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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】光学特性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/41 20060101AFI20230414BHJP
   G01N 21/45 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
G01N21/41 Z
G01N21/45 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022103576
(22)【出願日】2022-06-28
(62)【分割の表示】P 2018199543の分割
【原出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2022126835
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】518376417
【氏名又は名称】株式会社クリーンオプチカル
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 達俊
(72)【発明者】
【氏名】小林 純一
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-066312(JP,A)
【文献】特開2006-220600(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104006884(CN,A)
【文献】特開2015-118290(JP,A)
【文献】特開2011-099795(JP,A)
【文献】特開2014-174124(JP,A)
【文献】特開2003-083811(JP,A)
【文献】特開2006-200998(JP,A)
【文献】特開平05-018893(JP,A)
【文献】特開平07-243806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/61
G01J 3/00-G01J 3/52
G01B 11/00-G01B 11/30
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長成分を含む広帯域光を出射する光源と、
前記光源からの前記広帯域を分岐した2つの光を干渉させた干渉光を合成する合成部を有し、前記2つの光の光路長差を変調させた前記干渉光を試料に出射する光路長変調部と、
第1の方向における少なくとも2つの位置に配置された受光素子を有し、前記試料を透過または前記試料により屈折した光を受光する受光部と、
前記受光部の各受光素子における受光結果を、前記光路長変調部における前記光路長を用いてフーリエ変換して、前記試料の屈折率スペクトルを算出する算出部と
を備える光学特性測定装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記試料を透過または前記試料により屈折した光を受光した前記受光素子の前記第1の方向における位置に基づいて前記試料の屈折率を算出し、それぞれの前記受光素子における受光結果に基づいて、前記第1の方向における各位置に入射した光の波長を算出する
請求項1に記載の光学特性測定装置。
【請求項3】
前記光路長変調部は、
前記広帯域光を反射させる反射鏡と、
前記広帯域光と、前記反射鏡からの反射光とを干渉させる前記合成部と、
前記反射鏡の位置を制御して前記反射光の光路長を制御する制御部と
を有する
請求項1または2に記載の光学特性測定装置。
【請求項4】
前記光路長変調部は、前記広帯域光が入射され、異なる光路長を通過した前記広帯域光を、前記第1の方向とは異なる第2の方向における異なる位置に出射する空間変調器を有する
請求項1または2に記載の光学特性測定装置。
【請求項5】
前記受光部は、二次元に配置された複数の前記受光素子を有する
請求項4に記載の光学特性測定装置。
【請求項6】
前記広帯域光はスーパーコンティニューム光である
請求項1から5のいずれか1項に記載の光学特性測定装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学特性測定装置に関する。
【0002】
従来から、ガラス等の材料の屈折率を測定する屈折率測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。屈折率測定装置においては、光源として各種ガスの放電管の輝線が用いられている。
【0003】
本出願に関連する技術として、回折格子とファブリーペローエタロンとを併用した分光装置が知られている(特許文献2および3)。また、フーリエ変換型分光装置が知られている(特許文献4および5)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2011-99795号公報
[特許文献2] 特開平6-34438号公報
[特許文献3] 特開2000-28434号公報
[特許文献4] 特開平7-243806号公報
[特許文献5] 特開2018-9909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学特性測定装置においては、光源の長寿命化を図ることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様においては、光学特性測定装置を提供する。光学特性測定装置は、光源を備えてよい。光源は、光を出射してよい。光学特性測定装置は、受光部を備えてよい。受光部は、試料を透過、反射、または屈折した光を受光してよい。光学特性測定装置は、第1フィルタおよび第2フィルタを備えてよい。第2フィルタは、第1フィルタの後段に設けられてよい。第1フィルタおよび第2フィルタは、光源と受光部の間の光路に配置されてよい。第1フィルタは、第2フィルタより分解能の高さおよび自由スペクトル領域の広さの一方の値が大きくてよい。第2フィルタは、第1フィルタより分解能の高さおよび自由スペクトル領域の広さの他方の値が大きくてよい。
