(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20230414BHJP
B25B 21/02 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B25B21/00 530Z
B25B21/02 G
(21)【出願番号】P 2019201817
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】植田 尊大
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-104541(JP,A)
【文献】特開2001-088053(JP,A)
【文献】特開2011-173233(JP,A)
【文献】特開2019-155533(JP,A)
【文献】特開2016-175144(JP,A)
【文献】特開2011-031369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B21/00-23/18
B25F1/00-5/02
B23P19/00-21/00
H02P1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、
前記電動機のトルクを先端工具に伝達するトルク伝達部と、
前記電動機の動作中に前記先端工具と前記先端工具による作業対象のねじとの嵌合が解除される現象であるカムアウトの予兆に伴う物理量の変化を検知するカムアウトセンサと、
前記カムアウトセンサの検知結果に基づいて前記電動機と前記トルク伝達部とのうち少なくとも一方を制御する制御部と、
前記電動機の動力に基づいて前記先端工具に作用する打撃力を発生させる打撃動作を行うインパクト機構と、を備え
、
前記カムアウトセンサは、前記先端工具が前記ねじに押し付けられる力である押付力を測定する測定部を有し、
前記制御部は、前記測定部で測定された前記押付力に基づいて前記カムアウトの予兆の有無を判定し、判定結果に基づいて前記電動機と前記トルク伝達部とのうち少なくとも一方を制御し、
前記制御部は、前記測定部で測定された前記押付力が閾値以下の場合、前記カムアウトの予兆が有ると判定し、
前記閾値は、前記インパクト機構が前記打撃動作を行っている場合と行っていない場合とで異なる値を取る、
電動工具。
【請求項2】
前記先端工具を保持し、前記電動機のトルクを前記トルク伝達部から前記先端工具に伝達する出力軸を更に備え、
前記測定部は、前記出力軸の歪みを、前記押付力に相関する物理量として測定する、
請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記トルク伝達部を保持する保持台と、
前記保持台を囲むハウジングと、を更に備え、
前記測定部は、前記保持台と前記ハウジングとの間に生じる圧力を、前記押付力に相関する物理量として測定する、
請求項1に記載の電動工具。
【請求項4】
前記電動機を囲むハウジングを更に備え、
前記測定部は、前記電動機と前記ハウジングとの間に生じる圧力を、前記押付力に相関する物理量として測定する、
請求項1に記載の電動工具。
【請求項5】
前記制御部は、前記測定部で測定された前記押付力の単位時間当たりの変化量が所定値以上の場合、前記カムアウトの予兆が有ると判定する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項6】
前記制御部は、前記カムアウトセンサの検知結果に基づいて前記カムアウトの予兆が有ると判定すると、前記電動機の回転数を低下させる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項7】
前記制御部は、前記電動機の回転数が所定範囲内となるように前記電動機の回転数を制御し、かつ、前記カムアウトセンサの検知結果に基づいて前記電動機の回転数を制御する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に電動工具に関し、より詳細には、ねじを作業対象とする電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインパクト工具(電動工具)は、モータと、駆動軸と、出力軸と、ソケット(先端工具)と、を有する。モータの回転は駆動軸を介して出力軸に伝達される。出力軸は、ソケットに連結される。ソケットは、被締め付け部材であるボルト(ねじ)の頭部やナットと嵌合する角孔を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のインパクト工具等の電動工具において、電動工具の動作中にソケット等の先端工具がボルト等のねじから外れる現象であるカムアウトが起きることがある。
【0005】
