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特許7262038有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物、有機EL発光装置の製造方法及び有機EL発光装置
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  • 特許-有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物、有機EL発光装置の製造方法及び有機EL発光装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物、有機EL発光装置の製造方法及び有機EL発光装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/844 20230101AFI20230414BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20230414BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20230414BHJP
   H10K 71/13 20230101ALI20230414BHJP
【FI】
H10K50/844
C08F2/48 ZNM
C08F265/06
H10K71/13
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018147119
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020021714
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-05-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 広志
(72)【発明者】
【氏名】浦岡 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】池上 裕基
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/051795(WO,A1)
【文献】特開2016-012559(JP,A)
【文献】特開2018-106961(JP,A)
【文献】特開2018-100390(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074507(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/844
H10K 71/13
C08F 2/48
C08F 265/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)及び平均粒径70nm以下の吸湿剤(E)を含有し、
前記重合性化合物(A)は、
ポリオキシアルキレン骨格を有し、かつ1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリル化合物(A1)と、
1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個のカチオン重合性基を有する単官能アクリル化合物(A2)とを含有し、
前記吸湿剤(E)が、ゼオライト粒子を含有し、前記ゼオライト粒子のpHが7以上10以下であり、
有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物の全量に対する前記吸湿剤(E)の割合は、5質量%以上13質量%以下である、
有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
25℃における粘度が5mPa・s以上20mPa・s以下である、
請求項1に記載の有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
40℃における粘度が5mPa・s以上20mPa・s以下である、
請求項1に記載の有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
硬化することで得られる硬化物が加熱された場合のアウトガスは500ppm未満である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記多官能アクリル化合物(A1)と前記単官能アクリル化合物(A2)との質量比は、8:2から5:5である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記重合性化合物(A)に対する前記光重合開始剤(B)の量の百分比は、3質量%以上15質量%以下である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
硬化することで得られる硬化物の、厚み寸法が20μmである場合の、波長400nmの光の透過率は、95%以上である、
請求項1からのいずれか一項に記載の有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
有機EL素子と前記有機EL素子を覆う封止材とを備える有機EL発光装置を製造する方法であり、
請求項1からのいずれか一項に記載の有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物をインクジェット法で成形してから、前記有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させることで前記封止材を作製することを含む、
有機EL発光装置の製造方法。
【請求項9】
有機EL素子と、前記有機EL素子を覆う封止材とを備え、前記封止材は、請求項1からのいずれか一項に記載の有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物である、有機EL発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物、有機EL発光装置の製造方法及び有機EL発光装置に関し、詳しくは、有機EL発光装置における封止材を作製するために好適な有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物、この有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物を用いる有機EL発光装置の製造方法、及びこの封止材を備える有機EL発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL発光装置は、照明、ディスプレイなどに適用されており、今後の更なる普及が期待されている。
【0003】
有機EL発光装置のうち、トップエミッションタイプと呼ばれるものは、例えば支持基板上に有機EL素子を配置し、支持基板に対向するように透明基板を配置し、支持基板と透明基板との間に透明な封止材を充填して構成される。この場合、有機EL素子が発する光は封止材及び透明基板を通過して外部へ出射する。
【0004】
封止材は、有機EL素子への水分の侵入を抑制することで、有機EL素子におけるダークスポットの発生及び成長を抑制する。ダークスポットとは、有機EL素子が水分で劣化することで生じる、発光しない部分のことである。
【0005】
有機EL発光装置に封止材を設けるだけでは、水分の侵入を十分に防げないことがある。そのため、支持基板と透明基板との間に吸湿剤を設けることも行われているが、吸湿剤を設けるための工程が必要となり、有機EL発光装置の構造の複雑化及び製造効率の低下を招いてしまう。
【0006】
封止材を作製するための組成物中に吸湿剤を配合することで封止材に吸湿性を付与することも提案されている。例えば特許文献1には、ラジカル重合性化合物と、重合開始剤及び/又は硬化剤と、粉末状モレキュラーシーブとを含有する有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-012559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている場合のように封止材に単に吸湿剤を分散させるだけでは、封止材の透明性の低下を招いてしまい、有機EL発光装置の発光効率が低下してしまう。吸湿剤の粒径を小さくすれば透明性の向上は期待できるが、封止材を作製するための組成物の粘度を吸湿剤が増大させることで組成物の成形性が悪化してしまう。
