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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】内部材料のレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/53 20140101AFI20230414BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20230414BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20230414BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20230414BHJP
【FI】
B23K26/53
B23K26/064 Z
B23K26/03
B23K26/00 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020506743
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 GB2018052256
(87)【国際公開番号】W WO2019030520
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】1712639.2
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507226592
【氏名又は名称】オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ブース マーティン ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ソルター パトリック
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-125507(JP,A)
【文献】特開平05-144056(JP,A)
【文献】特表2008-531143(JP,A)
【文献】特開2013-027930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンドまたは宝石用原石を含む試料(460)内の標的位置に改質領域(110、310)を形成するための試料(460)のレーザ改質方法であって
レーザ(410)による改質のためにレーザシステム(400)における、ダイヤモンドまたは宝石用原石を含む試料(460)を位置決めすることを含みかつ
レーザが集光する試料(460)の表面の傾きを測定すること;
少なくとも測定された傾きを使用して、レーザシステム(400)のアクティブ光学素子(430)に適用される補正を決定すること;
アクティブ光学素子(430)に前記補正を適用して、レーザの波面特性を修正し、レーザ集光に対するコマ収差の影響を打ち消すこと;および
修正された波面特性を有するレーザを使用して標的位置で試料(460)をレーザ改質して、改質領域(110、310)を生成することを特徴とする、レーザ改質方法
【請求項2】
レーザシステム(400)内の試料(460)の位置を測定すること、
また、測定された位置を使用して、加工深さ、およびレーザシステム(400)のアクティブ光学素子(430)に適用される補正を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補正をアクティブ光学素子(430)に適用して、レーザの波面特性を修正し、レーザ集光に対する球面収差の影響を打ち消すことを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記改質領域(110、310)を形成した後に前記試料(460)を測定し、さらなる測定に基づいてアクティブ光学素子に適用される前記補正を修正することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
レーザ集光が0.5より大きいストレール比を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
試料(460)内のレーザの焦点を測定すること、および、測定された焦点に基づいてアクティブ光学素子(430)に適用される補正を修正することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記補正を決定することが、少なくとも部分的にレーザ(410)のパルスエネルギーに基づいており、前記方法が、好ましくは、10nJから300nJの間のパルスエネルギーを有するパルスレーザ(410)を使用することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
単一のレーザパルスを用いて試料(460)をレーザ改質することを含む、および/または、複数のレーザビームを用いて試料(460)をレーザ改質することを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記改質領域(110、310)を形成することが、非線形光学相互作用を利用して材料の改質を引き起こすことを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記改質領域(110、310)を形成することが、試料(460)のバルク内の材料のみを改質することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記補正を決定することは、ゼルニケ展開の係数を計算することを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
