(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】負荷短絡検知方法及び負荷短絡検知装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20230414BHJP
H03K 17/08 20060101ALI20230414BHJP
H03K 17/082 20060101ALI20230414BHJP
H03K 17/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
G01R31/52
H03K17/08 C
H03K17/082
H03K17/00 B
(21)【出願番号】P 2021124928
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2022-09-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西仲 柾也
(72)【発明者】
【氏名】千賀 久司
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-051010(JP,A)
【文献】特開2015-215205(JP,A)
【文献】特開2016-152724(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220716(WO,A1)
【文献】特開2018-073908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/52
H03K 17/08
H03K 17/082
H03K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を駆動するための電力を蓄える
コンデンサと、前記負荷の低電位側に接続され、前記負荷に流れる電流を制御する第1スイッチと、前記
コンデンサから前記第1スイッチを介して低電位側電源に流れる電流流路の電圧を検出する電圧検出回路と、
前記コンデンサの高電位側に接続されて前記コンデンサを高電位側電源に接続する第2スイッチと、を備えた負荷駆動装置において実行される負荷短絡検知方法であって、
前記第1スイッチをオフ状態で、前記第2スイッチをオン状態として前記コンデンサを前記高電位側電源に接続して前記電力を蓄えるステップと、
前記第2スイッチをオフ状態として、前記コンデンサに蓄えられた前記電力を基に、前記第1スイッチを所定のデューティ比でPWM駆動するステップと、
前記第2スイッチをオフ状態で、前記電圧検出回路により検出された前記電流流路の電圧が、所定の閾値電圧以下である状態が所定時間以上継続した場合に、前記負荷が短絡状態であると検出するステップと、
を備えた負荷短絡検知方法。
【請求項2】
請求項1に記載の負荷短絡検知方法であって、
前記コンデンサは、電解コンデンサである、
負荷短絡検知方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の負荷短絡検知方法であって、
前記電流流路の電圧が所定の閾値電圧以下であるか否かを判断するステップは、所定時間毎に間欠的になされ、
前記短絡状態であると検出するステップは、前記電流流路の電圧が所定の閾値電圧以下である状態が所定回数連続して検出した場合に前記負荷が短絡状態であると検出する、
負荷短絡検知方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の負荷短絡検知方法であって、
前記所定のデューティ比
は、50パーセント以下5パーセント以上と、設定される、
負荷短絡検知方法。
【請求項5】
負荷を駆動するための電力を蓄える
コンデンサと、
前記負荷の低電位側に接続さ
れ、前記負荷に流れる電流を制御する第1スイッチと、
前記コンデンサから前記第1スイッチを介して低電位側電源に流れる電流流路の電圧を検出し、電圧検出信号を出力する電圧検出回路と、
前記コンデンサの高電位側に接続されて前記コンデンサを高電位側電源に接続する第2スイッチと、を備えた負荷短絡検知装置であって、
前記第1スイッチをオフ状態で、前記第2スイッチをオン状態として前記コンデンサを前記高電位側電源に接続して前記電力を蓄え、
前記第2スイッチをオフ状態として、前記コンデンサに蓄えられた前記電力を基に、前記第1スイッチを所定のデューティ比でPWM駆動し、
前記第2スイッチをオフ状態で、前記電圧検出回路により検出された前記電流流路の電圧が、所定の閾値電圧以下である状態が所定時間以上継続した場合に、前記負荷が短絡状態であると検出する、
