(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】農作業機用爪監視システム
(51)【国際特許分類】
A01B 33/08 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
A01B33/08 Z
(21)【出願番号】P 2019133068
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出 盛人
(72)【発明者】
【氏名】池内 善活
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-077805(JP,U)
【文献】実開昭53-025502(JP,U)
【文献】実開昭63-169329(JP,U)
【文献】特開2013-153728(JP,A)
【文献】特開平08-187003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/08
A01B 71/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに装着して爪を回転させて農作業を行う農作業機に適用する農作業機用爪監視システムにおいて、
前記農作業機の前記爪の回転動力に関するトルク値を取得可能な演算部を備え、
前記演算部は、取得したトルク値から爪の
摩耗状態判定を行い、その結果に応じて
摩耗状態判定の情報を出力することを特徴とする農作業機用爪監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の農作業機用爪監視システムにおいて、
前記演算部は、最初に測定したトルク値から初期値を算出し、現在のトルク値から現在値を算出し、前記初期値に予め定めた係数を用いて前記初期値よりも値の小さい限界値を算出し、前記現在値が前記限界値以下になる場合又は前記現在値が前記限界値を下回る場合に爪の
摩耗状態判定の情報を出力することを特徴とする農作業機用爪監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の農作業機用爪監視システムにおいて、
前記現在値は、現在のトルク値に対して、現在の作業条件に応じた補正を行い算出することを特徴とする農作業機用爪監視システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の農作業機用爪監視システムにおいて、
前記初期値は、最初に測定した時点のトルク値に対して、その時の作業条件に応じた補正を行い算出することを特徴とする農作業機用爪監視システム。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の農作業機用爪監視システムにおいて、
前記作業条件は、前記農作業機の作業深さ、作業する土壌の硬軟度、前記トラクタの牽引抵抗の少なくとも1つを含むことを特徴とする農作業機用爪監視システム。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の農作業機用爪監視システムにおいて、
前記演算部は、前記初期値に対して前記現在値がどの程度減少しているかに応じて算出される摩耗進度を算出して出力することを特徴とする農作業機用爪監視システム。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の農作業機用爪監視システムにおいて、
前記演算部は、前記現在値が前記限界値にどの程度近づいているかに応じて算出される爪残存率を算出して出力することを特徴とする農作業機用爪監視システム。
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれか一項に記載の農作業機用爪監視システムにおいて、
前記演算部は、前記農作業機の作業中の時間を積算して爪の使用時間を算出し、前記使用時間と、前記初期値と、前記現在値と、前記限界値とを用いて爪の使用可能時間を算出して出力することを特徴とする農作業機用爪監視システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の農作業機用爪監視システムにおいて、
前記演算部との通信が可能で前記演算部から出力された情報に基づく表示が可能な表示部を備え、前記
摩耗状態判定の情報が出力された場合、前記表示部はそれに基づく爪に関する情報を表示することを特徴とする農作業機用爪監視システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の農作業機用爪監視システムにおいて、
前記演算部との通信が可能な操作部を備え、前記操作部はリセット操作が可能であることを特徴とする農作業機用爪監視システム。
【請求項11】
請求項9を引用する請求項10に記載の農作業機用爪監視システムにおいて、
前記表示部と前記操作部は、タッチパネルで構成される表示画面を備える表示操作部として一体で構成されており、前記表示操作部は、前記演算部と無線通信を介して通信可能であることを特徴とする農作業機用爪監視システム。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の農作業機用爪監視システムにおいて、
前記農作業機の爪は前記トラクタのPTOの動力を用いて回転し、前記演算部は、爪の回転動力に関するトルク値として、前記トラクタから出力されるPTOトルク値のデータを取得することを特徴とする農作業機用爪監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機用爪監視システムに関し、特に、トラクタに装着する農作業機が備える爪の状態を監視する農作業機用爪監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタに装着する農作業機においては、回転する軸等に爪を備えている場合が多い。そして、その軸を回転させることで、爪も回転し圃場の土と接しながら農作業を行う。このとき、作業を行うに従い、爪は土との摩擦で摩耗をしていく。そして、ある程度以上摩耗した場合は、農作業に悪影響があるため爪の交換を行う。この場合、爪の使用限度は、摩耗した爪の見た目と作業後の圃場の状態等から、作業者等の人の経験と勘で判断する場合がほとんどであった。また、爪は摩耗以外に爪の脱落や破損をする場合もある。
【0003】
また、特許文献1には、耕耘爪に爪摩耗限度表示部としてプレスやポンチ等により凹状線溝を形成して、これにより摩耗程度を確認できる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、爪の摩耗状態に対する使用限度を人の経験と勘で判断する場合は、個人によってばらつきがあり、正確な判断が出来ない場合も存在する。また、人が判断する場合は、爪が摩耗しているサインを見落とす可能性も存在する。さらに、爪の脱落や破損においても、気づかない可能性も十分にある。
【0006】
