(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】血液ポンプコントローラ及び補助人工心臓システム
(51)【国際特許分類】
A61M 60/178 20210101AFI20230414BHJP
A61M 60/508 20210101ALI20230414BHJP
A61M 60/88 20210101ALI20230414BHJP
【FI】
A61M60/178
A61M60/508
A61M60/88
(21)【出願番号】P 2018242272
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】392000796
【氏名又は名称】株式会社サンメディカル技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】篠原 一人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 匡彦
(72)【発明者】
【氏名】花岡 正明
(72)【発明者】
【氏名】小池 希望
(72)【発明者】
【氏名】藤森 弘章
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-110287(JP,A)
【文献】特表2016-501699(JP,A)
【文献】特開2015-015140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/104
A61M 60/178
A61M 60/508
A61M 60/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送液機構によって血液をポンプ室に取り込み前記ポンプ室に取り込んだ該血液を使用者の体内に送り込む血液ポンプをコントロールする血液ポンプコントローラであって、
駆動ケーブルを介して前記血液ポンプと接続され、前記血液ポンプを駆動するコントローラ本体と、
電力を蓄え、蓄えた電力を前記コントローラ本体に供給するバッテリパックと、
前記バッテリパックを収容し保持するスロットが設けられたバッテリ収容体と、を備え、
前記コントローラ本体は前記バッテリ収容体を兼ねており、
前記バッテリパックは、バッテリ接続コネクタSが配設された第1面を少なくとも有しており、
前記スロットは、バッテリ接続コネクタRが配設された第2面を少なくとも有しており、
前記バッテリパック及び前記バッテリ収容体は、前記バッテリパックが前記スロットに収容されると、前記バッテリ接続コネクタS及び前記バッテリ接続コネクタ
Rの間で電気的な接続がなされ、且つ、前記第1面と前記第2面とが対向するように構成され、
前記第1面及び前記第2面の少なくとも一方の面には、前記バッテリパックが前記スロットに収容されて前記第1面と前記第2面とが対向したときに、
前記バッテリ接続コネクタS及び前記バッテリ接続コネクタRで形成される一対のバッテリ接続コネクタを取り囲むようにしてシールするよう構成された第1シール部材が付設されて
おり、
前記スロットの上部であるスロット上部、前記スロットの下部であるスロット下部、前記スロットの開口部側から見て前記スロットの右側部であるスロット右側部、及び、前記スロットの開口部側から見て前記スロットの左側部であるスロット左側部にはそれぞれ側壁が設けられており、
前記スロットは、前記スロット上部の前記側壁、前記スロット下部の前記側壁、前記スロット右側部の前記側壁及び前記スロット左側部の前記側壁で囲んだ状態で前記バッテリパックを収容し、
前記スロット下部における前記スロットの開口側の端部には、前記バッテリパックの下端に設けられた下端凸部を案内するガイドが設けられており、
前記スロット上部には、前記バッテリパックの上端に設けられた上端凸部と係合して前記バッテリパックの上端側をラッチするラッチ機構が設けられている、ことを特徴とする血液ポンプコントローラ。
【請求項2】
送液機構によって血液をポンプ室に取り込み前記ポンプ室に取り込んだ該血液を使用者の体内に送り込む血液ポンプをコントロールする血液ポンプコントローラであって、
駆動ケーブルを介して前記血液ポンプと接続され、前記血液ポンプを駆動するコントローラ本体と、
電力を蓄え、蓄えた電力を前記コントローラ本体に供給するバッテリパックと、
前記バッテリパックを収容し保持するスロットが設けられたバッテリ収容体と、を備え、
前記コントローラ本体と前記バッテリ収容体と
は接続ケーブルで接続されており、
前記バッテリパックは、バッテリ接続コネクタSが配設された第1面を少なくとも有しており、
前記スロットは、バッテリ接続コネクタRが配設された第2面を少なくとも有しており、
前記バッテリパック及び前記バッテリ収容体は、前記バッテリパックが前記スロットに収容されると、前記バッテリ接続コネクタS及び前記バッテリ接続コネクタ
Rの間で電気的な接続がなされ、且つ、前記第1面と前記第2面とが対向するように構成され、
前記第1面及び前記第2面の少なくとも一方の面には、前記バッテリパックが前記スロットに収容されて前記第1面と前記第2面とが対向したときに、
前記バッテリ接続コネクタS及び前記バッテリ接続コネクタRで形成される一対のバッテリ接続コネクタを取り囲むようにしてシールするよう構成された第1シール部材が付設されて
おり、
前記スロットの上部であるスロット上部、前記スロットの下部であるスロット下部、前記スロットの開口部側から見て前記スロットの右側部であるスロット右側部、及び、前記スロットの開口部側から見て前記スロットの左側部であるスロット左側部にはそれぞれ側壁が設けられており、
前記スロットは、前記スロット上部の前記側壁、前記スロット下部の前記側壁、前記スロット右側部の前記側壁及び前記スロット左側部の前記側壁で囲んだ状態で前記バッテリパックを収容し、
前記スロット下部における前記スロットの開口側の端部には、前記バッテリパックの下端に設けられた下端凸部を案内するガイドが設けられており、
前記スロット上部には、前記バッテリパックの上端に設けられた上端凸部と係合して前記バッテリパックの上端側をラッチするラッチ機構が設けられている、ことを特徴とする血液ポンプコントローラ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の血液ポンプコントローラにおいて、
前記バッテリ接続コネクタS又は前記バッテリ接続コネクタRのうちいずれか一方のコネクタは、凸状電極及び凸状電極収容部を有し且つ前記凸状電極が前記凸状電極収容部へ圧入される際の圧入力に対抗する弾性力を有するバネ型コネクタで構成されており、
前記第1シール部
材は第1防水パッキンにより構成されており、
前記第1防水パッキンが付設された前記第1面又は前記第2面を基準としたときに、前記第1防水パッキンにシール押圧力が掛けられていない状態の前記第1防水パッキンの高さをHsとし、
前記バネ型コネクタが付設された前記第1面又は前記第2面を基準としたときに、前記圧入力が掛けられていない状態の前記凸状電極の頂部の高さをH1とし、
前記バネ型コネクタが付設された前記第1面又は前記第2面を基準としたときに、前記圧入力が掛けられて前記凸状電極の頂部が最も押し込まれたときの前記凸状電極の頂部又は前記バネ型コネクタの高さをH2とした場合において、
H2<Hs<H1
の関係を満たすように前記バネ型コネクタ及び前記第1防水パッキンが配置されている、ことを特徴とする血液ポンプコントローラ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の血液ポンプコントローラであって、
前記バッテリパックの下端は、前記バッテリパックを断面視したときに所定の軸を中心とした円弧状となっていることを特徴とする血液ポンプコントローラ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の血液ポンプコントローラであって、
前記第2面は、前記スロットの底部に設けられていることを特徴とする血液ポンプコントローラ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の血液ポンプコントローラであって、
前記バッテリパックの前記バッテリ接続コネクタSは、平面電極であり、
前記第1シール部材は、前記バッテリ接続コネクタRを保持するコネクタホルダと前記スロットの底部を構成するケース部材とで挟まれた位置に配置されていることを特徴とする血液ポンプコントローラ。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載の血液ポンプコントローラであって、
前記バッテリ収容体には、前記バッテリ接続コネクタRの電極側と、前記バッテリ収容体の筐体内部に配置された内部回路と、の間を防水する第2シール部材が更に設けられた、ことを特徴とする血液ポンプコントローラ。
【請求項8】
請求項
7に記載の血液ポンプコントローラにおいて、
前記バッテリ収容体の前記筐体内部には、前記スロットを形成するケース部材の前記第2面の反対側の面である第3面と共に、前記バッテリ接続コネクタRの前記筐体内部側の部位を取り囲むように形成された防水隔壁が更に設けられ、
前記バッテリ接続コネクタRの前記筐体内部側には配線パターンの一端が接続され、
前記配線パターンは、前記防水隔壁を横断して、前記内部回路に接続されており、
前記配線パターンが前記防水隔壁を横断する横断部において、前記防水隔壁と前記配線パターンとの間を封止する前記第2シール部材が設けられている、ことを特徴とする血液ポンプコントローラ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の血液ポンプコントローラにおいて、
前記血液ポンプコントローラがバッテリ駆動モードで動作する場合においては、
前記コントローラ本体から外部に引き出された電気系のケーブルは前記駆動ケーブルのみである、ことを特徴とす
る血液ポンプコントローラ。
【請求項10】
送液機構によって血液をポンプ室に取り込み前記ポンプ室に取り込んだ該血液を使用者の体内に送り込む血液ポンプと、
