(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/536 20210101AFI20230414BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20230414BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20230414BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20230414BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20230414BHJP
【FI】
H01M50/536
H01M50/533
H01M10/04 W
H01G11/06
H01G11/74
(21)【出願番号】P 2018234545
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 東吾
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-283824(JP,A)
【文献】特開平09-092335(JP,A)
【文献】特開2002-100342(JP,A)
【文献】特開2007-242362(JP,A)
【文献】特開2013-051057(JP,A)
【文献】特開平11-312532(JP,A)
【文献】特開平11-312510(JP,A)
【文献】特開2012-248466(JP,A)
【文献】特開2012-174439(JP,A)
【文献】特開2012-160282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 10/04
H01M 10/05
H01G 11/06
H01G 11/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1芯材および前記第1芯材に担持された第1材料層を具備する第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に介在するセパレータと、
電解質と、
前記第1芯材と電気的に接続された第1集電部材と、を具備し、
前記第1電極、前記第2電極および前記セパレータは、巻回体を構成しており、
前記第1芯材の長手方向に沿う端部に第1芯材露出部を有し、
前記第1芯材露出部は、前記巻回体の一方の端面から突出するとともに前記第1集電部材と抵抗溶接もしくはスポット溶接され、
前記第1集電部材は、第1内周側面と第1外周側面とを有し、
前記第1芯材露出部は、前記第1集電部材の前記第1内周側面と抵抗溶接もしくはスポット溶接される第1内周溶接部および前記第1外周側面と抵抗溶接もしくはスポット溶接される第1外周溶接部の少なくとも一方を有する、電気化学デバイス。
【請求項2】
前記第1内周側面および前記第1外周側面の少なくとも一方が、連続的な曲面である、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記第1集電部材が、リング状である、請求項2に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記第1内周側面および前記第1外周側面の少なくとも一方が、複数の平坦面を有する、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記第1内周側面および前記第1外周側面の少なくとも一方を前記巻回体の軸方向から見たときの形状が、多角形状である、請求項4に記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
前記第1芯材露出部は、前記第1内周溶接部だけを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
前記第1内周溶接部の外側における前記第1芯材露出部の露出幅は、前記第1内周溶接部における前記第1芯材露出部の露出幅よりも小さい、請求項6に記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
前記第1芯材露出部は、前記第1外周溶接部だけを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項9】
前記第1外周溶接部の内側における前記第1芯材露出部の露出幅は、前記第1外周溶接部における前記第1芯材露出部の露出幅よりも小さい、請求項8に記載の電気化学デバイス。
【請求項10】
前記第1芯材露出部は、前記第1内周溶接部と前記第1外周溶接部とを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項11】
前記第1内周溶接部より外側かつ前記第1外周溶接部より内側において、前記第1芯材露出部の露出幅が前記第1内周溶接部および前記第1外周溶接部よりも小さい、請求項10に記載の電気化学デバイス。
【請求項12】
前記第1内周溶接部の少なくとも一部および/または前記第1外周溶接部の少なくとも一部において、前記第1芯材露出部が、前記巻回体の軸方向に沿う切れ目を少なくとも1つ有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項13】
更に、第2集電部材を具備し、
前記第2電極は、第2芯材および前記第2芯材に担持された第2材料層を具備し、
前記第2芯材の長手方向に沿う端部に第2芯材露出部を有し、
前記第2芯材露出部は、前記巻回体の他方の端面から突出するとともに前記第2集電部材と溶接され、
前記第2集電部材は、第2内周側面と第2外周側面とを有し、
