(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】モータシャフト、回転子、モータ、送風機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/278 20220101AFI20230414BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20230414BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
H02K1/278
H02K7/14 A
H02K21/14
(21)【出願番号】P 2019043289
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】堤 和紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宗忠
(72)【発明者】
【氏名】森下 本弘
(72)【発明者】
【氏名】村尾 聡
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-088437(JP,U)
【文献】実開昭62-054329(JP,U)
【文献】特開平10-336930(JP,A)
【文献】特開平07-059305(JP,A)
【文献】特開2005-020974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 21/14
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転軸を形成する円筒形のモータシャフトであって、
前記円筒形における底面側の加工対象一端から天面側の加工対象他端までの
領域であり、プラスチックマグネットを配置するために前記円筒形における外周面に設けられる加工対象領域と、
前記加工対象領域に前記円筒形における
前記外周面を端部として前記円筒形における中心軸方向に向けて設けられた
前記プラスチックマグネットを流し込むための固定用空間を備え
、
前記固定用空間は、
前記外周面上であって前記円筒形の底面と天面とを結ぶ中心軸に垂直な所定の平面上に複数設けられて前記外周面の同一円周上に配置されるモータシャフト。
【請求項2】
モータの回転軸を形成する円筒形のモータシャフトであって、
前記円筒形における底面側の加工対象一端から天面側の加工対象他端までの
領域であり、プラスチックマグネットを配置するために前記円筒形における外周面に設けられる加工対象領域と、
前記加工対象領域に前記円筒形における
前記外周面を端部として前記円筒形における中心軸方向に向けて設けられた
前記プラスチックマグネットを流し込むための固定用空間を備え
、
前記固定用空間は、
前記端部から前記円筒形における前記端部に対向する前記外周面まで貫通する貫通孔であるモータシャフト。
【請求項3】
前記固定用空間は、
前記端部から前記円筒形における中心軸に向かって陥没する窪みである請求項1記載のモータシャフト。
【請求項4】
前記固定用空間は、
前記端部を底面として前記中心軸に向かって伸びる円錐形状を有する請求項
3記載のモータシャフト。
【請求項5】
前記固定用空間は、
前記端部を底面として前記中心軸に向かって伸びる空間であり前記底面が矩形形状を有する請求項
3記載のモータシャフト。
【請求項6】
前記固定用空間は、
前記矩形形状における長辺が前記中心軸に平行である請求項
5記載のモータシャフト。
【請求項7】
前記固定用空間は、
前記所定の平面上に等間隔に設けられた請求項
1に記載のモータシャフト。
【請求項8】
前記固定用空間
は、
前記所定の平面に平行な他の平面上に少なくとも1つ設けられた請求項
1に記載のモータシャフト。
【請求項9】
前記所定の平面上に設けられた前記固定用空間と前記他の平面上に設けられた前記固定用空間とは、前記円筒形の天面視にして前記外周上の対向する位置に設けられた請求項8記載のモータシャフト。
【請求項10】
前記貫通孔は、
前記外周面上であって前記円筒形の底面と天面とを結ぶ中心軸に垂直な所定の平面上に複数設けられた請求項
2に記載のモータシャフト。
【請求項11】
前記貫通孔は、
前記外周面上であって前記円筒形の底面と天面とを結ぶ中心軸に垂直な所定の平面上に少なくとも1つ設けられ、
前記所定の平面に平行な他の平面上に少なくとも1つ設けられた請求項
2に記載のモータシャフト。
【請求項12】
前記所定の平面上に設けられた前記貫通孔と前記他の平面上に設けられた前記貫通孔とは、前記円筒形の天面視にして回転対称である請求項
11記載のモータシャフト。
【請求項13】
前記固定用空間は、
切削溝であり、
前記固定用空間を形成する壁面は、
前記円筒形における円の中心から半径方向に最も離れた最頂部が前記外周面と一致する請求項
1に記載のモータシャフト。