負荷短絡検知装置。
【請求項6】
請求項5に記載の負荷短絡検知装置であって、
前記コンデンサは、電解コンデンサである、
負荷短絡検知装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の負荷短絡検知装置であって、
前記電圧検出信号に基づいて前記電流流路の電圧を検出する処理を所定時間毎に間欠的に行い、前記電流流路の電圧が所定の閾値電圧以下である状態が所定回数連続して検出した場合に前記負荷が短絡状態であると検出する、
負荷短絡検知装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の負荷短絡検知装置であって、
前記所定のデューティ比は
、50パーセント以下5パーセント以上と、設定される、
負荷短絡検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、負荷短絡検知方法及び負荷短絡検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイサイドスイッチと、ロウサイドスイッチと、を制御することで、負荷の駆動を行う制御装置が知られている。
【0003】
この場合において、負荷の端子同士の短絡を検出する手法として、負荷を高デューティ比で駆動することで制御装置上のロウサイドスイッチ側に設けられた電流監視回路を用いて異常電流値を検出する手法、及び、ハイサイドスイッチ側に設けられた電圧監視回路を用いて異常電圧値を堅守する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の負荷の端子同士の短絡を検出する手法では、負荷の端子同士が短絡している状態で、負荷を高デューティ比で駆動することとなるため、大電流が流れてしまい、制御装置及びハーネスなどが過熱して、劣化させてしまう虞があった。
本開示が解決しようとする課題は、負荷短絡を確実に検出すると共に、短絡電流が流れる流路に位置する虞のある構成部品の保護を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る負荷短絡検知方法は、負荷を駆動するための電力を蓄えるコンデンサと、前記負荷の低電位側に接続され、前記負荷に流れる電流を制御する第1スイッチと、前記コンデンサから前記第1スイッチを介して低電位側電源に流れる電流流路の電圧を検出する電圧検出回路と、前記コンデンサの高電位側に接続されて前記コンデンサを高電位側電源に接続する第2スイッチと、を備えた負荷駆動装置において実行される負荷短絡検知方法である。そして、第1スイッチをオフ状態で、第2スイッチをオン状態としてコンデンサを高電位側電源に接続して電力を蓄えるステップと、2スイッチをオフ状態として、コンデンサに蓄えられた前記電力を基に、前記第1スイッチを所定のデューティ比でPWM駆動するステップと、第2スイッチをオフ状態で、電圧検出回路により検出された電流流路の電圧が、所定の閾値電圧以下である状態が所定時間以上継続した場合に、前記負荷が短絡状態であると検出するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、負荷短絡を確実に検出すると共に、短絡電流が流れる流路に位置する虞のある構成部品の保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態にかかる車両用アクチュエータの制御装置が適用される車載システムの概要構成ブロック図。
【
図2】シャシー制御モジュールの要部の概要構成ブロック図。
【
図3】サスペンション駆動ユニットの概要構成ブロック図。
【
図5】初期診断における負荷短絡診断処理の処理フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態にかかる車両用アクチュエータの制御装置が適用される車載システムの概要構成ブロック図である。
【0010】
図1の車載システム10においては、車両用アクチュエータの制御装置として、シャシー制御モジュール11を構成する場合を例として説明する。
【0011】
シャシー制御モジュール11は、入力された車両情報(例えば、車速、車輪速、前後左右加速度、操舵角、駆動力情報等)及び操作情報(例えば、ステアリング操作状態、アクセル操作状態、ブレーキ操作状態等)に基づいて、横滑り防止機能等の車両挙動制御を行う車両挙動制御モジュール12、エンジン制御を行うエンジン制御モジュール13及び無段変速機(CVT)制御を行う無段変速機制御モジュール14を制御している。