本開示は、カムアウトが起きる可能性を低減できる電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電動工具は、電動機と、トルク伝達部と、カムアウトセンサと、制御部と、インパクト機構と、を備える。前記トルク伝達部は、前記電動機のトルクを先端工具に伝達する。前記カムアウトセンサは、カムアウトの予兆に伴う物理量の変化を検知する。前記カムアウトは、前記電動機の動作中に前記先端工具とねじとの嵌合が解除される現象である。前記ねじは、前記先端工具による作業対象の部材である。前記制御部は、前記カムアウトセンサの検知結果に基づいて前記電動機と前記トルク伝達部とのうち少なくとも一方を制御する。前記インパクト機構は、前記電動機の動力に基づいて前記先端工具に作用する打撃力を発生させる打撃動作を行う。前記カムアウトセンサは、前記先端工具が前記ねじに押し付けられる力である押付力を測定する測定部を有する。前記制御部は、前記測定部で測定された前記押付力に基づいて前記カムアウトの予兆の有無を判定し、判定結果に基づいて前記電動機と前記トルク伝達部とのうち少なくとも一方を制御する。前記制御部は、前記測定部で測定された前記押付力が閾値以下の場合、前記カムアウトの予兆が有ると判定する。前記閾値は、前記インパクト機構が前記打撃動作を行っている場合と行っていない場合とで異なる値を取る。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、カムアウトが起きる可能性を低減できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電動工具の斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の電動工具の要部の斜視図である。
【
図4】
図4は、同上の電動工具の作業対象であるねじの断面図である。
【
図5】
図5は、変形例1に係る電動工具の要部の拡大断面図である。
【
図6】
図6は、変形例2に係る電動工具の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)概要
以下、実施形態に係る電動工具1について、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0010】
本実施形態の電動工具1は、
図1、
図2に示すように、電動機3と、トルク伝達部4と、カムアウトセンサ8と、制御部7と、を備えている。トルク伝達部4は、電動機3のトルクを先端工具62に伝達する。カムアウトセンサ8は、カムアウトの予兆に伴う物理量の変化を検知する。カムアウトは、電動機3の動作中に先端工具62とねじ9との嵌合が解除される現象である。ねじ9は、先端工具62による作業対象の部材である。制御部7は、カムアウトセンサ8の検知結果に基づいて電動機3とトルク伝達部4とのうち少なくとも一方を制御する。
【0011】
本実施形態によれば、カムアウトが起きる可能性を低減できる。すなわち、カムアウトが起きる前に、カムアウトセンサ8によりカムアウトの予兆に伴う物理量の変化を事前に検知することができる。そして、制御部7は、カムアウトセンサ8の検知結果に基づいて電動機3を制御することで、カムアウトを未然に防ぐことができる。また、カムアウトが起きた場合であっても、電動機3を停止させる等の措置を早期に取ることができる。
【0012】
(2)構成
電動工具1の構成についてより詳細に説明する。以下の説明では、後述する駆動軸41と出力軸61とが並んでいる方向を前後方向と規定し、駆動軸41から見て出力軸61側を前とし、出力軸61から見て駆動軸41側を後とする。また、以下の説明では、後述する胴体部21とグリップ部22とが並んでいる方向を上下方向と規定し、グリップ部22から見て胴体部21側を上とし、胴体部21から見てグリップ部22側を下とする。
【0013】
本実施形態の電動工具1は、可搬型の電動工具である。電動工具1は、電動機3と、トルク伝達部4と、カムアウトセンサ8と、制御部7と、出力軸61と、第1ハウジング2と、トリガボリューム23と、を備えている。
【0014】
第1ハウジング2は、電動機3、トルク伝達部4、カムアウトセンサ8及び制御部7と、出力軸61の一部と、を収容している。第1ハウジング2は、胴体部21と、グリップ部22と、を有している。胴体部21の形状は、円筒状である。グリップ部22は、胴体部21から突出している。
【0015】
トリガボリューム23は、グリップ部22から突出している。トリガボリューム23は、電動機3の回転を制御するための操作を受け付ける操作部である。なお、本開示において、「電動機3の回転」とは、電動機3の回転軸311の回転を意味する。トリガボリューム23を引く操作により、電動機3のオンオフを切替可能である。また、トリガボリューム23を引く操作の引込み量で、電動機3の回転速度を調整可能である。上記引込み量が大きいほど、電動機3の回転速度が速くなる。制御部7は、トリガボリューム23を引く操作の引込み量に応じて、電動機3を回転又は停止させ、また、電動機3の回転速度を制御する。本実施形態の電動工具1では、先端工具62(ビット)が、出力軸61に装着される。出力軸61は、電動機3の回転力を受けて先端工具62と共に回転する。そして、トリガボリューム23への操作によって電動機3の回転速度が制御されることで、先端工具62の回転速度が制御される。
【0016】