【0009】
また、組成物から作製される封止材からアウトガスが生じることがある。このアウトガスによって有機EL発光装置中に空隙が生じることがある。この空隙を通じて有機EL素子に水分が到達してしまうおそれがある。
【0010】
本発明の課題は、吸湿剤を含有しながら、吸湿剤による硬化物の透明性の低下を抑制でき、かつ吸湿剤による粘度の増大が生じにくく、かつ硬化物からアウトガスが生じにくい有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物は、重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)及び平均粒径200nm以下の吸湿剤(E)を含有し、前記重合性化合物(A)は、ポリオキシアルキレン骨格を有し、かつ1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリル化合物(A1)と、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個のカチオン重合性基を有する単官能アクリル化合物(A2)とを含有する。
【0012】
本発明の一態様に係る有機EL発光装置の製造方法は、有機EL素子と前記有機EL素子を覆う封止材とを備える有機EL発光装置を製造する方法であり、前記有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物をインクジェット法で成形してから、前記有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させることで前記封止材を作製することを含む。
【0013】
本発明の一態様に係る有機EL発光装置は、有機EL素子と、前記有機EL素子を覆う封止材とを備え、前記封止材は、前記有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、吸湿剤を含有しながら、吸湿剤による硬化物の透明性の低下を抑制でき、かつ吸湿剤による粘度の増大が生じにくく、かつ硬化物からアウトガスが生じにくい有機EL素子封止用紫外線硬化性樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、有機EL発光装置の第一例の概略の断面図である。
図2図2は、有機EL発光装置の第二例の概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
1.実施形態の概要
本実施形態に係る有機EL発光装置1は、有機EL素子4と、有機EL素子4を覆う封止材5とを備える。ELとは、エレクトロルミネッセンスの略である。
【0018】
有機EL発光装置1の構造の第一例を、図1を参照して説明する。この有機EL発光装置1は、トップエミッションタイプである。有機EL発光装置1は、支持基板2、支持基板2と間隔をあけて対向する透明基板3、支持基板2の透明基板3と対向する面の上にある有機EL素子4、及び支持基板2と透明基板3との間に充填されている封止材5とを備える。また、図1に示す例では、有機EL発光装置1は、支持基板2の透明基板3と対向する面及び有機EL素子4を覆うパッシベーション層6を備える。
【0019】
支持基板2は、例えば樹脂材料から作製されるが、これに限定されない。透明基板3は透光性を有する材料から作製される。透明基板3は、例えば、ガラス製基板又は透明樹脂製基板である。有機EL素子4は有機発光ダイオードとも呼ばれる。有機EL素子4は、例えば一対の電極と、電極間にある有機発光層とを備える。パッシベーション層6は窒化ケイ素又は酸化ケイ素から作製されることが好ましい。
【0020】
有機EL発光装置1の構造の第二例を、図2を参照して説明する。なお、図1に示す第一例と共通する要素については、図1と同じ符号を付して、詳細な説明を適宜省略する。図2に示す有機EL発光装置1も、トップエミッションタイプである。有機EL発光装置1は、支持基板2、支持基板2と間隔をあけて対向する透明基板3、支持基板2の透明基板3と対向する面の上にある有機EL素子4、及び有機EL素子4を覆う封止材5を備える。
【0021】
有機EL素子4は、第一例の場合と同様、例えば一対の電極41、43と、電極41、43間にある有機発光層42とを備える。有機発光層42は、例えば正孔注入層421、正孔輸送層422、発光層423及び電子輸送層424を備え、これらの層は前記の順番に積層している。
【0022】
有機EL発光装置1は複数の有機EL素子4を備え、かつ複数の有機EL素子4が、支持基板2上でアレイ9(以下素子アレイ9という)を構成している。素子アレイ9は、隔壁7も備える。隔壁7は、支持基板2上にあり、隣り合う二つの有機EL素子4の間を仕切っている。隔壁7は、例えば感光性の樹脂材料をフォトリソグラフィ法で成形することで作製される。素子アレイ9は、隣り合う有機EL素子4の電極43及び電子輸送層424同士を電気的に接続する接続配線8も備える。接続配線8は、隔壁7上に設けられている。
【0023】
有機EL発光装置1は、有機EL素子4を覆うパッシベーション層6も備える。パッシベーション層6は窒化ケイ素又は酸化ケイ素から作製されることが好ましい。パッシベーション層6は、第一パッシベーション層61と第二パッシベーション層62とを含む。第一パッシベーション層61は素子アレイ9に直接接触した状態で、素子アレイ9を覆うことで、有機EL素子4を覆っている。第二パッシベーション層62は、第一パッシベーション層61に対して、素子アレイ9とは反対側の位置に配置され、かつ第二パッシベーション層62と第一パッシベーション層61との間には間隔があけられている。第一パッシベーション層61と第二パッシベーション層62との間に、封止材5が充填されている。すなわち、有機EL素子4と、有機EL素子4を覆う封止材5との間に、第一パッシベーション層61が介在している。
【0024】
さらに、第二パッシベーション層62と透明基板3との間に、第二封止材52が充填されている。第二封止材52は、例えば透明な樹脂材料から作製される。第二封止材52の材質は特に制限されない。第二封止材52の材質は、封止材5と同じであっても、異なっていてもよい。
【0025】
封止材5を、本実施形態に係る紫外線硬化性樹脂組成物から作製することができる。すなわち、紫外線硬化性樹脂組成物は、有機EL素子4のための封止材5を作製するために用いられる。更に言い換えれば、紫外線硬化性樹脂組成物は、好ましくは封止材作製用の組成物、有機EL素子封止用の組成物、あるいは有機EL発光装置製造用の組成物である。
【0026】
2.紫外線硬化性樹脂組成物について
本実施形態に係る紫外線硬化性樹脂組成物(以下、組成物(X)という)は、重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)及び平均粒径200nm以下の吸湿剤(E)を含有する。
【0027】
重合性化合物(A)は、多官能アクリル化合物(A1)と、単官能アクリル化合物(A2)とを含有する。多官能アクリル化合物(A1)は、ポリオキシアルキレン骨格を有し、かつ1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアクリル化合物である。単官能アクリル化合物(A2)は、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個のカチオン重合性基を有するアクリル化合物である。なお、アクリル化合物とは、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。また、「(メタ)アクリ-」は、「アクリ-」と「メタクリ-」とのうちの少なくとも一方のことである。
【0028】
多官能アクリル化合物(A1)は、ポリオキシアルキレン骨格を有することで、組成物(X)を特にインクジェット法で成形する場合の成形性を高めることができる。また、多官能アクリル化合物(A1)は、組成物(X)がインクジェット装置のヘッド部分等における接着剤又はゴム材料に浸透しにくくしてインクジェット装置にダメージを与えにくくできる。さらに、多官能アクリル化合物(A1)は、封止材5と、無機材料製の部材、例えばパッシベーション層6、との密着性を高めることができる。
【0029】