前記血液ポンプに接続された駆動ケーブルと、
前記駆動ケーブルに接続され、前記血液ポンプをコントロールする血液ポンプコントローラと、
を備える補助人工心臓システムであって、
前記血液ポンプコントローラは、請求項1~
9のいずれかに記載の血液ポンプコントローラであることを特徴とする補助人工心臓システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液ポンプコントローラ及び補助人工心臓システムに関する。
【背景技術】
【0002】
重症の心不全患者を対象に用いる医療機器として、心臓の機能の一部を補う補助人工心
臓システムが知られている。
図9は、従来の血液ポンプコントローラ9及び補助人工心臓システム90を説明するために示す図である。
図9に示すように、補助人工心臓システム90は、使用者500に埋め込まれる血液ポンプ400と、血液ポンプ400及び自己心臓510による血流を接続するための人工血管410,420と、生体の外部において血液ポンプ400をコントロールする血液ポンプコントローラ9と、血液ポンプ400及び血液ポンプコントローラ9の間に配置される駆動ケーブル430とを備えている。
【0003】
1.従来の血液ポンプコントローラ9
従来の血液ポンプコントローラ9は、コントローラ本体910とバッテリパック920とを備える。
コントローラ本体910は、駆動ケーブル430を介して血液ポンプ400に接続され、駆動ケーブル430を通じて血液ポンプ400を駆動する。コントローラ本体910の背面(
図9においては紙面手前側)にはバッテリパック920を各々収容するスロット912a,912bが設けられている。また、コントローラ本体910の上面にはバッテリ接続コネクタ(レセプタクル型。以下、「バッテリ接続Rコネクタ」とする。)914が2個配設されている。
バッテリパック920は、何等かの形で外部から充電されて電力を蓄え、蓄えた電力をコントローラ本体910に供給する。バッテリパック920の上端からはバッテリケーブル922が引き出されており、バッテリケーブル922の一端にはバッテリ接続コネクタ(プラグ型。以下、「バッテリ接続Pコネクタ」とする。)924が配設されている。
スロット912a,912bにバッテリパック920を収容しながら、バッテリ接続Pコネクタ924をバッテリ接続Rコネクタ914に接続することにより、当該バッテリパック920の電力をコントローラ本体910に供給することができる。
【0004】
従来の血液ポンプコントローラ9では、バッテリ接続Pコネクタ924及びバッテリ接続Rコネクタ914として、いわゆる丸形のロック式コネクタが用いられ、例えば、Amphenol Aledn社製のPL-700シリーズ等の市販コネクタが採用されている。
バッテリ接続Pコネクタ924及びバッテリ接続Rコネクタ914の外面は保護カバーで覆われているため、一旦、バッテリ接続Pコネクタ924及びバッテリ接続Rコネクタ914を接続してしまえば、極めて高い防水性及び防塵性が確保される。
バッテリ接続Pコネクタ924のバーレル925は、図示しない同軸を中心として回動可能であり、且つ、回動する円周方向にバネ力が付勢されている。バーレル925の内壁には突出キー(図示せず。以下同様。)が設けられている。バッテリ接続Rコネクタ914のシェル915の外壁には、該突出キーに対応するようにキー溝(図示せず。以下同様。)が設けられている。
【0005】
バッテリ接続Pコネクタ924とバッテリ接続Rコネクタ914との接続は、例えば、次のような工程を経ることにより行う。
(1)バッテリ接続Pコネクタ924をバッテリ接続Rコネクタ914の位置まで移動させる(コネクタの位置合わせ工程)。(2)バッテリ接続Pコネクタ924のバーレル925を指でバネ力に抗って回動させて保持しつつ、バッテリ接続Pコネクタ924を持つ手首を同軸周りに回すことにより、バッテリ接続Pコネクタ924の突出キーがバッテリ接続Rコネクタ914のキー溝に合致して篏合し始める位置を探す(コネクタの角度合せ工程)。(3)バッテリ接続Pコネクタ924をバッテリ接続Rコネクタ914に向けて挿入する。このとき突出キーはキー溝に沿って挿入方向に移動する。突出キーが挿入方向の度当たり又は壁(図示せず)に到達するまで更に挿入を進める。(4)バーレル925をバネ開放する。このとき、バーレル925に付勢されているバネ力によって突出キーはキー溝の形状に沿って周方向に回動する。これ以上回動できない位置までバーレル925が回動したところでコネクタのロックが完了する(コネクタのロック工程)。
なお、バッテリ接続Pコネクタ924をバッテリ接続Rコネクタ914から抜く場合は、上記と逆の工程を実施する。
【0006】
従来の血液ポンプコントローラ9は、上記したような厳重なロック機構を備えたロック式コネクタを用いているため、バッテリ接続Pコネクタ924を一旦バッテリ接続Rコネクタ914に接続したら、複数の工程を経ないとこれを抜くことが出来ない。このため、意図しないバッテリ接続Pコネクタ924の離脱を未然に防ぐことができ、電気的接続を厳重に維持することができる(高い接続信頼性の確保)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、血液ポンプコントローラ及び当該コントローラを含む補助人工心臓システムにおいて電気系統のトラブルは重大な事故の原因となる。こうした背景から、従来の血液ポンプコントローラ9においては厳重なロック機構を備えた上記ロック式コネクタを導入し、高い接続信頼性、防水性及び防塵性を確保している。ただ、これに伴いコントローラ本体910にはバッテリ接続Rコネクタ914を配設する必要があり、そのためのスペースが余分に必要となる。また、バッテリパック920にはバッテリケーブル922を引き出した上でバッテリ接続Pコネクタ924を配設する必要がある。つまり、コントローラ全体としてみるとその分だけ大型化し重量化してしまう。
このように、従来の血液ポンプコントローラ9では、高い接続信頼性、防水性及び防塵性を確保する代償としてコントローラの大型化・重量化をある程度是認せざるを得ないという課題があった(大型化・重量化の課題)。
【0009】
また、バッテリ接続Pコネクタ924及びバッテリ接続Rコネクタ914の接続/接続解除(抜き)にあたっては、上記(1)~(4)のような煩雑な工程を経る必要があり、これを扱う者は指先の集中力が必要となる。このため、使用者500自身の条件(体調がすぐれない等)や外部環境の条件(照度が低すぎる/高すぎて視認性が悪い等)によっては、例えば、バッテリパック920をスロット912a,912bに収容したもののコネクタを接続すること自体を失念するとか、バッテリ接続Pコネクタ924をバッテリ接続Rコネクタ914に差し込んだもののロック工程まで到達しないために電極同士の接触が不十分となる、といったバッテリ交換の操作ミスが生ずる可能性もあった。
実際には、仮に上記したような操作ミスを惹き起こしたとしても、図示しない非常用バッテリがバックアップしているため、補助人工心臓システムの稼働を安全に継続することはできる。しかし、抜本的には上記バッテリ交換の操作ミスを未然に防ぐことが要求されている(操作ミスの課題)。
【0010】
2.一般的な電子機器のバッテリパックの接続構造
簡易な構造にして操作ミスを防ぐというアプローチの1つとして、例えば、特許文献1に記載されたような一般的な電子機器のバッテリパックの接続構造を血液ポンプコントローラに導入することも考えられる。
図10は、特許文献1に記載されたバッテリパック820及びノートブックPC810の接続構造を説明するために示す図である。
図10(a)はノートブックPC810の底面側から視たときの斜視図であり、
図10(b)はノートブックPC810の上面側から視たときの斜視図であり、
図10(c)はコネクタ部分のみを特に拡大した接続構造の要部模式図である。
図10に示すように、特許文献1に記載されたバッテリパックの接続構造は、バッテリパック820にメス側コネクタ821及び凹部822が配設されており、ノートブックPC810にはスロット815、オス側コネクタ811及び位置決めプレート812が配設されている。バッテリパック820がスロット815に装着されるとき、バッテリパック820の凹部822がノートブックPC810の位置決めプレート812に案内されて篏合し、これに追従するようにしてメス側コネクタ821がオス側コネクタ811に接触する。このようにして、バッテリパック820とノートブックPC810との間で電気的な接続がなされる。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載されたバッテリパックの接続構造は、一般的な電子機器を想定しているため厳重なロックがなされるものでなく、振動・衝撃等の何等かのはずみで意図せずバッテリパック820がノートブックPC810から離脱する可能性がある。このような意図せず電気的な接続が絶たれる可能性がある構造は、血液ポンプコントローラ及びこれを含む補助人工心臓システムへ直ちに導入することはできない。
また、特許文献1に記載されたバッテリパックの接続構造は、一般的な電子機器を想定しているため、血液ポンプコントローラに必要な防水性が確保されているとまでは言えない。
【0012】
