(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】天井装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20230414BHJP
E04B 9/20 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
E04B9/20 Z
(21)【出願番号】P 2019108898
(22)【出願日】2019-06-11
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000213231
【氏名又は名称】株式会社中部コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】山本 謙太郎
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-228489(JP,A)
【文献】特開2013-155482(JP,A)
【文献】特開2017-166217(JP,A)
【文献】特開2002-339465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
E04B 9/00
E04B 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝用の空間を介して隣接して、少なくとも一方が水平方向に揺動可能に立設する一方と他方よりなる一対の隣接建物の天井部の間を覆う天井装置であって、
前記一方の隣接建物の躯体に固定され、前記一対の隣接建物の天井部より上側で前記緩衝用の空間に配置される吊下げ部材と、
前記一対の隣接建物の天井部の間にて前記一対の隣接建物の間を移動可能に配置される可動天井部と、
前記吊下げ部材と前記可動天井部とを連結する複数のリンク部材を有して、前記可動天井部を前記一対の隣接建物の間で揺動可能に前記吊下げ部材に支持させる平行クランク機構とを備え
、
前記吊下げ部材は第1吊下げ部材と、前記一対の隣接建物が隣接する方向と水平方向に直交する直交方向の前記第1吊下げ部材の両側で前記第1吊下げ部材と離間して配置される一対の第2吊下げ部材を有し、
前記第1吊下げ部材と前記第2吊下げ部材の一方には前記複数のリンク部材に含まれて前記一方の隣接建物に近い位置で前記可動天井部を前記吊下げ部材に支持させる第1リンク部材と、
前記第1吊下げ部材と前記第2吊下げ部材の他方には前記複数のリンク部材に含まれて前記第1リンク部材より前記一方の隣接建物に遠い位置で前記可動天井部を前記吊下げ部材に支持させる第2リンク部材とを有したことを特徴とする天井装置。
【請求項2】
請求項1に記載の天井装置において、
前記一方の隣接建物の天井部の上側には前記緩衝用の空間と連続して前記可動天井部を退避させる退避空間を備えたことを特徴とする天井装置。
【請求項3】
請求項2に記載の天井装置において、
前記他方の隣接建物の天井部の上側には前記緩衝用の空間と連続して前記可動天井部を収納する収納空間を備えたことを特徴とする天井装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の天井装置において、
前記他方の隣接建物の天井部の前記一方の隣接建物側の端部と、前記可動天井部の前記他方の隣接建物側の端部との少なくとも一方には前記他方の隣接建物から前記可動天井部に近づくにしたがって下側に傾斜する案内スロープを設けたことを特徴とする天井装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝用の空間を介して隣接して、少なくとも一方が水平方向に揺動可能に立設する一方と他方よりなる一対の隣接建物の天井部の間を覆う天井装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、緩衝用の空間を介して隣接して、少なくとも一方が水平方向に揺動可能に立設する一対の隣接建物の間を覆う伸縮可能な天井継手構造の発明が開示されている。伸縮可能な天井継手構造は、緩衝用の空間を介して隣接する2つの天井材のうちの一方に継手材の幅方向の一端部をヒンジによって角変位自在に連結し、継手材の幅方向の他端部を索条によって吊り下げていて、継手材は両側の隣接建物の天井材と同一平面をなしている。継手材の幅方向の他端部には他端側に進むにつれて上方に傾斜する傾斜案内部が設けられ、他方の天井材には傾斜案内部と対向する位置に傾斜案内部を移動可能に支持する案内ローラが設けられている。