多官能アクリル化合物(A1)におけるポリオキシアルキレン骨格は、2個以上6個以下のオキシアルキレン単位を有することが好ましい。この場合、多官能アクリル化合物(A1)は、組成物(X)のインクジェット法による成形性を特に高めることができ、硬化物の無機材料製の部材との密着性及び硬化物の柔軟性を特に高めることができる。多官能アクリル化合物(A1)におけるオキシアルキレン単位は、例えばオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とのうちの少なくとも一方を含む。
【0030】
多官能アクリル化合物(A1)は、炭素鎖の分岐が無く又は分岐が少ない構造を有することが好ましい。この場合、多官能アクリル化合物(A1)は、組成物(X)を特に低粘度化できる。
【0031】
多官能アクリル化合物(A1)は、例えばジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含むことができる。
【0032】
重合性化合物(A)全体に対する多官能アクリル化合物(A1)の量の百分比は、例えば10質量%以上90質量%以下である。この場合、多官能アクリル化合物(A1)は、組成物(X)のインクジェット法で成形する場合の成形性を特に高めることができ、かつ組成物(X)がインクジェット装置にダメージを特に与えにくくでき、かつ封止材5と無機材料製の部材との密着性を特に高めることができる。多官能アクリル化合物(A1)の量の百分比は、40質量%以上であることも好ましく、70質量%以下であることも好ましい。
【0033】
単官能アクリル化合物(A2)は、封止材5の柔軟性を向上することで、封止材5に応力が残留しにくくし、これにより封止材5と無機材料製の部材との密着性を高めることができる。また、単官能アクリル化合物(A2)は、封止材5中の未反応の成分などに起因するアウトガスを生じにくくできる。これは、単官能アクリル化合物(A2)がカチオン重合性基を有するため、封止材5中の単官能アクリル化合物(A2)に由来するカチオン重合性基が、未反応の成分である酸成分をトラップできるためであると、推察される。なお、酸成分は、例えば組成物(X)中の多官能アクリル化合物(A1)などのアクリル化合物に由来する。組成物(X)中に単官能アクリル化合物(A2)が無い場合は、酸成分は時間の経過に応じて増大してアウトガス発生の危険性を増大させてしまう。
【0034】
単官能アクリル化合物(A2)におけるカチオン重合性基は、例えば、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタニル基、アリルエーテル基、ビニル基又は水酸基である。
【0035】
単官能アクリル化合物(A2)は、例えば3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、3-エチル-3-(メタ)アクリルオキシメチルオキセタン、アリル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0036】
重合性化合物(A)全体に対する単官能アクリル化合物(A2)の量の百分比は、例えば10質量%以上90質量%以下である。この場合、単官能アクリル化合物(A2)は、封止材5の柔軟性及び封止材5の無機材料製の部材との密着性を特に高めることができ、かつ封止材5からのアウトガスを特に生じにくくできる。単官能アクリル化合物(A2)の量の百分比は、20質量%以上であることも好ましく、50質量%以下であることも好ましい。
【0037】
多官能アクリル化合物(A1)と単官能アクリル化合物(A2)との質量比は、8:2から5:5であることが好ましい。この場合、組成物(X)のインクジェット法による成形性、封止材5の耐熱性、封止材5の密着性、及び封止材の柔軟性が、特に高められる。この質量比は、7:3から6:4であればより好ましい。
【0038】
重合性化合物(A)は、多官能アクリル化合物(A1)と単官能アクリル化合物(A2)以外の化合物を更に含有してもよい。このような化合物は、例えば組成物(X)の粘度調整、封止材5の密着性の更なる向上などの目的で使用される。
【0039】
重合性化合物(A)は、多官能アクリル化合物(A1)及び単官能アクリル化合物(A2)以外のアクリル化合物(A3)を、更に含有してもよい。アクリル化合物(A3)は、例えばジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0040】
重合性化合物(A)は、アクリル化合物ではない(すなわち(メタ)アクリロイル基を有さない)ラジカル重合性化合物(A4)を、更に含有してもよい。ラジカル重合性化合物(A4)は、一分子に二つ以上のラジカル重合性官能基を有する多官能ラジカル重合性化合物(A41)と、一分子に一つのみのラジカル重合性官能基を有する単官能ラジカル重合性化合物(A42)とのうち、いずれか一方又は両方を含有できる。
【0041】
重合性化合物(A)とラジカル重合性化合物(A4)との合計量に対するラジカル重合性化合物(A4)の量の百分比は、例えば10質量%以下である。
【0042】
多官能ラジカル重合性化合物(A41)は、例えば一分子中にエチレン性二重結合を2つ以上有する芳香族ウレタンオリゴマー、脂肪族ウレタンオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー及びその他特殊オリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有してもよい。より具体的には、多官能ラジカル重合性化合物(A41)は、例えば日本合成化学工業株式会社製のUV-2000B、UV-2750B、UV-3000B、UV-3010B、UV-3200B、UV-3300B、UV-3700B、UV-6640B、UV-8630B、UV-7000B、UV-7610B、UV-1700B、UV-7630B、UV-6300B、UV-6640B、UV-7550B、UV-7600B、UV-7605B、UV-7610B、UV-7630B、UV-7640B、UV-7650B、UT-5449、UT-5454;サートマー社製のCN902、CN902J75、CN929、CN940、CN944、CN944B85、CN959、CN961E75、CN961H81、CN962、CN963、CN963A80、CN963B80、CN963E75、CN963E80、CN963J85、CN964、CN965、CN965A80、CN966、CN966A80、CN966B85、CN966H90、CN966J75、CN968、CN969、CN970、CN970A60、CN970E60、CN971、CN971A80、CN971J75、CN972、CN973、CN973A80、CN973H85、CN973J75、CN975、CN977、CN977C70、CN978、CN980、CN981、CN981A75、CN981B88、CN982、CN982A75、CN982B88、CN982E75、CN983、CN984、CN985、CN985B88、CN986、CN989、CN991、CN992、CN994、CN996、CN997、CN999、CN9001、CN9002、CN9004、CN9005、CN9006、CN9007、CN9008、CN9009、CN9010、CN9011、CN9013、CN9018、CN9019、CN9024、CN9025、CN9026、CN9028、CN9029、CN9030、CN9060、CN9165、CN9167、CN9178、CN9290、CN9782、CN9783、CN9788、CN9893;並びにダイセル・サイテック株式会社製のEBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、KRM8200、EBECRYL5129、EBECRYL8210、EBECRYL8301、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260、KRM7735、KRM8296、KRM8452、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL9270、EBECRYL8311、EBECRYL8701からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0043】