先端工具62は、例えば、ドライバビットである。本実施形態の先端工具62は、先端部620が+(プラス)形に形成されたプラスドライバビットである。先端工具62は、作業対象のねじ9(ボルト又はビス等)と嵌合する。先端工具62がねじ9と嵌合した状態で先端工具62が回転することにより、ねじ9を締め付ける又は緩めるといった作業が可能となる。ねじ9は、頭部91と、ねじ部92と、を含んでいる。頭部91の形状は、円盤状である。ねじ部92は、頭部91から突出している。頭部91は、+形のねじ穴910(
図4参照)を有している。本実施形態では、ねじ9のねじ穴910に先端工具62の先端部620の少なくとも一部が挿入された状態を指して、先端工具62とねじ9とが嵌合していると言う。また、電動機3の動作(回転)中に、先端工具62とねじ9とが嵌合している状態から、先端工具62の先端部620がねじ穴910の外に出ることを指して、先端工具62とねじ9との嵌合が解除される現象、すなわち、カムアウトが起きると言う。そして、先端部620がねじ穴910の中に有るときであって、これからカムアウトが起きることが予測されるとき、カムアウトの予兆が有ると言う。例えば、後述するように、先端工具62からねじ9への押付力が所定の変化速度以上で増加すると、先端部620がねじ9からの反力により押し返されてカムアウトが起きると予測されるので、制御部7は、カムアウトの予兆が有ると判定する。
【0017】
電動工具1には、充電式の電池パックが着脱可能に取り付けられる。電動工具1は、電池パックを電源として動作する。すなわち、電池パックは、電動機3を駆動する電流を供給する電源である。電池パックは、電動工具1の構成要素ではない。ただし、電動工具1は、電池パックを備えていてもよい。電池パックは、複数の二次電池(例えば、リチウムイオン電池)を直列接続して構成された組電池と、組電池を収容したケースと、を備えている。
【0018】
電動機3は、例えばブラシレスモータである。特に、本実施形態の電動機3は、同期電動機であり、より詳細には、永久磁石同期電動機(PMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor))である。電動機3は、回転軸311及び永久磁石312を有する回転子31と、コイル321を有する固定子32と、を含んでいる。永久磁石312とコイル321との電磁的相互作用により、回転子31は、固定子32に対して回転する。
【0019】
また、電動機3は、サーボモータである。電動機3のトルク及び回転数は、制御部7(サーボドライバ)による制御に応じて変化する。より詳細には、制御部7は、電動機3のトルク及び回転数を目標値に近づけるように制御するフィードバック制御により電動機3の動作を制御している。また、制御部7は、カムアウトセンサ8の検知結果に応じて、トルク目標値及び回転数目標値(速度目標値)を変化させることで電動機3に対する制御を変化させる。一例として、制御部7は、ベクトル制御を行う。ベクトル制御は、電動機3に供給される電流を、トルク(回転力)を発生する電流成分と磁束を発生する電流成分とに分解し、それぞれの電流成分を独立に制御するモータ制御方式の一種である。
【0020】
また、制御部7は、電動機3の回転数が所定範囲内となるように電動機3の回転数を制御し、かつ、カムアウトセンサ8の検知結果に基づいて電動機3の回転数を制御する。より詳細には、制御部7は、カムアウトセンサ8の検知結果に基づいて決定した回転数目標値が所定範囲よりも大きい場合に、回転数目標値を所定範囲の上限値に変更する。また、制御部7は、カムアウトセンサ8の検知結果に基づいて決定した回転数目標値が所定範囲よりも小さい場合に、回転数目標値を所定範囲の下限値に変更する。
【0021】
出力軸61は、先端工具62を保持する。より詳細には、出力軸61には、先端工具62が着脱可能である。出力軸61は、電動機3のトルクをトルク伝達部4から先端工具62に伝達する。これにより、先端工具62が回転する。
【0022】
トルク伝達部4は、インパクト機構40を有している。本実施形態の電動工具1は、インパクト機構40による打撃動作を行いながらねじ締めを行う、電動式のインパクトドライバである。インパクト機構40は、打撃動作において、電動機3の動力に基づいて打撃力を発生させ、その打撃力は先端工具62に作用する。
【0023】
トルク伝達部4は、インパクト機構40に加えて、遊星歯車機構48を有している。インパクト機構40は、駆動軸41と、ハンマ42と、復帰ばね43と、アンビル45と、2つの鋼球49と、を含んでいる。電動機3の回転軸311の回転は、遊星歯車機構48を介して、駆動軸41に伝達される。トルク伝達部4は、電動機3のトルクを駆動軸41を介して先端工具62に伝達する。駆動軸41は、電動機3と出力軸61との間に配置されている。
【0024】
制御部7は、カムアウトセンサ8の検知結果に基づいて、電動機3の回転数と、遊星歯車機構48の変速比と、を変化させる。これにより駆動軸41の回転数が変化する。
【0025】
ハンマ42は、アンビル45に対して移動し、電動機3から動力を得てアンビル45に回転打撃を加える。
図2、
