(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】電路遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 39/00 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
H01H39/00 C
(21)【出願番号】P 2020510738
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2019011418
(87)【国際公開番号】W WO2019188582
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2018063264
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 純久
(72)【発明者】
【氏名】木本 進弥
(72)【発明者】
【氏名】金松 健児
(72)【発明者】
【氏名】木下 一寿
(72)【発明者】
【氏名】中村 真人
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06252190(US,B1)
【文献】米国特許第04250365(US,A)
【文献】特開平11-102633(JP,A)
【文献】特開昭61-260528(JP,A)
【文献】実開昭48-008644(JP,U)
【文献】特開2010-153371(JP,A)
【文献】特開昭59-090323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 39/00
H01H 1/06- 1/66
H01H 37/58-37/74
H01H 45/00-45/14
H01H 50/00-50/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を有する固定端子と、
前記固定接点に接続される可動接点を有する可動接触子と、
前記可動接点が前記固定接点に接続される閉位置から前記可動接点が前記固定接点と離れた
第1開位置へと前記可動接触子を移動させる
ピストンを有する移動機構と、
燃焼によりガスを発生させる点火器と、
前記固定接点及び前記可動接触子を収容する収容室と、
前記ピストンの外面と向かい合う側壁を有する筒状のスリーブと、
を備え、
前記スリーブの前記側壁には、前記側壁を貫通して前記収容室と前記スリーブ内とをつなぐ流路が形成されており、
前記点火器が前記ガスを発生させることにより、前記ピストンは前記可動接触子に向かって移動し、
前記ガス
は、前記流路を介して前記収容室に導入される、
電路遮断装置。
【請求項2】
前記ガスは、前記固定接点と前記可動接触子が前記
第1開位置にある場合の前記可動接点との間の所定空間に導入される、
請求項1に記載の電路遮断装置。
【請求項3】
前記流路は、前記ガスが前記所定空間に吹き付けられるように前記ガスを誘導す
る、
請求項2に記載の電路遮断装置。
【請求項4】
前記スリーブは、前記可動接触子に向かうにつれて内径が小さくなる筒部を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項5】
前記移動機構は、前記ガスの圧力を受ける加圧
室を備え、
前記ピストンは、前記加圧室内の圧力を受けて動かされ、前記閉位置にある前記可動接触子
を前記第1開位置へと移動させ、
前記ガスの一部が、前記加圧室から前記収容室に導入される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項6】
前記移動機構は、
前記可動接点及び前記固定接点を含む電路に流れる異常電流に応じて前記可動接触子を前記閉位置から前記
第1開位置に移動させる、トリップ装置を備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項7】
前記トリップ装置は、
前記電路の一部を構成する励磁コイルを有し、前記電路に前記異常電流が流れた際に前記励磁コイルに生じる磁束によって発生する電磁力によって前記可動接触子を前記
第1開位置に移動させる、
請求項6に記載の電路遮断装置。
【請求項8】
前記トリップ装置は、
前記電路に前記異常電流が流れると湾曲するバイメタル板を備え、
前記電路に前記異常電流が流れた際に前記バイメタル板が湾曲することによって、前記可動接触子を前記
第1開位置に移動させる、
請求項6又は7に記載の電路遮断装置。
【請求項9】
前記閉位置に向かう向きの弾性力を前記可動接触子に与える弾性部を備える、
請求項1~8のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項10】
前記可動接触子を前記閉位置に保持させるための永久磁石を備える、
請求項1~9のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項11】
前記収容室を含む、前記ガスを密閉する空間を含む、
請求項1~10のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【請求項12】
前記閉位置から前記可動接点が前記固定接点と離れた第
2開位置に前記可動接触子を移動させる励磁コイ
ルを備え
、
前記第1開位置における前記可動接点と前記固定接点との間の距離は、前記第2開位置における前記可動接点と前記固定接点との間の距離よりも長い、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電路遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電路遮断装置に関し、より詳細には、電流が流れる電路を遮断する電路遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車、特に電動車両上に装着されるよう意図された、パイロテクニックアクチュエータを備える回路遮断器が開示されている。
【0003】
特許文献1の回路遮断器は、導電体と、ハウジングと、マトリクスと、パンチと、パイロテクニックアクチュエータと、を備えている。
【0004】
ハウジングは、導電体によって部分的に横切られ、導電体の端部は、回路遮断器用の2つの接続端子を形成する。マトリクスとパンチとは、導電体の両側(上側と下側と)に配置されている。
【0005】
パイロテクニックアクチュエータは、点火されたときにパンチを第1の位置から第2の位置に移動させる。パンチ及びマトリクスは、パンチが第1の位置から第2の位置に移動するときに、導電体を破断(分割)する。パンチは溝を備える。パンチが第2の位置にある状態で、パンチの溝はマトリクス内に係合され、これにより、ハウジング内の空間が分断されて2つの切断室が形成される。
【0006】
パンチが第1の位置から第2の位置に進み、導電体を切断するときに、電気アークが形成される。この電気アークは、切断室とパンチの溝の底部との間の通路を進行する。通路の近傍には、電気アークの電圧を増大させるために、電気アークによるアブレーションによって引き出される材料が、備えられている。
【0007】
回路遮断器等の遮断装置では、アークを速やかに消弧することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【0009】
本開示は上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、アークが発生した場合に、アークの速やかな消弧を図ることが可能な電路遮断装置を提供することにある。
【0010】
本開示の一態様に係る電路遮断装置は、固定端子と、可動接触子と、移動機構と、点火器と、収容室と、スリーブと、を備える。前記固定端子は、固定接点を有する。前記可動接触子は、前記固定接点に接続される可動接点を有する。前記移動機構は、前記可動接触子を閉位置から第1開位置へと移動させるピストンを有する。前記閉位置は、前記可動接点が前記固定接点に接触する前記可動接触子の位置である。前記第1開位置は、前記可動接点が前記固定接点と離れた前記可動接触子の位置である。前記点火器は、燃焼によりガスを発生させる。前記収容室は、前記固定接点及び前記可動接触子を収容する。前記スリーブは、前記ピストンの外面と向かい合う側壁を有する筒状である。前記スリーブの前記側壁には、前記側壁を貫通して前記収容室と前記スリーブ内とをつなぐ流路が形成されている。前記点火器が前記ガスを発生させることにより、前記ピストンは前記可動接触子に向かって移動する。前記電路遮断装置では、前記ガスは、前記流路を介して前記収容室に導入される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によると、アークが発生した場合に、アークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1の電路遮断装置の断面図である。
【
図2】
図2は、同上の電路遮断装置の要部の斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の電路遮断装置における、
図1と直交する方向の断面図である。
【
図4】
図4は、同上の電路遮断装置に含まれるパイロアクチュエータの断面図である。
【
図5】
図5は、同上の電路遮断装置を備える電源システムを説明するための回路図である。
【
図6】
図6は、同上の電路遮断装置の動作途中の断面図である。
【
図7】
図7は、同上の電路遮断装置の動作後の断面図である。
【
図8】
図8A~
図8Cは、同上の電路遮断装置において、ガスによってアークが伸張されることを説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態1の一変形例の電路遮断装置の断面図である。
【
図10】
図10は、同上の電路遮断装置の動作後の断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態2の電路遮断装置の断面図である。
【
図12】
図12は、同上の電路遮断装置の動作後の断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態2の変形例1の電路遮断装置の側面図である。
【
図15】
図15は、同上の電路遮断装置の動作後の側面図である。
【
図16】
図16は、実施形態2の変形例2の電路遮断装置の断面図である。
【
図17】
図17は、同上の電路遮断装置の可動接触子の斜視図である。
【
図18】
図18は、実施形態2の変形例3の電路遮断装置の断面図である。
【
図20】
図20は、同上の電路遮断装置のオフ状態の断面図である。
【
図21】
図21は、同上の電路遮断装置の動作後の断面図である。
【
図23】
図23は、同上の電路遮断装置のオフ状態の断面図である。
【
図25】
図25は、同上の電路遮断装置の動作後の断面図である。
【
図27】
図27は、同上の電路遮断装置のオフ状態の断面図である。
【
図28】
図28は、同上の電路遮断装置の動作後の断面図である。
【
図30】
図30は、同上の電路遮断装置のオフ状態の断面図である。
【
図31】
図31は、同上の電路遮断装置の動作後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎない。本開示は、実施形態及び変形例に限定されることなく、この実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態及び変形例において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0015】
(1)実施形態1
実施形態1の電路遮断装置(電流遮断装置)100について、
図1~
図7を用いて説明する。
【0016】
(1.1)概要
実施形態1の電路遮断装置100は、
図1に示すように、第1固定端子(固定端子)1と、第2固定端子2と、可動接触子(可動端子)3と、保持部4と、パイロアクチュエータ5と、収容室70と、を備える。
【0017】
第1固定端子1は、第1固定接点(固定接点)11を有している。第1固定端子1は、電気回路の第1端に接続される第1電極12を有している。
【0018】
第2固定端子2は、第2固定接点21を有している。第2固定端子2は、電気回路の第2端に接続される第2電極22を有している。
【0019】
可動接触子3は、第1可動接点(可動接点)31を有している。第1可動接点31は、第1固定接点11に接続される。可動接触子3は、第2可動接点32を有している。第2可動接点32は、第2固定接点21に接続される。本実施形態では、可動接触子3は、第1固定端子1及び第2固定端子2の各々とは別体に形成される。
【0020】
第1固定接点11、第2固定接点21、可動接触子3(第1可動接点31及び第2可動接点32)は、収容室70に収容されている。
【0021】
保持部4は、第1可動接点31が第1固定接点11に接続され、第2可動接点32が第2固定接点21に接続されるように、可動接触子3を保持する。保持部4は、特に、可動接触子3に電流が流れていない場合(非通電時)に、第1可動接点31が第1固定接点11に接続され、第2可動接点32が第2固定接点21に接続されるように、可動接触子3を保持する。
