(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】電動工具、及び電池パック
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20230414BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20230414BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230414BHJP
【FI】
B25F5/00 H
B25F5/02
H01M10/0562
(21)【出願番号】P 2019179571
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】無類井 格
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-183874(JP,A)
【文献】国際公開第2019/013032(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B25F 5/02
H01M 10/0562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を取り付けるための工具取付部、前記工具を駆動するための駆動部、及び前記駆動部の駆動力を前記工具に伝達する伝達部を有する本体部と、
前記本体部に設けられてユーザが手で握る握り部位を含むグリップ部と、
前記グリップ部における前記本体部と反対側の端部に少なくとも一部が配置されて、前記駆動部に電力を供給する電池パックと、を備え、
前記電池パックは、
前記グリップ部に取り付けられた状態で前記駆動部に電気的に接続される接続端子部と、
前記接続端子部に電気的に接続された
複数の全固体電池を有する蓄電部と、を有
し、
前記複数の全固体電池は、積層方向に沿って積層されており、
前記積層方向は、前記グリップ部において前記握り部位を間にした両側の端部を結ぶ方向に沿っている
電動工具。
【請求項2】
前記電池パックは、前記グリップ部に対して着脱可能である、
請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記グリップ部において前記握り部位を間にした両側の端部のうち、一方の端部には前記本体部が接続され、他方の端部には前記電池パックが取り付けられている、
請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記グリップ部に重心がある、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項5】
前記グリップ部をユーザが握った状態で、前記グリップ部において前記ユーザの小指に近い端部に前記電池パックが取り付けられる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電動工具に用いる前記電池パックであって、
前記蓄電部を収容する電池ケースを備える、
電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動工具、及び電池パックに関する。より詳細には、本開示は、電池を電源とする電動工具、及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、回転工具(電動工具)を開示する。この回転工具のハウジングは、モータ及びモータによって回転駆動される駆動部を収容するシリンダー部(本体部)と、シリンダー部から突設されるグリップ部とで構成される。グリップ部には、回転工具の電源となる電池パックが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような回転工具において、電池パックの高容量化によって電池パックが重たくなると、回転工具の重心が電池パックよりに移動するため、作業時にグリップ部を持つ手に加わる反動が大きくなり、使用性が低下する可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、使用性の向上を図ることが可能な電動工具、及び電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の電動工具は、本体部と、グリップ部と、電池パックと、を備える。前記本体部は、工具を取り付けるための工具取付部、前記工具を駆動するための駆動部、及び前記駆動部の駆動力を前記工具に伝達する伝達部を有する。前記グリップ部は、前記本体部に設けられてユーザが手で握る握り部位を含む。前記電池パックは、前記グリップ部における前記本体部と反対側の端部に少なくとも一部が配置されて、前記駆動部に電力を供給する。前記電池パックは、前記グリップ部に取り付けられた状態で前記駆動部に電気的に接続される接続端子部と、蓄電部と、を有する。前記蓄電部は、前記接続端子部に電気的に接続された複数の全固体電池を有する。前記複数の全固体電池は、積層方向に沿って積層されている。前記積層方向は、前記グリップ部において前記握り部位を間にした両側の端部を結ぶ方向に沿っている。