前記第2芯材露出部は、前記第2集電部材の前記第2内周側面と溶接される第2内周溶接部および前記第2外周側面と溶接される第2外周溶接部の少なくとも一方を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項14】
前記第2内周側面および前記第2外周側面の少なくとも一方が、連続的な曲面である、請求項13に記載の電気化学デバイス。
【請求項15】
前記第2集電部材が、リング状である、請求項14に記載の電気化学デバイス。
【請求項16】
前記第2内周側面および前記第2外周側面の少なくとも一方が、複数の平坦面を有する、請求項13に記載の電気化学デバイス。
【請求項17】
前記第2内周側面および前記第2外周側面の少なくとも一方を前記巻回体の軸方向から見たときの形状が、多角形状である、請求項16に記載の電気化学デバイス。
【請求項18】
前記第2芯材露出部は、前記第2内周溶接部だけを有する、請求項13~17のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項19】
前記第2内周溶接部の外側における前記第2芯材露出部の露出幅は、前記第2内周溶接部における前記第2芯材露出部の露出幅よりも小さい、請求項18に記載の電気化学デバイス。
【請求項20】
前記第2芯材露出部は、前記第2外周溶接部だけを有する、請求項13~17のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項21】
前記第2外周溶接部の内側における前記第2芯材露出部の露出幅は、前記第2外周溶接部における前記第2芯材露出部の露出幅よりも小さい、請求項20に記載の電気化学デバイス。
【請求項22】
前記第2芯材露出部は、前記第2内周溶接部と前記第2外周溶接部とを有する、請求項13~17のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項23】
前記第2内周溶接部より外側かつ前記第2外周溶接部より内側において、前記第2芯材露出部の露出幅が前記第2内周溶接部および前記第2外周溶接部よりも小さい、請求項22に記載の電気化学デバイス。
【請求項24】
前記第2内周溶接部の少なくとも一部および/または前記第2外周溶接部の少なくとも一部において、前記第2芯材露出部が、前記巻回体の軸方向に沿う切れ目を少なくとも1つ有する、請求項13~23のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回体を具備する電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学デバイスの高出力化を達成するには、電気化学デバイスの内部抵抗を低減することが望まれる。例えば、リチウムイオンキャパシタにおいて、円盤形状を有する正極集電部材と負極集電部材を有する巻回体ユニットを用いることが提案されている。各集電部材は、正極集電体および負極集電体の露出部にレーザ溶接されている(特許文献1)。このような構造は、集電抵抗が低く、電気化学デバイスの高出力化に有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/036249号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が提案するような円盤形状の集電部材は、集電体の露出部とレーザ溶接する際、巻回体の軸方向からレーザを照射する必要がある。そのため、巻回体に向かって集電部材もしくは集電体の露出部に由来するスパッタが飛散することがある。スパッタがセパレータに付着すると、セパレータが損傷を受け得る。また、スパッタが電極に付着すると、スパッタがデンドライト析出の起点となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上に鑑み、本発明の一側面は、第1芯材および前記第1芯材に担持された第1材料層を具備する第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在するセパレータと、電解質と、前記第1芯材と電気的に接続された第1集電部材と、を具備し、前記第1電極、前記第2電極および前記セパレータは、巻回体を構成しており、前記第1芯材の長手方向に沿う端部に第1芯材露出部を有し、前記第1芯材露出部は、前記巻回体の一方の端面から突出するとともに前記第1集電部材と溶接され、前記第1集電部材は、第1内周側面と第1外周側面とを有し、前記第1芯材露出部は、前記第1集電部材の前記第1内周側面と溶接される第1内周溶接部および前記第1外周側面と溶接される第1外周溶接部の少なくとも一方を有する、電気化学デバイスに関する。
【発明の効果】
【0006】
電気化学デバイスが具備する巻回体において、第1芯材露出部と第1集電部材とを溶接する工程に起因する不具合を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電気化学デバイスに含まれる巻回体の外観を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る巻回体を構成する第1電極の一例の平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る巻回体を構成する第2電極の一例の平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る巻回体の第1芯材露出部と第1集電部材とを概念的に示す断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る電気化学デバイスに含まれる巻回体の外観を示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態に係る巻回体を構成する第1電極の一例の平面図である。
【
図7】第2実施形態に係る巻回体を構成する第2電極の一例の平面図である。
【