【0022】
以下では、第1可動接点31が第1固定接点11と接続されている可動接触子3の位置を、閉位置という。なお、閉位置では、第2可動接点32と第2固定接点21も接続されている。
【0023】
図1に示すように、パイロアクチュエータ5は、点火器51と、ケース52と、ピストン53と、を備えている。
【0024】
点火器(squib)51は、ケース52内に収容されている。点火器51は、燃焼によりガスを発生させる。点火器51は発熱体と火薬(燃料)を含み、発熱体に電気信号が流れ発熱体が発熱すると、火薬が着火する。点火器51が点火されると、火薬が燃焼してガスを発生させる。点火器51で発生するガスは、電気絶縁性を有する。点火器51で発生するガスは、例えば一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス等である。点火器51で発生したガスは、ケース52内の加圧室520内に導入されて、加圧室520内の圧力を上昇させる。つまり、加圧室520は、点火器51で発生したガスの圧力を受ける。
【0025】
ピストン53は、第1端531で加圧室520内の圧力を受けて動かされ、第2端532で固定端子(第1固定端子)1から離す向きの力を可動接触子3に(直接又は間接的に)与えて可動接触子3を移動させる。より詳細には、ピストン53は、第1端531で加圧室520の圧力を受け、加圧室520内の上昇した圧力によって押されて、第2端532で可動接触子3を押す。ピストン53は、加圧室520内の大きな圧力を受けて、高速で点火器51から離れる向き(
図1の下向き)に移動して、可動接触子3を押す。ピストン53は、加圧室520内の圧力によって押されて、第1の位置(
図1に示す位置)から第2の位置(
図7に示す位置)まで移動する。ピストン53の第1の位置から第2の位置への移動によって、加圧室520(ケース52内において点火器51のガスが導入されて圧力が上昇する空間)が、広がる。
【0026】
可動接触子3はピストン53によって押されて、収容室70内で移動する。可動接触子3は、ピストン53によって押されて移動し、
図6、
図7に示すように、第1可動接点31が第1固定接点11から引き離され、かつ第2可動接点32が第2固定接点21から引き離される。これにより、第1電極12と第2電極22との間の電路が遮断される。このように、本実施形態では、加圧室520とピストン53とは、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11に接続される位置から可動接点が固定接点と離れた位置へと可動接触子3を移動させる移動機構として機能する。
【0027】
以下では、第1可動接点31が第1固定接点11から最も離れている可動接触子3の位置(
図7に示す可動接触子3の位置)を、開位置という。なお、開位置では、第2可動接点32も第2固定接点21から離れている。
【0028】
図1に示すように、ケース52の側壁には、ケース52の内外を繋ぐ流路50が形成されている。流路50の第1端501は収容室70に繋がっており、流路50の第2端502はケース52の内部空間に繋がっている。ただし、ピストン53が第1の位置にある場合、流路50の第2端502は加圧室520には繋がっていない(
図1参照)。
【0029】
ピストン53が第1の位置(
図1参照)から第2の位置(
図7参照)に移動することで、加圧室520が広がり、流路50の第2端502が加圧室520に繋がる。これにより、加圧室520と収容室70とが、流路50を介して繋がる。このため、点火器51で発生したガスは、加圧室520及び流路50を通って収容室70内に導入される。
【0030】
収容室70には、第1固定接点11及び第1可動接点31が収容されている。ここにおいて、上記のように、点火器51で発生したガスは、収容室70に導入される。これにより、固定接点(第1固定接点)11と可動接点(第1可動接点)31との間(所定空間S1)に発生するアークが、点火器51で発生したガスによって冷却される。ここでいう「アークの冷却」とは、アーク放電のプラズマもしくは金属蒸気の絶縁性を高めること、を意味する。アークの冷却は、例えば、電気絶縁性のガスの導入による所定空間S1の圧力の上昇、電気絶縁性のガスのアークへの吹き付け、等により行なわれる。アークが冷却されると、アークの電界強度(単位長さ当たりの電圧)が増加し、ある一定電圧がアークの両端にかかっている状態で存在し得るアークの長さが短くなり、アークの消弧が促進される。
【0031】
このように、電路遮断装置100では、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11から引き離される際に、点火器51で発生したガスが収容室70(詳細には、所定空間S1)に導入される。これにより、接点間にアークが発生した場合に、ガスによってアークが冷却される。したがって、電路遮断装置100は、アークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【0032】
(1.2)詳細
以下、本実施形態の電路遮断装置100について、
図1~
図7を用いて詳細に説明する。
【0033】
(1.2.1)電源システム
図5に示すように、本実施形態の電路遮断装置100は、例えば電源システム200のヒューズとして用いられる。
【0034】
電源システム200は、例えば、電動車両等の車両300に搭載され、インバータ3001を介して接続されるモータ3002を駆動して、車両300を走行させる。車両300では、
図5に示すように、インバータ3001と並列にプリチャージコンデンサ3003が接続されている。
【0035】
インバータ3001は力行時、電源システム200から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ3002に供給し、回生時、モータ3002から供給される交流電力を直流電力に変換して電源システム200に供給する。モータ3002は例えば、三相交流同期モータである。
【0036】
電源システム200は、電路遮断装置100に加えて、バッテリ201、第1メインリレー202、第2メインリレー203、プリチャージ抵抗204、プリチャージリレー205、電流センサ(シャント抵抗)206及び制御回路207を備える。
【0037】
バッテリ201は、直列接続された複数の電池セルを備える。電池セルは、例えば、ニッケル水素電池セル、リチウムイオン電池セル等を用いることができる。
【0038】
第1メインリレー202の第1端は、バッテリ201の正極と接続され、第2端は、インバータ3001の第1入力端子(高電位側入力端子)と接続されている。
【0039】
第2メインリレー203の第1端は、電流センサ206及び電路遮断装置100を介してバッテリ201の負極と接続され、第2端は、インバータ3001の第2入力端子(低電位側入力端子)と接続されている。
【0040】
第1メインリレー202と並列に、プリチャージ抵抗204とプリチャージリレー205との直列回路が接続されている。
【0041】
制御回路207は、第1メインリレー202、第2メインリレー203、プリチャージリレー205、及び電路遮断装置100の動作を制御する。
【0042】
制御回路207は、モータ3002への電力の供給の開始時、プリチャージリレー205及び第2メインリレー203を閉じて、プリチャージコンデンサ3003を充電する。これによりモータ3002への突入電流が抑制される。制御回路207は、プリチャージコンデンサ3003への充電の完了後、プリチャージリレー205を開き、第1メインリレー202を閉じて、電源システム200からの電力の供給を開始させる。
【0043】
また、制御回路207は、電流センサ206で検出される電流に基づき、電源システム200を含む回路の異常の発生を検知する。制御回路207は、電源システム200を含む回路に異常が発生すると、第1メインリレー202、第2メインリレー203及び電路遮断装置100のうちの少なくとも一つを動作させて(起動させて)、回路を遮断する。
【0044】
制御回路207は、例えば、電流センサ206で検出される電流の大きさが第1閾値を超える時間が第1時間継続すると、第1メインリレー202と第2メインリレー203とのうちの少なくとも一方を開く。これにより、回路が遮断される。この場合、例えば制御回路207によって、開かれたリレー(第1メインリレー202、第2メインリレー203)が再び閉じられると、再度回路が形成されて、電源システム200からモータ3002への電力の供給が再開される。
【0045】
一方、制御回路207は、例えば、電流センサ206で検出される電流の大きさが第2閾値(>第1閾値)を超える時間が第2時間継続すると、電路遮断装置100を動作させる。これにより、回路が遮断される。電路遮断装置100は、回路の電路を遮断する遮断装置である。電路遮断装置100は、動作(起動)すると電路を遮断し続けるため、電路遮断装置100の起動後は、電源システム200からモータ3002への電力の供給が停止される。したがって、車両300の事故発生時等に、電路遮断装置100が動作することで、電源システム200を遮断することが可能となる。
【0046】
(1.2.2)構成
次に、電路遮断装置100の構成について、
図1~
図4を参照して説明する。
【0047】
電路遮断装置100は、上述のように、第1固定端子1、第2固定端子2、可動接触子3、保持部4、及びパイロアクチュエータ5を備えている。また、電路遮断装置100は、
図1に示すように、第1ヨーク(下ヨーク)61と、第2ヨーク(上ヨーク)62と、収容室70を有するハウジング7と、を備えている。
【0048】
本実施形態の可動接触子3は、導電性を有する金属材料からなる板状の部材であって、一方向に長く形成されている。可動接触子3は、長手方向の第1端に第1可動接点31を有し、第2端に第2可動接点32を有する。第1固定端子1と第2固定端子2とは、可動接触子3の長手方向に沿って並んで配置されている。第1固定端子1は、可動接触子3の第1可動接点31と対向する位置に第1固定接点11を有し、第2固定端子2は、可動接触子3の第2可動接点32と対向する位置に第2固定接点21を有する。
【0049】
以下では、説明の便宜上、第1固定接点11と第1可動接点31との対向方向(第2固定接点21と第2可動接点32との対向方向;
図1の上下方向)を上下方向と定義し、第1可動接点31から見て第1固定接点11側を上方とする。また、第1固定端子1と第2固定端子2とが並んでいる方向(
図1の左右方向)を左右方向と定義し、第1固定端子1から見て第2固定端子2側を右方とする。つまり、以下では、
図1の上下左右を上下左右として説明する。また、以下では、上下方向及び左右方向の両方に直交する方向(
図1の紙面に直交する方向)を、前後方向として説明する。ただし、これらの方向は電路遮断装置100の使用形態を限定する趣旨ではない。
【0050】
第1固定端子1と第2固定端子2とは、左右方向に並ぶように配置されている(
図1参照)。第1固定端子1及び第2固定端子2の各々は、導電性の金属材料からなる。第1固定端子1及び第2固定端子2は、第1固定接点11及び第2固定接点21に外部の電気回路(上記の電源システム200を構成する回路)を接続するための端子として機能する。本実施形態では、第1固定端子1及び第2固定端子2の各々は、一例として銅(Cu)で形成されている。ただし、これに限定されず、第1固定端子1及び第2固定端子2の各々は銅以外の導電性材料で形成されていてもよい。
【0051】
図2に示すように、第1固定端子1は、接続片110と、電極片120と、連結片130と、電路片140と、を一体に備えている。
【0052】
接続片110は、上下方向に厚みを有し前後方向に長い矩形板状である。本実施形態では、接続片110の下面が第1固定接点11として機能するが、これに限定されない。第1固定接点11は、例えば、接続片110とは別部材からなり、溶接等によって接続片110に固定されていてもよい。
【0053】
電極片120は、前後方向に厚みを有する板状である。電極片120は、正方形状であって中央に貫通孔を有している。電極片120は、上記外部の電気回路の第1端と接続される。つまり、電極片120は、外部の電気回路の第1端に接続される第1電極12として機能する。
【0054】
連結片130は、左右方向に厚みを有し上下方向に長い矩形板状である。連結片130の下側辺は、接続片110の左側辺と結合されている。
【0055】
電路片140は、前後方向に厚みを有する板状である。電路片140は、電極片120と連結片130との間を接続する。電路片140の左側辺は、電極片120の右側辺の上部と結合されている。電路片140の右側辺は、連結片130の左面の中央に結合されている。
【0056】
図2に示すように、第2固定端子2は、接続片210と、電極片220と、連結片230と、電路片240と、を一体に備えている。
【0057】
接続片210は、上下方向に厚みを有し前後方向に長い矩形板状である。本実施形態では、接続片210の下面が第2固定接点21として機能するが、これに限定されない。第2固定接点21は、例えば、接続片210とは別部材からなり、溶接等によって接続片210に固定されていてもよい。