【0006】
受光部は、第1の方向における少なくとも2つの位置に配置された受光素子を有してよい。算出部は、試料を透過、反射、または屈折した光を受光した受光素子の第1の方向における位置に基づいて試料の屈折率を算出してよい。光学特性測定装置は、入射角度調整部を更に備えてよい。入射角度調整部は、試料の前に配置されてよい。入射角度調整部は、試料への第1の方向における光の入射角を変更可能であってよい。算出部は、試料を透過、反射、または屈折した光を受光部が検出したときの入射角に基づいて試料の屈折率を算出してよい。
【0007】
標準の屈折率を持つ材料と試料とが接触面で接触してよい。接触面に入射する光の光軸が接触面に対して傾いていてよい。
【0008】
第1フィルタおよび第2フィルタは、試料の前段に配置されてよい。第1フィルタおよび第2フィルタは、試料の後段に配置されてよい。
【0009】
光源は、スーパーコンティニューム光源であってよい。
【0010】
第1フィルタおよび第2フィルタの一方は、ファブリーペローエタロン部を含んでよく、第1フィルタおよび第2フィルタの他方は、回折格子を含んでよい。
【0011】
第1フィルタおよび第2フィルタの一方は、ファブリーペローエタロン部を含んでよく、第1フィルタおよび第2フィルタの他方は、試料側が凹の曲面を有する回折格子を含んでよい。
【0012】
光学特性測定装置は、試料と回折格子との間にコリメートレンズまたは凹面鏡を更に備えてよい。光学特性測定装置は、試料と回折格子との間に凹面鏡を更に備えてよい。
【0013】
ファブリーペローエタロン部は、一対の半透明鏡を有してよい。光学特性測定装置は、回折格子から出射される光の波長に応じて、一対の半透明鏡間の距離を制御する制御部を更に備えてよい。
【0014】
ファブリーペローエタロン部は、一対の半透明鏡を有してよい。ファブリーペローエタロン部は、一対の半透明鏡の少なくとも一方の反射率を調整するための反射率調整部を有してよい。
【0015】
受光部は、第1の方向と、第1の方向とは異なる第2の方向とに沿って二次元に配置された複数の受光素子を有してよい。回折格子によって分散されることによって異なる波長成分の光が第2の方向の異なる位置の受光素子によって受光されてよい。算出部は、第2の方向の異なる位置毎に試料を透過した光を受光した受光素子の第1の方向における位置に基づいて、異なる波長成分毎の試料の屈折率を算出してよい。
【0016】
第1フィルタおよび第2フィルタを通過した光が、He放電管のd線、H放電管のC線およびF線、Hg放電管のg線に対応する複数の波長から選ばれた複数の波長を中心波長として有するように、制御部が、第1フィルタおよび第2フィルタを制御してよい。
【0017】
本発明の第2の態様においては、光学特性測定装置を提供する。光学特性測定装置は、光源を備えてよい。光源は、光を出射してよい。光学特性測定装置は、光路長変調部を備えてよい。光路長変調部は、光源からの光の光路長を変調させて試料に出射してよい。光学特性測定装置は、受光部を備えてよい。受光部は、第1の方向における少なくとも2つの位置に配置された受光素子を有してよい。受光部は、試料を透過、反射、または屈折した光を受光してよい。光学特性測定装置は、算出部を備えてよい。算出部は、受光部の各受光素子における受光結果を、光路長変調部における光路長を用いてフーリエ変換して、試料の屈折率スペクトルを算出してよい。
【0018】
算出部は、試料を透過、反射、または屈折した光を受光した受光素子の第1の方向における位置に基づいて試料の屈折率を算出してよい。算出部は、それぞれの受光素子における受光結果に基づいて、第1の方向における各位置に入射した光の波長を算出してよい。
【0019】
光路長変調部は、反射鏡を有してよい。反射鏡は、光を反射させてよい。光路長変調部は、合成部を有してよい。合成部は、光と、反射鏡からの反射光とを干渉させてよい。位置変調部は、制御部を備えてよい。制御部は、反射鏡の位置を制御して反射光の光路長を制御してよい。
【0020】
位置変調部は、空間変調器を有してよい。空間変調器は、光が入射され、異なる光路長を通過した光を、第1の方向とは異なる第2の方向における異なる位置に出射してよい。
【0021】
受光部は、二次元に配置された複数の受光素子を有してよい。
【0022】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態における光学特性測定装置100の概略構成を示すブロック図である。
図2】光学特性測定装置100の他例の概略構成を示すブロック図である。
図3】広帯域光源110、第1フィルタ120、および第2フィルタ130の構成例を説明する図である。
図4A】屈折率測定の一例を示す。
図4B】入射角を調整するタイプの屈折率測定の一例を示す。
図5】光学特性測定装置100の一例を示す。
図6】ラインセンサの一例を示す。
図7】二次元イメージセンサの一例を示す。
図8】曲面回折格子を用いる光学特性測定装置100の一例の側面図である。
図9】曲面回折格子を用いる光学特性測定装置100の一例の上面図である。
図10】コリメートレンズを用いる光学特性測定装置100の一例の側面図である。
図11】コリメートレンズを用いる光学特性測定装置100の一例の上面図である。
図12】コリメートレンズを用いる光学特性測定装置100の他の例の側面図である。
図13】コリメートレンズを用いる光学特性測定装置100の他の例の上面図である。