【0003】
この天井継手構造を採用した一対の隣接建物が近接方向に相対変位すると、継手材の幅方向の他端部が幅方向の一端部に設けられたヒンジによって上側に回動し、継手材の傾斜案内部が案内ローラによって上側に案内されて、継手材の幅方向の他端部はこれに対向する天井材の上側に移動して、一対の隣接建物の各天井材が近接する方向への変位が許容される。また、一対の隣接建物が離間方向に相対変位すると、継手材の幅方向の他端部は索条によって吊り下げられた状態で、継手材の幅方向の他端部はこれに対向する天井材と離間し、一対の隣接建物の各天井材が離間する方向への変位が許容される。
【0004】
特許文献2には、緩衝用の空間を介して隣接して、少なくとも一方が水平方向に揺動可能に立設する一対の隣接建物の間を覆う天井用目地カバー装置の発明が開示されている。天井用目地カバー装置は、一方に天井板を備えた隣接建物躯体相互間の天井板の側部の目地を覆うカバー板を備え、カバー板を支持する支持枠体の一端が他方の隣接建物躯体にスライド機構を介して上方向に退避移動可能に連結されている。カバー板の一方の隣接建物側の端縁には一方の隣接建物側に進むにつれ上方に傾斜する傾斜面が形成され、傾斜面に対向する一方の隣接建物の天井板の端縁に配設された突き合わせ部材には傾斜面と同方向に傾斜する押し上げ斜面が形成されている。また、スライド機構は上側に進むにつれて一方の隣接建物躯体から離れる方向に傾斜して配設されている。
【0005】
この天井用目地カバー装置を採用した一対の隣接建物が近接方向に相対変位すると、カバー板の一方の隣接建物側の端縁に形成された傾斜面が一方の隣接建物の天井板の端縁の押し上げ斜面に押され、カバー板を支持する支持枠体はカバー板とともにスライド機構によって一方の隣接建物の天井板より上側まで上昇し、カバー板は一方の隣接建物の天井板の上側に移動し、一対の隣接建物が近接する方向への変位が許容される。一対の隣接建物が離間方向に相対変位すると、カバー板の一方の隣接建物側の端縁が一方の隣接建物の天井板の端縁から離間し、一対の隣接建物が離間する方向への変位が許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第2582495号公報
【文献】実用新案登録第3157879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の天井継手構造においては、継手材の幅方向の一端部がヒンジによって回動可能に連結されており、継手材の幅方向の他端部は幅方向の一端部のヒンジを支点として上側に回動するため、一対の隣接建物の近接方向への相対変位が大きいときには、継手材の幅方向の他端部が幅方向の一端部のヒンジを支点として上側に大きく回動することになり、継手材が天井板の上側に回動するスペースを大きく確保しておく必要があった。また、継手材がヒンジによって各変位自在に連結されているが、継手材が回動するときに、継手材と建物躯体との取付部分に大きな負荷が生じていた。
【0008】
特許文献2の天井用目地カバー装置はスライド機構によってカバー板を一方の隣接建物の天井板に干渉しない位置まで上昇させ、カバー板を一方の隣接建物の天井板の上側に退避させているので、特許文献1の天井継手構造のように天井板の上側に大きなスペースを確保する必要はないが、天井板の上側にカバー板の幅と同じスペースを必要することになっている。また、他方の建物躯体にスライド機構を傾くことなく精度を高く取り付けていないと、カバー板の支持枠体がスライド機構に対して所謂かみが発生し、カバー板を上昇させことができなくなるおそれがあった。また、カバー板がスライド機構によって上側に移動するときには、スライド機構にはカバー板を支持する支持枠体から大きな荷重が加えられることになり、スライド機構を他方の建物躯体に強固に固定できていないと、スライド機構を他方の建物躯体に固定する金具が外れるおそれや、スライド機構を構成するレールが曲がるおそれがあった。