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特許7262100長期寛容を誘導するためのおよびアテローム性動脈硬化症におけるマクロファージ蓄積を解決するための自然免疫システムの標的化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】長期寛容を誘導するためのおよびアテローム性動脈硬化症におけるマクロファージ蓄積を解決するための自然免疫システムの標的化
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/436 20060101AFI20230414BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230414BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230414BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 1/00 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 1/04 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 1/14 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 1/16 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 7/00 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 7/06 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 9/04 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 9/10 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 13/12 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 17/02 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 17/06 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 17/14 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 19/02 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 21/04 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20230414BHJP
   A61P 37/02 20060101ALN20230414BHJP
【FI】
A61K31/436
A61K35/12
A61K9/51
A61K38/13
A61K45/00
A61K45/06
A61K47/24
A61K47/42
A61P37/06
A61P43/00 121
A61P1/00
A61P1/04
A61P1/14
A61P1/16
A61P3/10
A61P7/00
A61P7/06
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10 101
A61P9/10 103
A61P13/12
A61P17/02
A61P17/06
A61P17/14
A61P19/02
A61P21/04
A61P25/00
A61P29/00
A61P37/02
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2018556339
(86)(22)【出願日】2017-05-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 US2017030444
(87)【国際公開番号】W WO2017190145
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-27
(31)【優先権主張番号】62/329,676
(32)【優先日】2016-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516291619
【氏名又は名称】アイカーン スクール オブ メディスン アット マウント サイナイ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ムルダー,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】オチャンド,ジョーディ
(72)【発明者】
【氏名】ファヤド,ザヒ
(72)【発明者】
【氏名】ブラザ,ムーニア
(72)【発明者】
【氏名】デゥイベンブーアデン,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】フェイ,フランソワ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0252879(US,A1)
【文献】Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med.,2014年,Vol. 22,p. 2821
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/436
A61K 9/51
A61K 47/24
A61K 47/42
A61P 37/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子を活性成分として含む、移植寛容を誘導するための医薬であって、
前記HDL由来ナノ粒子は、ラパマイシンまたは薬学的に許容可能なその塩、そのエステルもしくはプロドラッグを含み、
前記HDL由来ナノ粒子は、(a)1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、(b)1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(MHPC)、および(c)アポリポタンパク質A-I(ApoA-I)を含む、
医薬。
【請求項2】
前記HDL由来ナノ粒子は、ラパマイシンを含む、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記HDL由来ナノ粒子は、ラパマイシンのアルキルエステルを含む、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
前記HDL由来ナノ粒子は、アルキル鎖で誘導体化されたラパマイシンを含む、請求項1に記載の医薬。
【請求項5】
前記HDL由来ナノ粒子がコレステロールを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項6】
MPC対MHPCの重量比が約2:1~約4:1である、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項7】
DMPC対MHPCの重量比が約3:1である、請求項6に記載の医薬。
【請求項8】
前記HDL由来ナノ粒子が、円盤状であり且つ約10nm~約250nmのサイズを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項9】
前記HDL由来ナノ粒子が、8.3nm~17.1nmの平均流体力学的直径を有する、請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
前記HDL由来ナノ粒子におけるラパマイシンのカプセル充填効率が約51%~約71%である、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項11】
前記HDL由来ナノ粒子におけるラパマイシンのカプセル充填効率が約65%である、請求項10に記載の医薬。
【請求項12】
患者における同種移植片生着が延長される、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項13】
その投与が、Ly-6CloMo/MΦ発達を促進する、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項14】
前記医薬は、器官または組織移植片に送達され、移植組織が、肺組織、心臓組織、腎臓組織、肝臓組織、網膜組織、角膜組織、皮膚組織、膵臓組織、腸組織、生殖組織、卵巣組織、骨組織、腱組織、骨髄、または血管組織である、請求項1に記載の医薬。
【請求項15】
前記移植組織が、インタクトな器官である、請求項14に記載の医薬。
【請求項16】
患者が、同種組織または器官移植を受けたことがある、請求項14に記載の医薬。
【請求項17】
同種組織または器官移植の実行の前に送達される、請求項14に記載の医薬。
【請求項18】
同種組織または器官移植と同時に送達される、請求項14に記載の医薬。
【請求項19】
同種組織または器官移植後の少なくとも2週間以内に送達される、請求項14に記載の医薬。
【請求項20】
対象がヒトである、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項21】
高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子が静脈内投与または動脈内投与のために製剤化されている、請求項1~20のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項22】
1種以上の免疫抑制剤をさらに含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項23】
薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤および/またはアジュバントをさらに含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項24】
1種以上の免疫抑制剤または抗炎症剤をさらに含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項25】
前記免疫抑制剤が、シクロスポリンAまたはFK506である、請求項24に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月29日に出願された米国仮特許出願第62/329,676号の優先権を主張し、それは、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0002】
政府のサポート
この発明は、国立衛生研究所により贈られた助成金R01HL118440、R01HL125703、R01CA155432、R01EB009638、K25EB016673およびP30CA008748の下、政府のサポートを受けた。政府は、本発明において、いくらかの権利を有する。
【0003】
発明の属する技術分野
ハイブリッドナノ粒子により長期寛容を誘導するための方法および組成物が提供される。自然免疫細胞に対する固有の親和性を有するハイブリッドナノ粒子を含む組成物および処方が提供される。
【背景技術】
【0004】
背景
無期限の同種移植片生着は、器官移植において、捉えどころがないゴールのままである移植は、器官拒絶を防ぐために免疫システムの抑制を必要とする。器官移植を経験する患者は通常、コルチコステロイド、タクロリムス、シクロスポリンおよびシロリムス(ラパマイシン)1~3を含むがこれらに限定されない免疫抑制薬物混合物を受ける。かかる免疫抑制療法は、器官移植の短期間結果を劇的に改善した。しかしながら、全ての免疫抑制剤は、感染およびかなりの代謝毒性などの深刻な有害な影響を有する。従って、習慣的な免疫抑制治療由来の毒性を減少させ、その延長で、長期生着を改善するための継続的な必要性がある。現在利用可能な免疫抑制剤をより毒性の少ない方法で使用する努力にも関わらず、これらの薬物のほぼ普遍的な使用に真剣に挑戦する代替レジメンはない。
【0005】
歴史的に、移植免疫学者は、適応免疫応答メカニズムを標的とすることにより、新規の寛容原性のプロトコルを開発することを試みてきた。かかる仕事は、T細胞が、同種移植片拒絶を誘導するのに、必要不可欠でありおよび十分であるという観察に基づいてきた。しかしながら、マウスモデルにおいて達成される移植寛容の誘導は、活性化T細胞の欠失などの、適応免疫のみを標的とするメカニズムにより完全に説明することができない5~7。どのくらい多数の非特異的な応答が免疫活性に影響を与えるかについての我々の理解における近年の進歩は、どのように自然免疫システムが、(a)器官移植に反応するか、および(b)同種移植片寛容の誘導に対し適応免疫応答に決定的に影響を与えるかを明らかにした8~14。しかしながら、自然免疫システムは、器官移植において成功裏に探索されていない、可能性のあるインビボ治療標的である。
【0006】
ラパマイシンは、移植において最も広く用いられる免疫抑制薬物の一つである。この薬物は、mTOR阻害を介してTおよびBリンパ球活性化をブロックし、およびT細胞増殖を効率的に阻害する18。しかしながら、この薬物の使用は、感染のしやすさの増加を含む、深刻な副作用と関連している19、20
【0007】
現在の治療において、同種移植片生着は、免疫抑制薬物のカクテルを必要とする。自然免疫システムを標的とする実験的抗体は、深刻な副作用を有する長期寛容を誘導することが示されてきた。
【0008】
従って、自然免疫システムを調節でき、副作用をほとんど伴わずに長期寛容を誘導できる治療に対するニーズが存在する。
【0009】
アテローム性動脈硬化症は、世界での主要な死因および身体障害の原因の一つである。アテローム性動脈硬化症は、動脈内腔表面上での脂肪プラークの堆積に関与し、それは次に狭窄、すなわち、動脈を狭くすることを引き起こす。最終的に、この堆積は、虚血損傷を引き起こす病変に対して遠位の血流をブロックする。
【0010】
アテローム性動脈硬化症のためのより有効な治療法およびプラーク炎症を標的とする新規のものを開発する必要性が未だ存在する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A-G】図1A~Gは、mTOR-HDLナノ免疫療法、同種移植片モデル、生体分布および免疫細胞標的化の概要を示す略図である。図1Aは、リン脂質、ヒトAPOA1およびラパマイシンから合成されたmTOR-HDLナノ粒子が透過電子顕微鏡法(TEM)により評価された円盤状形状を有したこと、およびそれらが89Zrで放射線標識され得ることを示す略図である。図1Bは、PETイメージングおよび生体分布のために放射線標識されるか、または自然および適応免疫システムの細胞サブセット中での分布のために蛍光標識される、mTORナノ免疫療法を受ける完全同種異系C57BL/6レシピエント(H2b)に移植されるBALB/cドナー心臓(H2d)を示す概略図である。図1Cは、89Zr(89Zr-mTOR-HDL)で放射線標識されたmTOR-HDLの静脈内投与の24時間後のマウスの代表的なmicro-PET/CT3D融合画像である。CT画像を、関心領域を作成するための解剖学的参照として用いて移植された心臓における放射能濃度を決定した(3D-動画をS2Aとして提供する。)。図1Dは、関心のある組織(腎臓、肝臓、脾臓、血液、骨、皮膚および筋肉)における、注入24時間後の89Zr-mTOR-HDLの生体分布を示す放射能数のグラフである。放射能含有量を、組織のグラムあたりの注入された投与量のパーセンテージ(%ID/g)として表した。エラーバーは、平均(SEM)の標準誤差である、n=3。図1Eは、同一のレシピエント中の、89Zr-mTOR-HDLの静脈内投与後24時間の、天然の(N)vs.移植された心臓(Tx)における放射性追跡子分布を決定したオートラジオグラフィーである。定量化は、ImageJソフトウェアを用いて行った。エラーバーは、標準偏差(SD)である、n=3。図1Fは、血液、脾臓および移植された心臓における骨髄細胞を区別するためのフローサイトメトリーゲーティングストラテジーのグラフ表現である。灰色のヒストグラムは、対照(黒ヒストグラム)と比較した、DiO-標識したmTOR-HDLを注入されたマウスにおける免疫細胞分布を示す。図1Gは、血液、脾臓および移植される心臓における好中球、単球/マクロファージ、Ly-6CloおよびLy-6Chi単球/マクロファージ、樹状細胞およびT細胞の平均蛍光強度(MFI)を示すグラフである。エラーバーは、平均(SEM)の標準誤差である、n=4;ANOVAP≦0.05;**P≦0.01。
図2A-C】図2A~Cは、mTOR-HDLナノ免疫療法が、自然免疫システムのバランスを取り戻すことを示す画像およびグラフである。図2Aは、移植に浸潤する白血球、好中球、マクロファージおよび樹状細胞の合計数を示すグラフである。移植6日後でのプラセボ、経口-RaおよびmTOR-HDL-処置を受けたレシピエントの移植心臓における異なる細胞サブセットのフローサイトメトリー解析を示す(ANOVAP≦0.05;**P≦0.01)。図2Bは、プラセボ、経口-RaおよびmTOR-HDL-処置を受けたレシピエントの移植された心臓におけるLy-6Chi対Ly-6Cloマクロファージの頻度を示すグラフ表現である。データは平均±SEM;群あたりn=4;ANOVAP≦0.05;**P≦0.01を表す。図2Cは、GSEA遺伝子アレイ解析の画像を提示する。結果は、mTOR-HDL処置したレシピエントからのLy-6Clo移植片内マクロファージにおいて、mTORパスウェイが下方制御されることを示す。移植6日後でのmTOR-HDL処置したレシピエントの同種移植片からのLy-6Cloマクロファージにおいてp<0.05を達成する選択された遺伝子のGSEAデータ由来のヒートマップを示す(群あたりn=3の平均)。
図3A-G】図3A~Gは、HDLナノ免疫療法が調節性マクロファージの蓄積を誘導し、および移植片受容を促進することを示す略図およびグラフである。図3Aは、移植6日後のプラセボおよびmTOR-HDL処置したマウスからの移植浸潤Ly-6CloおよびLy-6ChiMΦおよびLy-6G好中球の画像機能的特徴を示す。プラセボおよびmTOR-HDL-処置した同種移植片レシピエントからの、CD45CD11b同種移植片、骨髄細胞サブセットにおける、Ly-6CおよびLy-6G発現についての代表的かつ定量的なフローサイトメトリー結果(上)。プラセボおよびmTOR-HDL-処置したマウスからの移植浸潤Ly-6CloMΦのインビトロ抑制能力を測定した。72時間後のCSFE希釈により測定される細胞増殖パーセンテージを用いた、CFSE CD8T細胞についての定量的なフローサイトメトリー結果を示す(中)。プラセボおよびmTOR-HDL-処置したマウスからの移植浸潤Ly-6CloMΦのインビトロT-reg増殖能力を評価した。フローサイトメトリー解析は、72時間の共培養後のCD4+T細胞についてのFoxp3発現のパーセンテージを示す(下)。データを平均±SEM;群あたりn=4;t-検定**P≦0.01として示す。図3Bは、プラセボおよびmTOR-HDL-処置した同種移植片レシピエントからの、移植浸潤CD4CD25vs.CD4CD25T-細胞のパーセンテージを示す画像である。データを、平均±SEM;群あたりn=4;t-検定**P≦0.01として示す。図3Cは、移植6日後での、Ly-6CloMΦ枯渇に次いでmTOR-HDL-処置したマウスからの、移植片に浸潤するLy-6CloおよびLy-6ChiMΦおよびLy-6G好中球の表現型特徴を示す散布図およびグラフである。Ly-6CloMΦ枯渇のためにDTを受けたmTOR-HDL-処置したCD169-DTRレシピエントの移植浸潤CD45CD11b骨髄細胞サブセットの代表的なおよび定量的なフローサイトメトリー結果。データを、平均±SEM;群あたりn=4;t-検定**P≦0.01として示す。図3Dは、mTOR-HDL処置したレシピエントにおける、Ly-6Cloマクロファージ枯渇に次ぐ移植片生着を示すKaplan-Meier曲線である。結果は、野生型単球の養子移入が、mTOR-HDL処置したマクロファージ枯渇レシピエントにおいて寛容を回復することを示す(各群においてn=4マウス;Kaplan-Meier**P≦0.01)。図3Eは、プラセボ対mTOR-HDL処置したレシピエント同種移植片から得たLy-6Cloマクロファージにおける、CD40の発現についての遺伝子アレイののボックスプロットである(群あたりn=3の平均;t-検定**P≦0.01)。図3Fは、TRAF6i-HDLナノ免疫療法を伴ってまたは伴わずにインビボでアゴニスト刺激性CD40mAbを受けたmTOR-HDLレシピエントの移植片生着を示すKaplan-Meier曲線である(各群においてn=5マウス;Kaplan-Meier**P≦0.01)。図3Gは、プラセボ、経口-Ra、mTOR-HDLおよびmTOR-HDL/TRAF6i-HDL組み合わせ療法の移植片生着曲線を示すKaplan-Meier曲線である(各群においてn=8マウス、Kaplan-Meier生着解析;P≦0.001プラセボvs.mTOR-HDL、P≦0.01経口-Ra vs.mTOR-HDL、P≦0.01 TRAF6i-HDL vs.mTOR-HDL/TRAF6i-HDL、P≦0.01 mTOR-HDL vs.mTOR-HDL/TRAF6i-HDL)。
図4図4は、mTOR-HDLの円盤形態を示す透過型電子顕微鏡写真である。
図5A-C】図5A~Cは、C57/Bl6野生型マウスにおける生理学的生体分布およびmTOR-HDL標的化を示すグラフおよび画像である。図5Aは、肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓および筋肉における蓄積を示す、移植24時間前のPBS対照(器官の最初の行)またはDiR-標識したmTOR-HDLのいずれかを注入された器官の代表的な近赤外蛍光画像(NIRF)を示す。右パネルは、対照およびmTOR-HDL-DiR群において、各器官の合計シグナルを割ることにより計算した、各器官における対照対mTOR-HDL-DiR蓄積割合を表すバーを伴うグラフである。エラーバーは、平均(SEM.)の標準誤差、n=4;P≦0.05;**P≦0.01、***P≦0.001である。図5Bは、血液および脾臓における骨髄細胞分布を示すグラフである。灰色のヒストグラム(右)は、対照動物における分布(黒ヒストグラム)と比較した、DiO-標識したmTOR-HDLを注入されたマウスにおける分布を示す。図5Cは、血液および脾臓における好中球、単球/マクロファージプール、Ly-6Clo/Ly-6Chi単球および樹状細胞の平均蛍光強度(MFI)を示すグラフである。エラーバーは、平均(SEM.)の標準誤差、n=4;P≦0.05;**P≦0.01である。
図6図6は、移植心臓、腎臓、肝臓および脾臓における平均%ID/gによる、PET-定量化された取り込み値を示すグラフである、n=3。
図7A-B】図7A~Bは、mTOR-HDLナノ免疫療法がTリンパ球を標的としないことを示すグラフおよびフローサイトメトリー画像である。図7Aは、血液および移植心臓において、T細胞を区別するためのフローサイトメトリーゲーティングストラテジーを示す散布図である。灰色のヒストグラム(右)は、対照動物における分布(黒ヒストグラム)と比較した、DiO-標識したmTOR-HDLを注入されたマウスにおけるT細胞分布を示す。図7Bは、血液および移植心臓における単球/マクロファージ、CD3T、CD4TおよびCD8T-細胞の平均蛍光強度(MFI)を示すグラフである。エラーバーは、平均(SEM.)の標準誤差、n=4;**P≦0.01;***P≦0.001である。
図8図8は、移植後6日での、プラセボ、経口-RaおよびmTOR-HDL-処置した同種移植片レシピエントの血液および脾臓から回収した細胞懸濁液のフローサイトメトリー解析を示すグラフである。データを、平均±SEM;群あたりn=4;P≦0.05;**P≦0.01として示す。
図9A-B】図9A~Bは、プラセボ、経口-RaおよびmTOR-HDL-処置した同種移植片レシピエントからの血液および脾臓におけるLy-6Chi対Ly-6Clo単球の頻度と関連する略図およびグラフである。図9Bは、プラセボ、経口-RaおよびmTOR-HDL-処置した同種移植片レシピエントの血液、脾臓および移植心臓における、Ly-6Clo単球に対するLy-6Chi単球の割合を示すグラフである。データを、平均±SEM;群あたりn=4;P≦0.05;**P≦0.01として示す。
図10図10は、ELISAにより分析した、プラセボ、経口-RaおよびmTOR-HDL-処置した同種移植片レシピエントからの血清における、移植後6日のTNF-α分泌を示すグラフである。
図11A-B】図11A~Bは、TRAF6i-HDLの円盤形態を示す透過型電子顕微鏡写真である。ナノ粒子は、それぞれDLSおよびHPLCにより決定される、19.2±3.1nmの平均流体力学的半径および84.6±8.6%の薬物取り込み効率を有した。図11Bは、粒子が積層構造である場合にTRAF6i-HDL粒子の円盤形態を評価でき、一方でトップダウンの視点から粒子を観察する場合にナノ粒子のサイズを評価できることを示す。
図12A-B】図12A~Bは、mTOR-HDLナノ免疫療法が、皮膚同種移植片生着を劇的に延長することを示す画像およびKaplan-Meier曲線である。図12Aは、デジタルカメラを有する顕微鏡により確認された、移植後の異なる時点での対照およびmTOR-HDL-処置したマウスにおける皮膚同種移植片拒絶を示す画像である。図12Bは、皮膚同種移植片のKaplan-Meier曲線である(各群においてn=4マウス、プラセボおよびmTOR-HDL間P≦0.01)。
図13A-B】図13A~Bは、毒性評価についての、腎臓および肝臓画像(図13A)および心臓免疫組織化学(IHC)(図13B)を示すグラフである。ヘマトキシリン/エオシン(H&E)、過ヨウ素酸シッフ(PAS)およびマッソントリクローム(マッソン)についてのIHCの腎臓および肝臓の代表的な画像は、毒性の兆候を示さない。mTor/TRAF6i-HDL処置したレシピエントからの腎臓および肝臓を、移植100日後で採取した(n=4;倍率X200)。図13Bにおいて、H&EおよびシリウスレッドについてのIHCの代表的な画像は、慢性同種移植脈管症(CAV)の兆候を示さない。mTor-HDL/TRAFi-HDL処置したレシピエントからの心臓同種移植片を、移植後100日(dat)で回収した(n=4;倍率X200)。慢性同種移植脈管症解析である、図13Bでは、切片は、動脈炎を伴わない軽度の粘膜炎症を示し、内膜肥厚の兆候は示さない。マウス大動脈セグメントは、内膜肥厚を伴わずに組織学的変化を示さず、およびCAVの兆候を示さなかった。
図14A-G】図14A~Gは、TRAF6i-HDLナノ粒子生体分布および取り込みを示す画像、概略図およびグラフである。8週齢Apoe-/-マウスに、12週間高コレステロール食を給餌し、その後89Zr-、DiR-またはDiO-標識したTRAF6i-HDLナノ粒子のいずれかでのIV注入を受けさせた。24時間後、マウスを、PET/CTイメージングに用いたか、生体外NIRFイメージングまたはフローサイトメトリー解析のために犠牲にした。図14Aは、ヒトapoA-I、脂質(DMPCおよびMHPC)およびCD40-TRAF6相互作用の低分子阻害剤を組み合わせることにより作成した、TRAF6i-HDLの略図である。図14Bは、TRAF6i-HDLを調査するためにとられた次の工程を示す研究概要である。図14Cは、肝臓、脾臓および腎臓において最も高い取り込みを示す、血液減衰曲線(左パネル)および投与後24時間での全身3D-レンダリングPET/CT融合画像(右パネル)を示す、Apoe-\-マウスにおける89Zr-標識したTRAF6i-HDLの薬物動態を示すグラフである。図14Dは、投与後24時間での89Zr-標識したTRAF6i-HDLの分布のガンマカウントのグラフである。大動脈のオートラジオグラフィーは、マウスモデルにおいてアテローム性動脈硬化症発生の起こりやすい場所である、大動脈基部における可視性のTRAF6i-HDL蓄積を示す。図14Eは、マウス大動脈におけるDiR-標識したTRAF6i-HDL分布のNIRFイメージング(n=2)、および大動脈基部面積におけるTRAF6i-HDLの蓄積を示す対応するグラフを示す。図14Fは、DiO-標識したTRAF6i-HDLを用いたマウス大動脈全体のデータのフローサイトメトリー(n=8)であり、マクロファージおよびLy6Chi単球の高い標的化効率を示し、一方で系列陽性のCD11b陰性細胞はナノ粒子を取り込まなかった。***p<0.001。図14Gは、Ly6Chi単球およびマクロファージがDiO標識したTRAF6i-HDLを取り込んだことを示す、骨髄、血液、脾臓および大動脈細胞のフローサイトメトリー解析の画像である。好中球、Ly6Clo単球および樹状細胞もDiO-TRAF6i-HDLを取り込んだが、系列陽性の細胞(全ての非骨髄細胞)は取り込まなかった。バーは平均の標準誤差を表す。
