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特許7262114顕微鏡、顕微鏡で試料を撮像する方法、プログラム、および制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】顕微鏡、顕微鏡で試料を撮像する方法、プログラム、および制御装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20230414BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20230414BHJP
   G02B 21/24 20060101ALI20230414BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20230414BHJP
【FI】
G02B21/36
G02B21/06
G02B21/24
G02B7/28 J
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019137924
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021021823
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 泰己
(72)【発明者】
【氏名】松本 桂彦
(72)【発明者】
【氏名】三谷 智樹
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-004777(JP,A)
【文献】特表2014-530387(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108072970(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103743714(CN,A)
【文献】特表2018-517178(JP,A)
【文献】特表2012-523583(JP,A)
【文献】特開2014-081417(JP,A)
【文献】特開2016-126274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
G02B 7/28 - 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズの光軸方向に交差する方向から試料にシート状の光を照射する照射光学系と、
前記試料と前記対物レンズとを前記光軸方向に相対的に移動する移動部と、
前記対物レンズの像光を撮影する撮像部と、
前記撮像部の露光中に前記移動部による前記光軸方向の移動を継続するよう制御する制御部と
前記シート状の光を前記方向に予め定められた振幅で振動させる振動制御部と、を備え、
前記撮像部は、前記シート状の光が前記振動の予め定められた複数の位置にある場合の複数の画像を取得し、
前記制御部は、前記撮像部が取得した前記複数の画像の合焦度を比較して、当該比較結果に基づいて前記シート状の光の振動中心を移動する、顕微鏡。
【請求項2】
前記移動部による前記移動の一回の露光時間あたりの距離は、前記シート状の光の前記光軸方向におけるガウシアン分布の半値幅に予め定められた値を掛けて得られる値以下である、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記予め定められた値は1.3である、請求項2に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記予め定められた値は0.6である、請求項2に記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記移動部は、前記撮像部による複数回の撮像における一の撮像から終わりの撮像までの撮像期間中に等速で移動する、請求項1から4のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記撮像部による一の撮像の露光開始から次の撮像の露光開始までの時間に占める前記露光時間の割合は、予め定められた割合以上である、請求項1から5のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項7】
前記予め定められた振幅は、前記シート状の光の前記光軸方向におけるガウシアン分布の半値幅の5%以上、100%以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項8】
前記制御部は、前記複数の画像のうち、時間的に連続した2枚の画像を比較する、請求項1から7のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項9】
前記撮像部は、前記シート状の光が前記振動の両端にある場合の時間的に連続した複数の画像を取得し、
前記制御部は、前記複数の画像を比較した結果、前記振動の一端側で取得した画像が前記振動の他端側で取得した画像よりも焦点が合っている画像である場合には、合焦評価値をカウントアップし、前記振動の前記他端側で取得した画像が前記振幅の前記一端側で取得した画像よりも焦点が合っている画像である場合には、前記合焦評価値をカウントダウンする制御を行い、
前記合焦評価値が予め定められた値を超えた場合に、前記シート状の光の前記振動中心を移動する、請求項1から8のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項10】
前記制御部は、前記複数の画像のそれぞれについて離散コサイン変換、離散フーリエ変換、離散ウェーブレット変換、ベイズスペクトラルエントロピー、ソーベルフィルタ、およびキャニー法のいずれか一つを用いて複数の画像を比較する、請求項1から9のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項11】
前記制御部は、前記比較の対象である前記複数の画像のそれぞれを複数の領域に分割し、前記分割した前記複数の領域のそれぞれについてノルムを算出し、前記複数の領域のうち、前記算出されたノルムの値が高い複数の領域を用いて、前記複数の画像を比較する、請求項1から9のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項12】