図14】制御部160による制御内容の一例を示す図である。
図15】実施例における光学特性測定装置100を示す図である。
図16】本発明の第2実施形態における光学特性測定装置200の概略構成を示すブロック図である。
図17】ビームスプリッタを用いた光学特性測定装置200の概略構成を示す図である。
図18】時間的に光路長を変調する光学特性測定装置200の概略構成を示す図である。
図19】空間変調器を有する光学特性測定装置200の一例の側面図である。
図20】空間変調器を有する光学特性測定装置200の一例の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態における光学特性測定装置100の概略構成を示すブロック図である。光学特性測定装置100は、広帯域光源110、第1フィルタ120、第2フィルタ130、受光部140、算出部150、および制御部160を備える。光学特性測定装置100は、光源の長寿命化を達成するために、ガス放電管の光源に代えて、広帯域光源110、第1フィルタ120、および第2フィルタ130を備える。
【0026】
広帯域光源110は、光を出射する光源である。広帯域光源110は、スーパーコンティニューム光(SC光)を出射するスーパーコンティニューム光源(SC光源と略される)であってよい。SC光源は、光ファイバの非線形効果を利用して広帯域にわたって位相の揃った1Wレベルの光(SC光)を出す広帯域パルス光源である。波長範囲は光ファイバの材質に依存し、石英ファイバの場合は400nm以上2400nm以下である。
【0027】
SC光は、超短パルスレーザから出射する高強度のパルス光を光ファイバに入射して発生させてよい。超短パルスレーザは、ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザであってよい。SC光源の総光強度は、0.8W以上、3W以下であってよい。但し、SC光源は、この場合に限定されない。高強度の光を光ファイバに入射すると自己位相変調、相互位相変調、四光波混合、ラマン散乱などの非線形効果が起こり、非常にブロードなスペクトル光となって出射される。SC光は、横シングルモードであり、位相が揃っている。なお、SC光源は、スペクトルが離散的で等間隔に並んだ周波数線からなる光周波数コムであるが、周波数線間の間隔が0.0001nm程度であるので、実質的に連続スペクトルと見做される。
【0028】
受光部140は、試料10を透過、反射、または屈折した光を受光する。試料10は、ガラスおよび樹脂等の材料であってよい。算出部150は、受光部140の受光結果から、試料10の屈折率を算出する。第1フィルタ120および第2フィルタ130は、広帯域光源110と受光部140の間の光路に配置される。第2フィルタ130は、第1フィルタの後段に配置される。図1に示される例では、第1フィルタ120および第2フィルタ130は、試料10の前段に配置される。
【0029】
本明細書において、一部材が他部材の前段にあることは、一部材が他部材よりも光路において光源に近いことを意味し、一部材が他部材より光源に近い限りにおいて一部材と他部材の間に更に別の構成が介在する場合を含む。一部材が他部材の後段にあることは、一部材が他部材よりも光路において受光部140に近いことを意味し、一部材が他部材より受光部140に近い限りにおいて一部材と他部材の間に更に別の構成が介在する場合を含む。
【0030】
図2は、光学特性測定装置100の他例の概略構成を示すブロック図である。光学特性測定装置100において、第1フィルタ120および第2フィルタ130は、試料10の後段に配置されてもよい。
【0031】
図3は、広帯域光源110、第1フィルタ120、および第2フィルタ130の構成例を説明する図である。本例において、第1フィルタ120および第2フィルタ130の一方は、ファブリーペローエタロン部170を含み、第1フィルタ120および第2フィルタ130の他方は、回折格子180を含む。回折格子180は、モノクロメータを構成してよい。光学特性測定装置100は、広帯域光源110のSC光から、ファブリーペローエタロン部170および回折格子180を用いて、光を選択する。
【0032】
図3の上側に示されるとおり、前段の第1フィルタ120が、ファブリーペローエタロン部170を含み、後段の第2フィルタが回折格子180を含んでもよい。一方、図3の下側に示されるとおり、前段の第1フィルタ120が、回折格子180を含んでもよく、後段の第2フィルタがファブリーペローエタロン部170を含んでもよい。
【0033】
ファブリーペローエタロン部170は、そのフィネスを適切に設定することで狭線幅な透過スペクトルを得ることができる。したがって、ファブリーペローエタロン部170の分解能は、回折格子180を用いたモノクロメータの分解能に比べて高い。本明細書で、分解能は、波長分解能を意味し、特に、透過スペクトルの半値全幅(FWHM)で評価される。透過スペクトルの半値全幅(FWHM)が小さくなるほど、分解能が高くなる。ファブリーペローエタロン部170における透過スペクトルの半値全幅(FWHM)は0.01nm以下であってよい。
【0034】
ファブリーペローエタロン部170は、自由スペクトル領域(FSR)を広く設定することが容易ではない。ファブリーペローエタロン部170は、自由スペクトル領域(FSR)は、例えば、0.05nmである。
【0035】
一方、回折格子180、および回折格子180を用いて構成されるモノクロメータは、ファブリーペローエタロン部170に比べて低い波長分解能を有する。すなわち、回折格子180を用いたモノクロメータにおける透過スペクトルの半値全幅(FWHM)は、ファブリーペローエタロン部170に比べて大きく、例えば、0.05nmである。モノクロメータの分解能Δλ(半値全幅FWHM)は、用いる回折格子180の逆線分散(dλ/dx)とスリット幅Δxとを乗じて計算される。