【0007】
本開示の一態様の電池パックは、上記の電動工具に用いる前記電池パックであって、前記蓄電部を収容する電池ケースを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、使用性の向上を図ることが可能な電動工具、及び電池パックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る電動工具の側面図である。
【
図2】
図2は、同上の電動工具の使用状態を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、同上の電動工具のグリップ部に電池パックを取り付ける前の状態の側面図である。
【
図4】
図4は、同上の電動工具の要部の斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の電動工具の使用状態を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、同上の電動工具が備える電池パックの斜視図である。
【
図7】
図7は、同上の電動工具が備える別の電池パックの側面図である。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態の変形例に係る電動工具の斜視図である。
【
図9】
図9は、同上の電動工具のグリップ部に電池パックを取り付ける前の状態の斜視図である。
【
図10】
図10は、同上の電動工具をストレート型に変形させた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態に係る電動工具1は、
図1~
図3に示すように、手持ち型の電動工具であり、例えば、電動ドライバ、電動ドリル、電動レンチ及び電動グラインダ等が挙げられる。
【0011】
電動工具1は、本体部10と、グリップ部20と、電池パック30と、を備える。
【0012】
本体部10は、工具40を取り付けるための工具取付部11、工具40を駆動するための駆動部12、及び駆動部12の駆動力を工具40に伝達する伝達部13を有する。
【0013】
グリップ部20は、本体部10に設けられてユーザが手で握る握り部位21を含む。
【0014】
電池パック30は、グリップ部20における本体部10と反対側の端部202に少なくとも一部が配置されて、駆動部12に電力を供給する。電池パック30は、グリップ部20に取り付けられた状態で駆動部12に電気的に接続される接続端子部33と、蓄電部36と、を有する。蓄電部36は、接続端子部33に電気的に接続された全固体電池35を有する。
【0015】
電池パック30は、容量が同じであればリチウムイオン電池等の液体電池に比べて軽量な全固体電池35を有しているので、電池パック30を高容量化した場合でも電動工具1の重心の位置が電池パック30側に移動しにくくなる。したがって、電池パック30を高容量化した場合でも、電動工具1の重心をグリップ部20に保ちやすくなるので、電動工具1の重心がグリップ部20の外側にある場合に比べて、作業時にグリップ部20を持つ手に加わる反動を低減できる。したがって、電動工具1の取り扱いがしやすくなり、使用性の向上を図ることが可能な電動工具1を提供することができる。なお、全固体電池35は、陽極と陰極との間でのイオンの伝導を固体電解質が担う電池であり、液体電池を用いる場合に比べて電解液の液漏れが発生する可能性を低減でき、安全性の向上を図ることが可能な電動工具1を提供することができる。
【0016】
上記の電動工具1が備える電池パック30は、全固体電池35を収容する電池ケース31を備えている。
【0017】
電池パック30は、容量が同じであればリチウムイオン電池等の液体電池に比べて軽量な全固体電池35を有しているので、電池パック30を高容量化した場合でも電動工具1の重心の位置が電池パック30側に移動しにくくなる。したがって、電池パック30を高容量化した場合でも、電動工具1の重心をグリップ部20に保ちやすくなるので、電動工具1の重心がグリップ部20の外側にある場合に比べて、作業時にグリップ部20を持つ手に加わる反動を低減できる。したがって、電動工具1の取り扱いがしやすくなり、電動工具1の使用性の向上を図ることが可能な電池パック30を提供することができる。
【0018】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る電動工具の構成について、
図1~
図7を参照して、詳細に説明する。以下に示す、数値、形状、材料、構成要素の位置、複数の構成要素間の位置関係及び接続関係等は、一例であって、本開示を限定する主旨ではない。また、以下で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、以下の説明では、