本発明は、天井板の上側に大きな空間を必要としないとともに、固定部分に大きな負荷がかかりにくい天井装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するため、緩衝用の空間を介して隣接して、少なくとも一方が水平方向に揺動可能に立設する一方と他方よりなる一対の隣接建物の天井部の間を覆う天井装置であって、一方の隣接建物の躯体に固定され、一対の隣接建物の天井部より上側で緩衝用の空間に配置される吊下げ部材と、一対の隣接建物の天井部の間にて一対の隣接建物の間を移動可能に配置される可動天井部と、吊下げ部材と可動天井部とを連結する複数のリンク部材を有して、可動天井部を一対の隣接建物の間で揺動可能に吊下げ部材に支持させる平行クランク機構とを備え、吊下げ部材は第1吊下げ部材と、一対の隣接建物が隣接する方向と水平方向に直交する直交方向の第1吊下げ部材の両側で第1吊下げ部材と離間して配置される一対の第2吊下げ部材を有し、第1吊下げ部材と第2吊下げ部材の一方には複数のリンク部材に含まれて一方の隣接建物に近い位置で可動天井部を吊下げ部材に支持させる第1リンク部材と、第1吊下げ部材と第2吊下げ部材の他方には複数のリンク部材に含まれて第1リンク部材より一方の隣接建物に遠い位置で可動天井部を吊下げ部材に支持させる第2リンク部材とを有したことを特徴とする天井装置を提供するものである。
【0010】
上記のように構成した天井装置においては、一方の隣接建物の躯体に固定され、一方の隣接建物の天井部より上側で緩衝用の空間に配置される吊下げ部材と、一対の隣接建物の天井部の間にて一対の隣接建物の間を移動可能に配置される可動天井部と、吊下げ部材と可動天井部とを連結する複数のリンク部材を有して、可動天井部を一対の隣接建物の間で揺動可能に吊下げ部材に支持させる平行クランク機構とを備え、吊下げ部材は第1吊下げ部材と、一対の隣接建物が隣接する方向と水平方向に直交する直交方向の第1吊下げ部材の両側で第1吊下げ部材と離間して配置される一対の第2吊下げ部材を有し、第1吊下げ部材と第2吊下げ部材の一方には複数のリンク部材に含まれて一方の隣接建物に近い位置で可動天井部を吊下げ部材に支持させる第1リンク部材と、第1吊下げ部材と第2吊下げ部材の他方には複数のリンク部材に含まれて第1リンク部材より一方の隣接建物に遠い位置で可動天井部を吊下げ部材に支持させる第2リンク部材とを有している。これにより、一対の隣接建物が近接方向に相対変位したときに、可動天井部は他方の隣接建物の天井部に押され、可動天井部が一方の隣接建物側に揺動するが、可動天井部は平行クランク機構によって揺動するため、吊下げ部材には局部的に大きな負荷がかかりにくくなり、天井装置が破損しにくくなる。
【0011】
上記のように構成した天井装置においては、一方の隣接建物の天井部の上側には緩衝用の空間と連続して可動天井部を退避させる退避空間を備えるのが好ましい。このようにしたときには、一対の隣接建物が近接方向に相対変位すると、可動天井部は一方の隣接建物の天井部の上側の退避空間に退避移動して、一対の隣接建物が近接する方向への変位が許容される。上記のように構成した天井装置においては、他方の隣接建物の天井部の上側には緩衝用の空間と連続して可動天井部を収納する収納空間を備えるのが好ましい。このようにしたときには、一対の隣接建物が近接方向にさらに相対変位すると、退避空間に退避移動した可動天井部は他方の隣接建物の天井部の上側の収納空間に移動して、一対の隣接建物が近接する方向への変位がさらに許容される。このように、一方の隣接建物の天井部の上側に退避空間と、他方の隣接建物の天井部の上側に収納空間とを設けたことで、可動天井板は一方の隣接建物の天井部の上側と他方の隣接建物の天井部の上側との両方に収納されるため、一方と他方の隣接建物の天井部の互いに対向する位置で突出する部分を短くすることができる。
【0012】
上記のように構成した天井装置においては、他方の隣接建物の天井部の一方の隣接建物側の端部と、可動天井部の他方の隣接建物側の端部との少なくとも一方には他方の隣接建物から可動天井部に近づくにしたがって下側に傾斜する案内スロープを設けるのが好ましい。このようにしたときには、可動天井部が他方の隣接建物の天井部に押されたときに、可動天井部は案内スロープによって案内されて上側に押し上げられやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の天井装置を一対の隣接建物の天井部の間を覆うようにしたときの斜め上側から見たときの斜視図である。