【0036】
本例では、一例において、逆線分散(dλ/dx)1.47nm/mm、スリット幅Δx=0.03mmに調整して、モノクロメータの分解能Δλを0.05nm程度とする。モノクロメータにおける分解能Δλは、ファブリーペローエタロン部170の自由スペクトル領域の広さ以下としてよい。回折格子180の自由スペクトル領域(FSR)は、ファブリーペローエタロン部170の自由スペクトル領域(FSR)より広い。実質的に、回折格子180の自由スペクトル領域(FSR)は、広帯域光源110のスペクトル範囲により広い。
【0037】
以上のように、第1フィルタ120は、第2フィルタ130より分解能の高さおよび自由スペクトル領域の広さの値の一方が大きい。第2フィルタ130は、第1フィルタ120より分解能の高さおよび自由スペクトル領域の広さの値の他方が大きい。
【0038】
制御部160は、第1フィルタ120および第2フィルタ130を通過した光が、He放電管のd線(587.56nm)、H放電管のC線(656.27nm)およびF線(486.13nm)、Hg放電管のg線(435.83nm)に対応する複数の波長から選ばれた複数の波長を中心波長として有するように、第1フィルタ120および第2フィルタ130を制御してよい。これらの波長は、屈折率測定において使用される波長としてJIS規格に規定されている代表的な波長である。光学特性測定装置100は、複数の波長のなかから測定波長を切り替えて、各波長における試料の屈折率を測定することができる。
【0039】
さらに、Hg放電管のe線(546.1nm)、i線(365.0nm)、およびh線(404.7nm)、Cd放電管のF´線(480.0nm)およびC´線(643.9nm)、He放電管のr線(707.5nm)、およびHg放電管のt線(1014.0nm)、およびHe-Neレーザ(632.8nm)から選ばれた複数の波長を中心波長として有するように、制御部160が、第1フィルタ120および第2フィルタ130を制御してもよい。
【0040】
例えば、ファブリーペローエタロン部170は、互いに平行になるように配置された一対の平面の半透明鏡(エタロン対)を含んでいる。一対の半透明鏡の少なくとも一方に駆動部(スキャンドライバ)が接続され、両半透明鏡間の距離が変更可能に構成されている。駆動部は、例えばピエゾ素子から構成される。
【0041】
したがって、制御部160は、上述した波長を出力するようにモノクロメータを制御するとともに、モノクロメータの回折格子180から出射される光の波長に応じて、ファブリーペローエタロン部170の両半透明鏡間の距離を制御する。なお、複数対のファブリーペローエタロン部170を設けて、所望の波長に応じて複数対のファブリーペローエタロン部170のなかから使用するファブリーペローエタロン部170を選択するように構成してもよい。
【0042】
このように、広帯域光源110、第1フィルタ120、第2フィルタ130、および制御部160によって、各ガス放電管を用いるのと同様の中心波長と、その波長分解能(半値全幅0.01nm)の光を選択することができる。そして、選択した光を用いて光学特性を測定することが可能となる。光学特性の測定としては、最小偏角法、臨界角法、Vブロック法等が存在する。本発明の光学特性測定装置100は、受光部140の受光結果から、試料10の屈折率を算出するものであれば、すべてに適用可能である。Vブロック法は、屈折率の測定精度が2×10-5程度であり、臨界角法より高い測定精度を実現できる。また、測定が簡易である。さらに、試料の面が研磨面でなく、スリ面でも測定が可能である。
【0043】
図4Aは、屈折率測定の一例を示す。本実施形態の光学特性測定装置100は、標準材料20を備えてよい。標準材料20は、光路に配置される。標準材料20は透過性であり、標準の屈折率Nを有する。標準の屈折率Nは既知である。図4Aの例では、標準材料20の一の面(図4Aでは上面)に溝22が形成されている。標準材料20と試料10とが接触面23で接触する。接触面に入射する光の光軸(図4AではZ軸)は、接触面23に対して傾いている。ここで、傾いているとは、直交していないことを意味する。
【0044】
図4Aの例では、測定を行うときには試料10の2面の側壁11が溝22に当接するように載置される。光は、標準材料20のおよび試料10を通過し、受光部140によって受光される。標準材料20および試料10を透過した光の進行角度iと試料10の屈折率nとは以下のような関係がある。なお、Nは、標準材料20の屈折率である。
【数1】
【0045】
したがって、算出部150は、標準材料20および試料10を透過した光の進行角度iを受光部140の受光結果から取得して、試料10の屈折率を算出する。
【0046】
標準材料20に入射する光の光軸方向をZとし、標準材料20のV字形状の溝22が設けられた一の面(上面)から反対側の主面(底面)に向かう方向をX方向とし、X方向とZ方向に垂直な方向をY方向とする。受光部140は、X方向(一の方向)における少なくとも2つの位置に配置された受光素子142を有する。そして、算出部150は、試料10を透過した光を受光した受光素子142のX方向(第1の方向)における位置に基づいて試料の屈折率を算出してよい。
【0047】
図4Aでは、標準材料20および試料10からの出射角度を、第1の方向に沿って配置された複数の受光素子142による光の受光結果から算出して試料の屈折率を算出する場合を説明した。但し、光学特性測定装置100は、この場合に限られない。
【0048】