伝播方向に1マイクロメートル未満の領域を改質することを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を実行して、ダイヤモンドまたは宝石用原石を含む試料(460)内の標的深さに改質領域(110、310)を形成するように配置されたレーザシステムであって、以下を含むレーザシステム:
ダイヤモンドまたは宝石用原石を含む試料(460)の傾きを測定するように配置された測定装置。
【請求項14】
宝石用原石(460)内の標的位置に改質領域(110、310)を形成するための宝石用原石(460)のレーザ改質方法であって
レーザ(410)による改質のためにレーザシステム(400)において宝石用原石(460)を位置決めすることを含みかつ
宝石用原石(460)内のレーザの焦点を測定すること;
少なくとも焦点の測定結果を使用して、レーザシステム(400)のアクティブ光学素子(430)に適用される補正を決定すること;
アクティブ光学素子(430)に補正を適用して、レーザの波面特性を修正し、レーザ集光に対する収差の影響を打ち消すこと;および
修正された波面特性を有するレーザを使用して標的位置で宝石用原石(460)をレーザ改質して、改質領域(110、310)を生成することを特徴とする、レーザ改質方法
【請求項15】
アクティブ光学素子(430)に前記補正を適用することにより、0.5より大きいストレール比を有するレーザ集光が得られる、および/または
前記補正が、レーザ集光に対するコマ収差の影響を打ち消す、および/または
前記補正が、レーザ集光に対する球面収差の影響を打ち消す、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部材料をレーザ加工する方法、特に試料内に改質領域を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工は、産業界で広く使用されているプロセスである。過去10年程度にわたるこの分野の研究開発は、レーザ加工をはるかに小さな長さスケールに移行させてきた。これは、数百フェムト秒~数ピコ秒の範囲のパルス持続時間を使用し、高開口数レンズを通して集光するパルスレーザを使用することによって可能になった。時間次元と空間次元でのエネルギー閉じ込めの組み合わせは、非線形光学プロセスを介して材料の改質を引き起こす高い瞬間的な集光強度をもたらす。時間および空間次元におけるエネルギー閉じ込めの組み合わせは、非線形光学プロセスを通して材料の改質を生じる高い瞬間的な集光強度をもたらす。したがって、処理効果は、集光領域に限定することができる。
【0003】
よって、レーザ加工技術に与えられる制御の程度を改善するために、材料内のレーザ集光のサイズおよび形状の制御を改善することが望ましい。しかしながら、レーザビームの経路内の材料の存在は(例えば、屈折及び/又は反射によって)レーザに必然的に影響を及ぼす。その結果、材料内で集光しようとするとき、材料自体が、材料内でのレーザ集光を乱す。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、試料をレーザによって改質するためにレーザシステム内の試料を位置決めすること、レーザが焦点を結ぶ試料の表面の傾きを測定すること、レーザシステムのアクティブ光学素子に適用される補正を決定するために、少なくとも測定された傾きを使用すること、アクティブ光学素子に上記補正を適用して、レーザの波面特性を修正し、レーザ集光に対するコマ収差の影響を打ち消すこと、修正された波面特性を有するレーザを使用して標的位置で試料をレーザ改質して、改質領域を生成することを含む、試料のレーザ改質方法が提供される。
【0005】
対物レンズから試料に集光された光は試料の表面での屈折のために、その理想的な集光から収差を受ける。浸漬媒体(例えば、空気、油など)と試料との間の屈折率の差が大きいほど、集光に対する収差効力が大きくなる。したがって、決定された補正は、試料の破壊的な収差効力を打ち消すように、試料表面における屈折の影響を考慮する。異なる要素は、集光上の異なるタイプの収差(または収差モード)に寄与することができる。集光対物レンズに対して傾斜した表面は、典型的には理想的な集光を許容せず、代わりにコマ収差によって焦点を歪ませる。通常、入射面は可能な限り水平にされ、結果として生じる歪みは受け入れられるが、いくつかの用途(例えば、宝石用原石の内部の集光)に対しては完全に平坦な表面を得ることが困難であるか、または傾斜した表面を通して集光することが有利な場合がある。そのため、試料の傾きを測定することによって、焦点に対するその影響を、アクティブ光学素子に適用される補正によって打ち消すことができ、焦点合わせの効率を改善することができる。
【0006】
開示された収差補正方法は、0.5を超えるストレール比を有する試料内のレーザ集光を達成することができる。この方法は、0.5を超えるストレール比を有するレーザ集光を使用して試料を改質することを含んでもよい。集光は、0.6を超える、0.7を超える、0.8を超える、または0.9を超えるストレール比を有してもよい。ストレール比は焦点がその理想的な(すなわち、回折限界の)焦点にどれだけ近いかの尺度として理解することができる。集光システムの固有の回折によってのみ制限されるレーザ集光(すなわち、回折限界のサイズのレーザ集光)は、1のストレール比を有する。実際には、光学系に内在する欠陥は、回折限界のサイズではなく、それ故、1未満のストレール比を有する集光をもたらす。約0.1のストレール比は、高NAレンズ用のダイヤモンド試料において、例えば100μmの深さに集光されたレーザに対して典型的である。したがって、ストレール比はレーザ集光に対する収差の影響の尺度として理解することができ、1に近い比は、システム内の収差および欠陥の影響をあまり受けない。これは、所与の集光の効率の尺度として理解することもできる。
