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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20230414BHJP
   F25D 19/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
F25D11/00 101A
F25D19/00 510E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019026202
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2020133971
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 好正
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅至
(72)【発明者】
【氏名】正久 昌利
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-099541(JP,A)
【文献】特開平08-136008(JP,A)
【文献】実開昭53-039373(JP,U)
【文献】特開2017-015207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器へ供給する冷媒の流れを調節する流量弁を冷蔵庫に取り付けるための取付部材において、前記流量弁を前記取付部材に取り付ける第1の面と、前記取付部材を前記冷蔵庫の本体に取り付ける第2の面との間に、前記第1の面と前記第2の面とを接続する接続部を備え、前記接続部は前記流量弁を部分的に回り込むように折り曲がり形状を備え、前記流量弁を取り付けた前記第1の面側は前記本体に取り付けず自由端であることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記接続部は、金属製で湾曲形状としたことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記流量弁は樹脂製のホルダを介して取付部材に固定されたことを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記ホルダは流量弁の外郭を両持ち(対向)して固定して保持したことを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
コイルへの通電により前記流量弁の開度が開から閉に、または閉から開に動作する時のロータ内の磁石の回転スピードは、前記流量弁の開度が全閉、または全開となってギア部が度当たり状態となる起点出し時の前記磁石の回転スピードよりも高速とすることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒の流れを調節する流量弁を冷蔵庫に取り付けるための取付部材を備える冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、冷蔵庫は、圧縮機、コンデンサ、冷却器等で構成される冷凍サイクルを備え、この冷凍サイクルで冷媒を循環させることで冷却運転を行う。また、近年の冷蔵庫には、冷媒の流量を調節する流量弁や、冷媒の流路を第1の冷媒配管から第2の冷媒配管に切り替える流量弁を備えるものもある。特許文献1には、流量弁として、冷媒の流路を切り替える三方弁を備える冷蔵庫が開示されている。特許文献1の冷蔵庫は、ゴムを介して三方弁が冷蔵庫に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-099541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、三方弁のモータ部が駆動した場合に生じる水平方向の振動を、ゴムで吸収すると開示されている。しかしながら、特許文献1の構成では、三方弁の取り付けに用いるネジを介して、三方弁から生じる振動が冷蔵庫に伝わってしまう。
【0005】
即ち、特許文献1の構成では、ゴムによって吸収しきれない振動が三方弁から冷蔵庫に伝わってしまい、この振動によってユーザが不快に感じる音が冷蔵庫から発生してしまうという課題がある。
【0006】