図4Bは、入射角を調整するタイプの光学特性測定装置100の一例を示す。図4Bに示される光学特性測定装置100は、入射角調整部149を備える。本例では、入射角調整部149は、試料10への光の入射角を変更可能である。入射角調整部149は、入射角を変更するように発光側の光学系の出射角度を変化させるアクチュエータを有してよい。本例の受光部140は、一または複数の受光素子を有してよい。受光部140は、第1の方向における予め定められた位置に設けられる。本例では、光は、標準材料20および試料10を通過して受光部140で受光される。受光部140は、1または複数の受光素子142を備えていてよい。
【0049】
算出部150は、受光部140が光を検出したときの入射角に基づいて、試料の屈折率を算出する。入射角調整部149が光の入射角を変更しつつ、受光部140による受光強度がピーク値をとるときの入射角が測定されてよい。受光部140は、2つの受光素子142を備えていてもよい。入射角調整部149が光の入射角を変更しつつ、2つの受光素子142が光を検出し、かつ2つの受光素子142が受光した受光強度の差分が最小となるときの入射角度が測定されてもよい。3以上の受光素子142が設けられており、算出部150は、3以上の受光素子142によって受光された受光強度をガウス曲線等の曲線にフィッティングすることによって、予め定められた曲線との間の誤差が最小となるときの入射角度が測定されてもよい。入射角の測定は、入射角調整部149のアクチュエータの駆動量に基づいて実行されてよい。
【0050】
算出部150は、測定された入射角に基づいて、試料10の屈折率を算出する。一例において算出部150は、上述した数式1において出射角の代わりに入射角を用いて、屈折率を算出してよい。図4A図4B,および図5では、標準材料20および試料10を透過して屈折した光を受光部140が受光する場合を説明したが、光学特性測定装置100は、この場合に限られない。試料を透過、反射、または屈折した光を受光部140が受光する場合において、算出部150が、受光部140の受光結果から、試料10の屈折率を算出する構成に広く利用することができる。
【0051】
図5は、光学特性測定装置100の一例を示す。標準材料20は、調整機構付き光学マウント24に取り付けられてよい。光学マウント24は、X、Y、Zの位置およびX軸を中心とする回転角度θx、Y軸を中心とする回転角度θy、およびZ軸を中心とする回転角度θzを調整可能な調整機能を有してよい。また、レンズ26等の光学系が試料10と受光部140の間に設けられていてよい。レンズ26等の光学系は、X、Y、Zの位置およびX軸を中心とする回転角度θx、Y軸を中心とする回転角度θyを調整可能な調整機能を有してよい。
【0052】
受光部140は、算出部150と通信をする通信部144を備えてよい。通信部144は、リンク用インタフェースおよびドライバ回路を含んでよい。
【0053】
図6は、ラインセンサの146一例を示す。本例において、受光部140は、第1の方向(X軸方向)に複数の受光素子142が接続されたラインセンサ146であってよい。試料10を透過した光を受光した受光素子142のX方向(第1の方向)におけるピーク位置は、各受光素子142の受光強度に基づいて、ガウス曲線にフィッティングすることによって検出してよい。一例において、フィッティング処理によって、ラインセンサの各受光素子のサイズ(ピクセル)以下の検出精度で、ピーク位置を検出することができる。
【0054】
以上のように、広帯域光源110、第1フィルタ120、第2フィルタ130、受光部140、算出部150、および制御部160を備える光学特性測定装置100を説明したが、この構成に限られない。広帯域光源110の後段には、ビームエキスパンダが配置されてよく、光路上にはいくつかのレンズおよびミラー等が追加されてもよい。
【0055】
X軸方向に複数の受光素子142が配置された一次元のラインセンサ146を受光部140として用いる場合を上述したが、受光部140として、二次元イメージセンサ148を用いてもよい。図7は、二次元イメージセンサ148の一例を示す。二次元イメージセンサ148は、第1の方向(図7では、X軸方向)と、第1の方向とは異なる第2の方向(図7では、Y軸方向)とに沿って二次元に配置された複数の受光素子142を有する。
【0056】
二次元イメージセンサ148において、回折格子180によって分散されることによって異なる波長成分の光が第2の方向(Y軸方向)の異なる位置の受光素子142によって受光される。算出部150は、第2の方向の異なる位置毎に、試料10を透過した光を受光した受光素子142の第1の方向(X軸方向)における位置に基づいて、異なる波長成分毎の試料10の屈折率を算出する。したがって、二次元イメージセンサ148を用いることにより、複数の波長における試料10の屈折率を一度の測定によって算出することができる。
【0057】
図8は、曲面回折格子182を用いる光学特性測定装置100の一例の側面図である。図9は、曲面回折格子182を用いる光学特性測定装置100の一例の上面図である。なお、図8および図9においては、ファブリーペローエタロン部170は表示していないが、曲面回折格子182の前段または後段にファブリーペローエタロン部170が設けられる。なお、図8および図9においては、第1フィルタ120および第2フィルタ130は、試料10の後段に配置される。
【0058】
図8に示されるとおり、標準材料20および試料10を透過した光の進行角度iが試料10の屈折率によって変化した場合であっても、光が回折格子への入射角が略直角(例えば、80°から100°の範囲)となるように、曲面回折格子182が設けられてよい。曲面回折格子182は、試料10側が凹の曲面183を有する回折格子である。このように試料10側が凹の曲面183を有することによって、回折格子における出力波長の誤差を低減することができる。
【0059】