また、特許文献1に記載の耕耘爪においては、摩耗程度は耕耘爪上の表示を確認することが必要となる。耕耘爪には土が付着している場合が多く、この確認作業を行うためには耕耘爪の土を丁寧に取り除く必要がある。このため、特に繁忙期等においては、見落としや、確認し忘れの可能性が高くなることが想定される。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、トラクタに装着する農作業機が備える爪の状態を的確に監視してその情報を出力可能な農作業機用爪監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、代表的な本発明の農作業機用爪監視システムの一つは、トラクタに装着して爪を回転させて農作業を行う農作業機に適用する農作業機用爪監視システムにおいて、前記農作業機の前記爪の回転動力に関するトルク値を取得可能な演算部を備え、前記演算部は、取得したトルク値から爪の摩耗状態判定を行い、その結果に応じて摩耗状態判定の情報を出力することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用爪監視システムの一つは、前記演算部は、最初に測定したトルク値から初期値を算出し、現在のトルク値から現在値を算出し、前記初期値に予め定めた係数を用いて前記初期値よりも値の小さい限界値を算出し、前記現在値が前記限界値以下になる場合又は前記現在値が前記限界値を下回る場合に爪の摩耗状態判定の情報を出力することを特徴とする。
【0009】
さらに本発明の農作業機用爪監視システムの一つは、前記現在値は、現在のトルク値に対して、現在の作業条件に応じた補正を行い算出することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用爪監視システムの一つは、前記初期値は、最初に測定した時点のトルク値に対して、その時の作業条件に応じた補正を行い算出することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用爪監視システムの一つは、前記作業条件は、前記農作業機の作業深さ、作業する土壌の硬軟度、前記トラクタの牽引抵抗の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0010】
さらに本発明の農作業機用爪監視システムの一つは、前記演算部は、前記初期値に対して前記現在値がどの程度減少しているかに応じて算出される摩耗進度を算出して出力することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用爪監視システムの一つは、前記演算部は、前記現在値が前記限界値にどの程度近づいているかに応じて算出される爪残存率を算出して出力することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用爪監視システムの一つは、前記演算部は、前記農作業機の作業中の時間を積算して爪の使用時間を算出し、前記使用時間と、前記初期値と、前記現在値と、前記限界値とを用いて爪の使用可能時間を算出して出力することを特徴とする。
【0011】
さらに本発明の農作業機用爪監視システムの一つは、前記演算部との通信が可能で前記演算部から出力された情報に基づく表示が可能な表示部を備え、前記摩耗状態判定の情報が出力された場合、前記表示部はそれに基づく爪に関する情報を表示することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用爪監視システムの一つは、前記演算部との通信が可能な操作部を備え、前記操作部はリセット操作が可能であることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用爪監視システムの一つは、前記表示部と前記操作部は、タッチパネルで構成される表示画面を備える表示操作部として一体で構成されており、前記表示操作部は、前記演算部と無線通信を介して通信可能であることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用爪監視システムの一つは、前記農作業機の爪は前記トラクタのPTOの動力を用いて回転し、前記演算部は、爪の回転動力に関するトルク値として、前記トラクタから出力されるPTOトルク値のデータを取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トラクタに装着する農作業機が備える爪の状態を監視する農作業機用爪監視システムにおいて、爪の状態を的確に監視してその情報を出力することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の農作業機用爪監視システムの一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】本発明の農作業機用爪監視システムの一実施形態を示す平面概略図である。
【
図3】本発明の農作業機用爪監視システムに適用可能な農作業機の例を示す平面図である。
【
図4】本発明の農作業機用爪監視システムに適用可能な農作業機の例を示す側面図である。
【
図5】本発明の農作業機用爪監視システムの初期設定の例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の農作業機用爪監視システムの摩耗判定の第1の例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の農作業機用爪監視システムの摩耗判定の第2の例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の農作業機用爪監視システムの摩耗判定の第3の例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の農作業機用爪監視システムの摩耗判定の第4の例を示す第1のフローチャートである。
【
図10】本発明の農作業機用爪監視システムの摩耗判定の第4の例を示す第2のフローチャートである。
【
図11】本発明の農作業機用爪監視システムにおける表示部及び操作部の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の農作業機用爪監視システムの一実施形態を示すブロック図である。
【0016】
図1の実施形態では、農作業機用爪監視システムとして、演算部21、記録部22、制御部23、入出力部24を備えている。これらは、制御ボックス20内に設けることができる。なお、制御ボックス20は周りをケースで覆い、防塵・防水機能を有することが可能である。さらに、
図1の実施形態では、表示部31、操作部32を備えている。また、トラクタ1に備えるトラクタ制御部11から情報が出力される構成を用いることができる。また、作業機センサ部26を設けてもよい。
【0017】
ここで、制御ボックス20、作業機センサ部26は、トラクタ1に装着する農作業機2側に備えている。また、表示部31は、制御ボックス20からの情報に基づき遠隔で表示させることが可能な構成である。操作部32は制御ボックス20へ操作情報を遠隔で送信することが可能な構成である。このため、表示部31と操作部32は、トラクタ1の運転席付近に配置することが可能である。また、表示部31と操作部32は一体に構成することも可能である。