対物レンズの光軸方向に交差する方向から試料にシート状の光を照射する照射光学系と、
前記試料と前記対物レンズとを前記光軸方向に相対的に移動する移動部と、
前記対物レンズの像光を撮影する撮像部と、
前記撮像部の露光中に前記移動部による前記光軸方向の移動を継続するよう制御する制御部と、
前記シート状の光を前記方向に予め定められた振幅で振動させる振動制御部と、を備え、
前記撮像部は、前記シート状の光が前記振動の予め定められた複数の位置にある場合の複数の画像を取得し、
前記制御部は、前記撮像部が取得した前記複数の画像の合焦度を比較して、前記対物レンズの焦点位置を移動させる、顕微鏡。
【請求項13】
前記振動制御部は、ガルバノミラーを備える、請求項1から12のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項14】
対物レンズの光軸方向に交差する方向から試料にシート状の光を照射する照射光学系と、
前記試料と前記対物レンズとを前記光軸方向に相対的に移動する移動部と、
前記対物レンズの像光を撮影する撮像部と、
前記撮像部の露光中に前記移動部による前記光軸方向の移動を継続するよう制御する制御部と、
前記対物レンズを前記方向に予め定められた振幅で振動させる第2の振動制御部と、を備え
前記撮像部は、前記対物レンズが前記振動の予め定められた複数の位置にある場合の複数の画像を取得し、
前記制御部は、前記撮像部が取得した前記複数の画像の合焦度を比較して、前記対物レンズの焦点位置を移動させる、顕微鏡。
【請求項15】
顕微鏡で試料を撮像する方法であって、
対物レンズの光軸方向に交差する方向から前記試料にシート状の光を照射する照射ステップと、
前記試料と前記対物レンズとを前記光軸方向に相対的に移動する移動ステップと、
前記対物レンズの像光を撮影する撮像ステップと、
前記撮像ステップの露光中に前記移動ステップによる前記光軸方向の移動を継続するよう制御する制御ステップと
前記シート状の光を前記方向に予め定められた振幅で振動させる振動制御ステップと、を備え、
前記撮像ステップは、前記シート状の光が前記振動の予め定められた複数の位置にある場合の複数の画像を取得し、
前記制御ステップは、前記撮像ステップで取得した前記複数の画像の合焦度を比較して、当該比較結果に基づいて前記シート状の光の振動中心を移動する、方法。
【請求項16】
対物レンズの光軸方向に交差する方向から試料にシート状の光を照射する照射光学系と、
前記試料と前記対物レンズとを前記光軸方向に相対的に移動する移動部と、
前記対物レンズの像光を撮影する撮像部と、
を備える顕微鏡を制御するコンピュータのプログラムであって、
上記コンピュータに、前記撮像部の露光中に前記移動部による前記光軸方向の移動を継続するよう制御するステップと、
前記シート状の光を前記方向に予め定められた振幅で振動させる振動制御ステップと、
前記撮像部が前記シート状の光が前記振動の予め定められた複数の位置にある場合の複数の画像を取得するステップと、を実行させ、
前記制御するステップは、前記撮像部が取得した前記複数の画像の合焦度を比較して、当該比較結果に基づいて前記シート状の光の振動中心を移動する、プログラム。
【請求項17】
対物レンズの光軸方向に交差する方向から試料にシート状の光を照射する照射光学系と、
前記試料と前記対物レンズとを前記光軸方向に相対的に移動する移動部と、
前記対物レンズの像光を撮影する撮像部と、
前記シート状の光を前記方向に予め定められた振幅で振動させる振動制御部と、
を備える顕微鏡を制御する制御装置であって、
前記撮像部は、前記シート状の光が前記振動の予め定められた複数の位置にある場合の複数の画像を取得し、
前記制御装置は、
前記撮像部の露光中に前記移動部による前記光軸方向の移動を継続するよう制御し、
前記撮像部が取得した前記複数の画像の合焦度を比較して、当該比較結果に基づいて前記シート状の光の振動中心を移動する、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡、顕微鏡で試料を撮像する方法、プログラム、および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステージ上に載置した試料の側方からシート状の光を照射して試料からの励起光を撮像することで試料の複数の断層像を取得し、試料の3次元立体像を生成することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2018-017970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、試料の3次元立体像を生成するためにはステージを移動させて複数回撮像する必要があり、ステージを移動させている間は露光できなかったため、ステージの移動時間が律速となり、複数回撮像の全体の速度を上げることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の一態様においては、顕微鏡が提供される。顕微鏡は、対物レンズの光軸方向に交差する方向から試料にシート状の光を照射する照射光学系と、試料と対物レンズとを光軸方向に相対的に移動する移動部と、対物レンズの像光を撮影する撮像部と、撮像部の露光中に移動部による光軸方向の移動を継続するよう制御する制御部と、を備える。
【0005】
本発明の一態様においては、顕微鏡で試料を撮像する方法が提供される。上記方法は、 対物レンズの光軸方向に交差する方向から試料にシート状の光を照射する照射ステップと、試料と対物レンズとを光軸方向に相対的に移動する移動ステップと、対物レンズの像光を撮影する撮像ステップと、撮像部の露光中に移動部による光軸方向の移動を継続するよう制御する制御ステップと、を備える。
【0006】
本発明の一態様においては、プログラムが提供される。上記プログラムは、対物レンズの光軸方向に交差する方向から試料にシート状の光を照射する照射光学系と、試料と対物レンズとを光軸方向に相対的に移動する移動部と、対物レンズの像光を撮影する撮像部と、を備える顕微鏡を制御するコンピュータのプログラムであって、上記コンピュータに、撮像部の露光中に移動部による光軸方向の移動を継続するよう制御するステップを実行させる。