図8】第2実施形態に係る巻回体の第1芯材露出部と第1集電部材とを概念的に示す断面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る電気化学デバイスに含まれる巻回体の外観を示す斜視図である。
【
図10】第3実施形態に係る巻回体を構成する第1電極の一例の平面図である。
【
図11】第3実施形態に係る巻回体を構成する第2電極の一例の平面図である。
【
図12】第3実施形態に係る巻回体の第1芯材露出部と第1集電部材とを概念的に示す断面図である。
【
図14】第1集電部材の変形例を示す平面図である。
【
図15】第2実施形態に係る電気化学デバイスの構成の一例を示す縦断面図である。
【
図16】第1集電部材に第1集電タブを接続した状態の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態に係る電気化学デバイスは、第1芯材および第1芯材に担持された第1材料層を具備する第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極との間に介在するセパレータと、電解質と、第1芯材と電気的に接続された第1集電部材とを具備する。第2電極は、第2芯材および第2芯材に担持された第2材料層を具備してもよい。この場合、電気化学デバイスは、更に、第2芯材と電気的に接続された第2集電部材を具備してもよい。第1芯材および第2芯材は、それぞれ電極芯材であり、一方が正極芯材であり、他方が負極芯材である。芯材は、集電体とも称される。第1材料層および第2材料層は、それぞれ電極材料層であり、一方が正極材料層であり、他方が負極材料層である。電極材料層は、活物質層もしくは合材層とも称される。
【0009】
第1電極および第2電極は、セパレータを介して巻回されて、例えば柱状の巻回体を構成している。第1電極は、第1芯材の長手方向に沿う端部に第1芯材露出部を有する。また、第2電極も第2芯材の長手方向に沿う端部に第2芯材露出部を有してもよい。芯材露出部とは、電極芯材のうち電極材料層を具備しない領域である。
【0010】
第1芯材露出部は、巻回体の一方の端面から突出するとともに第1集電部材と溶接されている。このとき、第2芯材露出部は、巻回体の他方の端面から突出して第2集電部材と溶接されていてもよい。第1集電部材および第2集電部材の一方は正極集電部材であり、他方は負極集電部材である。
【0011】
ここで、第1集電部材は、第1内周側面と第1外周側面とを有し、第1芯材露出部は、第1内周側面と溶接される第1内周溶接部および第1外周側面と溶接される第1外周溶接部の少なくとも一方を有する。また、第2集電部材が、第2内周側面と第2外周側面とを有してもよい。このとき、第2芯材露出部は、第2集電部材の第2内周側面と溶接される第2内周溶接部および第2外周側面と溶接される第2外周溶接部の少なくとも一方を有してもよい。
【0012】
以下、第1集電部材と第2集電部材とを特に区別する必要がない場合には、単に集電部材と称し、それらの第1または第2内周側面および第1または第2外周側面も単に内周側面および外周側面と称することがある。また、第1芯材露出部と第2芯材露出部とを特に区別する必要がない場合には、単に芯材露出部と称し、第1または第2内周溶接部および第1または第2外周溶接部も単に内周溶接部および外周溶接部と称することがある。
【0013】
例えば、一実施形態においては、第1集電部材が、第1内周側面と第1外周側面とを有し、第1芯材露出部は、第1内周側面と溶接される第1内周溶接部および第1外周側面と溶接される第1外周溶接部の少なくとも一方を有する。
【0014】
別の実施形態では、第1集電部材が、第1内周側面と第1外周側面とを有し、第1芯材露出部は、第1内周側面と溶接される第1内周溶接部および第1外周側面と溶接される第1外周溶接部の少なくとも一方を有し、かつ第2集電部材も、第2内周側面と第2外周側面とを有し、第2芯材露出部は、第2内周側面と溶接される第2内周溶接部および第2外周側面と溶接される第2外周溶接部の少なくとも一方を有する。
【0015】
正極芯材は、例えば、アルミニウムもしくはアルミニウム合金により形成され、負極芯材は、例えば、銅もしくは銅合金により形成されている。
【0016】
第1集電部材および第2集電部材は、正極芯材と溶接される場合は、例えば、アルミニウムもしくはアルミニウム合金により形成され、負極芯材と溶接される場合は、例えば、銅もしくは銅合金により形成される。
【0017】
巻回体の軸方向から集電部材にレーザを照射する場合、溶接スパッタが飛散して巻回体に侵入することがある。特に銅もしくは銅合金を溶接する際には、スパッタが飛散しやすい。一方、上記構成によれば、溶接にレーザを使用する必要がなく、抵抗溶接もしくはスポット溶接が可能であり、溶接スパッタが飛散する懸念がない。
【0018】
集電部材の内周側面および外周側面の少なくとも一方は、連続的な曲面であってもよい。例えば、集電部材は、リング状であり得る。なお、集電部材は、概ね環状体を形成していればよく、一部が途切れた形状を有してもよい。例えばアルファベットのCの文字に類似した形状でもよい。
【0019】
集電部材の内周側面および外周側面の少なくとも一方が、複数の平坦面を有してもよい。例えば、内周側面および外周側面の少なくとも一方を巻回体の軸方向から見たときの形状は、多角形状であり得る。このような形状の場合も、集電部材は、概ね環状体を形成していればよく、一部が途切れた形状を有してもよい。
【0020】
芯材露出部は、内周溶接部だけを有してもよい。この場合、内周溶接部の外側において、芯材露出部の露出幅は内周溶接部よりも小さくてもよい。
【0021】
芯材露出部は、外周溶接部だけを有してもよい。この場合、外周溶接部の内側において、芯材露出部の露出幅は外周溶接部よりも小さくてもよい。
【0022】