【0018】
なお、トラクタ1に装着する農作業機2には、爪を備えており、この爪は圃場の土に接して農作業を行うためのものである。特に、トラクタ1のPTO(Power take-off)等の回転動力を用いて軸等に備える爪を回転させて農作業を行う。爪は、例えば、耕耘爪や代掻き爪等である。
【0019】
トラクタ制御部11は、トラクタ1側の制御のための処理を行うもので、トラクタ1に予め備えられているものを利用できる。そして、トラクタ制御部11からトラクタに関する情報を出力して、制御ボックス20の演算部21の処理に用いることができる。トラクタ1から出力される情報は、例えば、トラクタ1のPTOトルク値、PTO回転数、ロワーリンクの位置(角度)、スリップ率、車速、位置情報等である。例えば、ロワーリンクの位置であれば、ロワーリンクの上下位置の信号(例えば、最上げが100%、最下げを0%とした場合のパーセント表示の信号等)を出力する。
【0020】
演算部21は、トラクタ制御部11や作業機センサ部26からの情報を取得して、爪の状態を算出するための処理を行う。また、演算部21は、操作部32による操作の情報を受信して処理に用いることができる。また、演算部21は、表示部31での表示のための必要な処理を行うこともできる。演算部21は、CPU等の演算等のために必要な電子デバイス等で構成されている。また、必要に応じてタイマ等も備えている。
【0021】
記録部22は、演算部21で算出された情報、作業機センサ部26からの情報、表示部31の表示情報、操作部32の操作情報等の情報を記録しておくことができる。このために必要なデバイスで構成される。
【0022】
制御部23は、演算部21に対する演算の制御、演算部21や記録部22に対する情報の入出力の制御、作業機センサ部26からの情報の入力制御、表示部31への情報の出力制御、操作部32からの操作情報の入力制御等を行う。制御部23は、CPU等の制御等のために必要な電子デバイス等で構成されている。なお、演算部21と制御部23は処理部として一体に構成することもできる。
【0023】
入出力部24は、トラクタ制御部11、作業機センサ部26、表示部31、操作部32と情報の入出力を行う。
図1では、入出力部24は、トラクタ制御部11、作業機センサ部26、表示部31、操作部32とそれぞれ有線接続されている例が示されている。一方、表示部31と操作部32は、制御ボックス20と無線通信による情報のやりとりをする構成でもよく、この場合、入出力部24は、無線送受信部としての機能を果たす。さらに、トラクタ制御部11と制御ボックス20も無線通信による情報のやりとりをする構成でもよく、この場合、入出力部24は、無線送受信部としての機能を果たす。
【0024】
作業機センサ部26は、農作業機2の状態を検出するために用いるセンサである。特に農作業機2のトルクを検知するためのセンサ、農作業機2の前後方向の傾きを検知するためのセンサ、農作業機の振動を検知するためのセンサ等を必要に応じて用いることができる。具体的には、作業機センサ部26のセンサとしては、トルクセンサ、加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)、振動センサ、多軸センサ、傾斜センサ、地磁気センサ等を用いることができる。これ以外にも、作業機センサ部26のセンサとしては、例えば、回転センサ、ポテンショメータ、リミットスイッチ、ストロークセンサ等、農作業機の状態を検知するセンサ等を備えていてもよい。作業機センサ部26は、センサの種類によっては制御ボックス20内に設けることも可能である。
【0025】
表示部31は、後述する爪の摩耗判定出力、爪の摩耗進度、爪残存率、爪使用可能時間、積算時間等の爪の状態を表示することができる。表示部31は、例えば、液晶、有機EL、LED等による表示画面を備えており、ここに必要な表示を行う。この他、LED等のランプによる点灯表示でもよい。また、爪以外の農作業機の状態を併せて表示させてもよい。なお、積算時間の表示は、初期からの通算の積算時間の表示やリセット後の積算時間の表示等である。ここで、リセット後の積算時間は、爪の交換時にリセットすることで、爪の使用時間となる。
【0026】
操作部32は、表示部31の表示のON(入)やOFF(切)、必要な設定の入力、リセット、初期からの通算の積算時間の表示とリセット後の積算時間の表示との切り替え等を行うためのスイッチ類等を備えている。リセットとしては、爪交換時に行うことを想定したものであり、爪の摩耗判定出力、爪の摩耗進度、爪残存率、爪使用可能時間、積算時間等に対するリセットがあげられる。
【0027】
ここで、表示部31と操作部32は、操作しやすくするために、一体にして、表示画面をタッチパネルの方式を採用して構成してもよい。例えば、スマートフォンやタブレット型コンピュータ等の汎用の持ち運び可能な端末を適用できる。ここにアプリケーションを導入して、爪の状態に関する表示やリセットボタンを表示させることができる。
【0028】
図2は、本発明の農作業機用爪監視システムの一実施形態を示す平面概略図である。
【0029】
図2では、トラクタ1側には、トラクタ制御部11が設けられると共に、表示操作部40が配置されている。表示操作部40は、表示部31と操作部32を一体に構成したものである。農作業機2側に制御ボックス20と作業機センサ部26が有線接続されている。トラクタ制御部11に配線12が接続され、この配線の端部はコネクタ12aとなっている。制御ボックス20に配線28が接続され、この配線の端部はコネクタ28aとなっている。コネクタ12aとコネクタ28aは互いの着脱が可能なコネクタであり、トラクタ1と農作業機2の間付近で接続されている。これにより、トラクタ制御部11と制御ボックス20が有線接続される。さらに、表示操作部40と制御ボックス20は無線通信により情報のやりとりが可能な構成となっている。
【0030】
制御ボックス20内の演算部21では、トラクタ制御部11や作業機センサ部26からの情報に基づき農作業機2の爪の状態を算出する。算出した情報は、無線通信を介して、表示操作部40へ送信される。表示操作部40では、受信した情報に基づき、爪の状態に関する表示を行う。さらに、制御ボックス20では、爪以外の農作業機2に関する状態を算出して、その情報を表示操作部40へ無線送信して、表示操作部40で表示してもよい。
【0031】
(農作業機の例)
図3は、本発明の農作業機用爪監視システムに適用可能な農作業機の例を示す平面図である。
図4は、本発明の農作業機用爪監視システムに適用可能な農作業機の例を示す側面図である。
図3、4は、トラクタ1に装着する農作業機2としてロータリー作業機100による実施形態を示している。以下、ロータリー作業機100の進行方向を前方向として説明している。
図3の左右方向がロータリー作業機100の横方向(左右方向)であり、
図3の上下方向がロータリー作業機100の前後方向である。
図4の左右方向がロータリー作業機100の前後方向であり、
図4の上下方向がロータリー作業機100の上下方向である。また、
図3ではトラクタ1の図示は省略し、
図4ではトラクタ1の図示を簡略化し、後ろ側部分のみを示している。
【0032】