図3に示すように、ハンマ42は、ハンマ本体420と、2つの突起425と、を含んでいる。2つの突起425は、ハンマ本体420のうち出力軸61側の面から突出している。ハンマ本体420は、駆動軸41が通される貫通孔421を有している。また、ハンマ本体420は、貫通孔421の内周面に、2つの溝部423を有している。駆動軸41は、その外周面に、2つの溝部413を有している。2つの溝部413は、つながっている。2つの溝部423と2つの溝部413との間には、2つの鋼球49が挟まれている。2つの溝部423と2つの溝部413と2つの鋼球49とは、カム機構を構成している。2つの鋼球49が移動しながら、ハンマ42は、駆動軸41に対して、駆動軸41の軸方向に移動可能であり、かつ、駆動軸41に対して回転可能である。ハンマ42が駆動軸41の軸方向に沿って出力軸61に近づく向き又は出力軸61から遠ざかる向きに移動するのに伴って、ハンマ42が駆動軸41に対して回転する。
【0026】
アンビル45は、出力軸61と一体に形成されている。アンビル45は、出力軸61を介して先端工具62を保持する。アンビル45は、アンビル本体450と、2つの爪部455と、を含んでいる。アンビル本体450の形状は、円環状である。2つの爪部455は、アンビル本体450からアンビル本体450の径方向に突出している。アンビル45は、駆動軸41の軸方向においてハンマ本体420と対向している。また、インパクト機構40が打撃動作を行っていない場合には、駆動軸41の回転方向においてハンマ42の2つの突起425とアンビル45の2つの爪部455とが接しながら、ハンマ42とアンビル45とが一体に回転する。そのため、このとき、駆動軸41と、ハンマ42と、アンビル45と、出力軸61とが一体に回転する。
【0027】
復帰ばね43は、ハンマ42と遊星歯車機構48との間に挟まれている。本実施形態の復帰ばね43は、円錐コイルばねである。インパクト機構40は、ハンマ42と復帰ばね43との間に挟まれた複数(
図2では2つ)の鋼球50と、リング51と、を更に含んでいる。これにより、ハンマ42は、復帰ばね43に対して回転可能となっている。ハンマ42は、駆動軸41の軸方向に沿った方向において、出力軸61に向かう向きの力を復帰ばね43から受けている。
【0028】
以下では、駆動軸41の軸方向においてハンマ42が出力軸61に向かう向きに移動することを、「ハンマ42が前進する」と称する。また、以下では、駆動軸41の軸方向においてハンマ42が出力軸61から遠ざかる向きに移動することを、「ハンマ42が後退する」と称す。
【0029】
インパクト機構40では、負荷トルクが所定値以上となると、打撃動作が開始される。すなわち、負荷トルクが大きくなってくると、ハンマ42とアンビル45との間で発生する力のうち、ハンマ42を後退させる向きの分力も大きくなってくる。負荷トルクが所定値以上となると、ハンマ42は、復帰ばね43を圧縮させながら後退する。そして、ハンマ42が後退することにより、ハンマ42の2つの突起425がアンビル45の2つの爪部455を乗り越えつつ、ハンマ42が回転する。その後、ハンマ42が復帰ばね43からの復帰力を受けて前進する。そして、駆動軸41が略半回転すると、ハンマ42の2つの突起425がアンビル45の2つの爪部455の側面4550に衝突する。インパクト機構40では、駆動軸41が略半回転するごとにハンマ42の2つの突起425がアンビル45の2つの爪部455に衝突する。つまり、駆動軸41が略半回転するごとにハンマ42がアンビル45に回転打撃を加える。
【0030】
このように、インパクト機構40では、ハンマ42とアンビル45との衝突が繰り返し発生する。この衝突によるトルクにより、衝突が無い場合と比較して、ねじ9を強力に締め付けることができる。
【0031】
以下、電動工具1においてカムアウトが起きるメカニズムの第1例を説明する。電動機3の回転数が不安定である場合等に、ハンマ42は移動可能な範囲における前端まで前進し、その結果、先端工具62からねじ9への押付力が瞬間的に増加することがある。その後、ねじ9から先端工具62への反作用により先端工具62がねじ9から離れ、カムアウトが起きることがある。
【0032】
次に、電動工具1においてカムアウトが起きるメカニズムの第2例を説明する。ねじ9のねじ穴910(
図4参照)にはテーパ面911が設けられており、ねじ9の軸方向と交差する方向の力が先端工具62からテーパ面911に加わると、先端工具62は、テーパ面911に沿ってねじ穴910の外へ移動することがある。すなわち、カムアウトが起きることがある。例えば、ねじ9に対する先端工具62の向きが斜め向きであるために先端工具62からねじ9に加わる力のうちねじ9の軸方向と交差する方向の成分が比較的大きくなる場合等に、第2例のメカニズムでカムアウトが起きることがある。また、電動機3の回転数に対して先端工具62からねじ9への押付力が不足している場合等に、第2例のメカニズムでカムアウトが起きることがある。
【0033】
第1例で説明したメカニズム、第2例で説明したメカニズム、又はそれらの両方が原因となって、カムアウトが起きることがある。
【0034】