そこで本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも小型・軽量でバッテリ交換の操作ミスを未然に防ぐことができ、且つ、従来よりも防水性の高い血液ポンプコントローラを提供することを目的とする。また、そのような本発明の血液ポンプコントローラを含む補助人工心臓システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1]本発明の第1の血液ポンプコントローラは、送液機構によって血液をポンプ室に取り込み前記ポンプ室に取り込んだ該血液を使用者の体内に送り込む血液ポンプをコントロールする血液ポンプコントローラであって、駆動ケーブルを介して前記血液ポンプと接続され、前記血液ポンプを駆動するコントローラ本体と、電力を蓄え、蓄えた電力を前記コントローラ本体に供給するバッテリパックと、前記バッテリパックを収容し保持するスロットが設けられたバッテリ収容体と、を備え、前記コントローラ本体は前記バッテリ収容体を兼ねており、前記バッテリパックは、バッテリ接続コネクタS(給電側)が配設された第1面を少なくとも有しており、前記スロットは、バッテリ接続コネクタR(受電側)が配設された第2面を少なくとも有しており、前記バッテリパック及び前記バッテリ収容体は、前記バッテリパックが前記スロットに収容されると、前記バッテリ接続コネクタS及び前記バッテリ接続コネクタR(以下、「一対のバッテリ接続コネクタ」という)の間で電気的な接続がなされ、且つ、前記第1面と前記第2面とが対向するように構成され、前記第1面及び前記第2面の少なくとも一方の面には、前記バッテリパックが前記スロットに収容されて前記第1面と前記第2面とが対向したときに、前記一対のバッテリ接続コネクタを取り囲むようにしてシールするよう構成された第1シール部材が付設されている、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第1の血液ポンプコントローラによれば、バッテリパックがスロットに収容されると、自動的にバッテリ接続コネクタS及びバッテリ接続コネクタRの間で電気的な接続がなされる。このため、従来のようなバッテリケーブル、バッテリ接続Pコネクタ及びバッテリ接続Rコネクタが不要となる。これらの部品が省略できるので、従来よりも小型・軽量な血液ポンプコントローラとなる。また、バッテリ交換にあたり、バッテリ接続Pコネクタをバッテリ接続コネクタRに接続するための煩雑な工程を経る必要がなくなりバッテリ交換の操作が単純化されるため、バッテリ交換の操作ミスを未然に防ぐことができる。
また、バッテリパックがスロットに収容されると、一対のバッテリ接続コネクタが第1シール部材によって外部と隔離される。このため、従来よりも防水性の高い血液ポンプコントローラとなる。
【0015】
[2]本発明の第2血液ポンプコントローラは、送液機構によって血液をポンプ室に取り込み前記ポンプ室に取り込んだ該血液を使用者の体内に送り込む血液ポンプをコントロールする血液ポンプコントローラであって、駆動ケーブルを介して前記血液ポンプと接続され、前記血液ポンプを駆動するコントローラ本体と、電力を蓄え、蓄えた電力を前記コントローラ本体に供給するバッテリパックと、前記バッテリパックを収容し保持するスロットが設けられたバッテリ収容体と、を備え、前記コントローラ本体と前記バッテリ収容体とは所与の接続ケーブルで接続されており、前記バッテリパックは、バッテリ接続コネクタSが配設された第1面を少なくとも有しており、前記スロットは、バッテリ接続コネクタRが配設された第2面を少なくとも有しており、前記バッテリパック及び前記バッテリ収容体は、前記バッテリパックが前記スロットに収容されると、前記バッテリ接続コネクタS及び前記バッテリ接続コネクタR(以下、「一対のバッテリ接続コネクタ」という)の間で電気的な接続がなされ、且つ、前記第1面と前記第2面とが対向するように構成され、前記第1面及び前記第2面の少なくとも一方の面には、前記バッテリパックが前記スロットに収容されて前記第1面と前記第2面とが対向したときに、前記一対のバッテリ接続コネクタを取り囲むようにしてシールするよう構成された第1シール部材が付設されている、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の血液ポンプコントローラによれば、バッテリパック及びバッテリ収容体が上記[1]の第1の血液ポンプコントローラと同様の構成を有しているので、後述する「分散型コントローラ」の態様である場合においても上記した第1の血液ポンプコントローラが得られる効果と同様の効果が得られる。
【0017】
[3]本発明の第1の血液ポンプコントローラ及び第2の血液ポンプコントローラにおいて、前記バッテリ接続コネクタS又は前記バッテリ接続コネクタRのうちいずれか一方のコネクタは、凸状電極及び凸状電極収容部を有し且つ前記凸状電極が前記凸状電極収容部へ圧入される際の圧入力に対抗する弾性力を有するバネ型コネクタで構成されており、前記第1シール部は第1防水パッキンにより構成されており、前記第1防水パッキンが付設された前記第1面又は前記第2面を基準としたときに、前記第1防水パッキンにシール押圧力(シールのための押圧力)が掛けられていない状態の前記第1防水パッキンの高さをHsとし、前記バネ型コネクタが付設された前記第1面又は前記第2面を基準としたときに、前記圧入力が掛けられていない状態の前記凸状電極の頂部の高さをH1とし、前記バネ型コネクタが付設された前記第1面又は前記第2面を基準としたときに、前記圧入力が掛けられて前記凸状電極の頂部が最も押し込まれたときの前記凸状電極の頂部又は前記バネ型コネクタの高さをH2とした場合において、H2<Hs<H1 の関係を満たすように前記バネ型コネクタ及び前記第1防水パッキンが配置されている、ことが好ましい。
【0018】
このようにHs<H1の関係を満たすので、バネ型コネクタの凸状電極は、H1の高さの位置から他方の側のコネクタ(例えば平面電極)と接触し始めることとなり、H1の高さの位置から所定の位置までの間に十分な接触ストロークを確保することができる。
また、H2<Hsの関係を満たすので、例えばバッテリパックの第1面が、スロットの第1防水パッキンに当接した直後、更に第2面側(第1防水パッキンの側)に力が加えられたときにも、凸状電極が更に凸状電極収容部に入り込むストロークが余剰しているため、第1面を第2面側(第1防水パッキンの側)に更に押し込むことができ、第1防水パッキンの弾性力を一層効かせることができる。よって、第1シール部のシール効果を更に高めることができる。
【0019】
[4]本発明の第1の血液ポンプコントローラ及び第2の血液ポンプコントローラにおいて、前記スロットの下部であるスロット下部には、前記バッテリパックの下端に設けられた下端凸部を案内するガイドが設けられており、前記スロットの上部であるスロット上部には、前記バッテリパックの上端に設けられた上端凸部と係合して前記バッテリパックの上端側をラッチするラッチ機構が設けられている、ことが好ましい。
【0020】
このような構成とすることにより、スロット下部でバッテリパックの下端凸部を引掛け、スロット上部でバッテリパックの上端凸部をラッチすることができ、スロットとバッテリパックとの相対的な位置関係を固定し維持することが可能となる。つまり、バッテリパックがスロットからズレたり離脱したりすることを防止することができる。
またスロット内においても、互いに接触しているバッテリ接続コネクタS及びバッテリ接続コネクタRの電極同士がズレたり乖離したりすることを防止できる。また、第1面、第2面及び第1シール部材によるシール(封止)も強固に維持することができる。したがって、高い接続信頼性及び高い防水性を確保することが可能となる。
ここで「下」とは、血液ポンプコントローラを水平面に正置したとき重力が掛かる方向を指し、「上」とは、「下」と逆の方向を指すものとする。但し、血液ポンプコントローラは必ずしもこのような置き方をするとは限らないため、実際には本発明の趣旨を逸脱しない範囲において上記した定義に拘束されるものではない。
【0021】
[5]本発明の第1の血液ポンプコントローラ及び第2の血液ポンプコントローラにおいて、前記バッテリ収容体には、前記バッテリ接続コネクタRの電極側と、前記バッテリ収容体の筐体内部に配置された内部回路と、の間を防水する第2シール部材が更に設けられた、ことが好ましい。
【0022】
このような構成とすることにより、バッテリ収容体の筐体内部に配置された内部回路の防水性を更に高めることが可能となる。
【0023】
[6]上記[5]に記載の血液ポンプコントローラにおいて、前記バッテリ収容体の前記筐体内部には、前記スロットを形成するケース部材の前記第2面の反対側の面である第3面と共に、前記バッテリ接続コネクタRの前記筐体内部側の部位を取り囲むように形成された防水隔壁が更に設けられ、前記バッテリ接続コネクタRの前記筐体内部側には配線パターンの一端が接続され、前記配線パターンは、前記防水隔壁を横断して、前記内部回路に接続されており、前記配線パターンが前記防水隔壁を横断する横断部において、前記防水隔壁と前記配線パターンとの間を封止する前記第2シール部材が設けられている、ことを特徴とする血液ポンプコントローラ。
【0024】
このような構成とすることにより、バッテリ接続コネクタRの前記筐体内部側を防水隔壁で囲んだ態様の場合においても、第2シール部材を設けることにより内部回路の防水性を高めることが可能となる。
【0025】
[7]本発明の第1の血液ポンプコントローラ及び第2の血液ポンプコントローラは、前記血液ポンプコントローラがバッテリ駆動モードで動作する場合においては、前記コントローラ本体から外部に引き出された電気系のケーブルは前記駆動ケーブルのみである、ことを特徴とする。
【0026】
AC/DCアダプタを接続せずにバッテリパックからの電力のみで稼働する「バッテリ駆動モード」で動作する場合、従来の血液ポンプコントローラからは、駆動ケーブルと、バッテリパック~コントローラ本体間を結ぶバッテリケーブルとの少なくとも2本(バッテリパックが2個収容された場合には3本)の電気系ケーブルが外部に引き出されていた。
このため、従来は、例えば、一方のバッテリパックのバッテリケーブルを外すつもりであったところ他方のバッテリパックのバッテリケーブルを外してしまうなど、ケーブルの抜き間違いをする虞があった。また、バッテリパックを視認しづらい環境下では、バッテリケーブルに触れるつもりであったところ駆動ケーブルを触れてしまうといった間違いをする虞もあった。
本発明の血液ポンプコントローラにおいては、バッテリパックがスロットに収容されると、自動的にバッテリ接続コネクタS及びバッテリ接続コネクタRの間で電気的な接続がなされ、且つ、一対のバッテリ接続コネクタが第1シール部材によって封止され外部と隔離されるようになった。このため、従来のように一端にバッテリ接続Pコネクタが配設されたバッテリケーブルをバッテリパックから引き出すことなく、コントローラ本体から外部に引き出された電気系のケーブルは駆動ケーブルのみという構成を好適に採用できることとなった。