芯材露出部は、内周溶接部と外周溶接部とを有してもよい。この場合、内周溶接部より外側かつ外周溶接部より内側において、芯材露出部の露出幅は、内周溶接部および外周溶接部よりも小さくてもよい。
【0023】
内周溶接部の少なくとも一部および/または外周溶接部の少なくとも一部において、芯材露出部が、巻回体の軸方向に沿う切れ目を少なくとも1つ有してもよい。
【0024】
芯材露出部は、体積効率と芯材露出部の強度とのバランスを考慮して、できるだけ小さく設定される。芯材露出部の露出幅は、電気化学デバイスの容量、種類等によって相違するが、例えば3~10mmの範囲内に設定される。
【0025】
集電部材の径方向における厚みは、電気化学デバイスの容量、種類等によって相違するが、例えば2~5mmの範囲内に設定される。集電部材の巻回体の軸方向における厚みは、電気化学デバイスの容量、種類等によって相違するが、例えば2~5mmの範囲内に設定される。集電部材の中空部は、電解質の通路を確保するのに役立つ。
【0026】
本発明に係る電気化学デバイスは、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層コンデンサなどの電気化学デバイスを包含するが、特にリチウムイオン二次電池とリチウムイオンキャパシタとの中間的な性質を有する正極材料に導電性高分子を用いた電気化学デバイスとして構成するのに適している。すなわち、正極材料層は、アニオンの可逆的な吸着と脱離により電気化学的な容量を発現する導電性高分子を含んでもよい。アニオンの吸着(ドープ)と脱離(脱ドープ)により充放電を行う正極材料は、反応抵抗が小さく、高出力を達成しやすい。
【0027】
以下、図面を参照しながら、電気化学デバイスの更に具体的な実施形態について説明する。
【0028】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る電気化学デバイスに含まれる巻回体の外観を示す斜視図である。
図2、3は、それぞれ本実施形態に係る巻回体を構成する第1電極および第2電極の一例の平面図である。
図4は、本実施形態に係る巻回体の第1芯材露出部と第1集電部材とを概念的に示す断面図である。
【0029】
図1は、第1芯材露出部11Axおよび第2芯材露出部21Axに第1集電部材および第2集電部材を接続する前の巻回体100Aを示している。巻回体100Aは、
図2に示すような第1電極10Aと、
図3に示すような第2電極20Aとを、セパレータ30Aを介して巻回して柱状に構成されている。巻回の際、第1芯材露出部11Axが巻回体100Aの一方の端面から突出し、第2芯材露出部21Axが巻回体100Aの他方の端面から突出するように位置合わせが成される。巻回体100Aの最外周には、セパレータ30Aが巻き付けられている。
【0030】
第1電極10Aは、長尺シート状であり、
図2に示すように、第1芯材11Aおよびこれに担持された第1材料層12Aを具備する。第1材料層12Aは、第1芯材11Aの両面に形成されている。ただし、第1芯材11Aの長手方向に沿う一方の端部には、第1材料層12Aを有さない第1芯材露出部11Axが形成されている。第1芯材露出部11Axの露出幅Wpは、巻回体100Aの内周側(すなわち巻回軸側)において大きく、外周側において小さく形成されている。
【0031】
第2電極20Aも長尺シート状であり、
図3に示すように、第2芯材21Aおよびこれに担持された第2材料層22Aを具備する。第2材料層22Aは、第2芯材21Aの両面に形成されている。ただし、第2芯材21Aの長手方向に沿う一方の端部には、第2材料層22Aを有さない第2芯材露出部21Axが形成されている。第2芯材露出部21Axの露出幅Wnは、巻回体100Aの内周側において大きく、外周側において小さく形成されている。
【0032】
第1芯材露出部11Axには、
図4に示すように、第1集電部材13Aが装着される。第1集電部材13Aは、第1内周側面131Aおよび第1外周側面132Aを有するリング状であり、第1内周側面131Aおよび第1外周側面132Aはいずれも連続的な曲面からなる円形である。第1内周側面131Aと第1外周側面132Aとを繋ぐ両端面は平坦であり、第1集電部材13Aの巻回体100Aの軸方向における厚みは一定である。
【0033】
第1電極10Aの形状に対応して、第1芯材露出部11Axは、第1内周側面131Aと溶接される第1内周溶接部111Axだけを有する。第1芯材露出部11Axの露出幅Wpに応じて、第1内周溶接部111Axの外側における第1芯材露出部11Axの露出幅(すなわち突出幅)は第1内周溶接部111Axよりも小さくなっている。そのため、第1内周溶接部111Axの外側にはリング状の凹み部があり、凹み部に嵌め込まれるように第1集電部材13Aが配置される。第1内周溶接部111Axは、第1集電部材13Aの中空部に挿入される。
【0034】
凹み部に第1集電部材13Aが配置された後、巻回体100Aの中心部に形成されている中空孔101Aから第1内周溶接部111Axに一方の溶接用電極が押し当てられ、第1集電部材13Aの第1外周側面132Aに他方の溶接用電極が押し当てられ、
図4中の矢印が示す方向に圧力を印加しながら、例えば抵抗溶接が行われる。
【0035】
図示しないが、第2芯材露出部21Axにも、同様に、第2集電部材が装着され、同様に抵抗溶接等が行われる。本実施形態では、後述の実施形態に比べて集電部材のサイズを大きくでき、集電部材と芯材露出部との接合面積を大きくできるため、集電抵抗の低減に有効である。また、集電部材のサイズに応じて集電構造が頑丈に形成され得る。
【0036】
[第2実施形態]
図5は、本実施形態に係る電気化学デバイスに含まれる巻回体の外観を示す斜視図である。
図6、7は、それぞれ本実施形態に係る巻回体を構成する第1電極および第2電極の一例の平面図である。
図8は、本実施形態に係る巻回体の第1芯材露出部と第1集電部材とを概念的に示す断面図である。
【0037】