電動工具1は、保持台11と、第2ハウジング12と、駆動回路13と、ファン14と、カバー15と、軸受16と、軸受17と、を更に備えている。これらは、第1ハウジング2に収容されている。
【0035】
保持台11の形状は、有底円筒状である。保持台11は、その内側に遊星歯車機構48を保持している。すなわち、保持台11は、遊星歯車機構48のギアを回転可能に保持している。また、保持台11は、軸受17を保持している。保持台11に保持された軸受17と、カバー15に保持された軸受16とは、電動機3の回転軸311を回転可能に保持している。すなわち、保持台11は、軸受17を介して回転軸311を回転可能に保持している。電動機3の回転軸311は、保持台11の底面に形成された貫通孔に挿入されており、遊星歯車機構48に連結されている。
【0036】
第2ハウジング12の形状は、円筒状である。第2ハウジング12の直径は、前方ほど小さい。第2ハウジング12は、保持台11と、トルク伝達部4と、を収容している。
【0037】
保持台11は、第2ハウジング12に接している。より詳細には、保持台11の前側部分の断面形状と第2ハウジング12の断面形状とはいずれも円環状であり、保持台11は、第2ハウジング12に内接している。保持台11は、第2ハウジング12に囲まれている。第2ハウジング12は、第1ハウジング2に囲まれている。
【0038】
保持台11は、第1ハウジング2に接している。より詳細には、保持台11の後側部分と第1ハウジングの内面とが接している。
【0039】
駆動回路13は、電動機3の後方に配置されている。駆動回路13は、基板130と、複数のパワー素子と、ロータリセンサと、を含む。各パワー素子は、例えば、FET(Field Effect Transistor)素子である。ロータリセンサは、例えば、ホールICを含む。ロータリセンサは、電動機3の回転子31の回転角を検知する。
【0040】
制御部7は、駆動回路13を介して、電動機3を制御する。すなわち、制御部7は、駆動回路13の複数のFET素子のオンオフを切り替えることで、複数のFET素子を経由して電動機3に供給される電力を制御する。
【0041】
また、制御部7は、遊星歯車機構48の変速比を切り替える。すなわち、制御部7は、遊星歯車機構48のギアを切り替える。制御部7は、例えば、アクチュエータを駆動することで遊星歯車機構48のギアをスライド移動させることにより、ギアを切り替える。
【0042】
ファン14は、電動機3と保持台11との間に配置されている。ファン14は、前方へ流れる風を発生させる。これにより、ファン14は、第1ハウジング2の内部空間を空冷する。
【0043】
カバー15は、駆動回路13の後方に配置されている。カバー15は、駆動回路13を覆っている。第1ハウジング2の後端部分の内面形状と、カバー15の外面形状とは、略一致する。第1ハウジング2の内面とカバー15の外面とが接している。
【0044】
カムアウトセンサ8は、測定部80を有している。本実施形態のカムアウトセンサ8は、測定部80のみからなる。測定部80は、押付力を測定する。上記押付力は、先端工具62がねじ9に押し付けられる力である。すなわち、上記押付力は、ねじ9に対して先端工具62の軸方向(前向き)に作用する力である。制御部7は、測定部80で測定された押付力に基づいて電動機3とトルク伝達部4とのうち少なくとも一方を制御する。これにより、カムアウトが起きる可能性の低減を図ることができる。より詳細には、制御部7は、測定部80で測定された押付力が小さいほど、電動機3からトルク伝達部4を介して出力軸61に伝達されるトルクを小さくする。また、例えば、制御部7は、測定部80で測定された押付力が所定値以上のときは、遊星歯車機構48の変速比を第1変速比にし、押付力が所定値未満のときは、遊星歯車機構48の変速比を、第1変速比よりも小さい第2変速比にする。
【0045】
押付力は、電動工具1の作業者が電動工具1を掴んで加える力の大きさ、及び、インパクト機構40の打撃動作により発生する振動等により変化する。押付力は、カムアウトの予兆に伴い変化する物理量である。
【0046】
測定部80は、例えば、歪みセンサ(歪みゲージ)である。本実施形態の測定部80は、抵抗式歪みセンサである。本実施形態の歪みセンサは、出力軸61の表面に貼り付けられている。歪みセンサ(測定部80)は、出力軸61の歪みを測定する。出力軸61の歪みは、先端工具62からねじ9への押付力に相関する物理量である。歪みセンサは、出力軸61にトルクが加わることにより発生する歪みに応じた電気抵抗値を、電圧信号に変換し、検知結果として出力する。
【0047】
制御部7は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、制御部7の少なくとも一部の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0048】
制御部7は、測定部80で測定された押付力に基づいてカムアウトの予兆の有無を判定し、判定結果に基づいて電動機3とトルク伝達部4とのうち少なくとも一方を制御する。制御部7は、測定部80で測定された押付力の単位時間当たりの変化量が所定値(第1閾値)以上の場合、カムアウトの予兆が有ると判定する。
