(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】弁体及びそれを備えた流量制御弁並びにその弁体の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 1/48 20060101AFI20230414BHJP
F16K 1/24 20060101ALN20230414BHJP
F16K 1/22 20060101ALN20230414BHJP
F02M 26/70 20160101ALN20230414BHJP
【FI】
F16K1/48 B
F16K1/24 Z
F16K1/22 K
F02M26/70 301
F02M26/70 351
(21)【出願番号】P 2018238306
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595054361
【氏名又は名称】株式会社共進
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】金光 亮次郎
(72)【発明者】
【氏名】岩出 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】中島 茂元
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-56221(JP,U)
【文献】特開昭60-216935(JP,A)
【文献】特開2004-122209(JP,A)
【文献】特開2005-106467(JP,A)
【文献】特開昭61-245935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-1/54
F02M 26/70
B21D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属よりなる板状の本体と、金属よりなる軸状の突部材とを接合することで構成される弁体であって、
前記本体には、前記突部材の端部を挿入するための非貫通な挿入穴が形成され、
前記突部材の、前記挿入穴に挿入される前記端部の外面には、係合溝が形成され、
前記係合溝の全部が前記挿入穴の内面に対向して配置されており、
前記突部材の前記端部が前記本体の前記挿入穴に挿入された状態で、前記挿入穴の外側にて前記本体の端面には凹部が形成され、前記係合溝に対向する前記挿入穴の内面の一部が変形により前記係合溝を不完全に埋め、前記係合溝の上下の開口縁の近傍のみに係合し
、
前記凹部は前記挿入穴の前記内面に近い内側の内斜面と前記内面から遠い外側の外斜面を含み、前記凹部の深さ方向に対する前記内斜面の角度が前記深さ方向に対する前記外斜面の角度より大きく設定される
ことを特徴とする弁体。
【請求項2】
請求項1に記載の弁体において、
前記係合溝は、前記挿入穴の開口端に近い上開口縁と、前記挿入穴の底に近い下開口縁とを含み、
前記挿入穴の前記開口端から前記底までの距離を前記挿入穴の穴深さとすると、前記下開口縁は、前記開口端から前記穴深さの半分以内の位置に配置される
ことを特徴とする弁体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の弁体において、
前記凹部の容積が前記係合溝の容積の150%以上に設定される
ことを特徴とする弁体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の弁体を備えた流量制御弁であって、
流体が流れる流路と、
前記流路に配置される弁座と、
前記流路にて、前記弁体が前記弁座に着座可能に設けられることと
を備えたことを特徴とする流量制御弁。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の弁体の製造方法であって、
前記突部材の前記端部を前記本体の前記挿入穴に挿入した状態で、前記挿入穴の外側にて前記本体の前記端面に、パンチにより前記本体をプレスすることにより前記凹部を形成すると共に、前記凹部の形成に伴い前記本体を変形させて前記挿入穴の内面の一部を前記係合溝に係合させる
ことを特徴とする弁体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、流量制御弁に使用される弁体に係り、その弁体及びそれを用いた流量制御弁並びにその弁体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される金属部品とその接合方法が知られている。この技術は、金属製の挿通部品と、挿通部品が挿通される貫通孔を有する金属製の被挿通部品とを接合することで構成される。挿通部品の外周面には、断面略V字状の表面溝が形成される。この表面溝が貫通孔の内周面と対向するように挿通部品を貫通孔に挿通した状態で、被挿通部品の端面に応力を加えて同部品を塑性変形させ、同部品の肉の一部を表面溝に係合させる。これにより、両部品を接合して一体化した金属部品が得られる。
【0003】