【請求項14】
前記加工対象一端に前記外周面を取り巻く一端部円形溝、及び/又は、前記加工対象他端に前記外周面を取り巻く他端部円形溝を備えた請求項1
または2に記載のモータシャフト。
【請求項15】
請求項1
または2に記載のモータシャフトと、
前記固定用空間を埋めて前記加工対象領域に固定されたプラスチックマグネットと、
を備えた回転子。
【請求項16】
請求項
15記載の回転子を備えたモータ。
【請求項17】
請求項
16記載のモータを備えた送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータシャフトと、それを用いた回転子、モータ、送風機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のモータシャフトのローレットは、綾目形状で加工されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その綾目形状ローレットについて
図9(a)を参照しながら説明する。
【0004】
図9(a)はモータシャフト101に形成された綾目形状ローレット102を拡大した図である。モータシャフト101の周囲であって、ローレット上にプラスチックマグネットを形成することで、プラスチックマグネットの、モータシャフト101の軸方向及び円周方向への摩擦が増加する。このため、モータシャフト101とプラスチックマグネットが強固に固定される。なお、綾目形状ローレットは転造加工により形成される。
【0005】
また、ローレットの他の例として、平目形状に加工しているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
以下、平目形状ローレットについて
図9(b)を参照しながら説明する。
【0007】
図9(b)は、モータシャフト101に形成された平目形状ローレット103を拡大した図である。この平目形状ローレット103を備えることにより、綾目形状ローレット102と同じく、モータシャフト101の円周方向への摩擦が増加する。このため、モータシャフト101とプラスチックマグネットが強固に固定される。なお、平目形状ローレット103も綾目形状ローレット102と同じく、転造加工により形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-101583号公報
【文献】特開2005-20974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来のモータシャフト101の製造においては、加工手順として切削加工、研磨加工、及び転造加工が利用される。例えば、切削加工においてモータシャフト101の例えばローレット以外の部位を切削する。また、研磨加工においてモータシャフト101を研磨する。そして最後の転造加工において、ローレットを形成する。
【0010】
ここで、転造加工とは、モータシャフトの側面から中心方向に圧力を加えることで、中心軸方向へ窪ませる加工と、その周囲を中心方向とは逆方向に盛り上げる加工とを同時に行なう加工であり、材料に大きな力を加えて変形させる金属加工方法である。この方法によって加工すると、加工部分周辺に盛り上がり部が生じる。
図10(a)は、対象物を切削加工により、図の下方から上方へV字形状に加工した図、(b)は転造加工により、図の下方から上方へV字形状に加工した図である。切削加工したものは、加工溝111を形成した際に、対象物の外周面112からはみ出す部分を生じることなく、加工される。一方、転造加工の場合、対象物に圧力を加えることにより変形させるため、加工溝111を形成すると、外周面112から下方にはみ出す部分、つまり盛り上がり部113を生じることとなる。これが切削加工と転造加工の加工時における形状の違いである。
【0011】
上記の加工手順では、それぞれの加工で異なる設備が必要であり、さらに加工設備ごとにモータシャフトを移動させる必要があった。以上のことから、設備コストが必要となり、またモータシャフトの移動に基づき時間コストも必要であるという課題を有していた。
【0012】
よって、本発明は、軸方向及び円周方向への摩擦を十分に有するとともに、設備コスト及び時間コストを削減可能なモータシャフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そして、上記目的を達成するために、本発明に係るモータシャフトは、モータの回転軸を形成する円筒形のモータシャフトであって、前記円筒形における底面側の加工対象一端から天面側の加工対象他端までの領域であり、プラスチックマグネットを配置するために前記円筒形における外周面に設けられる加工対象領域と、前記加工対象領域に前記円筒形における前記外周面を端部として前記円筒形における中心軸方向に向けて設けられた前記プラスチックマグネットを流し込むための固定用空間を備え、前記固定用空間は、前記外周面上であって前記円筒形の底面と天面とを結ぶ中心軸に垂直な所定の平面上に複数設けられて前記外周面の同一円周上に配置される構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モータシャフトの軸方向及び円周方向への摩擦を十分に有するとともに、設備コスト及び時間コストを削減可能なモータシャフトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るモータの内部構成の概略を示す断面図。