そこで本発明では、冷媒の流れを調節する流量弁から冷蔵庫に振動が伝わることで発生する音を、従来よりも低減させる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明が提供する冷蔵庫は、冷却器へ供給する冷媒の流れを調節する流量弁を冷蔵庫に取り付けるための取付部材において、前記流量弁を前記取付部材に取り付ける第1の面と、前記取付部材を前記冷蔵庫に取り付ける第2の面の間に振動吸収手段を形成したものであり、流量弁を取付部材に取り付ける第1の面と、取付部材を冷蔵庫に取り付ける第2の面の間に振動吸収手段を設けているため振動が伝わり難くなり、庫内への騒音が軽減されるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷媒の流れを調節する流量弁から冷蔵庫に振動が伝わることで発生する音を、従来よりも低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の外観図
図2】同、冷蔵庫の縦断面図
図3】同、冷蔵庫のサイクル構成図
図4】同、冷蔵庫の第一の機械室を示した斜視図
図5】同、冷蔵庫の流量弁と取付部材を示した図
図6】同、冷蔵庫の流量弁の制御方法を示した図
図7】従来のゴムを介して三方弁を取付ける構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0011】
請求項1に記載の発明は、冷却器へ供給する冷媒の流れを調節する流量弁を冷蔵庫に取り付けるための取付部材において、前記流量弁を前記取付部材に取り付ける第1の面と、前記取付部材を前記冷蔵庫に取り付ける第2の面の間に振動吸収手段を形成したものである。
【0012】
これによって、流量弁が冷媒の流量調整および流路切り替えを行う時の動作時や、弁の動作位置を原点位置に戻すときに行う起点出し動作時において発生する振動や振動に起因する騒音を振動吸収手段によって吸収することができるため、冷蔵庫を使用する際に流量弁から生じる騒音や振動を抑制する効果を得る。特に流量弁からの振動が冷蔵庫本体に伝わりにくくなるため冷蔵庫のドアを開けた場合でも流量弁の動作音や起点出し音が聞こえにくくなる。
【0013】
一般に、冷蔵庫内の食品を出し入れするなどの場合はドアを開けて顔を庫内に近づけることが多いが、流量弁に限らずモータ動作で制御するデバイス等を取り付ける際には固定のため冷蔵庫本体に取り付けた流量弁から発する振動が庫内の内箱に伝搬し太鼓のように増幅されて庫内に聞こえ、伝わる振動の振幅や周波数によってはユーザが不快に感じる音が冷蔵庫から発生してしまうということがあるが、本発明のように流量弁を取付部材に取り付ける第1の面と、取付部材を冷蔵庫に取り付ける第2の面の間に振動吸収手段を設けているため振動が伝わりにくくなる。即ち、庫内への騒音が軽減される。
【0014】
請求項2に記載の発明は、特に第1の発明において、振動吸収手段の形状を流量弁の外周を囲むようにしたものである。
【0015】
これによって、流量弁の動作時に発する振動の前後方向と左右方向に対して減衰させる効果を生み出すため、弁自体の振動を軽減することができると共に庫内への振動伝搬も抑制することができる。また、弁の外周を囲むような形状とすることで第1の面と第2の面の間の距離を長く取れるため振動の減衰率を大きくすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、特に第1または第2の発明において、振動吸収手段を、金属製で湾曲形状としたものである。
【0017】
これによって、金属のバネ性により振動の抑制効果を高めると共に、取り付け時の強度確保も行うことができる。特に冷蔵庫を工場にて生産した後はトラックや人力等の輸送手段を介してユーザ宅へ搬入されるが、悪路や傾いた状態での輸送になることは珍しくない。金属製とすることで、このような輸送の場合でも落下や固定外れ等の状態を招くことはない。
【0018】
請求項4に記載の発明は、特に第1~3のいずれか1つの発明において、流量弁は樹脂製のホルダを介して取付部材に固定されたものである。
【0019】