【0058】
電極片220は、前後方向に厚みを有する板状である。電極片220は、正方形状であって中央に貫通孔を有している。電極片220は、上記外部の電気回路の第2端と接続される。つまり、電極片220は、外部の電気回路の第2端に接続される第2電極22として機能する。
【0059】
連結片230は、左右方向に厚みを有し上下方向に長い矩形板状である。連結片230の下側辺は、接続片210の右側辺と結合されている。
【0060】
電路片240は、前後方向に厚みを有する板状である。電路片240は、電極片220と連結片230との間を接続する。電路片240の右側辺は、電極片220の左側辺の上部と結合されている。電路片240の左側辺は、連結片230の右面の中央に結合されている。
【0061】
図1に示すように、第1固定端子1は、電極片120がハウジング7の左壁から外部に露出し、連結片130の下端部と接続片110とがハウジング7の内部空間(収容室70)内に収容された状態で、ハウジング7に固定されている。第2固定端子2は、電極片220がハウジング7の右壁から外部に露出し、連結片230の下端部と接続片210がハウジング7の内部空間(収容室70)内に収容された状態で、ハウジング7に固定されている。
【0062】
図1~
図3に示すように、可動接触子3は、上下方向に厚みを有し、かつ前後方向よりも左右方向に長い板状に形成されている。可動接触子3は、その長手方向(左右方向)の両端部を第1固定接点11及び第2固定接点21に対向(接続)させるように、接続片110及び接続片210の下方に配置されている(
図1参照)。可動接触子3のうち、第1固定接点11に対向する部位には第1可動接点31が設けられ、第2固定接点21に対向する部位には第2可動接点32が設けられている(
図1参照)。
【0063】
本実施形態では、第1可動接点31は、第1固定接点11に接触している。より詳細には、第1可動接点31は、第1固定接点11に面接触している。また、第2可動接点32は、第2固定接点21に接触している。より詳細には、第2可動接点32は、第2固定接点21に面接触している。
【0064】
本実施形態では、第1可動接点31は、可動接触子3とは別部材であって銀(Ag)からなり、溶接等によって可動接触子3に固定されている。同様に、第2可動接点32は、可動接触子3とは別部材であって銀(Ag)からなり、溶接等によって可動接触子3に固定されている。ただし、これに限られず、第1可動接点31及び第2可動接点32の各々は、可動接触子3の一部が打ち出されるなどして可動接触子3と一体に構成されていてもよい。
【0065】
図1に示すように、可動接触子3は、ハウジング7の内部空間(収容室70)に収容されている。可動接触子3は、保持部4によって、第1可動接点31が第1固定接点11に接続され、第2可動接点32が第2固定接点21に接続されるように、保持されている。
【0066】
第1固定端子1と第2固定端子2とは、可動接触子3を介して短絡する。すなわち、第1固定端子1の第1電極12は、第1固定接点11、第1可動接点31、可動接触子3、第2可動接点32及び第2固定接点21を介して、第2固定端子2の第2電極22と電気的に接続される(
図2参照)。そのため、電気回路の第1端に第1電極12が電気的に接続され、第2端に第2電極22が電気的に接続されると、電路遮断装置100は、第1電極12と第2電極22との間に電路を形成する。
【0067】
図1、
図3に示すように、ハウジング7は、内筒体71と、外筒体72と、蓋部材73と、を備えている。
【0068】
内筒体71は、電気絶縁性を有する材料、例えば樹脂材料から形成されている。内筒体71は、下面が閉じ上面が開口した有底円筒状に形成されている。内筒体71の下壁の上面(内筒体71の底面)には、円筒状の保持リブ711が設けられている。保持リブ711は、内筒体71と同心状に形成されている。
【0069】
外筒体72は、例えば金属材料から形成されている。外筒体72は、非磁性の金属材料で形成されていることが好ましい。非磁性の金属材料は、例えば、SUS304等のオーステナイト系ステンレスである。ただし、外筒体72の材料は非磁性でなくともよく、例えば、42アロイ等の鉄を主成分とする合金であってもよい。
【0070】
外筒体72は、内筒体71と同心状であって、下面が閉じ上面が開口した有底円筒状に形成されている。外筒体72は、内筒体71の周囲を覆うように設けられている。つまり、外筒体72は、ハウジング7の強度(収容室70の外壁の強度)を向上させる強度部材である。
【0071】
なお、内筒体71は、例えばインサート成形等によって外筒体72と一体に形成されてもよい。また、ハウジング7は、外筒体72を備えていなくてもよい。
【0072】
蓋部材73は、電気絶縁性を有する材料、例えば樹脂材料から形成されている。蓋部材73は、上面が閉じ下面に開口を有する有底円筒状に形成されている。蓋部材73は、例えばインサート成形によって、第1固定端子1及び第2固定端子2と一体に形成される。
【0073】
蓋部材73の上壁の厚みは、蓋部材73の側壁の厚みよりも厚い。蓋部材73の上壁の中央には、蓋部材73と同心状の貫通孔731が形成されている。蓋部材73の貫通孔731内にパイロアクチュエータ5が配置される。パイロアクチュエータ5の下端部は、蓋部材73の上壁の下面(内面)から突出している。貫通孔731は、パイロアクチュエータ5(のケース52)によって気密に塞がれている。
【0074】
蓋部材73の側壁の下面には、円環状の凹溝732が形成されている。内筒体71及び外筒体72の上縁が凹溝732内に挿入されることで、内筒体71及び外筒体72が蓋部材73に結合される。これにより、ハウジング7は、内筒体71及び蓋部材73で囲まれる気密な内部空間(収容室70)を有している。ハウジング7の内部空間(収容室70)内に、第1固定接点11、第2固定接点21、及び可動接触子3が収容されている。
【0075】
本実施形態では、ハウジング7の形状は内部空間(収容室70)を有する略円柱状であるが、これに限定されない。ハウジング7は、第1固定接点11、第2固定接点21、及び可動接触子3を収容する内部空間(収容室70)を有する形状であればよく、中空の多角柱状(例えば中空の直方体状)等の他の形状であってもよい。
【0076】
第1ヨーク61は、強磁性体であって、例えば、鉄等の金属材料で形成されている。第1ヨーク61は、可動接触子3の下面に固定されて、可動接触子3と一体となっている(
図1、
図3参照)。つまり、第1ヨーク61は、可動接触子3において、第1可動接点31及び第2可動接点32が位置する面とは反対の面に固定されている。
【0077】
第1ヨーク61は、可動接触子3に電流が流れたとき、この電流によって発生する磁界が第1ヨーク61内を通過するように、この磁界に作用する。つまり、第1ヨーク61がない場合には、可動接触子3を流れる電流を中心とする(同心形状の)磁界が発生するが、第1ヨーク61がある場合には、第1ヨーク61内を通過するように磁界が変化する。よって、可動接触子3を流れる電流に作用する磁界は、その中心が第1可動接点31及び第2可動接点32がある面(つまり上面)側に誘導され、この結果、相対的に、可動接触子3に上向きの力が生じる。このため、第1ヨーク61がある場合、第1ヨーク61がない場合に比べて、第1可動接点31及び第2可動接点32と第1固定接点11及び第2固定接点21との接続が維持されやすくなる。
【0078】
第1ヨーク61の下面には、円柱状に凹んだ嵌合凹部610が形成されている。
【0079】
第2ヨーク62は、強磁性体であって、例えば、鉄等の金属材料で形成されている。第2ヨーク62は、可動接触子3を挟んで第1ヨーク61と対向する位置に、可動接触子3と離れて位置固定されている。なお、第2ヨーク62は、パイロアクチュエータ5のピストン53の第2端532(下端部)に当接してもよい。本実施形態では、第2ヨーク62は、パイロアクチュエータ5のピストン53の第2端532(下端部)に固定されている。第2ヨーク62は、可動接触子3の中央部分と対向するように(
図2参照)、可動接触子3と隙間を開けて接触しないように(
図3参照)配置されている。第2ヨーク62は、可動接触子3と電気的に絶縁されている。
【0080】
第2ヨーク62は、前後方向の両端部に、上方に突出する一対の突出部621,622(
図3参照)を有している。言い換えれば、第2ヨーク62の上面における前後方向の両端部には、可動接触子3の前後方向の側面と対向する突出部621,622が形成されている。
図3に示すように、一対の突出部621,622のうちの前方の突出部621の先端面(下端面)は、第1ヨーク61の前端部に、後方の突出部622の先端面(下端面)は、第1ヨーク61の後端部にそれぞれ突き合わされる。したがって、可動接触子3を通って第1固定端子1と第2固定端子2との間に電流が流れた場合には、第1ヨーク61及び第2ヨーク62で形成される磁路を通る磁束が生じる。このとき、第1ヨーク61の前端部と第2ヨーク62の前端の突出部621とが互いに異極に磁化され、かつ、第1ヨーク61の後端部と第2ヨーク62の後端の突出部622とが互いに異極に磁化される。これにより、第1ヨーク61と第2ヨーク62との間に吸引力が作用する。第2ヨーク62は、ピストン53の第2端532(下端部)に固定されているので、第1ヨーク61は、この吸引力によって上方に引き寄せられる。第1ヨーク61が上方に引き寄せられることによって、可動接触子3には第1ヨーク61から上向きの力が作用する。
【0081】
可動接触子3に電流が流れていると、この電流に起因して、第1可動接点31及び第2可動接点32を第1固定接点11及び第2固定接点21から引き離す電磁反発力が、生じることがある。すなわち、可動接触子3に電流が流れると、ローレンツ(Lorentz)力により、可動接触子3を下方に移動させる向きの電磁反発力が可動接触子3に作用することがある。
【0082】
本実施形態では、上記のように、第1ヨーク61によって、第1ヨーク61を通るように磁界が変化して、第1ヨーク61がない場合と比較して上向きの力が生じる。また、第1ヨーク61と第2ヨーク62との間に、上記の吸引力が作用する。これらの結果、可動接触子3を流れる電流によって、可動接触子3を上方に押し上げる力、つまり第1可動接点31及び第2可動接点32を第1固定接点11及び第2固定接点21それぞれに押し付ける力が作用する。
【0083】
上記のように、第1ヨーク61及び第2ヨーク62は、第1可動接点31及び第2可動接点32と第1固定接点11及び第2固定接点21との接続を維持する力を可動接触子3を流れる電流によって発生させる、接続維持機構として機能する。
【0084】
第2ヨーク62の突出部621,622と第1ヨーク61の上面の前後方向の両端との間には、電気絶縁性を有する材料、例えば樹脂材料から形成されるスペーサ631,632が配置されている(
図3参照)。これにより、第2ヨーク62と第1ヨーク61との間の電気絶縁性が確保される。
【0085】
図1、
図3に示すように、本実施形態の保持部4は接圧ばね41を備えている。接圧ばね41は、コイルばねである。接圧ばね41は、内筒体71の底面(内面)と第1ヨーク61の下面との間に配置されている。接圧ばね41のコイル軸は、上下方向に沿っている。接圧ばね41の第1端411の内側に、内筒体71の保持リブ711が挿入されている。接圧ばね41の第2端412は、第1ヨーク61の嵌合凹部610内に挿入されている。接圧ばね41は、第1ヨーク61を介して、可動接触子3に上向きの弾性力を与えている。つまり、電路遮断装置100は、保持部4として、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11に接続される向き(閉位置に向かう向き)の弾性力を可動接触子3に与える弾性部(接圧ばね41)を備えている。
【0086】
接圧ばね41は、第1ヨーク61を介して可動接触子3を上方に押している。接圧ばね41は、第1可動接点31が第1固定接点11に接続され、かつ第2可動接点32第2固定接点21に接続されるように、可動接触子3を保持している。
【0087】
図4に、本実施形態のパイロアクチュエータ5の断面図を示す。本実施形態のパイロアクチュエータ5は、点火器51で発生したガスによってピストン53(ピン535)を押し出す、いわゆるピンプッシャの構造を有している。
【0088】
図4に示すように、パイロアクチュエータ5は、点火器51と、内部に加圧室520を有するケース52と、ピストン53と、を備えている。
【0089】
点火器51は、ボディ511と、メタルスリーブ(金属CAN)512と、燃焼部513と、一対のピン電極514と、発熱素子515と、を備えている。
【0090】
ボディ511は、例えば電気絶縁性を有する樹脂材料等から形成され、上面が開口し下面が閉じた有底円筒状に形成されている。ボディ511の内部空間5110は、例えばガラス等の電気絶縁性を有する封止材料によって、封止されている。
【0091】