トラクタ1の出力軸19から出力されたPTO動力は(図示を省略した)ジョイント等を介して、入力軸101から入力され、ミッションケース102内のギヤや軸等の伝動機構、左フレームパイプ103内の軸、チェーンケース105内のチェーンを介するなどして、耕耘部カバー112の下側に位置する耕耘部130に伝達される。耕耘部130は、複数の耕耘爪132(
図4では1つのみ図示)を有する耕耘軸131等により構成され、耕耘軸131を回転させることにより耕耘爪132が回転して耕耘作業を行う。
【0033】
ここで、ミッションケース102の左側に左フレームパイプ103が備えられており、その左側端部はチェーンケース105が取り付けられている。ミッションケース102の右側に右フレームパイプ104が備えられており、その右側端部はブラケット107が取り付けられている。チェーンケース105及びブラケット107は下側に向けて設けられ、耕耘軸131の両端の側面まで延在している。左フレームパイプ103と右フレームパイプ104の途中には前方に向けて取付板108がそれぞれ備えられ、この前側でロワーアーム122が取り付けられている。ミッションケース102、左フレームパイプ103、右フレームパイプ104の下側には、チェーンケース105とブラケット107の間に渡って、耕耘部カバー112を備えている。さらに、耕耘部カバー112の後ろ側では、整地体114が、後方下側へ向けて、接続部材である蝶番115を介して耕耘部カバー112に対して横方向を回転軸として回動可能に取り付けられている。また、左右のフレームパイプ103、104と、整地体114を連結するように接地圧調整手段116がそれぞれ設けられている。また、耕耘部130の前側には、左右にそれぞれゲージ輪117が設けられている。また、サイドカバー118は、チェーンケース105及びブラケット107の後ろ側で左右それぞれ取り付けられている。
【0034】
ここで、
図3、4では、
図1、2で示した制御ボックス20は耕耘部カバー112の上部面に取り付けられている。
図3では、左側の取付板108付近の左フレームパイプ103の下の耕耘部カバー112上に取り付けられている。
図3、4に示される制御ボックス20には、内部に作業機センサ部26が備えられており、この場合、作業機センサ部26は振動を検出するためのセンサや姿勢を検出するためのセンサで構成できる。特に、作業中の振動を検出することに適した位置となる。なお、作業機センサ部26は必要に応じて別の位置に設けてもよい。
【0035】
図4に示されるように、ロータリー作業機100は、トラクタ1の後部に装着されている。このとき、マスト121やロワーアーム122を有する装着部120を、トラクタ1側の後部に取り付けられている連結部9に装着する。連結部9は、トラクタ1側のトップリンク15とロワーリンク16を介してトラクタ1側に取り付けられている。ここで、トップリンク15は、ロワーリンク16よりも上部に配置されている。作業者はロワーリンク16をトラクタ1の運転席から操作すると、ロワーリンク16はトラクタ1側の支点16aを中心に回動し、トップリンク15もトラクタ1側の支点15aを中心に回動する。これにより、連結部9が上下するのでロータリー作業機100を上下に位置移動できる。このとき、トップリンク15やロワーリンク16のリンク機構により、ロータリー作業機100を上に上げるに従い、ロータリー作業機100が前側に傾いていく構成になっている。このことは他の農作業機2でも同様である。なお、トップリンク15は、連結部9の左右中心付近に1つ、ロワーリンク16は連結部9の左右に2つ設けられている。
【0036】
(初期設定の例)
図5は、本発明の農作業機用爪監視システムの初期設定の例を示すフローチャートである。ここでは、
図1の演算部21による処理を示している。
【0037】
電源が入ると(S101)、初期情報の記録が無いか否かを判定する(S102)。これは、初期設定のデータ(初期値や限界値等)が記録部22に記録されていない場合や、今までトルクデータの記録等を行っていない場合等が該当する。初期情報の記録が有る場合はS103へ行き、初期情報の記録が無い場合はS104へ行く。
【0038】
S103では、リセットするか否かを判定する。これは、操作部32からの情報に基づいて行うことができる。例えば、爪交換後等に操作部32でリセットの操作を行った場合はリセットを行う。リセットを行う場合は、今までの初期設定をクリアして、S104へ行き、リセットを行わない場合は、S112へ行き処理が終了する。
【0039】
S104では、トルク・作業条件のデータを入力したか否かを判定する。ここでの判定は、トラクタ制御部11からの情報、または、作業機センサ部26からの情報に基づいて行う。トラクタ制御部11からの情報であれば、トラクタ1に関するデータとして、例えば、PTOトルク値、PTO回転数、ロアーリンクの高さ(角度)、スリップ率、車速、位置情報等があげられる。また、作業機センサ部26からの情報であれば、農作業機2に関する情報として例えば、トルク値、傾斜角度、振動数、振幅、加速度などの情報があげられる。トルク値は、爪の回転動力に関するトルク値である。トラクタ制御部11であれば、PTOトルク値、ロータリー作業機100であれば、PTOから入力したトルク値、耕耘軸131にかかるトルク値、途中の伝動機構のトルク値等である。作業条件のデータは、S106の補正で用いるために必要なデータである。どのデータが必要かは、予め演算する条件に合わせて設定することができる。S104では必要なデータが取得出来ているかどうかで判定し、トルク・作業条件のデータを入力したと判定した場合はS105へ行き、トルク・作業条件のデータを入力していないと判定した場合はS104のままとなる。
【0040】
S105では、一定時間当りのトルクデータを記録する。ここでは、トラクタ制御部11から入力したPTOトルク値、又は、作業機センサ部26から入力したトルク値、又はその両方を用いて、予め定めた一定時間当りのトルクデータを記録部22に記録する。ここでのトルクデータは、農作業機2の作業中のトルクデータを想定しているため、作業中と想定されるトルクデータを記録する。
【0041】
ここで作業中と想定されるトルクデータの例について説明する。1つ目の例として、作業中と想定される予め定めた所定以上のトルク値である場合があげられる。2つ目の例として、農作業機2が所定高さ以下に下におろした状態の場合があげられる。3つめの例は、農作業機2の振動が所定以上である場合があげられる。これらの条件を組み合わせてもよい。これらの作業中である場合の例は後述する
図9のS502でも具体的に説明する。ここではその内容に準じた処理が可能となる。
【0042】
次に、初期値の算出を行う(S106)。ここでは、S105で記録したトルクデータやS104で入力された作業条件のデータを用いる。例えば、S105で記録したトルクデータからトルクの平均値や中央値等を求めることで初期値とすることもできる。さらに、作業条件は、圃場の状態、トラクタ1の状態、農作業機2の状態等によるため、作業毎に異なる場合が多く、これにより、トルク値も影響を受ける可能性が高い。このため、初期値を算出するにあたり、これらの作業条件をふまえた補正を行いトルク値の標準化を行うことができる。ここでの標準化は、標準となる作業条件に合わせる補正を行うものである。このことで、作業条件が異なっても、標準化したトルク値を算出することで、より正確な比較を行いやすい初期値にできる。データの補正と標準化の例について、次に説明する。