【0007】
本発明の一態様においては、制御装置が提供される。上記制御装置は、対物レンズの光軸方向に交差する方向から試料にシート状の光を照射する照射光学系と、試料と対物レンズとを光軸方向に相対的に移動する移動部と、対物レンズの像光を撮影する撮像部と、を備える顕微鏡を制御する制御装置であって、撮像部の露光中に移動部による光軸方向の移動を継続するよう制御する。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】光シート顕微鏡100の概略的な構成を示す図である。
図2】移動部70の概略的な構成を示す図である。
図3】(a)から(c)は、比較例1、実施例1、および実施例2における撮像の時系列を示す撮像サイクルを示す。
図4】シート状の光の振動中心を更新する処理を示すフローチャートである。
図5】(a)は、シート状の光の振動についての説明図であり、(b)は、シート状の光の振動と、時間経過との関係を示す図である。
図6】(a)から(d)は、画像比較部11による画像の合焦度の比較を説明するための図である。
図7】(a)および(b)は、シート状の光の振動中心202の更新を説明するための図である。
図8】イメージングスピード(fps)を比較するための図である。
図9】シート状の光の位置の、理想的な位置との乖離を説明するための図である。
図10】シート状の光の位置と、DCTSの関係について示す図である。
図11】本実施形態において画像の比較に用いた各設定値を示す図である。
図12】分割するブロックのサイズ(ピクセル)と、エラー(μm)との関係を示す図である。
図13】分割するブロックのサイズ(ピクセル)と、イメージングスピード(ms/image)との関係を示す図である。
図14】分割エリアの割合(%)と、エラー(μm)との関係を示す図である。
図15】シート状の光の振動の振幅(μm)と、エラー(μm)との関係を示す図である。
図16】振動制御部がシート状の光の振動中心を更新するための合焦評価値Eの閾値と、エラー(μm)との関係を示す図である。
図17】ブロックセレクションディスタンスの種類と、エラー(μm)および外れ値との関係を示す図である。
図18】ブロックセレクションオーダーと、エラー(μm)との関係を示す図である。
図19】本発明の複数の態様が全体的又は部分的に具現化されうるコンピュータの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る光シート顕微鏡100の概略的な構成を示す図である。光シート顕微鏡100は、制御部10と、撮像部21,22と、レーザ30と、レンズ群31と、フリップミラー32と、ガルバノミラー群33~38と、照明用対物レンズ41,42と、検出用対物レンズ50と、ステージ60と、移動部70と、ダイクロイックミラー80とを備える。なお、レーザ30と、レンズ群31と、フリップミラー32と、ガルバノミラー群33~38と、照明用対物レンズ41,42とが照射光学系を構成する。
【0012】
光シート顕微鏡100は、励起光であるシート状の光を検出用対物レンズ50の光軸に直交する方向から試料101に向けて照射し、試料101の蛍光色素から励起された蛍光を撮影することで試料101の画像を取得する。光シート顕微鏡100は、シート状の光を検出用対物レンズ50の光軸に沿って試料101に対して相対的に移動させながら撮像することで、試料101の複数の断層像を取得し、試料101の3次元立体像を得る。試料101は、例えば、蛍光色素により標識された生体細胞である。
【0013】
レーザ30から出射したレーザ光は、レンズ群31を通過して、フリップミラー32により光路Aと光路Bのふたつの光路に分けられる。光路Aに進んだレーザ光は、複数のミラー群およびレンズ群により、ガルバノミラー群33~35に導かれる。ガルバノミラー群33~35は、それぞれ軸回転用モータに接続されており、各軸を中心として回転することが可能である。
【0014】
ガルバノミラー34は、高速で走査されることにより実質的にシート状の光を形成するために用いられる。ここで、シート状の光とはシート形状の照明領域を有する照明光のことである。シート状の光は、試料101内で検出用対物レンズ50の光軸方向に薄く、光軸方向に直交する方向に厚い形状を有する。ガルバノミラー33はシート状の光のxy平面内においてレーザ光の向きを試料101を中心にy方向に高速で回旋させ、さまざまな方向から試料101に照明することで影の発生を抑えるために用いられる。ガルバノミラー35はシート状の光のz方向における位置を調整するために用いられる。
【0015】
光路Aのガルバノミラー群33~35によって形成されたシート状の光は、照明用対物レンズ41に入射する。照明用対物レンズ41は、検出用対物レンズ50の光軸と略直交する方向である+x方向側から試料101にシート状の光を照射する。
【0016】
光路Bに進んだレーザ光は、複数のミラー群およびレンズ群により、ガルバノミラー群36~38に導かれる。ガルバノミラー群36~38は、それぞれ軸回転用モータに接続されており、各軸を中心として回転することが可能である。
【0017】
ガルバノミラー36は、高速で走査されることにより実質的にシート状の光を形成するために用いられる。ガルバノミラー37はシート状の光のxy平面内においてレーザ光の向きを試料101を中心にy方向に高速で回旋させ、さまざまな方向から試料101に照明することで影の発生を抑えるために用いられる。ガルバノミラー38はシート状の光のz方向における位置を調整するために用いられる。
【0018】
光路Bのガルバノミラー群36~38によって形成されたシート状の光は、照明用対物レンズ42に入射する。照明用対物レンズ42は、検出用対物レンズ50の光軸と略直交する方向である-x方向側から試料101にシート状の光を照射する。以上のように、シート状の光が、+x方向側および-x方向側の双方から試料101に向けて照射されることにより、影のない画像を取得することができる。なお、シート状の光は+x方向側および-x方向側の片側から試料101に向けて照射されてもよい。