メタルスリーブ512は、例えばステンレススチール等の金属製であって、上面が開口し下面が閉じた有底円筒状の円筒部と、円筒部の上端から側方に突出する鍔部と、を一体に有している。メタルスリーブ512(の円筒部)の下壁の中央には、例えば、下壁を貫通しない深さの十字溝等が形成されている。つまり、メタルスリーブ512の下壁の一部分は、メタルスリーブ512の他の部分よりも強度の低い(破断しやすい)低強度部となっている。メタルスリーブ512は、ボディ511の下面を覆うように、鍔部でボディ511と接着等によって結合されている。
【0092】
燃焼部513は、例えばニトロセルロース等の火薬を含む。燃焼部513は、ボディ511とメタルスリーブ512とで囲まれる空間内に配置されている。燃焼部513に含まれる火薬は、燃焼によって電気絶縁性のガスを発生させる材料であればよく、ニトロセルロースには限定されない。
【0093】
一対のピン電極514の各々は、第1端が燃焼部513内(ボディ511とメタルスリーブ512とで囲まれる空間内)に位置し、第2端がボディ511を通ってパイロアクチュエータ5の外部に露出している。一対のピン電極514の第2端は、制御回路207に接続されている。
【0094】
発熱素子515は、通電により熱を発生する素子であり、本実施形態ではニクロム線である。発熱素子515は、燃焼部513内(ボディ511とメタルスリーブ512とで囲まれる空間内)に配置されている。発熱素子515は、一対のピン電極514の第1端同士の間に接続されている。
【0095】
点火器51では、制御回路207からの電流によって一対のピン電極514間が通電されると、発熱素子515が発熱し、燃焼部513の温度が上昇する。燃焼部513(発熱素子515の周囲の部分)の温度が発火温度を超えると、火薬が爆発的に燃焼して瞬時に大量のガス(例えば一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス)が発生する。ガスの発生によって、燃焼部513内の圧力がメタルスリーブ512の低強度部の耐圧を超えると、低強度部が破断され、燃焼により発生したガスが、破断された部分を通って外部(本実施形態では、下方の加圧室520)に放出される。
【0096】
図4に示すように、ピストン53は、ベース533と、シリンダー534と、ピン(ロッド)535と、ばね536と、を備えている。
【0097】
ベース533は、例えば樹脂等の電気絶縁性を有する材料から形成されており、例えばポリカーボネート又はポリブチレンテレフタレート製である。ベース533は、それぞれ円柱状の第1柱部、第2柱部及び第3柱部を上から順に有しており、第1柱部、第2柱部及び第3柱部が軸を揃えて(同心状に)上下に繋がった形状を有している。第1柱部の外径は、第2柱部の外径よりも大きく、第2柱部の外径は、第3柱部の外径よりも大きい。ベース533の外側面において、第1柱部と第2柱部との境界には、第1柱部及び第2柱部と同心である円環状の保持溝5330が形成されている。
【0098】
本実施形態では、ベース533の第1柱部の底面(上面)が、ピストン53の第1端531である。
【0099】
シリンダー534は、例えば樹脂等の電気絶縁性を有する材料から形成されている。シリンダー534は、円筒状に形成されている。シリンダー534の内径は、ベース533の第3柱部の外径とほぼ等しく、第2柱部の外径よりも小さい。シリンダー534の外径は、ベース533の第2柱部の外径よりも小さい。シリンダー534の上面開口内に、ベース533の第3柱部が嵌め込まれて、シリンダー534とベース533とが結合されている。
【0100】
ピン535は、例えば樹脂等の電気絶縁性を有する材料から形成されており、例えばポリカーボネート又はポリブチレンテレフタレート製である。ピン535は、それぞれ円柱状の大径部及び小径部を上から順に有しており、大径部及び小径部が軸を揃えて(同心状に)上下に繋がった形状を有している。ピン535の大径部の軸方向(上下方向)の長さは、シリンダー534の長さと同程度である。具体的には、ピン535の長さは、シリンダー534に結合されたベース533の底面(下面)とシリンダー534の下端との間の距離よりも、僅かに大きい。
図1に示すように、ピン535の小径部は、第2ヨーク62の貫通孔内に固定されている。本実施形態では、ピン535の小径部を含む領域が、ピストン53の第2端532である。
【0101】
図4に示すように、ばね536は、コイルばねである。ばね536は、シリンダー534とピン535との間の相対位置を規定する。具体的には、ばね536は、シリンダー534の内側面とピン535の外側面との間に挟まれて、シリンダー534の内側でピン535を保持する。
【0102】
ケース52は、ホルダ521と、スリーブ522と、キャップ523と、第1保持ばね524と、第2保持ばね525と、を備えている。ケース52は、全体として略円筒状に形成されている。
【0103】
ケース52のホルダ521は、金属製であり、例えばアルミニウム又はアルミ合金製である。ホルダ521は、上面及び下面が開口した略円筒状に形成されており、内側面が多段の円筒面状に形成されている。ホルダ521は、点火器51及びピストン53を保持している。
【0104】
ケース52のホルダ521の上側部分の空間内に、点火器51が嵌め込まれている。ホルダ521の上側部分の内面は、点火器51の外面(ボディ511の外側面、メタルスリーブ512の鍔部の外面、メタルスリーブ512の円筒部の外側面)にほぼ密接する形状を有している。ホルダ521(の内部空間)の上側の開口は、点火器51によって閉じられている。
【0105】
ケース52のホルダ521の下側部分の空間内に、ピストン53のベース533が嵌め込まれている。ホルダ521の下側部分の内面は、ベース533の第1柱部の外側面にほぼ密接する形状を有している。ホルダ521(の内部空間)の下側の開口は、ピストン53(のベース533)によって閉じられている。
【0106】
ケース52に点火器51とピストン53とを取り付けることで、点火器51(のメタルスリーブ512)の下面、ピストン53(のベース533)の上面、ケース52(のホルダ521)の内面の間に、閉じた気密空間が形成される。点火器51で発生したガスは、メタルスリーブ512の下壁の破断された部分を通って、この気密空間に導入される。つまり、この気密空間が、点火器51で発生したガスの圧力を受ける加圧室520として機能する。
【0107】
ケース52のスリーブ522は、金属製であり、例えば鋼製である。スリーブ522は、ホルダ521の下方に、外側面がホルダ521の外側面と連続するように配置されている。スリーブ522は、上面及び下面が開口した略円筒状に形成されている。スリーブ522は、それぞれ円筒状の第1筒部、第2筒部及び第3筒部を上から順に有しており、第1筒部、第2筒部及び第3筒部が軸を揃えて(同心状に)上下に繋がった形状を有している。第1筒部の内側面は、下側に向かう程径が小さくなるテーパ状に形成されている。第2筒部の内側面は、一定の径を有する円筒面状に形成されている。第2筒部の内径は、ピストン53のベース533の第1柱部(最も径の大きな部分)の外径とほぼ等しい。第3筒部の内側面は、下側に向かう程径が小さくなるテーパ状に形成されている。第3筒部の内側面の径は、上端がベース533の第1柱部(ベース533で最も径の大きな部分)の外径とほぼ等しく、下側に向かう程径が小さくなっている。つまり、スリーブ522の第3筒部は、ピストン53のベース533が内部を通過できない形状である。
【0108】
ケース52のスリーブ522の側壁には、ケース52の内外を繋ぐ2つの流路50が形成されている。
図1に示すように、各流路50の第1端501は収容室70に繋がっており、第2端502はケース52の内部空間に繋がっている。各流路50は、径が一定の円柱状である。2つの流路50のうちの一方(
図1の左側の流路50)は、ケース52のスリーブ522の側壁において、第1固定端子1と対向する部分に形成されている。この流路50は、点火器51により発生したガスが、第1可動接点31と第1固定接点11との間の所定空間S1(第1可動接点31が移動するときの移動軌跡を含む空間、
図7参照)に吹き付けられるように、ガスを誘導する。すなわち、点火器51で発生したガスは、固定接点(第1固定接点)11と可動接触子3が開位置にある場合の可動接点(第1可動接点)31との間の、所定空間S1に導入される。2つの流路50のうちの他方(
図1の右側の流路50)は、ケース52のスリーブ522の側壁において、第2固定端子2と対向する部分に形成されている。この流路50は、点火器51により発生したガスが、第2可動接点32と第2固定接点21との間の所定空間S2(第2可動接点32が移動するときの移動軌跡を含む空間)に吹き付けられるように、ガスを誘導する。2つの流路50の各々は、ケース52の内側から外側に向かって、斜め下方に延びている。
【0109】
本実施形態では、各流路50は直線状である。ただし、流路50の形状は特に限定されず、例えば曲線状等の他の形状であってもよい。また、流路50の径は特に限定されない。また、流路50が延びる向きは特に限定されず、例えば側方(水平方向)に延びていてもよい。また、流路50が形成されている位置は特に限定されず、例えばケース52のスリーブ522の側壁の前側の部分、又は後側の部分に形成されていてもよい。ただし、各流路50は、点火器51で発生したガスを、所定空間S1又は所定空間S2に吹き付け可能な形状、径、向き、位置に形成されていることが、好ましい。
【0110】
ケース52のキャップ523は、金属製であり、例えば鋼製である。キャップ523は、スリーブ522の下方に、外側面がスリーブ522の外側面と連続するように配置されている。キャップ523は、上下両面が開口した円筒状に形成されている。キャップ523の下面には、内方に突出する突出部(鍔)が形成されている。突出部(鍔)の内径は、ピストン53のシリンダー534の外径とほぼ等しい。ピストン53は、点火器51で発生したガスの圧力を受けて一方方向に移動する動作ピンである。
【0111】
本実施形態では、ホルダ521、スリーブ522、キャップ523の外径は等しい。
【0112】
第1保持ばね524は、中空円盤状の被挟持部と、被挟持部の内側面から斜め上方に向かって突出する中空円錐台状の保持部と、を有する。第1保持ばね524の被挟持部は、ケース52のホルダ521とスリーブ522との間に挟み込まれており、これにより、第1保持ばね524はホルダ521とスリーブ522との間に挟持される。第1保持ばね524は、ホルダ521とスリーブ522との境界部分の隙間を封止する。保持部は、ピストン53のベース533の保持溝5330に接触し、ベース533に上向きの力を与えてベース533を保持する(ベース533の下向きの移動を阻止する)。
【0113】
第2保持ばね525は、中空円盤状の被挟持部と、被挟持部の内側面から斜め下方に向かって突出する中空円錐台状の保持部と、を有する。第2保持ばね525の被挟持部は、ケース52のスリーブ522とキャップ523との間に挟み込まれており、これにより、第2保持ばね524はスリーブ522とキャップ523との間に挟持される。第2保持ばね525は、スリーブ522とキャップ523との境界部分の隙間を封止する。保持部の突出先端は、ピストン53のシリンダー534の外側面から離れている。保持部の突出先端の径は、ピストン53のベース533の第2柱部の外径とほぼ等しい。
【0114】
図4に示すように、ケース52に点火器51及びピストン53を組み付けた状態では、点火器51のピン電極514がケース52の上面から突出している。また、ピン535の小径部が、ケース52の下面から下方に突出している。
【0115】
図1に示すように、パイロアクチュエータ5は、ケース52によって蓋部材73の貫通孔731を塞ぐように、ハウジング7に取り付けられる。この状態で、ピストン53の第2端(ピン535の下端)は、可動接触子3の中心(長手方向及び短手方向の中心)と対向している。
【0116】
(1.2.3)動作
次に、上述した構成の電路遮断装置100の動作について、
図1、
図6、
図7に基づいて説明する。
【0117】
電路遮断装置100は、第1電極12が電気回路(例えば、電源システム200を構成する回路)の第1端に接続され、第2電極22が電気回路の第2端に接続される。ここでは、電気回路の第1端の方が第2端よりも高電位とする。
【0118】
電気回路の通常時には、接圧ばね41のばね力等によって、第1可動接点31が第1固定接点11に接続され、第2可動接点32が第2固定接点21に接続されるように、可動接触子3が保持されている(
図1参照)。つまり、電気回路の通常時には、可動接触子3は、第1可動接点31が第1固定接点11に接触し第2可動接点32が第2固定接点21に接触する閉位置にある。このとき、第1電極12から第1固定接点11、第1可動接点31、可動接触子3、第2可動接点32、第2固定接点21をこの順に通って、第2電極22に向かって電流が流れる。
【0119】
このとき、第1可動接点31と第1固定接点11との接触及び第2可動接点32と第2固定接点21との接触は、接圧ばね41のばね力、上記の第1ヨーク61と第2ヨーク62との間の吸引力等によって、維持される。なお、電路遮断装置100に過電流等が流れても、その大きさが比較的小さい場合には、上記の第1ヨーク61と第2ヨーク62との間の吸引力等によって接点間の接触が維持される。
【0120】