単官能ラジカル重合性化合物(A42)は、例えばN-ビニルホルムアミド、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、フェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2-ブチレンオキサイド、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2-エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3-ビニルシクロヘキセンオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンオキサイド、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0044】
重合性化合物(A)は、カチオン重合性化合物(A5)を更に含有してもよい。カチオン重合性化合物(A5)は、例えばエポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物、及び前記以外のカチオン重合性化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。ただし、重合性化合物(A)がカチオン重合性化合物(A5)を含有せず、又は重合性化合物(A)に対するカチオン重合性化合物(A5)の量の百分比が1質量%以下であることが、より好ましい。この場合、封止材5からアウトガスがより発生しにくくなる。
【0045】
重合性化合物(A)がエポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールO型エポキシ樹脂、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、及びグリシジルエステル化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。エポキシ化合物が脂環式エポキシ樹脂が含有することが好ましい。脂環式エポキシ樹脂の具体例は、セロキサイド2000、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド3000、セロキサイド8000、サイクロマーM100(いずれも、ダイセル社製)、及びサンソサイザーEPS(新日本理化工業社製)を含む。
【0046】
重合性化合物(A)がオキセタン化合物を含有する場合、オキセタン化合物は、例えばフェノキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-((2-エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-((3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン及び1,4-ビス(((3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0047】
重合性化合物(A)がビニルエーテル化合物を含有する場合、ビニルエーテル化合物は、例えば、ベンジルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジシクロペンタジエンビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0048】
重合性化合物(A)が多官能アクリル化合物(A1)及び単官能アクリル化合物(A2)以外の化合物を含有する場合、多官能アクリル化合物(A1)及び単官能アクリル化合物(A2)以外の化合物の合計量の百分比は、重合性化合物(A)に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。この場合、アウトガスを多量に発生させたり、封止材5の柔軟性を悪化させたりすることなく、組成物(X)の粘度調整、封止材5の密着性の更なる向上などの効果が発揮されうる。多官能アクリル化合物(A1)及び単官能アクリル化合物(A2)以外の化合物の合計量の百分比は、3質量%以上であることがより好ましく、10質量%以下であることもより好ましい。
【0049】
光重合開始剤(B)は、光ラジカル重合開始剤を含有する。光ラジカル重合開始剤は、紫外線が照射されるとラジカル種を生じさせる化合物であれば、特に制限されない。光重合開始剤(B)は、例えば芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0050】
光重合開始剤(B)は、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤を含有することが好ましい。アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤の例は、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド及び2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィネートを含む。アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤の製品名の例は、BASF社製のIrgacureTPO、IrgacureTPO-L及びIrgacure819を含む。
【0051】
組成物(X)100質量部に対する光重合開始剤(B)の量は、例えば1質量部以上10質量部以下である。また、上記重合性化合物100質量部に対する光重合開始剤(B)の量は、例えば0.5質量部以上20質量部以下であり、好ましくは10質量部以上15質量部以下である。
【0052】
光重合開始剤(B)は、光重合開始剤(B)の一部として増感剤を含有してもよい。増感剤は、光重合開始剤(B)のラジカル生成反応を促進させて、ラジカル重合の反応性を向上させ、かつ架橋密度を向上させうる。増感剤は、例えば9,10-ジブトキシアントラセン、9-ヒドロキシメチルアントラセン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、アントラキノン、1,2-ジヒドロキシアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ジエトキシナフタレン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノベンゾフェノン、p-ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、p-ジメチルアミノベンズアルデヒド、及びp-ジエチルアミノベンズアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0053】
組成物(X)中の増感剤の含有量は、例えば組成物(X)の固形分100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であり、好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。増感剤の含有量がこのような範囲であれば、空気中で組成物(X)を硬化させることができ、組成物(X)の硬化を窒素雰囲気等の不活性雰囲気下で行う必要がなくなる。
【0054】
組成物(X)は、光重合開始剤(B)に加えて、重合促進剤を含有してもよい。重合促進剤は、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、p-ジメチルアミノ安息香酸メチル、安息香酸-2-ジメチルアミノエチル、p-ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルといったアミン化合物を含有する。
【0055】
なお、組成物(X)中の単官能アクリル化合物(A2)は少なくとも1個のカチオン重合性基を有するが、このカチオン重合性基は上述のとおり酸成分をトラップするためのものであって、組成物(X)の硬化に関与しなくてもよい。そのため、組成物(X)は、カチオン重合反応を開始させ又は促進させる成分、例えばカチオン硬化触媒及び光カチオン重合開始剤、を含有しなくてもよい。
【0056】
上記のとおり、組成物(X)は、平均粒径200nm以下の吸湿剤(E)を含有する。吸湿剤(E)は、吸湿性を有する無機粒子であることが好ましく、例えばゼオライト粒子、シリカゲル粒子、塩化カルシウム粒子、及び酸化チタンナノチューブ粒子からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。吸湿剤(E)がゼオライト粒子を含有することが特に好ましい。
【0057】