ここで、EGR弁等の流量制御弁を構成する弁体を、上記金属部品で構成することが考えられる。特に、板状の本体と、その本体の端面から突出する突部材とを含む弁体を上記した金属部品で構成することができる。この場合、突部材が挿通部品に相当し、板状の本体が被挿通部品に相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載される技術では、被挿通部品の貫通孔に挿通部品を挿通して接合することで金属部品が構成されることから、被挿通部品と挿通部品の接合部におけるシール性が問題になる。例えば、この金属部品により流量制御弁の弁体を構成した場合、弁体が弁座に着座した全閉時に、上記した接合部のシール性が確実でなければ、その接合部から流体が漏れるおそれがあり、弁体として有効に機能できなくなる。
【0006】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、それぞれ金属より形成される本体と突部材を接合してなる弁体につき、本体と突部材の接合部におけるシール性を向上させることを可能とした弁体及びそれを備えた流量制御弁並びにその弁体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、金属よりなる板状の本体と、金属よりなる軸状の突部材とを接合することで構成される弁体であって、本体には、突部材の端部を挿入するための非貫通な挿入穴が形成され、突部材の、挿入穴に挿入される端部の外面には、係合溝が形成され、係合溝の全部が挿入穴の内面に対向して配置されており、突部材の端部が本体の挿入穴に挿入された状態で、挿入穴の外側にて本体の端面には凹部が形成され、係合溝に対向する挿入穴の内面の一部が変形により係合溝を不完全に埋め、係合溝の上下の開口縁の近傍のみに係合し、凹部は挿入穴の内面に近い内側の内斜面と内面から遠い外側の外斜面を含み、凹部の深さ方向に対する内斜面の角度が深さ方向に対する外斜面の角度より大きく設定されることを趣旨とする。
【0008】
上記技術の構成によれば、本体の非貫通な挿入穴に突部材が挿入された状態で、挿入穴の内面の一部が変形により係合溝に係合することで突部材が本体に接合される。従って、本体に突部材が接合された状態では、本体と突部材との間に流体の通過を許容する透孔が生じない。また、係合溝に対する挿入穴の内面の係合は、その内面の一部が係合溝を不完全に埋め、係合溝の上下の開口縁の近傍のみに係合する。従って、挿入穴の内面の変形と係合溝との係合が比較的小さく済み、それにより挿入穴からの突部材の抜けが抑えられる。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、係合溝は、挿入穴の開口端に近い上開口縁と、挿入穴の底に近い下開口縁とを含み、挿入穴の開口端から底までの距離を挿入穴の穴深さとすると、下開口縁は、開口端から穴深さの半分以内の位置に配置されることを趣旨とする。
【0012】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、係合溝の下開口縁が、開口端から穴深さの半分以内の位置に配置されるので、下開口縁が開口端から比較的近くなる。従って、挿入穴の外側にて本体の端面を押圧し変形させて、挿入穴の内面の一部を係合溝に係合させたときの、変形した本体と下開口縁との接触長さが大きくなる。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、凹部の容積が係合溝の容積の150%以上に設定されることを趣旨とする。
【0014】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、凹部に対する係合溝の容積比が150%以上に設定されるので、挿入穴の内面の変形による係合溝に対する係合につき、必要十分な強度が得られる。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項1乃至3のいずれかに記載の弁体を備えた流量制御弁であって、流体が流れる流路と、流路に配置される弁座と、流路にて、弁体が弁座に着座可能に設けられることとを備えたことを趣旨とする。
【0016】
上記技術の構成によれば、弁体が弁座に着座した全閉状態において、弁体に流体が作用しても、本体と突部材との間から流体が漏れることがない。
【0017】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、請求項1乃至3のいずれかに記載の弁体の製造方法であって、突部材の端部を本体の挿入穴に挿入した状態で、挿入穴の外側にて本体の端面に、パンチにより本体をプレスすることにより凹部を形成すると共に、凹部の形成に伴い本体を変形させて挿入穴の内面の一部を係合溝に係合させることを趣旨とする。
【0018】
上記技術の構成によれば、突部材の端部を本体の挿入穴に挿入した状態で、本体の端面をパンチによりプレスするだけで、突部材が本体に係合し、両者が有効に接合される。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の技術によれば、それぞれ金属より形成される本体と突部材を接合してなる弁体につき、本体と突部材の接合部におけるシール性を向上させることができる。また、挿入穴の内面の一部を変形させるための本体の変形を少なく抑えることができ、本体の耐久性を保つことができる。