電気回路を流れる電流が、規定値以上の異常電流になる(電気回路の異常時)と、例えば制御回路207がこの異常電流を検知する。異常電流を検知すると、制御回路207は、電路遮断装置100を動作させて(起動して)、電気回路を遮断する。
【0121】
具体的には、制御回路207は、一対のピン電極514間に電流を流して、発熱素子515に通電する。発熱素子515は、通電されると発熱し、燃焼部513の温度を上昇させる。燃焼部513の温度が火薬の発火温度を超えると、火薬が燃焼して大量のガスが発生し、ガスの圧力によってメタルスリーブ512の下壁の低強度部が破断され、破断された部分を通ってガスが加圧室520に放出される。燃焼部513は、爆発的に燃焼して大量のガスを発生させるため、加圧室520の圧力は短時間で急速に増加する。
【0122】
ピストン53は、初期状態では第1の位置(
図1参照)にある。ピストン53は、第1端531(ベース533の上面)で加圧室520内の圧力を受けて下方に押され、第2端532(ピン535)で可動接触子3を下方に押す。ピストン53は、可動接触子3における第1可動接点31と第2可動接点32との間の部位に力を与えて、可動接触子3を下方へ移動させる。ピストン53は、可動接触子3を押ながら、第2の位置(
図7参照)まで移動する。
【0123】
具体的には、ピストン53では、ベース533の底面(上面)が加圧室520内の圧力を受け、第1保持ばね524のばね力に抗して、ベース533がシリンダー534と一緒に下方への移動を開始する。このときのベース533(ピストン53)の初速は、加圧室520内での大きな圧力のため、非常に大きくなる。ピン535は、ばね536を介してシリンダー534から下向きの力を受け、シリンダー534の下方への移動の開始からわずかに遅れて、下方へ移動し始める。ピン535、第2ヨーク62、第1ヨーク61及び可動接触子3は一体となっており、ピン535の下方への移動によって、可動接触子3は下方に押されて下方へ移動する。ここで、ピン535には、ベース533が下方への移動を開始した後にばね536に蓄えられた弾性エネルギーによる力も作用するため、ピン535には非常に大きな下向きの力がかかり、その初速も大きくなる。
【0124】
可動接触子3を下方に押す力が、可動接触子3を上向きに支える力(接圧ばね41のばね力、第1ヨーク61と第2ヨーク62との間の吸引力等)を超えると、可動接触子3が、第1ヨーク61を介して接圧ばね41を圧縮しながら下方へ移動する。これにより、第1可動接点31が第1固定接点11から引き離され、第2可動接点32が第2固定接点21から引き離される(
図6参照)。この結果、第1固定端子1と第2固定端子2との間の電路が遮断されて、第1固定端子1と第2固定端子2との間の電路を流れる電流が遮断される。
【0125】
ピストン53、第1ヨーク61、可動接触子3、及び第2ヨーク62は、一体となって(以下、説明の便宜上、ピストン53、第1ヨーク61、可動接触子3、及び第2ヨーク62のまとまりを「移動体」と呼ぶ)、下方へ移動する。ピストン53が移動する方向とピストン53によって可動接触子3が移動する方向は、同一方向である。移動体は、典型的には接圧ばね41が最も圧縮される位置(第2の位置)まで移動する(
図7参照)。つまり、可動接触子3は、第1可動接点31が第1固定接点11と離れ第2可動接点32が第2固定接点21と離れた開位置へと移動する。このとき、ピストン53のベース533は、ケース52のスリーブ522の第3筒部の内面を押し広げながら(変形させながら)第3筒部内を移動することになる。なお、移動体の運動エネルギーは、接圧ばね41の弾性エネルギー、移動体が内筒体71の底面と衝突する際に発生する熱エネルギー等に変換される。
【0126】
移動体は、接圧ばね41が圧縮された位置では、圧縮された接圧ばね41から上向きの力を受ける。しかし、移動体の上方への移動は、ベース533とケース52のスリーブ522の第3筒部との間の摩擦力によって、阻止される。これによって、移動体は、
図7に示す位置(第2の位置)で停止する。つまり、第3筒部は、可動接触子3を移動させた後にピストン53を機械的に保持してピストン53が元の位置(第1の位置)に戻るのを防止する、戻り止め機構として機能している。
【0127】
また、ピストン53の下方への移動(第1の位置から第2の位置への移動)によって、ケース52内において、点火器51のガスが導入されて圧力が上昇する空間(加圧室520)が広がる。加圧室520が広がることによって、
図7に示すように、各流路50の第2端502が加圧室520と繋がる。これにより、加圧室520と収容室70とが流路50を介して繋がり、点火器51で発生したガスは、加圧室520及び流路50を通って収容室70内に導入される。本実施形態では、収容室70内に導入されたガスは、第1可動接点31と第1固定接点11との間の所定空間S1、又は第2可動接点32と第2固定接点21との間の所定空間S2へと向かう(
図7の矢印W1参照)。
【0128】
ここにおいて、可動接触子3に電流が流れている状態で第1可動接点31が第1固定接点11から引き離されると、第1可動接点31と第1固定接点11との間にアーク(
図8Aの点線A1参照)が発生する可能性がある。同様に、可動接触子3に電流が流れている状態で第2可動接点32が第2固定接点21から引き離されると、第2可動接点32と第2固定接点21との間にアークが発生する可能性がある。
【0129】
これに対し、本実施形態の電路遮断装置100では、パイロアクチュエータ5の点火器51で発生するガス(電気絶縁性のガス)を、収容室70内に導入することで、収容室70の圧力を増加させている。収容室70は、加圧室520とともに密閉された空間を形成する。収容室70は、固定接点(第1固定接点)11及び可動接点(第1可動接点)31を内部に収容しており、所定空間S1を含んでいる。収容室70は、内部でアークが発生する空間でもある。この収容室70の圧力が高められることで、接点間で発生するアークが冷却され、アーク放電のプラズマもしくは金属蒸気の絶縁性が高められるため、消弧が促進される。
【0130】
また、本実施形態の電路遮断装置100では、流路50から収容室70内に導入されたガスは、第1可動接点31と第1固定接点11との間の所定空間S1、又は第2可動接点32と第2固定接点21との間の所定空間S2に吹き付けられる。これによって、接点間で発生するアークが冷却され、消弧が促進される。
【0131】
より詳細に説明すると、固定接点(第1固定接点)11と可動接触子3が閉位置から開位置に変位すると、閉位置から開位置に変位する初期段階では、固定接点(第1固定接点)11と可動接触子3との間にアーク放電の陽光柱が生成される(
図8Aの点線A1参照)。閉位置から開位置に変位が進むにつれて収容室70内にガスが導入されて、ガスが陽光柱に当り、ガスの圧力により陽光柱が変形されてアークが伸長する(
図8Bの点線A2参照)。さらに、ガスによりアークが伸張されて、内筒体71の壁面にアークが押し付けられる場合もある(
図8Cの点線A3参照)。このように、ガスがアークを伸長することにより、アークが遮断される。すなわち、点火器51で発生したガスが固定接点(第1固定接点)11と可動接触子3とのギャップに導入されることにより、アークの消弧を促進し、遮断性能を高めることができる。なお、第2可動接点32と第2固定接点21との間に発生するアークも、ガスが吹き付けられることによって伸張されるので、消弧が促進される。
【0132】
このように、本実施形態の電路遮断装置100では、所定空間S1,S2に、点火器51で発生したガスが導入されることで、アークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【0133】
なお、ハウジング7の内壁(内筒体71)は、伸長されたアークにより加熱されることによって消弧ガスを放出する樹脂材料(消弧ガス発生部材)によって形成されていてもよい。消弧ガスは、例えばCO2、N2、H2O等のガスである。消弧ガスによりアークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【0134】
(1.3)変形例
実施形態1の一変形例の電路遮断装置100について、
図9、
図10を参照して説明する。以下では、上記実施形態1の電路遮断装置100を、実施形態1の基本例の電路遮断装置100ともいう。
【0135】
図9、
図10、一変形例の電路遮断装置100の動作前及び動作後の断面図を示す。なお、便宜上、
図9、
図10では、第1ヨーク61及び第2ヨーク62の図示を省略している。また、
図9、
図10では、ケース52の図示を簡略化している。ただし、ケース52は、実施形態1の電路遮断装置100と同様に、戻り止め機構としての第2筒部(下側に向かう程径が小さくなる円錐台状の内面を有する部分)及び第3筒部(ピストン53のベース533よりも径の小さな筒状の内面を有する部分)を備えていてもよい。また、一変形例の電路遮断装置100では、ピストン53は、1つの成形品である。また、一変形例の電路遮断装置100では、第1固定端子1及び第2固定端子2の形状が実施形態1の基本例の電路遮断装置100とは異なっているが、同じであってもよい。
【0136】
一変形例の電路遮断装置100では、流路50は、ケース52の内部から外部(収容室70側)に向かって徐々に径が狭くなるテーパ筒状である。つまり、流路50の第1端501(収容室70側の端)の径は、第2端502の径よりも小さい。これにより、第2端502から第1端501に向かうガスの流速が流路50内で増加し、所定空間S1,S2でのガスの流速が増加する。したがって、接点間に発生するアークをより効果的に冷却し、更なる消弧の促進を図ることが可能となる。
【0137】
また、一変形例の電路遮断装置100では、一方(
図9、
図10の左側)の流路50の延長線上に、第1固定接点11と可動接触子3が開位置にある場合の第1可動接点31との間の所定空間S1が位置する。言い換えれば、一方の流路50の延長線は、移動された可動接触子3の第1可動接点31と第1固定接点11とを結ぶ線分(「第1線分」と呼ぶ)と、交差する。特に、一方の流路50の延長線は、第1固定接点11の近傍で、第1線分と交差する。また、他方(
図9、
図10の右側)の流路50の延長線上に、第2固定接点21と可動接触子3が開位置にある場合の第2可動接点32との間の所定空間S2が位置する。言い換えれば、他方の流路50の延長線は、移動された可動接触子3の第2可動接点32と第2固定接点21とを結ぶ線分(「第2線分」と呼ぶ)と交差する。特に、他方の流路50の延長線は、第2固定接点21の近傍で、第2線分と交差する。このような構成により、一変形例の電路遮断装置100では、各流路50から収容室70内に導入されたガスは、接点間の空間である所定空間S1,S2に向かい、接点間で発生するアークに直接吹き付けられる(
図10の矢印W2参照)。これにより、アークをより効果的に冷却し、更なる消弧の促進を図ることが可能となる。また、アークをより効果的に伸長し、更なる消弧の促進を図ることができる。
【0138】
なお、実施形態1の基本例及び一変形例の電路遮断装置100において、流路50は、ケース52の側壁に形成された柱(筒)状に限られない。流路50は、例えば、ケース52側壁の下端から上方に延びる切り欠きであってもよい。
【0139】
実施形態1の基本例及び一変形例の電路遮断装置100において、パイロアクチュエータ5は、ピストン53を介して可動接触子3を移動させる構成に限定されない。例えば、実施形態1の電路遮断装置100は、点火器51で発生したガスの圧力を可動接触子3が直接受ける(可動接触子3が加圧室520の外壁の一部を構成する)構成であって、可動接触子3がガスの圧力によって直接移動される構成等であってもよい。この場合、ケース52に流路50が設けられていなくてもよい。
【0140】
(2)実施形態2
実施形態2の電路遮断装置100について、
図11、
図12を用いて説明する。
【0141】
実施形態2の電路遮断装置100は、主に、可動接触子3を閉位置から開位置へと移動させる移動機構がトリップ装置8を備えている点で、実施形態1と相違する。実施形態2の電路遮断装置100において、実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0142】
(2.1)構成
本実施形態の電路遮断装置100は、実施形態1と同様に、第1固定端子1、第2固定端子2、可動接触子3、保持部4(弾性部である接圧ばね42)、点火器51、ケース52、ハウジング7を備えている。ただし、本実施形態の電路遮断装置100では、移動機構が、加圧室520及びピストン53の代わりにトリップ装置8を備えている。トリップ装置8は、可動接点(第1可動接点)31及び固定接点(第1固定接点)11を含む電路に流れる異常電流に応じて、可動接触子3を閉位置から開位置に移動させる。
【0143】
本実施形態のトリップ装置8は、
図11に示すように、励磁コイル81と、可動子82と、固定子83と、筒体84と、を備えている。本実施形態のトリップ装置8は、励磁コイル81に異常電流が流れた際に励磁コイル81に生じる磁束によって発生する電磁力によって、可動接触子3を開位置に移動させる。
【0144】