図15A-B】図15A~Bは、TRAF6i-HDL療法が組織学により評価されるプラークマクロファージ含有量を減少させたことを説明する、画像およびグラフである。8週齢Apoe-/-マウスに高コレステロール食を12週間給餌し、続いて7日にわたり、PBS(n=10)、rHDL(n=10)またはTRAF6i-HDL(n=10)のいずれかの4回のi.v.注入処置を受けさせた。最後の注入の24時間後に、大動脈基部を切片(4μM)にし、免疫組織化学方法で染色した。図15Aは、処置群間でプラークサイズ(H&E)、コラーゲン含有量(シリウスレッド)または増殖細胞の数(Ki67染色)に差がないことを示す大動脈基部の画像およびグラフである。図15Bは、大動脈基部のMac3染色を示しマクロファージ陽性の面積の著しい減少およびコラーゲンに対するマクロファージのより低い割合を説明する画像およびグラフである。**p<0.01、および***p<0.001。
図16A-E】図16A~Eは、TRAF6i-HDLが、損なわれたLy6Chi単球リクルートメントのために、プラーク炎症を減少させることを示す画像およびグラフである。12週間の高コレステロール食での8週齢Apoe-/-マウスを、単一週以内にプラセボ(PBS)、rHDLまたはTRAF6i-HDLのいずれかの4回のi.v.注入で処置した。図16Aは、プラセボ(n=8)処置群と比較した、TRAF6i-HDL(n=7)における大動脈基部での著しく減少したプロテアーゼ活性を示す、FMT/CTイメージングの画像およびグラフである。図16Bは、プラセボ(n=27)およびrHDL(n=26)と比較した、TRAF6i-HDL(n=27)処置群におけるマクロファージの数における有意な減少を示す、大動脈全体のフローサイトメトリー解析の画像である。Ly6Chi単球もまた著しくTRAF6i-HDL群において減少したという事実は、Ly6Chi単球リクルートメントの減損を示す。図16Cは、プラークLy6Chi単球含有量の減少が、Ly6Chi単球の全身性減少に起因したと考えられなかったことを示した、骨髄、血液および脾臓のフローサイトメトリー解析の画像およびグラフである。(図16Dは、プラークマクロファージ増殖に対しるTRAF6i-HDLの効果がないことを示す、インビボBrdU取り込み実験の画像である。図16Eは、マクロファージ増殖への効果がないことを示した、プラセボ、rHDL、TRAF6i-HDL、bareCD40-TRAF6低分子阻害剤またはrHDL+bareCD40-TRAF6低分子阻害剤の組み合わせで、24時間処理したRAW264.7マクロファージにおける、BrdU取り込みのインビトロ実験(n=3)からのグラフである。**p<0.01、および***p<0.001。
図17A-D】図17A~Dは、影響される過程の中で特に、細胞移動に対するTRAF6i処置の効果を説明する、プラーク単球/マクロファージの全トランスクリプトーム解析からのデータを反映するグラフおよび略図である。8週齢ApoE-/-マウスに高コレステロール食を12週間給餌し、その後プラセボ(n=10)またはTRAF6i-HDL(n=10)のいずれかの4回のi.v.注入で7日にわたり処置した。最後の注入の24時間後に、マウスを犠牲にしおよび大動脈基部の凍結切片をレーザー捕捉顕微解剖によるプラークマクロファージの単離に用い、続いてRNAの単離および配列解析を行った。図17Aは、プラーク単球/マクロファージにおいて差次的に発現される(DE)遺伝子の分布を示す、Volcanoプロットである。図17Bは、0.2のFDR閾値のカットオフ値による、有意に上方および下方制御された遺伝子の合計数を示すグラフである。FDR<0.2は、p-値<0.009に対応する。(図17Cは、遺伝子オントロジー(GO)データベース中のDE遺伝子セットの遺伝子濃縮解析であり、DE遺伝子が著しく濃縮された15のGOタームを示す。図17Dは、京都遺伝子ゲノム百科事典(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)(KEGG)パスウェイツールを用いて416DE遺伝子をマッピングすることにより同定された、2つの有意に変化したパスウェイ(接着斑およびエンドサイトーシス)を示すマクロファージの略図である。FDR<0.05を有する8つの最も有意なDE遺伝子およびそれらの細胞内での位置も示す(より濃い黒の遺伝子は上方制御され、より明るい灰色の遺伝子は下方制御され、遺伝子を図23~24でリストにした)。
図18A-C】図18A~Cは、TRAF6i-HDL療法が、非ヒト霊長類において毒性効果を示さないことを説明するグラフおよび画像である。6匹の非ヒト霊長類にプラセボ(n=3)または1.25mg/kgTRAF6i-HDL(n=3)のいずれかを注入した。血液を複数の時点で採取し、および動物を注入の72時間後に犠牲にした。図18Aは、リンパ球、赤血球および血小板へのTRAF6i-HDL療法の影響がないことを示す全血球数のグラフである。図18Bは、肝臓、腎臓、膵臓または筋肉細胞バイオマーカーへのTRAF6i-HDL注入の毒性効果がないことを示す大規模血液化学解析のグラフである。脂質、グルコース、タンパク質(アルブミンおよびグロブリン)および電解質も影響されなかった。図18Cは、組織学的解析のため切片にされおよび染色され(H&E)、病理学者により評価された肝臓、腎臓および脾臓からの検体の画像である。組織損傷または組織構造におけるかく乱の兆候は、いずれの組織においても認められなかった。
図19A-D】図19A~Dは、非ヒト霊長類におけるTRAF6i-HDL生体分布を示す画像およびグラフである。6匹の非ヒト霊長類に89Zr-標識したTRAF6i-HDL(1.25mg/kg)のいずれかを注入した。注入の60分以内に動的PET画像を獲得した。静的PET/MRIスキャンを24、48および72時間で行った。NHPを72時間後に犠牲にした。器官を生体外解析のために採取した。図19Aは、1、5、15、30および60分での動的PET画像である。画像を、肝臓および他の器官を別々に可視化するため分割した。グラフは、異なる時点での表示された器官における定量化された取り込みを示す。右の回転画像は、60分での分布の3D表現を示す。図19Bは、TRAF6i-HDLの分布および蓄積を示す、24、48および72時間での追加の静的PET/MR画像である。グラフは、異なる時点での代表的な器官における定量化された取り込みを示す。図19Cは、89Zr-TRAF6i-HDLの投与後24および72時間での、NHPにおける分布のガンマカウントを反映するグラフおよび画像を含む。図19Dは、NHPにおける89Zr-TRAF6i-HDLについての血液時間活性曲線を示すグラフである。
図20図20は、プラセボ、HDLおよびTRAF6i-HDL処置したApoe-/-マウスの全血球数値を示す表である。P-値を、KruskalWallis検定を用いて計算した。
図21図21は、プラセボおよびTRAF6i-HDL処置したApoe-/-マウスの血液化学値を示す表である。P-値を、マンホイットニーU検定により計算した。アルカリホスファターゼのわずかな増加を除いて、群のいずれの間にも有意な差は観察されなかった。
図22図22は、遺伝子オントロジータームにおける遺伝子の差次的発現変動を示す表である。Apoe-/-マウスの大動脈洞プラークからのCD68陽性の細胞を、レーザー捕捉顕微解剖により単離した。15のGOタームは、差次的に発現された遺伝子の濃縮を示した。P-値を、調整したp-値として示した。
図23図23は、2つの主な同定されたKEGGパスウェイにおける、遺伝子の差次的発現変動を示す表である。Apoe-/-マウスの大動脈洞プラークからのCD68陽性の細胞を、レーザー捕捉顕微解剖により単離した。プラセボおよびTRAF6i-HDL処置したApoe-/-マウス間での、2つの顕著なKEGGパスウェイである、接着斑およびエンドサイトーシスにおける遺伝子の差次的発現変動。P-値を、調整していないp-値として示す。
図24図24は、FDR<0.05を有する遺伝子の差次的発現変動を示す表である。Apoe-/-マウスの大動脈洞プラークからのCD68陽性の細胞を、レーザー捕捉顕微解剖により単離した。プラセボおよびTRAF6i-HDL処置したApoe-/-マウス間での遺伝子の差次的発現変動を示す。P-値を、調整したp-値として示す。
図25図25は、増殖、アポトーシスおよび移動性退出に関与する遺伝子の差次的発現変動を示す表である。Apoe-/-マウスの大動脈洞プラークからのCD68陽性の細胞を、レーザー捕捉顕微解剖により単離した。プラセボおよびTRAF6i-HDL処置したApoe-/-マウス間での遺伝子の差次的発現変動を示す。調整していないP値を示す。
【発明の概要】
【0012】
概要
患者において同種移植片生着を延長するための方法が本開示に包含され、この方法はそれを必要とする患者に本発明の組成物の有効量を投与することを含む。
【0013】
本開示は、それを必要とする患者に本発明の組成物の有効量を投与することを含む、患者において樹状細胞刺激能力を減少させるための方法を提供する。
【0014】
本開示は、それを必要とする患者に本発明の組成物の有効量を投与することを含む、患者において調節性マクロファージの発達を促進するための方法を提供する。
【0015】
本開示は、それを必要とする患者に本発明の組成物の有効量を投与することを含む、患者において移植寛容を誘導する方法を提供する。
【0016】
本開示は、それを必要とする患者に本発明の組成物の有効量を投与することを含む、患者において骨髄細胞を標的とする方法であって、mTOR-HDLが患者の血液循環においてMo/MΦ数を減少させる、方法を提供する。
【0017】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、骨髄細胞を特異的に標的とする。
【0018】
特定の実施形態において、患者は移植を経験したことがあり、移植組織は肺組織、心臓組織、腎臓組織、肝臓組織、網膜組織、角膜組織、皮膚組織、膵臓組織、腸組織、生殖組織、卵巣組織、骨組織、腱組織、骨髄、または血管組織である。特定の実施形態において、移植組織は、インタクトな器官である。
【0019】
特定の実施形態において、患者は同種組織または器官移植を受けたことがある。特定の実施形態において、本方法は、同種組織または器官移植の実行の前に行われる。特定の実施形態において、方法は、同種組織または器官移植と同時に行われる。特定の実施形態において、方法は、同種組織または器官移植後の少なくとも2週間以内に行われる。
【0020】
特定の実施形態において、対象または患者はヒトである。
【0021】
特定の実施形態において、組成物は、静脈内または動脈内に投与される。
【0022】
特定の実施形態において、本方法は、シクロスポリンAまたはFK506などの、1以上の免疫抑制剤を患者に投与することをさらに含む。
【0023】
本開示は、(i)mTOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)を含む組成物、および任意に(ii)CD40-TRAF6阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)を含む組成物の有効量を患者に投与することを含む、免疫寛容を誘導する方法を提供する。特定の実施形態において、mTOR阻害剤は、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである。特定の実施形態において、CD40-TRAF6阻害剤は、TRAF6i-HDLナノ粒子として処方される、6877002またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである。
【0024】
特定の実施形態において、投与は、Ly-6CloMo/MΦ発達を促進する。
【0025】
特定の実施形態において、患者は、セリアック病、I型糖尿病、多発性硬化症、甲状腺炎、グレーブス病、全身性エリテマトーデス、強皮症、乾癬、関節炎、関節リウマチ、脱毛症、強直性脊椎炎、チャーグ・ストラウス症候群、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、クローン病、皮膚筋炎、糸球体腎炎、ギラン・バレー症候群、過敏性腸疾患(IBD)、ループス腎炎、重症筋無力症、心筋炎、天疱瘡/類天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、リウマチ熱、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑、およびヴェーゲナー肉芽腫症から成る群より選択される自己免疫状態を有する。
【0026】
特定の実施形態において、患者は、急性冠動脈症候群、心筋梗塞、狭心症、末梢血管疾患、間欠性跛行、心筋虚血、脳卒中、心不全およびそれらの組み合わせなどの、冠動脈アテローム性動脈硬化症、糖尿病性アテローム性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症の続発症を含むアテローム性動脈硬化状態になりやすいまたはそれを有している。
【0027】
本開示は、CD40-TRAF6阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)を含む組成物の有効量を患者に投与することを含む、アテローム性動脈硬化症を治療する方法を提供する。特定の実施形態において、CD40-TRAF6阻害剤は、TRAF6i-HDLナノ粒子として処方される、6877002またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである。
【0028】
特定の実施形態において、本方法は、mTOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)を含む組成物の有効量を患者に投与することをさらに含む。特定の実施形態において、mTOR阻害剤は、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである。特定の実施形態において、HDLは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)および1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-リン酸化コリン(MHPC)を含み、およびApoA-1をさらに含む。
【0029】
特定の実施形態において、アテローム性動脈硬化症は、急性冠動脈症候群、心筋梗塞、狭心症、末梢血管疾患、間欠性跛行、心筋虚血、脳卒中、心不全およびそれらの組み合わせなどの、冠動脈アテローム性動脈硬化症、糖尿病性アテローム性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症の続発症を含む。
【0030】
本開示は、CD40-TRAF6阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)を含む組成物の有効量を患者に投与することを含む、プラークまたは血管炎症部位においてマクロファージおよび/または単球を標的化する方法を提供する。特定の実施形態において、CD40-TRAF6阻害剤は、TRAF6i-HDLナノ粒子として処方される、6877002またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである。
【0031】
特定の実施形態において、本方法は、mTOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)を含む組成物の有効量を患者に投与することをさらに含む。特定の実施形態において、mTOR阻害剤は、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである。特定の実施形態において、HDLは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)および1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-リン酸化コリン(MHPC)を含み、およびApoA-1をさらに含む。
【0032】
本開示は、mTOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)を含む組成物の有効量をそれを必要とする患者に投与する工程を含む、器官または組織拒絶の予防ための方法を提供する。特定の実施形態において、mTOR阻害剤は、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである。特定の実施形態において、HDLは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)および1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-リン酸化コリン(MHPC)を含み、およびApoA-1をさらに含む。
【0033】
特定の実施形態において、患者は器官または組織移植を経験したことがあり、および移植組織は肺組織、心臓組織、腎臓組織、肝臓組織、網膜組織、角膜組織、皮膚組織、膵臓組織、腸組織、生殖組織、卵巣組織、骨組織、腱組織、骨髄、または血管組織である。
【0034】
特定の実施形態において、組成物は、静脈内または動脈内に投与される。
【0035】
特定の実施形態において、本方法は、1以上の免疫抑制剤を患者に投与することをさらに含む。
【0036】
アテローム性動脈硬化症の進行を遅くするための方法も本開示に包含され、この方法はCD40-TRAF6阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)を含む組成物の有効量をそれを必要とする患者に投与する工程を含む。特定の実施形態において、CD40-TRAF6阻害剤は、TRAF6i-HDLナノ粒子として処方される、6877002またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである。特定の実施形態において、HDLは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)および1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-リン酸化コリン(MHPC)を含み、およびApoA-1をさらに含む。
【0037】
本開示は、m-TOR阻害剤を含む、高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)を含む組成物を提供する。特定の実施形態において、HDLは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)および1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-リン酸化コリン(MHPC)を含み、およびApoA-1をさらに含む。特定の実施形態において、MHPCに対するDMPCの重量比は約3:1である。特定の実施形態において、mTOR阻害剤は、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDLまたはラパマイシン-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである。
【0038】
特定の実施形態において、薬学的組成物は、1以上の免疫抑制剤または抗炎症剤をさらに含む。特定の実施形態において、免疫抑制剤は、シクロスポリンAまたはFK506である。
【0039】
CD40-TRAF6阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)を含む組成物も、本開示に包含される。特定の実施形態において、HDLは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)および1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-リン酸化コリン(MHPC)を含み、およびApoA-1をさらに含む。特定の実施形態において、MHPCに対するDMPCの重量比は、約8:1~約9:1の範囲である。特定の実施形態において、CD40-TRAF6阻害剤は、TRAF6i-HDLナノ粒子として処方される、6877002またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである。
【0040】
本開示は、a)本発明の組成物の薬学的有効量、およびb)薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤および/またはアジュバントを含む薬学的組成物も提供する。
【0041】
本開示は、a)m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)を含む組成物、およびb)CD40-TRAF6阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)を含む組成物を含む薬学的組成物を提供する。
【0042】
本開示は、本発明の組成物を含むキットを提供する。特定の実施形態において、m-TOR阻害剤は、ラパマイシンである。特定の実施形態において、キットは、シクロスポリンA、FK506またはラパマイシンなどの、1以上の免疫抑制剤をさらに含む。特定の実施形態において、CD40-TRAF6阻害剤は6877002である。
【0043】
本開示は、免疫寛容を誘導するための組成物の調製における、mTOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)、および任意に(ii)CD40-TRAF6阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の使用を提供する。
【0044】
本開示は、アテローム性動脈硬化症を治療するための組成物の調製における、CD40-TRAF6阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の使用を提供する。
【0045】
本開示は、プラークまたは血管炎症部位においてマクロファージおよび/または単球を標的とするための組成物の調製における、CD40-TRAF6阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の使用を提供する。
【0046】
本開示は、器官または組織拒絶の予防のための組成物の調製における、mTOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の使用を提供する。
【0047】
本開示は、アテローム性動脈硬化症の進行を遅くするための組成物の調製における、CD40-TRAF6阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の使用を提供する。
【0048】
本開示は、それを必要とする患者において同種移植片生着を延長するための組成物の調製における、本発明のナノ粒子の使用を提供する。
【0049】
本開示は、それを必要とする患者において樹状細胞刺激能力を減少させるための組成物の調製における、本発明のナノ粒子の使用を提供する。
【0050】
本開示は、それを必要とする患者において調節性マクロファージの発達を促進するための組成物の調製における、本発明のナノ粒子の使用を提供する。
【0051】
本開示は、それを必要とする患者において移植寛容を誘導するための組成物の調製における、本発明のナノ粒子の使用を提供する。
【0052】
本開示は、それを必要とする患者において骨髄細胞を標的化するための組成物の調製における、本発明のナノ粒子の使用を提供する。特定の実施形態において、mTOR-HDLは、患者の血液循環においてMo/MΦ数を減少させる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
詳細な説明
ラパマイシンを自然免疫細胞に送達するために高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)を開発した。天然リン脂質およびアポリポタンパク質A-I(APOA1)のコロナ中にラパマイシンをカプセル化する、ラパマイシン-HDL(典型的にはmTOR-HDL)と名付けられたハイブリッドHDLナノ粒子を、同種移植片生着を延長するために開発した。HDL-ナノ粒子はAPOA1を含有し、それはスカベンジャー受容体タイプB-1(sr-b1)およびアデノシン三リン酸-結合カセットトランスポーターA1(ABCA1)を介して効率的にマクロファージ細胞に結合する21、22。結果として、mTOR-HDLナノ粒子は、インビボでラパマイシンを特異的に自然免疫細胞に送達する。直径~15nmであるmTOR-HDLナノ粒子は、~65%の高いカプセル充填効率を有する。放射線標識したmTOR-HDLは、移植された心臓において特異的に蓄積することおよび主に骨髄細胞と関連していることが観察された。結果は、移植された心臓における、Ly-6Chi/Ly-6ClowおよびCD25/CD25細胞の有意な減少を実証する。この処置は、同種移植片生着の劇的な増強ももたらした。
【0054】
その上、本発明者らは、低分子阻害剤(TRAF-STOP)を取り込む、TRAF6上のCD40の結合ドメインに対するHDLナノ生物製剤を開発した(以下、TRAF6i-HDLと称する)。6877002阻害剤をこのTRAF6i-HDLの開発のために用いた(6877002阻害剤は、他の阻害剤と同様に、Chatzigeorgiou etal、2014に記載されおよび米国特許第9,408,829号にも記載される)。TRAF6i-HDLナノ粒子は、19.2±3.1nmの平均流体力学的半径および84.6±8.6%の薬物取り込み効率を有した。TRAF6i-HDLナノ粒子は、単独で、または本明細書中に記載されるmTOR-HDLナノ粒子(nanopraticles)と組み合わせて用いられ得る。
【0055】
代替の実施形態において、SMI6860766(VanderBergetal、2015に記載される)などの他のCD40-TRAF6阻害剤を用いて、代替のTRAF6i-HDLを形成できる。これらの阻害剤は、単独で、または本明細書中に記載される他のナノ生物製剤のいずれかと組み合わせて用いることができる。CD40-TRAF6相互作用をブロックするための追加の適した化合物は、米国特許第9,408,829号に記載される。
【0056】
分子イメージングおよび免疫学的技術と組み合わせた心臓移植実験モデルを用いて、本データは、mTOR-HDLが、樹状細胞の強力な刺激能力を制限し、調節性マクロファージの発生を促進し、および心臓同種移植片生着を無期限に延長することを実証する。レジメンは、移植後第一週の間の5mg/kg当量のラパマイシンの3回の静脈尾静脈内注入のみを含んだ。コンピュータ断層撮影によるインビボ陽電子放出断層撮影(PET-CT)イメージングおよび免疫学的アッセイのアレイの組み合わせを用いて、本発明者らは、心臓同種移植片の標的化および細胞特異性を評価した。本発明者らは続いて広範囲に、自然免疫応答、同種移植片生着および治療メカニズムを研究した。我々のデータは、mTOR-HDLナノ粒子処置が無期限の心臓同種移植片生着を促進することを実証する。その上、本発明者らは、皮膚移植モデルにおいて、これらの結果を拡張できた。これらの結果は、臨床においてドナー-特異的な非応答を誘導するための免疫応答をどのように操作するかおよびヒトにおいて同種移植片拒絶を防ぐかもしれない新規の治療上の標的をどのように同定するかについてのクリティカルな情報を提供する。