【
図3】他方の隣接建物が一方の隣接建物に
図2の状態より近づいたときの側面概略図である。
【
図4】他方の隣接建物が一方の隣接建物に
図3の状態よりもさらに近づいたときの側面概略図である。
【
図5】他方の隣接建物が一方の隣接建物に
図2の状態よりも離れたときの側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の天井装置の一実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示したように、本発明の天井装置10は、緩衝用の空間BSを介して隣接して、少なくとも一方が水平方向に揺動可能に立設する一方の隣接建物BD1と他方の隣接建物BD2(一対の隣接建物BD1,BD2)の天井部BD1a,BD2aの間を覆うものである。緩衝用の空間BSは、一対の隣接建物BD1,BD2が近接方向に相対変位したときに、一対の隣接建物BD1,BD2が衝突するのを防ぐための空間である。この実施形態では、他方の隣接建物BD2は緩衝用の空間BSを介して隣接建物BD1と隣接する位置で免震機構によって水平方向に揺動可能に立設しており、一方の隣接建物BD1に天井装置10が固定されている。
【0016】
図2に示したように、天井装置10が固定されている一方の隣接建物BD1の天井部BD1aの上側には緩衝用の空間BSと連続する退避空間BD1bが設けられており、退避空間BD1bには後述する可動天井部20が退避可能となっている。他方の隣接建物BD2の天井部BD2aの上側には緩衝用の空間BSと連続する収納空間BD2bが設けられており、収納空間BD2bには吊木等の構造材が配設されずに後述する可動天井部20が収納可能となっている。他方の隣接建物BD2の天井部BD2aには一方の隣接建物BD1側の端部に案内スロープBD2cが設けられており、案内スロープBD2cは一対の隣接建物BD1,BD2が近接方向に相対変位したときに、可動天井部20を一方の隣接建物BD1側で斜め上方に回動させる機能を有している。
【0017】
図1及び
図2に示したように、天井装置10は一方の隣接建物BD1の躯体(構造体)に固定され、一方の隣接建物BD1の天井部BD1aより上側で緩衝用の空間BSに配置される吊下げ部材11と、一対の隣接建物BD1,BD2の天井部BD1a,BD2aの間にて一対の隣接建物BD1,BD2の間を移動可能に配置される可動天井部20と、吊下げ部材11と可動天井部20とを連結する複数のリンク部材31を有して、可動天井部20を一対の隣接建物BD1,BD2の間で移動させる平行クランク機構30とを備えている。
【0018】
吊下げ部材11は可動天井部20を吊り下げるためのものであり、この実施形態では角パイプ材が用いられている。吊下げ部材11は一対の隣接建物BD1,BD2の隣接方向を長手方向として延出しており、一方の隣接建物BD1の躯体から緩衝用の空間BSの幅方向の中間部まで延出している。吊下げ部材11は一対の隣接建物BD1,BD2の隣接方向と水平方向に直交する直交方向に互いに離間する3箇所に固定されている。
【0019】
可動天井部20は一対の隣接建物BD1,BD2の天井部BD1a,BD2aの間の緩衝用の空間BSを覆うようにしたものである。可動天井部20は、一対の隣接建物BD1,BD2の天井部BD1a,BD2aの間にて一対の隣接建物BD1,BD2の間を移動可能に配置され、平行クランク機構30によって水平状態を維持した状態で揺動可能(移動可能)に支持されている。可動天井部20は、野縁受け21と、野縁受け21に固定された野縁22と、野縁22に固定された可動天井板23とを備えている。
【0020】
野縁受け21は吊下げ部材11に平行クランク機構30のリンク部材31によって回動可能に支持されている。野縁受け21は一対の隣接建物BD1,BD2の隣接方向を長手方向として延出しており、一対の隣接建物BD1,BD2の天井部BD1a,BD2aの間の緩衝用の空間BSの幅と略同じ長さとなっている。野縁受け21は吊下げ部材11の真下(下側)にて、一対の隣接建物BD1,BD2の隣接方向と水平方向に直交する直交方向で互いに離間する3箇所に配設されている。野縁受け21の下側には野縁22が固定されており、野縁22は角パイプ材が採用されている。野縁22は一対の隣接建物BD1,BD2の隣接方向と水平方向に直交する直交方向を長手方向として延び、一対の隣接建物BD1,BD2の隣接方向で互いに離間した3箇所に固定されている。