【0007】
ストレール比は、システム内に収差が存在しないときのピーク集光強度に対するピーク集光強度として定義することができる。回析によって単純に制限された集光がピーク強度I0を有し、かつ実際のシステムがピーク強度Ipを有する場合には、ストレール比は、比Ip/I0として定義される。システムに収差が存在する場合、波面誤差は、焦点から離れるように光を回折し、実際のピーク強度Ipを理論上の最高I0から減少させ、結果としてストレール比を減少させる。波面誤差が収差位相関数φとして特徴付けられる場合、ストレール比Sは次式で与えられる。
【0008】
【数1】
【0009】
ここで、角括弧<...>は光学系の特定の開口部にわたる平均を示し、ここでは集光対物レンズの瞳開口とする。完全なシステムでは、波面誤差はゼロ(平坦位相)であり、ストレール比は1である。収差により波面誤差が増加すると、ストレール比は減少する。収差関数は、焦点に向かう光の伝播に関連するすべての位相誤差を記述し、一次コマ収差、一次球面収差、および一次非点収差などのゼルニケ(Zernike)多項式の和として書くことができる。収差関数は代替的に、別の基底関数のセットの和として、または既知の試料内の特定の集光位置に対する直接的な数値計算/分析解として構成されてもよい。
【0010】
この方法は、例えば試料内のフォトルミネッセンスによって、試料内のレーザの焦点を測定すること、ならびに、測定された焦点に基づいてアクティブ光学素子に適用される補正を修正し、それによって、集光の効率を改善し、および/または集光のストレール比を増大させることを含むことができる。
【0011】
試料は、レーザ光が入射しかつ収差を引き起こす平坦な表面を含むことができる。
【0012】
改質領域は、レーザへの暴露によって変化した試料内の任意の領域であってもよい。典型的には、改質領域は、異なる特性を含み、それを取り囲むバルク材料とは異なる光学的、構造的、機械的、電気的等の特性を含み得る。
【0013】
アクティブ光学素子は、その上に入射する光の特性を動的に修正することができる任意の素子である。例えば、空間光変調器(SLM)、変形可能ミラー(deformable mirrors)(またはマイクロ変形可能ミラー)、およびアダプティブレンズ(adaptive lenses)は、レーザビームのプロファイルに空間的に変化する変調を動的に課し、それによって、例えば、その位相および/または伝播特性を制御するために使用され得るアクティブ光学素子である。
【0014】
試料の傾きを測定することは、レーザビームの伝播から試料表面の傾きを測定することを含むことができ、および/または両方の水平方向(すなわち、レーザビーム伝播を横切る2つの直交次元)に対する傾斜度(inclination)(すなわち、傾き(tilt))を測定することを含むことができる。試料の傾きの測定は、対物レンズの横断面からの試料表面の傾きの測定を含むことができる。したがって、試料の測定は、どのような収差がシステム集光に影響を及ぼすかについての情報を提供する。測定は、任意の適切な手段によって実施することができ、試料表面からの反射を含むことができる。測定は、試料入射面上の複数の点からの反射を含むことができる。
【0015】
測定は、イメージングによって行うことができる。試料の表面の最適な焦点(すなわち、最も鮮明な画像)のための正しい軸方向位置は、3つの異なる位置に見出すことができる。これは、軸方向に約0.5μmまで正確であり得る。3つの点は、横方向に約0.2mm離れていてもよい。重要であると予想される傾きの範囲を考えると、分離距離は、傾きの正確な測定を行うのに充分に大きくてもよい。例えば、ダイヤモンドの傾きが0.5度を超える範囲である場合、試料内の焦点の質に著しい影響を及ぼすことがある。
【0016】
測定を行うために、他の方法が使用されてもよい。システムが油浸対物レンズを使用している場合、同様の方法を使用して上記と同じ測定を行うことができるが、試料表面(これは試料によっては表面が研磨されているために明確なイメージがない場合がある。)の軸方向位置を確認するために最も鋭い焦点を使用する代わりに、レーザを使用して浸漬油を沸騰させることができる。すなわち、レーザ焦点が浸漬油の内部にあるときには油を沸騰させ、レーザ焦点が試料の内部を移動するときには何も見えない。この場合、パルスエネルギーは、試料内での加工のための閾値を下回ることになる。このアプローチは、イメージングアプローチとほぼ同じ軸方向精度を有するが、場合によっては実施がより容易である。しかしながら、それは、油ベースのレンズに対してのみ機能する。
【0017】
試料表面の軸方向位置を測定する別の方法は、表面からの反射に依存する。これは、加工レーザ自体(パルスエネルギーがサブ加工閾値(sub-fabrication threshold)である場合)から、または代替光源(例えば、レーザまたはLED)からであってもよい。試料の表面は、反射信号が最大であるときに配置されてもよい。
【0018】