【0057】
さらに、本データは、抑制性CD40-TRAF6特異的なナノ免疫療法(TRAF6i-HDL)と組み合わせてmTOR-HDLを用いる短期間の治療的処理置が無期限の同種移植片生着を引き起こす器官移植受容を相乗的に促進することを実証する。
【0058】
合わせて、結果は、HDL-ベースのナノ療法が移植寛容の誘導のための有効な治療パラダイムを表すことを実証する。本研究は、寛容誘導する免疫調節性マクロファージを生み出す新規の治療的ナノ医薬化合物および治療を開発するための基礎を提供する。その上、TRAF6i-HDL処置は、アテローム性動脈硬化症においてマクロファージ蓄積を解決しおよび非ヒト霊長類において望ましい安全性および有効性プロファイルを示すことが示された。
【0059】
定義および方法
特定の実施形態において、本発明の組成物は、m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)(mTOR-阻害剤-HDLとして示される)を含み、m-TOR阻害剤などの例は、ラパマイシンナノ粒子として処方される(典型的にはmTOR-HDL)、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである。代替の実施形態において、組成物は、1以上のラパマイシン派生物およびラパマイシンシグナリングカスケード(S6K)の可能性のある標的を含んでもよい。
【0060】
特定の実施形態において、組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤および/またはアジュバントをさらに含んでもよい。
【0061】
特定の実施形態において、HDL組成物は、シクロスポリンA、FK506、またはアザチオプリン、ミコフェノレートモフェチル、およびそれらのアナログ(例えば、エベロリムス、ABT-578、CCI-779、およびAP23573)などの1以上の追加の免疫抑制と組み合わせて投与できる。
【0062】
一実施形態において、「患者」または「対象」は、哺乳動物を指し、およびヒトおよび獣医対象を含む。一実施形態において、対象は、哺乳類である。
【0063】
一実施形態において、化合物は、薬学的に許容可能な担体を含む組成物で投与される。
【0064】
特定の実施形態において、発明は、m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の治療上有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む、同種移植片拒絶が介在する障害または疾患の治療または予防の方法であって、m-TOR阻害剤が、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグ、またはそれらの薬学的組成物である、方法に関連する。一実施形態において、対象は同種移植片拒絶のリスクがあり、方法は同種移植片拒絶を防ぐ(すなわち、予防)または阻害するためである。
【0065】
その上、どんな移植も拒絶のリスクがあるため、実施形態は、移植拒絶を防ぐために本明細書中に記載される方法または組成物のいずれかを用いるアジュバント療法を含む。
【0066】
同種移植片拒絶に介在される疾患は、心臓移植、皮膚移植、肝臓移植、肺移植、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、腎臓移植、膵臓移植、膵島移植、腸移植、骨移植、網膜移植、骨髄移植、膵島移植および角膜移植を含むがこれらに限定されない。特定の実施形態において、治療は、mTOR-HDLを投与することにより容易化される。他の実施形態において、治療は、mTOR-HDLおよびTRAF6i-HDLの組み合わせを、単一のHDLでまたは2つの別々のHDL組成物でのいずれかで投与することにより容易化される。
【0067】
特定の実施形態において、発明は、同種移植片拒絶に介在される障害または疾患の治療または予防の方法に関連し、(i)m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)であって、m-TOR阻害剤が、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグ、またはその薬学的組成物である、ナノ粒子および任意に(ii)CD40-TRAF6阻害剤を含むTRAFi-HDLナノ粒子であって、CD40-TRAF6阻害剤が、HDLナノ粒子(TRAFi-HDL)として処方される、6877002またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグまたはその薬学的組成物である、ナノ粒子の治療上有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む。特定の実施形態において、mTOR-HDLおよびTRAFi-HDLナノ粒子は、それを必要とする患者に、組み合わせて、または順番に投与される。一実施形態において、対象は同種移植片拒絶のリスクがあり、方法は同種移植片拒絶を防ぐ(すなわち、予防)または阻害するためである。同種移植片拒絶に介在される疾患は、心臓移植、皮膚移植、肝臓移植、肺移植、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、腎臓移植、膵臓移植、膵島移植、腸移植、骨移植、網膜移植、および角膜移植を含むがこれらに限定されない。
【0068】
さらなる実施形態において、発明は、自己免疫疾患の治療または予防の方法に関連する。自己免疫疾患の例としては、セリアック病、I型糖尿病、多発性硬化症、甲状腺炎、グレーブス病、全身性エリテマトーデス、強皮症、乾癬、関節炎、関節リウマチ、脱毛症、強直性脊椎炎、チャーグ・ストラウス症候群、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、クローン病、皮膚筋炎、糸球体腎炎、ギラン・バレー症候群、IBD、ループス腎炎、重症筋無力症、心筋炎、動脈炎天疱瘡/類天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、リウマチ熱、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑、およびヴェーゲナー肉芽腫症が挙げられる。
【0069】
本発明の組成物および方法を用いて治療されるかもしれない状態は、増加した炎症と関連する疾患を含む。Schwarz et al., Identification of differentially expressed genes induced by transient ischemic stroke,Brain Res Mol Brain Res. 2002; 101(1-2):12-22。
【0070】
本発明の組成物および方法は、アテローム性動脈硬化症、狭窄、再狭窄、高血圧、心不全、左心室の肥大(LVH)、心筋梗塞、急性冠動脈症候群、脳卒中、一過性虚血性発作、損なわれた血液循環、心臓疾患、コレステロールおよびプラーク形成、虚血、虚血再灌流傷害、末梢血管疾患、心筋感染、心臓病(例えば、胸痛および介入処置のリスク層別化)、心肺機能蘇生、腎不全、血栓症(例えば、静脈血栓症、深部静脈血栓症、門脈血栓症、腎静脈血栓症、頸静脈血栓症、脳静脈洞血栓症、動脈血栓症など)、血栓形成、血栓症または合併症、バッド・キアリ症候群、Paget-Schroetter病、冠状動脈性心疾患、冠状動脈疾患、冠動脈再建術の必要性、末梢動脈疾患、肺循環疾患、肺塞栓症、脳血管疾患、細胞増殖および内皮機能不全、移植片閉塞または不全、末梢バイパス移植手術の必要性または有害な臨床転帰、冠動脈バイパス(CABG)手術後の必要性または有害な臨床転帰、血管形成術後の不全または有害転帰、内胸動脈移植片不全、静脈移植片不全、自己静脈移植片、静脈移植片閉塞、虚血性疾患、血管内凝固、脳血管疾患、あるいは肥満または過体重状態に関係する任意の他の心臓血管疾患などの、心臓血管疾患を治療するまたは防ぐために用いられ得る。
【0071】
冠動脈アテローム性動脈硬化症、糖尿病性アテローム性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症およびその後遺症(例えば、急性冠動脈症候群、心筋梗塞、狭心症、末梢血管疾患、間欠性跛行、心筋虚血、脳卒中、心不全など)などの、任意のタイプのアテローム性動脈硬化病変が、治療され得る。
【0072】
特定の実施形態において、化合物(例えば、ラパマイシン、または本明細書中に記載される任意の化合物)の疎水性は、分子に長いアルキル鎖を付加することにより変更され得る。
【0073】
本発明の方法において用いられる化合物は、本発明により用いられる化合物の、すべての水和物、溶媒和物、および複合体を含む。キラル中心または異性体中心の別の形態が本発明の化合物に存在する場合、そのような異性体または異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む)のすべての形態は、本明細書に包含されることが意図される。キラル中心を含む化合物は、ラセミ混合物、鏡像異性的に富化された混合物として使用されてよく、またはラセミ混合物が周知の技術を用いて分離されてよく、および個々のエナンチオマーが単独で使用されてよい。本発明に記載の化合物は、ラセミ形態または個々のエナンチオマーである。エナンチオマーは、Pure and Applied Chemistry 69, 1469-1474, (1997) IUPACに記載されているものなどの公知の技術を用いて分離できる。化合物が不飽和炭素-炭素二重結合を有する場合、シス(Z)異性体およびトランス(E)異性体の両方が本発明の範囲内である。化合物がケト-エノール互変異性体などの互変異性体で存在し得る場合、各互変異性体形態は、平衡状態で存在するか主として1つの形態で存在するかに関係なく、本発明に含まれるものと考えられる。
【0074】
本発明で使用される化合物の構造が不斉炭素原子を含む場合、かかる化合物はラセミ化合物、ラセミ混合物、および単離された単一エナンチオマーとして存在し得る。これらの化合物の全てのそのような異性体は、本発明に明示的に含まれる。各立体形成炭素は、RまたはS立体配置であってよい。したがって、そうでないことが示されない限り、かかる非対称性から生じる異性体(例えば、すべてのエナンチオマーおよびジアステレオマー)は本発明の範囲内に含まれることが理解されるべきである。かかる異性体は、古典的分離技術によりおよびJ.Jacques,A.ColletおよびS.Wilenによる“Enantiomers,Racemates and Resolutions”,Pub.JohnWiley&Sons,NY,1981に記載されるものなどの、立体化学的に制御された合成により実質的に純粋な形態で得ることができる。例えば、分割は、キラルカラムでの分取クロマトグラフィーによって行うことができる。
【0075】
対象の発明は、また、本明細書に開示される化合物上に存在する原子の全ての同位体の使用を含むことが意図される。同位体は、原子番号は同じであるが質量数が異なる原子を含む。一般的な例として、限定するものではないが、水素の同位体はトリチウムおよび重水素を含む。炭素の同位体は、炭素-13および炭素-14を含む。
【0076】
本出願を通して構造中の炭素の記法は、さらなる表記なしで使用される場合、12C、13Cまたは14Cなどの炭素の全ての同位体を表すことを意図していることに留意されたい。さらに、13Cまたは14Cを含む任意の化合物は、本明細書に開示される化合物のいずれかの構造を具体的に有し得る。
【0077】
また、本出願を通しての構造中の水素の記法は、それ以上の表記なしで使用される場合、H、H、またはHなどの、水素のすべての同位体を表すと意図されることにも留意されたい。さらに、HまたはHを含む任意の化合物は、本明細書に開示される化合物のいずれかの構造を具体的に有し得る。
【0078】
同位体標識された化合物は一般に、当業者に知られている慣用の技術により、または使用される非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いる本明細書に開示される実施例において記載されるものと類似の方法により調整することができる。
【0079】
本発明の化合物は、塩の形態であってよい。本明細書で使用される「塩」は、本発明の化合物の酸または塩基塩を製造することによって修飾された本化合物の塩である。癌の治療のために使用される化合物の場合、塩は薬学的に許容される。薬学的に許容可能な塩の例は、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸塩;フェノールなどの酸性残基のアルカリまたは有機塩を含むがこれらに限定されない。塩は有機酸または無機酸を用いて製造できる。かかる酸塩は、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩などである。フェノラート塩は、アルカリ土類金属塩、ナトリウム、カリウムまたはリチウムである。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、この点において、本発明の化合物の、比較的非毒性の無機および有機酸または塩基付加塩を指す。これらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製の間にin situで、またはその遊離塩基または遊離酸形態での本発明の精製化合物を、適切な有機または無機の酸または塩基と別々に処理し、このように形成される塩を単離することにより調製される。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチレート(napthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが挙げられる(例えば、Berge etal.(1977)“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.66:1-19を参照のこと)。
【0080】
本明細書で使用される「アルキル」は、特定数の炭素原子を有する分枝鎖および直鎖飽和脂肪族炭化水素基の両方を含み、非置換であるまたは置換されていてよい。アルキルはC1~C10アルキル、またはそのサブセットもしくは個別のものである。非限定的な例において、アルキルが「C1~C5アルキル」でのようにC1~C5である場合、それは直鎖または分枝配置で1、2、3、4または5個の炭素を有する基を含むと定義され、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、およびペンチルを含む。アルキルは任意に、フェニルまたは置換フェニルで置換されて置換または非置換ベンジルを提供し得る。
【0081】
ヘテロシクリルは、炭素または窒素から選択される3~8個の環原子、好ましくは5~6個の環原子を含有するがピロリジンに限定されない飽和または部分不飽和単環式基を意味する。
【0082】
本明細書で使用する「アリール」という用語は、5~15個の炭素原子を含む芳香族単環式または多環式基を指す。アリール基としては、非置換または置換フェニルなどの基が挙げられるが、これらに限定されない。上記アリールが置換されていることを指す場合、上記置換は、本発明の化合物の他の環系への結合点以外の、環上の任意の位置であってよい。したがって、アリール環上の任意の水素原子は、本発明によって定義される置換基で置換されていてよい。アリールがフェニル環である実施形態では、上記置換基は、結合点に対してメタ位および/またはオルト位および/またはパラ位であり得る。アリールは任意に、ピロリジニル-C(O)-部分を含むヘテロシクリル-C(O)-部分で置換されていてよい。
【0083】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」は、各環中に最大で10個の原子の安定な単環式、二環式または多環式環を表し、少なくとも1つの環が芳香族であり、1~4個のヘテロ原子、または特にO、NおよびSから成る群より選択される1~2個のヘテロ原子を含む。二環式芳香族ヘテロアリール基としては、(a)1個の窒素原子を有する6員の芳香族(不飽和)複素環に縮合した;(b)2個の窒素原子を有する5員または6員の芳香族(不飽和)複素環に縮合した;(c)1個の酸素原子または1個の硫黄原子と共に1個の窒素原子を有する5員の芳香族(不飽和)複素環に縮合した;または(d)O、NまたはSから選択される1個のヘテロ原子を有する5員芳香族(不飽和)複素環に縮合した、フェニル、ピリジン、ピリミジンまたはピリダジン環が挙げられる。この定義の範囲内のヘテロアリール基は、:ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、アジリジニル、1,4-ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリイニジニルジヒドロピロリル、、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンを含むがこれらに限定されない。ヘテロアリール置換基が二環式であり、かつ一つの環が非芳香族であるかまたはヘテロ原子を含まない場合、結合はそれぞれ、芳香族環を介するまたはヘテロ原子含有環を介すると理解される。ヘテロアリールが窒素原子を含む場合、その対応するN-オキシドもこの定義に包含されると理解される。
【0084】
本発明の化合物において、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基は、代替の非水素基で1つ以上の水素原子を置換することによってさらに置換され得る。これらは、アルキル、アルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、カルボキシ、シアノおよびカルバモイルから選択される1~4個の基を含むが、これらに限定されない。
【0085】
「置換された」という用語は、通常の原子価が維持され置換により安定な化合物が生じることを条件として、その中に含まれる水素原子への1つ以上の結合が、非水素原子または非炭素原子への結合によって置換される上記の官能基を指す。置換基は、炭素原子または水素原子への1つ以上の結合が、二重または三重結合を含む1つ以上の結合によってヘテロ原子に置き換えられた基も含む。置換基の例としては、上記の官能基、特にハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、およびI);メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、およびトリフルオロメチル基などのアルキル基;ヒドロキシル;メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、およびイソプロポキシなどのアルコキシ基;フェノキシなどのアリールオキシ基;ベンジルオキシ(フェニルメトキシ)およびp-トリフルオロメチルベンジルオキシ(4-トリフルオロメチルフェニルメトキシ)などのアリールアルキルオキシ;ヘテロアリールオキシ基;トリフルオロメタンスルホニル基、メタンスルホニル基、およびp-トルエンスルホニル基などのスルホニル基;ニトロ、ニトロシル;メルカプト;メチルスルファニル、エチルスルファニルおよびプロピルスルファニルなどのスルファニル基;シアノ;ヘテロシクリル-C(O)-部分;アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、およびジエチルアミノなどのアミノ基;およびカルボキシルが挙げられる。複数の置換基部分が開示または特許請求される場合、置換された化合物は、開示されたまたは特許請求される置換基部分の1つまたは複数によって、単独または複数で独立して置換され得る。独立して置換されるとは、(2以上の)置換基が同一であっても異なっていてもよいことを意味する。
【0086】
本発明の化合物上の置換基および置換パターンは、化学的に安定であり、かつ容易に入手可能な出発物質から、当該分野で公知の技術および以下に示す方法によって容易に合成され得る化合物を提供するために当業者によって選択され得ることが理解される。置換基自体が複数の基で置換される場合、これらの複数の基は、安定な構造が生じる限り、同じ炭素上または異なる炭素上にあってよいことが理解される。
【0087】
本発明の化合物の選択において、当業者は、様々な置換基、すなわちR、Rなどが、周知の化学構造連結の原理に従って選択されることを認識するであろう。さらに、本明細書中の炭素ベースの構造に水素が示されていない場合、暗黙の水素は必要に応じて価数を満たすと理解される。
【0088】
本発明の化合物は、塩の形態であってよい。本明細書で使用される「塩」は、本発明の化合物の酸または塩基塩を製造することによって修飾された本化合物の塩である。癌の治療のために使用される化合物の場合、塩は薬学的に許容可能である。薬学的に許容可能な塩の例は、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸塩;フェノールなどの酸性残基のアルカリまたは有機塩を含むがこれらに限定されない。塩は有機酸または無機酸を用いて製造できる。かかる酸塩は、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩などである。フェノラート塩は、アルカリ土類金属塩、ナトリウム、カリウムまたはリチウムである。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、この点において、本発明の化合物の、比較的非毒性の無機および有機酸または塩基付加塩を指す。これらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製の間にin situで、またはその遊離塩基または遊離酸形態での本発明の精製化合物を、適切な有機または無機の酸または塩基と別々に反応させ、このように形成される塩を単離することにより調製される。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチレート(napthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが挙げられる(例えば、Berge etal.(1977)“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.66:1-19を参照のこと)。
【0089】
数値範囲が任意のパラメータについて本明細書に提供される場合、その数値範囲のすべての数値サブセット、およびそこに含まれるすべての個々の整数値が本発明の一部として提供されることが理解される。従って、C1~C10アルキルは、1~3個の炭素原子であるアルキルのサブセット、2~5個の炭素原子であるアルキルのサブセットなど、および1個の炭素原子を有するアルキル、3個の炭素原子を有するアルキル、10個の炭素原子を有するアルキル等を含む。
【0090】
一実施形態において、本明細書で論じられるプリンは、アデノシン、イノシン、ヒポキサンチン、またはアデニンの1つ以上である。一実施形態において、本明細書で使用される「決定する」は、実験的に決定することを意味する。
【0091】
医薬組成物においてのように、用語「組成物」は、活性成分、および担体を構成する不活性成分(薬学的に許容可能な賦形剤)を含む製品、ならびに任意の2つ以上の成分の組み合わせ、複合体化または凝集から直接または間接的に生じる任意の製品、または1以上の成分の分離から直接または間接的に生じる任意の製品、または1以上の成分の他のタイプの反応または相互作用から直接または間接的に生じる任意の製品を包含すると意図される。従って、本発明の薬学的組成物は、m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)化合物の化合物であって、m-TOR阻害剤が、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである、化合物、および薬学的に許容可能な賦形剤を混合することにより製造される任意の組成物を包含する。
【0092】
本明細書中で使用される場合、用語「任意に」は、後に記載される事象が発生しても発生しなくてもよいことを意味し、発生する事象、および発生しない事象の両方を含む。
【0093】
本明細書で使用される、用語「1つ以上の基で置換された」は、置換基の数が明示されていない限り許容される、最大ですべての水素原子を同一のまたは異なる置換基で置換する、指定された1つまたは複数の置換基での置換、複数の置換を指す。置換基の数が明示的に記載されない場合、1つ以上が意図される。
【0094】
本明細書で使用する「本発明の化合物」は、式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは生理学的に機能的なその派生物を意味する。
【0095】
本明細書で使用される「溶媒和物」という用語は、溶質(例えば、式Iの化合物、またはその塩)および溶媒によって形成される可変化学量論の複合体を指す。本発明の目的のためのかかる溶媒は、溶質の生物学的活性を妨害しないであろう。適切な溶媒の例としては、水、アセトン、メタノール、エタノールおよび酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは使用される溶媒は、薬学的に許容可能な溶媒である。適切な薬学的に許容可能な溶媒の例としては、水、エタノールおよび酢酸が挙げられる。最も好ましくは、溶媒は水である。
【0096】
特定の実施形態において、用語「生理学的に機能的な派生物」は、インビボで形質転換されて、m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)化合物であって、m-TOR阻害剤が、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグ、または薬学的に許容可能な塩、化合物の水和物または溶媒和物である、化合物、を生じる化合物(例えば、薬物前駆体)を指す。形質転換は、例えば、血液中での加水分解を介するなどの、さまざまなメカニズム(例えば、代謝的または化学的過程による)により起こり得る。プロドラッグは、かかる派生物であり、およびプロドラッグの使用の議論は、T. HiguchiおよびW. Stella、“Pro-drugs as Novel Delivery Systems,” Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series,およびBioreversible Carriers in Drug Design(編) Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987により提供される。その上、用語は、インビボで形質転換されてCD40-TRAF6阻害剤を包含するHDLの化合物、例えばTRAF6i-HDLを生じ得る化合物(例えば、薬物前駆体)を包含し得る。
【0097】
本明細書に記載される様々な要素の全ての組み合わせは、本明細書中で別途指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明の範囲内である。各変形の実施形態は、一般に、各変形について別個に上に列挙されているが、本発明はまた、m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の化合物であって、m-TOR阻害剤が、上に列挙された各実施形態から選択され、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである化合物、のいくつかのまたは各実施形態を含む。従って、本発明は、各変形の実施形態の全ての組み合わせを含むと意図される。
【0098】
特定の実施形態において、本発明は、TRAF6i-HDL(CD40-TRAF6阻害剤とも称される)をさらに含む化合物も含み、ここで阻害剤は、上に列挙された実施形態のいずれかから選択され、TRAF6i-HDLナノ粒子(TRAF6i-HDL)として処方される、6877002(Zarzycka, T. et al, J. Chem. Inf. Model. 55:294-307 (2015)に記載される)またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである。従って、各変形の実施形態の全ての組み合わせが本明細書で検討される。