【0012】
この場合において、シャシー制御モジュール11は、セントラルゲートウェイECU18を介して図示しない他の制御モジュール、具体的には、パワートレイン制御モジュール、ボディ制御モジュール、(自動)運転支援制御モジュール、マルチメディア制御モジュールなどとの連携動作を行うようにされている。
【0013】
図2は、シャシー制御モジュールの要部の概要構成ブロック図である。
図2においては、シャシー制御モジュール11としてサスペンションの駆動制御を行う場合を例として説明する。
【0014】
電子制御サスペンション制御においては、ショックアブソーバの減衰力を変化させるためにソレノイド式電子制御弁を用い、このソレノイド式電子制御弁を流れる油量を制御している。具体的には、例えば、ソレノイドに流す電流を増やすことによりソレノイド式電子制御弁が閉じて油が流れにくくなり、ショックアブソーバを堅くして減衰力を減らす。
【0015】
またソレノイドに流す電流を減らすことによりソレノイド式電子制御弁が開いて油が流れやすくなり、ショックアブソーバを柔らかくして減衰力を増やす。
そしてこの制御を4輪のそれぞれにおいて独立して行うことで、車体を水平に保つようにそれぞれのショックアブソーバの減衰力を制御することとなる。
【0016】
シャシー制御モジュール11は、
図2に示すように、(車載)バッテリ51から供給された電力を変換して、シャシー制御モジュール11の各部に電源を供給する電源IC21と、セントラルゲートウェイECU18を含む車両の各部と通信を行うCANトランシーバ22と、被制御対象のサスペンションを構成している複数のソレノイド式電子弁のソレノイドを駆動するためのサスペンション駆動ユニット23と、CANトランシーバ22を介して車両各部との通信を行いつつ、シャシー制御モジュール11全体を制御するコントローラ24と、を備えている。
【0017】
上記構成において、コントローラ24は、電源IC21からの電力供給を受けて、CANトランシーバ22、CANネットワーク及びセントラルゲートウェイECU18を介して、他の制御モジュールと連携をとりつつ、シャシー制御としてのサスペンション駆動制御を行うことなる。
【0018】
図3は、サスペンション駆動ユニットの概要構成ブロック図である。
サスペンション駆動ユニット23は、サスペンション駆動電源に一端が接続された逆接保護スイッチ61と、一端が逆接保護スイッチ61の他端に接続され、コントローラ24からオン/オフ制御信号SCOが入力されてカットオフスイッチ(第2スイッチ)として機能するハイサイドスイッチ62と、一端がハイサイドスイッチ62の他端に接続され、他端が接地され、供給電流を抑制するための電解コンデンサ63と、を備えている。
【0019】
さらにサスペンション駆動ユニット23は、一端がハイサイドスイッチの他端に接続され、他端が接地され、電流検出信号SC1~SC4及び電圧検出信号SV1~SV4を出力し、コントローラ24からのPWM制御信号SPWM1~SPWM4に基づいて、対応する車輪のショックアブソーバを構成するソレノイド52-1~52-4の駆動制御を行う複数(
図3の例では、4個)のソレノイド駆動部64-1~64-4と、を備えている。
【0020】
次にソレノイド駆動部64-1~64-4の構成について説明する。
この場合において、ソレノイド駆動部64-1~64-4は、同一構成であるので、ソレノイド駆動部64-1を例として説明する。
【0021】
図4は、ソレノイド駆動部の詳細説明図である。
ソレノイド駆動部34-1は、カソード端子がハイサイドスイッチ62の他端に接続され、ソレノイド52-1を逆起電力から保護するための保護ダイオード71と、一端がハイサイドスイッチ62の他端(ソース端子)に接続されたソレノイド52-1の他端に接続され、他端が保護ダイオード71のアノード端子に接続された電流検出用のシャント抵抗72と、シャント抵抗の両端に入力された電流検出用オペアンプ73と、を備えている。
【0022】
さらにソレノイド駆動部34-1は、直列接続された分圧抵抗を有し、入力端子が保護ダイオード71のアノード端子に接続され、出力端子がコントローラ24のアナログ入力端子に接続された電圧検出回路74と、一端が保護ダイオード71のアノード端子に接続され、他端が接地され、コントローラ24からPWM制御信号SPWM1が入力されてPWM駆動部(第1スイッチ)として機能するロウサイドスイッチ75と、を備えている。
ここで、接地は、低電位側電源に相当している。