図5は、第1芯材露出部11Bxおよび第2芯材露出部21Bxに第1集電部材および第2集電部材を接続する前の巻回体100Bを示している。巻回体100Bは、
図6に示すような第1電極10Bと、
図7に示すような第2電極20Bとを、セパレータ30Bを介して巻回して柱状に構成されている。巻回の際、第1芯材露出部11Bxが巻回体100Bの一方の端面から突出し、第2芯材露出部21Bxが巻回体100Bの他方の端面から突出するように位置合わせが成される。巻回体100Bの最外周には、セパレータ30Bが巻き付けられている。
【0038】
第1電極10Bは、長尺シート状であり、
図6に示すように、第1芯材11Bおよびこれに担持された第1材料層12Bを具備する。第1材料層12Bは、第1芯材11Bの両面に形成されている。第1芯材11Bの長手方向に沿う一方の端部には、第1材料層12Bを有さない第1芯材露出部11Bxが形成されている。第1芯材露出部11Bxの露出幅Wpは、巻回体100Bの内周側(すなわち巻回軸側)および外周側において大きく、中央領域において小さく形成されている。
【0039】
第2電極20Bも長尺シート状であり、
図7に示すように、第2芯材21Bおよびこれに担持された第2材料層22Bを具備する。第2材料層22Bは、第2芯材21Bの両面に形成されている。ただし、第2芯材21Bの長手方向に沿う一方の端部には、第2材料層22Bを有さない第2芯材露出部21Bxが形成されている。第2芯材露出部21Bxの露出幅Wnは、巻回体100Bの内周側(すなわち巻回軸側)および外周側において大きく、中央領域において小さく形成されている。
【0040】
第1芯材露出部11Bxには、
図8に示すように、第1集電部材13Bが装着される。第1集電部材13Bは、第1内周側面131Bおよび第1外周側面132Bを有するリング状であり、第1内周側面131Bおよび第1外周側面132Bはいずれも連続的な曲面からなる円形である。第1内周側面131Bと第1外周側面132Bとを繋ぐ両端面は平坦であり、第1集電部材13Bの巻回体100Bの軸方向における厚みは一定である。
【0041】
第1電極10Bの形状に対応して、第1芯材露出部11Bxは、第1内周側面131Bと溶接される第1内周溶接部111Bxと、第1外周側面132Bと溶接される第1外周溶接部112Bxとを有する。第1芯材露出部11Bxの露出幅Wpに応じて、第1内周溶接部111Bxより外側かつ第1外周溶接部112Bxより内側において、第1芯材露出部11Bxの露出幅(すなわち突出幅)は第1内周溶接部111Bxおよび第1外周溶接部112Bxよりも小さくなっている。そのため、第1内周溶接部111Bxと第1外周溶接部112Bxとの間にリング状の凹み部があり、凹み部に嵌め込まれるように第1集電部材13Bが配置される。第1内周溶接部111Bxは、第1集電部材13Bの中空部に挿入される。
【0042】
凹み部に第1集電部材13Bが配置された後、巻回体100Bの中心部に形成されている中空孔101Bから第1内周溶接部111Bxに一方の溶接用電極が押し当てられ、第1外周溶接部112Bxに外側から他方の溶接用電極が押し当てられ、
図8中の矢印が示す方向に圧力を印加しながら、例えば抵抗溶接が行われる。
【0043】
図示しないが、第2芯材露出部21Bxにも、同様に、第2集電部材が装着され、同様に抵抗溶接等が行われる。本実施形態に係る構造は、集電部材と芯材露出部との接合面積をより大きくできるため、集電抵抗の低減に有効である。また、得られる集電構造は、非常に強固であり、耐振動性に優れている。
【0044】
[第3実施形態]
図9は、本実施形態に係る電気化学デバイスに含まれる巻回体の外観を示す斜視図である。
図10、11は、それぞれ本実施形態に係る巻回体を構成する第1電極および第2電極の一例の平面図である。
図12は、本実施形態に係る巻回体の第1芯材露出部と第1集電部材とを概念的に示す断面図である。
【0045】
図9は、第1芯材露出部11Cxおよび第2芯材露出部21Cxに第1集電部材および第2集電部材を接続する前の巻回体100Cを示している。巻回体100Cは、
図10に示すような第1電極10Cと、
図11に示すような第2電極20Cとを、セパレータ30Cを介して巻回して柱状に構成されている。巻回の際、第1芯材露出部11Cxが巻回体100Cの一方の端面から突出し、第2芯材露出部21Cxが巻回体100Cの他方の端面から突出するように位置合わせが成される。巻回体100Cの最外周には、セパレータ30Cが巻き付けられている。
【0046】
第1電極10Cは、長尺シート状であり、
図10に示すように、第1芯材11Cおよびこれに担持された第1材料層12Cを具備する。第1材料層12Cは、第1芯材11Cの両面に形成されている。第1芯材11Cの長手方向に沿う一方の端部には、第1材料層12Cを有さない第1芯材露出部11Cxが形成されている。第1芯材露出部11Cxの露出幅Wpは、巻回体100Cの外周側において大きく、内周側(すなわち巻回軸側)において小さく形成されている。
【0047】
第2電極20Cも長尺シート状であり、
図11に示すように、第2芯材21Cおよびこれに担持された第2材料層22Cを具備する。第2材料層22Cは、第2芯材21Cの両面に形成されている。ただし、第2芯材21Cの長手方向に沿う一方の端部には、第2材料層22Cを有さない第2芯材露出部21Cxが形成されている。第2芯材露出部21Cxの露出幅Wnは、巻回体100Cの外周側において大きく、内周側において小さく形成されている。
【0048】
第1芯材露出部11Cxには、
図12に示すように、第1集電部材13Cが装着される。第1集電部材13Cは、第1内周側面131Cおよび第1外周側面132Cを有するリング状であり、第1内周側面131Cおよび第1外周側面132Cはいずれも連続的な曲面からなる円形である。第1内周側面131Cと第1外周側面132Cとを繋ぐ両端面は平坦であり、第1集電部材13Cの巻回体100Cの軸方向における厚みは一定である。