平均粒径200nm以下のゼオライト粒子は、例えば一般的な工業用ゼオライトを粉砕することで製造できる。ゼオライト粒子を製造するに当たって、ゼオライトを粉砕してから水熱合成などによって結晶化させてもよく、この場合、ゼオライト粒子は特に高い吸湿性を有することができる。このようなゼオライト粒子の製造方法は、特開2016-69266号公報、特開2013-049602号公報などにより公知である。
【0058】
ゼオライト粒子は、ナトリウムイオンを含有することが好ましい。そのためには、ゼオライト粒子は、ナトリウムイオンを含有するゼオライトから製造されることが好ましく、A型ゼオライト、X型ゼオライト及びY型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも一種の材料から製造されることがより好ましい。ゼオライト粒子がA型ゼオライトのうち4A型ゼオライトから製造されることが特に好ましい。これらの場合、ゼオライト粒子は、水分の吸着に好適な結晶構造を有する。
【0059】
平均粒径200nm以下のゼオライト粒子の製造方法の一具体例を示す。まず、原料であるゼオライト粉を準備し、このゼオライト粉を物理粉砕する。例えばゼオライト粉を水と混合してスラリーを調製し、このスラリーをビーズミル粉砕機にかけることで、ゼオライト粉を物理粉砕できる。
【0060】
続いて、水熱合成によりゼオライト粉を結晶化させる。例えば物理粉砕後のゼオライト粉を含むスラリーを、オートクレーブで加熱することで、水熱合成を行うことができる。水熱合成の条件は、例えば加熱温度150~200℃の範囲内、加熱時間15~24時間の範囲内である。
【0061】
続いて、ゼオライト粉を乾燥する。乾燥温度は例えば150~200℃の範囲内であり、乾燥時間は例えば2~3時間の範囲内である。続いて、必要に応じ、乾燥後のゼオライト粉を乳鉢などを用いて解砕してから篩いにかけることで粒径を整える。
【0062】
続いて、必要に応じ、ゼオライト粉にイオン交換処理を施してもよい。イオン交換処理は、例えばゼオライト粉を、マグネシウムイオンを含有する水溶液中に分散させて混合物を調製し、この混合物を加熱することで行われる。より具体的には、イオン交換処理は例えば次のように行われる。まずゼオライト粉を、塩化マグネシウム及び水と混合し、得られた混合物を加熱しながら撹拌する処理をする。この処理の間、撹拌を一時的に停止してから混合物の上澄みを捨て、続いて混合物に水を補充してから撹拌を再開するという操作を、適当な間隔をあけて複数回繰り返すことが好ましい。この処理における加熱温度は40~80℃の範囲内、処理時間は6~8時間の範囲内であることが好ましい。
【0063】
イオン交換処理を施した場合、続いて、ゼオライト粉を乾燥する。乾燥温度は例えば150~200℃の範囲内であり、乾燥時間は例えば2~3時間の範囲内である。続いて、必要に応じ、乾燥後のゼオライト粉を乳鉢などを用いて解砕してから篩いにかけることで粒径を整える。これにより、平均粒径200nm以下のゼオライト粒子を得ることができる。
【0064】
ゼオライト粉の結晶化を、シリケート及びアルカリ金属酸化物の存在下で行うこともできる。その場合の平均粒径200nm以下のゼオライト粒子の製造方法の具体例を示す。まず、ゼオライト粉を準備する。ゼオライト粉は、aM12O・bSiO2・Al23・cMeの組成を有することが好ましい。M1はアルカリ金属、プロトン、又はアンモニウムイオン(NH4 +)であり、Meはアルカリ土類金属であり、aは0.01~1の範囲内の数であり、bは20~80の範囲内の数であり、cは0~1の範囲内の数である。ゼオライト粉は、ナトリウムイオンを含有するゼオライトを含むことが好ましく、ナトリウムイオンのうちA型ゼオライト、X型ゼオライト及びY型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含むことがより好ましい。ゼオライト粉がA型ゼオライトのうち4A型ゼオライトを含むことが特に好ましい。このゼオライト粉を物理粉砕する。例えばゼオライト粉をビーズミル粉砕機にかけることで、ゼオライト粉を物理粉砕できる。
【0065】
物理粉砕後のゼオライト粉を、M22O、SiO2及びH2Oを含有する溶液に分散させ、スラリーを調製する。M2はアルカリ金属であり、好ましくはK又はNaである。M22O/H2Oのモル比は例えば0.003~0.01の範囲内であり、SiO2/H2Oのモル比は例えば0.006~0.025の範囲内である。ゼオライト粉の量は、例えば溶液100mlに対して0.5~10gである。
【0066】
このスラリーをオートクレーブで加熱することで、ゼオライト粉の結晶化を行うことができる。その条件は、例えば加熱温度100~230℃の範囲内、加熱時間1~24時間の範囲内である。続いて、ゼオライト粉を洗浄してから乾燥させる。これにより、平均粒径200nm以下のゼオライト粒子を得ることができる。
【0067】
ゼオライト粒子のpHは7以上10以下であることが好ましい。ゼオライト粒子のpHが7以上であると、ゼオライト粒子の結晶が破壊されにくくなり、そのためゼオライト粒子を含有する組成物(X)から作製された封止材が特に高い吸湿性を有することができる。また、ゼオライト粒子のpHが10以下であると、組成物(X)を硬化させる場合にゼオライト粒子が硬化を阻害しにくい。
【0068】
なお、ゼオライト粒子のpHは、イオン交換水99.95gにゼオライト粒子0.05gを入れて得られた分散液を、90℃で24時間加熱してから、分散液の上澄みのpHをpH測定器で測定することで得られる値である。pH測定器としては、例えば堀場製作所製のコンパクトpHメータ<LAQUAtwin>B-711を用いることができる。
【0069】
ゼオライト粒子のpHが7以上10以下であるためには、ゼオライト粒子が、カウンターカチオンとしてプロトンを有するFAU Y型のゼオライトからなることが好ましい。
【0070】
ゼオライト粒子を作製する過程において、ゼオライトの水熱合成を行う場合に、pHの調整のための処理を施してもよい。pHの調整のための処理は、例えば水熱合成のために調製されたゼオライト粉を含むスラリーを加熱する前、スラリーの加熱中、又はスラリーの加熱後に行われる。pHの調整は、例えばスラリーに酸を添加することで行われる。酸は、例えば塩酸、硫酸、硝酸といった無機酸と、ギ酸、酢酸、シュウ酸といった有機酸とからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0071】
吸湿剤(E)の平均粒径は、10nm以上200nm以下であることが好ましい。この平均粒径が200nm以下であれば、硬化物は特に高い透明性を有することができる。また、この平均粒径が10nm以上であれば、吸湿剤(E)の良好な吸湿性を維持できる。なお、この平均粒径は、動的光散乱法による測定結果から算出されるメディアン径、すなわち累積50%径(D50)である。なお、測定装置としては、マイクロトラック・ベル株式会社のナノトラックNanotrac Waveシリーズを用いることができる。
【0072】
吸湿剤(E)の平均粒径は、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であれば更に好ましく、70nm以下であれば特に好ましい。また、吸湿剤(E)の平均粒径が20nm以上であることが好ましく、50nm以上であればより好ましい。この場合、硬化物は、特に良好な透明性と吸湿性とを有することができる。
【0073】
吸湿剤(E)の累積90%径(D90)が100nm以下であることも好ましい。この場合、硬化物は特に高い透明性を有することができる。
【0074】
組成物(X)の全量に対する吸湿剤(E)の割合は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。吸湿剤(E)の割合が1質量%以上であれば硬化物は特に高い吸湿性を有することができる。また、吸湿剤(E)の割合が20質量%以下であれば組成物(X)の粘度を特に低減でき、組成物(X)がインクジェット法で塗布可能な程度の十分な低粘度を有することもできる。吸湿剤(E)の割合は、3質量%以上であれば更に好ましく、5質量%以上であれば特に好ましい。また、吸湿剤(E)の割合は、15質量%以下であればより好ましく、13質量%以下であれば特に好ましい。
【0075】