【0019】
ステージ60上には、試料101が載置される。シート状の光が+x方向側および-x方向側の双方から試料101に照射されることにより、試料101の蛍光色素からは励起された蛍光が出射する。検出用対物レンズ50で試料101からの励起光を撮影することにより、試料101の画像を取得する。
【0020】
ステージ60は、ステージ60を移動する移動部70と接続されており、移動部70によって移動される。移動部70は、撮像部21,22による複数回の撮像における一の撮像から終わりの撮像までの撮像期間中にステージ60を検出用対物レンズ50の光軸方向に平行な方向である±z方向に等速で移動させる。すなわち、撮像部21,22の露光中においてもステージ60のz方向の移動を継続する。ステージ60の移動速度は例えば、90.9(μ m/s)である。移動部70は、ステージ60を検出用対物レンズ50の光軸方向に垂直な方向であるx方向およびy方向に移動、または回転することも可能である。
【0021】
ダイクロイックミラー80は、試料101の蛍光色素が異なる波長の蛍光を出射する場合に、第1の波長の光を反射し、第2の波長の光を透過することで、第1の波長の光と第2の波長の光とを分離する。第1の波長の光は、ダイクロイックミラー80により反射され、フィルタを介して撮像部21に入射する。第2の波長の光は、ダイクロイックミラー80を透過し、フィルタを介して撮像部22に入射する。本実施形態では、2つの撮像部21,22を用いて2波長の同時イメージングを行う。
【0022】
撮像部21,22は、シート状の光が照射された試料101の像を撮影し、画像を生成する。撮像部21,22は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの2次元イメージセンサを備えたデジタルカメラである。撮像部21,22は、検出用対物レンズ50の前側焦点位置が受光面に一致するように配置されている。
【0023】
制御部10は、画像比較部11および振動制御部12を備える。画像比較部11には、撮像部21,22により生成された試料101の複数の画像が入力される。画像比較部11は、入力された試料101の複数の画像を比較して、比較結果を振動制御部12に出力する。振動制御部12は、画像比較部11から受け取った比較結果に基づいて、ガルバノミラー群33~38を制御し、シート状の光が照射されるz方向の位置を調整する。また、振動制御部12は、ガルバノミラー群33~38を制御することによって、シート状の光をz方向に微小に振動させる。
【0024】
図2は、移動部70の概略的な構成を示す図である。移動部70は、ステージ60をx方向に移動するためのx方向移動部71と、ステージ60をy方向に移動するためのy方向移動部72と、ステージ60をz方向に移動するためのz方向移動部73と、ステージ60を回転させるための回転ステージ74とを備える。検出用対物レンズ50は、ステージ60上に載置された試料101の-z方向側に設置される。照明用対物レンズ41,42は、試料101の+x方向側と-x方向側に設置される。
【0025】
ここで、撮像部21,22による露光中にステージ60を移動することによって生じる画像の被写体ぶれを低減するため、ステージ60のz方向への移動速度は所定速度以下であることが望ましい。具体的には、撮像部21,22による一回の露光時間あたりのステージ60の移動距離は、シート状の光のz方向におけるガウシアン分布の半値幅に予め定められた値を掛けて得られる値以下であることが好ましい。予め定められた値は1.3であることが好ましく、0.6であることがより好ましい。
【0026】
図3(a)から(c)は、比較例1、実施例1、および実施例2における撮像の時系列を示す撮像サイクルを示す。図3(a)は、比較例1における撮像サイクルを示しており、図3(b)および(c)は、本実施形態における実施例1および実施例2における撮像サイクルを示している。なお、図3(c)は、オートフォーカスオプションを使用する場合について示している。図3(a)から(c)には、撮像サイクルの内の、1サイクルが示される。1サイクルとは、光シート顕微鏡100が取得する試料101の複数の断層像のうち、ひとつの断層像を取得するためのサイクルのことをいい、言い換えれば、撮像部21,22による一の撮像の露光開始から次の撮像の露光開始までの時間のことをいう。
【0027】
図3(a)に示すように、比較例1ではステージ60の移動が完了してから撮像部21,22による露光を行っており、撮像部21,22の露光中にステージ60の移動を行っていない。したがって、比較例1における撮像の1サイクルに要する時間は、撮像部21,22による露光時間の「50(ms)」と、ステージ60の移動時間の「150(ms)」とを合わせた、「200(ms)」である。
【0028】
これに対して、図3(b)および(c)に示す実施例1および実施例2における撮像サイクルでは、移動部70は複数回の撮像期間中にステージ60を等速で移動させており、撮像部21,22の露光中にもステージ60の移動を行っている。図3(b)に示すように、実施例1における撮像の1サイクルは露光時間の「50(ms)」のみである。図3(c)に示すように、実施例2における撮像の1サイクルは、露光時間の「50(ms)」と、次の撮像に向けてシート状の光の位置を移動するための時間「5(ms)」とを合わせた、「55(ms)」である。
【0029】
図3(a)に示すように、比較例1において、撮像の1サイクルに占める一回の露光時間の割合は、25%である。これに対して、図3(b)および(c)に示すように、実施例1における撮像の1サイクルに占める一回の露光時間の割合は100%であり、実施例2における割合は90%以上である。このように、本実施形態では、撮像部21,22の露光中にステージ60の移動を行っているため、撮像の1サイクルに占める一回の露光時間の割合を増やすことにより、撮像の1サイクルに要する時間を大幅に短縮することができる。したがって、試料101の複数の断層像を取得するために必要な撮像時間を大幅に短縮することができる。
【0030】