図1、
図3及び
図6におけるX軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向と規定し、
図6におけるY軸方向を左右方向と規定する。さらに、X軸方向の正の向きを前側、Y軸方向の正の向きを右側、Z軸方向の正の向きを上側と規定する。ただし、これらの方向は一例であり、電動工具1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印等は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0019】
電動工具1は、
図1~
図7に示すように、本体部10と、グリップ部20と、電池パック30と、を備える。本実施形態では、本体部10とグリップ部20とは一体的に設けられており、本体部10とグリップ部20とで工具本体50が構成される。
【0020】
(2.1)工具本体
まず、本体部10とグリップ部20とで構成される工具本体50について説明する。
【0021】
本体部10は、例えば、電気的な絶縁性を有する合成樹脂の成形品である。本体部10は前後方向に延びる筒状に形成されている。
【0022】
本体部10の前側の端部には、先端工具のような工具40を取り付けるための工具取付部11が設けられている。本体部10の内部には、上述した駆動部12及び伝達部13が収容されている。
【0023】
工具取付部11は、前後方向に沿った回転軸を中心として回転可能な状態で本体部10に設けられている。電動工具1を用いる複数種類の作業に合わせて複数種類の工具40が用意されており、所望の種類の工具40が工具取付部11に取り付けられて使用される。この種の工具40としては、ねじ締め作業のためのドライバービット、穴開け加工のためのドリルビット、ナットを締め付けるためのソケット等がある。
【0024】
駆動部12は、電池パック30から供給される電力で駆動される電動モータを備える。
【0025】
伝達部13は、駆動部12の駆動力を工具取付部11に伝達する。伝達部13は、駆動部12の出力軸と連結されており、駆動部12の回転を工具取付部11に伝達することによって工具取付部11を回転させる。なお、伝達部13は、減速機構、クラッチ機構、インパクト機構等を含んでいてもよい。
【0026】
グリップ部20は、本体部10の周面の一部から下向きに延びている。グリップ部20の長手方向は上下方向に沿っており、グリップ部20の上下方向(長手方向)の中間部には、ユーザの手110(
図2参照)で握られる握り部位21が設けられている。グリップ部20において線L1(
図1参照)で囲まれた部位が握り部位21となる。グリップ部20において握り部位21の両側の端部201,202のうち、一方(上側)の端部201は本体部10に接続されており、他方(下側)の端部202には電池パック30を取り付けるための電池取付部22が設けられている。
【0027】
グリップ部20における握り部位21の前側には、本体部10と接続される端部201寄りの部位に、トリガ23が設けられている。トリガ23は、駆動部12の回転を制御するために、ユーザからの操作を受け付ける操作部である。トリガ23は、グリップ部20を持つ手110の人差し指等で操作される。
【0028】
電池取付部22は、グリップ部20の下側の端部202に一体的に設けられている。電池取付部22は、グリップ部20の下側の端部202から上下方向と直交する方向に突出するように形成されている。電池取付部22は、前後方向及び左右方向の寸法に比べて上下方向の寸法が小さい箱形に形成されている。この電池取付部22の下部には、電池パック30が着脱可能に取り付けられる。電池取付部22の下面には、電池パック30の上部が挿入される凹部が設けられている。つまり、本実施形態では、グリップ部20において握り部位21を間にした両側の端部201,202のうち、一方の端部201には本体部10が接続され、他方の端部202には電池パック30が取り付けられている。
【0029】
本実施形態では、電池取付部22の内部に、駆動部12を制御するための回路等が実装された回路基板を有する制御部14(
図1参照)が収容されている。制御部14は、トリガ23を引く操作によって、駆動部12のオン/オフを切替可能である。また、制御部14は、トリガ23を引き込む操作の操作量で、駆動部12の回転速度、つまり工具取付部11に取り付けられた工具40の回転速度を制御する。
【0030】
また、電池取付部22には、例えば、電動工具1を使用するユーザ100の作業用ベルト120(
図5参照)等から電動工具1を吊り下げるための吊り下げ具25(
図4参照)が取り付けられている。吊り下げ具25は、電池取付部22の側面に設けられた孔24内に挿入された状態でねじ等を用いて電池取付部22に固定される固定部251と、固定部251に一方の端部が連結されているU字形のフック部252とを備える。ユーザ100は例えばフック部252を作業用ベルト120に引っ掛けることで、電動工具1を作業用ベルト120から吊り下げた状態で移動したり、電動工具1を用いる作業以外の作業を行ったりすることができる。