【0049】
第1電極10Cの形状に対応して、第1芯材露出部11Cxは、第1外周側面132Cと溶接される第1外周溶接部112Cxだけを有する。第1芯材露出部11Cxの露出幅Wpに応じて、第1外周溶接部112Cxの内側における第1芯材露出部11Cxの露出幅(すなわち突出幅)は第1外周溶接部112Cxよりも小さくなっている。そのため、第1外周溶接部112Cxの内側には円形の凹み部があり、凹み部に嵌め込まれるように第1集電部材13Cが配置される。
【0050】
凹み部に第1集電部材13Cが配置された後、巻回体100Cの中心部に形成されている中空孔101Cから第1内周側面131Cに一方の溶接用電極が押し当てられ、第1外周溶接部112Cxに外側から他方の溶接用電極が押し当てられ、
図12中の矢印が示す方向に圧力を印加しながら、例えば抵抗溶接が行われる。
【0051】
図示しないが、第2芯材露出部21Cxにも、同様に、第2集電部材が装着され、同様に抵抗溶接等が行われる。本実施形態に係る構造は、芯材露出部の外周溶接部を内側に変形させ、集電部材に押し付けて溶接することで達成されるため、芯材露出部が拡張される箇所がなく、過剰な張力が印加されにくい。よって、芯材露出部の強度維持に有利である。
【0052】
図13は、第1電極の変形例を示す平面図である。
第1電極10Dの第1芯材露出部11Dxは第1内周溶接部111Dxおよび第1外周溶接部112Dxを有し、第1内周溶接部111Dxおよび第1外周溶接部112Dxに、それぞれ巻回体の軸方向に沿う複数の切れ目113を有する。切れ目は、一定幅を有する切り抜き(すなわちスリット)でもよい。切れ目113を有することで、第1集電部材と第1芯材露出部11Dxの第1内周溶接部111Dxおよび第1外周溶接部112Dxとを溶接する際に、第1内周溶接部111Dxおよび第1外周溶接部112Dxを第1集電部材に向けて引き寄せやすくなり、溶接の作業が容易になる。切れ目113は第1芯材露出部の各溶接部の少なくとも一部に設ければよい。
【0053】
切れ目113は、第1内周溶接部111Dxおよび第1外周溶接部112Dxのいずれか一方だけに設けてもよい。第1内周溶接部111Dxは、溶接の際に引っ張り応力を受けるため、応力を緩和する観点から、少なくとも第1内周溶接部111Dxに切れ目113を設けることが望ましい。切れ目113は、各溶接部に少なくとも1つ設ければ応力を緩和する相応の効果が得られる。
【0054】
なお、
図13は、第2実施形態に係る第1電極の変形例であるが、第1実施形態もしくは第3実施形態に係る第1電極にも同様の切れ目を設けてもよい。すなわち、第1電極の第1芯材露出部が第1内周溶接部のみ、もしくは第1外周溶接部のみを有する場合にも、各溶接部の少なくとも一部に切れ目113を設けてもよい。また、第1電極だけでなく、各実施形態に係る第2電極にも、同様の切れ目を設けてもよい。
【0055】
図14は、集電部材(すなわち中空部材)の変形例を示す平面図である。
図示例の場合、集電部材13(23)を巻回体の軸方向から見たときの形状は六角形である。このような多角形の集電部材13(23)は、内周側面131(231)および外周側面132(232)にそれぞれ複数の平坦面を有する。よって、平坦面を利用して芯材露出部の内側溶接部もしくは外側溶接部と集電部材13(23)とを溶接することができるため、溶接の作業が容易になる。
【0056】
なお、内周側面および外周側面の一方の巻回体の軸方向から見たときの形状だけを多角形状としてもよい。多角形の頂点の数は特に限定されないが、例えば5~8個の頂点を有する多角形であればよい。
【0057】
図15は、第2実施形態に係る電気化学デバイス200の構成を概略的に示している。電気化学デバイス200は、巻回体100Bと、電解質(図示せず)と、巻回体100Bおよび電解質を収容する金属製の有底の電池ケース210と、電池ケース210の開口を封口する封口板220とを具備する。封口板220の周縁部にはガスケット221が配されており、電池ケース210の開口端部をガスケット221にかしめることで電池ケース210の内部が密閉されている。
【0058】
第1集電部材13Bは、第1内周溶接部111Bxと第1外周溶接部112Bxとで挟持された状態で第1芯材露出部11xに溶接されている。第1集電部材13Bに一端側が接続された第1タブリード15の他端側は、封口板220の内面に接続されている。よって、封口板220は、第1電極10Bの外部端子として機能する。
【0059】
図16は、第1集電部材13Bに第1タブリード15を接続した状態の一例を示す平面図である。図示例では、リング状の第1集電部材13Bの中心を通るように径方向に沿って第1タブリード15が配置されており、第1集電部材13Bの一方の端面の2箇所で第1タブリード15が第1集電部材13Bに溶接されている。このように第1タブリード15と第1集電部材13Bとを接続することで集電効率が高められる。
【0060】
一方、第2集電部材14Bは、第2内周溶接部211Bxと第2外周溶接部212Bxとで挟持された状態で第2芯材露出部21xに溶接されている。第2集電部材14Bに一端側が接続された第2タブリード25の他端側は、電池ケース210の内底面に接続されている。よって、電池ケース210は、第2電極20Bの外部端子として機能する。
【0061】
以下、正極材料に導電性高分子を用い、負極材料に炭素材料を用いる電気化学デバイスを例にとって電気化学デバイスの各構成要素について更に詳細に説明する。
【0062】
(正極芯材)
正極芯材には、シート状の金属材料が用いられる。シート状の金属材料は、金属箔、金属多孔体、エッチングメタルなどであればよい。金属材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、チタンなどを用い得る。正極芯材の引っ張り弾性率は、例えば40~60MPa程度である。正極芯材の厚みは、例えば10~100μmである。正極芯材には、カーボン層を形成してもよい。カーボン層は、正極芯材と正極材料層との間に介在して、例えば、正極材料層から正極芯材への集電性を向上させる機能を有する。