なお、撮像部21,22の露光中にステージ60を移動させて撮像を行うことにより、試料101内部の構造の違いや、周囲のゲルやオイルとの微妙な屈折率の違いにより、シート状の光の位置と検出用対物レンズ50の焦点位置がずれてしまい、取得した画像にピンボケした領域ができる場合がある。そこで、本実施形態では、肉眼では判別できないほど微小な距離だけシート状の光の位置を振動させながら複数の画像を撮像し続け、撮像と並行して取得した複数の画像についていずれがフォーカスのあった画像であるかの判別を行い、より良い焦点位置にシート状の光の位置を移動し、常時更新する制御を行う。これにより、ステージ60を移動させながら撮像を行う場合であっても、常にフォーカスのあった画像を取得し続けることができる。以下、シート状の光の位置を移動させるための具体的な方法について説明する。
【0031】
図4は、シート状の光の位置を更新する処理を示すフローチャートである。図4に示すように、振動制御部12がシート状の光を検出用対物レンズ50の光軸方向に予め定められた振幅で振動させ、シート状の光が振動の両端にある場合の画像を撮像部21,22によって取得する(S01)。本実施形態において、予め定められた振幅は、1.4μmである。なお、予め定められた振幅は上記値に限定されず、例えば、シート状の光のz方向におけるガウシアン分布の半値幅の5%以上、100%以下であってよい。
【0032】
図5(a)は、シート状の光の振動についての説明図である。図5(a)の横軸は、シート状の光のz方向における位置を示している。図5(a)に示すように、シート状の光を検出用対物レンズ50の光軸方向であるz方向に予め定められた振幅で振動させた結果、振動の両端側に二つのシート状の光(Sheet1およびSheet2)が照射される。
【0033】
図5(b)は、シート状の光の振動と、時間経過との関係を示す図である。図5(b)の縦軸はz軸を示しており、横軸は時間(t)を示している。図5(b)における実線201はシート状の光の位置を示しており、一点鎖線202はシート状の光の振動中心を示しており、破線203は検出用対物レンズ50の焦点位置を示している。なお、破線203は、シート状の光の理想的な位置であるともいえる。
【0034】
図5(b)に示すように、振動制御部12がz方向にシート状の光を1.4μmだけ振動させ、撮像部21,22は、シート状の光が振動の両端にある場合の時間的に連続した複数の画像を取得する。Image1は、シート状の光が振動の-z方向側の端部(Sheet1)にあるときに取得した画像であり、Image2は、シート状の光が振動の+z方向側の端部(Sheet2)にあるときに取得した画像である。図5(b)の例では、検出用対物レンズ50の焦点位置を示す破線203がImage2寄りにあるため、Image1とImage2の合焦度を比較した場合、Image2の合焦度の方が高いことが分かる。
【0035】
図4に戻り、画像比較部11は、取得された画像のうち時間的に連続した2枚の画像の合焦度を比較する(S02)。ここで、図5(a)および(b)におけるImage1の合焦度を合焦度Aとし、Image2の合焦度を合焦度Bとする。以下、画像比較部11が行う画像の合焦度の比較の方法について説明する。
【0036】
図6(a)から(d)は、画像比較部11による画像の合焦度の比較を説明するための図である。なお、図6(a)および(b)は、図4のステップS02に対応し、図6(c)は、図4のステップS03に対応し、図6(d)は、図4のステップS04およびS05に対応する。
【0037】
本実施形態において、画像比較部11は離散コサイン変換を用いて時間的に連続した2枚の画像の合焦度を比較する。図6(a)の段階において、画像比較部11は、Image1とImage2をそれぞれ複数のブロックに分割する。例えば、Image1およびImage2が2160×2560ピクセルの画像の場合、画像比較部11は、128×128ピクセルのブロックに分割する。その結果、Image1およびImage2は、320個のブロックに分割される。
【0038】
図6(b)の段階において、画像比較部11は、Image1およびImage2について、320個のブロックのノルムL2の値を演算し、ノルムL2の値が高いほうから予め定められた個数、例えば32個のブロック(全体の9.5%の領域)を選択する。比較部は、離散コサイン変換を用いて選択したそれぞれのブロックのDCTSスコア(the Shanon entropy of the normalized discrete cosine transform score)を演算する。本実施形態では、離散コサイン変換したDCT画像に対してノルムL2を計算することにより、DCT画像を正規化する。これにより、画像を比較する際に画像のインテンシティの違いによる影響を受けにくくすることができる。
【0039】
図6(c)の段階において、画像比較部11は、Image1およびImage2について、選択した全てのブロックのDCTSスコアを合計してDCTSスコアの合計値を算出する。画像比較部11は、Image1およびImage2のDCTSスコアの合計値を比較して、いずれの画像がよりフォーカスが合っている画像であるかを判定する。DCTSスコアの合計値が高いほど、フォーカスが合っている画像であることを示す。
【0040】
図6(d)の段階において、画像比較部11は、Image1およびImage2のDCTSスコアの合計値の比較の結果を、合焦評価値Eに反映する。本実施形態において、合焦評価値Eとは、シート状の光の振動中心202が理想的な位置203から乖離している度合いを示す値である。合焦評価値Eの絶対値が大きいほど、シート状の光の振動中心202が理想的な位置203から乖離していることを示す。合焦評価値Eは、始めはリセットされた状態にあり、0である。画像比較部11は、Image2のDCTSスコアがImage1のDCTSスコアよりも高い場合、合焦評価値Eをカウントアップし、+1とする。一方で、Image1のDCTSスコアがImage2のDCTSスコアよりも高い場合、合焦評価値Eをカウントダウンし、-1とする。
【0041】