【0031】
また、
図5に示すように電動工具1を作業用ベルト120から吊り下げている場合に、吊り下げ具25が作業用ベルト120から外れて電動工具1が落下した場合、電池パック30に落下衝撃が加わる可能性がある。本実施形態では、電池パック30は全固体電池35からなる蓄電部36を備えているので、電池パック30が液体電池を備えている場合のように液漏れが発生する可能性を低減でき、安全性の向上を図ることができる。
【0032】
なお、本実施形態では吊り下げ具25がグリップ部20に設けられているが、吊り下げ具25は本体部10に取り付けられていてもよい。すなわち、電動工具1は、本体部10及びグリップ部20の少なくとも一方に取り付けられて、対象物から電動工具1を吊り下げるための吊り下げ具25を更に備えてもよく、電動工具1を対象物から吊り下げた状態で保持することができる。
【0033】
(2.2)電池パック
電動工具1の電源である電池パック30について
図1~
図7を参照して説明する。
【0034】
電池パック30は電動工具1が動作するための電源となる。電池パック30は、全固体電池35を有する蓄電部36と、蓄電部36を収容する電池ケース31と、を備える。電池ケース31は、電気的な絶縁性を有する合成樹脂の成型品であり、箱状に形成されている。
【0035】
電池ケース31の上部には、
図6に示すように、左右方向の中央部に、左右方向の両側部に比べて一段高くなった台状の嵌合部32が設けられている。嵌合部32の前側には3本のスリット321が左右方向に間隔を開けて設けられている。各スリット321は、嵌合部32の前面と上面とにそれぞれ開口しており、前後方向に沿って延びている。各スリット321の内部には、グリップ部20の下部に設けられた給電用の接続端子と電気的に接続される接続端子部33が配置されている。各接続端子部33は、電池ケース31の内部に収容された蓄電部36と電気的に接続されている。また、嵌合部32の上面には、グリップ部20の下部に設けられた信号用の第1コネクタに電気的に接続される第2コネクタ34が配置されている。第2コネクタ34は、電池ケース31の内部に収容された回路基板39(
図1参照)等に電気的に接続されている。回路基板39は、電池パック30の情報(例えば蓄電部36の電圧値、温度等)を示す電池情報を取得し、電池取付部22内に配置されている制御部14に対して出力する。また、嵌合部32の左右の側面には、電池取付部22の下面の凹部内に設けられた複数の引掛片26(
図4参照)がそれぞれ挿入される複数の挿入溝37が設けられている。
【0036】
ここで、電池取付部22に電池パック30を取り付ける場合、
図3に示すように、電池パック30の上側から工具本体50を下向き(
図3の矢印A1の向き)に移動させることによって、電池取付部22の下面の凹部内に電池パック30の嵌合部32を挿入させる。その後、工具本体50を電池パック30に対して前側(
図3の矢印A2の向き)にスライド移動させると、電池取付部22の引掛片26が挿入溝37に挿入される。複数の挿入溝37のうち最も前側にある挿入溝37の後側にはロック片38が配置されている。ロック片38は、ばね等の弾性部材で上向きに押されており、電池パック30を電池取付部22に取り付ける場合には引掛片26に押されて下向きに沈むので、引掛片26は挿入溝37内に移動することができる。そして、引掛片26が挿入溝37の奥まで入り込むと、ロック片38がばねに押されて上側に移動し、挿入溝37の後側の開口付近に配置される。これにより、工具本体50を電池パック30に対して後側にスライド移動させようとすると、最前部の挿入溝37に挿入されている引掛片26がロック片38に接触することによって、工具本体50の後側へのスライド移動が規制される。したがって、電池パック30が電池取付部22に取り付けられた状態で保持される。
【0037】
電池パック30が電池取付部22に取り付けられた状態では、接続端子部33と電池取付部22の接続端子とが電気的に接続され、蓄電部36から制御部14及び駆動部12等に動作に必要な電力が供給される。また、第2コネクタ34と電池取付部22の第1コネクタとが電気的に接続され、電池ケース31に収容された回路基板39と制御部14とが電気的に接続され、回路基板39から制御部14に電池情報が出力される。
【0038】
一方、電池取付部22から電池パック30を取り外す際は、電池ケース31に設けられた操作部を操作することで、ロック片38を下向きに移動させ、引掛片26を挿入溝37の外側に移動可能な状態とする。この状態で、工具本体50を電池パック30に対して後側(
図3の矢印A2と逆向き)にスライド移動させ、引掛片26を挿入溝37の外側に移動させる。そして、工具本体50を電池パック30に対して上側(
図3の矢印A1と逆向き)に移動させることで、工具本体50から電池パック30を取り外すことができる。
【0039】