【0043】
第1の例は、農作業機2の作業深さに応じた補正を行うものである。例えば、作業深さが深ければトルクは大きくなり、浅ければトルクが小さくなることが想定される。このため、標準とする作業深さのトルク値に補正を行うものである。農作業機2の作業深さの測定は、例えば、トラクタ制御部11からのロワーリンク16の上下方向位置の情報により農作業機2の作業深さを算出できる。また、作業機センサ部26により農作業機2の前後方向の傾きを検出するセンサを用いて算出できる。また、作業機センサ部26とトラクタ制御部11の情報の両方を用いて算出してもよい。
【0044】
第2の例は、作業する圃場の土壌の硬軟度に応じた補正を行うものである。例えば、土壌が硬ければトルクは大きくなり、土壌が柔らかければトルクが小さくなることが想定される。このため、標準とする土壌の硬さによるトルク値に補正を行うものである。土壌の硬軟度の測定は、例えば、トラクタ制御部11からのトラクタスリップ率の情報や、作業機センサ部26からの振動・振幅・加速度等の情報等から算出できる。これらの情報は少なくとも1つを用いることで算出し、複数用いて、より正確な算出を行ってもよい。
【0045】
第3の例は、トラクタ1の牽引抵抗に応じた補正を行うものである。例えば、牽引抵抗が大きければトルクは大きくなり、牽引抵抗が小さければトルクが小さくなることが想定される。このため、標準とする牽引抵抗によるトルク値に補正を行うものである。牽引抵抗の測定は、例えば、トラクタ制御部11からの車速、スリップ率、位置情報等の情報から算出できる。これらの情報は少なくとも1つを用いることで算出し、複数用いて、より正確な算出を行ってもよい。なお、作業機センサ部26から、車速や位置情報のデーが取得できる場合は、それを用いてもよい。
【0046】
上記第1~3の例は、少なくとも1以上を用いることができる。また、これ以外の例を、上記第1~3の例とは別に又は追加で用いても良い。S106の補正は、予め行った実験等により得られたデータから補正の程度(式や係数)を決定することができる。また、使用する爪の種類によって、補正・標準化のパターンの選択や変更を可能にしてもよい。この場合は操作部32で爪の種類の選択を行うことができる。
【0047】
次に、初期値の記録を行う(S107)。これは、S106で算出した初期値を記録部22に記録すればよい。
【0048】
次に、限界係数を変更するか否かを判定する(S108)。限界係数は、初期値に対して何割程度まで使用可能にするかというものであり、限界値の算出前に予め定めておくことができる。限界係数は、少なくとも0より大きく1より小さい値である。例えば、0.3より大きく0.9より小さい値、さらには、0.5より大きく0.8よりも小さい値等である。最初は試験等で決めた限界係数を記録しておくことができる。そして、操作部32の操作により任意で変更可能とできる。S108は、操作部32の操作により作業者が変更操作を行った場合、限界係数を変更すると判定される。S108で、限界係数が変更しない場合は、S110へ行き、変更する場合は、S109へ行く。
【0049】
S109では、限界係数の入力が行われる。これは、操作部32から入力することができる。
【0050】
S110では、限界値の算出を行う。限界値は、S106で算出した初期値に限界係数を乗ずること(初期値×限界係数)で算出できる。限界値は、初期値よりも小さい値となる。
【0051】
次に、限界値の記録を行う(S111)。これは、S110で算出した限界値を記録部22に記録すればよい。
【0052】
これらの処理により初期設定が終了する(S112)。
【0053】
(摩耗判定の第1の例)
図6は、本発明の農作業機用爪監視システムの摩耗判定の第1の例を示すフローチャートである。ここでは、
図1の演算部21による処理を示している。
【0054】
電源が入ると(S201)、トルク・作業条件のデータを入力したか否かを判定する(S202)。ここでは、
図5で説明したS104と同様のため説明は省略する。S202で、トルク・作業条件のデータを入力したと判定した場合はS203へ行き、トルク・作業条件のデータを入力していないと判定した場合はS202のままとなる。
【0055】
S203では、一定時間当りのトルクデータを記録する。ここでは、
図5で説明したS105と同様のため説明は省略する。
【0056】
次に、現在値の算出を行う(S204)。ここでは、S203で記録したトルクデータやS202で入力された作業条件のデータを用いる。例えば、S203で記録したトルクデータでトルクの平均値や中央値等を求めることで現在値とすることもできる。一方で、作業条件は、作業毎に異なる場合が多く、これにより、トルク値も影響を受ける可能性が高い。このため、現在値を算出するにあたり、これらの作業条件をふまえた補正を行いトルク値の標準化を行うことができる。これらの作業条件による補正と標準化は、
図5で説明したS106と同様のため説明を省略する。
【0057】
次に、現在値が限界値を下回る値であるか否かを判定する(S205)。ここでは爪の摩耗判定(状態判定)を行う。S204で算出した現在値が、
図5のS110で記録した限界値を下回る値であるか否か(「限界値>現在値」であるか否か)を判定する。ここで、トルクの現在値が限界値を下回る場合は爪の摩耗が使用限度まで進んでいることが想定される。現在値が限界値を下回る値であると判定した場合はS206へ行き、現在値が限界値を下回る値でないと判定した場合はS202へ戻る。
【0058】
S206では、摩耗判定出力を行う。ここでの出力された摩耗判定の結果の情報は、表示部31に送られ表示部31で摩耗に関する情報を表示する。表示の方法としては、摩耗が限界まで進んでいること等を報知するものであり、爪が使用限度まで摩耗していることや、爪交換の必要があること等を作業者が何らかの形で分かるように表示する。例えば、LED等によるランプの点灯表示、液晶等による文字表示、図による表示等があげられる。この摩耗判定の出力によって処理が終了する(S207)。
【0059】
(摩耗判定の第2の例)
図7は、本発明の農作業機用爪監視システムの摩耗判定の第2の例を示すフローチャートである。ここでは、
図1の演算部21による処理を示している。
【0060】
S301~S304は、
図6で説明したS201~S204と同様である。
【0061】
次のS305では、摩耗進度の算出を行う。摩耗進度は、初期値に対して現在値がどの程度減少しているかに応じて算出される値である。具体的には、「初期値-限界値」に対する「初期値-現在値」の割合で計算でき、以下の式で算出可能である。
摩耗進度(%)={(初期値-現在値)/(初期値-限界値)}×100 (式1)
ここで、現在値はS304で算出された値であり、限界値は
図5のS110で算出された値である。この摩耗進度は、現在値が初期値である場合は0%となり、現在値が減少するに従い、摩耗進度の値が増えていき、現在値が限界値まで達すると100%となる。これにより、摩耗がどの程度進んでいるかが分かることになる。