図9に示されるとおり、曲面回折格子182によって光が分散されることによって異なる波長成分の光が第2の方向(Y軸方向)の異なる位置に照射される、そして、図8に示されるとおり、第2の方向(Y軸方向)の異なる位置毎に、試料10を透過した光が試料10の屈折率nに応じて第1の方向(X軸方向)において異なる受光素子142によって受光される。算出部150は、試料10を透過した光を受光した受光素子142の第1の方向(X軸方向)における位置に基づいて、異なる波長成分毎の試料10の屈折率を算出する。
【0060】
図10は、コリメートレンズ184を用いる光学特性測定装置100の一例の側面図である。図11は、コリメートレンズ184を用いる光学特性測定装置100の一例の上面図である。光路上において、試料10と回折格子180の間のいずれかの位置にコリメートレンズ184が設けられる。図10および図11においては、試料10と回折格子180の間にコリメートレンズ184とファブリーペローエタロン部170を備えている。したがって、入射側からみて試料10、コリメートレンズ184、ファブリーペローエタロン部170、および回折格子180の並び順で配置されている。但し、試料10、コリメートレンズ184、回折格子180、およびファブリーペローエタロン部170の並び順で配置されてもよい。なお、ファブリーペローエタロン部170は、一対の半透明鏡172a、172bを含んでいる。
【0061】
図10および図11は、第1フィルタ120および第2フィルタ130として機能するファブリーペローエタロン部170および回折格子180が試料10の後段に設けられている。ファブリーペローエタロン部170および回折格子180は、光が垂直に入射する場合に誤差が小さくなり、光が斜めに入射する場合に誤差が大きくなる。したがって、ファブリーペローエタロン部170および回折格子180に、光が斜めに入射することを避けることが望ましい。
【0062】
標準材料20および試料10を透過した光の進行角度iが試料10の屈折率によって変化した場合であっても、コリメートレンズ184によって光がコリメートされる。したがって、ファブリーペローエタロン部170および回折格子180に、光が斜めに入射することを防止することができる。
【0063】
図11に示されるとおり、回折格子180によって光が分散されることによって異なる波長成分の光が第2の方向(Y軸方向)の異なる位置に照射される、そして、図10に示されるとおり、第2の方向(Y軸方向)の異なる位置毎に、試料10を透過した光が試料10の屈折率nに応じて第1の方向(X軸方向)において異なる受光素子142によって受光される。算出部150は、試料10を透過した光を受光した受光素子142の第1の方向(X軸方向)における位置に基づいて、異なる波長成分毎の試料10の屈折率を算出する。受光部140としては、二次元イメージセンサ148が設けられてよい。
【0064】
図12は、コリメートレンズを用いる光学特性測定装置100の他の例の側面図である。図13は、コリメートレンズを用いる光学特性測定装置100の他の例の上面図である。図12および図13に示されるとおり、第1フィルタ120および第2フィルタ130として機能するファブリーペローエタロン部170および回折格子180が試料10の前段に設けられている場合においても、図12および図13に示されるとおり、コリメートレンズ184が設けられてよい。コリメートレンズ184は、試料10と回折格子180の間に備えられる。
【0065】
図13に示されるとおり、回折格子180は、光を分散するとによって異なる波長成分の光が第2の方向に異なる角度で照射される。したがって、コリメートレンズ184は、回折格子180から出射された光をコリメートして、試料10に光を照射する。図13に示されるとおり、回折格子180によって光が分散されることによって異なる波長成分の光が第2の方向(Y軸方向)の異なる位置に照射される。そして、図12に示されるとおり、第2の方向(Y軸方向)の異なる位置毎に、試料10を透過した光が試料10の屈折率nに応じて第1の方向(X軸方向)において異なる受光素子142によって受光される。受光部140として、二次元イメージセンサ148が用いられる。なお、コリメートレンズ184に代えて、凹面鏡を用いてもよい。凹面鏡はコリメートレンズ184と同様の機能を実現することができる。
【0066】
図14は、制御部160による制御内容の一例を示す図である。ファブリーペローエタロン部170は、一対の半透明鏡172a、172bを含む。制御部160は、一対の半透明鏡172a、172bの少なくとも一方に駆動部174(スキャンドライバ)が接続される。駆動部174は、両半透明鏡172a、172b間の距離を変更する。駆動部174は、例えばピエゾ素子から構成される。制御部160は、所望の波長に応じて、両半透明鏡172a、172b間の距離を制御する。さらに、制御部160は、一対の半透明鏡172a、l72bの少なくとも一方の反射率を調整するための反射率調整部176を備えてよい。
【0067】
反射率調整部176は、例えば、エレクトロクロミック素子である。エレクトロクロミックとは、電荷の授受によって酸化還元反応が可逆的に起こり、可逆的に色が変化する現象をいう。反射率調整部176は、半透明鏡172a,172bのどちらか一方の表面に配置されてよい。半透明鏡の反射率が高くなるほど、ファブリーペローエタロン部170を透過する光スペクトルの半値全幅が狭くなる。しかしながら、あまり光スペクトル半値全幅が狭くなると、光の強度が低下する。したがって、制御部160は、反射率調整部176に所定の電圧を与えることによって、半値半幅が0.08nm以上0.15nm以下になるように、反射率を調整してもよい。
【0068】