励磁コイル81は、第1端が第1固定端子1と接続されている。励磁コイル81の第2端は、第2端が第2固定端子2と接続されている電気回路(電源システム200を構成する回路)の第1端と、接続される。つまり、励磁コイル81は、電気回路の第1端と第2端との間で、第1固定端子1-可動接触子3-第2固定端子2の直列回路と、直列に接続されている。したがって、励磁コイル81には、可動接触子3を流れる電流が流れ、励磁コイル81は、この電流によって励磁される。
図11に示すように、励磁コイル81は、筒体84の下部分、及び固定子83の周りに巻かれている。
【0145】
筒体84は、非磁性の金属材料から形成されている。筒体84は、筒状に形成された筒状部と、筒状部の一方(下方)の開口を塞ぐ底壁(下壁)とを有している。より詳細には、筒体84は、円筒状の筒状部と円形状の底壁とで、全体として上面が開口した有底円筒状に形成されている。ハウジング7の底壁の中央には貫通孔が形成されており、筒体84は、ハウジング7の底壁の貫通孔を覆うように、上端部(開口周縁)がハウジング7の底壁に固定されている。
【0146】
可動子82は、円柱状に形成された可動鉄芯である。可動子82は、磁性材料から形成されている。可動子82は、筒体84内に収容されている。可動子82は、筒体84内に、上下方向に移動可能に配置されている。筒体84内には、筒体84の底壁(の上面)と可動子82(の下面)との間に接圧ばね42(保持部4)が配置されている。筒体84の底壁の上面には、接圧ばね42の下端に挿入される保持リブ841が形成されている。可動子82は、接圧ばね42によって上方に押されている。可動子82は、接圧ばね42に上方へ押されて最も上方に位置する第1の位置(
図11参照)と、接圧ばね42を圧縮して最も下方に位置する第2の位置(
図12参照)との間で、移動可能である。ただし、可動子82は、常時は、接圧ばね42のばね力によって、第1の位置に保持されている。可動子82は、ハウジング7の底壁の貫通孔を貫通するシャフト831によって、可動接触子3と結合されている。
【0147】
シャフト831は、非磁性の金属材料によって、上下方向に長い丸棒状に形成されている。シャフト831の上端部は、可動接触子3の中央部に結合されている。シャフト831は、ハウジング7の底壁に形成された貫通孔を通って、その下端部が可動子82に結合されている。したがって、可動子82が上下方向に移動すると、その動きがシャフト831を介して可動接触子3に伝わり、可動子82の動きに合わせて可動接触子3が上下方向に移動する。
【0148】
図11に示すように、可動子82が第1の位置にある場合、可動接触子3の第1可動接点31及び第2可動接点32は、第1固定接点11及び第2固定接点21にそれぞれ接触する。つまり、可動子82が第1の位置にある場合、可動接触子3は閉位置にある。
図12に示すように、可動子82が第2の位置にある場合、可動接触子3の第1可動接点31及び第2可動接点32は、第1固定接点11及び第2固定接点21からそれぞれ離れている。つまり、可動子82が第2の位置にある場合、可動接触子3は開位置にある(
図12参照)。
【0149】
固定子83は、円柱状に形成された固定鉄芯である。固定子83は、磁性材料から形成されている。固定子83は、筒体84の底壁よりも下側に固定されている。
【0150】
トリップ装置8では、励磁コイル81と可動子82と固定子83とが、全て上下方向に沿った同一直線上に中心軸を有している。
【0151】
トリップ装置8は、可動接触子3を通して流れる規定値以上の異常電流に応じて励磁コイル81で生じる磁束によって、可動子82を第1の位置(
図11に示す位置)から第2の位置(
図12に示す位置)へ移動させる。このとき、可動接触子3は、シャフト831によって引かれて、閉位置から開位置へ移動する。
【0152】
すなわち、トリップ装置8は、可動接触子3を流れる異常電流に応じて励磁コイル81で生じる磁束によって、可動子82を第2の位置へ移動させ、これにより、可動接点(第1可動接点)31を強制的に固定接点(第1固定接点)11から引き離す。本実施形態では、このとき、第2可動接点32も第2固定接点21から引き離される。以下では、トリップ装置8が強制的に可動接点(第1可動接点)31を固定接点(第1固定接点)11から引き離す動作を「トリップ」という。
【0153】
ここで、トリップ装置8は、単に励磁コイル81に電流が流れるだけでトリップするのではなく、固定子83から可動子82に作用する吸引力が、接圧ばね42のばね力を超えたときに初めてトリップする。固定子83から可動子82に作用する吸引力は、励磁コイル81を流れる電流(負荷電流)の大きさに応じて変化する。トリップ装置8は、励磁コイル81を流れる電流が、規定値以上の異常電流となったときに、励磁コイル81で生じる磁気吸引力が接圧ばね42のばね力を超えるように構成されている。
【0154】
固定子83と筒体84の底壁との間には、磁石9が配置されている。磁石9は永久磁石であり、上下方向における両面に、互いに異極性の第1磁極面及び第2磁極面を有している。磁石9の第1磁極面(上面)は、筒体84の底壁に接触している。磁石9の第2磁極面(下面)は、固定子83に接触している。つまり、磁石9は、固定子83と筒体84の底壁との間に挟まれている。例えば、第1磁極面はN極面であり第2次極面はS極面であるが、反対であってもよい。
【0155】
磁石9は、トリップ装置8が可動子82を第2の位置へ移動させた場合に、磁石9で生じる磁束によって可動子82を第2の位置に保持する。すなわち、本実施形態の電路遮断装置100は、トリップ装置8が可動子82を第2の位置へ移動させた後、磁石9で生じる磁気吸引力により、可動子82を第2の位置で保持する。言い換えれば、一旦、トリップ装置8がトリップして可動子82が第2の位置へ移動すると、可動子82は磁石9によって第2の位置に保持(ラッチ)される。
【0156】
なお、本実施形態では、磁石9は、トリップ装置8が可動子82を第2の位置へ移動させた場合に、励磁コイル81で生じる磁束と磁石9で生じる磁束とが可動子82内において同じ向きとなるように、配置されている。つまり、可動子82が第2の位置にある場合、励磁コイル81で生じる磁束及び磁石9で生じる磁束は、可動子82を通る。そして、本実施形態では、磁石9は、可動子82内において励磁コイル81が生じるのと同じ向きの磁束を生じるように、磁極性(つまり、磁極面の向き)が設定されている。
【0157】
本実施形態の電路遮断装置100は、実施形態1の基本例のパイロアクチュエータ5における点火器51とケース52とを備えているが、ピストン53を備えていない。また、本実施形態の電路遮断装置100では、ケース52の形状が実施形態1の基本例とは異なっている。なお、本実施形態の点火器51は実施形態1の基本例と同様なので、説明は省略する。
【0158】
ケース52は、金属製であり、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金製である。ケース52は、上面が開口し下面が閉じた有底円筒状に形成されている。
【0159】
ケース52の上側部分の空間内に、点火器51が嵌め込まれている。ケース52(の内部空間)の上側の開口は、点火器51によって閉じられている。ケース52は、蓋部材73の貫通孔731を塞ぐように、ハウジング7に取り付けられている。
【0160】
ケース52の下面の右側及び左側の部分には、ケース52の内外を繋ぐ2つの流路50が形成されている。各流路50の第1端501は収容室70に繋がっており、第2端502はケース52の内部空間に繋がっている。本実施形態では、ケース52内には気密空間が設けられていない。本実施形態では、点火器51で発生するガスは、(ケース52の内部空間及び流路50を通って)直接収容室70内に導入される。
【0161】
各流路50は、径が一定の円柱状である。2つの流路50のうちの一方(
図11、
図12の左側の流路50)は、点火器51により発生したガスが、第1可動接点31と第1固定接点11との間の所定空間S1(
図12参照)に吹き付けられるように、ガスを誘導する。2つの流路50のうちの他方(
図11、
図12の右側の流路50)は、点火器51により発生したガスが、第2可動接点32と第2固定接点21との間の所定空間S2(
図12参照)に吹き付けられるように、ガスを誘導する。2つの流路50の各々は、ケース52の内部から外側に向かって、斜め下方に延びている。
【0162】
(2.2)動作
次に、上述した構成の電路遮断装置100の動作について、
図11、
図12を参照して説明する。
【0163】
本実施形態の電路遮断装置100では、励磁コイル81の第2端が電気回路(例えば、電源システム200を構成する回路)の第1端に接続され、第2電極22が電気回路の第2端に接続される。
【0164】
電気回路の通常時には、接圧ばね42のばね力の方が、固定子83から可動子82に作用する吸引力よりも大きい。このため、主にこのばね力によって、第1可動接点31が第1固定接点11に接続され、第2可動接点32が第2固定接点21に接続されるように、可動接触子3が保持されている(
図11参照)。つまり、電気回路の通常時には、可動子82は、固定子83から最も離れた第1の位置にある。また、電気回路の通常時には、可動接触子3は、第1可動接点31が第1固定接点11に接触し第2可動接点32が第2固定接点21に接触する閉位置にある。このとき、電気回路の第1端から、励磁コイル81、第1固定端子1、可動接触子3、第2固定端子2をこの順に通って、電気回路の第2端に向かって電流が流れる。
【0165】
一方、電気回路(励磁コイル81)を流れる電流が、規定値以上の異常電流になる(電気回路の異常時)と、固定子83から可動子82に作用する吸引力が、接圧ばね42のばね力を超える。これにより、トリップ装置8がトリップし、可動子82が第2の位置へ移動して、可動接触子3が開位置へと移動する。この結果、第1固定端子1と第2固定端子2との間の電路が遮断されて、第1固定端子1と第2固定端子2との間の電路を流れる電流が遮断される。
【0166】
また、電気回路(励磁コイル81)を流れる電流が、規定値以上の異常電流になると、例えば制御回路207が、電流センサ206を通じてこの異常電流を検知する。異常電流を検知すると、制御回路207は、点火器51の一対のピン電極54間に電流を流して、発熱素子515に通電する。これにより、燃焼部513の火薬が燃焼して大量のガスが発生し、ガスの圧力によってメタルスリーブ512の下壁の低強度部が破断され、破断された部分を通ってガスがケース52の内部空間に放出される。
【0167】
点火器51で発生したガスは、ケース52の流路50を通って収容室70内に導入される。収容室70内に導入されたガスは、第1可動接点31と第1固定接点11との間の所定空間S1、又は第2可動接点32と第2固定接点21との間の所定空間S2に向かう(
図12の矢印W3参照)。
【0168】
本実施形態の電路遮断装置100でも、点火器51で発生するガス(電気絶縁性のガス)を、収容室70内に導入することで、収容室70の圧力を増加させている。これによって、接点間で発生するアークが冷却され、アーク放電のプラズマもしくは金属蒸気の絶縁性が高められるため、消弧が促進される。
【0169】
また、流路50から収容室70内に導入されたガスは、第1可動接点31と第1固定接点11との間の所定空間S1、又は第2可動接点32と第2固定接点21との間の所定空間S2に吹き付けられる。これによって、接点間で発生するアークが冷却され、消弧が促進される。
【0170】
このように、本実施形態の電路遮断装置100でも、所定空間S1,S2に、点火器51で発生したガスが導入されることで、アークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【0171】
なお、トリップ装置8がトリップするタイミングと、点火器51からガスが放出され始めるタイミングとは、どちらが先でもよい。トリップ装置8がトリップするよりも前に、点火器51からガスが放出され始めてもよいし、トリップ装置8がトリップした後に、点火器51からガスが放出され始めてもよいし、同時であってもよい。トリップ装置8がトリップした後に、点火器51からガスが放出され始めることが望ましい。
【0172】
(2.3)変形例
実施形態2の変形例1の電路遮断装置100について、
図13~
図15を参照して説明する。
図13は、変形例1の電路遮断装置100の動作前の要部の断面図である。
図14は、変形例1の電路遮断装置100の動作前の要部の、
図13と直交する方向(右側)から見た側面図である。
図15は、
図14と同じ方向から見た、変形例1の電路遮断装置100の動作後の要部の側面図である。以下では、上記実施形態2の電路遮断装置100を、実施形態2の基本例の電路遮断装置100ともいう。
【0173】
変形例1の電路遮断装置100は、
図13、
図14に示すように、第1電極12と第2電極22との間を繋ぐ電路に、可動接点31と固定接点11との組を一つのみ備えている。具体的には、第1固定端子1は導電性を有する金属材料からなる板状の部材である。第1固定端子1は、一端(
図14の左端)に第1固定接点11を有し、他端(
図14の右端)が第1電極12として機能する。第2固定端子2は、導電性を有する金属材料からなり第1固定端子1よりも短尺の板状の部材であり、第1固定端子1と上下方向に対向するように配置される。第2固定端子2は、一端(