別の方法は、試料表面からの第3高調波発生(THG)を見ることを含んでもよく、これは、表面がレンズの焦点にあるときに再び最大化される。表面位置の非常に正確な測定を与えるために、反射光を用いて干渉測定が使用されてもよい(代替のコヒーレント光源が干渉計のために必要とされる)。
【0019】
別の代替方法は、ダイヤモンド表面からのレーザビームの反射をカメラ上に結像することであり、カメラ上の反射の横方向変位により、単一の測定から試料の傾きを決定することが可能になる。
【0020】
アクティブ光学素子に適用する補正を決定することは、少なくとも測定された傾きを使用する。それはまた、試料の表面下の改質されるべき領域の深さに基づいて補正を決定することを含んでもよい。補正を決定することは、試料材料の光学特性に関する情報を使用して、屈折を考慮することを含んでもよい。
【0021】
この方法は、可視特徴(visible features)を形成するように試料をレーザ改質することを含むことができる。
【0022】
この方法は、レーザシステム内の試料の位置を測定することと、測定された位置を使用して、レーザシステムのアクティブ光学素子に適用される補正を決定することと、アクティブ光学素子に補正を適用して、レーザの波面特性を修正し、レーザ集光に対する球面収差の影響を打ち消すこととを含むことができる。この方法は、レーザが入射する試料の表面の位置を測定して、焦点深度を決定することを含むことができる。この方法は、少なくとも部分的に焦点深度に基づいて補正を決定することをさらに含むことができる。
【0023】
したがって、試料の傾斜によって引き起こされるコマ収差を訂正するだけでなく、訂正は球面収差を考慮することができる。球面収差は、コマ収差に加えて別の種類の収差である。球面収差の量は、焦点深度に比例し得る。球面収差は、点状焦点をカスプ形状に歪ませ、そうすることによって、焦点のピーク強度を収差表面に向かって軸方向に移動させ、その理想位置から離す。したがって、球面収差の影響を受けるは、試料表面により近いピーク強度を有する。この焦点の移動は、デフォーカスとしても知られている。試料の位置を測定することによって、球面収差の影響を打ち消すように補正を決定することができる。この方法は、焦点のピーク強度の移動を考慮して、試料の軸方向位置を変更することを含むことができる。この方法は、試料の軸方向位置を変更して、球面収差のデフォーカス成分を考慮することを含むことができる。
【0024】
したがって、この方法は、単一の波面補正を適用して、試料の表面での屈折によって引き起こされるコマ収差および球面収差の両方の影響を考慮することを含み得る。
【0025】
この方法は、改質領域を形成した後に試料を測定することと、さらなる測定に基づいてアクティブ光学素子に適用される補正を修正することとを含むことができる。この方法は、試料の改質領域を測定することと、改質領域の測定に基づいて補正を修正することとを含むことができる。したがって、この方法は、例えば、焦点のサイズおよび形状をより厳密に制御し、焦点に対する収差(例えば、コマ収差および/または球面収差)の影響をさらに低減するために、アクティブ光学素子に適用される補正が精緻化されるフィードバックステージを含むことができる。補正の精緻化は、より大きなストレール比を達成することができる。さらなる測定は、試料内の固有の欠陥に由来し得る非線形フォトルミネッセンス励起を使用してもよい。この方法は、フォトルミネッセンス、プラズマ発光もしくは吸収、または反射もしくは透過の特性を使用して、レーザ改質の試料に対する効果を検出することを含んでもよい。
【0026】
補正を決定するステップは、オンザフライ(on the fly)で補正を計算することを含むことができる。それはコマ収差を補正するための計算において、測定された傾きを使用することと、適用可能な場合には、球面収差を補正するための測定された位置とを含むことができる。このようにして、各試料に対して調整された補正を計算することができる。
【0027】
補正を決定するステップは、利用可能な補正のデータベースから補正を選択することを含んでもよい。したがって、この方法は、例えば、試料の傾きが所定の範囲内にある場合、および/または試料の位置が所定の範囲内にある場合に、アクティブ光学素子に適用するための特定の補正を選択することを含むことができる。データベースは複数の補正を含むことができ、各補正は、所定の範囲の要素についてのものである。
【0028】
補正は、直交モードの展開によって定義することができる。各モードは、収差モードを定義することができる。補正は純粋なモードであってもよく、または補正はモードの重ね合わせであってもよい。補正はゼルニケ多項式によって定義されてもよいし、ゼルニケ多項式の展開によって定義されてもよい。
【0029】
補正は、レーザビームプロファイルを所望のプロファイルに変調するための位相場を含んでもよい。例えば、この方法は空間光変調器(SLM)を使用することができ、補正は、SLMのための表示フィールドを表すことができる。この方法は変形可能ミラー(DM)を使用することができ、補正は、変形可能ミラーの構成とすることができる。補正は、アダプティブレンズのための構成であってもよい。
【0030】
補正を決定するステップは、少なくとも部分的にレーザのパルスエネルギーに基づいてもよい。したがって、補正は、水平および垂直のコマ収差、球面収差、およびパルスエネルギーを考慮に入れることができる。パルスエネルギーは、補正に基づいて選択することができる。この方法は、補正および試料に基づいて使用されるパルスエネルギーを決定することを含むことができ、決定されたパルスエネルギーのレーザパルスを使用して試料を改質することを含むことができる。