このように、本発明の血液ポンプコントローラによれば、バッテリケーブル及び一対のバッテリコネクタが不要となって従来よりも小型・軽量となり、且つ、従来のようなケーブルの抜き間違い等もなく、バッテリ交換の操作ミスを未然に防ぐことができる血液ポンプコントローラとなる。
【0027】
[8]本発明の補助人工心臓システムは、送液機構によって血液をポンプ室に取り込み前記ポンプ室に取り込んだ該血液を使用者の体内に送り込む血液ポンプと、前記血液ポンプに接続された駆動ケーブルと、前記駆動ケーブルに接続され、前記血液ポンプをコントロールする血液ポンプコントローラと、を備える補助人工心臓システムであって、前記血液ポンプコントローラは、上記[1]~[7]のいずれかに記載の血液ポンプコントローラであることを特徴とする。
【0028】
本発明の補助人工心臓システムがこのような構成を有していることから、上記[1]~[7]に記載の血液ポンプコントローラによって得られる効果と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1を説明するために示す図である。
【
図2】実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1を説明するため示す図である。
【
図3】バッテリ接続コネクタR110(バネ型コネクタ111)及び第1シール部材140(第1防水パッキン141)の高さの関係を説明するために示す断面図である。
【
図4】実施形態2に係る血液ポンプコントローラ2を説明するために示す図である。
【
図5】実施形態3に係る補助人工心臓システム50を説明するために示す図である。
【
図6】変形例1に係る血液ポンプコントローラ3を説明するために示す図である。
【
図7】変形例2に係る血液ポンプコントローラ4を説明するために示す断面図である。
【
図8】変形例3に係る血液ポンプコントローラ5を説明するために示す要部断面図である。
【
図9】従来の血液ポンプコントローラ9及び補助人工心臓システム90を説明するために示す図である。
【
図10】特許文献1に記載されたバッテリパック820及びノートブックPC810の接続構造を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の血液ポンプコントローラ及び補助人工心臓システムについて、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の寸法を厳密に反映したものではない。
【0031】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1の基本構成
図1は、実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1を説明するために示す図である。
図1(a)は血液ポンプコントローラ1の斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示す矢印Cに沿ってバッテリ接続コネクタR110付近を視たときの図である。
図2は、実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1を説明するため示す図である。
図2(a)及び
図2(b)は、
図1(a)に示す平面Aで血液ポンプコントローラ1を切断し矢印Bに沿って視たときの断面図である。
図2(a)はバッテリパック200をスロット120に収容し始めるときの状態を示し、
図2(b)はバッテリパック200がスロット120に収容し終わったときの状態を示す。
図2(c)は
図2(b)の破線Dで囲まれた領域の要部拡大断面図である。
図2(d)は
図2(b)の破線Eで囲まれた領域の要部拡大断面図である。なお、スロット120を構成するケース部材160は説明に必要となる主要部のみ斜線のハッチングを入れてデフォルメした厚みを持たせた様子で描いており、他の部分については厚みの表示を省略している(他の関係する図面も同様)。
【0032】
(1)コントローラの基本機能・基本構成
血液ポンプコントローラ1は、血液ポンプ400内の詳しい図示を省略するが、送液機構(例えばインペラ等)によって血液をポンプ室に取り込みポンプ室に取り込んだ該血液を使用者500の体内に送り込む血液ポンプ400をコントロールするコントローラである(後述する
図5を参照)。
図1(a)に示すように、血液ポンプコントローラ1はコントローラ本体100とバッテリパック200とバッテリ収容体10aとを備える。実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1においては、コントローラ本体100はバッテリ収容体10aを兼ねている。つまり、実施形態1における説明において、「コントローラ本体100」は「バッテリ収容体10a」と読み換えることができ、また、「バッテリ収容体10a」は「コントローラ本体100」と読み換えることもできる。
【0033】
(2)コントローラ本体100
コントローラ本体100は、駆動ケーブル430を介して血液ポンプ400と接続され、駆動ケーブル430を通じて血液ポンプ400を駆動する(後述する
図5を併せて参照)。
詳しい図示を省略するが、「駆動ケーブル430」には、血液ポンプ400を駆動するためのモータ等に電力を供給するための電源線が含まれる。また、制御用の制御線が含まれていてもよい。さらに、これらの電気系の線と並列にクールシール液等の液体流通用チューブが沿っていてもよい。本明細書においては、電気系の線、液体流通用のチューブ等が1つの束となったもの全般を「駆動ケーブル430」というものとする。
【0034】
(3)バッテリパック200
バッテリパック200は、何等かの形で外部から充電されて電力を蓄え、蓄えた電力をコントローラ本体100に供給する。具体的には、バッテリパック200はバッテリセル又は/及び複数のバッテリをケーシングしたものである。バッテリパック200の内部には電源制御回路、監視回路、LED表示回路等を備えていてもよい。
バッテリパック200は、バッテリ接続コネクタS210が配設された第1面F1を少なくとも有している。
ここで、「第1面F1」とは、バッテリパック200のケーシングを構成する主面の1つである。上記したように第1面F1の一部にバッテリ接続コネクタS210が配設されているが、バッテリ接続コネクタS210の電極の接触面(バッテリ接続コネクタR110との接続点)が第1面F1と完全に同一の平面上に配設されている必要はない。例えば、第1面F1の平面よりもバッテリパック200の内側に若干奥まった位置にバッテリ接続コネクタS210(平面電極211)を配設してもよい(
図2も併せて参照)。
【0035】
(4)バッテリ収容体10a
バッテリ収容体10aは、バッテリパック200を収容し保持するスロット120a,120bが設けられている。実施形態1におけるバッテリ収容体10aはスロットが2セット設けられ(10a,120b)、同一仕様のバッテリパック200を2個収容することができる。
スロット120a,120bは、バッテリ接続コネクタR110が配設された第2面F2を少なくとも有している。
ここで、「第2面F2」とは、スロット120a,120bを構成する主面の1つである。上記したように第2面F2の一部にバッテリ接続コネクタR110が配設されているが、バッテリ接続コネクタR110の電極(バッテリ接続コネクタS210との接続点)が第2面F2と完全に同一平面上に配設されている必要はない(
図2も併せて参照)。なお、電極の高さについては後述する。
【0036】
(5)電気的な接続
バッテリ接続コネクタS210は給電側のコネクタであり、
図1(a)においては背後に隠れて見えないが、例えば平面電極211で構成してもよい(
図2も併せて参照)。バッテリ接続コネクタR110は受電側のコネクタであり、例えばピンプローブ状の電極を備えたバネ型コネクタ111で構成してもよい。なお、バッテリ接続コネクタS210及びバッテリ接続コネクタR110を合わせて「一対のバッテリ接続コネクタ」という。これらバッテリ接続コネクタS210とバッテリ接続コネクタR110とが接続されて、バッテリパック200からコントローラ本体100へ電力の供給が可能となる。
一対のバッテリ接続コネクタは、例えば8ピン(8電極)のコネクタを採用してもよい。
図1(b)は、バッテリ接続コネクタR110(ピンプローブ状の凸状電極112)が8個配列されている様子を示している。配列された8個のピンのうち、配列の一端側の3個のピンを直流(DC)のプラス端子として割り当て、配列の他端側の3個のピンをDCのマイナス端子として割り当て、残余の中央寄りの2個のピンをバッテリパック200とコントローラ本体100との間で信号をやり取りするための通信端子として割り当ててもよい。なお、この場合のバッテリパック200は、自己の状態を把握・管理する機能が実装されており、上記通信端子を用いた通信によって、バッテリの個体番号・LOT番号、現在の出力可能電圧、充放電回数等の情報をコントローラ本体100に伝達する。
【0037】
バッテリパック200及びバッテリ収容体10aは、バッテリパック200がスロット120a,120bに収容されると、バッテリ接続コネクタS210及びバッテリ接続コネクタR110の間で電気的な接続がなされるように構成されている《
図2(b)も併せて参照》。つまり、使用者500が、バッテリパック200をスロット120a,120bに収容するだけで、電気的接続の作業を特段行わなくとも、背後では自動的にバッテリパック200とコントローラ本体100との電気的接続がなされ電力供給が可能となる。
【0038】
(6)第1シール部材140
図2(a)及び
図2(b)に示すように、バッテリパック200及びバッテリ収容体10aは、バッテリパック200がスロット120a,120bに収容されると、第1面F1と第2面F2とが対向するように構成されている。