【0099】
m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)化合物であって、m-TOR阻害剤が、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである、化合物、およびそれらの塩、溶媒和物および生理学的に機能的な派生物は、同種移植片拒絶のリスクのある対象を治療するために有用であると信じられる。および方法は、同種移植片拒絶を防ぐ(すなわち、予防)または阻害するためである。いかなる移植も同種移植片拒絶のリスクがあり、および従って本明細書中に記載される組成物および方法は任意の移植状態のための治療的使用のために考えられることに留意されたい。さらに、TRAF6i-HDL組成物をmTOR-HDL処置レジメンと組み合わせることは、同種移植片拒絶を防ぐ(すなわち、予防)または阻害することにおいて、相乗的効果を提供する。
【0100】
さらなる実施形態において、本発明は、免疫不寛容の可能性を示すあるレベルの免疫反応物により介在される障害の治療のための医薬の調製における、m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の化合物の使用を提供し、ここでm-TOR阻害剤は、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグ、またはそれらの薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、またはそれらの生理学的に機能的な派生物である。
【0101】
従って、本発明は、薬学的組成物をさらに提供し、それはm-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の化合物であって、m-TOR阻害剤が、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである、化合物、およびそれらの塩、溶媒和物および生理学的機能的派生物、および1以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含む。m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の化合物であって、m-TOR阻害剤が、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである、化合物、およびそれらの塩、溶媒和物および生理学的機能的派生物は、上に記載される。担体、希釈剤または賦形剤は、製剤の他の成分と適合性があり、かつそのレシピエントに有害ではないという意味で許容可能でなければならない。本発明の別の観点によれば、m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の化合物の化合物であって、m-TOR阻害剤が、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである、化合物、またはそれらの塩、溶媒和物および生理学的機能的派生物を、1以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と混合することを含む、医薬組成物の調製のための方法が提供される。
【0102】
本発明は、薬学的組成物をさらに提供し、それはCD40-TRAF6阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の化合物であって、CD40-TRAF6阻害剤が、CD40-TRAF6ナノ粒子(TRAF6i-HDL)として処方される、6877002、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである、化合物、およびそれらの塩溶媒和物および生理学的機能的派生物、および1以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含む。CD40-TRAF6阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の化合物であって、CD40-TRAF6阻害剤が、CD40-TRAF6ナノ粒子(TRAF6i-HDL)として処方される、6877002またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである、化合物、およびそれらの塩、溶媒和物および生理学的機能的派生物は、上に記載される。担体、希釈剤または賦形剤は、製剤の他の成分と適合性があり、かつそのレシピエントに有害ではないという意味で許容可能でなければならない。本発明のもう一つの観点により、CD40-TRAF阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の化合物であって、CD40-TRAF6阻害剤が、CD40-TRAF6ナノ粒子(TRAF6i-HDL)として処方される、6877002またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである、化合物、またはそれらの塩、溶媒和物および生理学的機能的派生物を、1以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と混合することを含む薬学的組成物の調製のための過程も提供される。
【0103】
その上、特定の実施形態において、組み合わされたHDLナノ粒子処方として処方される、CD40-TRAF6阻害剤およびm-TOR阻害剤の両方を含む組み合わせ組成物が企図される。かかる組み合わせ組成物において、活性剤/化合物は、上記の通りであり得るが、任意の適切に荷電されたCD40-TRAF6阻害剤またはm-TOR阻害剤が、組み合わされたHDLナノ粒子処方として処方され得る。
【0104】
本発明の薬学的組成物は、単位用量当たりあらかじめ決定された量の活性成分を含有する単位用量形態で提供され得る。かかる単位は、治療条件、投与経路、患者の年齢、体重および状態に応じて、例えば、5μg~1g、好ましくは1mg~700mg、より好ましくは5mg~100mgの、m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の化合物を含んでよく、ここでm-TOR阻害剤は、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである。このような単位用量はしたがって、1日に1回より多く投与され得る。好ましい単位投与組成物は、活性成分の、上記のような1日用量または部分用量(1日に1回以上の投与のため)、またはその適切な画分を含有するものである。さらに、かかる薬学的組成物は、薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製できる。例示的な投与量は、マウスでの5mg/kgを含む。
【0105】
本発明の薬学的組成物は、経口(頬側または舌下を含む)、吸入、鼻内、眼内、または非経口(静脈内および筋肉内を含む)経路などの、任意の適切な経路による投与に適合されてよい。かかる組成物は、例えば、活性成分を担体または賦形剤と会合させることによって、薬学の分野で公知の任意の方法によって調製できる。
【0106】
本発明の化合物の治療上有効量は、例えば、動物の年齢および体重、治療を必要とする正確な状態およびその重症度、製剤の性質および投与経路を含む多くの因子に依存し、最終的に医師または獣医師の裁量に任されるであろう。しかしながら、m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の化合物であって、m-TOR阻害剤が、心臓移植、皮膚移植、肝臓移植、肺移植、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、腎臓移植、膵臓移植、膵島移植、腸移植、骨移植、網膜移植、および角膜移植を含む同種移植片拒絶と関連する疾患または状態の治療のためのラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである、化合物の有効量は一般に、1日あたり5μg~100mg/kgレシピエント(哺乳類)体重の範囲であり、より一般的には1日あたり5μg~10mg/kg体重の範囲にあるであろう。この量は、1日当たり1回の用量で、またはより一般的には、1日あたりの総用量が同じであるように、1日当たり複数(2、3、4、5または6など)の小用量で与えられ得る。それらの塩または溶媒和物の有効量は、m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の化合物であって、m-TOR阻害剤が、それ自体がラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである、化合物の有効量の比率として決定され得る。
【0107】
本発明の化合物およびそれらの塩および溶媒和物、およびその生理学的に機能的な派生物は、単独でまたは心臓移植、皮膚移植、肝臓移植、肺移植、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、腎臓移植、膵臓移植、膵島移植、腸移植、骨移植、網膜移植、および角膜移植を含む、同種移植片拒絶に関係する疾患および状態の治療のための他の治療剤と組み合わせて用いられ得る。
【0108】
本発明による組合せ療法は従って、m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の少なくとも一の化合物であって、m-TOR阻害剤が、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグある、化合物、またはそれらの薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、またはその生理学的に機能的な派生物の投与、および少なくとも一の他の薬学的活性剤の使用を含む。m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の化合物の化合物であって、m-TOR阻害剤が、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである、化合物、および他の薬学的活性剤は、一緒にまたは別々に投与されてよく、別々に投与される場合、これは任意の順序で同時にまたは逐次的に起こり得る。m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)の化合物であって、m-TOR阻害剤が、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである、化合物(複数)および他の薬学的活性剤(複数)の量および投与の相対的なタイミングは、望ましい組み合わせられた治療効果を達成するために選択される。
【0109】
特定の実施形態において、本発明による組合せ療法は従って、(i)m-TOR阻害剤を含む高密度リポタンパク質由来ナノ粒子(HDL)であって、m-TOR阻害剤が、ラパマイシンナノ粒子(mTOR-HDL)として処方される、ラパマイシンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグである、ナノ粒子、またはその薬学的組成物、および(ii)CD40-TRAF6阻害剤を含むsTRAF6i-HDLナノ粒子であって、CD40-TRAF6阻害剤が、TRAF6i-HDLナノ粒子として処方される、6877002、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、ポリモルフ、互変異性体またはプロドラッグ(一般にCD40-HDLと称される)である、ナノ粒子、またはその薬学的組成物の投与を含む。
【0110】
適切な場合には、他の治療的成分が、治療的成分の活性および/または安定性および/または溶解性などの物理的特性を最適化するために、塩の形態で、例えばアルカリ金属塩またはアミン塩または酸付加塩として、またはプロドラッグ、またはエステル、例えば低級アルキルエステルとして、または溶媒和物、例えば水和物として、使用できることは、当業者には明らかであろう。必要に応じて、治療的成分が光学的に純粋な形態で使用できることも、明らかであろう。
【0111】
上で言及した組み合わせは、薬学的組成物の形態での使用のために好都合に存在してよく、従って、薬学的に許容可能な希釈剤または担体と一緒に上で定義した組み合わせ含む薬学的組成物は、本発明のさらなる観点を表す。
【0112】
かかる組み合わせの個々の化合物は、別々のまたは組み合わせた医薬組成物中で連続的にまたは同時に投与されてよい。好ましくは、個々の化合物は、組み合わせた医薬組成物中で同時に投与される。既知の治療剤の適切な用量は、当業者には容易に理解されるであろう。
【0113】
本発明の化合物は、標準化学を含む、様々な方法によって製造できる。以前に定義された任意の可変物は、特に明記しない限り、以前に定義された意味を持ち続ける。例示的な一般的な合成方法を以下に記載し、次に本発明の特定の化合物を実施例で調製する。
【0114】
本発明の化合物は、部分的に以下の合成スキームで示されるような有機合成の分野で知られている方法によって調製されてよい。以下に記載するスキームの全てにおいて、化学の一般原則に従って、必要に応じて、感受性基または反応性基に対する保護基が使用されることは十分に理解される。保護基は、有機合成の標準的な方法に従って操作される((T. W. Green および P. G. M. Wuts (1991) Protecting Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons)。これらの基は、当業者に容易に明らかである方法を用いて、化合物合成の都合のよい段階で除去される。保護基の選択ならびに反応条件および反応工程の順序は、本発明の化合物の調製と矛盾しないものであるべきである。当業者は、立体中心が本発明の化合物に存在するかどうかを認識するであろう。したがって、本発明は、すべての可能な立体異性体を含み、立体異性体の混合物(ラセミ化合物など)だけでなく個々の立体異性体も含む。化合物が単一のエナンチオマーとして所望される場合、それは立体特異的合成によって、または最終生成物または任意の都合のよい中間体の分割によって得ることができる。最終生成物、中間体、または出発物質の分割は、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって行うことができる。例えば、E. L. Eliel, S. H. Wilen, and L. N. Mander によるStereochemistry of Organic Compounds(Wiley-Interscience, 1994))を参照のこと。
【0115】
「移植可能な移植片」は、対象に投与できる細胞、組織および器官(全体または一部)などの、生物学的物質を指す。移植可能な移植片は、例えば、器官、組織、皮膚、骨、神経、腱、ニューロン、血管、脂肪、角膜、多能性細胞、分化細胞(インビボまたはインビトロで得られたまたは誘導された)などの生物学的材料の自家移植片、同種移植片、または異種移植片であってよい。いくつかの実施形態において、移植可能な移植片は、例えば、軟骨、骨、細胞外マトリックス、またはコラーゲンマトリックスから形成される。移植可能な移植片は、単細胞、細胞の懸濁液、および移植可能な組織および器官中の細胞であってよい。移植可能な細胞は典型的には、治療的機能、例えば、レシピエント対象において欠損または減少している機能、を有する。T移植可能な細胞のいくつかの非限定的な例は、島細胞、ベータ細胞、肝細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、ニューロン、グリア細胞、またはミエリン化細胞である。移植可能な細胞は、未修飾の細胞、例えば、ドナー対象から得られる細胞であり、遺伝的または後成的改変を伴わずに移植で使用可能な細胞であり得る。他の実施形態において、移植可能な細胞は、改変された細胞、例えば、遺伝子欠損を有し当該遺伝子欠損が矯正されている対象から得られる細胞、または再プログラミングされた細胞に由来する細胞、例えば、対象から得られる細胞に由来する分化細胞であり得る。
【0116】
「移植」とは、レシピエント対象中に(例えば、ドナー対象から、インビトロ供給源(例えば、分化した自己または異種の天然のまたは誘導された多能性細胞)から)および/または同じ対象において1つの身体位置から別の身体位置に移植可能な移植片を移す(移動させる)過程を指す。
【0117】
「望ましくない免疫応答」は、抗原への曝露から生じ、本明細書に提供される疾患、障害または状態(またはその症状)を促進または悪化させる、または本明細書で提供される疾患、障害または状態の症候である、任意の望ましくない免疫応答を指す。そのような免疫応答は一般に、対象の健康に悪影響を及ぼし、または対象の健康に対する悪影響の兆候を示す。
【0118】
一実施形態において、移植組織は、肺組織、心臓組織、腎臓組織、肝臓組織、網膜組織、角膜組織、皮膚組織、膵臓組織、腸組織、生殖組織、卵巣組織、骨組織、腱組織、または血管組織である。
【0119】
一実施形態において、移植組織は、インタクトな器官として移植される。
【0120】
本明細書で使用される場合、「レシピエント対象」は、別の対象からの移植される細胞、組織または器官を受け取る、または受け取った対象である。
【0121】
本明細書中で使用される場合、「ドナー対象」は、移植される細胞、組織または器官が、レシピエント対象へのその細胞、組織または器官の移植前にそれから除去される対象である。
【0122】
一実施形態では、ドナー対象は霊長類である。さらなる一実施形態において、ドナー対象はヒトである。一実施形態では、レシピエント対象は霊長類である。一実施形態では、レシピエント対象はヒトである。一実施形態では、ドナーおよびレシピエント対象の両方はヒトである。したがって、本発明は、異種移植の実施形態を含む。
【0123】
本明細書中で使用される、「免疫系による拒絶」は、ドナーからの移植された細胞、組織または器官を非自己として認識するレシピエント対象の免疫系の超急性、急性および/または慢性の応答の事象およびそれに続く免疫反応を説明する。
【0124】
用語「同種異系」は、その物質が導入される個体と同じ種の異なる動物に由来する任意の物質を指す。1以上の遺伝子座の遺伝子が同一でない場合、2以上の個体は互いに同種異系であると言われる。
【0125】
「自己」という用語は、それが後に同じ個体中に再導入される同じ個体に由来する任意の物質を指す。
【0126】
本明細書中で使用される場合、「免疫抑制薬」は、レシピエント対象の免疫応答を抑制するために使用される薬学的に許容される薬物である。非限定的な例としては、シクロスポリンA、FK506およびラパマイシンが挙げられる。
【0127】
本明細書中で使用される「予防的に有効な」量は、物質が投与される対象における所定の病理学的状態の発症を防ぐまたは遅延させるのに有効な物質の量である。予防的に有効な量は、所望の予防結果を達成するための、必要な用量でおよび期間の間、有効な量を指す。典型的には、予防的な用量は疾患の前にまたは初期で対象において使用されるので、予防的に有効な量は、治療的に有効な量より少ないであろう。
【0128】
本明細書中で使用される「治療的に有効な」量は、それに対し物質が投与されそれを患う対象における所定の病的状態の症状または原因を治療、改善または軽減するために有効な物質の量である。
【0129】
一実施形態では、治療的にまたは予防的に有効な量は、投与当たり約1mgの薬剤/kg対象~約1gの薬剤/kg対象である。別の実施形態において、治療的にまたは予防的に有効な量は、約10mgの剤/kg対象~500mgの剤/対象である。さらなる実施形態において、治療的にまたは予防的に有効な量は、約50mgの剤/kg対象~200mgの剤/対象である。さらなる実施形態において、治療的にまたは予防的に有効な量は、約100mgの剤/kg対象である。なおさらなる実施形態において、治療的にまたは予防的に有効な量は、50mgの剤/kg対象、100mgの剤/kg対象、150mgの剤/kg対象、200mgの剤/kg対象、250mgの剤/kg対象、300mgの剤/kg対象、400mgの剤/kg対象および500mgの剤/kg対象から選択される。
【0130】
状態、障害または状態の「治療する」または「治療」は、
(1)状態、障害または状態に罹患しているかまたは罹患している可能性があるが、状態、障害または状態の臨床症状をまだ経験していないか表示していない人で発達する状態、障害、または状態の臨床症状の出現を防ぐことまたは遅延させること;または
(2)状態、障害または状態を阻害すること、すなわち、疾患の発症またはその再発(維持療法の場合)または少なくとも1つのその臨床症状、兆候、または試験を、停止すること、低減することまたは遅延すること;または
(3)病気を和らげること、すなわち、状態、障害または状態またはその臨床的または潜在的な症状または徴候の少なくとも1つの退行を引き起こすこと
を含む。
【0131】
治療される対象への利益は、統計的に有意であるか、または少なくとも患者または医師に知覚可能である。
【0132】
「予防的に有効な量」は、所望の予防結果を達成するための、必要な用量でおよび期間の間、有効な量を指す。典型的には、予防的な用量は疾患の前にまたは初期で対象において使用されるので、予防的に有効な量は、治療的に有効な量より少ないであろう。
【0133】
治療的使用のための許容可能な賦形剤、希釈剤、および担体は、医薬品分野において周知であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy. Lippincott Williams & Wilkins (A. R. Gennaro edit. 2005)などに記載されている。薬学的賦形剤、希釈剤、および担体の選択は、意図される投与経路および標準的な製薬実務に関して選択できる。
【0134】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な」という語句は、「一般的に安全とみなされる」、例えば、生理学的に寛容であり、かつ典型的には、ヒトに投与された場合に、胃の不調和、めまいなどのアレルギー反応または同様の不都合な反応を引き起こさない分子実体および組成物を指す。好ましくは、本明細書で使用される「薬学的に許容可能な」という用語は、動物での、特にヒトでの使用のために連邦または州政府の規制機関によって承認されるか、または米国薬局方または他の一般に認められている薬局方に列挙されることを意味する。
【0135】
「患者」または「対象」は哺乳動物を指し、ヒトおよび獣医学の対象を含む。特定の獣医学的対象は鳥類を含み得る。
【0136】
本発明は、以下の実験詳細からよりよく理解されるであろう。しかしながら、当業者は、議論される特定の方法および結果は、本発明の単なる例示であり、その後に続く請求項においてより十分に記載されることを容易に理解するであろう。
【0137】
一般的な方法
分子生物学における標準的な方法はSambrook、Fritsch and Maniatis (1982 & 1989 第2版, 2001 第3版 Edition) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; SambrookおよびRussell (2001) Molecular Cloning, 第3版、 Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Wu (1993) Recombinant DNA, Vol. 217, Academic Press, San Diego, CA)に記載される。標準的な方法は、Ausbel, et al. (2001) Current Protocols in Molecular Biology, Vols.1-4, John Wiley および Sons, Inc. New York, NYにも出現し、それは、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA変異誘発(Vol.1)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(Vol.2)、複合糖質およびタンパク質発現(Vol.3)、ならびにバイオインフォマティクス(Vol.4)について記載する。
【0138】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、および結晶化を含むタンパク質精製方法が記載される(Coligan, et al. (2000) Current Protocols in Protein Science, Vol. 1, John WileyおよびSons, Inc., New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生成、タンパク質のグリコシル化が記載される(例えばColigan, et al. (2000) Current Protocols in Protein Science, Vol. 2, John WileyおよびSons, Inc., New York; Ausubel, et al. (2001) Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 3, John WileyおよびSons, Inc., NY, NY, pp. 16.0.5-16.22.17; Sigma-Aldrich, Co. (2001) Products for Life Science Research, St. Louis, MO; pp. 45-89; Amersham Pharmacia Biotech (2001) BioDirectory, Piscataway, N.J., pp. 384-391を参照のこと)。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の産生、精製および断片化が記載される((Coligan, et al. (2001) Current Protocols in Immunology, Vol. 1, John WileyおよびSons, Inc., New York; HarlowおよびLane(1999) Using Antibodies, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; HarlowおよびLane, supra)。リガンド/受容体相互作用を特徴付けるための標準的な技術が利用可能である(例えば、Coligan, et al. (2001) Current Protocols in Immunology, Vol. 4, John Wiley, Inc., New Yorkを参照のこと)。
【0139】
ラパマイシンは、ストレプトミセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)によって産生される既知のマクロライド抗生物質である。ラパマイシンの適切な派生物は、例えば、式Iの化合物を含み、ここでRは、R.sub.1はCH.sub.3またはC.sub.3~6アルキニルであり、R.sub.2はHまたは--CH.sub.2--CH.sub.2--OHであり、Xは、Xが.dbd.OでありR.sub.1がCH.sub.3である場合R.sub.2がH以外であることを条件として、dbd.O,(H,H)または(H,OH)である。ラパマイシンの構造を下に示す:
【化1】
【0140】
式Iの化合物は、例えば、米国特許5,665,772;6,440,990;5,985,890;および6,200,985に開示されており、それは参照により本明細書中に組み込まれる。それらは、開示されるように、またはこれらの参考文献に記載された手順と同様にして調製され得る。
【0141】