このように、本実施形態では、電池パック30は、グリップ部20(工具本体50)に対して着脱可能である。したがって、電池パック30の残量が低下した場合、ユーザは、グリップ部20から電池パック30を取り外し、充電済みの電池パック30をグリップ部20に付け替えることで、電動工具1を用いた作業を継続して行うことができる。
【0040】
さらに言えば、
図2に示すように、グリップ部20をユーザ100が握った状態で、グリップ部20においてユーザ100の小指111に近い端部202に電池パック30が取り付けられている。これにより、グリップ部20においてユーザ100の親指に近い側の端部201が本体部10に接続されることになり、工具40を作業対象に当てて作業を行う際に、目で狙いがつけやすくなるという利点がある。
【0041】
蓄電部36は、
図1及び
図6に示すように、それぞれシート状に形成された複数の全固体電池35で構成されている。複数の全固体電池35は、必要な電圧又は容量に応じて、直列又は並列に接続されている。本実施形態では、蓄電部36が、直列に接続された5枚の全固体電池35を含んでいるが、蓄電部36を構成する全固体電池35の数、及び接続状態(直列接続又は並列接続)は必要な電圧又は容量に応じて適宜変更が可能である。
【0042】
ここにおいて、本実施形態では、グリップ部20に電動工具1の重心P1(
図1参照)が存在するように、本体部10及び電池パック30の重量が設定されている。近年、電動モータの小型化及び高出力化に伴い、駆動部12を収容する本体部10の軽量化が図られている。一方で、作業時間を延ばすために、電池パック30の高容量化が望まれており、電池パック30の高容量化に伴って電池パック30の重量が重くなる傾向がある。このように、本体部10が軽量化する一方で電池パック30の重量が重くなると、電動工具1の重心が電池パック30側に移動する可能性がある。電動工具1の重心が電池パック30付近に存在すると、作業時にグリップ部20を持つ手110に加わる反動が大きくなる。本実施形態では、蓄電部36が、リチウムイオン電池のような液体電池に比べて軽量の全固体電池35を有しているので、蓄電部36が液体電池からなる場合に比べて、高容量化を図りながらも電池パック30の重量の増加を抑制できる。したがって、電池パック30を高容量化した場合でも、電動工具1の重心P1をグリップ部20の握り部位21に保つことができ、作業時にグリップ部20を持つ手に加わる反動を低減することで、使用性の向上を図ることができる。
【0043】
ところで、上述したようにグリップ部20において握り部位21を間にした両側の端部201,202のうち、一方の端部201には本体部10が接続され、他方の端部202には電池パック30が取り付けられている。この電動工具1では、
図1に示すように、電池パック30におけるグリップ部20と反対側の底面311を地面2(載置面)に載せた状態で、本体部10とグリップ部20と電池パック30とを含む全体(電動工具1の全体)が自立可能である。この電池パック30は、グリップ部20に取り付けられた状態で駆動部12に電気的に接続される接続端子部33と、接続端子部33に電気的に接続された蓄電部36と、を有している。蓄電部36は、シート状にそれぞれ形成された複数の全固体電池35を有し、複数の全固体電池35が積層されている。ここで、全固体電池35の積層方向と直交する方向に沿った衝撃力が蓄電部36に加わった場合、積層された複数の全固体電池35の間で剥離又は相対的な位置ずれが発生し、複数の全固体電池35の間の電気的な接続状態が不安定になる可能性がある。一方、全固体電池35の積層方向に沿った衝撃力が蓄電部36に加わった場合、積層された複数の全固体電池35の間で剥離及び相対的な位置ずれが発生しにくいので、複数の全固体電池35の間の電気的な接続状態が不安定になる可能性を低減することができる。本実施形態では、複数の全固体電池35の積層方向は、グリップ部20において握り部位21を間にした両側の端部201,202を結ぶ方向(Z軸方向)に沿っている。これにより、Z軸方向に沿った方向で蓄電部36に加わる衝撃に対して、蓄電部36が破損しにくくできる。
【0044】
さらに言えば、本実施形態では、複数の全固体電池35の積層方向は、電池パック30の底面311と直交する方向に沿っている。ここで、底面311と直交する方向とは、電動工具2が載置される載置面(例えば床面2)と直交する方向(上下方向)であり、
図1のZ軸方向である。したがって、電動工具1が載置面に勢いよく置かれた場合、複数の全固体電池35の積層方向に沿って衝撃力が加わることになるので、積層された複数の全固体電池35の間で剥離及び相対的な位置ずれが発生しにくくなる。よって、電池パック30の電気的な性能が劣化する可能性を低減することができる。
【0045】
また、電池パック30は、必要とする電圧及び容量に応じて、蓄電部36を構成する全固体電池35の数、面積及び接続状態を適宜変更可能である。蓄電部36の電圧値は、個々の全固体電池35の電圧値、及び、直列に接続される全固体電池35の数等に依存する。蓄電部36の容量は、個々の全固体電池35の面積、及び、並列に接続される全固体電池35の数等に依存する。例えば、