組成物(X)は、吸湿剤(E)以外の無機充填材を更に含有してもよい。特に、組成物(X)は、ナノサイズの高屈折率粒子を含有することが好ましい。高屈折率粒子の例はジルコニア粒子を含む。組成物(X)が高屈折率粒子を含有すると、硬化物の良好な透明性を維持しながら、硬化物を高屈折率化することができる。そのため、硬化物を有機EL発光装置1における封止材5に適用した場合に、封止材5を透過して外部へ出射する光の取り出し効率を向上することができる。高屈折率粒子の平均粒径は、5~30nmの範囲内であることが好ましく、10~20nmの範囲内であれば更に好ましい。
【0076】
組成物(X)中の高屈折率粒子の割合は、硬化物が所望の屈折率を有するように適宜設計される。特に高屈折率粒子は、硬化物の屈折率が1.45以上、1.55未満の範囲内になるように組成物(X)に含有されることが好ましい。この場合、有機EL発光装置1の光の取り出し効率が特に向上する。
【0077】
組成物(X)は、溶剤を含有しないことが好ましい。この場合、組成物(X)から硬化物を作製する際に組成物(X)を乾燥させて溶剤を揮発させるような必要がなくなる。
【0078】
組成物(X)は、分散剤(F)を更に含有してもよい。分散剤(F)は、吸湿剤(E)に吸着しうる界面活性剤である。分散剤(F)は、例えば吸湿剤(E)の粒子に吸着しうる吸着基(アンカーともいう)と、吸着基が吸湿剤(E)の粒子に吸着することでこの粒子に付着する鎖状又は櫛形状の分子骨格であるテールとを、有する。分散剤(F)は、例えばテールがアクリル系の分子鎖であるアクリル系分散剤と、テールがウレタン系の分子鎖であるウレタン系分散剤と、テールがポリエステル系の分子鎖であるポリエステル系分散剤とからなら群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0079】
組成物(X)が分散剤(F)を含有すると、吸湿剤(E)を組成物(X)中及び硬化物中で良好に分散させることができる。このため、硬化物及び封止材5が吸湿剤(E)を含有するにもかかわらず、硬化物及び封止材5の透明性が吸湿剤(E)によって低下されにくい。また、分散剤(F)は、組成物(X)の保管中における吸湿剤(E)の凝集を効果的に抑制できる。そのため組成物(X)の保存安定性が吸湿剤(E)によって低下されにくい。さらに、硬化物と窒化ケイ素及び酸化ケイ素との間の密着性が分散剤(F)によって低下されにくい。これは、分散剤(F)が前記のように吸湿剤(E)に吸着しやすいため、分散剤(F)が硬化物と窒化ケイ素及び酸化ケイ素との間の界面に影響を与えにくいからであると、考えられる。このため、封止材5はガラス製の基材との高い密着性を有することができる。また、窒化ケイ素及び酸化ケイ素は有機EL発光装置1におけるパッシベーション層6の材料として使用されることがある。このため、パッシベーション層6が窒化ケイ素又は酸化ケイ素から作製されている場合、封止材5はパッシベーション層6と高い密着性を有することができる。
【0080】
分散剤(F)の沸点は200℃以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)から分散剤(F)が揮発しにくいことから、組成物(X)の保存安定性が更に向上する。
【0081】
分散剤(F)は、吸着基として、塩基性の極性官能基と酸性の極性官能基とのうちいずれか一方又は両方を有することが好ましい。この場合、吸湿剤(E)を組成物(X)中及び硬化物中で特に良好に分散させることができる。これは、分散剤(F)が塩基性の極性官能基と酸性の極性官能基とのうちいずれか一方又は両方を有することで、吸湿剤(E)に吸着しやすく、そのため吸湿剤(E)を分散させる作用が著しく発現するためと考えられる。
【0082】
分散剤(F)は、ポリマーを含んでもよい。ポリマーの重量平均分子量は例えば1000以上である。ポリマーは、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルとの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルとの塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、及びステアリルアミンアセテートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。分散剤(F)がポリマーを含有すると、ポリマーが吸湿剤(E)の粒子に吸着した際に生じる立体障害効果が向上することで、吸湿剤(E)の分散性が向上しうる。
【0083】
分散剤(F)は、例えば塩基性の極性官能基を有する分散剤(F1)と酸性の極性官能基を有する分散剤(F2)とのうち、いずれか一方又は両方を含有できる。
【0084】
塩基性の極性官能基を有する分散剤(F1)における塩基性の極性官能基は、例えばアミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、及び含窒素複素環基からなる群から選択される少なくとも一種の基を含む。分散剤(F1)が塩基性の極性官能基を有すると、分散剤(F1)は吸湿剤(E)に吸着しやすいため、吸湿剤(E)の分散性が向上しうる。塩基性の極性官能基は、分散剤(F1)の吸湿剤(E)への吸着能を特に高めることができること、吸湿剤(E)の分散性を特に向上できること、及び組成物(X)の粘度を特に低下できることから、アミノ基を含むことが好ましい。
【0085】
塩基性の極性官能基を有する分散剤(F1)は、例えば商品名:ソルスパース24000(アミン価:41.6mgKOH/g)、商品名:ソルスパース32000(アミン価:31.2mgKOH/g)、商品名:ソルスパース39000(アミン価:25.7mgKOH/g)、商品名:ソルスパースJ100、商品名:ソルスパースJ200等の日本ルーブルリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ;商品名:DisperBYK-108、DisperBYK-2013、DisperBYK-180、DISPERBYK-106、DisperBYK-162(アミン価:13mgKOH/g)、商品名:DisperBYK-163(アミン価:10mgKOH/g)、商品名:DISPERBYK-168(アミン価:11mgKOH/g)、商品名:DISPERBYK-2050(アミン価:30.7mgKOH/g)、商品名:DISPERBYK-2150(アミン価:56.7mgKOH/g)等のビックケミー・ジャパン株式会社製のDisperBYKシリーズ;商品名:BYKJET-9151(アミン価:17.2mgKOH/g)、商品名:BYKJET-9152(アミン価:27.3mgKOH/g)等のビックケミー・ジャパン株式会社製のBYKJETシリーズ、;及び商品名:アジスパーPB821(アミン価:11.2mgKOH/g)、商品名:アジスパーPB822(アミン価:18.2mgKOH/g)、商品名:アジスパーPB881(アミン価:17.4mgKOH/g)等の味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーシリーズを含む。
【0086】
分散剤(F1)のアミン価は、10mgKOH/g以上であることが好ましく、10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下がより好ましく、15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下が更に好ましい。また、分散剤(F1)は、リン酸基を有さないことが好ましい。分散剤(F1)がリン酸基を有する場合は、リン酸基に由来する酸価がアミン価の値以下であることが好ましい。この場合、分散剤(F1)が、吸湿剤(E)を特に良好に分散させることができ、組成物(X)の保存安定性を特に高めることができ、硬化物の透明性を特に高めることができ、更に硬化物と窒化ケイ素及び酸化ケイ素との間の密着性を特に高めることができる。分散剤(F1)に含まれうる成分のうち、アミノ基を有しリン酸基を有さない分散剤の例は、ビックケミー社製のDISPERBYK-108を含む。アミノ基及びリン酸基を有しかつリン酸基に由来する酸価がアミン価の値以下である分散剤の例は、ビックケミー社製のDISPERBYK-2013及びビックケミー社製のDISPERBYK-180を含む。
【0087】
酸性の極性官能基を有する分散剤(F2)における酸性の極性官能基は、例えばカルボキシル基である。分散剤(F2)は、例えばビックケミー社製のDISPERBYK-P105を含有する。
【0088】