好ましい化合物は、32-デオキソラパマイシン、16-ペンタ-2-イニルオキシ-32-デオキソラパンビシン、16-ペント-2-イニルオキシ-32(S)-ジヒドロ-ラパマイシン、16-ペント-2-イニルオキシ-32(S)-ジヒドロ-40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシンであり、より好ましくは、米国特許第5,665,772および6,440,990の実施例8において開示される、40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン(以後、化合物Aと称される)である。
【0142】
式Iの化合物は、観察された活性、例えばWO94/09010、WO95/16691またはWO96/41807に記載される、例えばマクロフィリン-12(FK-506結合タンパク質またはFKBP-12としても知られる)への結合、に基づいて、例えば急性同種移植片拒絶の治療において、例えば免疫抑制として有用であることが見出された。
【0143】
実施形態は、改善された疎水性および/または混和性を有するラパマイシン誘導体を含むナノ粒子も含む。例えば、ラパマイシンは、Zhao et al., Augmenting drug-carrier compatibility improves tumour nanotherapy efficacy, Nature Communications 7, Article number: 11221 (2016) doi:10.1038/ncomms11221に記載されるようにアルキル鎖とコンジュゲートできる。
【0144】
特定の実施形態では、コレステロールの添加は、配合物を安定化させ、かつ捕捉効率を改善した。特定の実施形態において、コレステロールの重量パーセントは、ナノ粒の子、脂質の、または組成物の、約0%~約10%(w/w)、約1%(w/w)~約10%(w/w)、約2%(w/w)~約10%(w/w)、約3%(w/w)~約10%(w/w)、約4%(w/w)~約10%(w/w)、約5%(w/w)~約10%(w/w)、約6%(w/w)~約10%(w/w)、約7%(w/w)~約10%(w/w)、約8%(w/w)~約10%(w/w)、約1%(w/w)~約9%(w/w)、約1%(w/w)~約8%(w/w)、約1%(w/w)~約7%(w/w)、または約1%(w/w)~約6%(w/w)の範囲である。
【0145】
リポソーム、ナノカプセル、微粒子、マイクロスフェア、脂質粒子、小胞などの送達媒体は、例えばマクロファージを標的にして移植寛容を誘導する、自然免疫系を標的にする本発明の組成物の導入のために使用されてよい。マクロファージを標的とする化合物は、mTOR-HDLとしてナノ療法として製剤化されることに加えて、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、またはナノ粒子などに封入されたいずれかを含む、多数の異なる形態および方法での送達のために処方され得る。
【0146】
リポソームの形成および使用は一般に、当業者に公知である。近年、改善された血清安定性および循環半減期を有するリポソームが開発された(米国特許第5,741,516)。さらに、可能性のある薬物担体としてのリポソームおよびリポソーム様調製物の様々な方法が記載されている(米国特許第5,567,434;5,552,157;5,565,213;5,738,868および5,795,587)。
【0147】
リポソームは、他の手順によるトランスフェクションに対し通常は耐性がある多数の細胞タイプでうまく使用されてきた。さらに、リポソームは、ウイルスベースの送達システムに典型的なDNA長の制約がない。リポソームは、遺伝子、薬物、放射線治療剤、ウイルス、転写因子およびアロステリックエフェクターを様々な培養細胞株および動物に導入するために効果的に使用されている。さらに、リポソーム媒介薬物送達の有効性を調べるいくつかの成功した臨床試験が完了している。
【0148】
リポソームは、水性媒体中に分散されたリン脂質から形成され、自発的にマルチラメラ同心二重層小胞(マルチラメラ小胞(MLV)とも呼ばれる)を形成する。MLVは一般に、25nm~4μmの直径を有する。MLVの超音波処理は、コア中に水溶液を含有する、直径200~500Åの小さな単層小胞(SUV)の形成をもたらす。
【0149】
あるいは、自然免疫系を標的とする本発明の組成物のナノカプセル製剤を使用してもよい。ナノカプセルは通常、安定な再現性のある方法で物質を閉じ込めることができる。細胞内ポリマー過負荷による副作用を避けるために、かかる超微粒子(約0.1μmの大きさ)は、インビボで分解できるポリマーを用いて設計されるべきである。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子が、使用のために考えられる。
【0150】
「合成ナノキャリア」は、自然界には存在せず、かつサイズが5ミクロン以下の少なくとも1つの寸法を有する、個別の物体を意味する。アルブミンナノ粒子は一般に、合成ナノキャリアとして含まれるが、特定の実施形態では、合成ナノキャリアは、アルブミンナノ粒子を含まない。特定の実施形態では、合成ナノキャリアはキトサンを含まない。他の実施形態において、本発明の合成ナノキャリアは、脂質ベースのナノ粒子ではない。さらなる実施形態では、合成ナノキャリアはリン脂質を含まない。
【0151】
合成ナノキャリアは、限定されるものではないが、1つまたは複数の脂質ベースのナノ粒子、(本明細書中脂質ナノ粒子とも呼ばれ、すなわち、それらの構造を構成する材料の大部分が脂質であるナノ粒子)、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルジョン、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウイルス様粒子(すなわち、ウイルス構造タンパク質で主に構成されているが、感染性ではないか、または感染性が低い粒子)、ペプチドまたはタンパク質ベースの粒子(本明細書ではタンパク質粒子、すなわち、それらの構造を構成する材料の大部分がペプチドまたはタンパク質である粒子とも呼ばれる)(アルブミンナノ粒子など)および/または脂質-ポリマーナノ粒子などのナノ材料の組み合わせを用いて開発されたナノ粒子であってよい。合成ナノキャリアは、回転楕円体、直方体、ピラミッド形、長円形、円筒形、トロイダル形などを含むが、これらに限定されない様々な異なる形状であってよい。本発明による合成ナノキャリアは、1つ以上の表面を含む。本発明の実施における使用のために適合できる例示的な合成ナノキャリアは、:(1)Grefらへの米国特許第米国特許第5,543,158号に開示される生分解性ナノ粒子(2)Saltzmanらへの公開された米国特許出願第20060002852号のポリマーナノ粒子(3)リソグラフィーで構築された、De Simoneらへの公開米国特許出願第20090028910号のナノ粒子(4)von AndrianらへのWO2009/051837の開示、(5)Penadesらへの米国特許出願公開第2008/0145441号に開示されているナノ粒子、(6)de los Riosらへの公開された米国特許出願第20090226525号に開示されるタンパク質ナノ粒子、(7)Sebbel らへの公開された米国特許出願第20060222652号に開示されるウイルス様粒子、(8)Bachmannらへの公開された米国特許出願公開第20060251677号に開示される核酸結合ウイルス様粒子、(9)WO2010047839A1またはWO2009106999A2に開示されるウイルス様粒子、(10)P.Paolicelliら、“Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles” Nanomedicine. 5(6):843-853 (2010)に開示されるナノ沈降ナノ粒子、または(11)米国特許出願公開第2002/0086049号に開示されるアポトーシス細胞、アポトーシス小体または合成または半合成模倣物を含む。実施形態において、合成ナノキャリアは、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7、または1:10超のアスペクト比を有してよい。
【0152】
合成ナノキャリアは、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有してよく、補体を活性化するヒドロキシル基を有する表面を含まないか、あるいは補体を活性化するヒドロキシル基ではない部分から本質的になる表面を含む。特定の実施形態において、合成ナノキャリアは、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有してよく、実質的に補体を活性化する表面を含まないか、または補体を実質的に活性化しない部分から本質的になる表面を含む。いくつかの実施形態における合成ナノキャリアは、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有し、補体を活性化する表面を含まないか、または補体を活性化しない部分から本質的になる表面を含む。実施形態において、合成ナノキャリアは、ウイルス様粒子を排除する。実施形態において、合成ナノキャリアは、1:11:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7、または1:10.を超えるアスペクト比を有し得る。
【0153】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、1種類以上のリン脂質を含む(本質的にそれからなるか、またはそれからなる)。
【0154】
適したリン脂質の例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリンまたは他のセラミド、ならびにレシチン油などのリン脂質含有油が挙げられるが、これらに限定されない。リン脂質の組合せ、またはリン脂質と他の物質との混合物を使用することができる。
【0155】
本発明の組成物において使用され得るリン脂質の非限定的な例としては、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、大豆レシチン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジラウリルオリホスファチジルコリン(DLPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジラウリルオリルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(DPSP)、ジステアロイルスフィンゴミエリン(DSSP)、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0156】
特定の実施形態において、本発明の組成物が2以上のタイプのリン脂質を含む(本質的にそれからなる、またはそれらからなる)場合、2種のリン脂質の重量比は約1:10~約10:1、約2:1~約4:1、約1:1~約5:1、約2:1~約5:1、約6:1~約10:1、約7:1~約10:1、約8:1~約10:1、約7:1~約9:1、または約8:1~約9:1の範囲であり得る。例えば、2種類のリン脂質の重量比は、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、または約10:1であり得る。
【0157】
一実施形態では、本発明の高密度リポタンパク質(HDL)由来ナノ粒子は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)および1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-リン酸化コリン(MHPC)を含む(本質的にそれからなるか、またはそれからなる)。MHPCに対するDMPCの重量比は、約1:10~約10:1、約2:1~約4:1、約1:1~約5:1、約2:1~約5:1、約6:1~約10:1、約7:1~約10:1、約8:1~約10:1、約7:1~約9:1、または約8:1~約9:1の範囲であり得る。MHPCに対するDMPCの重量比は約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、または約10:1であり得る。
【0158】
mTor阻害剤および他の薬学的活性成分との組み合わせ
mTOR阻害剤の例としては、ラパマイシンおよびその類似体(例えば、CCL-779、RAD001、AP23573、C20-メタリルラパマイシン(C20-Marap)、C16-(S)-ブチルスルホンアミドラパマイシン(C16-BSrap)、C16-(S)-3-メチルインドールラパマイシン(C16-iRap)(Bayle et al. Chemistry & Biology 2006、13:99-107))、AZD8055、BEZ235(NVP-BEZ235)、クリソファン酸(クリソファノール)、デホロリムス(MK-8669)、エベロリムス、(RAD0001)、KU-0063794、PI-103、PP242、temシロリムス、およびWYE-354(Selleck,Houston,Tex.,USAから入手可能)が挙げられる。
【0159】
特定の実施形態において、PIRb+マクロファージを標的とし、同種移植片の生着を促進する1以上の追加のまたは代替の活性成分を、組み合わせて使用してよい。これらの活性成分のいずれか1つ以上は、1つの投与単位で、またはmTOR-HDLナノ粒子などの形態の組み合わせで製剤化されてよく、脂質粒子、リポソーム、小胞、第2または第3の活性成分を含むナノスフェアと組み合わせて投与されてよい。他の適切な活性薬剤は、1つ以上の免疫抑制剤を含む。
【0160】
治療レジメン/オプション
mTOR-HDLは、T細胞枯渇およびB細胞枯渇などの適応免疫応答を標的とする他の誘導療法と併用できる。例えば、腎臓生着ドナーについて、移植レシピエントは、移植の前および直後に処置されてよい。現行の免疫抑制療法を受けている患者は、mTOR-HDL療法またはmTOR-HDL/TRAF6i-HDL組合せ療法に切り替えられてよい。追加のシナリオでは、mTOR-HDL処置は、移植前および移植直後に患者に投与され、それは6ヶ月または12ヶ月ごとに繰り返されてよく、免疫抑制治療を排除することまたは大幅に減少させることをゴールとする。追加のシナリオでは、患者は、追加の免疫抑制療法を行わずに、mTOR-HDL療法、またはmTOR-HDL/TRAF6i-HDL組合せ療法を投与される。
【0161】
例示的な免疫抑制剤としては、スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシン類似体などの、mTOR阻害剤;TGF-βシグナリング剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤;コルチコステロイド;ロテノンなどの、ミトコンドリア機能の阻害剤;P38阻害剤;NF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼ4阻害剤などの、ホスホジエステラーゼ阻害剤;プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体活性化剤;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤および酸化型ATPが挙げられるが、これらに限定されない。免疫抑制剤としてはまた、IDOビタミンD3、シクロスポリンA、アリール炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、アスピリン、ニフルム酸、エストリオール、トリポリド、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-10)、シクロスポリンA、サイトカインまたはサイトカイン受容体を標的とするsiRNAなどが挙げられる。スタチンの例としては、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標)、TORVAST(登録商標))、セリバスタチン、フルバスタチン(LESCOL(登録商標)、LESCOL(登録商標)XL)、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、ALTOCOR(登録商標)、ALTOPREV(登録商標))、メバスタチン(COMPACTIN(登録商標))、ピタバスタチン(LIVALO(登録商標)、PIAVA(登録商標))、ロスバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、SELEKTINE(登録商標)、LIPOSTAT(登録商標))、ロスバスタチン(CRESTOR(登録商標))、およびシンバスタチン(ZOCOR(登録商標)、LIPEX(登録商標))が挙げられる。
【0162】
mTOR-HDLナノ療法を、同種異系心臓移植マウスモデルで試験した。このレジメンは、移植後最初の週の間に5mg/kg相当のラパマイシンの3回の静脈内尾静脈注射のみを含んだ。コンピュータ断層撮影(PET-CT)イメージングによるインビボでの陽電子放出断層撮影と免疫学的アッセイのアレイの組み合わせを用いて、心臓同種移植標的化および細胞特異性を評価した。続いて、自然免疫応答を、同種移植片の生着および治療メカニズムとともに分析した。これらの結果は、mTOR-HDLナノ粒子処置が不定心臓同種移植片の生着を促進することを実証する。さらに、同様の結果が皮膚移植モデルについても観察された。これらの結果は、診療所でドナー特異的非応答を誘導するための免疫応答をどのように操作し、かつヒトにおける同種移植拒絶反応を防止し得る新たな治療的標的を同定するかを実証する。
【0163】
実施例
実施例1
mTOR-HDLナノ粒子の開発
PBS中でAPOA1と、ラパマイシンおよびリン脂質を含む脂質フィルムを水和させることによりmTOR-HDLナノ粒子(図1Aを参照のこと)を合成した。続いて、および激しいホモジナイゼーション後に、試料を超音波分解して、高速液体クロマトグラフィーおよび動的光散乱によりそれぞれ決定される、62±11%ラパマイシンカプセル充填効率および12.7±4.4nmの平均流体力学的直径を有するmTOR-HDLナノ粒子を作成した。ナノ粒子のサイズは様々であるが、典型的には約10nm~約250nmである。
【0164】
透過電子顕微鏡法によって明らかにされるように(図4)、mTOR-HDLは、HDLベースのナノ粒子16に典型的な円盤状構造を有していた。生体外近赤外蛍光(NIRF))イメージングおよびフローサイトメトリーを用いてC57Bl/6野生型マウスにおいて、1,1’-ジオクタデシル-3,3,3’,3’-テトラメチルインドトリカルボシアニンヨウ化物(DiR)標識mTOR-HDLの生体内分布および細胞特異性を評価した。mTOR-HDLは、主に肝臓、脾臓および腎臓に蓄積することが示され(図5A)、一方で血液および脾臓中で樹状細胞(DC)または好中球のいずれかよりも単球に対し高い親和性を示した(図5B、C)(それぞれ、P≦0.001、P≦0.01およびP≦0.01、P≦0.01)。
【0165】
mTOR-HDL処置を、心臓移植マウスモデルで利用した(図1B)。mTOR-HDLの生体分布、同種移植片標的化、および細胞特異性を、インビボPET-CTイメージング(図1B)および生体外技術を用いて決定した。続いて、フローサイトメトリー、酵素結合イムノソルベントアッセイおよび混合リンパ球反応を含む、免疫学的読み出しのアレイを利用して、短期間のmTOR-HDLナノ治療レジメンの効果を評価した(図1B)。
【0166】
mTOR-HDLナノ療法は自然免疫系を標的とする
組織の標的化および特異性を定量的に研究するために、mTOR-HDLナノ粒子を89Zrで放射線標識した(89Zr-mTOR-HDL)。心臓が腹部に移植されてから6日後に、マウスは89Zr-mTOR-HDLを静脈内に受けた。ナノ粒子は、マウスがインビボPET-CTイメージングを受ける前に24時間循環および分配された。顕著な89Zr-mTOR-HDLの存在が、心臓同種移植片で観察された(図1C)。イメージング後、マウスを犠牲にし、器官を、生体外オートラジオグラフィーによる89Zr-mTOR-HDL定量のために収集した。同種移植片心臓(Tx)活性(25.2±2.4x10数/単位面積)は、天然心臓(N)(11.1±1.9×10カウント/単位面積)より2.3倍高いと決定された(11.1±1.9x10数/単位面積)(図1F)。ガンマカウントは、89Zr-mTOR-HDLの完全な生体内分布を評価した。生体外オートラジオグラフィーは、89Zr-mTOR-HDLが多くの組織を標的とすることを示し(図1D)、薬物を負荷したHDLナノ粒子の典型的な分布パターンと一致して、薬物の全身的な生体分布を示唆する17
【0167】
好ましい器官分布パターンおよび心臓同種移植取り込みは、発明者を、心臓同種移植片、血液、脾臓および骨髄における細胞レベルでのmTOR-HDL標的化および特異性を評価するように導いた。mTOR-HDLナノ粒子を、蛍光色素3,3’-ジオクタデシルオキサカルボシアニン過塩素酸(DiO)で標識し、静脈内投与し、24時間循環させた。いくつかの組織タイプを利用して、好中球が抽出され、フローサイトメトリーによる分析のための骨髄細胞;Ly-6CloおよびLy-6Chi単球を含む、単球/マクロファージ(Mo/MΦ)プール、DC、およびT細胞を含んだ。
【0168】
骨髄細胞標的化が、心臓同種移植片、血液および脾臓において観察された(図1Fおよび1G)。重要なことに、本発明者らは、Mo/MΦプールおよび好中球に対する細胞特異性を観察し、心臓、血液および脾臓中のMo/MΦプールによるmTOR-HDL取り込みはDCまたは好中球のいずれかよりも有意に高かった(それぞれ:P≦0.01、P≦0.01、P≦0.05およびP≦0.01、P≦0.01、P≦0.05)。対照的に、T細胞によるDiO標識mTOR-HDL取り込みは実質的に存在せず(図1F、1G)、ナノセラピーの自然免疫細胞特異性を示した。全体として、データは、mTOR-HDLが心臓同種移植片などの炎症部位に対して高い特異性を示し、かつ単球、DCおよび好中球を含む骨髄細胞によって活発に取りこまれることを実証する。
【0169】
mTOR-HDLは、骨髄細胞区画を有意に減少させる
白血球集団をプロファイルし、より広範囲に、プラセボ、経口ラパマイシン(経口-RA)およびmTORの-HDL処置であって、治療レジメンが移植当日ならびに2日後および5日後に、3回の静脈内mTOR-HDL注射を含んだ処置、を受けたマウスの血液、脾臓および同種移植片中の、好中球、Mo/MΦおよびDCを含む、骨髄細胞コンパートメントをプロファイルした。標的化データと一致して、有意に減少した合計白血球が、プラセボ(P≦0.05およびP≦0.01)または経口-Ra-治療したレシピエントのいずれかと比較して、mTOR-HDL処置レシピエントの血液、脾臓および同種移植片中で観察された(図2Aおよび図8)。その上、これらのデータは、mTOR-HDL処置が、プラセボ(P≦0.05、P≦0.05およびP≦0.05)および経口-Ra-治療したレシピエント(P≦0.05)の両方と比較して、血液、脾臓および同種移植片中の好中球レベルを低下させたことを示す。さらに、mTOR-HDL処置は、プラセボ(P≦0.05、P≦0.01およびP≦0.05)または経口-Ra治療したレシピエント(P≦0.05)と比較して、血液循環、脾臓および心臓同種移植片中のMo/MΦ数を劇的に減少させた。最終的に、mTOR-HDL処置は、プラセボ(P≦0.05、P≦0.01およびP≦0.05)または経口-Ra治療したレシピエント(P≦0.05)と比較して、血液循環、脾臓および同種移植片中のDCを劇的に減少させた。まとめて、これらの結果は、mTOR-HDL処置が、移植された同種移植片中の骨髄細胞の蓄積を妨害することによって、アロ反応性免疫応答を制限することを実証する。
【0170】
これらの骨髄細胞の調査の後、Mo/MΦ組織分布に対するmTOR-HDLナノ療法の効果を評価した。Mo/MΦは、区域移動特性を有する2つの異なるサブセット(Ly-6ChiおよびLy-6Clo)を含む23。移植6日後に、未治療マウスおよび経口-Ra治療したマウスは、それらの血液、脾臓および心臓同種移植片中で増加した数の蓄積された骨髄細胞を有した(図2Bおよび図9A)。さらに、増加したMo/MΦ集団は、高いパーセンテージの炎症性Ly-6Chi単球を含んだ(図9Aおよび2B)。対照的に、mTOR-HDLレシピエントは、プラセボおよび経口Ra-治療した動物よりも、血液(60%vs12%および13%)、脾臓(55%vs29%および44%)および心臓同種移植片(56%vs20%および18%)において、有意に多くのLy-6Clo単球を蓄積した(図2B図9A)。従って、mTOR-HDL処置した群において、プラセボまたは経口-Ra-投与されたレシピエントのいずれかよりも、顕著に少ない循環Ly-6Chi単球が同定された(それぞれP≦0.05およびP≦0.05)。脾臓および移植器官中のMo/MΦサブセットの割合は、末梢血中のレベルを反映した(図1E)。データは、Ly-6Chi単球が移植拒絶における骨髄応答を支配する一方で、Ly-6Clo単球が寛容の間に骨髄応答を支配することを示す。これは、mTOR-HDL処置が調節性Ly-6CloMΦの蓄積を促進し、恒常性に有利に骨髄球区画のバランスを取り戻すことができることを示唆する。
【0171】
mTORパスウェイは、mTOR-HDLにより負に調節される
mTOR-HDLナノ免疫療法により標的とされる分子パスウェイを、プラセボまたはmTOR-HDL処置したレシピエントの同種移植片からフロー選別されたMΦから単離されたmRNAのGene Set Enrichment Analysis(GSEA)を用いて研究した。遺伝子アレイ結果は、mTOR(図2C)経路がmTOR-HDLによって負に調節されることを示した。
【0172】
mTOR-HDL処置は、調節性Ly-6CloMΦの発達を促進することにより移植寛容の誘導を優先する
次に、移植片浸潤Ly-6CloMo/MΦ同種移植片の抑制的機能をインビトロで評価した。Ly-6CloMΦの調節性の抑制的機能を、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)標識CD8+T細胞のインビトロ増殖を阻害する能力により評価した。本発明の結果は、mTOR-HDL処置したレシピエントマウスの同種移植片から得られた調節性Ly-6CloMΦが、インビトロでT細胞増殖を防ぐことを示す。(図3A)。本発明者らはまた、プラセボレシピエントマウスの同種移植片から得られたLy-6CloMΦとは異なり、mTOR-HDL処置したレシピエントの同種移植片から得られたLy-6CloMΦは免疫抑制性Foxp3発現Tregを増殖することを観察した(図3A)。これらのデータと一致して、本発明者らは、同種移植片CD4CD25T細胞の数の有意な増加を観察した(図3B図10)。これは、mTOR-HDL処置が、調節性Ly-6CloMΦの発達を促進することにより移植寛容の誘導を優先するかもしれないことを示唆する。
【0173】
mTOR-HDLナノ療法は、樹状細胞による強力なT細胞刺激を防ぐ
樹状細胞(DC)はmTOR-HDLナノ粒子を取り込むので(図1F~G)、mTOR-HDLの免疫細胞活性化、抗原提示およびDC介在性T細胞刺激に対する効果を調査した。まず、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を利用して腫瘍壊死因子α(TNF-α)の発現を評価した。これらのデータは、mTOR-HDL処置が、プラセボおよび経口-Raと比較して、血清TNF-αレベルを有意に減少させることを示す(図10;P≦0.05およびP≦0.01)。次に、急性拒絶25、26の間に上方制御される共刺激性分子および接着分子の発現を調べた。フローサイトメトリーは、CD40およびCD54分子の両方が、プラセボおよび経口-Ra治療されたレシピエントと比較して、mTOR-HDL処置したレシピエントからの白血球中で有意に減少されることを示す(図10)。レシピエントMHCクラスIII-A分子により提示されるドナー由来のI-Eペプチドを認識するY-Aeモノクローナル抗体(mAb)を用いて、抗原提示に対するmTOR-HDLの効果を評価した。プラセボまたは経口-Raのいずれかからのものよりも有意に少ない抗原提示Y-Ae細胞が、mTOR-HDL処置したレシピエントの大動脈リンパ節および脾臓で観察された。次に、mTOR-HDLレシピエントから得られたDCの能力を評価して、インビトロで抗原特異的T細胞を刺激した。プラセボおよびmTOR-HDLで処置したマウスの脾臓から抽出したCD11cMHC-IIDCを、インビトロで混合リンパ球反応(MLR)を刺激するための開始剤として用いた。抗原特異的なTEaCD4T細胞を、これらのT細胞がY-Ae mAbと同様にペプチドとMHCの同じI-E-I-A複合体を認識するので、レスポンダーとして単離し、以前に記載されたように細胞をカルボキシフルオロセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識しCD11cMHC-II脾臓DCと共に培養した27。CD11cMHC-II脾臓DCの刺激特性を、フローサイトメトリーによるT細胞中のCFSE希釈を測定することにより試験した。これらのデータは、mTOR-HDLレシピエントからのDCが、対照マウスから得られたDCよりも、インビトロでナイーブT細胞増殖を刺激する有意に低い能力を有することを示す。次に、移植マウスから得られたT細胞の増殖能力を試験した。これらのデータは、mTOR-HDLレシピエントからのT細胞が、プラセボ拒絶マウスから得られたT細胞と同様のインビトロ免疫応答を備えることができることを示す。全体として、これらの結果は、mTOR-HDLナノ粒子処置がDC介在性の移植片反応性T細胞免疫応答を防ぐことを説明する。