【0063】
(カーボン層)
カーボン層は、例えば、正極芯材の表面に導電性炭素材料を蒸着し、もしくは、導電性炭素材料を含むカーボンペーストの塗膜を形成し、塗膜を乾燥することで形成される。カーボンペーストは、例えば、導電性炭素材料と、高分子材料と、水または有機溶媒とを含む。カーボン層の厚みは、例えば1~20μmであればよい。導電性炭素材料には、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラックなどを用い得る。中でも、カーボンブラックは、薄くて導電性に優れたカーボン層を形成し得る。高分子材料には、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)などを用い得る。
【0064】
(正極材料層)
正極材料層は、導電性高分子を含む。正極材料層は、例えば、カーボン層を備える正極芯材を導電性高分子の原料モノマーを含む反応液に浸漬し、正極芯材の存在下で原料モノマーを電解重合することにより形成される。このとき、正極芯材をアノードとして電解重合を行うことにより、導電性高分子を含む正極材料層がカーボン層を覆うように形成される。正極材料層の厚みは、電解電流密度、重合時間等により制御し得る。正極材料層の厚みは、片面あたり、例えば10~300μmである。
【0065】
導電性高分子としては、π共役系高分子が好ましい。π共役系高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリチオフェンビニレン、ポリピリジンまたはこれらの誘導体を用い得る。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。導電性高分子の重量平均分子量は、例えば1000~100000である。なお、π共役系高分子の誘導体とは、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリチオフェンビニレン、ポリピリジン等のπ共役系高分子を基本骨格とする高分子を意味する。例えば、ポリチオフェン誘導体には、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などが含まれる。
【0066】
正極材料層は、電解重合以外の方法で形成されてもよい。例えば、原料モノマーの化学重合により導電性高分子を含む正極材料層を形成してもよい。また、予め合成された導電性高分子もしくはその分散体(dispersion)を用いて正極材料層を形成してもよい。
【0067】
電解重合または化学重合で用いられる原料モノマーは、重合により導電性高分子を生成し得る重合性化合物であればよい。原料モノマーは、オリゴマ―を含んでもよい。原料モノマーとしては、例えばアニリン、ピロール、チオフェン、フラン、チオフェンビニレン、ピリジンまたはこれらの誘導体が用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。中でもアニリンは、電解重合によりカーボン層の表面に成長させやすい。
【0068】
電解重合または化学重合は、アニオン(ドーパント)を含む反応液を用いて行い得る。π電子共役系高分子にドーパントをドープすることで優れた導電性を発現される。例えば化学重合では、ドーパントと酸化剤と原料モノマーとを含む反応液に正極芯材を浸漬し、その後、反応液から引き揚げて乾燥させればよい。電解重合では、ドーパントと原料モノマーとを含む反応液に正極芯材と対向電極とを浸漬し、正極芯材をアノードとして両者の間に電流を流せばよい。
【0069】
ドーパントとしては、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、硼酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン(CF3SO3
-)、過塩素酸イオン(ClO4
-)、テトラフルオロ硼酸イオン(BF4
-)、ヘキサフルオロ燐酸イオン(PF6
-)、フルオロ硫酸イオン(FSO3
-)、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン(N(FSO2)2
-)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン(N(CF3SO2)2
-)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0070】
ドーパントは、高分子イオンであってもよい。高分子イオンとしては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸などのイオンが挙げられる。これらは単独重合体であってもよく、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0071】
(正極集電板)
正極集電板は、概ね円盤状の金属板である。正極集電板の中央部には非水電解質の通路となる貫通孔を形成することが好ましい。正極集電板の材質は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、ステンレス鋼などである。正極集電板の材質は、正極芯材の材質と同じでもよい。
【0072】
(負極芯材)
負極芯材にもシート状の金属材料が用いられる。シート状の金属材料は、金属箔、金属多孔体、エッチングメタルなどであればよい。金属材料としては、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼などを用い得る。負極芯材の引っ張り弾性率は、例えば180~350MPaである。負極芯材の厚みは、正極芯材の厚みよりも小さく、例えば10~100μmである。