【0062】
次に、摩耗進度が100%に到達しているか否かを判定する(S306)。ここでは爪の摩耗判定(状態判定)を行うことになる。S305で算出された摩耗進度が、100%に到達していれば(すなわち100%以上になれば)、S308へ行き、到達していなければS307へ行く。
【0063】
S307では、摩耗進度(%)の出力を行う。ここでの出力は、表示部31で行わせる。表示部31では、摩耗進度(%)を数値、グラフ、図等の少なくとも1つ又は複数で表すことで、摩耗の度合いを作業者に知らせることができる。その後は、S302へ戻る。
【0064】
S308では、摩耗判定出力を行う。これは、
図6で説明したS206と同様であるとともに、摩耗進度が100%に到達していることを出力できる。S308で処理が終了する(S309)。なお、摩耗進度が100%に到達している場合は、現在値が限界値以下になる場合に相当する。
【0065】
(摩耗判定の第3の例)
図8は、本発明の農作業機用爪監視システムの摩耗判定の第3の例を示すフローチャートである。ここでは、
図1の演算部21による処理を示している。
【0066】
S401~S404は、
図6で説明したS201~S204と同様である。
【0067】
次のS405では、爪残存率の算出を行う。爪残存率は、現在値が限界値にどの程度近づいているかに応じて算出される値である。具体的には、「初期値-限界値」に対する「現在値-限界値」の割合で計算でき、以下の式で算出可能である。
爪残存率(%)={(現在値-限界値)/(初期値-限界値)}×100 (式2)
ここで、現在値はS404で算出された値であり、限界値は
図5のS110で算出された値である。この爪残存率は、現在値が初期値である場合は100%となり、現在値が減少するに従い、爪残存率の値が減っていき、現在値が限界値まで達すると0%となる。これにより、爪がどの程度残っているかが分かることになる。
【0068】
次に、爪残存率が0%に到達しているか否かを判定する(S406)。ここでは爪の摩耗判定(状態判定)を行うことになる。S405で算出された爪残存率が0%に到達していれば(すなわち0%以下になれば)、S408へ行き、到達していなければS407へ行く。
【0069】
S407では、爪残存率(%)の出力を行う。ここでの出力は、表示部31で行わせる。表示部31では、爪残存率(%)を数値、グラフ、図等の少なくとも1つ又は複数で表すことで、爪の残存の度合いを作業者に知らせることができる。その後は、S402へ戻る。
【0070】
S408では、摩耗判定出力を行う。これは、
図6で説明したS206と同様であとともに、爪残存率が0%に到達していることを出力できる。S408で処理が終了する(S409)。なお、爪残存率が0%に到達している場合は、現在値が限界値以下になる場合に相当する。
【0071】
(摩耗判定の第4の例)
図9は、本発明の農作業機用爪監視システムの摩耗判定の第4の例を示す第1のフローチャートである。
図10は、本発明の農作業機用爪監視システムの摩耗判定の第4の例を示す第2のフローチャートである。ここでは、
図1の演算部21による処理を示している。
【0072】
図9で示されるS501~S507は、爪の使用時間を測定して出力するための処理である。
【0073】
電源が入ると(S501)、作業中であるか否かを判定する(S502)。ここで農作業機2が作業中であると判定した場合は次のS503へ行き、農作業機2が作業中でないと判定した場合はS502の判定を再び行う。次にS502の作業中であるか否かの判定の例について説明する。
【0074】
1つ目の例は、取得したトルク値が予め定めた所定以上のトルク値である場合に作業中であると判定できる。これは、作業中は所定以上のトルク値がかかっていることが想定されるからである。ここでのトルク値は、トラクタ制御部11から入力したPTOトルク値、又は、作業機センサ部26から入力したトルク値を用いることができる。
【0075】
2つ目の例は、農作業機2が所定高さ以下に下におろした状態の場合に作業中であると判定される。これは、作業中は農作業機2を所定高さ以下に下におろして圃場への作業を行うことが想定されるからである。この状態の検出は、トラクタ制御部11からの情報によりロワーリンク16(
図4)の上下方向の位置を所定以下に下げたことを検出した場合に検出できる。また、前後方向の角度を検知できる作業機センサ部26のセンサにより農作業機2の前方向の角度が所定以下になったことを検出した場合等があげられる。センサの例としては、加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)、傾斜センサ、地磁気センサ等があげられる。
【0076】
3つ目の例は、農作業機2の振動が所定以上である場合があげられる。これは、作業中は、例えば農作業機2の爪が圃場の土に接触して抵抗を受ける等により、農作業機2が所定以上振動することが想定されるからである。この状態の検出は振動を検知できる作業機センサ部26のセンサにより農作業機2の振動の値が所定以上と想定される場合を検出できる。振動の値としては、振動における、振幅値、加速度値、速度値、振動数等があげられる。センサの例としては、加速度センサ、角速度センサ、振動センサ等があげられる。
【0077】
上述した3つの例は2以上を組み合わせて、より正確な判定を行ってもよい。例えば、1つ目の例と2つ目の例の組み合わせであれば、作業機センサ部26を設けなくても、トラクタ制御部11からの情報のみで作業中であるか否かを判定することができる。
【0078】
S503では、信号入力時間の積算を行う。すなわち、作業中の時間をカウントしていき、この時間を積算していく処理を行う。このことで、作業をしていないと想定される時間を省いて、より正確な作業時間(すなわち爪の使用時間)を測定することができる。
【0079】
次に、使用時間の記録を行う(S504)。ここでは、S503で積算した時間である使用時間を記録部22に記録する。
【0080】
次に、使用時間のリセットを行うか否かを判定する(S505)。ここでのリセットは、操作部32からリセットのための操作信号を入力したか否かにより判定できる。例えば、操作部32のリセットボタンを触れた又は押したこと等による操作信号の入力がある場合は、リセットを行う等である。使用時間のリセットを行う場合は、使用時間を0(h)として、0を出力し(S506)、S502へ戻る。このことで、改めて使用時間が0から算出されていく。また、使用時間のリセットを行わない場合は、S507へ行く。
【0081】
S507では、データ出力を行う。ここでの出力は、算出された使用時間を制御部23や入出力部24を通して表示部31に出力する。表示部31では、入力されたデータに基づき、使用時間を表示画面の表示形式に合わせて表示させる。さらに、使用時間はS605へ出力される。その後S502へ戻る。
【0082】
図10で示されるS601~S610は、使用可能時間を算出すると共に摩耗判定を行い出力する処理である。
【0083】
S601~S604は、
図6で説明したS201~S204と同様である。