【0049】
すなわち、カムアウトが起きるメカニズムの第1例で説明したように、先端工具62からねじ9への押付力が瞬間的に増加し、その後、ねじ9から先端工具62への反作用により先端工具62がねじ9から離れ、カムアウトが起きることがある。先端工具62からねじ9への押付力が瞬間的に増加することで、押付力の単位時間当たりの変化量も増加する。そのため、制御部7は、押付力の単位時間当たりの変化量を監視することで、カムアウトの予兆の有無を判定することができる。
【0050】
また、制御部7は、測定部80で測定された押付力が第2閾値以下の場合、カムアウトの予兆が有ると判定する。
【0051】
すなわち、カムアウトが起きるメカニズムの第2例で説明したように、電動機3の回転数に対して先端工具62からねじ9への押付力が不足している場合等に、カムアウトが起きることがある。そのため、制御部7は、押付力の大きさを監視することで、カムアウトの予兆の有無を判定することができる。
【0052】
第1閾値及び第2閾値は、例えば、制御部7のメモリに予め記録されている。
【0053】
なお、第1閾値は、インパクト機構40が打撃動作を行っている場合と行っていない場合とで異なる値を取ってもよい。同様に、第2閾値は、インパクト機構40が打撃動作を行っている場合と行っていない場合とで異なる値を取ってもよい。
【0054】
制御部7は、カムアウトセンサ8の検知結果に基づいてカムアウトの予兆が有ると判定すると、電動機3の回転数を低下させる。これにより、駆動軸41の回転数が低下するので、インパクト機構40の打撃動作における打撃力の大きさが低下する。その結果、先端工具62からねじ9に加わる力が低下する。また、ねじ9から先端工具62に作用する、先端工具62をねじ9から離れさせる向きの力(反力)が低下する。その結果、カムアウトが起きる可能性を低減できる。なお、本開示において、電動機3の回転数を低下させるとは、電動機3の回転数を0にする(停止させる)ことも含む。
【0055】
また、駆動軸41の回転数が低下することで、インパクト機構40の打撃動作における打撃力の発生間隔(すなわち、ハンマ42とアンビル45との衝突の周期)が長くなるので、カムアウトが起きる可能性を低減できる。
【0056】
また、制御部7は、カムアウトの予兆が有ると判定していないときは、カムアウトセンサ8(測定部80)で測定された押付力が大きいほど、電動機3の回転数を増加させる。これにより、押付力が大きいほどトルクが大きい状態でねじ9を締める(又は緩める)ことができる。
【0057】
(変形例1)
以下、変形例1に係る電動工具1について、
図5を用いて説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
本変形例1の測定部80は、保持台11と第1ハウジング2(ハウジング)との間に生じる圧力を測定する。この点で、本変形例1は、実施形態と相違する。保持台11と第1ハウジング2との間に生じる圧力は、先端工具62からねじ9への押付力に相関する物理量である。また、保持台11は、その内側にトルク伝達部4の遊星歯車機構48を保持している。第1ハウジング2は、保持台11を囲んでいる。以下、より詳細に説明する。
【0059】
測定部80は、圧力センサである。測定部80は、例えば、歪みセンサである。歪みセンサは、シート状に形成されている。
図5に示すように、測定部80は、保持台11と第1ハウジング2との間に挟まれている。保持台11のうち測定部80を挟んでいる部位と、測定部80と、第1ハウジング2の胴体部21のうち測定部80を挟んでいる部位とが、前後方向に並んでいる。
【0060】
電動機3の回転軸311が回転するのに伴って、遊星歯車機構48のギアが回転する。回転軸311及び遊星歯車機構48を保持している保持台11には、回転軸311の回転トルク及び遊星歯車機構48のギアの回転トルクによる圧力が加えられる。そのため、保持台11と第1ハウジング2との間に圧力が生じ、この圧力は測定部80により測定される。測定部80により測定される圧力は、駆動軸41の軸方向(前後方向)に沿った力による圧力である。制御部7は、測定部80で測定された押付力に基づいて電動機3とトルク伝達部4とのうち少なくとも一方を制御する。
【0061】
なお、第1ハウジング2ではなく第2ハウジング12が、本変形例1の第1ハウジング2と同様の働きをしてもよい。すなわち、測定部80は、保持台11と保持台11を囲んでいる第2ハウジング12との間に生じる圧力を測定してもよい。
【0062】
(変形例2)
以下、変形例2に係る電動工具1について、
図6を用いて説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
本変形例2の測定部80は、電動機3と電動機3を囲む第1ハウジング2(ハウジング)との間に生じる圧力を測定する。この点で、本変形例2は、実施形態と相違する。電動機3と第1ハウジング2との間に生じる圧力は、先端工具62からねじ9への押付力に相関する物理量である。以下、より詳細に説明する。
【0064】
測定部80は、圧力センサである。測定部80は、例えば、歪みセンサである。