吸湿剤(E)100質量部に対する分散剤(F)の量は、5質量部以上60質量部以下であることが好ましい。分散剤(F)の量が5質量部以上であれば、分散剤(F)の利点を特に発揮させることができる。分散剤(F)の量が60質量部以下であれば、硬化物と、窒化ケイ素及び酸化ケイ素との間の密着性を、より高めることができる。分散剤(F)の量は15質量部以上であればより好ましい。分散剤(F)の量は50質量部以下であればより好ましく、40質量部以下であればより更に好ましく、30質量部以下であれば特に好ましい。
【0089】
組成物(X)は、シランカップリング剤を更に含有してもよい。シランカップリング剤は、封止材5と無機材料製の部材との密着性を更に高めることができる。シランカップリング剤は、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0090】
シランカップリング剤の量の、重合性化合物(A)に対する百分比は、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。この場合、封止材5から余剰のシランカップリング剤がブリードアウトしにくくできる。シランカップリング剤の百分比は、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
【0091】
組成物(X)は、表面改質剤を更に含有してもよい。この場合、組成物(X)から作製される膜を平坦にしやすくできる。表面改質剤は、例えば界面活性剤及びレベリング剤からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。表面改質剤に含まれる化合物の例は、シリコーン系の化合物及びフッ素系の化合物を含む。表面改質剤のより具体的な例は、BYK-340、BYK-345(いずれもビックケミー・ジャパン社製)、及びサーフロンS-611(AGCセイミケミカル社製)を含む。
【0092】
組成物(X)は、上記成分以外にも、必要に応じて適宜の添加剤、例えば補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤及び酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも一種の化合物、を含有してもよい。
【0093】
組成物(X)は、溶剤を含有してもよいが、溶剤を含有しない方が好ましい。組成物(X)が溶剤を含有しないと、組成物(X)から硬化物を作製する際に組成物(X)を乾燥させて溶剤を揮発させるような必要がなくなる。また、溶剤に起因する封止材5の劣化及び封止材5からのアウトガス発生を抑制できる。
【0094】
上述の成分を混合することで、組成物(X)を調製できる。組成物(X)は25℃で液状であることが好ましい。
【0095】
組成物(X)の25℃における粘度は50mPa・s以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)を常温下でキャスティング法といった方法で成形することが容易であり、組成物(X)を常温下でインクジェット法で成形することも可能である。また、組成物(X)の25℃における粘度は、20mPa・s以下であればより好ましく、13mPa・s以下であれば特に好ましい。また、組成物(X)の粘度は、例えば1mPa・s以上であり、又は5mPa・s以上であり、又は10mPa・s以上である。
【0096】
組成物(X)の40℃における粘度が50mPa・s以下であることも好ましい。この場合、常温における組成物(X)の粘度がいかなる値であっても、組成物(X)を僅かに加熱すれば低粘度化させることが可能である。このため、加熱すれば、組成物(X)をキャスティング法といった方法で成形することが容易であり、組成物(X)をインクジェット法で成形することも可能である。この粘度が20mPa・s以下であればより好ましく、13mPa・s以下であれば特に好ましい。また、組成物(X)の40℃における粘度は、例えば1mPa・s以上であり、又は5mPa・s以上であり、又は10mPa・s以上である。
【0097】
このような組成物(X)の25℃又は40℃における低い粘度は、上記で詳細に説明される組成物(X)の組成によって達成可能である。
【0098】
組成物(X)の硬化物の、厚み寸法が10μmである場合の、全光透過率は、90%以上であることが好ましい。この場合、硬化物を有機EL発光装置1における封止材5に適用した場合に、封止材5を透過して外部へ出射する光の取り出し効率を特に向上できる。このような硬化物の高い光透過性は、上記で詳細に説明される組成物(X)の組成によって達成可能である。
【0099】
組成物(X)の硬化物の、厚み寸法が20μmである場合の、紫外線を100時間照射された後の波長400nmの光の透過率が85%以上であることが好ましい。この場合、封止材5の透明性を高くでき、有機EL発光装置1における発光の損失が小さくでき、かつ有機EL発光装置1の発する光の色再現性を高めることができる。この光の透過率は、90%以上であればより好ましく、95%以上であれば更に好ましい。
【0100】
組成物(X)の厚み寸法100μmの硬化物を、JIS Z 0208に準拠して、85℃、85%RHの環境下に24時間暴露した場合の透湿度は、100g/m2以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)から作製される封止材5によって、有機EL素子におけるダークスポットなどの不良を更に生じにくくできる。
【0101】
組成物(X)の硬化物を、85℃、85%RHの環境下に24時間暴露した場合の、硬化物の含水率が0.5%未満であることが好ましい。この場合、この場合、組成物(X)から作製される封止材5によって、有機EL素子におけるダークスポットなどの不良を更に生じにくくできる。この含水率は、0.3%以下であればより好ましい。なお、含水率は、例えばJIS K 7251に準拠してカールフィッシャー法により求めることができ、JIS K 7209-2に準拠して吸水後の重量増分から求めることもできる。
【0102】
3.封止材の作製方法及び有機EL発光装置の製造方法
組成物(X)を用いる封止材5の作製方法及び有機EL発光装置1の製造方法について説明する。
【0103】
本実施形態では、組成物(X)をインクジェット法で成形してから、組成物(X)に紫外線を照射して硬化することで、封止材5を作製することが好ましい。本実施形態では組成物(X)の低粘度化が可能であるため、インクジェット法で組成物(X)を成形することが可能である。
【0104】
組成物(X)をインクジェット法で塗布するに当たっては、組成物(X)が常温で十分に低い粘度を有する場合、例えば25℃における粘度が50mPa・s以下、特に20mPa・s以下である場合には、組成物(X)を加熱せずにインクジェット法で塗布することで成形できる。
【0105】
組成物(X)が加熱されることで低粘度化する性質を有する場合、組成物(X)を加熱してから組成物(X)をインクジェット法で塗布して成形してもよい。組成物(X)の40℃における粘度が50mPa・s以下、特に20mPa・s以下である場合、組成物(X)を僅かに加熱しただけで低粘度化させることができ、この低粘度化した組成物(X)をインクジェット法で吐出することができる。組成物(X)の加熱温度は、例えば20℃以上50℃以下である。
【0106】
図1に示す第一例の有機EL発光装置1の作製方法について説明する。例えばまず、支持基板2を準備する。この支持基板2の一面上に、有機EL素子4を設ける。有機EL素子4は、蒸着法、塗布法といった適宜の方法で作製できる。特に有機EL素子4を、インクジェット法といった塗布法で作製することが好ましい。
【0107】
次に、パッシベーション層6を設ける。パッシベーション層6は、例えば蒸着法で作製できる。
【0108】
次に、組成物(X)をインクジェット法で、支持基板2の一面及び有機EL素子4を覆うように成形する。なお、パッシベーション層6を設けている場合にはパッシベーション層6を覆うように組成物(X)を成形する。有機EL素子4の形成と組成物(X)の塗布のいずれにもインクジェット法を適用すれば、有機EL発光装置1の製造効率を特に向上できる。
【0109】
次に、透明基板3を組成物(X)に重ねる。透明基板3は、例えばガラス製基板又は透明樹脂製基板である。
【0110】
次に外部から透明基板3へ向けて紫外線を照射する。紫外線は透明基板3を透過して組成物(X)へ到達する。これにより、組成物(X)内でラジカル重合反応が進行して組成物(X)が硬化し、硬化物からなる封止材5が作製される。封止材5の厚みは例えば5μm以上50μm以下である。
【0111】
なお、組成物(X)をインクジェット法以外の方法で成形してもよく、例えばキャスティング法で成形してもよい。