図6に示す例では、Image1のDCTSスコアは0.00353であり、Image2のDCTSスコアは0.00356であるため、Image2のDCTSスコアがImage1のDCTSスコアよりも高い。したがって、Image2の方がよりフォーカスが合っている画像であり、合焦度A<合焦度Bである。この結果に基づいて、画像比較部11は、合焦評価値Eをカウントアップし、+1とする。
【0042】
図4に戻り、合焦度A<合焦度Bの場合(S03:YES)、画像比較部11は合焦評価値Eを「+1」カウントアップする(S04)。一方、合焦度A>合焦度Bの場合(S03:NO)、画像比較部11は合焦評価値Eを「-1」カウントダウンする(S05)。上記二つの画像の内、合焦度が高い画像を3次元立体像の生成に使用する。振動制御部12は、合焦評価値Eの絶対値が閾値以上となった場合(S06:YES)、シート状の光の振動中心202を更新する(S07)。振動制御部12は、合焦評価値Eの絶対値が閾値以上でない場合(S06:NO)、シート状の光の振動中心202を更新しない。本実施形態において、合焦評価値Eの閾値を「3」とするが、上記値に限定されず、任意に設定可能である。
【0043】
図7(a)および(b)は、シート状の光の振動中心202の更新を説明するための図である。図7(a)は、シート状の光の振動中心202の時間経過による変化を示す。図7(a)の横軸は時間(t)の経過を示しており、縦軸はz軸を示している。図7(a)において、実線はシート状の光の位置201を示しており、一点鎖線はシート状の光の振動中心202を示しており、破線は理想的なシート状の光の位置203を示している。
【0044】
図7(b)は、合焦評価値Eの時間経過による変化を示す。図7(b)の横軸は時間(t)の経過を示しており、縦軸は合焦評価値Eを示している。時刻t0において、合焦評価値Eはリセットされており、0である。
【0045】
画像比較部11は、時刻t1において、Image0とImage1の合焦度を比較して、Image1の合焦度が高いとの判定結果が出たことから、合焦評価値Eをカウントダウンし、-1とする。画像比較部11は、時刻t2において、Image1とImage2の合焦度を比較して、Image2の合焦度が高いとの判定結果が出たことから、合焦評価値Eをカウントアップし、0とする。画像比較部11は、時刻t3において、Image2とImage3の合焦度を比較して、Image2の合焦度が高いとの判定結果が出たことから、合焦評価値Eをカウントアップし、+1とする。
【0046】
画像比較部11は、時刻t4において、Image3とImage4の合焦度を比較して、Image4の合焦度が高いとの判定結果が出たことから、合焦評価値Eをカウントアップし、+2とする。画像比較部11は、時刻t5において、Image4とImage5の合焦度を比較して、Image4の合焦度が高いとの判定結果が出たことから、合焦評価値Eをカウントアップし、+3とする。画像比較部11による合焦度の判定結果および合焦評価値Eは、振動制御部12に送られる。振動制御部12は、時刻t6において、合焦評価値Eの絶対値が閾値である「3」以上となったことから、シート状の光の振動中心を移動する。合焦評価値Eの絶対値が閾値以上となると、画像比較部11は合焦評価値Eをリセットし、0とする。
【0047】
なお、振動制御部12によるシート状の光の振動中心202の移動は、よりフォーカスが合う方向(±z方向)に行われる。図7(a)において、振動制御部12は、合焦評価値Eが+3となった場合にはシート状の光の振動中心202を+z方向に移動し、合焦評価値Eが-3となった場合にはシート状の光の振動中心202を-z方向に移動する。本実施形態において、振動制御部12が移動するシート状の光の振動中心202の距離は、振動の振幅と同じ距離である1.4μmとする。しかしながら、振動制御部12が移動するシート状の光の振動中心202の距離は、任意に設定可能であり、例えば、振動の振幅の整数倍であってよい。
【0048】
図7(a)および(b)において、画像比較部11は、時刻t6以降も同様の処理を行う。時刻t7において、合焦評価値Eが-3となり、合焦評価値Eの絶対値が閾値以上となったことから、振動制御部12は、今度はシート状の光の振動中心202を-z方向に1.4μm移動し、合焦評価値Eをリセットする。図4におけるS01からS07までの処理は、試料101の撮像が終了するまで繰り返される(S08)。
【0049】
図8は、イメージングスピード(fps)を比較するための図である。なお、本実施形態においてイメージングスピードとは、試料101の複数の断層像を取得するための撮像の速度をいう。図8には、撮像部21,22による露光中にステージ60を移動させない比較例2~4におけるイメージングスピード(fps)と、撮像部21,22による露光中にステージ60を等速で移動させる本実施形態におけるイメージングスピード(fps)が示される。図8における縦軸はイメージングスピード(fps)を示しており、横軸は1/露光時間(s)を示している。
【0050】
図8における破線204はオートフォーカスオプションを使用しない実施例1(図3(b)参照)について示しており、実線205は、オートフォーカスオプションを使用する実施例2(図3(c)参照)について示しており、一点鎖線206はステージ60の移動時間が50msである比較例2について示しており、二点鎖線207はステージ60の移動時間が100msである比較例3について示しており、一点二鎖線208はステージ60の移動時間が150msである比較例1(図3(a)参照)について示している。
【0051】
図8に示すように、露光時間にもよるが、本実施形態におけるイメージングスピード(fps)は、比較例1~3におけるイメージングスピード(fps)のおよそ2倍から7倍に向上している。具体的には、露光時間が50msの場合、マウス全脳の3次元イメージングに要する時間が従来の24時間から5時間にまで短縮することが可能となった。また、明るい色素や蛍光タンパク質などを観察する場合は、露光時間を短縮できるため、さらに半分程度にまで時間を短縮することが可能である。
【0052】