【
図2】実施の形態1に係るモータシャフトの側面図及び断面図。
【
図3】実施の形態1に係るモータシャフトの側面図及び断面図。
【
図4】実施の形態1に係るモータシャフトの側面図及び断面図。
【
図5】実施の形態2に係るモータシャフトの側面図及び断面図。
【
図6】実施の形態3に係るモータシャフトの側面図及び断面図。
【
図7】実施の形態3に係るモータシャフトの側面図及び断面図。
【
図8】実施の形態3に係るモータシャフトの側面図及び断面図。
【
図9】従来の綾目形状ローレット及び平目形状ローレットを有したモータシャフトのローレット部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、全図面を通して、同一の部位については同一の符号を付して二度目以降の説明を省略している。さらに、各図面において、本発明に直接には関係しない各部の詳細については説明を省略している。
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る送風機、モータ、回転子、及びモータシャフトについて、
図1を参照しながら説明する。
図1はモータの内部構成の概略を示す断面図である。
【0018】
モータ1は内転型のDCモータであり、例えばモータシャフト9に羽根を取り付け、モータシャフト9を回転させることにより送風機の駆動源として利用される。
【0019】
モータ1は、モールド体2と、ブラケット6と、回転子7と、を備える。
【0020】
モールド体2は、有底円筒形の樹脂であり、内部に固定子3と巻き線4と、を備えている。モールド体2は、凹形状に形成された内部空間に回転子7を格納する。つまりモールド体2は、モータ1の外郭を構成する。
【0021】
ブラケット6は、モータ1の凹形状に形成された空間の開口部を覆って配置される。
【0022】
回転子7は、ブラケット6側と、モールド体2の底面側とに設けられた、二箇所の軸受5によって回転可能に固定されている。回転子7は、モータシャフト9と、プラスチックマグネット8とを備える。
【0023】
モータシャフト9は、円筒形の棒状であり、ローレット13を備えている。ここで、「円筒形」とは丸い筒もしくは円柱形を意味する。また、ローレット13は、モータシャフト9の表面及び内部であって、固定子3に対応する位置、つまり
図1においては、上下に示された固定子3に挟まれる位置に設けられる。なお、モータシャフト9及びローレット13についての詳細は後述する。
【0024】
プラスチックマグネット8は、中空円筒形状を有し、プラスチックマグネットを素材として利用可能である。ここで「中空円筒形状」とは丸い筒を意味する。さらに「中空」とは中が空洞であることを意味するが、プラスチックマグネット8における中空とは、モータシャフト9が位置する略円筒形の空間を示す。プラスチックマグネット8は、ローレット13の周囲に設けられる。プラスチックマグネット8は、溶かしてローレット13上に位置させた金型に流し込んで固化することにより、モータシャフト9と一体化することが可能である。
【0025】
モータ1が駆動する際は、モータシャフト9が回転軸となり回転子7が回転する。
【0026】
続いて、
図2を参照しながらモータシャフト9aの詳細について説明する。
図2(a)は本発明に係るモータシャフトの側面図である。また、
図2(b)はモータシャフト9aを
図2(a)における切断線A-Aにより切断した断面図である。
【0027】
モータシャフト9aは、円筒形状を有し、円筒形状における円形の底面14の中心から円形の天面15の中心を貫く回転軸12を備える。つまり回転軸12はモータシャフトの中心軸を意味する。なお、モータシャフト9aは、円筒形状であるが、一端には、送風機の羽根を取り付けるための切欠き20が設けられている。また、モータシャフト9aの周囲には、複数の円形溝11が設けられている。つまり、底面14は切欠き20のために厳密には円形ではないが、理解に供するため円形と表現し、モータシャフト9aは、略円筒形状という事ができる。また、ここで言う円筒とは、中空を意味せず、言い換えると外形が円柱であることを意味する。
【0028】
円形溝11は、モータシャフト9aの外周面を一周にわたって設けられる。円形溝11は、切欠き20と共に、切削加工にて形成することができる。
【0029】