【0021】
野縁22の下側には可動天井板23が固定されており、可動天井板23は一対の隣接建物BD1,BD2の天井部BD1a,BD2aの間の緩衝用の空間BSを覆っている。可動天井板23の他方の隣接建物BD2側の端部には案内スロープ23aが設けられており、案内スロープ23aは他方の隣接建物BD2から可動天井部20に近づくにしたがって下側に傾斜している。案内スロープ23aは他方の隣接建物BD2の案内スロープBD2cと同様に、一対の隣接建物BD1,BD2が近接方向に相対変位したときに、可動天井部20を一方の隣接建物BD1側で斜め上方に回動させる機能を有している。
【0022】
平行クランク機構30は、吊下げ部材11と可動天井部20とを連結する2つ(複数)のリンク部材31を有して、可動天井部20を一対の隣接建物BD1,BD2の間で揺動可能に吊下げ部材11に支持させるものである。平行クランク機構30を構成する2つのリンク部材31は一対の隣接建物BD1,BD2の隣接方向にて互いに異なる位置に配置されている。リンク部材31の一端部は吊下げ部材11に回動可能に取り付けられ、リンク部材31の他端部は可動天井部20の野縁受け21に回動可能に取り付けられている。なお、リンク部材31の一端部と他端部には吊下げ部材11と可動天井部20の野縁受け21に取り付けるため取付孔部が形成されており、リンク部材31は取付孔部に挿通されたボルトやピン等を用いた回動軸によって吊下げ部材11と可動天井部20に回動可能に連結されている。リンク部材31の両端部の取付孔部は長孔となっており、リンク部材31は多少の遊びを介して吊下げ部材11と可動天井部20に取り付けられている。リンク部材31が多少の遊びを介して吊下げ部材11と可動天井部20に取り付けられているため、可動天井部20の取付施工時に多少の寸法の誤差が生じても、可動天井部20は一対の隣接建物BD1,BD2の間で円滑に揺動するようになっている。なお、リンク部材31の両端部の取付孔部を長孔としたものに限られるものでなく、吊下げ部材11と野縁受け21との少なくとも一方に長孔よりなる取付孔部を形成したものであってもよい。
【0023】
図2に示したように、一対の隣接建物BD1,BD2の間が相対変位していないときには、可動天井部20はリンク部材31によって吊下げ部材11に略鉛直方向下向きに吊り下げられている。
図3に示したように、他方の隣接建物BD2が地震等によって揺れて、一対の隣接建物BD1,BD2が近接方向に相対変位して緩衝用の空間BSが狭くなると、可動天井部20は他方の隣接建物BD2の天井部BD2aによって一方の隣接建物BD1側に押される。可動天井部20は一方の隣接建物BD1側に斜め上方に揺動し、可動天井部20の一方の隣接建物BD1側の一部は一方の隣接建物BD1の天井部BD1aの上側の退避空間BD1bに退避して、一対の隣接建物BD1,BD2が近接する方向への変位が許容される。このとき、可動天井部20は案内スロープ23a、案内スロープBD2cによって円滑に一方の隣接建物BD1側の斜め上方に揺動する。
【0024】
図3に示したように、退避空間BD1bに退避した可動天井部20は他方の隣接建物BD2の天井部BD2aよりも高い位置となっており、隣接建物BD2の天井部BD2aの上側の収納空間BD2bに収納可能な高さとなっている。
図4に示したように、一対の隣接建物BD1,BD2が近接方向にさらに相対変位して緩衝用の空間BSがさらに狭くなると、退避空間BD1bに退避した可動天井部20の他方の隣接建物BD2側の一部は他方の隣接建物BD2の天井部BD2aの上側の収納空間BD2bに収納され、一対の隣接建物BD1,BD2が近接する方向への変位がさらに許容される。このように、一方の隣接建物BD1の天井部BD1aの上側に退避空間BD1bと、他方の隣接建物BD2の天井部BD2aの上側に収納空間BD2bとを設けたことで、可動天井板23は一方の隣接建物BD1の天井部BD1aの上側と他方の隣接建物BD2の天井部BD2aの上側との両方に収納されるため、一方と他方の隣接建物BD1,BD2の天井部BD1a,BD2aの互いに対向する位置で突出する部分を短くすることができる。
【0025】
また、