【0021】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、変形した本体と係合溝の下開口縁との接触長さが大きくなるので、突部材の抜け方向に対する保持力を増大させることができる。
【0022】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、弁体を構成するために本体と突部材とを強固に固定することができる。
【0023】
請求項4に記載の技術によれば、弁体を流量制御弁に対し有利に使用することができる。
【0024】
請求項5に記載の技術によれば、本体と突部材の接合部におけるシール性を向上させた弁体を、比較的容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態に係り、流量制御弁を示す斜視図。
【
図2】一実施形態に係り、全閉状態における管部を一部破断して示す斜視図。
【
図3】一実施形態に係り、全開状態における管部を一部破断して示す斜視図。
【
図8】一実施形態に係り、
図7の鎖線円で囲んだ部分を示す拡大図。
【
図9】一実施形態に係り、製造工程の一部を示す断面図。
【
図10】一実施形態に係り、製造工程の一部を示す断面図。
【
図11】一実施形態に係り、製造工程の一部を示す断面図。
【
図12】一実施形態に係り、製造工程の一部を示す断面図。
【
図14】一実施形態に係り、
図13の鎖線円の部分を示す拡大断面図。
【
図15】一実施形態に係り、本体の変形と、挿入穴の内周面が環状係合溝に係合する過程の一部を示す断面図。
【
図16】一実施形態に係り、本体の変形と、挿入穴の内周面が環状係合溝に係合する過程の一部を示す断面図。
【
図17】一実施形態に係り、本体の変形と、挿入穴の内周面が環状係合溝に係合する過程の一部を示す断面図。
【
図18】一実施形態に係り、容積比と、環状係合溝と挿入穴の内周面との係合部の破壊強度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、弁体及びそれを備えた流量制御弁並びにその弁体の製造方法を具体化した一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
[流量制御弁の概要について]
二重偏心弁を含む電動式の流量制御弁1の概要について説明する。
図1に、流量制御弁1を斜視図により示す。流量制御弁1は、二重偏心弁より構成される弁部2と、モータ(図示略)を内蔵したモータ部3と、複数のギヤよりなる減速機構(図示略)を内蔵した減速機構部4とを備える。弁部2は、内部に気体が流れる流路11を有する管部12を含み、流路11の中には弁座13、弁体14及び回転軸15が配置される。回転軸15には、モータの回転力が減速機構を介して伝えられるようになっている。この実施形態では、二重偏心弁の詳しい説明は省略する。この流量制御弁1は、例えば、エンジンのEGR通路に設けられるEGR弁に適用することができる。
【0028】
図2に、弁体14が弁座13に着座した全閉状態における管部12を一部破断して斜視図により示す。
図3に、弁体14が弁座13から最も離れた全開状態における管部12を一部破断して斜視図により示す。
図2、
図3に示すように、流路11には段部11aが形成され、その段部11aに弁座13が組み付けられる。弁座13は、円環状をなし、中央に弁孔16を有する。弁孔16の縁部には、環状のシート面17が形成される。弁体14は、円板状をなし、その外周には、シート面17に対応する環状のシール面18が形成される。弁体14は、回転軸15の先端部に形成されたピン部15aに対し溶接により固定され、回転軸15と一体に回動するようになっている。
図2、
図3において、弁座13より上の流路11は気体(EGRガス等)の流れの上流側を示し、弁座13より下の流路11は気体の流れの下流側を示す。弁体14は、弁座13より上流側の流路11に配置される。
【0029】
従って、
図2に示すように、弁体14の全閉状態から、モータが通電により作動(正転)し、その回転が減速機構を介して回転軸15に伝達されることにより、回転軸15及び弁体14が回動され、流路11が開かれる。すなわち、弁体14が開弁される。弁体14は、
図3に示す全開状態まで開弁することができる。一方、
図3に示す全開状態から、モータが作動(逆転)し、その回転が減速機構を介して回転軸15に伝達されることにより、回転軸15及び弁体14が回動され、流路11が閉じられる。すなわち、弁体14が閉弁される。弁体14は、
図2に示す全閉状態まで閉弁することができる。
【0030】
[弁体の構成について]
図4に、弁体14を正面図により示す。
図5に、弁体14を平面図により示す。弁体14は、金属よりなる円板状の本体21と、金属よりなる円軸状の突部材22とを接合することで構成される。
図6に、本体21を正面図により示す。