【0174】
mTOR-HDLナノ療法は、抑制性マクロファージの発達を促進する
mTOR-HDLナノ粒子がMo/MΦを標的とし(図1Fおよび1G)かつそれらの組織分布に影響を及ぼすことを決定した後で、寛容誘導中の同種移植片に蓄積するLy-6CloMo/MΦの機能特性を試験した。ドナー心臓同種移植片を移植6日後に回収し、骨髄球コンパートメントをフローサイトメトリーにより分析した。生きたCD45CD11bレシピエント移植片浸潤骨髄細胞に焦点を当てることにより、本発明者らはLy-6ChiMo/MΦ、Ly-6CloMo/MΦおよびLy-6G好中球の差次的発現変動パターンに基づいて3つの主要な集団を見出した(図1D)。フローサイトメトリー分析は、プラセボレシピエントと比較して、mTOR-HDL処置したマウスの同種移植片中でLy-6ChiMo/MΦより多くのLy-6Cloの存在を確認した(図1D)。群間でLy-6G好中球頻度に差はなかった。
【0175】
mTOR-HDL処置したレシピエントの同種移植片に蓄積するLy-6Cloマクロファージの遺伝子アレイの特徴付けは、mTORC1パスウェイがこれらのマウスにおいて負に調節されることを明らかにした。これは、mTOR-HDL処置が移植片浸潤マクロファージを標的とすることを確認する。
【0176】
器官移植の成功を防ぐ共刺激性分子の包括的な分析は、mTOR-HDL処置がCD40発現を増加させることを明らかにした。この観察と一致して、本発明者らは、mTOR-HDL処置したレシピエントにおける長期同種移植片生着延長を無効にするアゴニスト的CD40mAb治療を見出した図3F)。これは、CD40L発現T細胞がレシピエントMΦ中でCD40シグナル伝達を刺激し、最終的な移植片喪失をもたらし得ることを示唆する。有害なCD40シグナリングを抑制するために、本発明者らは、CD40-TRAF6阻害性HDL(CD40-HDLまたはTRAF6i-HDLと呼ばれる;図11A-B)からなる第2のナノ免疫療法治療を開発した。低分子阻害剤CD40-TRAF6は、TRAF6上のCD40の結合ドメインに向けられ、CD40シグナリングをブロックし、Ly6Chi炎症性マクロファージの抗炎症表現型への分極をもたらす。
【0177】
mTOR-HDLは同種移植片生着を無期限に延長する
最後に、器官拒絶を防ぎ同種移植片生着を延長するナノ免疫療法治療の能力を評価した。Balb/c(H2)ドナー心臓同種移植片を(1)プラセボ、(2)経口-Ra、(3)mTOR-HDL、(4)TRAF6i-HDL、または(4)mTOR-HDL+TRAF6i-HDLで処置した完全同種異系C57Bl/6(H2)レシピエントに移植した。移植片生着を評価するために、レシピエントは、心臓収縮が完全に止まるまで腹部触診を受けた。本データは、mTOR-HDLナノ療法が、50日間にわたる85%を超える同種移植生着率で移植片の生着を劇的に延長することを示す(図3G)。対照的に、経口ラパマイシン治療は、同じ期間に同種移植の生着を35%延長させただけであった(P≦0.01、P≦0.01)。これは、レジメンが移植後最初の1週間での3回の投与のみを含むことを特に考慮すると、顕著な結果である。
【0178】
二次エンドポイントとして、本発明者らは、組合せ治療100日後の同種移植片の組織学を評価した(図13A~B)。図13Bは、動脈炎を伴わない軽度の末梢炎症を示し内膜肥厚の徴候を示さない。マウス大動脈セグメントは、組織学的変化を示さず内膜肥厚および慢性同種移植脈管症(CAV)の徴候はなかった。さらに、本発明者らは、心臓同種移植片モデルを使用して移植後最初の5日以内にmTOR-HDLおよびTRAF6i-HDLの3回の注入を含む組合せ治療レジメンを評価した。図3Gに示すように、mTOR-HDL/TRAF6i-HDL組み合わせ療法は器官移植を相乗的に促進し、移植後100日間にわたり70%を超える生着をもたらし、mTOR-HDLおよびTRAF6i-HDL単剤療法よりも著しく優れている。
【0179】
治療のタイミングは様々であり、移植前に、移植と同時に、または移植後のいずれかで開始できる。一実施形態において、mTOR-HDL処置またはmTOR-HDL/TRAF6i-HDL組み合わせ処置は、器官移植の1~2日前に開始される。
【0180】
インビトロで抑制性のLy-6CloMo/MΦがmTOR-HDL処置したレシピエントにおける延長された移植片生着を媒介するかどうかを試験するために、本発明者らは、最近記載されたように、インビボでLy-6CloMo/MΦを枯渇させた。簡単に、Balb/c(H2)ドナー心臓同種移植片を、移植当日に完全同種異系CD169ジフテリア毒素(DT)受容体(DTR)(H2)レシピエントマウスに移植して、レシピエントLy-6Cloマクロファージを枯渇させた。移植片浸潤白血球を移植6日後にフローサイトメトリーにより調べて、インビトロ抑制性マクロファージのLy-6Cloの特異的枯渇を確認した(図3B)。それに続く移植片生着実験は、mTOR-HDL処置にもかかわらず、Ly-6CloMo/MΦ枯渇が15日目(12.3±1.8)までに移植片拒絶をもたらしたことを示した(図3D)。野生型単球の養子移入は同種移植生着率を回復させ、ナノ免疫療法が調節性MΦを介してその効果を発揮することを実証した。これらの実験は、mTOR-HDL処置が、T細胞介在性免疫応答を防ぎそれにより同種移植生着延長を促進する、調節性Ly-6Cloマクロファージのインビボ発生を刺激することを示唆する。
【0181】
mTOR-HDLの一般的な治療適用性をさらに調査するために、本明細書に記載のmTOR-HDLナノ療法を、拒絶反応が巨視的にモニタリングされた完全同種異型皮膚移植モデルに適用した(図12Aおよび12B)。同じ3回投与レジメンを用いて、mTOR-HDLナノ医薬処置は、移植片生着を劇的に増強した。平均生着時間は、mTOR-HDL処置したレシピエントにおいて有意に増加し、50日目に75%を超える生着であった;一方、プラセボ群は、100%の拒絶率(P≦0.01)(10.5±2.9日)を有した。全体として、これらの実験および結果は、mTOR-HDLナノ療法がDC介在性T細胞刺激を防ぎ、Ly-6CloMo/MΦ発生を促進し、かつ同種移植片生着を劇的に延長することを示す。
【0182】
図13A~Bは、mTOR-HD処置と比較した、経口-Raと関連する毒性を示すグラフである。レシピエントマウスは、mTOR-HDL治療レジメンを受けたか、または同じ治療的結果を達成するために投与量が増加された経口-Ra治療を受けた(n=4、灰色)または(n=4、黒)。mTOR-HDLは、血液尿素窒素(BUN、図13Aに示す)または血清クレアチニン(図13Bに示す)に対して有意な効果を有さないが、腎臓毒性パラメータは、経口-RaとmTOR-HDLとの間に統計的差異を示し、一方で注入30日後に同系およびmTOR-HDLレシピエント間の差異は観察されなかった(ANOVAP≦0.05、**P≦0.01)。
【0183】
H&E、PASおよびMasson Trichromによって染色され腎臓の病理学者によって検査された、腎臓からの組織学的切片は、腎実質の3つの区画で有意な変化を示さない(図13A)。正常に見える糸球体が存在し、糸球体硬化症の兆候はない。細管は、空胞化、刷子縁の喪失または有糸分裂を含む顕著な萎縮または上皮細胞損傷のいかなる証拠も示さない。動脈および細動脈は、それぞれ内膜線維症または細動脈ヒアリノシスの証拠を示さない。H&E、PAS、Masson Trichromで染色され肝臓病理学者によって検査された肝臓切片は、正常な腺房および小葉構造を示す。門脈管および肝実質に炎症または線維化の証拠はない。肝細胞は正常であり、胆汁うっ滞、封入体またはアポトーシスの徴候はない(図13A)。図13Bにおいて、切片は、動脈炎のない軽度の末梢炎症を示しおよび内膜肥厚の徴候はない。マウス大動脈セグメントは、内膜肥厚を伴わずに組織学的変化を示さず、慢性同種移植脈管症(CAV)の徴候はない。
【0184】
議論
移植患者は、器官拒絶を避けるために免疫抑制薬で治療される30。免疫抑制剤は、適応免疫システムを標的とし、深刻な副作用を有する31、32。現在の移植免疫学の研究は、異なる実験移植モデルを用いて新規寛容原性プロトコルを開発することを目指している。基本的な免疫学と革新的なナノ医学を組み合わせることは、免疫寛容を促進する有望な新しいアプローチである。動物モデルの使用は、この研究において重要な役割を果たす。残念ながら、いくつかの実験的寛容原プロトコルがマウスおよび霊長類において無期限の同種移植片生着を誘導し得る一方33、34、血栓塞栓性合併症が、これらの方法が臨床的治療に変換されることを妨げている35。その結果、移植拒絶反応を防ぐために、自然免疫系を標的とするなどの、免疫調節に対する代替アプローチの継続的な必要性がある11、12、36
【0185】
本研究では、データは、保存的に投与されたHDLカプセル化ラパマイシンが移植片生着を延長することを実証する。これは、最近記載されたように、カプセル化されたラパマイシン(すなわち、遊離形態ではない)のみが、免疫学的寛容を誘導するために使用され得ることを示す37。データはまた、mTOR-HDLが血液、脾臓および同種移植片中の白血球を減少させることを機構的に示す。白血球の接着および移動の減少は、以前の研究と一致して、より良好な移植片生着と関連している38~41。より具体的には、同種移植片中のより少ない骨髄性細胞浸潤が付随する有意に低いMo/MΦおよび好中球数が観察された。ミエロイド区画を標的とするこのmTOR-HDLナノ治療アプローチとは対照的に、吸収された経口ラパマイシンの95%が赤血球に結合する42。したがって、本ナノ療法送達ストラテジーは、薬物の生物学的利用能を劇的に高めるための革新的な方法を提示する。
【0186】
移植器官における細胞浸潤を減少させるその能力と関連して、インビボでのmTOR-HDL投与は、炎症促進性分子の産生を著しく減少させ、T細胞増殖を誘発するDCの能力を減少させる。これらの結果は、インビトロでラパマイシンで条件付けられたDCが炎症促進性メディエーターを減少させ同種移植片生着を延長することを示す、以前の報告と一致する43。その上、これらのデータは、mTOR-HDLナノ療法が、それらの刺激性機能を阻害することによってDCにさらに影響を及ぼすことを示し、それによって同種抗原特異的T細胞活性化が治療的に調節され得ることを示唆している。本データは、mTOR-HDL処置がCD4T細胞への同種抗原の提示を減少させることも実証する。これらの免疫調節効果は、抗原提示細胞が移植される器官に対する特異的なアロ反応性を媒介する、移植の間に極めて重要である44
【0187】
本データは、mTOR-HDL処置が、細胞傷害性T細胞応答を阻害する抑制性マクロファージの蓄積を媒介することを示す。さらに、HDL処置したレシピエント由来のLy-6Cloマクロファージは、インビトロでFoxp3Tregを増殖し、インビボでの移植片内Foxp3Treg蓄積と相関する。Ly-6Cloマクロファージを枯渇させることはmTOR-HDL処置にもかかわらず寛容誘導を防ぐため、移植器官中の調節性Ly-6Cloマクロファージの蓄積は、TOR-HDLに媒介される同種移植片生着延長にとって重要であると思われる。これらの結果は、Ly-6Cloマクロファージが細胞傷害性T細胞増殖を阻害し、Treg増殖を媒介し、かつ移植寛容を促進することを示す研究と一致する。結果は、HDLベースのナノ粒子が、インビボでマクロファージを標的とする薬物送達系を開発するための新規な治療的アプローチであることを実証する。
【0188】
まとめると、これらのデータは、HDLナノ粒子技術が自然免疫システムに免疫抑制薬を効果的に送達することを示す。mTOR-HDLは、DC活性化を防ぎ、調節性マクロファージの発生を促進し、かつ無期限の同種移植片生着を誘導する。mTOR-HDL技術は、自然免疫細胞を標的にして長期同種移植片生着を誘導する、革新的で、効果的で、かつ潜在的に橋渡し的な治療アプローチである。最適化されたGMPプロトコルの臨床試験および実施は、長期間の安全性および有効性を確認するであろう。mTOR-HDLは既存のFDA承認剤を組み合わせるため、その開発-または他のFDA承認された免疫抑制剤を放出するHDLナノ粒子システムの開発-は、即座に移行につながる可能性がある。
【0189】
材料および方法
ナノ粒子合成
本標的アプローチは、新規の合成高密度リポタンパク質ナノ粒子プラットフォームを用いて薬物ラパマイシンを送達する。mTOR-HDLナノ粒子を、改質脂質膜水和法を用いて合成した。簡潔には、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-リン酸化コリン(MHPC)(いずれもAvanti Polar Lipidsから購入した)およびラパマイシン(Selleckchem)を3:1:0.5の重量比でクロロホルム/メタノール(10:1 v/v)混合物中に溶解した。溶媒を蒸発させた後、PBS中のヒトAPOA1を添加して、リン脂質対APOA1の重量比5:1で、脂質膜を水和させ、氷浴中で20分間インキュベートした。得られた混合物を氷浴中でプローブソニケーターを用いて15分間ホモジナイズして、mTOR-HDLナノ粒子を得た。mTOR-HDLを洗浄し、10kDa分子量カットオフ(MWCO)フィルターチューブを用いて遠心濾過により濃縮した。凝集物を、遠心分離および濾過(0.22μm)を用いて除去した。経口ラパマイシン溶液(経口-Ra)はPBS中の4%エタノール、5%PEG300および5%TWEEN80からなり、一方で静脈内ラパマイシン溶液(i.v.-Ra)はPBS中の4%エタノールおよび5%TWEEN80を含んだ。動物は、移植の日ならびに移植後2日および5日にラパマイシン用量5mg/kgで、経口投与または静脈内尾部注入(mTOR-HDLまたはi.v.-Raとして)を受けた。
【0190】
CD40-HDLナノ粒子を、上記と同様の手順に従って合成した。DMPC、MHPCおよびTRAF6-阻害剤(2E)-1-フェニル-3-(2,5-ジメチルアニリノ)-2-プロペン-1-オン1を、クロロホルム/メタノール混合物(10:1v/v)中に8.7:1:0.6の重量比で混合し、次いで真空下で乾燥させて、薄い脂質フィルムを作製した。APOA1を含むPBSを、リン脂質対APOA19.5:1重量比の脂質膜に添加し、膜が水和し均一な溶液が形成されるまで3時間氷上でインキュベートした。この溶液を次いで1時間超音波処理してCD40-HDLナノ粒子を形成させた。続いて、溶液を複数の遠心分離および濾過工程によって精製した。
【0191】
マウス
雌C57BL/6J(B6WT、H-2b)、BALB/c(H-2d)マウスをTaconic Laboratoryから購入した。8週齢のC57BL/6J(Foxp3tm1Flv/J)マウスをThe Jackson Laboratoryから購入した。C57BL/6JCD169DTRマウスは、Masato Tanaka(Kawaguchi、Japan)からのものであった。クラスIIのI-A分子に結合するI-Eα鎖(Eαペプチド)の残基52~68を表すペプチドを認識するC57BL/6JCD4トランスジェニックTEaマウスは、Alexander Rudensky(New York、USA)からのものであった。動物を、8~10週齢(体重、20~25g)で登録した。すべての実験を、施設動物実験および利用委員会によって承認されたプロトコルに従って、8~12週齢の雌適合マウスで行った。
【0192】
血管化心臓移植
BALB/c心臓を、以前に記載されたように45、C57BL/6マウス中に完全に血管新生した異所移植片として移植した。心臓を、ドナーとレシピエントの大動脈の間のエンド・トゥ・サイド吻合と、ドナーの肺幹とレシピエントの下大静脈との間のエンド・トゥ・サイド吻合を確立することによって、レシピエントの腹膜腔に移植した。心臓同種移植片生着を続いて、毎日の触診によって評価した。拒絶を、心臓収縮の完全な停止として定義し、開腹術での直接視覚化によって確認した。移植片生着を、Kaplan-Meier生存分析を用いて群間で比較した。
【0193】
マイクロPET/CTイメージングおよび生体分布研究
マウス(n=6、心臓移植3例、皮膚移植3例)[重量:18.8±1.0g]に、0.2mLPBS溶液中の89Zr-mTOR-HDL(0.17±0.01mCi、~0.25mgAPOA1)をそれらの外側の尾の静脈を介して注入した。24時間で、動物をイソフルラン(Baxter Healthcare、Deerfield、IL、USA)/酸素ガス混合物(誘導については2%、維持については1%)で麻酔し、スキャンを次に、Inveon PET/CTスキャナ(Siemens Healthcare Global,Erlangen,Germany)を用いて行った。3000万回の同時発生事象を記録する全身PET静的スキャンを、15分間行った。エネルギーおよび一致タイミングウィンドウは、それぞれ350~700keVおよび6nsであった。画像データを、PET応答不均一性、デッドタイムカウント損失、陽電子分岐比および注入時間に対する物理的減衰を補正するために正規化したが、減衰、散乱または部分体積平均補正は適用されなかった。再構成画像における計数率を、89Zrを含むマウスサイズの水分等価ファントムを画像化して得られたシステム較正係数を用いて、活性濃度(組織1g当たりの投与量%[%ID]%)に変換した。画像を、ASIProVMTMソフトウェア(Concorde Microsystems,Knoxville,TN,USA)を用いて分析した。全身標準低倍率CTスキャンを、電圧80kVおよび電流500μAでのX線管設置で行った。CTスキャンを、で120秒の推定スキャン時間と1フレーム当たり145ミリ秒の露出をもたらす合計220度について120回の回転ステップを使用して得た。PET/CTスキャンの直後に、動物を犠牲にし、関心のある組織-腎臓、心臓、肝臓、脾臓、血液、骨、皮膚、および筋肉-を収集し、秤量し、Wizard22480自動ガンマカウンター(Perkin Elmer,Waltham,MA)でカウントして、放射活性含有量を決定した。値を減衰補正し、1グラム当たりの注射された用量のパーセンテージ(%ID/g)に変換した。移植された心臓内の放射能分布を決定するために、天然および移植した標本を、リン酸イメージングプレート(BASMS-2325、Fujifilm、Valhalla、NY)に対するフィルムカセット中に-20℃で4時間置いた。プレートを、Typhoon7000IPプレートリーダー(GE Healthcare,Pittsburgh,PA)を用いて25μmのピクセル解像度で読み取った。画像を、ImageJソフトウェアを使用して分析した。
【0194】
グラフト浸潤白血球の単離
マウス心臓を、1%ヘパリンを含むHBSSでその場ですすいだ。取り出した心臓を、小片に切断し、HBSS(Cellgro)中の400U/mlコラゲナーゼIV(Sigma-Aldrich)、10mM HEPES(Cellgro)および0.01%DNaseI(MP Biomedicals)を用いて37℃で40分間消化した。消化した懸濁液を、ナイロンメッシュに通し遠心分離し、細胞ペレットを、完全なHBSS中に再懸濁し、染色し、フローサイトメトリー(BDLSR-II;BD Biosciences)で分析した。
【0195】
フローサイトメトリーおよび細胞選別
骨髄細胞染色のために、マウスCD45(クローン30-F11)、CD11b(クローンM1/70)、CD11c(クローンN418)、F4/80(クローンCI:A3.1)、Ly-6CクローンHK1.4)および対応するアイソタイプ対照に特異的な蛍光色素複合mAbを、eBioscienceから購入した。Ly-6G(クローン1A8)mAbを、Biolegendから購入した。F4/80(クローンCI:A3.1)を、AbD Serotecから購入した。T細胞染色のために、CD45(クローン30-F11)、CD3(クローン2C11)、CD4(クローンGK1.5)、CD8(クローン53-6.7)、CD25(クローンPC61.5)、CD40(クローン1C10)およびCD54(クローンYN1/1.7.4)に対する抗体を、eBioscienceから購入した。絶対細胞計数を、countbrightビーズ(Invitrogen)を用いて行った。抗原提示を検出するために、Y-Ae mAbを、eBioscienceから購入した。フローサイトメトリー分析を、LSRII(BD Biosciences)で行い、FlowJoソフトウェア(Tree Star、Inc.)で分析した。結果を、染色された細胞またはバックグラウンドを超える細胞数(1ミリリットルあたりの細胞)のパーセンテージとして表す。mAbを、これらの研究の過程で一定の間隔で滴定して飽和濃度の使用を確実にした。移植片浸潤骨髄細胞を精製するために、ドナー心臓単細胞懸濁液を、フローサイトメトリー共有資源施設(Mount SinaiのIcahn School of Medicine)にてInFluxセルソーター(BD)で選別して>96%の純度を達成した。
【0196】
混合リンパ球反応
抗原特異的TEa(H-2)マウスの脾臓を、単細胞懸濁液へと穏やかに解離し、赤血球を、低血圧ACK溶解緩衝液を用いて除去した。脾細胞を5μM濃度でCFSE細胞増殖マーカー(Invitrogenの分子プローブ)で標識し、続いて氷上にて30分間抗CD4mAbで染色した。レスポンダーCFSECD4T細胞を、>98%の純度でFACS AriaIIソーター(BD Biosciences)を用いて選別した。mTOR-HDL-およびプラセボ処置したレシピエント由来の脾細胞を、EasySepマウスCD11c陽性選択キット(StemCell)を用いてCD11c細胞について濃縮した。濃縮したCD11c脾細胞を、氷上にて30分間抗マウスCD11c mAbで染色した。CD11c細胞を、FACS AriaIIソーター(BD Biosciences)を用いて選別し、次いでレスポンダー細胞CFSECD4T細胞を刺激するために使用した。細胞を、5%COインキュベーター中で37℃にて4日間培養し、CFSECD4T細胞の増殖を、CD4T細胞でのCFSE希釈のフローサイトメトリー分析によって測定した。
【0197】
インビトロ抑制アッセイ
C57BL/6(H-2)マウスの脾臓を、単細胞懸濁液へと穏やかに解離し、赤血球を、低血圧ACK溶解緩衝液を用いて除去した。脾細胞を5μM濃度でCFSE(Invitrogenの分子プローブ)で標識し、続いて氷上にて30分間抗CD8mAbで染色した。レスポンダーCFSECD8T細胞を、純度>98%のFACS AriaII(BD Biosciences)を用いて選別した。CFSECD8T細胞を、刺激剤として抗CD3/CD28マイクロビーズと共に使用した。刺激されたCFSECD8T細胞を、グラフト浸潤Ly-6Cloマクロファージ、mTOR-HDLまたはプラセボと共に、5%COインキュベーター中で37℃にて72時間培養した。T細胞増殖を、CD8T細胞でのCFSE希釈のフローサイトメトリー分析によって測定した。
【0198】
Treg増殖アッセイ
C57BL/6-Foxp3tm1Flv/J(H-2)マウスの脾臓を、単細胞懸濁液へと穏やかに解離し、赤血球を、低血圧ACK溶解緩衝液を用いて除去した。脾細胞を、氷上にて抗CD4mAbで30分間染色した。レスポンダーCD4を、>98%の純度でFACS AriaII(BD Biosciences)を使用して選別した。CD4T細胞を、刺激剤として抗CD3/CD28マイクロビーズと一緒に使用した。刺激されたCD4T細胞を、5%COインキュベーター中で37℃にて72時間、移植片浸潤Ly-6Cloマクロファージ、mTOR-HDLまたはプラセボと共に培養した。Tregの増殖を、CD4T細胞でのFoxp3-RFPのフローサイトメトリー分析によって測定した。
【0199】
マイクロアレイ
移植片浸潤レシピエントLy-6Cloマクロファージを、移植後6日目にmTOR-HDL処置したおよびプラセボ拒絶レシピエントから選別した。細胞をFACS AriaIIソーター(BD Biosciences)で2回選別して>98%の純度を達成した。選別された細胞のマイクロアレイ分析を、合計6個のAffymetrix Mouse Exon Gene Chip2.0アレイを目的のサンプルを用いて3回繰り返して行い、実施た。Affymetrix Expression ConsoleからのRawCELファイルデータを、バックグラウンド修正し、正規化し、RMAを使用して要約した。サマリー発現スコアを、製造業者によって供給された注釈ファイルを使用して、転写物メタプローブセットレベルで計算した。遺伝子発現を、遺伝子フィルターパッケージを用いるIQR(0.25)フィルターに基づいてフィルターにかけた。log2正規化およびフィルタリングされたデータ(調整されたP<0.05)を、さらなる解析に使用した。遺伝子シグネチャーの比較を、mTOR-HDL由来の移植片内Ly6Cloマクロファージとプラセボ処置したレシピエントとの間で行った。GSEAを、Gene patternバージョン3.9.6からのGSEAバージョン17を用いて実施した。分析に用いたパラメータは以下の通りであった。Gene sets c2.cp.biocarta.v5.1.symbols.gmt;c2.cp.kegg.v5.1.symbols.gmt;c2.cp.reactome.v5.1.symbols.gmt;c6.all.v5.1.symbols.gmt(Oncogenic Signatures),c7.all.v5.1.symbols.gmt(Immunologic signatures);およびh.all.v5.1.symbols.gmt(Hallmarks)を用いてGSEAを実行し、1000個の置換を用いてp値を計算し、置換型を遺伝子セットに設定した。各遺伝子セットを別々に実行した。基本フィールドと詳細フィールドを、すべてデフォルトに設定した。各遺伝子セット結果から有意な経路を選択するために、0.25のfdr q-値をカットオフとして設定した。コア濃縮に寄与した遺伝子のみを考慮した。
【0200】
インビボマクロファージ枯渇
CD169発現Ly-6Cloマクロファージを枯渇させるために、ヘテロ接合体CD169-DTRレシピエントに、移植の24、48および72時間後に10ng/g体重のDT(Sigma-Aldrich)を腹腔内注射した46
【0201】
統計的解析
結果を、平均±SEMとして表す。2つの群間の統計的比較を、Mann Whitney検定を用いて評価した。Kaplan-Meier生存グラフを実施し、群の対数順位比較によりP値を算出した。P≦0.05の値を統計的に有意とみなした。IBM SPSS統計22を統計分析に利用した。
【0202】
近赤外蛍光イメージング
C57/B6野生型マウスは、DiR色素またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のいずれかで標識された5mg/kgのmTOR-HDLの単回静脈内注射を受けた。24時間後に、マウスを屠殺し、PBSで灌流した。肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓および筋肉組織を、NIRFイメージング用に収集した。蛍光画像を、745nm励起フィルターおよび820nm発光フィルターを用いて、2秒の曝露時間でIVIS 200システム(Xenogen)で取得した。各組織内の平均放射効率および対照に対する比の両方を、定量化した。