図14の右端)が第2電極22として機能する。可動接触子3は、一端(
図14の左端)に、固定接点11と接続される可動接点31を有している。また、可動接触子3と第2固定端子2とは、可動接点と固定接点との組からなる接点組ではなく、銅線を編んでなる編組線87によって接続されている。
【0174】
また、点火器51を収容するケース52は、その底壁の中央に流路50を一つのみ備えている。そして、流路50の第1端501が、可動接点31と固定接点11との間の所定空間S1を向くように、ケース52が配置されている(
図15参照)。これにより、所定空間S1と直交する方向から、ガスが導入される。
【0175】
なお、図示は省略するが、実施形態2の基本例と同様、変形例1の電路遮断装置100も、第1固定接点11、可動接触子3、及びシャフト831の上端部を内部に収容するハウジング7を備えている。点火器51及びケース52、編組線87、第2固定端子2の一部(左端部分)も、ハウジング7の内部(収容室70内)に配置されている。
【0176】
本変形例でも、電気回路に異常電流が流れると、励磁コイル81が励磁されて可動子82が第1の位置(
図14に示す位置)から第2の位置(
図15に示す位置)に移動する。これに伴い、可動接触子3が開位置(
図14に示す位置)から開位置(
図15に示す位置)に移動する。また、制御回路207が点火器51に電流を流すことで点火器51からガスが発生し、このガスが可動接点31と固定接点11との間の所定空間S1に吹き付けられる。これによって、接点間で発生するアークが冷却されるので、アークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【0177】
なお、本変形例の電路遮断装置100も、実施形態2の基本例と同様に、可動子82を第2の位置で保持する磁石9を備えていてもよい。
【0178】
実施形態2の変形例2の電路遮断装置100について、
図16、
図17を参照して説明する。
【0179】
本変形例の電路遮断装置100は、保持部4として、接圧ばね41の代わりに永久磁石43を備えている点で、実施形態2の基本例の電路遮断装置100と相違する。その他の点については、実施形態2の基本例の電路遮断装置100と同様なので、説明は省略する。
【0180】
本変形例の電路遮断装置100では、
図17に示すように、可動接触子3は、本体部33と一対の突出部34とを有し、上面視十字形状に形成されている。本体部33は、左右方向に長く、長手方向の両端に第1可動接点31及び第2可動接点32を有している。一対の突出部34は、本体部33の側面から前後方向に突出している。可動接触子3の突出部34の各々には、永久磁石43が設けられている。
図16に示すように、可動接触子3の中心は、ケース52の底面と対向している。なお、ハウジング7の蓋部材73の下面において、ケース52の前後の位置(永久磁石43と対向する位置)には、一対の磁性部材(図示せず)、詳しくは鉄片が設けられている。
【0181】
変形例2では、鉄片が永久磁石43に吸引され、鉄片と永久磁石43とが離れている状態で、第1可動接点31及び第2可動接点32が第1固定接点11及び第2固定接点21と接続される(
図16参照)。
【0182】
本変形例でも、トリップ装置8がトリップすることで、鉄片と永久磁石43との間の磁気吸引力に抗して可動子82が第1の位置(
図16に示す位置)から第2の位置へ移動し、可動接触子3が閉位置(
図16に示す位置)から開位置へ移動する。これにより、第1固定端子1と第2固定端子2との間の電路が遮断される。また、このとき、制御回路207によって点火器51からガスが発生して収容室70内に導入される。これによって、接点間で発生するアークが冷却されるので、アークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【0183】
なお、本変形例において、可動接触子3に磁性部材を設け、ハウジング7の蓋部材73に永久磁石43を設けてもよい。また、永久磁石43と磁性部材との間にスペーサが設けられてもよい。永久磁石43が磁性部材と直接接触した状態で、可動接触子3が閉状態に維持されてもよい。また、保持部4は、接圧ばね41と永久磁石43の両方を備えていてもよい。
【0184】
実施形態2の変形例3の電路遮断装置100について、
図18を参照して説明する。
【0185】
本変形例の電路遮断装置100は、主に、トリップ装置8として、励磁コイル81、可動子82、固定子83、筒体84の代わりにバイメタル板88を備えている点で、実施形態2の基本例の電路遮断装置100と相違する。その他の点については、実施形態2の基本例の電路遮断装置100と同様なので、説明は省略する。
【0186】
本変形例の電路遮断装置100では、
図18に示すように、可動接触子3は、実施形態1の基本例と同様に接圧ばね41によって、閉位置に保持されている。また、第1固定端子1及び第2固定端子2の下面には、金属板89を介してバイメタル板88が取り付けられている。バイメタル板88の下面は、可動接触子3の上面に接触している。
【0187】
本変形例では、可動接触子3に異常電流が流れると、バイメタル板88が下方に湾曲する(
図18の点線参照)。これにより、可動接触子3が、閉位置から開位置に移動する。
【0188】
すなわち、本変形例の電路遮断装置100は、可動接点(第1可動接点)31及び固定接点(第1固定接点)11を含む電路に異常電流が流れた際に、バイメタル板88が湾曲することによって、可動接触子3を開位置に移動させている。
【0189】
これにより、第1固定端子1と第2固定端子2との間の電路を遮断することが可能となる。
【0190】
なお、本変形例において、バイメタル板88によって可動接触子3が開位置に移動された後に、可動接触子3を開位置に保持する保持機構が設けられていてもよい。保持機構は、例えば、可動接触子3とハウジング7の内壁とに設けられた、永久磁石と磁性部材との組み合わせであってもよい。また、トリップ装置8は、励磁コイル81、可動子82、固定子83、筒体84に加えて、バイメタル板88を備えていてもよい。
【0191】
実施形態2の基本例、変形例1~3の電路遮断装置100も、実施形態1と同様にヨーク61、62を備えていてもよい。
【0192】
(3)その他の変形例
電路遮断装置100の用途は、車両300用のヒューズに限定されない。電路遮断装置100は、例えば短絡電流等の大きな電流が流れる可能性がある任意の電気回路を遮断する用途に用いられてよい。また、電路遮断装置100は、電磁石装置を備えるリレー(電磁継電器)であってもよい。
【0193】
ハウジング7の収容室70内に、可動接触子3の移動方向を案内するガイドが形成されていてもよい。ガイドは、可動接触子3の移動方向に沿って可動接触子3の側面に接触するように、収容室70の内壁に上下方向に長く形成される。これにより、可動接触子3がパイロアクチュエータ5によって移動されるときに、可動接触子3が傾きにくくなる。ガイドは、収容室70の底面から上方に延びて可動接触子3を貫通するロッドであってもよい。
【0194】
実施形態1、実施形態2の基本例及び各変形例の構成は、適宜組み合わせ可能である。
【0195】
実施形態1と実施形態2とを組み合わせた変形例の一具体例(具体例1)の電路遮断装置100について、
図19~
図21を参照して説明する。本具体例の電路遮断装置100は、いわゆるノーマリオンタイプ(b接点)の装置として機能する。電路遮断装置100は、励磁コイル81と、点火器51と、移動機構と、を備えている。
【0196】
図19に示すように、ハウジング7の内部には、固定端子1(第1固定端子)1の固定接点(第1固定接点)11と、第2固定端子2の第2固定接点21と、可動接点(第1可動接点)31及び第2可動接点32を有する可動接触子3とが収容されている。点火器51は、可動接触子3の上面と対向するように配置されている。ハウジング7の底壁には貫通孔が形成され、底壁の貫通孔を覆うように筒体84が固定されている。また、上端部が可動接触子3に結合されたシャフト831が、下端部がハウジング7の底壁の貫通孔を通って筒体84内に露出するように配置されている。筒体84の内部には、可動子82及び接圧ばね42が配置されている。可動子82は、シャフト831の下端部に結合されている。筒体84の底壁よりも下側には、固定子83が固定されている。可動子82及び固定子83の周囲を囲うように、励磁コイル81が配置されている。
【0197】
可動接触子3は、接圧ばね42からのばね力等によって、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11に接触する閉位置に保持されている(
図19参照)。
【0198】
励磁コイル81は、制御回路200の制御下で、その通電が制御される。励磁コイル81が通電されると、励磁コイル81で生じる磁束によって、可動子82は下方に移動する。可動子82が下方に移動すると、シャフト831及び可動接触子3も可動子82と一体に下方に移動して、可動接触子3が閉位置(
図19参照)から第1開位置(
図20参照)へと移動する。一方、励磁コイル81への通電が停止されると、接圧ばね42のばね力等によって可動子82が上方に移動し、可動接触子3は閉位置(
図19参照)へと移動する。
【0199】
移動機構は、点火器51と可動接触子3とをつなぐ空間(点火器51と可動接触子3との間の空間)を含む。すなわち本具体例の電路遮断装置100は、点火器51で発生したガスの圧力を可動接触子3が直接受ける(可動接触子3が加圧室520の外壁の一部を構成する)構成であって、可動接触子3は、点火器51からのガスの圧力を直接受けて移動する。移動機構は、可動接触子3を、閉位置(
図19参照)又は第1開位置(
図20参照)から、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11から離れた第2開位置(
図21参照)へと移動させる。ここでの第2開位置は、可動接触子3が第1開位置にある場合よりも可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11から離れた、可動接触子3の位置である。つまり、本具体例では、閉位置と第2開位置との間の距離は、閉位置と第1開位置との間の距離よりも長い。可動接触子3が第2開位置へと下方に移動すると、可動子82も下方に移動する。可動子82は、磁石9で生じる磁束によって、
図21に示す位置で保持(ラッチ)される。
【0200】
実施形態1と実施形態2とを組み合わせた変形例の別の具体例(具体例2)の電路遮断装置100について、
図22、
図23を参照して説明する。本具体例の電路遮断装置100は、いわゆるノーマリオフタイプ(a接点)の装置として機能する。電路遮断装置100は、上記具体例1の電路遮断装置100と同様に、励磁コイル81と、点火器51と、移動機構と、を備えている。以下、上記の具体例1と異なる点を中心に、説明する。
【0201】
図22に示す電路遮断装置100では、固定子83が筒体84の内部においてハウジング7の底壁に固定されている。固定子83は、上下に延びる貫通孔を中央に有している。シャフト831の下端部は、ハウジング7の底壁の貫通孔及び固定子83の貫通孔を通って下方に延びて、可動子82に固定されている。可動子82と固定子83との間には、復帰ばね85が配置されている。可動子82及び固定子83の周囲を囲うように、励磁コイル81が配置されている。
【0202】
可動接触子3は、可動子82が復帰ばね85から受けるばね力等によって、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11から離れた第1開位置に保持されている(
図22参照)。
【0203】
励磁コイル81が通電されると、励磁コイル81で生じる磁束によって、可動子82は上方に移動する。可動子82が上方に移動すると、シャフト831及び可動接触子3も可動子82と一体に上方に移動して、可動接触子3が第1開位置(
図22参照)から閉位置(
図23参照)へと移動する。一方、励磁コイル81への通電が停止されると、復帰ばね85のばね力等によって可動子82が下方に移動し、可動接触子3は第1開位置(
図22参照)へと移動する。すなわち、本具体例の電路遮断装置100は、いわゆるa接点の接点装置として機能する。
【0204】
移動機構は、点火器51と可動接触子3とをつなぐ空間(点火器51と可動接触子3との間の空間)である。すなわち、可動接触子3は、点火器51からのガスの圧力を直接受けて移動する。移動機構は可動接触子3を、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11から離れた第2開位置(
図22参照)へと移動させる。ここでの第2開位置は、第1開位置と同じである。つまり、本具体例では、閉位置と第2開位置との間の距離は、閉位置と第1開位置との間の距離と等しい。可動接触子3が第2開位置へと下方に移動すると、可動子82も下方に移動する。
【0205】
実施形態1と実施形態2とを組み合わせた変形例の更に別の具体例(具体例3)の電路遮断装置100について、
図24、
図25を参照して説明する。本具体例の電路遮断装置100は、実施形態2の基本例の電路遮断装置100(