これによって、金属に比べて減衰率の大きい樹脂にすることで振動軽減効果が大きくなり、弁自体の振動をさらに軽減することができると共に庫内への振動伝搬も更に抑制することができるため騒音低下に効果を発揮する。また、樹脂化することで弁自体の保持や冷蔵庫本体への取り付けの形状に設計自由度が生まれるため、作業性も含めて弁の取り付け向きや設置位置も自在に行うことができ、振動吸収の形状だけでなく生産性も考慮した形状の取り付け部材とすることができる。また、金属よりも自由度があるということは、金属の場合における歩留まりよりも向上することができることである。樹脂化は金属の場合に比べて成形性がよく、コストも安価となるためコストパフォーマンスの向上を図ることができる。さらに第1の面と第2の面をつなぐ取付部材を樹脂化するだけでなく、流量弁の受けとなる弁ホルダも樹脂化し一体化することで振動吸収の形状を形成するだけでなく、加振源である弁のロータ部分と弁ホルダとの接触面積を小さくする形状にできるため、弁自体の振動をさらに軽減することができると共に庫内への振動伝搬も更に抑制することができ、更なる騒音低下に効果を発揮する。
【0020】
請求項5に記載の発明は、特に第4の発明において、ホルダは流量弁の外郭を両持ち(対向)に固定して保持したものである。
【0021】
これによって、弁の発する振動を前後左右だけでなく上下方向でも抑制することができるため、3方向に渡って振動低減および騒音低減を行うことができる。特に流量弁は外郭がコイル部分であり内郭はロータ部分であるため上部から外郭をはめ込む形状となっている。
加振源であるロータ部分とロータを磁界により回転させるコイル部分の間には取り付ける上で隙間が生じることはやむを得ないが、隙間によるガタツキによって振動が増幅されてしまうため、本発明のように両持ちで固定保持することでガタツキを抑制すると共に上下方向の振動抑制で3方向の振動および騒音低減に効果を発揮できる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、特に第1~5のいずれか1つの発明において、流量弁の運転時の動作スピードを起点出し時よりも高速にしたものである。
【0023】
これによって、運転時及び起点出し時の振動を低減することができる。起点出し時の振動は、コイルがロータを回転させるための回転磁界を与えており、この回転磁界によってロータは回転しているが弁の開度が全閉となると、連結しているギア部は度当たりし、これ以上回転しない。しかしながら、コイルによる回転磁界はロータ外周を回り続けているため、止まっているロータに回転磁界が一周してきたとき、ロータは回転磁界に逆向きの力が働くため跳ね返ることとなる。これが起点出しの振動となり音となる。この跳ね返りの力を小さくするため起点出しを行う際には動作スピードを小さくする(遅くする)ことが有効であり行われているが、運転時も動作スピードを小さくすると音は小さくなるがギアの駆動の音・振動が発生しやすくなる。これはロータの中心に配設される軸が回転スピードが小さいためぶれやすくなるためである。そのため、本発明では、起点出しの動作スピードよりも運転時の動作スピードを大きくすることを行っている。これにより、運転時の動作スピードを速めることで独楽が安定するように軸がぶれ難くなりロータの回転が安定するため、運転時の振動が小さくなり音も小さくなる。しかも起点出し時は動作スピードを小さくすることで、弁の運転時、および起点出し時の動作全てにおいて低振動、低騒音を実現することができる。
【0024】
(実施の形態1)
図1は冷蔵庫100の外観図、図2は冷蔵庫100の縦断面を示す図、図3は冷蔵庫のサイクル構成図、図4は冷蔵庫100の第一の機械室111を示す図である。冷蔵庫100は、金属製(例えば鉄板)の外箱と、硬質樹脂製(例えばABS)の内箱と、外箱と内箱との間に充填した発泡断熱材(例えば硬質ウレタン)とで構成される。
【0025】
冷蔵庫100は、冷蔵室101、切替室102、製氷室103、冷凍室104、野菜室105とで構成される複数の貯蔵室を備える。図1の扉106、107、108、109、110は、それぞれ冷蔵室101、切替室102、製氷室103、冷凍室104、野菜室105を開閉するための扉である。
【0026】
上記冷蔵室101は、冷蔵保存するための貯蔵室で、凍らない程度の低い温度、具体的には、通常1~5℃に設定され冷却される。また、冷蔵室内に設けたパーシャル室150は微凍結保存に適した-2~-3℃に設定され、チルド室151は冷蔵室101よりも低くパーシャル室150よりは高めの1℃前後の温度に設定され冷却される。
【0027】