図6に示すように、測定部80は、カバー15と軸受16との間に挟まれている。カバー15のうち測定部80を挟んでいる部位と、測定部80と、軸受16とが、前後方向に並んでいる。
【0065】
電動機3の回転軸311が回転するのに伴って、軸受16には、回転軸311の回転トルクによる圧力が加えられる。そのため、軸受16とカバー15との間に圧力が生じ、この圧力は測定部80により測定される。測定部80により測定される圧力は、電動機3と第1ハウジング2との間に生じる圧力に相関する。測定部80により測定される圧力は、電動機3の回転軸311の軸方向(前後方向)に沿った力による圧力である。制御部7は、測定部80で測定された押付力に基づいて電動機3とトルク伝達部4とのうち少なくとも一方を制御する。
【0066】
なお、測定部80は、第1ハウジング2と軸受16との間に挟まれていてもよい。すなわち、測定部80は、第1ハウジング2と軸受16との間に生じる圧力を測定してもよい。
【0067】
(実施形態のその他の変形例)
以下、実施形態のその他の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。また、以下の変形例は、上述の各変形例と適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0068】
測定部80としての歪みセンサは、出力軸61ではなく、駆動軸41に貼り付けられていて、駆動軸41の歪みを測定してもよい。あるいは、歪みセンサは、軸受17と保持台11との間に挟まれていて、電動機3と保持台11との間に生じる圧力を測定してもよい。それ以外にも、測定部80は、先端工具62からねじ9への押付力に相関する歪み又は圧力を測定可能な位置に適宜配置されていてもよい。
【0069】
測定部80は、抵抗式歪みセンサに限定されない。測定部80は、例えば、ねじり歪みの検出が可能な磁歪式歪みセンサであってもよい。磁歪式歪みセンサは、コイルを有している。測定部80は、例えば、出力軸61の近傍に配置される。測定部80は、例えば、第2ハウジング12又は第1ハウジング2に固定される。磁歪式歪みセンサは、出力軸61にトルクが加わることにより発生する歪みに応じた透磁率の変化を、出力軸61の近傍の非回転部分に設置した上記コイルで検出し、歪みに比例した電圧信号を、検知結果として出力する。
【0070】
磁歪式歪みセンサは、電動機3の近傍に配置されていてもよい。磁歪式歪みセンサは、電動機3の回転軸311の歪みを測定する。すなわち、電動機3の回転軸311にトルクが加わることにより発生する歪みに応じた透磁率の変化を、電動機3の近傍の非回転部分に設置したコイルで検出し、歪みに比例した電圧信号を、検知結果として出力する。
【0071】
第1ハウジング2と第2ハウジング12とが、1つの部材として形成されていてもよい。第1ハウジング2とカバー15とが、1つの部材として形成されていてもよい。
【0072】
制御部7は、測定部80で測定された押付力が第1の値よりも小さい場合に、出力軸61に伝達されるトルクを小さくしてもよい。また、制御部7は、測定部80で測定された押付力が第2の値よりも大きい場合に、出力軸61に伝達されるトルクを大きくしてもよい。第2の値は、第1の値よりも大きい。第1の値は、インパクト機構40が打撃動作を行っている場合と行っていない場合とで異なる値を取ってもよい。同様に、第2の値は、インパクト機構40が打撃動作を行っている場合と行っていない場合とで異なる値を取ってもよい。
【0073】
制御部7は、カムアウトセンサ8の検知結果に基づいて電動機3とトルク伝達部4とのうち少なくとも一方を制御する。ここで、カムアウトセンサ8の検知結果に基づいた制御は、インパクト機構40が打撃動作を行っているときにのみ実行されてもよい。すなわち、制御部7は、インパクト機構40が打撃動作を行っていないときは、カムアウトセンサ8の検知結果を用いずに電動機3とトルク伝達部4とを制御してもよい。
【0074】
実施形態の制御部7は、電動機3の回転数が所定範囲(第1範囲)内となるように電動機3の回転数を制御する。これに対して、制御部7は、駆動軸41の回転数が所定範囲(第2範囲)内となるように、電動機3とトルク伝達部4とのうち少なくとも一方を制御してもよい。第2範囲は、第1範囲とは異なる範囲である。
【0075】
実施形態の制御部7の複数の機能が、複数の構成に分散して備えられていてもよい。例えば、制御部7の複数の機能のうち電動機3を制御する機能と、カムアウトの予兆の有無を判定する機能とが分散して備えられていてもよい。
【0076】
カムアウトセンサ8が検知する物理量は、先端工具62からねじ9への押付力に限定されない。カムアウトセンサ8は、カムアウトの予兆が有るときとカムアウトの予兆が無いときとで値又は変化速度等が異なる物理量を検知すればよい。
【0077】
実施形態では、先端工具62は、電動工具1の構成に含まれていない。ただし、先端工具62は、電動工具1の構成に含まれていてもよい。
【0078】
第1ハウジング2の内部において、ファン14の配置と駆動回路13の配置とが逆であってもよい。