【0039】
図2(b)及び
図2(c)に示すように、第1面F1及び第2面F2の少なくとも一方の面には、バッテリパック200がスロット120a,120bに収容されて第1面F1と第2面F2とが対向したときに、一対のバッテリ接続コネクタ110,210を取り囲むようにしてシールするよう構成された第1シール部材140が付設されている。
実施形態1では、スロット120a,120bの第2面F2に、バッテリ接続コネクタR110を取り囲むようにした第1シール部材140(第1防水パッキン141)が付設されている《
図1(b)も併せて参照》。
第1シール部材140(第1防水パッキン141)は所期の作用効果を奏するものであれば如何なる部材で構成してもよいが、例えば樹脂を主原料とする部材によって構成してもよい。
【0040】
ここで、「取り囲むように」とは、第1面F1又は/及び第2面F2を平面視したときに一対のバッテリ接続コネクタ(バッテリ接続コネクタS210及びバッテリ接続コネクタR110)を取り囲むように、という意味である。
第1シール部材140は、第1面F1及び第2面F2と相まって、第1シール部材140で囲まれた内側領域sp2と、第1シール部材140からみて該内側領域sp2とは反対側の外側領域sp1と、の間を封止し、内側領域sp2と外側領域sp1との間の液体の行き来を遮断する《
図2(c)の符号sp1,sp2参照》。このように、第1シール部材140は、一対のバッテリ接続コネクタの防水性を高めるものとして働く。
【0041】
2.実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1の詳細な構成
(1)ケース部材160の開口部127
スロット120を構成するケース部材160(例えばコントローラ本体100のリアケースの部材)には開口部127が設けられている。ケース部材160の第2面F2の反対側の面を第3面F3とすると、ケース部材160の開口部127付近の第3面F3側には、第1シール部材140/第1防水パッキン141を落とし込むためのパッキン溝150が形成されている《
図2(c)参照》。
【0042】
(2)バッテリ接続コネクタR110まわりの詳細な構造
バッテリ接続コネクタR110は、詳しくは
図2(c)に示すように、凸状電極112及び凸状電極収容部113を有し、且つ、凸状電極112が凸状電極収容部113へ圧入される際の圧入力に対抗する弾性力を有する「バネ型コネクタ111」で構成されている。このバネ型コネクタ111は、凸状電極112としてのプランジャ型電極(符号なし)と凸状電極収容部113としてのプランジャ・バレル(符号なし)と弾性部材としてのスプリングコイル(符号なし)と、プランジャ・バレルが固定された絶縁性板部材(符号なし)と、を備えている。
バネ型コネクタ111は、コネクタホルダ154の裏側(紙面右側)から嵌め込まれるようにしてコネクタホルダ154に保持されている。
バネ型コネクタ111が保持されたコネクタホルダ154は、ケース部材160の開口部127において、パッキン溝150に落とし込まれた第1シール部材140/第1防水パッキン141(詳細は後述する)を挟み込むようにしてケース部材160に固定されている。このとき、凸状電極収容部113としてのプランジャ・バレルは、ケース部材160の開口部127内に位置し、凸状電極112としてのプランジャ型電極の先端はケース部材160の表側(F2側又は紙面左側)に現れている《
図2(a)~
図2(c)参照》。
バネ型コネクタ111における筐体内部側の部位115においては、例えば、はんだ付け等によって配線パターン166に接続されている。この配線パターン166は内部回路164に接続されている。
バネ型コネクタ111の凸状電極112は、スロット120を形成するケース部材160の第2面F2の側において、相手方となるバッテリパック200のバッテリ接続コネクタS210と接触して接続される。
【0043】
また、バッテリ収容体10aには、バッテリ接続コネクタR110の電極側と、バッテリ収容体10aの筐体内部に配置された内部回路164と、の間を防水する第2シール部材162が更に設けられている。
具体的には、第2シール部材162としての第2防水パッキン163が、コネクタ押え156とプランジャ・バレルが固定された絶縁性板部材114との間に挟まれるように装着され、凸状電極112としてのプランジャ型電極の側と筐体内部に配置された内部回路164との間を防水する《
図2(a)~
図2(c)参照》。
【0044】
(3)第1シール部材140付近の詳細な構造
実施形態1の第1シール部140は第1防水パッキン141により構成されている。第1防水パッキン141はリング状をなしており、第1防水パッキン141のリングの内側にはバッテリパック200の第1面F1と接触する厚み部(符号なし)を有し、また、リングの外側には厚み部に連成されたフランジ部(符号なし)を有している《
図1(b)、
図2(c)等参照》。なお、フランジ部の厚みは上記したパッキン溝150の深さよりも若干大きく設定されることが望ましい。
第1防水パッキン141は、フランジ部がパッキン溝150に落とし込まれながら、厚み部が開口部127を超えてケース部材160の表側(第2面F2の側)に現れるようにしてケース部材160に付設されている。
このとき、コネクタ押え156により第2シール部162/第2防水パッキン163及びコネクタホルダ154をケース部材160の方向《
図2(c)の紙面左方向》に向けて押圧する。このように押圧すると、今度はコネクタホルダ154が第1シール部140/第1防水パッキン141をケース部材160の方向《
図2(c)の紙面左方向》に向けて押圧することとなる。
こうして第2シール部162/第2防水パッキン163及び第1シール部140/第1防水パッキン141がケース部材160の面(第2面F2又は/及び第3面F3)に垂直な方向に押しつぶされることとなり、封止(シール)効果を発揮する。
【0045】
このようにして、スロット120a,120bの第2面F2には、バッテリ接続コネクタR110を取り囲むようにした第1シール部材140(第1防水パッキン141)が付設されている《
図1(b)及び
図2(a)~
図2(c)参照》。
【0046】
(4)バッテリ接続コネクタR110及び第1シール部材140の高さ関係
図3は、バッテリ接続コネクタR110(バネ型コネクタ111)及び第1シール部材140(第1防水パッキン141)の高さの関係を説明するために示す断面図である。
図3(a)は凸状電極112に対し圧入力が掛けられていない状態を示し、
図3(b)は凸状電極112に対し圧入力が掛けられて凸状電極112の頂部が凸状電極収容部113側に最も押し込まれたときの状態を示す。
【0047】
図3に示すように、第1防水パッキン141が付設された第2面F2を基準としたときに、第1防水パッキン141にシール押圧力(シールのための押圧力)が掛けられていない状態の第1防水パッキン141の高さをHsとする。また、バネ型コネクタ111が付設された第2面F2を基準としたときに、圧入力が掛けられていない状態の凸状電極112の頂部の高さをH1とする。さらに、バネ型コネクタ111が付設された第2面F2を基準としたときに、圧入力が掛けられて凸状電極112の頂部が最も押し込まれたときの凸状電極112の頂部又はバネ型コネクタ111の高さをH2とする。
このとき、実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1においては、H2<Hs<H1の関係を満たすようにバネ型コネクタ111及び第1防水パッキン141が配置されている。
【0048】
なお
図1~
図3において、バネ型コネクタ111及び第1防水パッキン141はいずれも第2面F2に設けられた例を示しているが、これに限定されるものではない。H2<Hs<H1の関係を検討するにあたって、バネ型コネクタ111は、バッテリ接続コネクタS210及びバッテリ接続コネクタR110のどちらのコネクタに適用してもよく(換言すると第1面F1及び第2面F2のどちらに配設してもよく)、また、第1防水パッキン141は第1面F1及び第2面F2のどちらに付設してもよい。
【0049】
(5)バッテリパック200を位置決め・ロックする機構
図2に戻り、バッテリパック200を位置決めしロックする機構を説明する。
スロット120の下部であるスロット下部122には、バッテリパック200の下端230に設けられた下端凸部233を案内するガイド128が設けられている。
具体的には、ガイド128は、バッテリパック200の下端凸部233を掛けることができる突起部(符号なし)、及び、該突起部とスロット120の第2面F2とによって囲まれた凹部(符号なし)がガイドとして機能するよう構成されている。
一方、バッテリパック200の下端230は、バッテリパック200を断面視したときに第2軸AX2を中心とした円弧状となっている《
図2(a)及び
図2(b)参照》。
また、スロット120の上部であるスロット上部124には、バッテリパック200の上端220に設けられた上端凸部223と係合してバッテリパック200の上端220側をラッチするラッチ機構130が設けられている《
図2(a)参照》。
具体的には、ラッチ機構130は、バッテリパック200の上端凸部223と係合する掛け爪134と、操作者の指でラッチ解除操作を行うためのレバーであって掛け爪134に連結されて第1軸AX1の周りに回動するレバー132と、一方がレバー132に連結され他方がスロット120本体側に連結されラッチ保持力を発生するラッチ用バネ136と、を有している。
【0050】
バッテリパック200がスロット120に収容される際の各部の関係は次の通りとなる。
(a)バッテリパック200の下端凸部233が突起部に掛けられると、円弧状の下端230は自然と凹部に落とし込まれ、円弧状の下端230がガイド128の凹部と接する状態になる《
図2(a)参照》。
(b)バッテリパック200の上端220側が矢印bの方向に押されると、円弧状の下端230がガイド128の凹部と滑らかに接しながら、上端220側は第2軸AX2を中心にスロット120の第2面F2側に回動する《