野菜室105は、冷蔵室101と同等もしくは若干高く温度設定される貯蔵室で、具体的には、2~7℃に設定され冷却される。この野菜室105は野菜等の収納食品から発せられる水分により高湿度となるため、局所的に冷えすぎると結露することがある。そのため、比較的高い温度に設定することで冷却量を少なくし、局所的な冷えすぎによる結露発生を抑制している。
【0028】
冷凍室104は、冷凍温度帯に設定される貯蔵室で、具体的には、通常-22~-18℃に設定され冷却されるが、冷凍保存状態向上のため、例えば-30℃や-25℃などの低温に設定され冷却されることもある。
【0029】
切替室102は、庫内の温度が変更可能な貯蔵室であり、用途に応じて冷蔵温度帯から冷凍温度帯まで切り換えることができるようになっている。
【0030】
また、前記冷凍室104の背面には冷却室137が設けてあり、この冷却室137には冷気を生成する冷却器118と、冷気を前記各室に供給する冷却器ファン120とが設置してある。そして更に冷却器118の下方にはガラス管ヒータ等で構成した除霜手段136(以下、ガラス管ヒータと称す)が設けてある。
【0031】
冷却器118は、圧縮機113と、凝縮器(コンデンサ)114と、放熱用の放熱パイプ(図示せず)と、ドライヤ115と、キャピラリーチューブ117とを環状に接続して冷凍サイクルを構成しており、圧縮機113によって圧縮された冷媒の循環によって冷却を行う。
【0032】
凝縮器114であるコンデンサは、機械室に配設されるアウターコンデンサ121と冷蔵庫100の背面及び側面等の外壁や扉の間口に配設されて結露防止の機能も持たせるインナーコンデンサ122の両方で構成される。
【0033】
また、冷却器ファン120は冷却器118の上方に設けてあり、その下流側に連なる冷蔵室ダクト160、冷凍室ダクト161、野菜室ダクト162を介して冷蔵室101、冷凍室104、野菜室105等に冷気を供給し、これら各室を冷却するようになっている。
【0034】
また、冷蔵庫100の背面上部には第一の機械室111、背面下部には第二の機械室112が設置されている。第一の機械室111には、幅方向の略中央に圧縮機113が配置されており、圧縮機113の吐出側パイプ側に凝縮器ファン119、アウターコンデンサ121を配置している。凝縮器であるコンデンサ114には、機械室に配設されるアウターコンデンサ121と冷蔵庫100の背面及び側面等の外壁や扉の間口に配設されて結露防止の機能も持たせるインナーコンデンサ122の両方で構成される。
【0035】
凝縮器ファン119は、アウターコンデンサ側を風上に圧縮機側に外部から取り込んだ空気を送風することでアウターコンデンサ121および圧縮機113を冷却する空冷式である。また、流量弁116は冷凍サイクル内において、ドライヤ115とキャピラリーチューブ117との間に接続され、なおかつアウターコンデンサ121よりも風上に設けている。これはアウターコンデンサ121からの廃熱影響を緩和するためである。
【0036】
特に外気温の高いときは凝縮器ファン119が運転するため風上に配置してある流量弁116には廃熱影響が少ないが、圧縮機113の運転が停止している場合や、低外気時に過凝縮を回避するために凝縮器ファン119を停止して圧縮機113を運転する場合は廃熱影響を受けやすいためである。
【0037】
また、第二の機械室112には、除霜ヒータ129の除霜によって発生した除霜水を貯める除霜皿140、除霜皿140に溜まった除霜水を蒸発させるための蒸発皿ファン(図示せず)等が収容されている。
【0038】
次に図4および図5を用いて、流量弁116を説明する。流量弁116は、取付部材145によって冷蔵庫100(本実施形態では第一の機械室111の壁面)に取り付けられている。コンデンサで凝縮され、ドライヤ115を通過した後の冷媒がドライヤ115と流量弁入口を繋ぐジョイントキャピラリーチューブ148から流量弁116に流入する。流量弁116で冷媒流量を調整した冷媒はキャピラリーチューブ117を通して冷却器118に流入する。
【0039】
流量弁116は、大きく外郭と内郭で構成される。外郭はコイル138であり電流を流すことで磁界を生じさせるが、電流の位相を変化させることで回転する磁界を生じさせている。また、コイル138は、コイル外郭固定部143で覆われている。
【0040】
内郭には、磁石であるロータ139と複数の細孔が設けられたディスク(図示せず)で主に構成されている。先の外郭のコイル138による回転磁界によって内郭のロータ磁石が回転しギア等で連結されたディスクが回転することで指定の細孔を選択するように動かしている。ディスクの細孔の一つを選択することで冷媒流量を調節する構成となっている。