【0073】
負極材料層は、負極活物質として、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出する材料を備える。負極活物質としては、炭素材料、金属化合物、合金、セラミックス材料などが挙げられる。炭素材料としては、黒鉛、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)が好ましく、特に黒鉛やハードカーボンが好ましい。金属化合物としては、ケイ素酸化物、錫酸化物などが挙げられる。合金としては、ケイ素合金、錫合金などが挙げられる。セラミックス材料としては、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0074】
負極材料層には、負極活物質の他に、導電剤、結着剤などを含ませ得る。導電剤としては、カーボンブラック、炭素繊維などが挙げられる。結着剤としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ゴム材料、セルロース誘導体などが挙げられる。
【0075】
負極材料層は、例えば、負極活物質と、導電剤および結着剤などとを、分散媒とともに混合して負極合剤ペーストを調製し、負極合剤ペーストを負極集電体に塗布した後、乾燥することにより形成される。負極材料層の厚みは、片面あたり、例えば10~300μmである。
【0076】
負極材料層には、予めリチウムイオンをプレドープすることが望ましい。これにより、負極の電位が低下するため、正極と負極の電位差(すなわち電圧)が大きくなり、電気化学デバイスのエネルギー密度が向上する。
【0077】
リチウムイオンの負極材料層へのプレドープは、例えば、金属リチウム膜を負極材料層の表面に形成し、金属リチウム膜を有する負極をリチウムイオン伝導性電解液(例えば、非水電解質)に含浸させることにより進行する。このとき、金属リチウム膜からリチウムイオンが非水電解質中に溶出し、負極材料層に吸蔵される。
【0078】
(負極集電板)
負極集電板は、概ね円盤状の金属板である。負極集電板の材質は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼などである。負極集電板の材質は、負極芯材の材質と同じでもよい。
【0079】
(セパレータ)
セパレータとしては、セルロース繊維製の不織布、ガラス繊維製の不織布、ポリオレフィン製の微多孔膜、織布もしくは不織布などを用い得る。セパレータの厚みは、例えば10~300μmであり、10~40μmが好ましい。
【0080】
(非水電解質)
非水電解質は、リチウムイオン伝導性を有し、リチウム塩と、リチウム塩を溶解させる非水溶媒とを含む。リチウム塩のアニオンは、正極へのドープと脱ドープとを可逆的に繰り返すことが可能である。リチウム塩に由来するリチウムイオンは、可逆的に負極に吸蔵および放出される。
【0081】
リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiFSO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl4、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。充電状態(充電率(SOC)90~100%)における非水電解質中のリチウム塩の濃度は、例えば0.2~5mol/Lである。
【0082】
非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン類、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-プロパンサルトンなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0083】
非水電解質に、必要に応じて、種々の添加剤を含ませてもよい。例えば、負極表面にリチウムイオン伝導性の被膜を形成する添加剤として、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネートなどの不飽和カーボネートを添加してもよい。
【0084】
(電池ケース)
電池ケースの材質は、特に限定されないが、例えば鋼板が用いられる。鋼板にはニッケルめっきを施すことが好ましい。鋼板の具体的種類としては、例えばJIS G3141に準拠したSPCC、SPCD、SPCE等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係る電気化学デバイスは、例えば、携帯電子機器の電源、車載用電源等として好適である。
【符号の説明】
【0086】
100A、100B、100C:巻回体
101A、101B、101C:中空孔
10A、10B、10C:第1電極
11A、11B、11C:第1芯材
11Ax、11Bx、11Cx:第1芯材露出部
111Ax、111Bx:第1内周溶接部
112Bx、112Cx:第1外周溶接部
113:切れ目
12A、12B、12C:第1材料層
13A、13B、13C:第1集電部材
131、131A、131B、131C:第1内周側面、
132、132A、132B、132C:第2外周側面
15:第1タブリード
20A、20B、20C:第2電極
21A、21B、21C:第2芯材
21Ax、21Bx、21Cx:第2芯材露出部
211Ax、211Bx:第2内周溶接部
212Bx、212Cx:第2外周溶接部
22:第2材料層
23B:第2集電部材
231:第2内周側面、
232:第2外周側面
25:第2タブリード
30A、30B、30C:セパレータ
200:電気化学デバイス
210:電池ケース
220:封口板
221:ガスケット