【0031】
補正が充分である場合、同じパルスエネルギーを使用して、試料内のどこでも加工し、同じ結果を得ることができる。これは、典型的には本開示で考慮される収差範囲の場合である。しかし、補正が充分でない場合(例えば、アクティブ光学素子が、収差を打ち消すのに必要な位相を正確に表示するのに充分な範囲または自由度を欠く場合)、パルスエネルギーを増大させることができる。
【0032】
補正が充分でない場合、パルスエネルギーは、加工のために増大されてもよい。収差が大きく、補正がそれを完全に打ち消すのに充分でない場合、パルスエネルギーは大幅に上昇し得る。いくつかの材料(例えば、特にダイヤモンド)では、補正が不十分である場合、パルスエネルギーがどの程度高くなっても、正確かつ確実に加工することは不可能である。例えば、ダイヤモンドの深さ250μm程度では球面収差は完全に補正されているが、小さなコマ収差(例えば1rad程度)ではない場合であっても、シングルパルスレーザ加工は実験的には観察されていない。パルスエネルギーを非常に高くしても、1回のパルスでは加工ができない場合がある。このような場合、加工を決定論的に達成することはできない。その代わりに、ドーズ量(すなわち、改質領域当たりのパルス数)を増加させなければならず、結果として得られる加工は大きく(例えば、5μmを超える)、充分に規定されていない。さらに、必要なドーズ量は、ダイヤモンド内の異なる位置で予測不能に変化する。
【0033】
補正を決定することは、所定の関数を最適化することを含むことができる。この方法は、問題の試料に関する様々な要因に基づいて補正を決定するためのアルゴリズムを使用することを含むことができる。要素は、コマ収差、球面収差、及びパルスエネルギーを含むことができる。補正を決定することは、垂直コマ収差、水平コマ収差、球面収差、およびパルスエネルギーの任意の組合せを含む要因に基づいて、3次元探索空間、または4次元探索空間、または高次元探索空間から所望の補正を選択することを含むことができる。この方法は、コスト関数を最小化すること(および/またはメリット関数を最大化すること)を含むことができる。
【0034】
この方法は、試料内の空間的に分離した領域を同時に改質することを含むことができる。この方法は、同じパルスエネルギーを使用して試料内の別個の領域を連続的に改質して、各領域を改質することを含むことができる。
【0035】
アクティブ光学素子に補正を適用するステップは、アクティブ光学素子の表示を変更することを含むことができる。アクティブ光学素子はSLM、DM、またはアダプティブレンズ(例えば、流体または音響光学)、または他の透過または反射のアダプティブ光学素子であってもよい。この方法は、補正を定義するデータを含む信号をアダプティブ光学素子に送信することと、入射レーザビームプロファイルに補正を課すようにSLMまたはDMにその状態を変更させるステップとを含むことができる。
【0036】
この方法は、複数のレーザビームおよび集光のアレイを使用して、試料をレーザ改質することを含んでもよい。この方法は、それぞれのレーザビームを使用して、試料の空間的に分離した領域を同時に改質することを含むことができる。この方法は、試料の所望の領域を改質するために、それぞれのレーザビームからの各パルスである複数のパルスを使用することを含むことができる。この方法は、アダプティブ光学素子による補正の前に複数のビームを形成することを含むことができ、したがって、この方法は、単一のアダプティブ光学素子を使用して、複数の空間的に分離したレーザビームに対して収差補正を行うことを含むことができる。この方法は、収差補正と複数のビーム生成が同時に行われるように、アダプティブ光学素子を使用して複数のレーザビームを生成することを含むことができる。
【0037】
改質領域を形成するステップは、非線形光学相互作用を利用して、材料の改質を引き起こすことを含んでもよい。この方法は、試料のバルク内の材料のみを改質することを含んでもよい。したがって、この方法は、試料の表面を改質することを含まなくてもよい。この方法は、50マイクロメートルを超える深さ、または150マイクロメートルを超える深さ、または300マイクロメートルを超える深さで試料を改質することを含み得る。
【0038】
この方法は、試料内に複雑な構造を形成することを含んでもよい。例えば、この方法は、特徴のアレイを試料内に形成することを含み得る。この方法は、レーザ改質中に試料を移動させて、試料内に、直線または曲線または任意の適切な形状であり得る線特徴を作製することを包含し得る。この方法は、レーザ改質中にレーザを走査して、試料内に、直線または曲線または任意の適切な形状であり得る線特徴を作製することを包含し得る。この方法は、離間した点で形成された光学体積を形成することを含むことができ、および/または回折素子を形成することを含むことができる。この方法は、材料のバルク内の空間的に分離した領域を改質することを含むことができる。この方法は、試料内に可視特徴を作ることを含んでもよい。この方法は、試料内に構造を形成することを含むことができる。この方法は、少なくとも1つの寸法において、例えば5マイクロメートルを超える、または20マイクロメートルを超える大規模な特徴を形成することを含むことができる。この方法は、試料内に所望の応力場を生成するように試料の所定の領域を改質することを含むことができる。この方法は、入射光の位相をシフトさせる、位相差顕微鏡によって可視であり得る、または、特徴が暗視野顕微鏡で可視であり得るように光を散乱させ得る、試料内の特徴の生成を含み得る。この方法は、所定の領域内の試料の屈折率を改質することを含むことができ、これは、その領域をレーザで露光することによってまたはその近接領域をレーザで露光することによって、所定の領域の歪み場を変化させてその屈折率を改質することで達成される。