以上のように、本発明の第1実施形態を実際に適用した実施例について説明する。図15は、実施例における光学特性測定装置100を示す。本実施例の光学特性測定装置100は、第1フィルタ120として、ファブリーペローエタロン部170を有し、第2フィルタ130としてモノクロメータ186を有する。モノクロメータ186は、回折格子180を有する。広帯域光源110の出射側には、ビームエキスパンダ188が設けられている。ファブリーペローエタロン部170とモノクロメータ186との間には、2枚の鏡185a、185bが設けられている。モノクロメータ186の前後には、それぞれレンズ187a、187bが設けられる。受光部140として、ラインセンサ146(ラインカメラ)を備える。ファブリーペローエタロン部170およびモノクロメータ186を介して出力される光は中心波長が、H放電管のF線(486.13nm)、He放電管のd線(587.56nm)、およびH放電管のC線(656.27nm)となるように、ファブリーペローエタロン部170とモノクロメータ186を制御した。サンプルとして、試料No.1および試料No.2を測定した。表1は、試料No.1の測定結果を示し、表2および表3は、試料No.2の測定結果を示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
表1に示されるとおり、試料No.1については、参照屈折率に対して、1×10-5から2×10-5の精度で屈折率を測定することができた。表2および表3に示されるとおり、試料No.2については、参照屈折率に対して、7×10-4以下の精度で屈折率を測定することができた。このように、実際のH放電管、He放電管、およびH放電管を用いていないのにもかかわらず、実際のH放電管、He放電管、およびH放電管を用いた場合と同様の屈折率測定が可能であった。そして、本実施例によれば、放電管と異なり、動作寿命を長くすることができる。
【0073】
図16は、本発明の第2実施形態における光学特性測定装置200の概略構成を示すブロック図である。光学特性測定装置200は、広帯域光源210、光路長変調部220、受光部230、およびフーリエ変換部240を備える。
【0074】
広帯域光源210は、光を出射する光源である。広帯域光源210は、スーパーコンティニューム光(SC光)を出射するスーパーコンティニューム光源であってよい。光路長変調部220は、広帯域光源210からの光の光路長を変調させて試料10に出射する。受光部230は、試料10を透過した光を受光する。受光部230は、第1の方向における少なくとも2つの位置に配置された受光素子を有する。
【0075】
フーリエ変換部240は、受光部230の各受光素子における受光結果を、光路長変調部220における光路長を用いてフーリエ変換する。フーリエ変換部240は、フーリエ変換を用いて試料10の屈折率スペクトルを算出する算出部である。光路長変調部220は、時間軸で光路長変調してもよく、空間軸で光路長変調してもよい。なお、本明細書における光路長は、光路長のみならず、光路差Δz、および光路差Δzを定数倍した物理量であってよい。光路差Δzを定数倍した物理量は、例えば、光路差Δzを光速で除した遅延時間τである。
【0076】
図17は、ビームスプリッタを用いた光学特性測定装置200の概略構成を示す図である。図17に示される例では、光路長変調部220は、時間軸において光の光路長を変調させる。光路長変調部220は、ビームスプリッタ222と、第1反射鏡223と、第2反射鏡224と、移動制御部225とを含む。ビームスプリッタ222は、広帯域光源210からの入射光を第1光と第2光とに分割して、第1光および第2光を第1光路及び第2光路にそれぞれ出力する。
【0077】
ビームスプリッタ222は、第1光路からの戻り光と第2光路からの戻り光とを合成して干渉光を得る。ビームスプリッタ222は、干渉光を試料10に対して出射する。第1反射鏡223は、第1光路を伝搬する第1光をビームスプリッタ222の方に反射させる。第2反射鏡224は、第2光路を伝搬する第2光をビームスプリッタ222の方に反射させる。第1反射鏡223は可動鏡であり、第2反射鏡224は固定鏡である。移動制御部225は、第1反射鏡223の位置を制御して反射光の光路長を制御する制御部である。
【0078】
光路長変調部220は、光を反射させる第1反射鏡223(可動鏡)を備える。そして、光路長変調部220は、第2光と、第1反射鏡223からの反射光である第1光とを干渉させる合成部としてのビームスプリッタ222を備える。光路長変調部220は、第1反射鏡223の位置を制御して反射光の光路長を制御する移動制御部225を備える。移動制御部225は、光軸に平行な方向における指定された可動範囲内で予め定められた中心位置から第1反射鏡223を往復移動させる。往復移動にはモータが用いられてよい。これにより、ビームスプリッタ222と第1反射鏡223の反射鏡面との間の可変長光路の光路長が時間的に変化する。
【0079】
固定長光路である第2光路の光路長は時間的に変化せず、可変長光路である第1光路の光路長が時間的に変化するので、第1光路からの戻り光と第2光路からの戻り光との間には、時間的に変化する光路差が発生する。換言すれば、第1光路からの戻り光と第2光路からの戻り光との間に、光路差が生じる。したがって、干渉光の強度は、光路差の変化に応じて波状に変化する。このようにして、時間軸において光路差Δzが変化したときの干渉光が試料10に出射される。試料10を透過した光は、受光部230によって受光される。
【0080】
さらに、光学特性測定装置200は、単波長レーザ212を備えてよい。単波長レーザ212は、既知の波長の光を出射する調整用光源を備えている。調整用光源から出射された光についても、第1光路からの戻り光と第2光路からの戻り光とをビームスプリッタ222によって合成して干渉光が得られる。可変長光路である第1光路と固定長光路である第2光路との光路差の時間的変化に応じて、干渉光の強度は、その光路差の変化に応じて波状に変化する。
【0081】