【0079】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0080】
第1の態様に係る電動工具(1)は、電動機(3)と、トルク伝達部(4)と、カムアウトセンサ(8)と、制御部(7)と、を備える。トルク伝達部(4)は、電動機(3)のトルクを先端工具(62)に伝達する。カムアウトセンサ(8)は、カムアウトの予兆に伴う物理量の変化を検知する。カムアウトは、電動機(3)の動作中に先端工具(62)とねじ(9)との嵌合が解除される現象である。ねじ(9)は、先端工具(62)による作業対象の部材である。制御部(7)は、カムアウトセンサ(8)の検知結果に基づいて電動機(3)とトルク伝達部(4)とのうち少なくとも一方を制御する。
【0081】
上記の構成によれば、カムアウトが起きる可能性を低減できる。
【0082】
また、第2の態様に係る電動工具(1)では、第1の態様において、カムアウトセンサ(8)は、測定部(80)を有する。測定部(80)は、先端工具(62)がねじ(9)に押し付けられる力である押付力を測定する。制御部(7)は、測定部(80)で測定された押付力に基づいて電動機(3)とトルク伝達部(4)とのうち少なくとも一方を制御する。
【0083】
上記の構成によれば、カムアウトセンサ(8)は、カムアウトの発生に直接関係する物理量である押付力を測定するので、カムアウトの予兆の有無の検知精度を向上させることができる。
【0084】
また、第3の態様に係る電動工具(1)は、第2の態様において、出力軸(61)を更に備える。出力軸(61)は、先端工具(62)を保持する。出力軸(61)は、電動機(3)のトルクをトルク伝達部(4)から先端工具(62)に伝達する。測定部(80)は、出力軸(61)の歪みを、押付力に相関する物理量として測定する。
【0085】
上記の構成によれば、カムアウトセンサ(8)は、押付力の大きさとの相関が比較的強い物理量である出力軸(61)の歪みを測定するので、カムアウトの予兆の有無の検知精度を向上させることができる。
【0086】
また、第4の態様に係る電動工具(1)は、第2の態様において、保持台(11)と、ハウジング(第1ハウジング(2))と、を更に備える。保持台(11)は、トルク伝達部(4)を保持する。ハウジングは、保持台(11)を囲む。測定部(80)は、保持台(11)とハウジングとの間に生じる圧力を、押付力に相関する物理量として測定する。
【0087】
上記の構成によれば、カムアウトセンサ(8)の設置スペースを容易に確保できる。
【0088】
また、第5の態様に係る電動工具(1)は、第2の態様において、ハウジング(第1ハウジング(2))を更に備える。ハウジングは、電動機(3)を囲む。測定部(80)は、電動機(3)とハウジングとの間に生じる圧力を、押付力に相関する物理量として測定する。
【0089】
上記の構成によれば、カムアウトセンサ(8)の設置スペースを容易に確保できる。
【0090】
また、第6の態様に係る電動工具(1)では、第2~5の態様のいずれか1つにおいて、制御部(7)は、測定部(80)で測定された押付力に基づいてカムアウトの予兆の有無を判定し、判定結果に基づいて電動機(3)とトルク伝達部(4)とのうち少なくとも一方を制御する。制御部(7)は、測定部(80)で測定された押付力の単位時間当たりの変化量が所定値以上の場合、カムアウトの予兆が有ると判定する。
【0091】
上記の構成によれば、制御部(7)は、簡素な処理によりカムアウトの予兆の有無を判定できる。
【0092】
また、第7の態様に係る電動工具(1)では、第1~6の態様のいずれか1つにおいて、制御部(7)は、カムアウトセンサ(8)の検知結果に基づいてカムアウトの予兆が有ると判定すると、電動機(3)の回転数を低下させる。
【0093】
上記の構成によれば、カムアウトが起きる可能性を低減できる。
【0094】
また、第8の態様に係る電動工具(1)では、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、制御部(7)は、電動機(3)の回転数が所定範囲内となるように電動機(3)の回転数を制御し、かつ、カムアウトセンサ(8)の検知結果に基づいて電動機(3)の回転数を制御する。
【0095】
上記の構成によれば、電動機(3)の回転数が所定範囲外となることで電動工具(1)の動作が不安定になる可能性を、低減できる。
【0096】
また、第9の態様に係る電動工具(1)は、第1~8の態様のいずれか1つにおいて、インパクト機構(40)を更に備える。インパクト機構(40)は、打撃動作を行う。打撃動作は、電動機(3)の動力に基づいて先端工具(62)に作用する打撃力を発生させる動作である。
【0097】
上記の構成によれば、打撃動作においてカムアウトが起きる可能性を低減できる。
【0098】
第1の態様以外の構成については、電動工具(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 電動工具
11 保持台
2 第1ハウジング(ハウジング)
3 電動機
4 トルク伝達部
40 インパクト機構
61 出力軸
62 先端工具
7 制御部
8 カムアウトセンサ
80 測定部
9 ねじ