【0039】
この方法は、高開口数(NA)レンズを使用して、試料内にレーザを集光させることを含んでもよい。これは、球面収差の影響を悪化させることがある。この方法は、浸漬媒体なしの対物レンズ(すなわち、ドライレンズ)を使用することを含むことができ、または浸漬媒体(例えば、油)付きの対物レンズを使用することを含むことができる。この方法は、約0.5より大きい開口数を有する対物レンズを使用することを含むことができる。この方法は、約0.8より大きい開口数を有する対物レンズを使用することを含んでもよい。この方法は、乾燥している場合には0.8NAを超える、または油浸中にある場合には1.2NAを超える対物レンズを使用することを含むことができる。
【0040】
この方法は、宝石用原石を改質することを含むことができ、または結晶格子を改質することを含むことができる。特に、この方法は、ダイヤモンドを含む試料を使用することを含み得る。ダイヤモンドは宝石用原石の形態であってもよい。この方法は、宝石用原石を、例えば、セキュリティ素子としてマークするために使用されてもよい。
【0041】
この方法は、試料、特にダイヤモンド内に導電体を生成することを含むことができる。ダイヤモンドは、成長したダイヤモンド基板であってもよい。この方法は、試料(例えば、ダイヤモンド)を金属でコーティングして、例えば、試料内の導電体への電気的接続を提供することを含んでもよい。この方法は、炭素をsp3相からsp2相に変換し、それによってダイヤモンド構造を改質することを含むことができる。この方法は、ダイヤモンド表面に接触するダイヤモンド内の領域を改質することを含んでもよい。
【0042】
補正は、直交モードの展開によって定義することができる。各モードは、収差モードを定義することができる。補正は純粋なモードであってもよく、または補正はモードの重ね合わせであってもよい。補正はゼルニケ多項式によって定義されてもよいし、ゼルニケ多項式の展開によって定義されてもよい。位相補正は、ゼルニケ多項式以外の直交基底を使用するモードの重ね合わせとして定義することができる。位相補正は、例えば、特定の幾何学的形状についての解析解、又は特定の集光幾何学的形状についての数値解であってもよい。位相補正は、集光フィードバックの方法を使用する反復最適化によって決定されてもよい。位相補正は、ゼルニケ多項式以外の直交基底を使用するモードの重ね合わせとして定義することができる。位相補正は例えば、特定の幾何学的形状についての解析解、又は特定の集光幾何学的形状についての数値解であってもよい。位相補正は、集光フィードバックの方法を使用する反復最適化によって決定されてもよい。
【0043】
この方法は、収差モードを特徴づけ、ゼルニケ展開の係数を計算して、補正を決定することを含んでもよい。アクティブ光学素子に補正を適用することは、ゼルニケモードの重ね合わせを適用することを含むことができる。ゼルニケモードの振幅は、補正によって定義することができる。補正はシングルモードであってもよいし、モードの重ね合わせであってもよい。
【0044】
この補正は、試料によって引き起こされる傾斜収差モードの集光に対する影響を打ち消すことができ、この傾斜収差モードは、試料の傾斜によって引き起こされるコマ収差モードとは異なる。異なる収差モードは、それらが引き起こす異なる次数の位相変化によって特徴付けられる。傾斜収差モードは、コマ収差とは異なる次数の位相変化によって特徴付けられる。球面収差モードは、コマ収差及び傾斜とは異なる位相変化の次数によって特徴付けられる。補正を決定することは、試料ごとにどの収差モードがレーザ集光に導入されるかを決定することを含んでもよい。
【0045】
例えば、傾斜収差は光学系の瞳において、r cos(θ-ζ)に比例する位相変化として記述することができ、式中、(r、θ)は瞳平面における極座標であり、ζは傾きの配向を表す。コマ収差は、r3cos(θ-ξ)という形式の成分をもっている。ここでは、位相は放射座標の3乗に伴って変化する。奇数乗を有するより高次のラジアル項も存在し得る。
【0046】
この方法は、10nJ~300nJのパルスエネルギーを有するパルスレーザを使用することを含むことができる。パルスエネルギーは、80nJ~150nJであってもよい。パルスエネルギーは、試料材料の改質のための閾値よりも大きくてもよい。この方法は、UV、可視、または赤外スペクトルの波長を有するレーザを使用することを含み得る。この方法は、近赤外スペクトルの波長を有するレーザを使用することを含んでもよい。
【0047】
この方法は、単一のレーザパルスを使用して試料をレーザ改質することを含むことができる。この方法は、複数のパルスを使用して試料を改質することを含むことができる。パルスは、フェムト秒パルス又はピコ秒パルスとすることができる。この方法は、ドーズ量間でパルスエネルギーを変化させることを含むことができる。
【0048】
この方法は、伝播方向に1マイクロメートル未満の領域を改質することを含むことができる。この方法は、x、y、およびz方向の各1マイクロメートル未満の領域を改質することを含むことができる。
【0049】