円形溝11の一つは、加工対象領域21の底面14側の一端に設けられる円形溝11a(一端部円形溝に該当)である。また、円形溝11の他の一つは、加工対象領域21の天面15側の他端に設けられる円形溝11b(他端部円形溝に該当)である。
【0030】
加工対象領域21は、モータシャフト9aの外周面30であって、プラスチックマグネット8を配置する領域である。ただし、加工対象領域21の一端及び他端は、必ずプラスチックマグネット8の底面側と天面側との両端に位置する必要は無い。例えば、加工対象領域21の一端及び他端は、プラスチックマグネット8の両端よりもさらに内側に設けられてもよく、また、両端より外側にはみ出して設けられてもよい。加工対象領域21は、固定用空間を備えている。
【0031】
固定用空間は、加工対象領域21にモータシャフト9aにおける外周面30を端部として回転軸12方向に向けて切削された空間である。ここで回転軸12方向は、正確に回転軸12に向けた方向であることを意味しない。そのため、必ずしも固定用空間の切削方向つまり回転軸12方向と、回転軸12とが交わらなくてもよい。固定用空間を形成する壁面の外周面端部は、回転軸12からモータシャフト9aの半径方向に最も離れた最長部である外周面端部31と外周面30とが一致する。固定用空間の例として、以下に示す窪み10、窪み50、貫通孔60が挙げられる。
【0032】
窪み10は、底面が矩形形状を有する。ここで底面とは、モータシャフト9aの外周面30と窪み10との境界の点である外周面端部31の集合で作られた外周面30上の閉曲面32を意味する。そして底面が固定用空間の外周面30の端部となる。窪み10は加工対象領域21において、モータシャフト9aの外周面に少なくとも一つ設けられる。また、矩形形状の長辺は回転軸12に並行となることが好ましい。
【0033】
窪み10はフライス等による切削加工により設けることができる。つまり、切削加工によりローレットを形成することができるため、従来技術で必要であった転造加工が不要となり、設備コスト及び時間コストを削減することができる。また、窪み10に溶かしたプラスチックマグネット8を流し込み固化させることで、モータシャフト9aとプラスチックマグネット8とを一体化させることができる。窪み10と固化したプラスチックマグネット8の間には回転軸12の軸方向(水平方向)および円周方向(回転方向)に摩擦力を発生する。さらに空間として設けられた窪みは、プラスチックマグネット8の固化によりプラスチックマグネット8からモータシャフト内部に向けて突出する突起を形成するため、突起がモータシャフトの回転に対するプラスチックマグネット8の反作用による抵抗となり、一体化と相まってプラスチックマグネット8とモータシャフト9aとが強固に保持できる。
【0034】
続いて窪み10を複数設けたモータシャフトについて2例挙げて説明する。
【0035】
1つ目のモータシャフト9bを
図3を用いて説明する。
図3(a)は窪み10を同一平面上に複数設けたモータシャフトの側面図である。また、
図3(b)はモータシャフト9bを切断線B-Bにより切断した断面図である。
【0036】
モータシャフト9bは、加工対象領域21において回転軸12に対して垂直な所定の平面40上に窪み10を複数備えている。所定の平面40上に設けるとは、例えば窪み10における矩形底面の長辺の中点を基準とし、この基準が所定の平面40上に位置することを言う。これにより、同一円周上に窪み10が配置される。
【0037】
2つ目のモータシャフト9cを
図4を用いて説明する。
図4(a)は窪み10を異なる平面上に複数設けたモータシャフト9cの側面図である。また、
図4(b)はモータシャフト9cを切断線C-Cにより切断した断面図である。
【0038】
モータシャフト9cは、加工対象領域21において回転軸12に対して垂直な所定の平面40a上に窪み10が少なくとも一つ設けられ、平面40aに平行な平面40b上に底面が矩形形状を有する窪み10を少なくとも一つ設けられている。
【0039】
なお、窪みを複数設けたモータシャフト9b及び9cは、底面14または天面15から見た場合、対向する位置に窪み10を配置するのが好ましい。また、モータシャフト9bのバランスの観点から、窪み10の位置は円周上に等間隔に配置するのが好ましい。
【0040】
これにより窪み10を複数設けることによって突起による摩擦力及び抵抗が大きくなり、プラスチックマグネット8とモータシャフト9bをより強固に保持できる。
【0041】
また、所定の平面40にのみ複数窪みを設ける場合に比べ、平面40aに加えて、平面40b上に窪みを複数設けた場合の方が、特に、円周方向(回転方向)の摩擦力及び抵抗をより大きくすることが可能になる。さらに、加工対象領域が大きくなるため、モータ1に接続される負荷に要求される摩擦の強さに応じて窪みの数を任意に選択しやすくなる。また、複数の窪み10を底面14または天面15から見て対向する位置または等間隔に設けることにより、モータシャフトが回転する際に起こると考えられる回転軸の振れを抑制することができる。