図2(a)参照》。
(c)バッテリパック200の上端凸部223がラッチ機構130の掛け爪134を通り過ぎると、上端凸部223が掛け爪134の内側と係合してラッチが完了する。
詳しく説明する。掛け爪134の内側は第1軸AX1を中心とした半径R1の円弧状に形成されて、上端凸部223の掛け爪134と係合する面は第1軸AX1を中心とした半径R2の円弧状に形成されている。R1及びR2は実質的に同じか、僅かにR2がR1より小さくなっている。このため、上端凸部223が掛け爪134を通り過ぎると(掛け爪134が上端凸部223を乗り越えると)、ラッチ用バネ136のラッチ保持力により自動的に掛け爪134が円滑に下降して上端凸部223と係合する。この状態でラッチが完了する。
ラッチが完了すると、バッテリパック200の下端230側はガイド128の突起部により、スロット120の外に離脱することはない。また上端220側ではラッチ用バネ136の付勢力(ラッチ保持力)が働いて掛け爪134が上端凸部223に押し付けられるため、容易にラッチが外れることはない。
また、バッテリパック200を収容した状態で血液ポンプコントローラ1を正置したときに、第1軸AX1の高さはバッテリパック200の上端凸部223の上端の高さよりも下になるように設定されている。これにより掛け爪134が上端凸部223と強固に係合するため、落下等の衝撃により瞬間的に掛け爪134が外れる方向にバッテリパック200が変位したとしても、容易にラッチが外れることはない。
こうして、バッテリパック200は、スロット120内に位置決めされつつ収容され、バッテリパック200とスロット120との位置関係も確定して強固にロックされる《
図2(b)及び
図2(c)参照》。
(d)ラッチが完了し、バッテリパック200がスロット120内でロックされるときには、第1面F1と第2面F2とが対向し、バッテリ接続コネクタS210及びバッテリ接続コネクタR110の間で電気的な接続がなされている。これと並行して、対向した第1面F1及び第2面F2によって挟まれて押圧された第1シール部材140(第1防水パッキン141)は弾性変形し、第1シール部材140(第1防水パッキン141)は第1面F1及び第2面F2と共に封止(シール)効果を発揮している《
図2(b)及び
図2(c)参照》。
【0051】
なお、バッテリパック200がスロット120から離脱される際は、基本的に上記と逆となる。すなわち、レバー132が上方に引っ張られると、掛け爪134の上端凸部223との係合が解かれラッチ解除される。ラッチ解除されると、押圧されていた第1シール部材140の反力、及び、圧入されていたバネ型コネクタ111のプランジャ型電極の反力により、使用者500が特段大きな力で引っ張ることもなく自然にバッテリパック200がスロット120a,120bから押し出され、バッテリパック200の上端220からの離脱が始まる。
【0052】
またなお、ラッチ用バネ136によるラッチ保持力は凡そ2N~3N程度の範囲内に設定されていることが好ましい。ラッチ保持力がこの範囲よりも強すぎると、病弱な使用者500にとってラッチ解除の作業が負担となる。この範囲よりも弱すぎると、意図せずレバー解除方向(矢印bと逆の方向)の力がやや強めに掛かった場合に、ラッチ解除する方向に働くため好ましくない。
【0053】
またなお、ガイド128、ラッチ機構130、バッテリパック200の下端凸部233及び上端凸部223は、図に示すような態様に限定されるものではなく、適宜の態様で具現化することができる。
【0054】
(6)電気的な構成例
実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1は、次のように構成してもよい。
コントローラ本体100は、図示しない血液ポンプ駆動部(駆動回路)、システムを制御するための制御部等の「電気的構成部」を有している。使用者500が商用電源を得られる環境(具体的には電源コンセントが配設された一般家庭、オフィス等)に滞在している間、使用者500は、図示しないAC/DCアダプタの一方の接続端を血液ポンプコントローラ1に接続したうえで、他方の接続端を電源コンセントに接続することで、血液ポンプコントローラ1を稼働させることができる(AC/DCアダプタ駆動モード)。血液ポンプコントローラ1がAC/DCアダプタ駆動モードで動作する場合、AC/DCアダプタ(図示せず)によって必要な直流電源が生成されて、該直流電源が「電気的構成部」に供給される。このとき、図示しない充電回路によってバッテリパック200,非常用バッテリ(図示せず)に対し充電するように構成してもよい。
【0055】
一方、使用者500が商用電源を得られる環境から離れる場合には、内蔵するバッテリパック200の電力を用いて血液ポンプコントローラ1を稼働させることできる(バッテリ駆動モード)。血液ポンプコントローラ1は、血液ポンプコントローラ1がバッテリ駆動モードで動作する場合においては、コントローラ本体100から外部に引き出された電気系のケーブルは駆動ケーブル430のみである《
図1(a)参照》。
【0056】
3.実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1の効果
(1)実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1によれば、バッテリパック200がスロット120に収容されると、自動的にバッテリ接続コネクタS210及びバッテリ接続コネクタR110の間で電気的な接続がなされる。
このため、従来のようなバッテリケーブル922、バッテリ接続Rコネクタ914及びバッテリ接続Pコネクタ924が不要となる。これらの部品が省略できるので、従来よりも小型・軽量な血液ポンプコントローラとなる。
また、バッテリ交換にあたり、バッテリ接続Pコネクタ924をバッテリ接続コネクタR914に接続するための煩雑な工程を経る必要がなくなりバッテリ交換の操作が単純化される。別言すると、単にバッテリパック200をスロット120に収容する作業をするだけで、自動的にバッテリ接続コネクタS210及びバッテリ接続コネクタR110の間で電気的な接続がなされ、且つ、その状態は厳重にロックされる。従来よりも操作アクション数が少なく、両手を使う必要もなく、コネクタ接続を意識することもなく、いうなれば手間がかからず患者たる使用者500に負担を掛けずにバッテリ交換を完遂することができる。このため、バッテリ交換の操作ミスを未然に防ぐことができる。
【0057】
また、バッテリパック200がスロット120に収容されると、一対のバッテリ接続コネクタ(バッテリ接続コネクタS210及びバッテリ接続コネクタR110)が第1シール部材140によって外部と隔離される。このため、従来よりも防水性の高い血液ポンプコントローラとなる。
【0058】
したがって、従来よりも小型・軽量でバッテリ交換の操作ミスを未然に防ぐことができ、且つ、従来よりも防水性の高い血液ポンプコントローラとなる。
【0059】
(2)実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1においては、第1防水パッキン141にシール押圧力が掛けられていない状態の第1防水パッキン141の高さをHsとし、凸状電極112が凸状電極収容部113へ圧入される際の圧入力が掛けられていない状態の凸状電極112の頂部の高さをH1とし、該圧入力が掛けられて凸状電極112の頂部が最も押し込まれたときの凸状電極112の頂部又はバネ型コネクタ111の高さをH2とした場合において、H2<Hs<H1 の関係を満たすようにしてバネ型コネクタ111及び第1防水パッキン141が配置されている。
【0060】
このようにHs<H1の関係を満たすので、バネ型コネクタ111の凸状電極112は、H1の高さの位置から他方の側のコネクタ(例えば平面電極)と接触し始めることとなり、H1の高さの位置から所定の位置までの間に十分な接触ストロークを確保することができる。
また、H2<Hsの関係を満たすので、例えばバッテリパック200の第1面F1が、スロット120の第1防水パッキン141に当接した直後、更に第2面F2側(第1防水パッキン141の側)に力が加えられたときにも、凸状電極112が更に凸状電極収容部113に入り込むストロークが余剰しているため、第1面F1を第2面F2側(第1防水パッキン141の側)に更に押し込むことができ、第1防水パッキン141の弾性力を一層効かせることができる。よって、第1シール部材140のシール効果を更に高めることができる。
【0061】
(3)実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1において、スロット120の下部であるスロット下部122には、バッテリパック200の下端230に設けられた下端凸部233を案内するガイド128が設けられており、スロット120の上部であるスロット上部124には、バッテリパック200の上端220に設けられた上端凸部223と係合してバッテリパック200の上端220側をラッチするラッチ機構130が設けられている。
【0062】
このような構成とすることにより、スロット下部122でバッテリパックの下端凸部233を引掛け、スロット上部124でバッテリパック200の上端凸部223をラッチすることができ、スロット120とバッテリパック200との相対的な位置関係を固定し維持することが可能となる。つまり、バッテリパック200がスロット120からズレたり離脱したりすることを防止することができる。
またスロット120内においても、互いに接触しているバッテリ接続コネクタS210及びバッテリ接続コネクタR110の電極同士がズレたり乖離したりすることを防止できる。また、第1面F1、第2面F2及び第1シール部材140によるシール(封止)も強固に維持することができる。したがって、高い接続信頼性及び高い防水性を確保することが可能となる。
【0063】