図7は、8枚の全固体電池35が直列に接続された蓄電部36を有する電池パック30Bの側面図である。電池パック30Bでは、上述した電池パック30に比べて、直列に接続される全固体電池35の数が多いので、満充電時の電圧が上述の電池パック30に比べて高い電圧に設定されている。なお、電池パックの種類は2種類に限定されず、電圧値と容量との少なくとも一方が異なる複数種類の電池パック30が用意されているのが好ましい。そして、複数種類の電池パック30から選択される一の電池パック30がグリップ部20(工具本体50)に取り付けられていればよく、所望の電圧値又は容量の電池パック30をグリップ部20に取り付けて使用することができる。
【0046】
また、複数の全固体電池35の各々は矩形のシート状であり、
図6に示すように、複数の全固体電池35の長手方向が、工具取付部11に取り付けられる工具40の向き(本実施形態では前後方向)に沿っている。つまり、複数の全固体電池35の各々は、長辺35AがX軸方向に沿い、短辺35BがY軸方向に沿うように配置されている。これにより、複数の全固体電池35の長辺35Aが工具40の向き(前後方向)と直交する方向に沿って配置される場合に比べ、工具40を作業対象に向けた状態で、工具40の向きと直交する方向での電池パック30の幅を小さくできる。
【0047】
(2.3)使用方法
本実施形態の電動工具1は、グリップ部20の電池取付部22に電池パック30を取り付けることによって、使用可能な状態になる。なお、工具取付部11には、ユーザ100によって所望の作業に合わせた工具40が取り付けられている。
【0048】
ユーザ100がトリガ23を引く操作を行っていない状態では、制御部14は駆動部12を停止させ、工具取付部11を回転させない。
【0049】
ユーザ100がトリガ23を引く操作を行うと、制御部14は、駆動部12を回転させ、駆動部12の回転により工具取付部11に取り付けられた工具40を回転させる。このとき、制御部14は、トリガ23を引き込む操作の操作量に基づいて、駆動部12の回転速度、つまり工具取付部11の回転速度を制御する。これにより、ユーザ100がトリガ23を引く操作を行うことで、電動工具1を用いて所望の作業を行うことができる。
【0050】
(3)変形例
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0051】
上記実施形態の電動工具1は所謂ガンタイプの工具であるが、
図8~
図10に示すようなスティックタイプの電動工具1Aでもよい。なお、スティックタイプの電動工具1Aにおいて、ガンタイプの電動工具1と共通する構成要素には同一の符号を付して、図示及び説明は省略する。
【0052】
スティックタイプの電動工具1Aは、工具取付部11が先端に設けられた筒状の本体部10Aと、握り部位21を含むグリップ部20Aとが、ヒンジ部15を介して連結されている。ここにおいて、本体部10Aとグリップ部20Aとで工具本体50Aが構成され、工具本体50Aに対して電池パック30Aが取り付けられる。
【0053】
グリップ部20Aは、本体部10Aに対してヒンジ部15を中心として回転可能に構成されている。したがって、電動工具1Aは、本体部10Aとグリップ部20Aとが直線状に延びた状態(
図10参照)と、本体部10Aに対してグリップ部20Aが所定の角度で曲がった状態(
図8参照)とのいずれかを選択して使用することができる。
【0054】
スティックタイプの電動工具1Aでは、グリップ部20Aが筒状に形成されている。
【0055】
電池パック30Aは、グリップ部20Aに取り付けられる。
図8に示すように、電池パック30Aの電池ケース31Aは、グリップ部20Aの筒内に挿入される角筒部312を有しており、角筒部312内に蓄電部36が配置されている。蓄電部36は、シート状にそれぞれ形成された複数の全固体電池35を有しており、複数の全固体電池35は例えば左右方向において積層されている。
【0056】
この電池パック30Aは、角筒部312をグリップ部20Aの筒内に挿入した状態でグリップ部20Aに取り付けられる。電池パック30Aがグリップ部20Aに取り付けられた状態では、電池パック30Aの下部がグリップ部20Aの下端から外部に露出している。すなわち、グリップ部20Aにおいて本体部10と反対側の端部202に電池パック30Aの少なくとも一部が配置されている。また、電池パック30Aがグリップ部20Aに取り付けられた状態では、電池パック30Aが有する接続端端子部が、グリップ部20Aの筒内に配置された給電用の接続端子に電気的に接続され、電池パック30Aの蓄電部36から駆動部12及び制御部14等に電力が供給される。
【0057】
なお、電動工具の形状は、ガンタイプの電動工具1、又はスティックタイプの電動工具1Aに限定されず、適宜変更が可能である。
【0058】
また、上記の実施形態及び変形例において、電池ケース31,31Aの内面と蓄電部36との間に、合成ゴム等で形成された緩衝材が配置されていてもよく、緩衝材によって蓄電部36に加わる衝撃を低減することができる。