【0042】
(実施の形態2)
図5(a)は本発明に係るモータシャフト9dの側面図である。また、
図5(b)はモータシャフト9dを
図5(a)における切断線D-Dにより切断した断面図である。
【0043】
窪み50は、加工対象領域21において、モータシャフト9dの外周面30に少なくとも一つ設けられる。窪み50は円錐形上の窪みである。円錐形上の窪みとはモータシャフト9dの回転軸12に最も近い切削点である溝中心部33を頂点とし、モータシャフト9dの外周面30と窪みの境界の点となる外周面端部31の集合で作られた外周面30上の閉曲面32aを底面とし、切削壁面である内壁34を円錐面とする錐体の窪みを意味する。
【0044】
窪み50は窪み10と比較した場合、エンドミル等で窪みを切削する必要がなく、ドリルの先端等により簡易に切削できる。そのため、窪み50を一つ切削するのに要する時間は窪み10と比べると短くなる。
【0045】
窪み50は、複数設けてもよい。図面による説明は省略するが、複数設ける場合には、実施の形態と同様の配置が挙げられる。また、他に窪み50を円周上に等間隔に複数有する円周を、軸方向に複数平行に配置することで、軸方向及び円周方向に強度を持たせるとともに、バランスも考慮したモータシャフトとすることができる。
【0046】
窪み50の切削時間が短いことから、複数の窪み50を設けやすい。そのため、窪み10と比べるとモータ1に接続される負荷に要求される摩擦及び抵抗の大きさに応じて窪みの数をさらに任意に選択しやすくなる。
【0047】
(実施の形態3)
本実施の形態では、固定用空間として、モータシャフトの側曲面(外周面30)から対向する対向曲面(外周面30)まで貫通する貫通孔60を備えた
図6のモータシャフト9eについて説明する。
図6(a)は本発明に係るモータシャフト9eの側面図である。また、
図6(b)はモータシャフト9eを
図6(a)における切断線E-Eにより切断した断面図である。
【0048】
貫通孔60は、加工対象領域21において、モータシャフト9eの外周面30に少なくとも一つ(一本)設けられる。貫通孔は回転軸12方向に向かって切削される。また、貫通孔は外周面30上に形成された閉曲面32bを底面とし、対向曲面となる閉曲面32cを天面とした円柱状の孔である。閉曲面32bと32cは曲面となるため、貫通孔は厳密には円柱ではないがここでは円柱状と表現する。
【0049】
これにより、窪み10や窪み50と比べると貫通孔内部までプラスチックマグネット8を溶かして流し込めるため、固化された柱状のプラスチックマグネット8が、上述の突起よりも大きな抵抗を発生させることができる。
【0050】
続いて貫通孔60を複数設けたモータシャフトについて2例挙げて説明する。
【0051】
1つ目のモータシャフト9fについて
図7を用いて説明する。
図7(a)は貫通孔60を同一平面上に複数設けたモータシャフトの側面図である。また、
図7(b)は
図7(a)における切断線F-Fにより切断したモータシャフトの断面図である。
【0052】
モータシャフト9fは、加工対象領域21において回転軸12に対して垂直な所定の平面40c上に貫通孔60を複数設けたモータシャフト9fである。
【0053】
2つ目のモータシャフト9gについて
図8を用いて説明する。
図8(a)は貫通孔60を異なる平面上に複数設けたモータシャフト9gの側面図である。また、
図8(b)はモータシャフト9gを切断線G-Gにより切断した断面図である。
【0054】
加工対象領域21において回転軸12に対して垂直な所定の平面40d上に貫通孔60が少なくとも一つ設けられ、平面40dに平行な平面40e上に貫通孔60を少なくとも一つ設けたモータシャフト9gである。
【0055】
なお、貫通孔を複数設けたモータシャフト9f及び9gは底面14または天面15から見た場合、貫通孔は回転軸12を中心として360°回転させたときに360°以内に必ず一致するような回転対称となるように配置するのが好ましい。
【0056】
これにより、窪み10を複数設けた場合と同様に、貫通孔60を複数設けることにより、回転軸12の軸方向(水平方向)および円周方向(回転方向)の摩擦力が大きくなり、プラスチックマグネットとモータシャフトをより強固に保持できる。
【0057】
また、所定の平面40cにのみ複数貫通孔を設ける場合に比べ、平面40dに加えて、平面40dに平行な平面40e上に貫通孔を複数設けた場合の方が、加工対象領域が大きくなるため、より多くの貫通孔を設けることができる。そのため、柱状のプラスチックマグネット8による抵抗をより大きくすることが可能になる。なお、貫通孔の数は、モータ1に接続される負荷に要求される摩擦及び抵抗値の大きさに応じて貫通孔の数を任意に選択すればよい。さらに、所定の平面40cにのみ複数貫通孔を設ける場合、モータシャフトの強度は貫通孔の数に応じて低下する。しかし、平面40dに平行な平面40e上に貫通孔を複数設けた場合であればモータシャフトの強度を担保しやすい。加えて、モータ1に接続される負荷に要求される摩擦及び抵抗の大きさに応じて平面40dに平行な平面の数を増やすことでモータシャフトの強度を担保しつつ、貫通孔の数を任意に選択しやすくなる。