【0084】
次のS605では、使用時間のデータを入力しているか否かを判定する。ここでの使用時間は、
図9のS507で出力された使用時間である。この使用時間が算出されていた場合は自動で入力することができる。使用時間のデータを入力していると判定した場合はS606へ行き、入力していないと判定した場合はS605のままとなる。
【0085】
S606では、爪の使用可能時間の算出を行う。使用可能時間は、「使用時間」、「初期値」、「現在値」、「限界値」を用いて以下の式で算出可能である。
使用可能時間(h)=
{(現在値-限界値)×使用時間}/(初期値-現在値) (式3)
ここで、現在値はS604で算出された値であり、限界値は
図5のS110で算出された値である。また、使用時間はS605で入力された現在までの爪の使用時間である。使用可能時間は、爪が限界値まで使用できる残りの時間を計算したものである。現在値が限界値まで達すると使用可能時間が0時間(h)となる。
【0086】
上記式3の算出について説明する。現在使用している爪について、今までの「使用時間」によるトルクの減少分が「初期値-現在値」となる。そして、「全体使用時間」によるトルクの減少分が「初期値-限界値」となる。ここで、トルクの減少分に対する使用時間が比例する場合、『「使用時間」:「初期値-現在値」=「全体使用時間」:「初期値-限界値」』となり、これから全体使用時間は以下のように求められる。
全体使用時間={(初期値-限界値)/(初期値-現在値)}×使用時間 (式4)
ここで、「使用可能時間」は、「全体使用時間-使用時間」であるので、これに式4を代入して整理すると上記式3が算出される。
【0087】
次に、使用可能時間が0(h)に到達しているか否かを判定する(S607)。ここでは爪の摩耗判定(状態判定)を行うことになる。S606で算出された爪の使用可能時間(爪残存時間)が0(h)に到達していれば(すなわち0(h)以下になれば)、S609へ行き、到達していなければS608へ行く。
【0088】
S608では、使用可能時間(h)の出力を行う。ここでの出力は、表示部31で行わせる。表示部31では、使用可能時間を数値、グラフ、図等の少なくとも1つ又は複数で表すことで、爪の残りの使用可能時間を作業者に知らせることができる。その後は、S602へ戻る。
【0089】
S609では、摩耗判定出力を行う。これは、
図6で説明したS206と同様であるとともに、使用可能時間が0(h)に到達していることを出力できる。S609で処理が終了する(S610)。なお、使用可能時間が0(h)に到達している場合は、現在値が限界値以下になる場合に相当する。
【0090】
図11は、本発明の農作業機用爪監視システムにおける表示部及び操作部の例を示す図である。
【0091】
(表示操作部の例)
図11では、
図1で示した、表示部31と操作部32を一体に構成した表示操作部40の具体例を示している。表示操作部40は、遠隔で無線通信できる機能を有し持ち運び可能な構成であり、例えば、トラクタ1の運転席近傍に配置して表示内容を確認することができる。ここで、表示操作部40の表示画面40aはタッチパネルで構成されている。この場合の表示操作部40としては、例えば、タッチパネル機能を有する汎用のスマートフォンやタブレット型コンピュータを適用でき、ここにアプリケーションを導入することで、
図11で示す表示や操作が実現可能となる。
【0092】
表示操作部40の表示画面40aには、ODO表示41、TRIP表示42、リセット表示43が表示されている。
図11の例では、これらの表示は表示画面40aの上部で横方向に並んで表示されている。さらに、表示画面40aには、爪摩耗進度表示46、爪残存率表示47が表示されている。これらの表示は表示画面40aの下部で横方向に並んで爪状態表示45として枠内に表示されている。
【0093】
ODO表示41は、初期からの積算時間が表示される。これは、
図9のS501~S507で、リセットをしない場合の積算時間により算出できる。積算時間は、演算部21で演算されその情報が、制御部23、入出力部24を介して表示操作部40へ無線送信されて、ここに表示される。
図11の表示ではHR(時間)の単位で表示されている。
【0094】
TRIP表示42は、
図9のS501~507の処理で算出された積算時間が表示される。ここではリセット機能を有するため、前回にリセットされた時からの合計の積算時間がTRIP表示42で表示される。積算時間は、演算部21で演算されその情報が、制御部23、入出力部24を介して表示操作部40へ無線送信されて、ここに表示される。
図11の表示ではHR(時間)の単位で表示されている。
【0095】
リセット表示43は、操作部32のリセットスイッチに相当し、リセット操作するための表示である。リセット表示43に触れると、その情報は、無線送信により、入出力部24、制御部23を介して演算部21へ送られる。このとき、
図9で示したS505、S506のリセット処理が行われて、積算時間が0となり、再び時間の積算が開始される。このため、リセット表示43のリセット操作を行うとTRIP表示42の表示が一度、0になる。さらに、このリセット操作により、
図5で示したS103のリセット処理が行われる。
【0096】
爪摩耗進度表示46は、
図7のS305で算出された摩耗進度が表示される。摩耗進度は、演算部21で演算されその情報が、制御部23、入出力部24を介して表示操作部40へ無線送信されて、ここに表示される。
図11の表示では、目盛りによる表示であり、摩耗が進むに従い、色を変える又は目盛りを消す等して、目盛りが段階的に減っていくことを示している。また、最後の目盛り部分には爪交換表示46aが文字で表示され、爪交換が必要なことが分かるようになっている。
【0097】
爪残存率表示47は、
図8のS405で算出された爪残存率が表示される。爪残存率は、演算部21で演算されその情報が、制御部23、入出力部24を介して表示操作部40へ無線送信されて、ここに表示される。
図11の表示では、数字(%)による表示である。
【0098】
また、
図11において、ODO表示41、TRIP表示42、リセット表示43の下には、水平状態表示50と深さ状態表示60が横方向に並んで表示されている。これらは、農作業機2の状態を表示するものである。これらの状態表示のために、トラクタ制御部11又は作業機センサ部26からの情報を用いる。水平状態表示50であれば、トラクタ制御部11から左右のロワーリンク16(
図4)の高低差の情報や、作業機センサ部26から左右の傾きの情報を用いることができる。深さ状態表示60であれば、トラクタ制御部11からロワーリンク16の上下方向の位置の情報や、作業機センサ部26からの前後方向の傾きの情報等を用いることができる。
【0099】
水平状態表示50では、農作業機2の水平に対する左右方向の傾き状態を示しており、上部にタイトル表示51(
図11では「水平」)、下部には基準設定表示52とその横側に設定解除表示53が表示されている。基準設定表示52に触れると現在の傾きを水平の基準とする処理がされ、設定解除表示53に触れると現在の水平基準が解除される処理がされる。水平状態表示50のブロックの範囲を示す枠表示54の内側には、上側に図表示56がその下側に状態表示58が表示されている。図表示56は、図又は絵で農作業機2の水平に対する現在の傾き状態を表示するものである。状態表示58は、数値と目盛りの組み合わせにより水平に対する現在の傾き状態を分かり易く表示するものである。