図7に、突部材22を正面図により示す。突部材22は、本体21の上面中央に配置され上方へ突出する。突部材22には、回転軸15のピン部15aが固定されるピン孔23が形成される。ピン孔23は、突部材22を貫通して形成される。ピン孔23の軸線L1は、弁体14の径方向と平行に伸び、かつ、弁体14の軸線L2から弁体14の径方向へ偏心して配置される。本体21の上面には、突部材22の下端部を挿入するための非貫通な挿入穴24が形成される。突部材22の、挿入穴24に挿入される下端部の外周面には、断面略V字状をなす環状係合溝25が形成される。環状係合溝25は、突部材22の外周面にて環状に形成される係合溝である。そして、突部材22の端部が本体21の挿入穴24に挿入された状態で、挿入穴24の外側にて本体21の上端面には環状凹部26が形成され、挿入穴24の内面の一部が変形により環状係合溝25に係合する。環状凹部26は、挿入穴24の外側にて環状に形成される凹部である。これにより、本体21と突部材22が接合されて弁体14が構成される。この実施形態では、挿入穴24の内面の一部は、環状係合溝25を不完全に埋め、少なくとも環状係合溝25の上下の開口縁25d,25e(
図8参照)の近傍に係合するようになっている。環状係合溝25は、挿入穴24の開口端24aに近い上開口縁25dと、挿入穴24の底24bに近い下開口縁25eとを含む(
図15参照)。挿入穴24の開口端24aから底24bまでの距離を挿入穴24の穴深さJ1とすると、下開口縁25eは、開口端24aから穴深さJ1の半分以内の位置に配置される(
図15参照)。また、この実施形態で、環状凹部26の容積が環状係合溝25の容積の150%以上に設定される。すなわち、環状凹部26に対する環状係合溝25の容積比が150%以上と十分に大きく設定される。
【0031】
図8に、
図7の鎖線円S1で囲んだ部分を拡大図により示す。環状係合溝25は、突部材22の軸方向(
図8の上下方向)において、上側の上斜面25aと、下側の下斜面25bと、両斜面25a,25bの間の帯状の底部25cとを含む。突部材22の下端外周には、斜面27が形成される。この実施形態では、
図8に示すように、環状係合溝25の上開口縁25dから突部材22の下端までの距離D1を、例えば「1.35mm」とすると、環状係合溝25の幅W1を、例えば「0.04mm」に設定することができる。また、環状係合溝25の深さT1を、例えば「0.15mm」に設定し、上斜面25aと下斜面25bとのなす角度θ1を、例えば「100°」に設定することができる。
【0032】
[弁体の製造方法について]
この実施形態において、弁体14を製造するには、先ず、突部材22の下端部を本体21の挿入穴24に挿入した状態で、挿入穴24の外側にて本体21の上面(端面)に、パンチ31により本体21をプレスすることにより、環状凹部26を形成すると共に、環状凹部26の形成に伴い本体21を変形させて挿入穴24の内面の一部を環状係合溝25に係合させる。これにより、本体21と突部材22を接合するようになっている。
【0033】
すなわち、
図9~
図12に、その一連の製造工程を断面図により示す。先ず、「突部材挿入工程」では、
図9、
図10に示すように、突部材22の下端部を本体21の挿入穴24に挿入する。この状態では、突部材22の環状係合溝25が、本体21の挿入穴24の内周面に対向して配置される。
【0034】
次に、「本体プレス工程」では、
図11、
図12に示すように、突部材22が挿入穴24に挿入された状態で、挿入穴24の外側にて本体21の上面(端面)に、パンチ31により本体21をプレスすることにより、環状凹部26を形成させると共に、環状凹部26の形成に伴い本体21を変形させて挿入穴24の内面の一部を環状係合溝25に係合させる。これにより、本体21と突部材22を接合して弁体14が得られる。
【0035】
図13に、パンチ31を断面図により示す。
図14に、
図13の鎖線円S2の部分を拡大断面図により示す。
図13に示すように、パンチ31は、突部材22を受け入れる中空32を含む円管状をなす。パンチ31の下端であって、中空32の開口縁部には、環状凸条33が形成される。
図14に示すように、環状凸条33は断面略山形状をなし、内側の内斜面33aと、外側の外斜面33bと、両斜面33a,33bの間の平面33cとを含む。この実施形態では、
図14に示す環状凸条33の高さH1を、例えば「0.4mm」に設定することができる。また、例えば、内斜面33aの角度θ2を外斜面33bの角度θ3よりも大きく設定することができる。
【0036】
ここで、本体21の上面に環状凹部26が形成されると共に、本体21の挿入穴24の内面の一部が環状係合溝25に係合するのは、パンチ31の環状凸条33が本体21の上面に食い込んで本体21が変形させられるためである。
【0037】
図15~
図17に、本体21の変形と、挿入穴24の内周面が環状係合溝25に係合する過程を断面図により示す。先ず、
図15に示すように、パンチ31の環状凸条33が本体21の上面(端面)に当たる。その後、
図16に示すように、環状凸条33が下方へ移動して環状凸条33が本体21の上面(端面)に食い込み始めると、環状凹部26ができ始め、挿入穴24の開口周縁部が突部材22の側へ膨らみ始める。
図16において、紗で示す部分は、応力発生部F1を示す。この応力発生部F1は、特に環状係合溝25の上開口縁25dと下開口縁25eの近傍に位置することになる。その後、
