2、Y2に対する回転内の2つの自由度は、ガントリーの任意の角度位置に関してそして放射線治療装置の任意の共面及び非共面構成に関して撮像システムの適切な位置決めを保証するのに十分である。ビームラインチャネル51は、エネルギービームのほぼすべてを送信する真空維持要素及び/又は材料を含み得る。したがって、機械的構造6はガントリー1へ機械的に結合される。機械的構造6とガントリー1との間の機械的結合は、機械的構造6とガントリー1との間の直接機械的結合から又は機械的構造6とガントリー1へ強固に結合されるビームノズル2nなどの要素との間の機械的結合から生じ得る。
【0040】
さらに、この構成では、撮像システム機械的支持部(すなわち撮像リング3)は、ビーム送出システム(すなわち回転可能なガントリー)の基準系に対して直接的に移動される。したがって、ビーム送出システム及び撮像システムのための同じ基準系を有することは、ガントリーのアイソセンターに位置決めされる標的組織を撮像するための取り組みの複雑性を低減する。共通基準系を有するこの構成では、ガントリーに対するその相対位置を測定するための追加測位システムを撮像システムへ提供することは実際には必要でない。
【0041】
この構成では、撮像リング3は好適には、第2の回転軸Y2がビーム中心軸Z2に対し垂直であるように機械的構造6へ機械的に結合される。前記標的組織を照射するエネルギービームの通路のチャネル51は第2の回転軸Y2に対し垂直な軸上に位置する。したがって、この構成では、チャネル51が撮像リングの軸X2上に位置する場合、第2の回転軸Y2は図1及び2に表される第2の横軸X3と共軸であるので有利である。
【0042】
好ましい実施態様では、図1及び2に表されるように、機械的構造6及び撮像リング3は、撮像リング中心RがアイソセンターI上に位置するように構成される。この構成では、ビーム中心軸Z2と撮像リング3の第2の回転軸Y2とは、アイソセンターIにおいてそしてガントリー1の任意の角度位置に関し交差する。換言すれば、撮像リング中心Rは、固定基準系においてガントリー1の回転下で不変位置を有する(床に取り付けられる)。これは、この構成ではガントリーのアイソセンターIにおける撮像がガントリー1の任意の角度位置の撮像リング中心Rにおける撮像と等価であるという点で有利である。
【0043】
前に論述されたように、撮像リング3は、前記撮像システムの撮像区域内の患者の画像を取得するための撮像システムを含む。このような撮像デバイスは、有利には撮像リング3の中心Rを中心に円状経路に沿って撮像リング3に対して平行移動及び/又は回転され得るように撮像リング3へ可動的に取り付けられ得る。図5に表すように、このような撮像デバイスは、円錐ビームコンピュータ断層撮影走査技術(CBCT:cone beam computed tomography scanning technique)を実施するように構成されたX線管31a、31bなどの2つの可動X線生成器及び平面パネル検出器32a、32bなどの2つの可動X線検出器を含み得る。図5に表される実施形態では、撮像リング3は、平面パネル検出器32a、32bが撮像リング3の中心Rを中心に完全な円状経路に沿って移動し得る一方でX線管31a、31bがビームライン部5の中心Rを中心に円弧に沿ってであるがその2つの端5a、5bにより境界を定められたビームライン部5の外側だけで移動し得るように構成される。他の実施形態では、撮像システムは、古典的コンピュータ断層撮影走査技術(CTスキャン)を実施するように構成された撮像デバイスを含み得る。他の実施形態では、撮像リング3は、即発ガンマ(prompt gamma)又は陽電子放射断層撮影(PET:positron-emission tomography)などの他の撮像技術を実施するための撮像デバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、単一の撮像リング3が、様々な撮像技術を実施するように構成された複数の撮像デバイスを含み得る。
【0044】
図5を参照すると、撮像リング3は、撮像リングがビームノズル2nから離れることを許容するために十分に傾斜され得る。次に、撮像リングは、X線管21a又は31bがビームノズルの近傍に出現するまで回転され得る。この構成では、画像は、ビーム中心軸Z2の近くの方向に撮影され得る。
【0045】