【0059】
また、上記の実施形態及び変形例において、電池パック30は、電動工具1の構成要素であってもよいし、電動工具1の構成要素でなくてもよい。
【0060】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の電動工具(1)は、本体部(10)と、グリップ部(20)と、電池パック(30)と、を備える。本体部(10)は、工具(40)を取り付けるための工具取付部(11)、工具(40)を駆動するための駆動部(12)、及び駆動部(12)の駆動力を工具(40)に伝達する伝達部(13)を有する。グリップ部(20)は、本体部(10)に設けられてユーザ(100)が手(110)で握る握り部位(21)を含む。電池パック(30)は、グリップ部(20)における本体部(10)と反対側の端部(202)に少なくとも一部が配置されて、駆動部(12)に電力を供給する。電池パック(30)は、グリップ部(20)に取り付けられた状態で駆動部(12)に電気的に接続される接続端子部(33)と、蓄電部(36)と、を有する。蓄電部(36)は、接続端子部(33)に電気的に接続された全固体電池(35)を有する。
【0061】
この態様によれば、電池パック(30)は、容量が同じであれば液体電池に比べて軽量な全固体電池(35)を有しているので、電池パック(30)を高容量化した場合でも電動工具(1)の重心の位置が電池パック(30)側に移動しにくくなる。したがって、電池パック(30)を高容量化した場合でも、電動工具(1)の重心をグリップ部(20)に保ちやすくなるので、電動工具(1)の重心がグリップ部(20)の外側にある場合に比べて、作業時にグリップ部(20)を持つ手に加わる反動を低減できる。したがって、使用性の向上を図ることが可能な電動工具(1)を提供することができる。
【0062】
第2の態様の電動工具(1)では、第1の態様において、電池パック(30)は、グリップ部(20)に対して着脱可能である。
【0063】
この態様によれば、本体部(10)に設けられたグリップ部(20)に対して電池パック(30)を取り付けることができる。
【0064】
第3の態様の電動工具(1)では、第1又は第2の態様において、グリップ部(20)において握り部位(21)を間にした両側の端部(201,202)のうち、一方の端部(201)には本体部(10)が接続され、他方の端部(202)には電池パック(30)が取り付けられている。
【0065】
この態様によれば、グリップ部(20)の一方の端部(201)に本体部(10)が接続され、グリップ部(20)の他方の端部(202)に電池パック(30)が取り付けられた電動工具(1)を提供することができる。
【0066】
第4の態様の電動工具(1)では、第1~第3のいずれかの態様において、グリップ部(20)に重心がある。
【0067】
この態様によれば、電動工具(1)の重心がグリップ部(20)の外側にある場合に比べて、作業時にグリップ部(20)を持つ手(110)に加わる反動を低減できる。
【0068】
第5の態様の電動工具(1)では、第1~第4のいずれかの態様において、グリップ部(20)をユーザ(100)が握った状態で、グリップ部(20)においてユーザ(100)の小指(111)に近い端部(202)に電池パック(30)が取り付けられる。
【0069】
この態様によれば、グリップ部(20)においてユーザ(100)の親指に近い側の端部(201)が本体部(10)に接続されているので、工具(40)を対象物に当てて作業を行う際に、目で狙いがつけやすいという利点がある。
【0070】
第6の態様の電池パック(30)は、第1~第5のいずれかの態様の電動工具(1)に用いる電池パック(30)であって、蓄電部(36)を収容する電池ケース(31)を備える。
【0071】
この態様によれば、電池パック(30)は、容量が同じであれば液体電池に比べて軽量な全固体電池(35)を有しているので、電池パック(30)を高容量化した場合でも電動工具(1)の重心の位置が電池パック(30)側に移動しにくくなる。したがって、電池パック(30)を高容量化した場合でも、電動工具(1)の重心をグリップ部(20)に保ちやすくなるので、電動工具(1)の重心がグリップ部(20)の外側にある場合に比べて、作業時にグリップ部(20)を持つ手に加わる反動を低減できる。したがって、電動工具(1)の使用性の向上を図ることが可能な電池パック(30)を提供することができる。
【0072】
第2~第5の態様に係る構成については、電動工具(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 電動工具
10 本体部
11 工具取付部
12 駆動部
13 伝達部
20 グリップ部
21 握り部位
30 電池パック
31 電池ケース
33 接続端子部
35 全固体電池
36 蓄電部
40 工具
100 ユーザ
110 手
111 小指
201,202 端部