図11参照)において、パイロアクチュエータ5を、実施形態1の一変形例のパイロアクチュエータ5(ピストン53を備えたパイロアクチュエータ5;
図9参照)に置き換えた構造を有している。
【0206】
本具体例の電路遮断装置100は、点火器51でガスが発生したときに、加圧室520内の圧力によって動かされたピストン53で可動接触子3を押すことによって、可動接触子3を開位置に移動させることができる。また、本具体例の電路遮断装置100は、トリップ装置8の励磁コイル81に異常電流が流れた際に励磁コイル81によって生じる磁束によって発生する電磁力によっても、可動接触子3を開位置に移動させることができる。
図24は、本具体例の電路遮断装置100を示す図であって、点火器51及びトリップ装置8がともに動作していない状態の図である。
図25は、本具体例の電路遮断装置100を示す図であって、点火器51からのガスの圧力によってピストン53が押され、このピストン53によって押されて可動接触子3が開位置に移動した状態の図である。
【0207】
実施形態1と実施形態2とを組み合わせた変形例の更に別の具体例(具体例4)の電路遮断装置100について、
図26~
図28を参照して説明する。本具体例の電路遮断装置100は、上記具体例1の電路遮断装置100(
図19参照)において、パイロアクチュエータ5を、実施形態1の一変形例のパイロアクチュエータ5(
図9参照)に置き換えた構造を有している。
【0208】
本具体例の電路遮断装置100では、可動接触子3は、励磁コイル81への通電の入り切りに応じて、閉位置(
図26参照)と第1開位置(
図27参照)との間で移動する。すなわち、励磁コイル81が通電されていない場合、接圧ばね42からのばね力等によって、可動接触子3は、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11に接触する閉位置に保持される。また、励磁コイル81が通電されると、励磁コイル81で生じる磁束による電磁気力によって、可動接触子3は、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11から離れた第1開位置に保持される。また、パイロアクチュエータ5が駆動されて点火器51がガスを発生すると、加圧室520内の圧力によってピストン53が下方に押され、ピストン53に押されることによって、可動接触子3が第2開位置(
図28参照)へと移動する。
【0209】
実施形態1と実施形態2とを組み合わせた変形例の更に別の具体例(具体例5)の電路遮断装置100について、
図29~
図31を参照して説明する。本具体例の電路遮断装置100は、上記具体例2の電路遮断装置100(
図22参照)において、パイロアクチュエータ5を、実施形態1の一変形例のパイロアクチュエータ5(
図9参照)に置き換えた構造を有している。
【0210】
本具体例の電路遮断装置100では、可動接触子3は、励磁コイル81への通電の入り切りに応じて、閉位置(
図30参照)と第1開位置(
図29参照)との間で移動する。すなわち、励磁コイル81が通電されていない場合、復帰圧ばね85からのばね力等によって、可動接触子3は、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11から離れた第1開位置に保持される。また、励磁コイル81が通電されると、励磁コイル81で生じる磁束による電磁気力によって、可動接触子3は、可動接点(第1可動接点)31が固定接点(第1固定接点)11に接触する閉位置に保持される。また、パイロアクチュエータ5が駆動されて点火器51がガスを発生すると、加圧室520内の圧力によってピストン53が下方に押され、ピストン53に押されることによって、可動接触子3が第2開位置(
図31参照)へと移動する。ここでは、第2開位置は第1開位置と同じである。
【0211】
具体例1~5の電路遮断装置100でも、点火器51で発生したガスが、ハウジング7の収容室70内に導入されることで、アークの消弧が促進される。
【0212】
また、具体例1,2,4,5では、パイロアクチュエータ5を駆動させない場合、電路遮断装置100を、接点装置を備えた電磁継電器として用いることができる。
【0213】
なお、閉位置、第1開位置、第2開位置の間の関係は、上記の各具体例に示す位置関係に限られない。すなわち、閉位置と第1開位置と間の距離は、閉位置と第2開位置との間の距離よりも長くてもよいし、短くてもよいし、等しくてもよい。閉位置と第2開位置と間の距離は、閉位置と第1開位置との間の距離よりも長いことが好ましい。
【0214】
また、具体例3~5の電路遮断装置100は、実施形態1の基本例のパイロアクチュエータ5を備えていてもよい。
【0215】
また、上記の各具体例において、ケース52が、戻り止め機構としての第2筒部(下側に向かう程径が小さくなる円錐台状の内面を有する部分)及び第3筒部(ピストン53のベース533よりも径の小さな筒状の内面を有する部分)を備えていてもよい。
【0216】
また、上記の各具体例において、電路遮断装置100は、ホルダと接圧用ばねとを備えていてもよい。ホルダは、矩形箱状であって左右両面が開口し、左右方向に貫通するように可動接触子3が通される。ホルダの下壁に、シャフト831の上端部が結合される。接圧用ばねは、ホルダの内部において、ホルダの下壁の上面と可動接触子3の下面との間に配置され、可動接触子3を上方に付勢する。この構成により、可動接触子3が閉位置にある場合の、可動接点(第1可動接点)31と固定接点(第1固定接点)11との間の接圧、及び第2可動接点32と第2固定接点21との間の接圧を確保することが可能となる。
【0217】
(4)態様
以上説明した実施形態及び変形例から明らかなように、第1の態様の電路遮断装置(100)は、固定端子(1)と、可動接触子(3)と、移動機構と、点火器(51)と、収容室(70)と、を備える。固定端子(1)は、固定接点(11)を有する。可動接触子(3)は、固定接点(11)に接続される可動接点(31)を有する。移動機構は、閉位置から開位置へと可動接触子(3)を移動させる。閉位置は、可動接点(31)が固定接点(11)に接続される可動接触子(3)の位置である。開位置は、可動接点(31)が固定接点(11)と離れた可動接触子(3)の位置である。点火器(51)は、燃焼によりガスを発生させる。収容室(70)は、固定接点(11)及び可動接触子(3)を収容する。電路遮断装置(100)では、ガスが、収容室(70)に導入される。
【0218】
第1の態様によれば、点火器(51)で発生するガスが、固定接点(11)及び可動接触子(3)を収容する収容室(70)に導入される。したがって、接点間でアークが発生した場合でも、このガスによって、アークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【0219】
第2の態様の電路遮断装置(100)は、第1の態様において、ガスは、固定接点(11)と可動接触子(3)が開位置にある場合の可動接点(31)との間の所定空間(S1)に導入される。
【0220】
第2の態様によれば、点火器(51)で発生するガスが、可動接触子(3)が開位置にある場合の可動接点(31)と固定接点(11)との間の所定空間(S1)に導入される。したがって、接点間でアークが発生した場合でも、このガスによって、アークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【0221】
第3の態様の電路遮断装置(100)は、第2の態様において、ガスが所定空間(S1)に吹き付けられるようにガスを誘導する流路(50)を備える。
【0222】
第3の態様によれば、流路(50)によって、ガスがアークに吹き付けられるので、アークの消弧の促進を図ることが可能となる。
【0223】
第4の態様の電路遮断装置(100)は、第2又は第3の態様において、所定空間(S1)に直交する方向からガスが導入される。
【0224】
第4の態様によれば、所定空間(S1)に生じたアークを効果的に変形や伸長させることができるので、アークの消弧を促進することが可能となり、遮断性能を高めることができる。
【0225】
第5の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第4のいずれかの態様において、移動機構は、加圧室(520)と、ピストン(53)と、を備える。加圧室(520)は、ガスの圧力を受ける。ピストン(53)は、加圧室(520)内の圧力を受けて動かされ、閉位置にある可動接触子(3)に開位置へ向かう向きの力を与えて可動接触子(3)を移動させる。電路遮断装置(100)では、ガスの一部が、加圧室(520)から所定空間(S1)に導入される。
【0226】
第5の態様によれば、ガスの圧力(エネルギー)を用いて、可動接触子(3)を移動させることができ、かつ、ガスを所定空間(S1)に導入することで接点間に発生するアークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【0227】
第6の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第4のいずれかの態様において、移動機構は、トリップ装置(8)を備える。トリップ装置(8)は、可動接点(31)及び固定接点(11)を含む電路に流れる異常電流に応じて可動接触子(3)を閉位置から開位置に移動させる。
【0228】
第6の態様によれば、トリップ装置(8)によって電路が遮断される装置(リレーなど)において、接点間に発生するアークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【0229】
第7の態様の電路遮断装置(100)は、第6の態様において、トリップ装置(8)は、電路の一部を構成する励磁コイル(81)を有する。トリップ装置(8)は、電路に異常電流が流れた際に励磁コイル(81)に生じる磁束によって発生する電磁力によって可動接触子(3)を開位置に移動させる。
【0230】
第7の態様によれば、励磁コイル(81)に生じる磁束によって発生する電磁力によって電路が遮断される装置において、接点間に発生するアークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【0231】
第8の態様の電路遮断装置(100)は、第6又は第7の態様において、トリップ装置(8)は、電路に異常電流が流れると湾曲するバイメタル板(88)を備える。トリップ装置(8)は、電路に異常電流が流れた際にバイメタル板(88)が湾曲することによって、可動接触子(3)を開位置に移動させる。
【0232】
第8の態様によれば、バイメタル板(88)の湾曲によって電路が遮断される装置において、接点間に発生するアークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【0233】
第9の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第8のいずれかの態様において、閉位置に向かう向きの弾性力を可動接触子(3)に与える弾性部(接圧ばね41,42)を備える。
【0234】
第9の態様によれば、可動接触子(3)を閉位置に保持することができる。
【0235】
第10の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第9のいずれかの態様において、可動接触子(3)を閉位置に保持させるための永久磁石(43)を備える。
【0236】
第10の態様によれば、可動接触子(3)を閉位置に保持することができる。
【0237】
第11の態様の電路遮断装置(100)は、第1~第10のいずれかの態様において、収容室(70)を含む、ガスを密閉する空間を含む。
【0238】
第11の態様によれば、ガスを密閉する空間内にガスが導入されることで、この空間内の圧力が増加する。これにより、接点間に発生するアークの速やかな消弧を図ることが可能となる。
【0239】
第12の態様の電路遮断装置(100)は、固定端子(1)と、可動接触子(3)と、励磁コイル(81)と、移動機構と、を備える。固定端子(1)は、固定接点(11)を有する。可動接触子(3)は、固定接点(11)に接続される可動接点(31)を有する。点火器(51)は、燃焼によりガスを発生させる。励磁コイル(81)は、可動接点(31)が固定接点(11)に接続される閉位置から可動接点(31)が固定接点(11)と離れた第1開位置に可動接触子(3)を移動させる。移動機構は、可動接触子(3)を、可動接点(31)が固定接点(11)と離れた第2開位置へと移動させる。
【0240】
第2~11に係る態様の構成については、電路遮断装置(100)の必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0241】
100 電路遮断装置
1 第1固定端子(固定端子)
11 第1固定接点(固定接点)
3 可動接触子
31 第1可動接点(可動接点)
41 接圧ばね(弾性部)
42 接圧ばね(弾性部)
43 永久磁石
50 流路
51 点火器
520 加圧室
53 ピストン
70 収容室
8 トリップ装置
81 励磁コイル
88 バイメタル板
S1 所定空間