【0100】
深さ状態表示60では、農作業機2の作業深さの状態を示しており、上部にタイトル表示61(
図11では「深さ」)、下部には基準設定表示62とその横側に設定解除表示63が表示されている。基準設定表示62に触れると現在の作業深さを基準とする処理がされ、設定解除表示63に触れると現在の作業深さの基準が解除される処理がされる。深さ状態表示60のブロックの範囲を示す枠表示64内には、左側に図表示66が右側に状態表示68が表示されている。図表示66は、図又は絵で農作業機2の現在の作業深さの状態を表示するものである。状態表示68は、数値と目盛りの組み合わせにより現在の作業深さの状態を分かり易く表示するものである。
【0101】
(効果)
このように、本発明の実施形態では、トルク値を用いて農作業機2における爪の摩耗状態を算出することで、爪の状態を的確に監視することができる。さらに、作業条件をふまえた補正を行うことでより正確に爪の摩耗状態を算出することができる。さらに、爪の摩耗状態の情報を出力して表示部31で表示することで、作業者は爪の状態を手元で確認することが可能となる。さらに、爪の摩耗が所定以上進んだ場合に、作業者に報知を行うことで、作業者は爪の交換を的確に行うことができる。また、爪の摩耗状態は、摩耗進度、爪残存率、使用可能時間等の多様な情報として出力され、作業者は所望の表示により爪の状態を把握できると共に、多角的に判断することも可能となる。また、操作部32により、遠隔で限界係数等の設定値を設定することができ、作業者の意向に沿った摩耗判定等の処理を行うことが可能となる。また、爪の脱落や破損した場合もトルク値が下がることが想定されるため、これらについても爪の摩耗と同様に監視することができる。
【0102】
また、上記の爪の状態は、トラクタ制御部11からの情報のみで対応することが可能であり、作業機センサ部26を省略して、コストを抑えることで可能となる。また、上記の爪の状態は、作業機センサ部26からの情報のみで対応することも可能であり、トラクタ制御部11からの出力がないトラクタにも対応することが可能となる。
【0103】
また、
図11で示したように、表示部31と操作部32を表示操作部40として、タッチパネルを使用することにより、扱い易くなると共に、汎用のスマートフォンやタブレット型コンピュータの使用により、アプリケーションのみの適用で構成することができ、コストを抑えることができる。また、ODO表示41、TRIP表示42、水平状態表示50、深さ状態表示60等と併せて、爪の状態を表示させることで、作業者は多角的に農作業機2の状態を把握することができる。
【0104】
以上の様に、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、上述した以外の様々な変形例も含まれる。例えば、上記した実施形態に設けられた全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を削除したり、他の構成に置き換えたり、あるいはまた、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
【0105】
例えば、上記実施形態では、農作業機の例として、ロータリー作業機100の例を示したが、本発明は、これ以外に、例えば、代掻き作業機、畦塗り機、施肥播種機、施肥機、草刈り機等のトラクタに装着する農作業機に適用することが可能である。
【0106】
また、
図5のS103において、操作によるリセットについて説明したが、これ以外に自動でリセットをする機能を備えていてもよい。例えば、
図6~9で算出される現在値が、所定以上、上がった場合等は、爪交換をしたと想定してリセットの自動判定ができる。
【0107】
また、
図5のS106において、初期値は、実際のトルクデータにより正確な値を設定できるが、トルクデータを取得出来ない場合等は予め記録した標準値を用いてもよい。
【0108】
また
図6のS206、S308、S408、S608では、摩耗判定出力について説明したが、摩耗以外の爪の脱落や破損した場合もトルクが下がることが想定されるため、爪の摩耗判定は、爪の状態判定とすることができる。
【0109】
また、
図7の摩耗進度、
図8の爪残存率、
図10の使用可能時間は、一度の処理でそれぞれ算出してもよい。また、これらは、表示部31や表示操作部40に並列的に表示させてもよい。また、操作部32や表示操作部40に備える切り換えスイッチ等を用いて1つの表示範囲でこれらの表示を切り替える方式でも適用可能である。
【0110】
また、
図7の摩耗進度、
図8の爪残存率、
図10の使用可能時間の計算は、爪の摩耗度合いに比例してトルクの現在値が減少することを前提として行っている。しかし、実際には、完全な比例でない場合も想定されるため補正を行ってもよい。補正は、予め実験などで、現在値の減少分に対する爪の摩耗度合の進展等の関係等を決定しておくことで、係数や関数を決めて補正することが可能である。
【0111】
また、制御ボックス20は、農作業機2に備えることを説明したが、有線接続する等してトラクタ1側に備えることも可能である。
【0112】
また、表示部31の表示による報知以外に、音による報知を行ってもよい。例えば、摩耗判定出力(S206、S308、S408、S608)がされた場合、音や音声により摩耗が限界まで進んでいること等を報知する。これらの機能は表示部31に設けてもいいし、別に設けても良い。
【0113】
また、
図11では表示操作部40について説明したが、これと同様の表示内容をトラクタ1に備える表示装置に表示をさせてもよい。この場合、データは演算部21から制御部23、入出力部24を介して表示装置に送られる。トラクタ1に備える表示装置ではアプリケーションを導入することでこれらのデータに基づく表示や操作ができる。
【0114】
また、上記実施形態で説明した演算部21で算出された情報は、制御ボックス20の入出力部24、又は、表示操作部40等を介して、別に設けられたサーバー等にインターネットを介するなどして送信され、そこで農作業機ごとに管理することも可能である。ここでは、農作業機ごとのデータが集約される。これにより、顧客が所有する農作業機ごとにメンテナンスの管理が可能となると共に、農作業機ごとの使用データを蓄積して今後の開発に活用すること等が可能となる。例えば、ロータリー作業機100であれば、耕耘爪132の交換時期等を顧客に知らせることが可能となる。また、これらの使用状況についてデータを蓄積することが可能となる。
【符号の説明】
【0115】
1 トラクタ
2 農作業機
11 トラクタ制御部
16 ロワーリンク
20 制御ボックス
21 演算部
22 記録部
23 制御部
24 入出力部
26 作業機センサ部
31 表示部
32 操作部
40 表示操作部
45 爪状態表示
46 爪摩耗進度表示
47 爪残存率表示
100 ロータリー作業機
132 耕耘爪