【0112】
図2に示す第二例の有機EL発光装置1の作製方法について説明する。
【0113】
まず、支持基板2を準備する。この支持基板2の一面上に隔壁7を、例えば感光性の樹脂材料を用いてフォトグラフィ法で作製する。続いて、支持基板2の一面上に複数の有機EL素子4を設ける。有機EL素子4は、蒸着法、塗布法といった適宜の方法で作製できる。特に有機EL素子4を、インクジェット法といった塗布法で作製することが好ましい。これにより、支持基板2に素子アレイ9を作製する。
【0114】
次に、素子アレイ9の上に第一パッシベーション層61を設ける。第一パッシベーション層61は、例えばプラズマCVD法といった蒸着法で作製できる。
【0115】
次に、第一パッシベーション層61の上に組成物(X)を、例えばインクジェット法で成形して、塗膜を作製する。有機EL素子4の形成と組成物(X)の塗布のいずれにもインクジェット法を適用すれば、有機EL発光装置1の製造効率を特に向上できる。続いて、塗膜に紫外線を照射することで硬化させて、封止材5を作製する。封止材5の厚みは例えば5μm以上50μm以下である。
【0116】
次に、封止材5の上に第二パッシベーション層62を設ける。第二パッシベーション層62は、例えばプラズマCVD法といった蒸着法で作製できる。
【0117】
次に、支持基板2の一面上に、第二パッシベーション層62を覆うように、紫外線硬化性の樹脂材料を設けてから、この樹脂材料に透明基板3を重ねる。透明基板3は、例えばガラス製基板又は透明樹脂製基板である。
【0118】
次に外部から透明基板3へ向けて紫外線を照射する。紫外線は透明基板3を透過して紫外線硬化性の樹脂材料へ到達する。これにより、紫外線硬化性の樹脂材料が硬化し、第二封止材52が作製される。
【実施例
【0119】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、本発明は実施例のみに制限されない。
【0120】
1.組成物の調製
下記表に示す成分を混合することで、実施例及び比較例の組成物を調製した。なお、表中示される成分の詳細は次のとおりである。
・テトラエチレングリコールジアクリレート:大阪有機化学製、品番TEGDA。
・ポリテトラメチレングリコール#650ジアクリレート:新中村化学製、品番A-PTMG-65。
・4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル:日本化成製、品番4HBAGE。
・アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル:日本触媒製、品番VEEA。
・3-エチルー3メタクリルオキシメチルオキセタン:宇部興産製、品番ETERNACOLL OXMA。
・3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート:ダイセル製、品番M100。
・2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド:BASF製、品名ルシリンTPO。
・吸湿剤1:
吸湿剤1は、下記の方法で製造され、D50が60nm、D90が110nm、pHが10であるゼオライト粒子である。
【0121】
出発物質のゼオライト粉として平均粒径5μmの4A型ゼオライト・ナトリウムイオンを用意し、このゼオライト粉100gとイオン交換水100gとを混合してスラリーを調製した。このスラリー中のゼオライト粉を、ジルコニアビーズを用いてビーズミル粉砕機で粉砕してから、スラリーを180℃の温度下で2~3時間放置することで、微粉砕されたゼオライト粉を得た。このゼオライト粉を乳鉢で解砕してから、メッシュを通過させることで粒径を整えることで、吸湿剤1を得た。
【0122】
なお、吸湿剤のpHは次の方法で測定した。ポリエチレン製の瓶に吸湿剤0.05gとイオン交換水99.95gとを入れてから、瓶を恒温槽に入れて、90℃で24時間加熱した。続いて、瓶の中の液の上澄みのpHを、堀場製作所製のコンパクトpHメータ<LAQUAtwin>B-711を用いて測定した。
・吸湿剤2:
吸湿剤2は、下記の方法で製造され、D50が150nm、D90が250nm、pHが10であるゼオライト粒子である。
【0123】
出発物質のゼオライト粉として平均粒径5μmの4A型ゼオライト・ナトリウムイオンを用意し、このゼオライト粉100gとイオン交換水100gとを混合してスラリーを調製した。このスラリー中のゼオライト粉を、ゼオライト粒子1の場合に準じた方法で、平均粒径が150nmになるように粉砕した。
【0124】
続いて、スラリーを、180℃の温度下で2~3時間放置することで、微粉砕されたゼオライト粉を得た。このゼオライト粉を乳鉢で解砕してから、メッシュを通過させることで粒径を整えることで、吸湿剤2を得た。
【0125】
2.評価試験
実施例及び比較例について、次の評価試験を実施した。その結果を表に示す。
【0126】
(1)粘度
組成物の粘度を、レオメータ(アントンパール・ジャパン社製、型番DHR-2)を使用し、温度25℃、せん断速度1000s-1の条件で測定した。
【0127】
(2)密着性
組成物を、スピンコーターを用いて、無アルカリガラス(旭硝子社製、「AN100」)上に10μmの厚みに塗布し、パナソニック電工株式会社製のLED-UV照射器(ピーク波長365nm)を用いて紫外線を積算光量3000mJ/cm2の条件で照射して硬化させ、硬化物を得た。硬化物に、JIS K 5600-5-6に従い、切込み間隔1mmのクロスカット試験を行った。クロスカット試験を行った際の、剥がれが0%であった場合を「A」、剥がれが0%を超え10%以下であった場合を「B」、剥がれが10%を超えた場合を「C」と評価した。
【0128】
(3)アウトガス評価
組成物の硬化物を加熱した場合のアウトガスをヘッドスペース法でサンプリングしてガスクロマトグラフにより測定した。ヘッドスペース用バイアルに組成物を100mg入れ、組成物に、パナソニック電工株式会社製のLED-UV照射器(ピーク波長365nm)を用いて紫外線を積算光量1500mJ/cm2の条件で照射して組成物を硬化させた後、バイアルを封止し、100℃で100時間加熱してから、バイアル中の気相部分をガスクロマトグラフに導入して分析した。その結果、硬化物に対する、硬化物から発生したガスの質量百万分率が300ppm以下であった場合を「A」、300ppmを超え500ppm未満であった場合を「B」、500ppm以上であった場合を「C」と評価した。
【0129】
(4)有機EL素子の発光性能
ガラス基板(長さ25mm、幅25mm、厚さ0.7mm)の上に、厚み1000ÅのITOの層を作製した。このITOの層を洗浄してからオゾン処理を施した。続いて、ITOの層の10mm×10mmの部分の上に、真空蒸着法で、厚み60nmのα-NPDの層、厚み60nmのAlq3の層、厚み0.5nmのフッ化リチウムの層、及び厚み100nmのアルミニウムの層を、順次作製した。これにより、ガラス基板上に有機EL素子を作製した。この有機EL素子を覆う厚み約1μmの窒化ケイ素の層(第一パッシベーション層)を、プラズマCVD法で作製した。第一パッシベーション層の上に組成物を、インクジェットプリンター(マイクロジェット社製、「NanoPrinter300」)を用いて吐出してから、パナソニック電工株式会社製のLED-UV照射器(ピーク波長365nm)を用いて紫外線を積算光量3000mJ/cm2の条件で照射して、封止材を作製した。この封止材を覆う厚み約1μmの窒化ケイ素の層(第二パッシベーション層)を、プラズマCVD法で作製した。以上により、サンプルを製造した。
【0130】
このサンプルを85℃、85%RHの条件下に100時間暴露してから、サンプルにおける有機EL素子に3Vの電圧を印加して発光させた。発光中の有機EL素子を目視で観察した。その結果、ダークスポット及び周辺消光が認められず有機EL素子が均一に発光している場合を「A」、ダークスポットと周辺消光の少なくとも一方が認められた場合を「B」、有機EL素子に発光していない部分が顕著に認められた場合を「C」と評価した。
【0131】
(5)光透過率
組成物を塗布して塗膜を作製し、この塗膜を、パナソニック電工株式会社製のLED-UV照射器(ピーク波長365nm)を用いて、約200mW/cm2の条件で7秒間紫外線照射して光硬化させることで、厚み10μmのフィルムを作製した。このフィルムの、波長400nmの光の透過率を測定した。
【0132】
【表1】
図1
図2