本発明の別の態様によれば、レーザによる改質のためにレーザシステム内の宝石用原石を位置決めすることと、宝石用原石内のレーザの焦点を測定することと、少なくとも焦点の測定結果を使用して、レーザシステムのアクティブ光学素子に適用される補正を決定することと、アクティブ光学素子に補正を適用して、レーザの波面特性を修正してレーザ集光に対する収差の影響を打ち消すことと、修正された波面特性を有するレーザを使用して標的位置の宝石用原石をレーザ改質して、改質領域を生成することとを含む、宝石用原石をレーザ改質して宝石用原石内の標的位置に改質領域を形成する方法が提供される。
【0050】
アクティブ光学素子に補正を適用すると、ストレール比が0.5を超える、0.6を超える、0.7を超える、0.8を超える、または0.9を超えるレーザ集光をもたらすことができる。したがって、レーザ集光に対する収差の影響は、著しく低減され得る。補正は、球面収差および/またはコマ収差を打ち消すことができる。
【0051】
本発明の別の態様によれば、上記の方法のいずれかによって修飾された試料が提供される。
【0052】
試料バルクはダイヤモンドであってもよい。試料は、導電体を含むことができる。改質領域は、セキュリティコードを含むことができる。改質領域は、回折格子を含んでもよい。改質領域は、すべての寸法において1マイクロメートル未満(すなわち、幅、高さ、および深さが1マイクロメートル未満)であってもよい。改質領域は、試料の最も近い表面の下100マイクロメートルを超えてもよく、好ましくは200マイクロメートルを超えてもよく、より好ましくは500マイクロメートルを超えてもよい。
【0053】
本発明の別の態様によれば、試料の傾きを測定するように構成された測定装置を含む、試料内の標的深さに改質領域を形成するための試料のレーザ改質のためのレーザシステムが提供される。
【0054】
レーザシステムは、フェムト秒レーザシステムまたはピコ秒レーザシステムであってもよい。レーザシステムは、プロセッサとアクティブ光学素子とを備えることができ、プロセッサはレーザシステムの測定された傾きを使用してアクティブ光学素子に適用される補正を決定し、その補正をアクティブ光学素子に伝達するように構成される。
【0055】
アクティブ光学素子は、レーザ集光に対するコマ収差の影響を打ち消すようにレーザの波面特性を修正するように構成することができる。アクティブ光学素子は、レーザの波面特性を修正して、レーザ集光に対する球面収差の影響を打ち消すように構成することができる。アクティブ光学素子は、レーザの波面特性を修正して、試料表面での屈折によるレーザ集光への収差の影響を打ち消すように構成することができる。
【0056】
レーザシステムは、第1の態様のいずれかに従って方法を実行するように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明の実施形態は、単なる例として、添付の図面を参照して以下に記載される。
図1図1A、1B、1C、1Dは、ダイヤモンド基板の内部に書き込まれたグラファイトトラックを異なる視点から示す。
図2図2Aは、収差補正を使用しない基板内の歪んだ焦点の概略例を示す。図2Bは、収差補正を使用して達成される基板内の焦点の概略例を示す。
図3図3Aおよび図3Bはダイヤモンド基板に書き込まれた特徴を示し、特徴の左手のセットは収差補正技術を使用して書き込まれものであり、特徴の右手のセットは収差補正技術を使用せずに書き込まれたものである。
図4図4は試料のレーザ改質のための例示的なレーザシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下では、材料表面での屈折の影響を相殺するための収差補正を組み込んだ、透明材料内部において高解像度でレーザ加工するためのシステムおよび方法が記載される。このシステムは、材料の測定結果からのフィードバックを利用して、収差補正および焦点強度を最適化し、必要なレベルの材料改質を得る。特定の用途は、ダイヤモンド内の特徴の作製である。
【0059】
開示された方法の応用は、屈折率の局所的な増加を通して、ガラス内部に光ガイドを生成することを含む。同様の構造は、媒体中の損傷したトラックの周りの応力場によって引き起こされる屈折率の局所的な増加を使用して、KDPまたはニオブ酸リチウムなどの結晶中に生成され得る。マイクロ流体デバイスは、ガラスを露出させ、続いて化学エッチングすることによって作製することができる。非線形光重合を使用して、適切な溶液から複雑な3Dポリマー構造を作製することができる。
【0060】
開示された方法は、回折限界レーザ集光とほぼ同じサイズである材料内の改質領域を生成するために使用することができ、それは全ての寸法において1マイクロメートル未満であり得る。
【0061】
[ダイヤモンド内の加工]
フェムト秒パルスレーザをダイヤモンド内で密に集光させると、非線形光学相互作用は、焦点におけるエネルギー密度に依存して、様々な方法で結晶格子の改質を引き起こす。低エネルギーでは、アニール後に色中心を生成するために使用できる結晶格子のわずかな破壊が生じる。より高いエネルギーでは、sp3相(ダイヤモンド結晶構造)からsp2相(グラファイト)への炭素の顕著な転換が起きる程度まで、顕著な格子破壊が生じる。典型的には、レーザ改質領域は、sp2相とsp3相との組み合わせであるアモルファスカーボンの形態をとる。
【0062】
ダイヤモンドにおける微細な光学的特徴の作製においては、短パルスレーザおよび高開口数(NA)対物レンズが使用される。これにより、特徴が材料内の3次元に充分に閉じ込められ、材料の表面に損傷がないことが保証される。単一のレーザ露光により、改質された材料の点状の特徴を作り出すことができる。2次元または3次元であり得る複雑な構造は、点状特徴の集合を使用して構築され得る。あるいは、線形構造は、近接して離間された特徴から構成され得る。