図9は、シート状の光の位置の、理想的な位置との乖離を説明するための図である。図9において、点線209は実施例2におけるシート状の光の位置を示しており、長二点鎖線210はステージ60がz方向に1000μm移動するごとにオートフォーカス処理を行った場合の比較例4について示しており、長鎖線211は500μmごとにオートフォーカス処理を行った場合の比較例5について示しており、一点鎖線212は250μmごとにオートフォーカス処理を行った場合の比較例6について示しており、破線213は100μmごとにオートフォーカス処理を行った場合の比較例7について示しており、実線214は、シート状の光の理想的な位置について示している。
【0053】
図9に示すように、オートフォーカスの頻度が少ない比較例4~7は理想的な位置214から大きく外れることが多くなっているのに対して、実施例1ではシート状の光の位置209が理想的な位置214に概ね追従していることが分かる。したがって、本実施形態による調整方法を使用することで、ステージ60を移動させながら撮像した場合であっても常にフォーカスの合った画像を取得することができる。
【0054】
図10(a)および(b)は、シート状の光の位置と、DCTSの関係について示す図である。図10(a)および(b)には、シート状の光が特定の位置(Light-sheet position)にあるときに得られた画像のDCTS(Relative DCTS)が、試料101のz方向における位置(Depth方向)ごとに示されている。図10(a)は斜視図であり、図10(b)は上面図である。図10(a)および(b)に示すように、各z方向における位置ごとの画像の質(DCTS)は、最適位置を頂点とした1つの極大値をもつことが示されている。このように、各z方向における位置ごとの画像の質(DCTS)が単峰性となっていることから、各z方向における位置ごとに、どの2点間のDCTSの比較を行っても、最適位置のある方向を知ることができる。したがって、どのz方向の位置においても、任意の2か所のシート状の光によって得られる画像から、最適な合焦点位置を計算することができる。
【0055】
図11は、本実施形態において画像の比較に用いた各設定値を示す図である。(a)欄に示すように、本実施形態において、画像比較部11は比較する画像をそれぞれ「128×128ピクセル」のブロックに分割した。(b)欄に示すように、分割した複数のブロックの内、ノルムL2の値が高いほうから32個のブロック(全体の「9.5%」の領域)を選択して画像を比較した。(c)欄に示すように、振動制御部12が移動するシート状の光の振動中心202の距離は、「1.4μm」とした。
【0056】
(d)欄に示すように、振動制御部12がシート状の光の振動中心202の更新を行うための合焦評価値Eの閾値は、「3」とした。(e)欄に示すように、ブロックセレクションメソッドは、「ノルムL2」とした。(f)欄に示すように、ブロックセレクションオーダーはディセンディングとして、ノルムL2の値が高い方から選択した。なお、各設定値は上記値に限定されず、任意に変更することが可能である。以下、各設定値として上記値を用いることによる効果について説明する。
【0057】
図12は、分割するブロックのサイズ(ピクセル)と、エラー(μm)との関係を示す図である。図12の縦軸で示されたエラー(μm)は、シート状の光の理想的なz方向における位置203と、実際のシート状の光のz方向における位置201との誤差を示す。図12において、本実施形態で用いた数値(128ピクセル)についてはハッチングの四角で示している。図12に示すように、ブロックサイズが50~150(ピクセル)程度であるとエラー(μm)が少なくなることが分かる。
【0058】
図13は、分割するブロックのサイズ(ピクセル)と、80%以上の精度を出すために必要な最小計算時間(ms/image)との関係を示す図である。図13において、本実施形態で用いた数値(128)についてはハッチングの四角で示している。図13に示すように、ブロックサイズが128(ピクセル)であるときに、80%以上の精度を出すために必要な最小計算時間が短縮していることが分かる。
【0059】
図14は、分割エリアの割合(%)と、エラー(μm)との関係を示す図である。図14において、本実施形態で用いた数値(9.5%)についてはハッチングの四角で示している。図14に示すように、分析エリアの割合が5~20%程度である場合に、エラー(μm)が少なくなることが分かる。
【0060】
図15は、シート状の光の振動の振幅(μm)と、エラー(μm)との関係を示す図である。図15において、本実施形態で用いた数値(1.4μm)についてはハッチングの四角で示している。図15に示すように、振動の振幅が1~2μm程度である場合に、エラー(μm)が少なくなることが分かる。
【0061】
図16は、振動制御部12がシート状の光の振動中心202を更新するための合焦評価値Eの閾値と、エラー(μm)との関係を示す図である。図16において、本実施形態で用いた数値(3)についてはハッチングの四角で示している。図16に示すように、閾値が3~8である場合に、エラー(μm)が少なくなることが分かる。
【0062】
図17は、ブロックセレクションディスタンスの種類と、エラー(μm)および外れ値との関係を示す図である。図17において、本実施形態で用いた種類(ノルムL2)についてはハッチングの四角で示している。なお、図17において、ブロックセレクションオーダーはすべてディセンディング(値が高い方から選択)としている。図17に示すように、ブロックセレクションディスタンスとしてノルムL2を用いた場合に、ノルムL1を用いた場合と比較してエラー(μm)が少なくなることが分かる。また、ノルムL2を用いた場合では、MEANを用いた場合と比較して外れ値が小さいことが分かる。
【0063】
図18は、ブロックセレクションオーダーと、エラー(μm)との関係を示す図である。図18において、ブロックセレクションディスタンスはすべてノルムL2を用いている。図18に示すように、ブロックセレクションオーダーをディセンディングオーダー(値が高い方から選択)とした方が、アセンディングオーダー(値が低い方から選択)とした場合と比較してエラー(μm)が少なくなることが分かる。
【0064】
以上のように、本実施形態における光シート顕微鏡100によれば、撮像部21,22の露光中にステージ60の移動を行い、試料101を移動させながら撮像を行う。これにより、撮像の1サイクルに要する時間を大幅に短縮することができ、試料101の複数の断層像を取得するために必要な撮像時間を大幅に短縮することができる。