【0023】
上記構成において、保護ダイオード71は、ロウサイドスイッチ75をオン状態からオフ状態に遷移した場合に、ソレノイド52-1のコイルに逆起電力が発生し、大きな突入電流が発生するのを防止して、ソレノイド52-1あるいはシャント抵抗72が破損するのを防止する。
【0024】
図4の例においては、理解の容易のため、逆接保護スイッチ61、ハイサイドスイッチ62及びロウサイドスイッチ75をそれぞれ一つのNチャネルMOSトランジスタにより示しているが、電流容量によっては、NチャネルMOSトランジスタをそれぞれ複数並列に設けるようにすることも可能である。
【0025】
また、電流検出用オペアンプ73は、ロウサイドスイッチ75がオン状態である場合にソレノイド52-1を流れる電流をシャント抵抗72に生じる電圧に基づいて検出し、電流検出信号SC1をコントローラ24に出力する。
【0026】
電圧検出回路74は、ソレノイド52-1に印可された電圧に相当する電圧検出信号SV1をコントローラ24に出力する。
ロウサイドスイッチ75は、コントローラ24から出力されるPWM制御信号SPWM1に対応するデューティでオン/オフされ、ソレノイド52-1に流れる電流量を制御して、ソレノイド52-1の駆動制御を行う。
【0027】
次に実施形態の動作についてソレノイド駆動部34-1を例として、車両の初期診断時の負荷短絡診断処理について説明する。
車両の始動時には、始動時の安全性の確保及び車載装置の保護のため、天絡診断、地絡診断に加えて負荷が短絡しているか否かを診断する負荷短絡診断処理が行われる。
【0028】
図5は、初期診断における負荷短絡診断処理の処理フローチャートである。
初期状態において、逆接保護スイッチ61、ハイサイドスイッチ62及びロウサイドスイッチ75は、オフ状態であるものとする。
【0029】
負荷短絡診断処理が開始すると、まず、コントローラ24は、電解コンデンサ63を充電するためにカットオフスイッチとして機能するハイサイドスイッチ62をオン状態とするためにオン/オフ制御信号SCOをハイサイドスイッチを構成するNチャネルMOSトランジスタのゲート端子に“H”レベルのオン/オフ制御信号SCOを出力する。
【0030】
これによりハイサイドスイッチ62は、コントローラ24から“H”レベルのオン/オフ制御信号SCOが入力されると、オン状態に遷移する(ステップS11)。
この結果、バッテリ51から逆接保護スイッチ61の寄生ダイオード、ハイサイドスイッチ62を介して電解コンデンサ63に電力が供給されて充電が開始する(ステップS12)。
【0031】
続いてコントローラ24は、充電開始から電解コンデンサ63の電圧がバッテリ51の電圧と等しくなる充電完了タイミングに至ったか否かを判断する(ステップS13)。
ステップS13の判断において、未だ充電完了タイミングに至っていない場合には(ステップS13;No)、処理を再びステップS12に移行して、電解コンデンサ63の充電を継続する。
【0032】
ステップS13の判断において、充電完了タイミングに至った場合には(ステップS;Yes)、コントローラ24は、カットオフスイッチとして機能するハイサイドスイッチ62をオフ状態とするためにオン/オフ制御信号SCOをハイサイドスイッチ62を構成するNチャネルMOSトランジスタのゲート端子に“L”レベルのオン/オフ制御信号SCOを出力する(ステップS14)。
【0033】
この結果、コントローラ24は、ハイサイドスイッチ62が確実にオフ状態となるまで待機する。
そしてコントローラ24は、負荷短絡を検出するための所定のデューティ比でロウサイドスイッチ75を駆動するためのPWM制御信号SPWM1をロウサイドスイッチ75を構成しているNチャネルMOSトランジスタのゲート端子に出力する。
【0034】
ここで、所定のデューティ比としては、負荷であるソレノイド52-1が短絡状態にあることを高精度で確実に検出できるとともに、高電位側電源と電解コンデンサ63から接地((低電位側電源)に至るまでの電流流路の構成部品(
図4の例では、シャント抵抗72及びロウサイドスイッチ75)の過電流に対する保護を図ることが可能な値とされる。
【0035】
より具体的には、デューティ比としては、50%以下、より好ましくは、5%程度とされる。しかしながら、これに限られるものではなく、適宜回路構成に応じて設定される。
【0036】
続いて、コントローラ24は、所定の電圧検出タイミングに至ったか否かを判断する(ステップS16)。
この場合において、所定の電圧検出タイミングとしては、コントローラ24の内部タイマにより、例えば、10msec毎とされる。