図5に示したように、一対の隣接建物BD1,BD2が離間方向に相対変位して緩衝用の空間BSが拡がると、可動天井部20と他方の隣接建物BD2とが互いに離間して、一対の隣接建物BD1,BD2が離間する方向への変位が許容される。
【0026】
上記のように構成した天井装置10においては、一方の隣接建物BD1の躯体に固定され、一方の隣接建物BD1の天井部BD1aより上側で緩衝用の空間BSに配置される吊下げ部材11と、一対の隣接建物BD1,BD2の天井部BD1a,BD2aの間にて一対の隣接建物BD1,BD2の間を移動可能に配置される可動天井部20と、吊下げ部材11と可動天井部20とを連結する複数のリンク部材31を有して、可動天井部20を一対の隣接建物BD1,BD2の間で揺動可能に吊下げ部材11に支持させる平行クランク機構30とを備えている。
【0027】
一対の隣接建物BD1,BD2が近接方向に相対変位したときに、可動天井部20は他方の隣接建物BD2の天井部BD2aに押され、可動天井部20が一方の隣接建物BD1側に揺動(移動)するが、可動天井部20は平行クランク機構30によって揺動(移動)するため、吊下げ部材11には局部的な大きな負荷がかかりにくくなり、天井装置10が破損しにくくなる。また、他方の隣接建物BD2の天井部BD2aの一方の隣接建物BD1側の端部には、他方の隣接建物BD2から可動天井部20に近づくにしたがって下側に傾斜する案内スロープBD2cが設けられ、可動天井部20の他方の隣接建物BD2側の端部には、他方の隣接建物BD2から可動天井部20に近づくにしたがって下側に傾斜する案内スロープ23aが設けられている。これによって、可動天井部20が他方の隣接建物BD2の天井部BD2aに押されたときに、可動天井部20は案内スロープBD2c、案内スロープ23aによって案内されて上側に押し上げられやすくすることができる。なお、他方の隣接建物BD2の天井部BD2aの一方の隣接建物BD1側の端部と、可動天井部20の他方の隣接建物BD2側の端部との一方だけに案内スロープを設けるようにしたものであってもよく、このようにしたときにも、同様の作用効果を得ることができる。なお、他方の隣接建物BD2の天井部BD2aの一方の隣接建物BD1側の端部と、可動天井部20の他方の隣接建物BD2側の端部との少なくとも一方に案内スロープを設けるようにしたものよりも可動天井部20を押し上げにくくなるものの、他方の隣接建物BD2の天井部BD2aの一方の隣接建物BD1側の端部と、可動天井部20の他方の隣接建物BD2側の端部との両方の案内スロープを廃したものであっても、可動天井部20を押し上げることができる。
【0028】
また、天井装置10は、一方の隣接建物BD1の天井部BD1aの上側で緩衝用の空間BSと連続して可動天井部20を退避させる退避空間BD1bを備え、他方の隣接建物BD2の天井部BD2aの上側で緩衝用の空間BSと連続して可動天井部20を収納する収納空間BD2bを備えている。一対の隣接建物BD1,BD2が近接方向に相対変位したときには、可動天井部20の一方の隣接建物BD1側の一部は一方の隣接建物BD1の天井部BD1aの上側の退避空間BD1bに退避移動して、一対の隣接建物BD1,BD2が近接する方向への変位が許容される。一対の隣接建物BD1,BD2が近接方向にさらに相対変位すると、退避空間BD1bに退避移動した可動天井部20の他方の隣接建物BD2側の一部は他方の隣接建物BD2の天井部BD2aの上側の収納空間BD2bに移動して、一対の隣接建物BD1,BD2が近接する方向への変位がさらに許容される。このように、一方の隣接建物BD1の天井部BD1aの上側に退避空間BD1bと、他方の隣接建物BD2の天井部BD2aの上側に収納空間BD2bとを設けたことで、可動天井板23は一方の隣接建物BD1の天井部BD1aの上側と他方の隣接建物BD2の天井部BD2aの上側との両方に収納されるため、一方と他方の隣接建物BD1,BD2の天井部BD1a,BD2aの互いに対向する位置で突出する部分を短くすることができる。
【0029】