(4)実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1において、バッテリ収容体10aには、バッテリ接続コネクタR110の電極側と、バッテリ収容体10aの筐体内部に配置された内部回路164と、の間を防水する第2シール部材162が更に設けられている。
【0064】
このため、バッテリ収容体10aの筐体内部に配置された内部回路164の防水性を更に高めることが可能となる。
【0065】
[実施形態2]
1.実施形態2に係る血液ポンプコントローラ2の構成
図4は、実施形態2に係る血液ポンプコントローラ2を説明するために示す図である。
図4(a)は血液ポンプコントローラ2の斜視図であり、
図4(b)は血液ポンプコントローラ2の分解組立図であって、
図4(a)に示す矢印Gに垂直な面(図示せず)で血液ポンプコントローラ2を切断したときの断面を示す。後述する部品の標準化・共通化により、破線D’で囲まれた領域の基本的な構成は
図2(b)の破線Dで囲まれた領域の基本的な構成と同様になっている。実施形態2において、実施形態1と同じ構成要素については、実施形態1と同じ符号を使用し説明を省略する。
【0066】
実施形態2に係る血液ポンプコントローラ2は、基本的には実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1と同様の構成を有するが、コントローラ本体及びバッテリ収容体が別体となっている点において、実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1とは異なる。そこで、実施形態1との相違点を中心に説明するものとし、実施形態1と共通する他の部分については、符号を付しての図示及びそれらの説明は省略する。
【0067】
(1)分散型コントローラ
図4(a)に示すように、実施形態2に係る血液ポンプコントローラ2は、駆動ケーブル430を介して血液ポンプ400(後述する
図5参照)と接続され、血液ポンプ400を駆動するコントローラ本体100’と、電力を蓄え、蓄えた電力をコントローラ本体100’に供給するバッテリパック200と、バッテリパック200を収容し保持するスロット120a,120bが設けられたバッテリ収容体10bと、を備える。
コントローラ本体100’とバッテリ収容体10bとは別体のものである。この点で実施形態2に係る血液ポンプコントローラ2は「分散型コントローラ」ともいえる。
コントローラ本体100’とバッテリ収容体10bとは所与の接続ケーブルで接続されており、当該接続ケーブルの電力線を介して、バッテリパック200が収容されたバッテリ収容体10bからコントローラ本体100’に対し電力が供給される。なお、当該接続ケーブルには通信線等が含まれていてもよい。
【0068】
コントローラ本体100’、バッテリ収容体10b及び所与の接続ケーブルは如何なる態様で構成してもよいが、例えば、
図4(a)及び
図4(b)に示すような態様で構成することもできる。
すなわち、バッテリ収容体10bをバッテリホルダ300及びバッテリ側アタッチメント320によって構成してもよい。バッテリホルダ300は、枠状をなしておりバッテリを保持する。バッテリ側アタッチメント320は、ネジ370を用いて螺合すること等によりバッテリホルダ300と一体的に組み立てられる。バッテリ側アタッチメント320はバッテリパック200との接続を行うためのバッテリ接続コネクタR110を有する。また、バッテリ側アタッチメント320からは所与の接続ケーブルとしてのアタッチメント接続ケーブル360が引き出されており、該アタッチメント接続ケーブル360は本体側アタッチメント340(後述する)に接続されている。
【0069】
ここで、スロット120a,120bを、バッテリホルダ300及びバッテリ側アタッチメント320によって構成する。
バッテリ収容体10bを組み立てる際にバッテリホルダ300が合わせられる側のバッテリ側アタッチメント320の面を第2面F2とすると、第2面F2にはバッテリ接続コネクタR110が配設されている。よって、バッテリパック200がスロット120a,120bに収容されると、バッテリ接続コネクタS210及びバッテリ接続コネクタR110の間で電気的な接続がなされることとなる。
また、第2面F2には、バッテリパック200がスロット120a,120bに収容されてバッテリパック200の第1面F1と第2面F2とが対向したときに、一対のバッテリ接続コネクタ(バッテリ接続コネクタS210及びバッテリ接続コネクタR110)を取り囲むようにしてシールするよう構成された第1シール部材140が付設されている。
また、バッテリホルダ300の枠内の下側には、実施形態1と同様に、バッテリパック200の下端230に設けられた下端凸部233を案内するガイド128が設けられている。バッテリホルダ300の枠内の上側には、実施形態1と同様に、バッテリパック200の上端220に設けられた上端凸部223と係合してバッテリパック200の上端220側をラッチするラッチ機構130が設けられている《
図4(a)参照》。
【0070】
本体側アタッチメント340は、上記したアタッチメント接続ケーブル360が接続され、ネジ370を用いて螺合すること等によりコントローラ本体100’と一体的に組み立てられる。本体側アタッチメント340がコントローラ本体100’と一体化されると、バッテリ側アタッチメント320におけるバッテリ接続コネクタR110の電極群からの電力線、通信線等が、アタッチメント接続ケーブル360を介して、コントローラ本体100’に対し導通し、コントローラ全体としてはスロット120~コントローラ本体100’の間で電気的に一体のものとなる。
【0071】
なお、実施形態2のバッテリ収容体10b(バッテリホルダ300、バッテリ側アタッチメント320)における(1)バッテリ接続コネクタR110付近の詳細な構造、(2)第1シール部材140付近の詳細な構造、(3)バッテリ接続コネクタR110及び第1シール部材140の高さ関係、(4)バッテリパック200を位置決め・ロックする機構等については、上記した実施形態1のバッテリ収容体10aのこれらの構成と同様の構成を援用している。したがって、実施形態2のバッテリ収容体10bにおいても、実施形態1のバッテリ収容体aのこれらの構成と同様の作用・効果を奏する。
【0072】
(2)部品の標準化・共通化
バッテリホルダ300に対し、スロットの構成要素のうちバッテリ接続コネクタRの機能は載せずに、バッテリパック200を保持する機能のみを載せることにより、部品の標準化・共通化を図ることができる。
実施形態2の「分散型コントローラ」としてコントローラ本体を仕立てたい場合には、まず、コントローラ本体100’における電力、通信等を受ける部位を、実施形態1と同様の構造にしておく。ここではピンプローブ状の電極を備えたバネ型コネクタを配している《
図4(b)参照》。その上で、本体側アタッチメント340における電力、通信等を供与する部位を、バッテリパック200の第1面F1におけるバッテリ接続コネクタS210と同様の構造にする。ここでは平板電極を配している。そうすることで、本体側アタッチメント340とコントローラ本体100’との間で電気的な接続を行うことができる。
【0073】
一方、実施形態1の「一体型コントローラ」として仕立てたい場合には、バッテリホルダ300を転用することができる。すなわち、実施形態2の上記したコントローラ本体100’に対しネジ370を用いて螺合すること等によりバッテリホルダ300をコントローラ本体100’と一体化することにより、実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1を得ることができる。
このように、バッテリホルダ300を標準化・共通化したり、(1)バッテリ接続コネクタR110付近の詳細な構造、(2)第1シール部材140付近の詳細な構造、(3)バッテリ接続コネクタR110及び第1シール部材140の高さ関係、(4)バッテリパック200を位置決め・ロックする機構等をコントローラ本体100’及びバッテリ側アタッチメント320において共通の設計としたりすることにより、「分散型コントローラ」/「一体型コントローラ」の切り替えを容易に行うことができる。
【0074】
2.実施形態2に係る血液ポンプコントローラ2の効果
実施形態2に係る血液ポンプコントローラ2は、コントローラ本体100’及びバッテリ収容体10bが別体となっており、これらは互いに所与の接続ケーブルで接続されているものである(分散型コントローラ)。
よって、コントローラ本体100’と、バッテリパック200を収容したバッテリ収容体10bとをそれぞれ使用者500の体の右側と左側とに分けて装着することもできる。あるいは、これらを使用者500の体の背中と胸とに分けて装着することもできる。したがって、これら重量物が左・右/背中・胸に分散されるため重量感が軽減され、体幹からみたときの重量のバランスも良くなる。このため、血液ポンプコントローラ2を体に装着した状態で歩行、自転車乗り、自動車の運転、ゴルフ等を行うことがより快適なものとなる。
また、使用者500のライフスタイルに合わせて実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1(一体型コントローラ)/実施形態2に係る血液ポンプコントローラ2(分散型コントローラ)を適宜使い分ける選択肢も増え、使用者500の生活の質(QOL)の向上に資することができる。
実施形態2に係る血液ポンプコントローラ2(分散型コントローラ)によれば、このような効果を享受しながらも、実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1と同様に、従来よりも小型・軽量でバッテリ交換の操作ミスを未然に防ぐことができ、且つ、従来よりも防水性の高い血液ポンプコントローラとすることができる。
【0075】
実施形態2に係る血液ポンプコントローラ2は、コントローラ本体及びバッテリ収容体が別体となっている点以外の構成においては、実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1と基本的に同様の構成を有する。そのため、実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0076】