【0037】
ステップS16の判断において、未だ所定の電圧検出タイミングに至っていない場合には(ステップS16;No)、処理を再びステップS16に移行して、待機状態となる。
ステップS16の判断において、所定の電圧検出タイミングに至った場合には(ステップS16;Yes)、電圧検出回路74によりソレノイド52-1に印可された電圧を検出することとなる。
【0038】
電圧検出回路74は、ソレノイド52-1に印可された電圧を分圧抵抗により分圧し、ソレノイド52-1に印可された電圧に相当する電圧検出信号SV1をコントローラ24に出力する(ステップS17)。
【0039】
これにより、コントローラ24は、入力された電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が閾値電圧Vth以下であるか否かを判断する(ステップS18)。
【0040】
この場合において、閾値電圧Vthは、初期診断処理期間中に正常状態では、決して至らないとともに、負荷短絡状態では、容易に至る電圧(例えば、0.5ボルト)に設定される。
【0041】
ステップS18の判断において、入力された電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が閾値電圧Vth以下である場合には(ステップS18;Yes)、コントローラ24は、入力された電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が閾値電圧Vth以下であることが所定回数連続して検出されたか否かを判断する(ステップS19)。より詳細な負荷短絡の判断処理については、後に詳述する。
【0042】
ここで、所定回数とは、例えば、5回とされ、上述の例の場合、所定の電圧検出タイミングが10msec毎であるので、50msecの間、入力された電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が閾値電圧Vth以下であったと見なせる状態においては、負荷であるソレノイド52-1が短絡状態にあると判断して、負荷短絡検出時処理を行って(ステップS20)、処理を終了する。
【0043】
ここで、負荷短絡検出時処理としては、例えば、負荷(本例では、ソレノイド)の短絡)が発生した旨の告知(表示、音声等)を行い、車両の始動ができない状況であれば、その旨を通知して、始動処理を中断することとなる。
【0044】
ステップS18の判断において、入力された電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が閾値電圧Vthを超えている場合には(ステップS18;No)、初期診断処理の終了が可能であるか否か、すなわち、初期診断において異常を検出せずに全ての手順が完了したか否かを判断する(ステップS21)。
【0045】
ステップS21の判断において、未だ初期診断処理が終了できない場合には(ステップS21;No)、処理を再びステップS16に移行して、上述した処理を繰り返す。
【0046】
ステップS21の判断において、初期診断処理が終了できる場合には(ステップS21;Yes)、通常処理に移行して、車両の始動処理を行う(ステップS22)。
【0047】
ここで、負荷短絡の判断処理について、より詳細に説明する。
図6は、負荷短絡の判断処理の説明図である。
電解コンデンサ63の充電が完了し、ハイサイドスイッチ62及びロウサイドスイッチ75が双方ともオフ状態である初期状態においては、監視電圧SV(電圧検出信号SV1~SV4に相当)は、バッテリ51の電圧と等しくなった電解コンデンサ63の電圧に相当する電圧となっている(
図6において、水平部分の電圧)。
【0048】
以下においては、理解の容易のため、ソレノイド駆動部34-1の系統についてのみ説明するものとする。
その後、コントローラ24は、時刻tsにおいて、負荷短絡を検出するための所定のデューティ比でロウサイドスイッチ75を駆動するためのPWM制御信号SPWM1をロウサイドスイッチ75に出力する。
【0049】
この結果、PWM制御信号SPWM1に対応する所定のデューティ比でロウサイドスイッチ75がオン状態となるため、電解コンデンサ63からソレノイド52-1(あるいは短絡箇所)、シャント抵抗72、ロウサイドスイッチ75を構成しているNチャネルMOSトランジスタのドレイン端子及びソース端子を介して電流が流れることとなる。
【0050】