【0041】
なお、選択される細孔には閉孔も含まれており、圧縮機113の運転OFF時に閉孔を選択することで、機械室側にある高温高圧の冷媒が低温低圧の冷却器118に流入することを防止している。
【0042】
これをガスカットと言い、冷媒の流入によって冷却器118の温度上昇および熱負荷となることを防止することで消費電力量の低減を行うことができる。特に圧縮機113のON/OFF回数が多いほど省エネ効果が大きくなる。
【0043】
本実施の形態では、弁の内部に細孔をもつ流量弁としているが、流量を切り替える三方弁や四方弁、冷媒流量をON/OFFするのみの二方弁でも同様である。
【0044】
また、本実施の形態では、内部構造をギア式としているが、ギア式を用いない直動式としてもよい。
【0045】
取付部材145は、第1の面146、第2の面147、接続部149とで構成される。第1の面には、流量弁116が取り付けられる。流量弁116は、ゴム材料で形成される弾性部材134を介した状態で、ネジ135によって第1の面146に取り付けられている。弾性部材134によって、流量弁116の振動が第1の面146に伝わりにくくなる。ネジは、円頭部長さを弾性部材の厚み同等とすることで、締め付けによる圧縮を軽減でき、弾性部材の効果を劣化させることはない。
【0046】
なお、ゴムの表面には突起が出ている。これはゴムが第1の面146と接触しすぎないすなわち、面接触ではなく点接触することで振動の伝達を抑えているのである。
【0047】
また、第2の面147の冷蔵庫本体側には、取付機構(例えばネジ穴)が設けられている。この取付機構によって、第2の面147が冷蔵庫100(本実施形態では第一の機械室111の壁面)に取り付けられる。また、第1の面146と第2の面147とを繋げる接続部149は、弁本体を囲むような形状としている。
【0048】
接続部149を弁を囲むような形状すなわち、弁の外周を囲むような形状とすることで第1の面146と第2の面147の距離を長く取れるため振動の減衰率を大きくすることができる。また、第1の面146の鉛直方向にU字形状もしくは折れ曲がり形状、湾曲形状等の振動吸収形状を設けることで、弁の外周を囲むような形状の効果も合わさり、流量弁116の動作時に発する振動の前後方向と左右方向に対して減衰させる効果を生み出すため、弁自体の振動を軽減することができると共に冷蔵庫本体および庫内への振動伝搬も抑制することができる。
【0049】
また、本実施の形態では、取付部材145は金属製としている。これにより、取り付け時の強度確保も行うことができる。
【0050】
なお、弁の動作を行うための電気結線用のコネクタ部分は、冷蔵庫本体の背面側から見て手前に来るように配置している。これにより生産工程において作業をし易くするだけでなく、接続強度も考慮したうえで接続抜けを目視で確認できるため工程不良の軽減となる。
【0051】
なお、起点出しの際に、ギアが回転する逆向き方向と直交する向きに第1の面146を配設することで流量弁116の振動を抑制している。
【0052】
なお、本実施の形態のように、流量弁116の入口パイプや出口パイプを細径管とすることで、振動の抑制効果が更に高まる。
【0053】
なお、本実施の形態のように、流量弁116を構成するコイル138とロータ139は、弁ホルダ133で固定されるが、コイル外郭を対向する箇所で両側から固定することで、弁の発する振動を前後左右だけでなく上下方向でも抑制することができるため、3方向に渡って振動低減および騒音低減を行うことができる。コイル138とロータ139の間に隙間があると動作時にガタツキによって振動が増幅されてしまうが、本発明のように両持ちで固定保持することでガタツキを抑制すると共に上下方向の振動を抑制すること3方向の振動および騒音低減に効果を発揮できるのである。
【0054】
以上のように構成された実施の形態1の冷蔵庫について以下にその動作の一例を図6を用いて説明するが、従来例と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0055】