[実施形態3]
図5は、実施形態3に係る補助人工心臓システム50を説明するために示す図である。
図5に示すように、実施形態3に係る補助人工心臓システム50は、送液機構によって血液をポンプ室に取り込みポンプ室に取り込んだ該血液を使用者の体内に送り込む血液ポンプ(血液ポンプ400内の詳しい図示を省略)と、血液ポンプ400に接続された駆動ケーブル430と、駆動ケーブル430に接続され、血液ポンプ400をコントロールする血液ポンプコントローラ1,2と、を備える。
この血液ポンプコントローラ1,2は、実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1又は実施形態2に係る血液ポンプコントローラ2の構成を備えたものである。
【0077】
実施形態3に係る補助人工心臓システム50は、実施形態1に係る血液ポンプコントローラ1又は実施形態2に係る血液ポンプコントローラ2を備えたものであるため、従来よりも小型・軽量でバッテリ交換の操作ミスを未然に防ぐことができ、且つ、従来よりも防水性の高い血液ポンプコントローラという効果をそのまま享受することができる。
【0078】
[変形例]
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0079】
(1)各実施形態において記載した構成要素の数、材質、形状、位置、大きさ等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0080】
(2)各実施形態において、バッテリ収容体10a,10bの筐体内部において、バッテリ接続コネクタR110から内部回路164の間を接続する間については、配線パターン166で結ぶ以外の説明は行わなった。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
(2-1)例えば、この間を防水隔壁168で囲み配線パターン166を第2シール部材162で封止する処置を施してもよい(変形例1)。
図6は、変形例1に係る血液ポンプコントローラ3を説明するために示す図である。
図6(a)は血液ポンプコントローラ3の断面図であり、
図6(b)は配線パターン166が防水隔壁168を横断する横断部167を
図6(a)に示す矢印Hに沿って視たときの図である。
図6(b)では理解容易とするため、防水隔壁168は矢印Hに平行な防水隔壁168のみを表示しており(矢印Hに垂直な防水隔壁168の表示は省略)、また第2シール部材162は防水隔壁168の前面側に表示している。
図6において、各実施形態と同じ構成要素については各実施形態と同じ符号を使用し説明を省略する。
【0081】
図6に示すように、変形例1に係る血液ポンプコントローラ3は、バッテリ収容体10cの筐体内部には、スロット120を形成するケース部材160の第2面F2の反対側の面である第3面F3と共に、バッテリ接続コネクタR110’における筐体内部側の部位115を取り囲むように形成された防水隔壁168が更に設けられている。バッテリ接続コネクタR110’の筐体内部側には配線パターン166の一端が接続されている。配線パターン166は、防水隔壁168を横断して、内部回路164に接続されている。そして、配線パターン166が防水隔壁168を横断する横断部167において、防水隔壁168と配線パターン166との間を塞ぐようにして封止する第2シール部材162が設けられている。
ここで「配線パターン166」は、例えばフラットケーブル、通常のキャプタイヤのハーネス、PCB等を適用することができる。「横断して」の例としては、防水隔壁168に穴(図示を省略)が開いていて当該穴を配線パターン166が通過する等の態様が挙げられる。
【0082】
なお、
図6(a)に示すバッテリ接続コネクタR110’は、板バネ状のコネクタを採用している。これもバネ型コネクタ111の一種であり、凸状電極112としての板バネ電極、凸状電極収容部113としての板バネスリーブを有し、板バネ電極の一部は弾性部材の一部としても機能している(いずれの符号も図示を省略)。
【0083】
変形例1に係る血液ポンプコントローラ3によれば、バッテリ接続コネクタR110’の筐体内部側を防水隔壁168で囲んだ態様の場合においても、第2シール部材162を設けることにより内部回路164の防水性を更に高めることができる。
【0084】
(2-2)また例えば、この間を樹脂等のモールド材169でモールドする処置を施してもよい(変形例2)。
図7は、変形例2に係る血液ポンプコントローラ4を説明するために示す断面図である。
図7において、各実施形態と同じ構成要素については各実施形態と同じ符号を使用し説明を省略する。
【0085】
変形例2に係る血液ポンプコントローラ4によれば、モールド材169でモールドすることにより、バッテリ接続コネクタR110自身及びバッテリ接続コネクタR110付近からの浸水を食い止めることができ、内部回路164の防水性を更に高めることができる。
【0086】
参考までに、血液ポンプコントローラの場合には、一般的な電子機器と異なり、例えばバッテリパックに蓄えられた電力が残り僅かとなったときには、どのような外部環境であっても充電済みバッテリパックに交換しなければならない場合がある。例えば、戸外で雨が降る中でも交換せざるを得ない場合も想定される。
変形例1に係る血液ポンプコントローラ3、変形例2に係る血液ポンプコントローラ4等の筐体内部で防水処置を施したコントローラは、より高い防水性が確保されているため、上記した厳しい外部環境の下にあったとしても、より安全にバッテリ交換を遂行することができる。
【0087】
(3)各実施形態において、スロット120の第2面F2は、開口部127付近を除けば概ね平板状となっていた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1シール部材140が付設される付近を他の部位よりも底上げしたメサ126とし、この付近を本発明の第2面F2’として構成してもよい(変形例3)。
図8は、変形例3に係る血液ポンプコントローラ5を説明するために示す要部断面図である。
図8(a)は、バッテリパック200’をスロット120’に収容し始めるときの状態を示す図であり、
図2(b)はバッテリパック200’がスロット120’に収容し終わったときの状態を示す図である。
【0088】
変形例3に係る血液ポンプコントローラ5によれば、スロット120’の第2面F2’付近に他の部位よりも底上げしたメサ126を形成することにより、底上げした分だけバッテリ接続コネクタR110の電極の高さや第1シール部材140の高さが他の部位よりも高くなる。したがって、例えばバッテリパック200’が歪んでいる場合においても、ため、確実に電気的な接触・接続を行うことができ且つ第1シール部材140による封止を行うことができる。
【0089】
(4)各実施形態においては、「第2面F2」の側にバッテリ接続コネクタR110を取り囲むようにした第1シール部材140を付設した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図示は省略するが、「第1面F1」の側にバッテリ接続コネクタS210を取り囲むようにした第1シール部材140を付設してもよい。また、第1面F1及び第2面F2の双方に第1シール部材を付設してもよい。
【0090】
(5)実施形態1~3、変形例2~3の説明においては、バッテリ接続コネクタR110として、プランジャ型電極、プランジャ・バレル及びスプリングコイルを備えたピンプローブ状の電極を備えたバネ型コネクタ111を適用したものを用いた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、実施形態1~3、変形例2~3に対して、変形例1で用いた板バネ状のバネ型コネクタを適用してもよい。また、変形例1に対して、実施形態1~3、変形例2~3で用いたピンプローブ状の電極を備えたバネ型コネクタを適用してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1,2,3,4,5,9…血液ポンプコントローラ、10a,10b,10c…バッテリ収容体、50,90…補助人工心臓システム、100,100’,910…コントローラ本体、110…バッテリ接続コネクタR(受電側)、111…バネ型コネクタ、112…凸状電極、113…凸状電極収容部、114…絶縁性板部材、115…バッテリ接続コネクタRにおける筐体内部側の部位、120,120’,120a,120b,912a,912b…スロット、122…スロット下部、124…スロット上部、126…メサ、127…開口部、128…ガイド、130…ラッチ機構、132…レバー、134…掛け爪、136…ラッチ用バネ、140…第1シール部材、141…第1防水パッキン、150…パッキン溝、154…コネクタホルダ、156…コネクタ押え、160…ケース部材、162…第2シール部材、163…第2防水パッキン、164…内部回路、166…配線パターン、167…横断部、168…防水隔壁、169…モールド材、200,200',920…バッテリパック、210…バッテリ接続コネクタS(給電側)、211…平面電極、220…(バッテリパックの)上端、223…(バッテリパックの)上端凸部、230…(バッテリパックの)下端、233…(バッテリパックの)下端凸部、300…バッテリホルダ、320…バッテリ側アタッチメント、340…本体側アタッチメント、360…アタッチメント接続ケーブル、370…ネジ、
400…血液ポンプ、410,420…人工血管、430…駆動ケーブル、500…使用者、510…自己心臓、810…ノートブックPC、811…オス側コネクタ、812…位置決めプレート、815…(ノートブックPCの)スロット、820…(ノートブックPの)バッテリパック、821…メス側コネクタ、822…凹部、914…バッテリ接続Rコネクタ、915…シェル、922…バッテリケーブル、924…バッテリ接続Pコネクタ、925…バーレル