この場合において、短絡が発生しておらず、電流がソレノイド52-1を介して流れる場合には、ソレノイド52-1の抵抗成分により電流が制限され、
図6の上部に直線VNMとして示すように、電圧低下は徐々に起こることとなる。
【0051】
したがって、所定の負荷短絡検出処理期間中は、電圧検出回路74により検出される電圧検出信号SV1に対応する電圧が閾値電圧Vth以下となることはないので、コントローラ24は、負荷短絡検出処理後、通常処理に移行可能と判断して処理を行う。
【0052】
一方、短絡が発生している場合には、電流は短絡箇所を介して流れることとなり、正常時と異なり電流が制限されないため、
図6の下部に曲線VANとして示すように、電圧低下が急激に起こることとなる。
【0053】
この場合において、所定の電圧検出タイミング(例えば、10msec毎)である時刻t0においては、未だ電圧検出回路74により検出される電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が閾値電圧Vth以下とはなっておらず、かつ、未だ負荷短絡検出処理を終了するタイミング(例えば、負荷短絡検出処理を開始してから80msec間)に至っていないので、コントローラ24は、待機状態となる。
【0054】
そして、コントローラ24は、入力された電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が閾値電圧Vthを超えていることを検出すると、図示しない検出数カウンタをリセットする。
【0055】
そして次回の電圧検出タイミングである時刻t1において、コントローラ24は、電圧検出回路74により検出される電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が、閾値電圧Vth以下となっていることを検出する。
【0056】
これによりコントローラ24は、入力された電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が閾値電圧Vth以下であることが所定回数(例えば、5回)連続して検出されたか否かを判断することとなる。
【0057】
しかしながら、この場合には、まだ1回目であり、かつ、未だ負荷短絡検出処理を終了するタイミングに至っていないので、コントローラ24は、待機状態となる。
【0058】
この場合において、コントローラ24は、入力された電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が閾値電圧Vth以下であることを検出すると、図示しない前述の検出数カウンタを一つカウントアップ(例えば、検出数カウンタ=1)して保持する。
【0059】
同様にして、電圧検出タイミングである時刻t2、時刻t3及び時刻t4においても、コントローラ24は、電圧検出回路74により検出される電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が、閾値電圧Vth以下となっていることを検出し、入力された電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が閾値電圧Vth以下であることが所定回数(例えば、5回)連続して検出されたか否かを判断することとなる。
【0060】
しかしながら、これらの場合には、まだ2回目から4回目であり、かつ、未だ負荷短絡検出処理を終了するタイミングに至っていないので、コントローラ24は、待機状態となる。この状態において、図示しない前述の検出数カウンタをそれぞれ一つずつカウントアップ(例えば、検出数カウンタ=2→4)して保持する。
【0061】
そして次回の電圧検出タイミングである時刻t5において、コントローラ24は、電圧検出回路74により検出される電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が、閾値電圧Vth以下となっていることを検出する。
これによりコントローラ24は、入力された電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が閾値電圧Vth以下であることが所定回数(例えば、5回)連続して検出されたか否かを判断することとなる。
【0062】
この場合には、入力された電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が閾値電圧Vth以下であることが所定数(本例では、5回)連続して検出されたので、コントローラ24は、所定期間(本例50msec)の間、入力された電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が閾値電圧Vth以下であったと見なせる状態となったので、負荷であるソレノイド52-1が短絡状態にあると判断して、負荷短絡検出時処理を行うこととなる。