調整用光源からの光は既知の単波長であるので、第1光路からの戻り光と第2光路からの戻り光との光路差が半波長の整数倍である場合に、調整用光源からの光の干渉光の強度が弱まり、光路差が、波長の整数倍の場合に、調整用光源からの光の干渉光の強度が強まる。光学特性測定装置200は、調整用光源からの光の干渉光について受光する調整用受光部231を備えてよい。調整用受光部231が調整用光源からの光の干渉光の強度を検出することによって、第1反射鏡223の位置を知ることができ、移動制御部225によって制御される第1反射鏡223の位置を正確に補正することができる。
【0082】
受光部230および調整用受光部231によって得られた受光結果は、データ記録部250(データロガー)に記録されてよい。フーリエ変換部240は、受光部140が受光した光路差の時間変化と受光強度との測定結果であるインターフェログラムを取得する。
【0083】
図18は、時間的に光路長を変調する光学特性測定装置200の概略構成を示す図である。上述のように時間的に光路長が変調された光が標準材料20および試料10を透過する。標準材料20および試料10を透過した光は、受光部230で受光される。受光部230は、X方向(一の方向)における少なくとも2つの位置に配置された受光素子232を有する。そして、算出部150は、試料10を透過した光を受光した受光素子232のX方向(第1の方向)における位置に基づいて試料の屈折率を算出してよい。
【0084】
さらに、フーリエ変換部240は、第1反射鏡223の位置Zを変化させて光路長を変化させた場合における、それぞれの受光素子232における受光結果に基づいて、第1の方向における各位置に入射した光の波長を算出する。
【0085】
図19は、空間変調器を有する光学特性測定装置200の一例の側面図である。図20は、空間変調器を有する光学特性測定装置200の一例の上面図である。図17および図18においては、光路長変調部220は、可動鏡である第1反射鏡223の位置Zを変化させ、時間的に光路長を変化させる。これによって、光路長変調部220は、時間軸において光路長変調させる。一方、図19お9よび図20に示される例では、空間的に光の光路長を変化させる。
【0086】
図19および図20においては、光路長変調部220として空間変調器260を備える。空間変調器260は、空間位相変調器とも呼ばれる。空間変調器260には、光源から光が入射される。空間変調器260は、異なる光路長を通過した光を、第1の方向(X軸方向)とは異なる第2の方向(Y軸方向)における異なる位置に出射する。図20に示されるとおり、異なる光路長を通過した光が異なるy軸位置に出射される。空間変調器260は、例えばLCOS(Liquid Crystal On Silicon)構造を有する。LCOSは、Si基板上に液晶を配置した構造を有する。Si基板上には、半導体技術によって電気アドレス回路が構築される。最上層にはアルミ電極によって画素が構成され、各画素で独立して電位を制御できるように構成してよい。
【0087】
Si基板上に、一定の間隔を保ってガラス基板を保持し、Si基板とガラス基板の間の間隙に液晶材料を配置する。液晶分子はSi基板とガラス基板上に施された配向制御技術によって、基板に対して平行に配向される。アルミ電極の電位を画素ごとに独立に制御することによって、液晶分子を起立させ、光路長を変化させてよい。空間変調器260は、LCOS構造を有するものに限られない。
【0088】
図20に示されるように、異なる光路長(z1、z2、z3、z4)を通過した光を第2の方向(Y軸方向)の異なる位置に出射する。図19に示されるように、フーリエ変換部240は、試料10を透過した光を受光した受光素子232のX方向(第1の方向)における位置に基づいて試料10の屈折率を算出してよい。さらに、フーリエ変換部240は、試料10を透過した光を受光した受光素子232のY方向(第2の方向)における異なる位置での受光部230の各受光素子232における受光結果を、空間変調器260における光路長を用いてフーリエ変換して、試料10の屈折率スペクトルを算出してよい。受光部230は、第1の方向と、第1の方向とは異なる第2の方向とに沿って二次元に配置された複数の受光素子232を有してよい。
【0089】
フーリエ変換部240は、試料10を透過した光を受光した受光素子232の第1の方向における位置に基づいて試料10の屈折率を算出し、それぞれの受光素子232における受光結果に基づいて、第1の方向における各位置に入射した光の波長を算出してよい。
【0090】
以上のようなフーリエ分光を用いることによっても、ガス放電管を用いることなく、屈折率を測定することができる。
【0091】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0092】
10・・試料、11・・側壁、20・・標準材料、22・・溝、23・・接触面、24・・光学マウント、26・・レンズ、100・・光学特性測定装置、110・・広帯域光源、120・・第1フィルタ、130・・第2フィルタ、140・・受光部、142・・受光素子、144・・通信部、146・・ラインセンサ、148・・二次元イメージセンサ、149・・入射角調整部、150・・算出部、160・・制御部、170・・ファブリーペローエタロン部、172・・半透明鏡、174・・駆動部、176・・反射率調整部、180・・回折格子、182・・曲面回折格子、183・・曲面、184・・コリメートレンズ、185・・鏡、186・・モノクロメータ、187・・レンズ、188・・ビームエキスパンダ、200・・光学特性測定装置、210・・広帯域光源、212・・単波長レーザ、220・・光路長変調部、222・・ビームスプリッタ、223・・第1反射鏡、224・・第2反射鏡、225・・移動制御部、230・・受光部、231・・調整用受光部、232・・受光素子、240・・フーリエ変換部、250・・データ記録部、260・・空間変調器
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20