可動デバイスが撮像リング3へ取り付けられる場合、撮像リング3は有利には、図1~5に表されるような前記可動デバイスを封入するための外殻31を含む。このような外殻31は、可動デバイス31a、31b、32a、32bと患者との間の衝突のリスクを抑制するので患者のための本発明による放射線治療装置の安全性を増加する。
【0046】
撮像リング3はまた、エネルギービームの通路のチャネル51全体にわたってビームライン部5内に設けられる電離箱、平面パネル又は範囲監視装置などの少なくとも1つのビーム測定デバイス52を含み得る。このような種類のビーム測定デバイスデバイスは実際、患者へ送出される前にチャネル51全体にわたって循環するビームの特性を照査するために使用され得る。このような測定デバイスは当然、エネルギービームがチャネル51全体にわたって循環する(ガントリー1の任意の角度位置の放射線治療装置の共面構成でもっぱら発生する)ときだけ作動される。放射線治療装置の非共面構成では、エネルギービームはガントリー1の特定角度位置においてだけチャネル51全体にわたって循環することになり、したがってビーム測定デバイス52はこのような特定角度位置においてだけ作動され得る。
【0047】
図1~5に表される実施形態では、放射線治療装置は粒子ビームを送出するように構成される。このような実施形態では、ビーム送出システムの端は粒子ビームノズル2nの出口2に対応することが有利である。この構成では、撮像リング3のビームライン部5の外側表面は粒子ビームノズル2nを収容するための凹部53を含み得る。このような凹部は、粒子ビームノズル2nの長さを増加することと、結果的に粒子ビームノズル2nの出口2とアイソセンターIとの間の距離を低減することとを可能にする。この構成は、大きなノズル-アイソセンター距離の場合に観測されるビームの広がりを最小化するという点で有利である。次に、ビーム測定デバイス52は前記凹部53内に設けられることが有利である。図1~5に表されるように、ガントリー1は有利には、ビーム送出システムが回転軸Z1を中心に回転されるように片持ち梁式やり方で取り付けられるC状アームの形状の片持ち梁ガントリーである。他のいくつかの実施形態では、片持ち梁ガントリー内のガントリーは、患者の体が貫通することを許容する中央開口又は穴を有するトロイド又はリングの形状であり得る。次に、ビーム送出システムはリングの周縁上に回転可能に取り付けられる。別の実施形態では、粒子ビーム装置の代わりに放射線治療装置は従来の放射線治療装置であり得る。
【0048】
図1及び2に表されるように、機械的構造は、ビーム中心軸Z2を有する面を形成する2つのアーム6a、6bを含み得、各アーム6a、6bは機械的構造6の中央部分60へ強固に結合される第1の端60a、60bを有する。中央部分60は、機械的構造6がビーム中心軸Z2を中心にガントリー1に対して回転可能であるようにガントリー1へ機械的に結合される。この構成では、粒子ビームノズル2nは有利には、中央部分が粒子ビームノズル2nを囲むように中央部分60の貫通穴に挿入される。次に、撮像リング3は2つのアーム6a、6bの第2の端61a、61bへ結合され、撮像リングの第2の回転軸Y2は前記第2の端61a、61bと交差する。
【0049】
いくつかの実施形態では、撮像リング3は機械的構造全体を強化するためにこのような機械的結合のための適切な自由度でもってガントリー1上の基盤へ又は第2の結合点へ機械的に結合され得る。
【0050】
本発明による放射線治療装置は有利には、寝台7などの患者支持部を含む患者測位システムを含む。このような患者測位システムは、有利にはロボット化され、そして標的組織を有する患者を放射線治療装置のアイソセンターIに位置決めするために必要な機械的自由度を保有する。患者測位システムは有利には、これらの様々な要素間の衝突を回避するために患者支持部の運動と撮像リング3及びガントリー1の運動とを同期するためのコントローラも含む。有利な実施形態では、患者測位システムは、撮像リング3と患者測位システムとの同期が容易にされるようにこのような機械的結合のための適切な自由度でもって撮像リング3へ機械的に結合される。
【0051】
本発明による放射線治療装置では、患者の衝突リスクが大いに低減され、そしてガントリーはいかなる他のガントリー解決策よりはるかに速く旋回し得る。
図1
図2
図3
図4
図5