【0065】
本実施形態における光シート顕微鏡100によれば、撮像部21,22による一回の露光時間あたりのステージ60の移動距離は、シート状の光のz方向におけるガウシアン分布の半値幅に予め定められた値を掛けて得られる値以下である。これにより、撮像部21,22による露光中にステージ60を移動することによって生じる画像の被写体ぶれを低減することができる。
【0066】
本実施形態における光シート顕微鏡100によれば、シート状の光の位置を微小に振動させながら複数の画像を撮像し続け、撮像と並行して取得した複数の画像についていずれがフォーカスのあった画像であるかの判別を行い、より良い焦点位置にシート状の光の位置を移動する制御を行う。これにより、ステージ60を移動させながら撮像を行う場合であっても、常にフォーカスのあった画像を取得し続けることができる。
【0067】
[変形例1]
上記実施形態においては、振動制御部12がガルバノミラー群33~38を制御することによりシート状の光を振動させて複数の画像を取得し、複数の画像の合焦度を比較することによってシート状の光の位置を調整した。しかしながら、振動制御部12が、検出用対物レンズ50を振動させることによって、複数の画像を取得してもよい。この場合、振動制御部12は検出用対物レンズ50に接続されたピエゾステージを制御することによって、検出用対物レンズ50を振動させてもよい。
【0068】
[変形例2]
上記実施形態においては、撮像部21,22は、シート状の光が振動の両端にある場合の複数の画像を取得した。しかしながら、撮像部21,22は、シート状の光が振動の両端にある場合に限られず、振動内の予め定められた複数の位置にある場合の複数の画像を取得してもよい。
【0069】
[変形例3]
上記実施形態においては、画像比較部11は時間的に連続した2枚の画像を比較することによって画像の比較を行った。しかしながら、画像比較部11は時間的に連続しない複数の画像を比較してもよい。例えば、画像比較部11は図7(a)におけるImage1とImage4を比較してもよく、Image2とImage5を比較してもよい。
【0070】
[変形例4]
上記実施形態においては、画像比較部11は正規化離散コサイン変換のエントロピーを用いて画像の比較を行った。しかしながら、画像比較部11による画像の比較は公知の方法を用いてよく、例えば、離散フーリエ変換、離散ウェーブレット変換、ベイズスペクトラルエントロピー、ソーベルフィルタ、およびキャニー法のいずれかを用いてよい。
【0071】
[変形例5]
上記実施形態においては、ガルバノミラー33,36を走査することによりシート状の光を形成した。しかしながら、シート状の光は、例えば、シリンドリカルレンズによって形成してもよい。
【0072】
[変形例6]
上記実施形態においては、移動部70がステージ60を撮像期間中に等速で移動させることとしたが、移動部70によるステージ60の移動は等速でなくてもよい。移動部70による移動の速度は、例えば、段階的に変化させてもよい。また、移動部70による移動の速度は、試料101の性質などによって試料101の種類ごとに設定することが可能である。
【0073】
また、本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0074】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0075】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0076】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0077】
図19は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0078】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0079】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0080】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0081】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0082】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0083】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0084】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0085】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0086】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0088】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0089】
10 制御部、11 画像比較部、12 振動制御部、21,22 撮像部、30 レーザ、31 レンズ群、32 フリップミラー、33~38 ガルバノミラー群、41,42 照明用対物レンズ、50 検出用対物レンズ、60 ステージ、70 移動部、71 x方向移動部、72 y方向移動部、73 z方向移動部、74 回転ステージ、80 ダイクロイックミラー、100 光シート顕微鏡、2200 コンピュータ、2201 DVD-ROM、2210 ホストコントローラ、2212 CPU、2214 RAM、2216 グラフィックコントローラ、2218 ディスプレイデバイス、2220 入/出力コントローラ、2222 通信インタフェース、2224 ハードディスクドライブ、2226 DVD-ROMドライブ、2230 ROM、2240 入/出力チップ、2242 キーボード
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