【0203】
放射性標識mTOR-HDLナノ粒子
89Zr-mTOR-HDLを、以前に記載された手順[15]に従って調製した。簡潔には、初期製剤中で1モル%のリン脂質キレート剤1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-1,8-ジアザフルレン-9-オン(DSPE-DFO)[44]を1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)の代償に添加することにより、即座に標識されるmTOR-HDLを得た。89Zrでの放射性標識を、PBS(pH=7.1)中で37℃にて1時間DFO含有ナノ粒子を89Zr-シュウ酸塩と反応させることによりが達成した。89Zr-mTOR-HDLを、10kDaの分子量カットオフチューブを用いる遠心濾過によって単離した。放射化学的収率は75±2%(n=2)であった。
【0204】
89Zr-mTOR-HDLの生体分布
PET/CTスキャンの直後に、マウスを屠殺し、興味のある組織(血液、心臓、腎臓、肺、肝臓、脾臓、骨、皮膚、筋肉および移植片)を採取し、ブロットし、秤量してから、Wizard2 2480自動ガンマカウンター(Perkin Elmer,Waltham,MA,USA)で放射能を計数した。放射能含量を次いで、放射能濃度に変換し、組織1グラム当たりの注射された用量の百分率(%ID/g)として表した。
【0205】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
血液を、移植後6日目に採集し、血清を、室温でのインキュベーションおよび短い遠心分離後に1.1mlのZ-Gelマイクロチューブ(Sarstedt)を用いて精製した。血清中のTNF-α分泌を、製造者のプロトコルに従いELISA(eBiosciences)によって評価した(各群でn=4)。アログラフトサイトカイン産生を、製造者のガイドライン(R&Dsystems)に従いIL-6およびTNFαの市販のELISAキットを用いて上清中で測定した。
【0206】
超音波イメージング
心臓同種移植移植速度(1分当たりの拍動数、BPM)を、その最大寸法にわたるMモードカーソルラインおよび左心室壁のトレースで、移植された心臓の短軸横断面Bモード画像を用いて、モニタリングした。
【0207】
皮膚移植
全層幹皮膚同種移植片を、先に記載したように配置した[42]。皮膚をBALB/Cから回収し、0.5cm片に切断し、C57BL/6レシピエントに置いた。皮膚同種移植片を、レシピエントの胸部を覆って準備したやや大きな移植床に置き、ワセリン、ガーゼおよび包帯を用いて固定した。移植片を、拒絶反応の証拠のために視覚的に毎日評価した。皮膚同種移植拒絶反応を、デジタル顕微鏡写真撮影によってモニターし、それが>90%の壊死であった場合、完全に拒絶されたとみなした。移植片生存率を、Kaplan-Meier生存分析を用いて群間で比較した。
【0208】
参照
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【0209】
実施例2
標的化されたCD40-TRAF6阻害は、アテローム性動脈硬化症におけるマクロファージの蓄積を解消する
アテローム性動脈硬化症において、マクロファージの蓄積は、プラークの不安定化および破裂に直接関連し、急性アテローム血栓症事象を引き起こす。循環単球はプラークに入りマクロファージへと分化し、ここでそれらはCD40+CD40リガンドシグナル伝達を介してCD4+Tリンパ球により活性化される。ここで、本発明者らは、単球/マクロファージにおけるこのシグナリングパスウェイの中断が、アテローム性動脈硬化症のApoE-/-マウスモデルにおいて迅速な抗炎症効果を発揮することを示す。この目的のために、本発明者らは、CD40と腫瘍壊死因子受容体関連因子6との相互作用の小分子阻害剤を担持する注入可能な再構成高密度リポタンパク質ナノ粒子を開発した。本発明者らは、それらの移動能力を損なう、本ナノ免疫療法の単球/マクロファージ特異的標的化を示す。この療法によるプラーク炎症の急速な減少は、非ヒト霊長類における好都合な毒性プロファイルによって示されるように、臨床的移行の可能性が高い、アテローム性動脈硬化症の治療における新規な戦略である。
【0210】
マクロファージへと分化する循環単球の補充は、アテローム性動脈硬化性プラーク炎症を悪化させる重要な寄与過程である[1]。プラーク中のこの動的マクロファージの蓄積は、アテローム血栓症の発生と直接関連する[1]。
【0211】
CD40-CD40リガンド(CD40-CD40L)シグナリングを介するCD4+Tリンパ球によるプラークマクロファージの活性化がプラーク炎症を惹起する際に中心的な役割を果たすことが、1990年代に早くも認められた[2]。アポリポタンパク質eノックアウト(Apoe-/-)マウスにおけるCD40Lの遺伝的破壊は、アテローム硬化性病変の発達を劇的に減少させ、プラークのTリンパ球およびマクロファージの含量を減少させる[3]。抗マウスCD40L抗体による低密度リポタンパク質レセプターノックアウト(LDLr-/-)マウスおよびApoe-/-の処置は、同様のアテローム保護効果を有した[4~6]。さらなる研究は、腫瘍壊死因子レセプター関連因子6(TRAF6)がマクロファージ内部のCD40シグナル伝達カスケードを推進する上で特に重要であることを明らかにした[7]。TRAFは、CD40の細胞質ドメインを結合でき、受容体複合体をいくつかの異なるシグナル伝達パスウェイに結合させることができるアダプタータンパク質である[8]。実際に、骨髄細胞におけるCD40-TRAF6相互作用の欠損は、単球のプラークへのリクルートメントを減少させ、Apoe-/-マウスにおけるアテローム性動脈硬化プラーク形成を消失させることが示されている[7]。
【0212】
CD40-TRAF6相互作用は有望な治療的標的を提供するが、主な制限はその阻害と関連する。骨髄細胞におけるCD40-TRAF6相互作用の役割に加えて、それはBリンパ球の成熟および長期生存形質細胞の生成を部分的に制御する[9]。したがって、CD40-TRAF6相互作用の長期間の阻害は、おそらく免疫不全を引き起こし、それをアテローム性動脈硬化症に対する実現不可能な治療的アプローチにするであろう。
【0213】
この問題に対処するために、我々は、単球/マクロファージにおいてCD40-TRAF6相互作用を特異的にブロックする能力を有する標的化免疫療法を開発した。この目的のために、本発明者らは、再構成高密度リポタンパク質(TRAF6i-HDL)中に、最近開発されたCD40-TRAF6相互作用の小分子阻害剤を組み込んだ[10、11]。我々は、TRAF6i-HDLが単球/マクロファージを標的とし一方でリンパ球はナノ粒子を取り込まないことを、アテローム性動脈硬化症のApoe-/-マウスモデルにおいて示す。TRAF6i-HDL免疫療法の1週間後に、プラーク炎症の急速な減少および単球のリクルートメントの減少が観察された。これらの発見と一致して、トランスクリプトーム分析全体は、細胞移動が、影響される細胞過程の中にあることを示した。最後に、その移行能力を評価するために、非ヒト霊長類(NHP)におけるTRAF6i-HDLの薬物動態、生体内分布および安全性を評価した。
【0214】
結果
TRAF6i-HDLの特性。
この研究の目的は、標的化されたナノ免疫療法(TRAF6i-HDL)を介して単球/マクロファージにおけるCD40-TRAF6相互作用を特異的に阻害することによってプラークの炎症を減少させることであった。TRAF6i-HDLナノ粒子は、ヒトアポリポタンパク質AI(apoA-I)、およびリン脂質1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-ホスホコリン(MHPC)ならびに1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)から構築され、その中にCD40-TRAF6相互作用の親油性小分子阻害剤(SMI6877002)がカプセル化された[8、11]。apoA-Iはそれ自身で調節効果を有することができるので、ナノ免疫療法は、低いapoA-I対薬物比で設計された。得られたTRAF6i-HDLナノ粒子(図14Aに模式的に示される)は、動的光散乱および透過型電子顕微鏡(TEM)によって決定される、直径が22.6±12nm(PDI=0.3)であった。蛍光技術、陽電子放射断層撮影(PET)、ガンマ計数およびオートラジオグラフィーによる検出を可能にするために、蛍光色素(DiOまたはDiR)またはジルコニウム-89(89Zr)放射性標識リン脂質を組み込んだ、TRAF6i-HDL変異体を合成した。
【0215】
概略
研究設計の概略図が図14Bに示される。研究の最初の部分は、アテローム性動脈硬化症マウス(高コレステロール食のApoe-/-マウス)で行われた。これらのマウスで、最初にTRAF6i-HDLの毒性、薬物動態、生体内分布、およびアテローム性動脈硬化プラーク単球/マクロファージ標的効率を研究した。続いて、4回の静脈内注入を含む1週間のTRAF6i-HDLレジメンのプラーク回帰効果を評価した。次に、全トランスクリプトーム解析を用いて、TRAF6i-HDLがプラーク単球/マクロファージに作用するメカニズムを調べた。この研究の第2の部分は、TRAF6i-HDLナノ免疫療法の移行可能性に焦点を当てた。この目的のために我々は、TRAF6i-HDLの毒性および薬物動態を調べ、一方で非ヒト霊長類における体内分布と血管壁の標的化を長期にわたり研究するために、磁気共鳴(PET/MRI)を用いてインビボ陽電子放出断層撮影法を実施した。
【0216】
Apoe-/-マウスにおける毒性、薬物動態、および生体分布研究。
1週間のTRAF6i-HDL処置は、赤血球、血小板または白血球レベルに影響を与えなかった(図20)。網状赤血球およびリンパ球の数は、プラセボと比較して幾分増加した。骨髄血液および脾臓におけるT細胞およびB細胞の数は、TRAF6i-HDL療法の影響を受けなかった。アルカリホスファターゼはいくらか増加したが、腎臓および肝臓の機能への毒性作用は観察されなかった(図21)。脂質、グルコース、タンパク質および電解質は影響を受けなかった。
【0217】
その薬物動態および生体内分布を調べるために、Apoe-/-マウスは89Zr-放射性標識TRAF6i-HDLの単回注入を受けた。89Zr-TRAF6i-HDLの血液放射能クリアランスを24時間にわたって測定し、データを2相減衰非線形回帰を用いて適合させた。加重血液半減期(t1/2)は最終的に、13.7分のt1/2-時間および195分のt1/2-時間に基づいて124.4分と計算された(図14C)。生体内分布を、インビボPET/CTイメージングによって評価し(図14C)生体外ガンマ計数によって検証し、後者を、1g組織あたりの注射された用量のパーセンテージとして表した(%ID/g;図14D)。予想通り、PET/CTイメージングは、TRAF6i-HDLが、HDLを吸収して代謝することが知られている器官である、肝臓、脾臓および腎臓に主に蓄積したことを示した。ガンマカウンティングデータは、これらの結果を確認し、肝臓で12.8%ID/g、脾臓で8.9%ID/g、腎臓で7.9%ID/gのナノ粒子取り込みを示した。比較すると、同様の大きさの器官である心臓は、1.1%ID/gしか含まなかった(図14D)。注入24時間後の生体外の近赤外蛍光(NIRF)イメージングは、PET/CTおよびガンマ計数の観察結果を裏付け、TRAF6i-HDLが肝臓、脾臓および腎臓に主に蓄積することを示した。
【0218】
フローサイトメトリー分析は、血液、骨髄、および脾臓中のLy6Chi単球およびマクロファージがDiO標識TRAF6i-HDLを取り込んだことを明らかにした。好中球、Ly6Clo単球および樹状細胞もDiO-TRAF6i-HDLを取り込み、一方で系統的陽性CD11b陰性細胞(すべての非骨髄性細胞)は取り込まず、骨髄性細胞の特異性を示した(図14G)。
【0219】
アテローム硬化性病変におけるTRAF6i-HDLの蓄積。
全大動脈の生体外ガンマカウンティングは、89Zr-TRAF6i-HDLの1.3%ID/gが注入後24時間に蓄積したことを示した(図14D)。大動脈全体のTRAF6i-HDLナノ粒子分布を特異的に見ると、取り込みは大動脈洞領域で最も高く、それはこのマウスモデルにおけるプラーク発生の優勢部位である。総面積の6.4%に過ぎないが、大動脈洞領域は信号の約29%を生成し、5.9%ID/gに相当する(図1d)。NIRFイメージングは、大動脈洞領域におけるDiR標識TRAF6i-HDLの同様の優先的蓄積を示した(図14E)。大動脈プラークにおけるDiO標識TRAF6i-HDL摂取の細胞特異性を、フローサイトメトリーによって評価した。マクロファージの86%およびLy6Chi単球の81%がDiO-TRAF6i-HDLを取り込み、一方で系統陽性細胞(非骨髄性細胞)は実質的に全く取り込まなかったことがわかった(図14F)。さらに、大動脈斑で大部分の好中球(64%)および樹状細胞(61%)が、標識されたナノ粒子を含むことが分かった(図14G)。これらの結果は、血液、骨髄および脾臓における我々の知見を反映し、骨髄系細胞、特にLy6Chi単球サブセットおよびマクロファージの細胞が、TRAF6i-HDLナノ粒子によって優先的に標的化されることを示す。
【0220】
プラーク炎症に対するTRAF6i-HDLのインビボ効果。
TRAF6i-HDLの治療的有効性を評価するために、高コレステロール飼料を12週間投与した20週齢のApoe-/-マウスを使用して、アテローム性動脈硬化症の病変を発症させた。すべてのマウスは高コレステロール食を維持する一方で、7日間にわたってプラセボ、ペイロードのないHDLナノ粒子のコントロール、またはTRAF6i-HDLの静脈内注入を4回受けた。注入1回当たりに投与されたCD40-TRAF6阻害剤の用量は5mg/kgであった。アポA-I自体の支配的な治療的効果を制限するために、9mg/kgの低アポA-I用量を使用した。全てのマウスを、最終注入の24時間後に犠牲にした。
【0221】
最初の実験では、プラセボ、HDLまたはTRAF6i-HDLで処置したマウス(群あたりn=10)の大動脈洞領域におけるプラークの定量的組織学的分析を行った。横断切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびにシリウスレッド(コラーゲン)で染色し、Mac3(マクロファージ)およびKi67(増殖細胞)について免疫染色した。プラークサイズまたはコラーゲン含有量において有意差は、群全体で観察されなかった(図15A)。しかし、Mac3陽性領域のパーセンテージは、プラセボ群およびHDL群と比較して、それぞれ36%(p=0.001)および37%(p<0.001)著しく減少した(図15B)。その結果として、プラセボ群とHDL群との比が31%(p<0.001)および36%(p=0.004)減少した際、プラーク中のMac3対コラーゲン比もTRAF6i-HDL群においてより安定なプラーク表現型へ優位に影響された(図15B)。増殖マクロファージの数は全ての群で同様であり(図15A)、プラークマクロファージで観察された減少は、マクロファージの局所増殖の減少に起因しないことを示した。以前の研究は、単球リクルートメントに加えて、局所マクロファージの増殖がプラークの炎症を促進する中枢的役割を果たすことを示した[12]。
【0222】
続いて、我々は、大動脈洞領域におけるプロテアーゼ活性を視覚化するために、コンピュータ断層撮影(FMT/CT)イメージングと融合した蛍光分子トモグラフィを行った。プラセボ(n=8)およびTRAF6i-HDL(n=7)処置Apoe-/-マウスはすべて、画像化の24時間前に活性化可能なパン-カテプシンプロテアーゼセンサーの1回の注射を受けた。プロテアーゼセンサーは、活性化されたマクロファージによって取り込まれ、続いてエンドリソソーム内のプロテアーゼセンサーが切断され、酵素活性の関数として蛍光を生じる。TRAF6i-HDL療法は、プロテアーゼ活性を60%低下させた(p=0.002、図16A)。次に、全大動脈のフローサイトメトリーによる大動脈マクロファージ含有量の定量に焦点を当てた。再度、高コレステロール食で20週齢のApoe-/-をプラセボ(n=27)、HDL(n=27)またはTRAF6i-HDL(n=27)のいずれかで処置した。大動脈マクロファージの含量は、TRAF6i-HDL処置群において、プラセボ群およびHDL群と比較して、66%および67%(両方の比較でp<0.001)、著しく減少した(図16B)。これらの結果は、組織学的分析およびFMT-CTによる観察結果を裏付けている。さらに、TRAF6i-HDL処置した群では、大動脈のTリンパ球含量は、プラセボおよびHDLと比較してそれぞれ65%および49%減少した。全体として、これらのデータは、療法のわずか1週間後のアテローム硬化性プラークにおけるTRAF6i-HDLの強力な抗炎症効果を示す。
【0223】
増殖するKi67+マクロファージの数が療法によって影響されないことをすでに観察していたので、プラークマクロファージの含有量および炎症の減少は、むしろ単球のリクルートメントの減少によって引き起こされる可能性があると仮説を立てた[13、14]。これをさらに調べるために、我々は最初に、大食細胞Ly6Chi単球を、マクロファージ含有量を測定したものと同じフローサイトメトリー実験で定量した。我々は、マクロファージの減少が、プラセボ群およびHDL群と比較してそれぞれ、大動脈におけるLy6Chi単球の49%および52%(両方の比較についてp<0.001)の減少と並行することを観察した(図16B)。興味深いことに、大動脈のLy6Chi単球の含有量の減少は、Ly6Chi単球の全身的な減少によって説明できなかった(図16C)。
【0224】
次に、我々は、チミジン類似体5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU)を、マウスを犠牲にする2時間前に腹腔内に注射する実験を行った。BrdUは新たに合成されたDNAに取り込まれるため、増殖のマーカーとして使用できる。図16Dは、BrdUを取り込んだプラークマクロファージの割合がTRAF6i-HDL療法によって減少しなかったことを示す。この結果は、Ki67発現に関する組織学的観察と一致する。高い増殖速度を特徴とするマウスマクロファージのRAW264.7細胞系を用いたインビトロ実験では[15]、CD40-TRAF6阻害化合物またはTRAF6i-HDLとのインキュベーションは、増殖速度に影響しなかった(図16E)。
【0225】
まとめると、これらのデータは、プラークマクロファージ含量およびプロテアーゼ活性が、TRAF6i-HDL療法によって減少したことを示す。TRAF6i-HDLがプラーク炎症を減少させる作用機序は、単球リクルートメントの軽減により媒介される可能性が高く、一方で局所マクロファージの増殖は影響されない。
【0226】
プラーク単球/マクロファージの全トランスクリプトーム比較解析。
プラーク単球/マクロファージの遺伝子発現に対するTRAF6i-HDLの影響についての洞察を得るために、我々はプラセボまたはTRAF6i-HDLで処置したマウスのレーザー捕獲顕微解剖によって、大動脈洞プラークからCD68陽性細胞を単離した。これらの細胞の全RNAを配列決定のために単離した。
【0227】
本発明者らは、プラセボとTRAF6i-HDL処置したマウスとの間で差次的に発現される遺伝子(DE)を同定した。誤検出率(FDR)<0.2を用いて複数の試験の修正を行った(図17A)。計416のDE遺伝子が同定され、そのうち209の遺伝子が下方制御され、207が上方制御された(図17B)。遺伝子オントロジー(GO)機能を用いてDE遺伝子に注釈をつけ、DE遺伝子で有意に富化された細胞成分を見出した(図17C)。DE遺伝子が有意に濃縮された15の濃縮されたGOタームにおいて、「接着斑」が最も興味深い。「細胞-基質接着接合」、「細胞-基質接合」、「接着結合」、および「固定結合」などの他の濃縮されたGOタームは、「接着斑」に密接に関連し、これらのGOタームの遺伝子は高度に重なっていた(図22)。接着斑は、タンパク質複合体が細胞外マトリックスに結合する動的過程であり、単球/マクロファージの移動に中心的役割を果たす[16]。その後の分析で、同じ416DE遺伝子を、「京都遺伝子ゲノム百科事典(KEGG)」パスウェイツールでマッピングし、これにより2つの有意に改変されたパスウェイ、すなわち「接着斑」および「エンドサイトーシス」を同定した(図17D図23)。
【0228】
最も重要なDE遺伝子は、すべてFDR<0.05を有し(図17D図24)、Adcy3、Lgals3bp、PltpおよびStab1(上方制御)およびImpad1、Sept2、Slc4a7およびSpcs2(下方制御)であった。これらの遺伝子のうち、マクロファージ由来のPLTPは抗アテローム性動脈硬化作用を示すことが知られており[17]、Stab1(Stabilin-1をコードする)はリンパ球ホーミングおよび細胞接着において機能を有し、アテローム保護性マクロファージ表現型と関連している[18、19]。Sept2(Septin2をコードする)はマクロファージで豊富に発現することが知られており、ファゴソーム形成に必要である[20]。まとめると、トランスクリプトームデータ分析は、様々な影響されるプロセスの中で、接着斑がTRAF6i-HDL療法によって有意に影響されることを示している。細胞接着に関与するプロセスである接着斑が重要な影響を受けるという事実は、TRAF6i-HDL処置したマウスにおける低下したLy6Chi単球のリクルートメントの前述の観察と一致する。我々は、マクロファージの増殖、アポトーシスまたは移動性退出に関連する遺伝子発現に対する影響を観察しなかった(図25)。
【0229】
非ヒト霊長類におけるTRAF6i-HDLの毒性、薬物動態、および生体内分布の研究。
TRAF6i-HDL療法の移行可能性を評価するために、TRAF6i-HDL処置した非ヒト霊長類(NHP)における包括的な血液検査、組織学的分析、および高度薬物動態学ならびに生体分布研究を行った。6匹のNHPを、完全な血液学的分析および死後の組織学的分析に使用し、別の6匹を、生体分布イメージング(PET/MRI)および血液化学分析に使用した。NHPにプラセボまたは単回投与のTRAF6i-HDL(1.25mg/kg)のいずれかを注入し、72時間後に犠牲にするか、または複数の時点で画像化し次いで犠牲にした。
【0230】
注射後72時間以内の7時点からの完全な血球カウントデータは、白血球、単球、好中球、リンパ球、赤血球、血小板または他の指標のいずれにおいてもプラセボとTRAF6i-HDL処置した動物との間に差異がないことを示した(図18A)。さらに、血液化学分析は、TRAF6i-HDL処置した群において、プラセボ群と比較して、肝臓、腎臓、膵臓または筋細胞毒性の兆候を示さなかった(図18B)。さらに、脂質、グルコース、およびタンパク質(アルブミンおよびグロブリン)レベルは両群で同等であった(図18B)。電解質にも影響はなかった。肝臓、腎臓および脾臓からの標本を切片化し、組織学のために染色し(H&E)、病理学者によって評価した。組織損傷の兆候も組織構造での障害も見られなかった(図18C)。
【0231】
生体内分布を評価するために、6匹のNHPを89Zr標識TRAF6i-HDLの静脈内投与後に全身PET/MRイメージングに供した。動物は、投与後1時間の経過に亘って動的に画像化され、その後の静的スキャンは1、24、48および72時間に実行された。動的PETイメージングは、肝臓、脾臓および腎臓における急速な放射能蓄積を示し、続いて骨髄における有意な取り込みを示した(図19A)。注入1時間後に、PET画像は、腎臓からの強いシグナルに支配され、続いて1時間の時点で肝臓および脾臓に支配された(図19A)。24、48および72時間で、放射能は主に肝臓および脾臓に蓄積した(図19B)。72時間の時点で動物を犠牲にした後、組織ガンマカウンティングは、注射された用量(ID/g%)の最大量が肝臓および脾臓に、続いて腎臓に遡ることができることを示し、これはPET/MRIイメージングの知見を裏付ける(図19C)。異なる時点で血液を採取し、データを2相減衰非線形回帰を用いて当てはめた。t1/2速(fast)は14.2分であり、t1/2遅行(slow)は513分であり、272分の加重血液半減期(t1/2)をもたらした(図19D)。
【0232】
議論
この研究で、単球/マクロファージにおけるCD40-TRAF6相互作用を標的とするHDLベースのナノ免疫療法の開発について記載する。我々のデータは、TRAF6i-HDLがアテローム硬化性病変に蓄積し、単球/マクロファージに強い親和性を有することを示す。一週間の療法は、プラークマクロファージの含有量を急速に減少させ、これは部分的には単球リクルートメントの阻害に起因する可能性がある。TRAF6i-HDLが非ヒト霊長類において安全であると証明されたという事実は、この療法の移行的可能性を示している。
【0233】
CD40-CD40Lシグナリング軸は、アテローム性動脈硬化症における免疫応答を誘発するために不可欠な役割を果たすことが長い間認識されている[2~5]。その同定は高い期待をもたらしたが、この共刺激受容体-リガンド対の治療的標的化は厄介であることが判明した。抗CD40L抗体は、マウスのアテローム性動脈硬化症の発症を減少させるのに有効であった[3~5]が、血小板上に発現したCD40による血栓塞栓合併症はヒトへのその適用を妨げた[21、22]。さらに、CD40はBリンパ球上で発現され、長期間のブロッキングは、それらの成熟を損ない免疫不全を引き起こすであろう[9]。本研究では、特に単球/マクロファージにおいてCD40の細胞質ドメインとのTRAF6の相互作用を標的とすることによって、これらの問題に取り組んだ。これは、HDLを、CD40-TRAF6相互作用の小分子阻害剤を負荷したナノ粒子担体として使用することによって達成された。これらのデータは、本発明者らのHDLベースのナノ粒子が、単球およびマクロファージの80%以上にその負荷物を曝露した一方で、リンパ球はいずれのナノ粒子も取り込まなかったことを示す。
【0234】
CD40-TRAF6阻害剤の送達を単球/マクロファージ集団に制限することに加えて、わずか1週間の短い療法の期間を使用することによって、全身免疫抑制効果を最小化することも目的とした。CD40-CD40Lシグナリング軸を標的にしたこれまでの治療的研究は、延長された治療時間を用いた[3~5]。1週間以内にプラークLy6Chi単球およびマクロファージ含量が49%および66%減少することを発見したという事実は、TRAF6i-HDL療法の高い効力を示す。注目すべきことに、本発明者らは、TRAF6i-HDLの治療的効果に対するapoA-Iの寄与が軽微であることを証明した。我々は、apoA-I 9mg/kgの4回の注入を使用したが、これは以前に発表された研究と比較して比較的低く[24]、空のHDLが、プラセボと比較してプラーク単球/マクロファージ含量に影響を及ぼさないことを見出した。
【0235】
このような短い時間スケールでTRAF6i-HDLがプラークの炎症を減少させるメカニズムは、減少された単球のリクルートメントによって部分的に説明できる。一般に、プラークマクロファージ含有量は、単球の補充のバランスならびにマクロファージの増殖、アポトーシスおよび移動性退出によって決定される。最初の2つのプロセスは、最も重要な決定要因と考えられる[25~28]。我々のデータは、マクロファージの増殖、アポトーシスまたは移動性退出に及ぼす影響を明らかにしなかったが、プラークLy6Chi単球含有量の減少を観察し、それは単球リクルートメントの減少を示唆した。さらに、本発明者らは、プラーク中の単球数の減少を説明し得る血液単球の減少を見出さなかった。以前の研究は、単球の高い動力学を示し[13、14、26~28]、減少されたリクルートは、4週間以内にプラークマクロファージ含有量の70%を超える減少を引き起こすことを示した[26]。逆に、心筋梗塞によって誘発された単球リクルートメントの突然の増加は、1~3週間以内にプラークマクロファージ含有量の顕著な増加を引き起こした[27]。これらの所見は、1週間以内にプラークマクロファージ含量の66%の減少を引き起こす低下した単球リクルートメントの結果と一致する。
【0236】