上記の実施形態の天井装置10は、一対の隣接建物BD1,BD2が隣接する方向に同じ長さで、隣接する方向と直交する方向に離間して配置される3つの吊下げ部材11と、各吊下げ部材11に2つのリンク部材31とを備え、3つの吊下げ部材11と、各吊下げ部材11に取り付けた2つのリンク部材31によって可動天井部20を吊り下げるようにしている。本発明はこれに限られるものではなく、吊下げ部材11を2つ以上とし、各吊下げ部材11に2つ以上のリンク部材31を回動可能に支持させたものであってもよく、このようにしたときでも上述したのと同様の作用効果を得ることができる。さらに、次に示す変形例の天井装置10としたときでも上述したのと同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
図6に示したように、第1変形例の天井装置10の吊下げ部材11は第1吊下げ部材11aと、一対の隣接建物BD1,BD2が隣接する方向と水平方向に直交する直交方向の第1吊下げ部材11aの両側で第1吊下げ部材11aと離間して配置される一対の第2吊下げ部材11bを備えている。一対の第2吊下げ部材11bは第1吊下げ部材11aよりも短くなっている。一対の第2吊下げ部材11bにはリンク部材31に含まれて一方の隣接建物BD1に近い位置で可動天井部20を吊下げ部材11に支持させる第1リンク部材31aと、第1吊下げ部材11aにはリンク部材31に含まれて第1リンク部材31aより一方の隣接建物BD1に遠い位置で可動天井部20を吊下げ部材11に支持させる第2リンク部材31bとを備えたものであってもよい。このように、第1吊下げ部材11aの第2リンク部材31bと、第2吊下げ部材11bの第1リンク部材31aとにより平行クランク機構30を構成するようにしたものであってもよい。
【0031】
図7に示したように、第2変形例の天井装置10の吊下げ部材11は第1吊下げ部材11aと、一対の隣接建物BD1,BD2が隣接する方向と水平方向に直交する直交方向の第1吊下げ部材11aの両側で第1吊下げ部材11aと離間して配置される一対の第2吊下げ部材11bを備えている。第1吊下げ部材11aは一対の第2吊下げ部材11bよりも短くなっている。第1吊下げ部材11aにはリンク部材31に含まれて一方の隣接建物BD1に近い位置で可動天井部20を吊下げ部材11に支持させる第1リンク部材31aと、一対の第2吊下げ部材11bにはリンク部材31に含まれて第1リンク部材31aより一方の隣接建物BD1に遠い位置で可動天井部20を吊下げ部材11に支持させる第2リンク部材31bとを備えたものであってもよい。このように、第1吊下げ部材11aの第1リンク部材31aと、第2吊下げ部材11bの第2リンク部材31bとにより平行クランク機構30を構成するようにしたものであってもよい。
【0032】
図6及び
図7に示した第1及び第2変形例の天井装置10であれば、第1吊下げ部材11aまたは第2吊下げ部材11bの長さを短くすることができるとともに、リンク部材31の本数を少なくすることができ、上述した実施形態の天井装置10よりもコストを低く抑えることができるようになる。
【0033】
上記の実施形態の天井装置10は、緩衝用の空間BSを介して隣接して、水平方向に揺動せずに立設する一方の隣接建物BD1と、水平方向に揺動可能に立設する他方の隣接建物BD2(一対の隣接建物BD1,BD2)の天井部BD1a,BD2aの間を覆うものであるが、本発明はこれに限られるものでなく、緩衝用の空間BSを介して隣接して、水平方向に揺動可能に立設する一方の隣接建物BD1と、水平方向に揺動せずに立設する他方の隣接建物BD2(一対の隣接建物BD1,BD2)の天井部BD1a,BD2aの間を覆うものや、、緩衝用の空間BSを介して隣接して、水平方向に揺動可能に立設する一方の隣接建物BD1と、水平方向に揺動可能に立設する他方の隣接建物BD2(一対の隣接建物BD1,BD2)の天井部BD1a,BD2aの間を覆う、すなわち、緩衝用の空間BSを介して隣接して、両方が水平方向に揺動可能に立設する一対の隣接建物BD1,BD2の天井部BD1a,BD2aの間を覆うものであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…天井装置、11…吊下げ部材、11a…第1吊下げ部材、11b…第2吊下げ部材、20…可動天井部、23…可動天井板、23a…案内スロープ、30…平行クランク機構、31…リンク部材、31a…第1リンク部材、31b…第2リンク部材、BD1…一方の隣接建物、BD1a…天井部、BD1b…退避空間、BD2…他方の隣接建物、BD2a…天井部、BD2b…収納空間、BD2c…案内スロープ、BS…緩衝用の空間。