図17に示すように、環状凸条33が更に下方へ移動して環状凸条33が本体21に更に食い込むと、挿入穴24の内周面の一部が更に突部材22の側へ膨らみ、その膨らみ部分21aが環状係合溝25に係合する。ここで、
図17に示すように、膨らみ部分21aの一部が環状係合溝25の上下の開口縁25d,25eに係合することで応力発生部F1となり、その応力発生部F1にて本体21と突部材22との強固な接合力が得られる。
【0038】
[弁体及び流量制御弁の作用及び効果]
以上説明したこの実施形態の弁体14の構成によれば、本体21の非貫通な挿入穴24に突部材22が挿入された状態で、挿入穴24の内周面が変形により環状係合溝25に係合することで、突部材22が本体21に接合される。従って、本体21に突部材22が接合された状態では、本体21と突部材22との間に流体の通過を許容する透孔が生じない。このため、それぞれ金属より形成される本体21と突部材22を接合してなる弁体14につき、本体21と突部材22の接合部におけるシール性を向上させることができる。
【0039】
この実施形態の弁体14の構成によれば、環状係合溝25に対する挿入穴24の内面の係合は、その内面の一部が環状係合溝25を不完全に埋めるものであって、少なくとも環状係合溝25の開口縁25d,25e(
図8参照)の近傍に係合することである。従って、挿入穴24の内周面の変形と環状係合溝25との係合が比較的小さく済み、それにより挿入穴24からの突部材22の抜けが抑えられる。このため、挿入穴24の内周面の一部を変形させるための本体21の変形を少なく抑えることができ、本体21の耐久性を保つことができる。
【0040】
この実施形態の弁体14の構成によれば、環状係合溝25の下開口縁25eが、挿入穴24の開口端24aから穴深さJ1の半分以内の位置に配置されるので、下開口縁25eが開口端24aから比較的近くなる。従って、挿入穴24の外側にて本体21の端面を押圧し変形させて、挿入穴24の内面の一部を環状係合溝25に係合させたときの、変形した本体21と下開口縁25eとの接触長さが大きくなる。このため、変形した本体21と環状係合溝25の下開口縁25eとの接触長さが大きくなるので、突部材22の抜け方向に対する保持力を増大させることができる。
【0041】
この実施形態の弁体14の構成によれば、本体21の環状凹部26の容積に対する突部材22の環状係合溝25の容積の比(容積比)が150%以上に設定されるので、挿入穴24の内周面の変形による環状係合溝25に対する係合につき、必要十分な強度が得られる。
図18には、この容積比と、環状係合溝25と挿入穴24の内周面との係合部の破壊強度との関係をグラフにより示す。このグラフにおいて、太線は上記係合部に必要な破壊強度(約140%)を示し、破線は従来例の破壊強度の変化を示す。このグラフからわかるように、本実施形態では、上記容積比が「150%以上」に設定されることから、上記係合部にて必要十分な破棄強度を満たすことがわかる。このため、弁体14を構成するために本体21と突部材22とを強固に固定することができる。
【0042】
この実施形態の流量制御弁1の構成によれば、弁体14が弁座13に着座した全閉状態において、弁体14にEGRガスなどの流体が作用しても、その本体21と突部材22との間から流体が漏れることがない。加えて、この弁体14は、上記のような作用及び効果を有する。このため、弁体14を流量制御弁1に対し有利に使用することができる。
【0043】
[弁体の製造方法の作用及び効果]
この実施形態の弁体14の製造方法によれば、突部材22の端部を本体21の挿入穴24に挿入した状態で、本体21の端面をパンチ31によりプレスするだけで、突部材22が本体21に係合し、両者が有効に接合される。このため、本体21と突部材22の接合部におけるシール性を向上させた弁体14を、比較的容易に得ることができる。
【0044】
なお、この開示技術は前記実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0045】
(1)前記実施形態では、弁体14を含む流量制御弁1をEGR弁に適用したが、EGR弁以外の弁に適用することもできる。
【0046】
(2)前記実施形態では、突部材22の外面に形成される係合溝を環状をなす環状係合溝25に具体化した。これに対し、突部材22の外面に形成される係合溝を、環状係合溝25を複数に分断してなる複数の係合溝に具体化することもできる。
【0047】
(3)前記実施形態では、挿入穴24の外側に形成される凹部を環状をなす環状凹部26に具体化した。これに対し、挿入穴24の外側に形成される凹部を、環状凹部26を複数に分断してなる複数の凹部に具体化することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この開示技術は、EGR弁等の流量制御弁とその弁体の製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 流量制御弁
11 流路
13 弁座
14 弁体
21 本体
21a 膨らみ部分
22 突部材
24 挿入穴
25 環状係合溝(係合溝)
25d 上開口縁
25e 下開口縁
26 環状凹部(凹部)
31 パンチ
33 環状凸条