我々のトランスクリプトーム解析データは、単球動員が影響を受けることを支持する。この分析は、ケモカイン受容体またはリガンドの明確な役割を示さなかった。しかし、GOファンクション分析は、細胞移動における中心的プロセスである「接着斑」が、DE遺伝子で有意に富化されたことを示した。KEGGパスウェイ解析もまた、「接着斑」についての濃縮を示した。特に興味深い「接着斑」パスウェイにおける遺伝子はRhoa、Rap1bおよびRap1bであり、これらはインテグリンを活性化することによって単球移動の調節において中心的役割を果たす[16]。それらはすべて顕著に下方制御された。これは、欠損CD40-TRAF6シグナリングを有するノックアウトマウスモデルにおける以前の観察と一致し、そこでは生体内顕微鏡検査によって評価された際に頸動脈への循環単球の管腔内接着がインビボで損なわれた[7]。また、マクロファージの移動能力が著しく影響された[7]。
【0237】
TRAF6i-HDLの効果は、影響を受けることが示された他の様々な遺伝子発現によって証明されるように、「接着斑」に限定されない。合わせて、本データは、TRAF6i-HDLが、単球/マクロファージの移動の障害を含む、プラーク単球/マクロファージにおける様々な生物学的プロセスに影響を及ぼすことを示す。非ヒト霊長類(Nhp)における薬物動態、生体内分布および安全性に関する広範な実験は、この治療の移行能力を示す。再構成されたHDLの使用は、ヒトでは40mg/KgのapoA-I投与量で安全であることが以前に判明している[24]。我々は9mg/KgのapoA-Iを使用したため、安全性の問題はない。最近開発された低分子のCD40-TRAF6相互作用の阻害剤は、現在までヒトにおいて評価されていない。89zr標識TRAF6i-HDLの生体内分布は、ネズミ、ウサギ、およびブタのアテローム性動脈硬化症モデルにおける89Zr標識HDLによる以前の観察[29]と同様であった。肝臓、脾臓および腎臓において最も高い蓄積を観察した。肝臓および腎臓はapoA-IおよびHDL異化の主要な部位であり、脾臓は、血液循環からナノ粒子を除去する多くの骨髄細胞を含む主要な二次リンパ器官である。肝臓、腎臓または脾臓での毒性作用の兆候はなく、すべての組織は組織学的分析で正常組織構造を示した。さらに、完全血球算定は、血小板、リンパ球、単球、好中球または赤血球の数に対する何らの影響も示さなかった。安全性データを、投与後72日まで評価した。長期間の安全性は、本研究では評価されなかった。
【0238】
抗インターロイキン-1β抗体および低用量メトトレキセートを用いる慢性的な療法が現在、大規模な第iii相臨床試験で研究されている[30~32]が、プラークの炎症に対処する特定の療法は現在存在しない。アテローム性動脈硬化症などの慢性疾患における免疫抑制の課題は、利益とリスクとのバランスをとることである。前述の慢性免疫抑制戦略とは対照的に、我々は、免疫調節特性を有する短期誘導ナノ療法が、心血管イベントのリスクが高い患者におけるプラーク炎症を迅速に抑制するために使用できると考える。標的送達が薬物の局所有効性を高める一方、その短期間の適用は、長期にわたる免疫抑制に伴うリスクを最小限に抑える。急性冠動脈症候群のため運び込まれた患者は、最初の1年以内に最大で17.4%の再発性心筋梗塞の著しく高いリスクを有するため、そのような炎症の誘導療法のための適切な集団であり得る[33]。最近の研究は、初期心筋梗塞そのものがアテローム性動脈硬化プラークへの単球動員を誘発し、それらに炎症を起こさせプラーク破裂を起こし易くすることを提案している[27]。この病態生理学的背景において、脆弱な段階での単球リクルートメントの急速な抑制の概念は重要であると予想される。この研究は、単球/マクロファージにおけるCD40-TRAF6シグナル伝達を標的とすることにより、アテローム性動脈硬化症における炎症を治療するための迅速な誘導療法の革新的な治療的アプローチを提供する。注入可能なTRAF6i-HDLナノ免疫療法は、非ヒト霊長類における好ましい安全性データによって証明されるように、有望な移行の可能性を有する。
【0239】
これらの結果を考慮すると、TRAF6i-HDLナノ粒子は、肥満およびインスリン抵抗性に関連するか、または関連する状態においても有用であることが予想される。このような状態および合併症は、インスリン抵抗性、2型真性糖尿病および心臓血管疾患を含む。CD40-TRAF経路を遮断することは、食餌誘発性肥満、ならびに同様の状態におけるインスリン抵抗性の低下、および脂肪組織(AT)炎症および肝浸潤の両方の減少をもたらすと予想される。本発明のTRAF6i-HDLナノ粒子は、AT炎症および肥満に関連する代謝合併症を防御することがさらに予想される。したがって、TRAF6i-HDLナノ粒子を単独でまたは他の標準のケア治療と組み合わせて投与することは、患者の転帰を改善し、これらの状態に関連する損傷を防止または逆転させることができる。
【0240】
方法
rHDLベースのナノ粒子の合成
TRAF6i-HDLの合成は、以前に発表された方法に基づいた[34、23]。要するに、クロロホルム/メタノール混合物(容積で9:1)中で、CD40-TRAF6阻害剤6877002[10]を1-ミリストイル-2-ヒドロキシsn-グリセロ-リン酸化コリン(MHPC)および1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)(Avanti Polar Lipids)と組み合わせ、次に真空中で乾燥させ、薄い脂質フィルムを生成した。ヒトのアポリポタンパク質A1(apoA-I)のPBS溶液を脂質膜に添加した。混合物を氷上で1時間、またはフィルムが水和され均質な溶液が形成されるまで、インキュベートした。溶液を次いで、20分間超音波処理してTRAF6i-HDLナノ粒子を形成させた。続いて、溶液を複数の遠心濾過工程によって精製した。標的化、イメージングおよび生体内分布実験のために、蛍光色素DiRまたはDiO(Invitrogen)、または89Zrで放射標識できる、リン脂質キレート剤DSPE-DFO(DMPCの代償に1mol%)の組み込みによってTRAF6i-HDLの類似体を調製した[35]。
【0241】
マウス研究のための動物および食事。
この研究には、雌Apoe-/-マウス(B6.129P2-Apoetm1Unc、n=103)を用いた。全ての動物のケアと処置は、Mount SinaiのIcahn School of Medicineから承認された施設のプロトコルに基づいた。8週齢のApoe-/-マウスを、The Jackson Laboratoryから購入した。全てのマウスに高コレステロール食(HCD)(0.2%重量コレステロール;15.2%kcalタンパク質、42.7%kcal炭水化物、42.0%kcal脂肪;Harlan TD、88137)を12週間与えた。
【0242】
各実験での処置プロトコルは同一であった:20週齢のApoe-/-マウスを無作為に、プラセボ(生理食塩水)、空のrHDLまたはTRAF6i-HDL(5mg/kg)群に割り当てた。マウスを7日間にわたり4回の静脈内注射で処置し、処置中はHCDを維持した。最後の注射の24時間後に動物を犠牲にした。
【0243】
フローサイトメトリー。
Apoe-/-マウスを安楽死させ、PBSで灌流した後、大動脈根から腸骨枝への大動脈を、脂肪から静かに浄化し、採取した。全大動脈を、リベラーゼTH(4U/mL)(Roche)、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)I(40U/ml)(Sigma-Aldrich)およびヒアルロニダーゼ(60U/mL)(Sigma-Aldrich)を含む酵素消化溶液中に入れ、細かく刻み、37℃のインキュベーターに60分間置いた。細胞を70μmのストレーナーに通し、2回スピンダウンし、血清含有培地中に再懸濁した。脾臓を秤量し、70μmの細胞ストレーナーに押し通し、スピンダウンし、赤血球溶解緩衝液中に4分間再懸濁し、次いで血清を含有する培地を用いて不活性化し、スピンダウンし、100mgの脾臓組織あたり1000μlの血清含有培地中に再懸濁した。EDTA処理した血液をスピンダウンし、赤血球溶解緩衝液中に4分間再懸濁し、次いで血清含有培地を用いて不活性化し、スピンダウンし、100μlの血清含有培地中に再懸濁した。骨髄を、単一の大腿骨から得た。無傷の大腿骨を70%エタノールですすぎ、続いて氷冷した滅菌PBSで3回洗浄した。骨端を切断し、骨髄をPBSで洗い流した。細胞を70μmのストレーナーに通し、スピンダウンし、赤血球溶解緩衝液中に30秒間再懸濁し、次いで血清含有培地を用いて不活性化し、スピンダウンし、1000μLの血清含有培地に再懸濁した。以下の抗体を使用した:F4/80-PE-Cy7(クローンBM8,BioLegend);CD11b-PerCP/Cy5.5(クローンM1/70,BioLegend);CD11c-APC(クローンN418,BioLegend);CD45-brilliant violet510(クローン30-F11,BioLegend);Ly-6C-PE(クローンAL-21,BD Biosciences);Ly6CFITC(クローンAL-21),BD Biosciences);CD90.2-eFluor450(クローン53-2.1,eBioscience);CD90.2-PE(クローン53-2.1,BD Biosciences);Ter119-eFluor450(クローンTER-119,eBioscience);NK1.1-eFluor450(クローンPK136,eBioscience);NK1.1-PE(クローンPK136,BD Biosciences);CD49b-eFluor450(クローンDX5,eBioscience);CD45R-eFluor450(クローンRA3-6B2,eBioscience);Ly-6G-PacificBlue(クローン1A8,BioLegend);Ly-6G-PE(クローン1A8,BD Biosciences);CD3-PE(クローン17A2;Biolegend);CD19-PE(クローン1D3,BD Bioscience)。
【0244】
抗体希釈液は、1:200~1:100の範囲であった。異なる集団への新たに作られた細胞の寄与を、ブロモデオキシウリジン(BrdU)でのインビボ標識により決定した。取り込みを、製造業者のプロトコルに従ってAPC結合抗BrdU抗体を使用して測定した(BDAPC-BrdUキット,552598)。単球およびマクロファージを、以前に記載された方法[28]と同様の方法を用いて同定した。具体的には、Ly6Chi単球を、Ly-6ChiであったCD11bhi、CD11clow、Lin-/low(LinはCD90.2+、CD45R+、CD49b+、NK1.1+、Ly-6G+、Ter119+またはCD90.2+、NK1.1+、Ly-6G+、CD19+、CD3+として定義される)F4/80lowとして同定した。マクロファージを、CD11bhi、CD11clow、Lin-/low、F4/80hi、CD11-/lowと同定した。データをLSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)で取得し、FlowJo v10.0.7(Tree Star、Inc.)で分析した。
【0245】
組織学および免疫組織化学。
組織学的分析のための組織を収集し、ホルマリン中で一晩固定し、パラフィン中に包埋した。大動脈の根を4μmスライスに切断し、1本のルートにつき合計90~100の断面を生成した。8つの横断切片をヘマトキシリンおよびエオシン(HE)で染色し、アテローム性動脈硬化性プラークサイズ測定に使用した。他の切片を脱パラフィンし、ブロックし、95℃の抗原回収溶液(DAKO)中でインキュベートし、MAC-3ラットモノクローナル抗体(1:30;BD Biosciences)または抗Ki67ウサギポリクローナル抗体(1:200、Abcam)のいずれかで免疫標識した。シリウスレッド染色をコラーゲン含量の分析に用いた。抗体染色を、Immpact AMEC red(Vectorlabs)またはジアミノベンジジン(DAB)のいずれかによって可視化した。切片を、LeicaDM6000顕微鏡(Leica Microsystems)またはVENTANA iScan HTスライドスキャナ(Ventana)を用いて分析した。
【0246】
レーザー捕捉顕微解剖およびRNA配列解析。
LCMを、以前に記載されたように24の大動脈根切片(6μm)に対して行った(20)。要するに、凍結切片をエタノール溶液中で段階的に脱水し(70%2回、95%2回、100%1回)、DEPC処理水で洗浄し、メイヤーのヘマトキシリン、エオシンで染色し、キシレン中で洗浄した。8つの切片ごとに1切片を、LCMを誘導するために使用されたCD68染色(AbD Serotec、1:250希釈)に用いた。プラーク内のCD68の豊富な領域を同定し、ArcturusXT LCMシステムを使用して切り出した。収集したCD68陽性細胞を、RNA単離((PicoPure RNA Isolation Kit,Arcturus)およびその後の製造業者のプロトコルに従うRNA増幅およびcDNA調製(Ovation Pico WTA System,NuGEN)に用いた。収集したサンプルの品質と濃度をAgilent 2100 Bioanalyzerで測定した。
【0247】
RNA配列解析。ペアエンドライブラリを調製し、検証した。純度、フラグメントサイズ、収量および濃度を決定した。クラスター生成中に、ライブラリー分子をIlluminaフローセルにハイブリダイズさせた。続いて、ハイブリダイズした分子を、ブリッジ増幅を用いて増幅し、クラスターの異種集団を生じた。データセットを、llumina HiSeq 2500シーケンサーを用いて得た。
【0248】
差次的発現および機能注釈分析。
ペアエンドのシークエンシングリードを、トゥファットアライナー(bowtie2)を用いてヒトゲノムhg19に対しアライメントした[36]。リードアライメントに続き、HTSeq[37]を用いて、GENCODE遺伝子モデルリリース22[38]に基づいて遺伝子レベルで遺伝子発現を定量した。遺伝子発現の生の読み取りカウントを、M値正規化法のトリミングされた平均を用いて百万分の一として正規化して、サンプル間のシーケンシングライブラリサイズの差を調整した[39]。薬物治療とプラセボの間の差次的発現遺伝子を、Bioconductorパッケージlimma[40]を用いて同定した。複数の検査問題を修正するために、limmaを使用して、ラベルの置換後のランダムサンプルの統計値およびp-値を計算した。この操作を1000回繰り返して、全ての遺伝子の誤発見率(FDR)を推定するためのヌルt-統計量およびp-値分布を得た。差次的に発現された(DE)遺伝子を、0.2未満の補正されたp-値のカットオフによって同定した。GO遺伝子[41]を用いてDE遺伝子に注釈を付け、DE遺伝子が有意に濃縮された細胞成分を見いだした。DE遺伝子をまた、KEGG Mapper[42]を用いて、京都遺伝子ゲノム百科事典(KEGG)パスウェイにマッピングした。
【0249】
CTによる蛍光分子断層撮影。
高脂肪食を雌12週間与えたApoe-/-マウスを、7日間にわたり4回のTRAF6i-HDL注入(5mg/kg、n=7)または生理食塩水(n=8)のいずれかで処理した。5ナノモルのパン-カテプシンプロテアーゼセンサー(ProSense680、Perkin Elmer、カタログ番号NEV10003)を、イメージングの24時間前に静脈内投与した。FMT/CTイメージングのために、動物を、イメージング中のイソフルラン投与用に備えた特注のイメージングカートリッジに入れた。動物を最初に、CT造影剤(isovue-370、Bracco Diagnostics)を尾静脈を通して55μL/分の速度で連続注入しながら、高分解能コンピュータ断層撮影(CT;InveonPET-CT、Siemens)を用いてスキャンした。動物を続いて、同じカートリッジ中でFMTスキャナー(Perkin Elmer)によりスキャンした。370~400msの露光時間でCTX線源を、80kVpおよび500mAにて操作した。コントラスト増強された高分解能CT画像を用いて大動脈根の位置を特定し、それを定量的FMTプロテアーゼ活性マップの関心体積の配置を誘導するために使用した。画像融合は、基準マーカーに依存した。画像の融合および分析を、OsiriXv.6.5.2(The Osirix Foundation、Geneva)を用いて行った。
【0250】
HDLナノ粒子の放射性標識。
即時標識されるHDLナノ粒子を、DMPCを代償に製剤混合物中に1mol%のリン脂質キレート剤またはDSPE-DFOを含めることにより(35)調製した。DFO含有ナノ粒子を次いで、先に記載したようにジルコニウム-89(89Zr)で標識した(35)。簡潔に述べると、ナノ粒子をリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.1)中の89Zr-シュウ酸塩と37℃で1時間反応させた。精製を、10kDaの分子量カットオフフィルターチューブを用いる遠心濾過によって行い、新鮮な滅菌PBSで2回洗浄した。放射化学的収率は、サイズ排除クロマトグラフィーで測定して、90±4%(n=3)および放射化学的純度>97%であった。
【0251】
マウスにおける薬物動態学、生体内分布およびPET/CTイメージング研究。
12週間高脂肪食を与えた雌Apoe-/-マウス(n=4、25.5±2.6g体重)に、89Zr-TRAF6i-HDLナノ粒子(183±16μCi、5mgTRAF6i-HDL/kg)を注入した。所定の時点(2、15および30分、ならびに1、4、8および24時間)で、血液サンプルを採取し、秤量し、2470Wizard自動ガンマカウンター(Perkin Elmer)を使用して放射能含有量について測定した。データを、組織1g当たり注入された投与量の百分率[%ID/g]に変換し、時間-活動曲線にプロットし、Prism GraphPadの非線形2相減衰回帰を用いてフィッティングした。加重血液放射能半減期(t1/2)を、最後に計算した。
【0252】
注射の24時間後に、動物を、イソフルラン/酸素ガス混合物麻酔下(誘導については2%、維持については1%)で、Inveon PET/CTスキャナ(Siemens Healthcare Global)上で走査した。PET静的スキャンは、少なくとも2500万回の同時発生イベントを記録し、10分間持続した。エネルギーおよび一致タイミングウィンドウは、それぞれ350~700keVおよび6nsであった。画像データを正規化して、PETの応答の不均一性、デッドタイムカウント損失、陽電子分岐比、および注入時間に対する物理的減衰を補正したが、減衰、散乱、または部分体積平均補正は適用されなかった。再構成画像中の計数率を、89Zrを含むマウスサイズの水等価ファントムのイメージングから得られたシステム較正係数を用いて、活性濃度(%ID/g)に変換した。画像を、ASIPro VMTM(Concorde Microsystems)およびInveon Researchソフトウェア(Siemens Healthcare Global)を用いて分析した。活性濃度の定量化を、関心組織の隣接するスライス上に描かれた少なくとも5つのROIの最大値を平均することによって行った。全身標準低倍率CTスキャンを、電圧80kV、電流500μAにてX線管設置で行った。CTスキャンを、フレーム当たり145ミリ秒の露出を伴う120秒のスキャン時間をもたらし推定される合計220度について120回の回転ステップを使用して取得した。PET/CTスキャンの直後に、動物を犠牲にし、PBSで灌流した。関心のある組織(肝臓、腎臓、脾臓、肺、筋肉、心臓、大動脈、骨および脳)を収集し、ブロットして、秤量した。放射能をガンマ計数によって測定し、放射能濃度を1グラムあたり注射された投与量の百分率[%ID/g]として表した。
【0253】
オートラジオグラフィー。
放射能計数の後、大動脈を、-20℃で24時間リン光イメージングプレート(BASMS-2325、Fujifilm、Valhalla、NY)に対するフィルムカセット中に置き、放射能分布を決定した。プレートを、Typhoon7000IPプレートリーダー(GE Healthcare、Pittsburgh、PA)を用いて25μmのピクセル解像度で読み取った。
【0254】
生体外近赤外蛍光イメージング(NIRF)。
高脂肪食を12週間与えた雌Apoe-/-マウスに、DiR標識した(0.5mg/kg)TRAF6i-HDL(5mg/kg、n=2)または生理食塩水(n=1)の単回のIV注入を行った。マウスを、注射の24時間後に犠牲にし、60mLのPBSで灌流した。肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓および筋肉組織を、NIRFイメージングのために収集した。蛍光画像を、745nm励起フィルターおよび820nm発光フィルターを用いて、2秒の曝露時間で、IVIS200システム(Xenogen)により獲得した。ROIを、ベンダーが提供するソフトウェアを使用して各組織について作成し、その後定量分析を、これらのROI内の平均放射効率で行った。
【0255】
血液試験。
マウスでは、血液を、屠殺時に心臓穿刺により採取した。血清をIDEXX研究所(Totowa、New Jersey、USA)に送り、オリンパスAU400化学分析装置で分析した。全血をEDTA含有管に集め、全血球数解析のためにIDEXX procyte DX血液分析器で分析した。非ヒト霊長類では、注入後0、15分および6、12、24、28、48および72時間に血液を採取した。血清をオリンパスAU400化学分析装置で分析した。全血試料をIDEXX procyte DX血液分析装置で分析した。
【0256】
非ヒト霊長類研究
雄成体カニクイザル(Macaca fascicularis)を、ケンタッキー大学およびMount SinaiのIcahn School of Medicineで実施された非ヒト霊長類研究に使用した。動物は平均7.3歳であり、体重は7.3±1.98kgであった(平均±SD)。すべての動物のケア、手順および実験は、Mount SinaiのIcahn School of Medicineとケンタッキー大学の動物実験および使用委員会から承認された施設のプロトコルに基づいた。サルは、12時間の明/暗サイクルで気候制御された条件で、可能な場合対で収容された。サルに水を自由に与え、Teklad Global 20% Protein Primate Dietを与えた。ケンタッキー大学での実験では、6匹の雄サルを用いた。一晩絶食させた後、サルをケタミン(5mg/kg)およびデクスメデトミジン(0.0075~0.015mg/kg)で麻酔し、血液を大腿静脈から採取した。サルを次いで、伏在静脈を介してビヒクル(PBS、USPグレード)またはTRAF6i-HDLのいずれかで、CD40-TRAF6阻害剤6877002の投与量が25mg/kgであるように、IV注射した。血液を、注入後15分、6、12、24、28、および48時間に収集した。採血後、アチパメゾール(0.075~0.15mg/kg)で麻酔を逆転させた。72時間後に、絶食したサルをケタミン(25mg/kg)で麻酔し、最終的に出血させ、イソフルランで麻酔しながら(3~5%誘導、1~2%維持)全身生理食塩水灌流での瀉血により安楽死させた。組織を速やかに取り出し、10%中性緩衝ホルマリン中で固定した。血液を全血液計数(CBC)試験に供した。
【0257】
Mount SinaiのIcahn School of Medicineでの実験のため、6匹の雌サルを用いた。89Zr-PET/MRIイメージングのために、動物に58.9±17.9MBqの89Zr標識TRAF6i-HDL(1.25mg/kg)を注入し、異なる時点でPET/MRIにより画像化した。動的PETイメージングを、注入後最初の60分間に実施した。追加のPET/MRIスキャンを24時間、48時間および72時間で行った。PETおよびMR画像を、組み合わせた3T PET/MRIシステム(Biograph mMR、Siemens Healthineers、Erlangen、Germany)で取得した。1日目に、動的PETイメージングを、89Zr標識TRAF6i-HDLを注射した直後に、胸部および腹部を覆う1つのベッドポジションを用いて60分間行った。同時に、解剖学的血管壁MR画像を、プロトン密度(PD)加重した様々なフリップ角エボリューションを使用するアプリケーション最適化コントラストを有するサンプリング完全性(Sampling Perfection with Application optimized Contrasts using different flip angle Evolution)(SPACE)シーケンスを使用して取得した。MR画像化パラメータは:捕捉面、コロナル;繰り返し時間(TR)、1000ms;エコー時間(TE)、79ms;視野(FOV)、300×187mm2;スライス数、144;平均数、4;帯域幅、601Hz/ピクセル;ターボファクター(TF)、51;スライスごとのエコートレイン、4;エコートレインの長さ、192ms;エコー間隔3.7ms;取得時間33分36秒であった。動的PET取得後、静的全身PETイメージングを、10分ずつ3連続のベッドポジションを使用して、頭蓋骨から骨盤で取得した。各ベッドと同時に、MR画像を、1.4シグナル平均(取得時間、1ベッドあたり11分44秒)のみを用いることを除いて、上記のように取得した。全身PETおよびMRイメージングも、3ベッドポジション(ベッド当たりのPET期間、30分;1ベッド当たりのMR期間、33分および36秒)を用いて、注入後24、48、および72時間に行った。各ベッドからの全身MR画像を、スキャナによって自動的に照合した。取得後、各ベッドからのPET生データを再構成し、ポイントスプレッドファンクション(PSF)補正を用いるオーダーサブセット期待値最大化(OSEM)アルゴリズムによりシーメンス独自のe7ツールを使用してオフラインでまとめて照合した。二重区画(軟組織および空気)減衰マップを、減衰補正に使用した。
【0258】
統計的解析。
連続変数は、他に言及しない限り、平均±標準偏差として表される。差の有意性を、ノンパラメトリックなマンホイットニーU検定およびKruskal-Wallis検定の使用により計算した。P<0.05の確率値を有意とみなした。統計分析を、社会科学用統計パッケージ(SPSS)バージョン22.0.0.0を使用して行った。
【0259】
参照
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【0260】
本明細書中に引用された全ての参考文献は、個々の刊行物と同じ程度に参照により組み込まれ、データベースエントリー(例えば、Genbank配列またはGeneIDエントリー)、と特許出願または特許は、具体的かつ個々に、参照により組み入れられることが示された。参照による組込みのこの声明は、個々の刊行物、データベースエントリー(例えば、Genbank配列またはGeneIDエントリー)、特許出願、または特許に関連すると、37C.F.R.§1.57(b)(1)に準じて、出願人によって意図され、これらの各々は、そのような引用が参照による組込みの組込みの声明に直接隣接していなくても、37C.F.R.§1.57(b)(2)に応じて明確に識別される。参照による組込みの組込みの声明の包含は、もしあれば、本明細書中の中で、この一般的な参照による組込みの声明を決して弱めるものではない。本明細書中の参の引用は参考文献が関連する先行技術であることの認定を意図するものではなく、これらの刊行物または文書の内容または日付に関する認定を構成するものでもない。
【0261】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際に、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な改変が、前述の説明および添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。
【0262】
前述の明細書は、当業者が本発明を実施するのに十分であると考えられる。本明細書に示され記述されたものに加えて、本発明の様々な改変は、前述の記載から当業者には明らかになり、添付の特許請求の範囲に含まれるであろう。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
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図22-1】
図22-2】
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図25