凝縮器ファン119、圧縮機113、冷却器ファン120をともに停止している冷却停止状態(以下、この動作を「OFFモード」という)において、冷凍室温度センサ126(以下、このセンサを「FCC」という)の検知する温度が所定値のFCC_ON温度まで上昇するか、あるいは、冷蔵室温度センサ127(以下、このセンサを「PCC」という)の検知する温度が所定値のPCC_ON温度まで上昇すると、冷凍室ダンパ123を閉とし、冷蔵室ダンパ124を開として、圧縮機113と凝縮器ファン119、冷却器ファン120を駆動する(以下、この動作を「PC冷却モード」という)。
【0056】
一方、圧縮機113から吐出された冷媒は、凝縮器114で外気と熱交換しながら一部の気体を残して凝縮した後、ドライヤ115で水分除去され、流量弁116を介して冷却器118へ供給される。冷却器118で蒸発しながら冷蔵室101の庫内空気と熱交換して冷蔵室101を冷却しながら、気体冷媒として圧縮機113に還流する。
【0057】
PC冷却モード中に、FCC温度センサ126の検知する温度が所定値のFCC_OFF温度まで下降上昇するとともに、PCC温度センサ127の検知する温度が所定値のPCC_OFF温度まで下降すると、OFFモードに遷移する。
【0058】
また、PC冷却モード中に、FCC温度センサ126の検知する温度が所定値のFCC_OFF温度より高い温度を示すとともに、PCC温度センサ127の検知する温度が所定値のPCC_OFF温度まで下降すると、冷凍室ダンパ123を開とし、冷蔵室ダンパ124を閉として、圧縮機113と凝縮器ファン119、冷却器ファン120を駆動する。
【0059】
以下、PC冷却モードと同様に冷凍サイクルを稼動させることにより、冷凍室104の庫内空気と冷却器118を熱交換して冷凍室104を冷却する(以下、この動作を「FC冷却モード」という)。
【0060】
FC冷却モード中に、FCC温度センサ126の検知する温度が所定値のFCC_OFF温度まで下降するとともに、PCC温度センサ127の検知する温度が所定値のPCC_ON温度以上を示すと、PC冷却モードに遷移する。
【0061】
また、FC冷却モード中に、FCC温度センサ126の検知する温度が所定値のFCC_OFF温度まで下降するとともに、PCC温度センサ127の検知する温度が所定値のPCC_ON温度より低い温度を示すと、OFFモードに遷移する。
【0062】
また、PC冷却モード中に、冷凍室104の扉開閉等でFCC温度センサ126の検知する温度が所定値のFCC_ON温度より高い温度を示した場合や、FC冷却モード中に、冷蔵室101の扉開閉等でPCC温度センサ127の検知する温度が所定値のPCC_ON温度より高い温度を示した場合は、冷凍室ダンパ123を開とし、冷蔵室ダンパ124も開として、冷蔵室101と冷凍室104を冷却することも出来る(以下、この動作を「PC+FC冷却モード」という)。
【0063】
本実施の形態では、OFFモードの際に、流量弁116の開度を閉孔としている。これにより、冷蔵庫の圧縮機運転停止時に凝縮器側の高温高圧の冷媒が低温低圧の蒸発器側に流入することを防止することで、熱負荷の抑制が図られるため、OFFモード時の冷却器温度上昇を抑えるとともに、次の圧縮機起動時には蒸発器温度が低い状態で冷却を開始することができるため消費電力量の低減を行うことができる。
【0064】
また、本実施の形態では各冷却モード中に、ディスクの孔径を変化させている。これにより、冷蔵庫の運転状態に対して最適な冷媒循環量で冷却することで冷却効率を上げて省エネ性を高めているのである。特に、PC冷却モード中とFC冷却モード中を比較すると、圧縮機113が同一回転数の場合では冷媒の乾き度がFC冷却モード中の方が大きい。
【0065】
そのため、PC冷却モード中よりもFC冷却モード中の孔径を小さくしている。これにより、FC冷却モード中でも乾き度を小さくし冷却効率を上げて省エネ性を高めている。なお、ここでいう乾き度とは冷媒が2相域状態における気相の割合である。
【0066】
なお、流量弁116でディスクにあいている孔の孔径を変化させることで流量弁前後に温度差が生じる。この温度差を小さくするすなわち、孔径を小さくすると乾き度が小さくなり液相比率が大きくなるが、冷蔵庫の場合、冷媒が液相でキャピラリーチューブ117に流入するとキャピラリーチューブ117の特性上、減圧効果が低減するため冷却効果が劣化する。
【0067】
そのため、液相となる直前の2相域に乾き度を調整することが最も高効率である。そのため、本実施の形態では、この流量弁前後の温度差が0.2Kを最小として孔径を制御している。これにより、流量特性のバラつきを考慮しても液相でキャピラリーチューブ117に冷媒が流入することはないため、冷却効果の効率を高いままで品質も確保した運転を行うことができるのである。