【0063】
以上の説明のように、本実施形態によれば、電解コンデンサ63に電力を蓄え、電解コンデンサをバッテリ51から電気的に切り離した状態で、ロウサイドスイッチ75を所定のデューティ比でPWM制御し、入力された電圧検出信号SV1に対応するソレノイド52-1に印可された電圧が、負荷短絡検出処理期間中において、閾値電圧Vth以下である状態が連続して所定回数検出されたことにより確実に負荷短絡を検出することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、負荷短絡検出処理において、電源としての電解コンデンサ63から接地に流れる電流を制限しているので、短絡電流が流れる電流流路を構成する虞のある回路構成部品(配線(ハーネス)、シャント抵抗、MOSトランジスタ、コントローラ等)を保護しつつ、確実に短絡検出を行うことができる。
【0065】
以上、本開示の各実施の形態について説明したが、本開示は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、以上においては、ソレノイド駆動部64-1~64-4のうち、一つのソレノイド駆動部64-1について負荷短絡を検知する場合について説明したが、複数のソレノイド駆動部64-1~64-4について負荷短絡検知処理を行うに際しては、各ソレノイド駆動部64-1~64-4負荷短絡検知処理において、電解コンデンサ63をそれぞれ充電し、同一の閾値電圧Vthを用いて負荷短絡検知処理を行うようにすればよい。
【0067】
また、1回の電解コンデンサ63の充電で、各ソレノイド駆動部64-1~64-4について閾値電圧Vthを異ならせ(後に処理するソレノイド駆動部ほど閾値電圧Vthを低下させる)、所定のデューティ比を上記説明の場合よりも小さくすることで、電解コンデンサ63の放電可能期間を延ばして全てのソレノイド駆動部64-1~64-4において順次負荷短絡検知処理を行うように構成することも可能である。
【0068】
以上の説明では、電圧検出を所定タイミング毎に行って、所定回数連続して閾値電圧Vthを下回っている場合に、負荷短絡が検知されたとしていたが、所定時間電圧検出を連続して行って、所定時間以上閾値電圧Vthを下回っている場合に、負荷短絡が検知されたと判断するように構成することも可能である。
【0069】
以上の説明においては、ソレノイドを用いて車両の姿勢を一定に保つことにより乗り心地の向上を図るシステムについて説明したが、さらに、ステアリング・バイ・ワイヤ技術で用いる操舵情報を用い、車両の旋回状況を予測してショックアブソーバの減衰力を制御することにより、ステアリングを操作した瞬間に車両が旋回を始めて傾くよりも前に減衰力を制御して、車体を水平に保つようにして、ロール時のボディ剛性が向上したのと同じ効果を得るシステムにおいて、同様に負荷の短絡検知を行うように構成することも可能である。
【0070】
以上の説明においては、負荷としてソレノイド(コイル)である場合について説明したが、正常動作時には、電流量が負荷により制限され、かつ、PWM制御により負荷を流れる電流量を制御可能な装置であって、短絡時には電流量が負荷による制限がなされない装置であれば同様に適用が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 車載システム
11 シャシー制御モジュール
12 車両挙動制御モジュール
13 エンジン制御モジュール
14 無段変速機制御モジュール
18 セントラルゲートウェイECU
21 電源IC
22 CANトランシーバ
23 サスペンション駆動ユニット
24 コントローラ(制御部)
25 セントラルゲートウェイ
34 ソレノイド駆動部
51 バッテリ(高電位側電源)
52-1~52-4 ソレノイド
61 逆接保護スイッチ
62 ハイサイドスイッチ(第2スイッチ)
63 電解コンデンサ(蓄電装置)
64 ソレノイド駆動部
71 保護ダイオード
72 シャント抵抗
73 電流検出用オペアンプ
74 電圧検出回路
75 ロウサイドスイッチ(第1スイッチ)
SC1~SC4 電流検出信号
SCO オン/オフ制御信号(第2制御信号)
SV 監視電圧
SPWM1~SPWM4 PWM制御信号(第1制御信号)
SV1 電圧検出信号
Vth 閾値電圧