【0058】
実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3で挙げた例以外にも、窪み、貫通孔及び円形溝を組み合わせてもよい。つまり、モータ1に接続される負荷に要求される摩擦力及び抵抗と、モータシャフトの強度と、さらに製造工程における時間コストとに応じて、上記実施の形態に挙げた複数種の固定用空間や円形溝を自在に組み合わせることが可能である。
【0059】
(実施の形態の概要)
本発明の回転子は、モータの回転軸を形成する円筒形のモータシャフトであって、
前記円筒形における底面側の加工対象一端から天面側の加工対象他端までの加工対象領域と、前記加工対象領域に前記円筒形における外周面を端部として前記円筒形における中心軸方向に向けて設けられた固定用空間を備えたモータシャフトという構成を有する。
【0060】
これにより、転造加工ではなく、切削加工で形状を作製可能となるので、転造加工のための設備が不要であり、工程追加がないため生産性が向上する。
【0061】
前記固定用空間は空間形状から2通り、そして前記固定用空間の切削個数から少なくとも一つまたは複数の2通りありこれらの組み合わせによるモータシャフトという構成となる。
【0062】
1つ目の前記固定用空間として前記端部から前記円筒形における中心軸に向かって陥没する窪みであり、前記端部を底面として前記中心軸に向かって伸びる円錐形状または前記端部を底面として前記中心軸に向かって伸びる空間であり前記底面が矩形形状となる固定用空間である。前記矩形形状は長辺が前記中心軸に平行な前記固定用空間となる。前記固定用空間の切削個数は前記加工対象領域に少なくとも一つ設ける。また、複数設ける場合、前記固定用空間は、前記外周面上であって前記円筒形の底面と天面とを結ぶ中心軸に垂直な所定の平面上に複数設けられおり前記平面上に等間隔に設けられていること、または前記外周面上であって前記円筒形の底面と天面とを結ぶ中心軸に垂直な所定の平面上に少なくとも1つ設けられ、前記所定の平面に平行な他の平面上に少なくとも1つ設けられていることとする。複数設ける場合は必ず、記所定の平面上に設けられた前記固定用空間と前記他の平面上に設けられた前記固定用空間とは、前記円筒形の天面視にして前記外周上の対向する位置に設けられていることとする。
【0063】
2つ目の前記固定用空間は前記端部から前記円筒形における前記端部に対向する前記外周面まで貫通する貫通孔である。前記固定用空間の切削個数は前記加工対象領域に少なくとも一つ設ける。また、複数設ける場合、前記貫通孔は、前記外周面上であって前記円筒形の底面と天面とを結ぶ中心軸に垂直な所定の平面上に複数設けられていること、または前記外周面上であって前記円筒形の底面と天面とを結ぶ中心軸に垂直な所定の平面上に少なくとも1つ設けられ、前記所定の平面に平行な他の平面上に少なくとも1つ設けられていることとする。複数設ける場合は必ず、前記所定の平面上に設けられた前記貫通孔と前記他の平面上に設けられた前記貫通孔とは、前記円筒形の天面視にして回転対称であることとする。
【0064】
なお、前記加工対象一端に前記外周面を取り巻く一端部円形溝、及び/又は、前記加工対象領域に前記円筒形における外周面を端部として前記円筒形における中心軸方向に向けて設けられた固定用空間を備えたモータシャフトという構成にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明にかかるモータは、転造加工を設けずに、螺旋溝を設けて回転子を保持することで、転造加工のための設備が不要であり、工程追加がないため生産性の向上を可能とするものであるので、例えば、換気扇などの駆動用モータに適用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 モータ
2 モールド体
3 固定子
4 巻き線
5 軸受
6 ブラケット
7 回転子
8 プラスチックマグネット
9、9a、9b、9c、9d、9e、9f、9g モータシャフト
10 窪み
11、11a、11b 円形溝
12 回転軸
13 ローレット
14 底面
15 天面
20 切欠き
21 加工対象領域
30 外周面
31 外周面端部
32、32a、32b、32c 閉曲面
A-A、B-B、C-C、D-D、E-E、F-F、G-G 切断線
33 溝中心部
34 内壁
40、40a、40b、40c、40d、40e 平面
50 窪み
60 貫通孔
101 モータシャフト
102 綾目形状ローレット
103 平目形状ローレット
111 加工溝
112 盛り上がり部