【0068】
なお、庫内の温度上昇に伴い冷蔵庫の圧縮機運転が起動する際は、冷蔵庫を早く冷却させる必要があるため、FC冷却モード中よりもPC冷却モード中の方が孔径を大きくしているし、起動時には孔径は全開の最大径としている。
【0069】
なお、今回の流量弁や三方弁等を含むステッピングモータの場合、動作時のみならず起点出しの動作が必要である。この時、本実施の形態では流量弁116の運転時の動作スピードを起点出し時よりも高速にしている。本動作制御により、運転時及び起点出し時の振動を低減することができる。
【0070】
起点出し時の振動が発生するメカニズムを説明する。コイル138がロータ139を回転させるための回転磁界を与えており、この回転磁界によってロータ139は回転しているが流量弁116の開度が起点出しのため全閉以下となると、連結しているギア部は度当たりし、これ以上回転しない。
【0071】
しかしながら、コイル138による回転磁界はロータ外周を回り続けているため、止まっているロータ139に回転磁界が一周してきたとき、ロータ139は回転磁界に逆向きの力が働くため跳ね返ることとなる。これが起点出しの振動となり音となる。
【0072】
この跳ね返りの力を小さくし振動を抑制するために起点出しを行う際には動作スピードを小さくする(遅くする)ことが有効であり行われているが、運転時も動作スピードを小さくすると音は小さくなるがギアの駆動の音・振動が発生しやすくなる。これはロータの中心に配設される軸の回転スピードが小さいためぶれやすくなるためである。
【0073】
そのため、本実施の形態での制御では、起点出しの動作スピードよりも運転時の動作スピードを大きくすることを行っている。これにより、運転時の動作スピードを速めることで独楽(コマ)が安定するように軸がぶれ難くし、ロータ139の回転が安定するため、運転時の振動が小さくなり音も小さくなる。しかも起点出し時は動作スピードを小さくすることで、弁の運転時、および起点出し時の動作全てにおいて低振動、低騒音を実現することができる。
【0074】
なお、本実施の形態の取付部材145は金属製であることを想定しているが、樹脂等の他の材料で取付部材145を実現しても良い。この場合、金属に比べて減衰率の大きい樹脂にすることで振動軽減効果が大きくなり、流量弁自体の振動をさらに軽減することができると共に庫内への振動伝搬も更に抑制することができるため騒音低下に効果を発揮する。
【0075】
更に、樹脂化することで弁自体の保持や冷蔵庫本体への取り付けの形状に設計自由度が生まれるため、作業性も含めて流量弁116の取り付け向きや設置位置も自在に行うことができ、振動吸収の形状だけでなく生産性も考慮した形状とすることができる。
【0076】
ここで、金属よりも自由度があるということは、金属の場合よりも歩留まりが向上することができることである。樹脂化は金属の場合に比べて成形性がよく、コストも安価となるためコストパフォーマンスの向上を図ることができる。
【0077】
さらに第1の面146と第2の面147をつなぐ接続部149を樹脂化するだけでなく、流量弁116の受けとなる弁ホルダ133も樹脂化し一体化することで、振動吸収の形状を形成するだけでなく加振源である弁のロータ部分と弁ホルダ133との接触面積を小さくする形状にできるため、弁自体の振動をさらに軽減することができると共に庫内への振動伝搬も更に抑制することができ、更なる騒音低下に効果を発揮する。
【0078】
また、流量弁116に限らず、他の種類の取付部材、例えば冷媒の経路を調節する弁を冷蔵庫100に取り付ける際に、取付部材145を用いても良い。また、冷蔵庫100に取り付ける場所も、第一の機械室111に限らず、第二の機械室112や、冷蔵室101等の貯蔵室の内部であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、家庭用の冷蔵庫や冷凍庫、業務用の冷蔵庫や冷凍庫に適用できる。
【符号の説明】
【0080】
100 冷蔵庫
118 冷却器
116 流量弁
133 弁ホルダ
143 コイル外郭固定部
145 取付部材
146 第1の面
147 第2の面
149 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7