【0063】
ダイヤモンド内部の表面下レーザ加工では、(i)非常に低いパルスエネルギーで、高度に非線形な相互作用が格子空孔の集合をレーザ集光で生成する、(ii)より高いパルスエネルギーで、ダイヤモンド格子の破壊が起こり、導電性グラファイト相が残る、といった2つの形態がある。形態(i)の改質は、透過顕微鏡によっては見えず、蛍光顕微鏡でのみ見ることができる。それらは、量子応用のためのコヒーレントNV(窒素空孔)中心の形成のための重要な前駆体である。形態(ii)の改質は、ダイヤモンド格子中の微小亀裂を伴うsp2結合炭素の小さな(<数100nm)クラスターを含む。形態(ii)において、レーザ集光を使用してダイヤモンドをトレースすることにより、導電性ワイヤとして使用することができるsp2結合炭素の連続トラックの書込みが可能になる。
【0064】
露光中にダイヤモンドを平行移動させずに形成される特徴は、楕円体の形態をとる。改質の範囲は、加工レーザの伝播方向に沿って長く、使用される対物レンズのNA(開口数)に依存する。特徴のサイズは、使用されるパルスエネルギーおよび投与量(露光におけるパルス数)にも依存する。ここで説明したように波面が充分に修正されていれば、暴露から暴露へときわめて規則正しい修正ができる。ここで説明したように波面が充分に修正されない場合、同じ条件の異なる露光から、非常に不規則な改質(サイズおよび形状)が生じる可能性がある。
【0065】
高NA光学系(NA>~0.8)は、軸方向に延在しない(光軸に沿って<2μm)いずれの特徴の作製のみならず、点から点への信頼性のある作製にも使用される。より低いNA(~0.5)での作製は可能であるが、位置依存性が大きく、一貫性がない。より高いNAでは、全く同じパルスエネルギーおよびレーザ線量で、大きな体積にわたって、作製が高度に反復可能である。加工に対する位置依存性はない。これは、産業上の利用にとって重要である。
【0066】
他のデモンストレーションは、アレイ中のグラファイト点状特徴からなっている。他の用途では、導電体として使用することができる連続グラファイト構造が生成されている。
【0067】
レーザ集光を使用してダイヤモンドをトレースする(または固定ダイヤモンド試料に対してレーザを走査する)ことにより、レーザ改質材料の連続トラックを生成することが可能になる。製造形態(ii)で動作しているとき、これらのトラックは、sp2結合炭素を含み、導電性である。それらは、ダイヤモンドを通って3次元に延びる導電性ワイヤを形成するために使用されてもよい。例えば、図1は、ダイヤモンド試料の表面120の下の2Dおよび3D経路をたどる様々な連続グラファイトトラック110を示す。図1Aは、グラファイトトラック110の上面図を示す。図1Bおよび1Cは、グラファイトトラック110の側面図を示し、図1Dは、書き込まれたグラファイトトラック110の画像化された透視図を示す。スケール125は5μmを示す。図1Cの破線の楕円は、深さが増すにつれて作製されるグラファイトトラックの一部を示す。
【0068】
このようなグラファイトトラック110は導電性ワイヤとして機能することができ、放射線または化学的センシングのためのダイヤモンドベースのセンサの製造に有用である。一実施形態では、ダイヤモンドを通って走る導線は、それらを横切って印加された電圧を有することにより、ダイヤモンド内に局所的な電場を設定してもよい。電離放射線がダイヤモンドに入射すると、ダイヤモンドを通過する際に自由電荷が生成され、電極によって集められる。別の実施形態では、埋め込まれた導線は、ダイヤモンドの広い電位窓を利用して、電気化学のために使用されてもよい。埋め込まれた導線は、ダイヤモンドの表面付近に電場を生成するために使用することができ、これは次に、溶液に浸漬される。そのようなレーザで書かれた埋め込み導線は、ダイヤモンド表面に引き上げることによって外部電子機器に接続することができ、その後、ダイヤモンド表面は、効率的な電気接続のために金属でコーティングされる。
【0069】
[収差補正]
理想的な場合には、レーザの焦点のサイズは、回折限界、すなわち、対物レンズの所与の波長、屈折率、および開口数に対して可能な最小スポットサイズにあるべきである。しかしながら、この限界は、収差の影響のために達成されないことが多い。収差とは、光学系の理想的な集光性能からのずれのことである。光線光学に関しては、収差は、集光円錐内の光線をもはや同じ点で合流させない。波動光学に関しては、焦点に収束する波面は、もはや、回折限界スポットに焦点を合わせるのに必要な球面キャップの形式をとらない。この波動光学の場合、収差は、理想的な波面と歪んだ波面との間の光学的位相誤差に関して定量化されることが多く、異なる種類の歪みは、異なる位相誤差によって特徴付けられる。焦点に対する収差の影響は、そのピーク強度を減少させながら焦点を広げたりぼかしたりすることである。集光の性質により、広がりは主に光軸に沿って生じる。
【0070】
図2Aは、ある種の特定の収差モード、すなわち球面収差の一例を示す。レーザ加工において、収差は、内部で加工しようとする透明材料の表面での光線の屈折のために頻繁に生じる。これは例えば、対物レンズの浸漬媒体(典型的には空気、油、または他の媒体)と加工材料との間の界面で起こり得る。試料220に入射する光線群210は、試料表面222によって屈折され、結果として生じる焦点230は歪められ、細長くなる。平坦な波面240は、高NAレンズ250に入射する並列光線群210を意味し、試料220が存在しない場合に理想的な集光をもたらす。
【0071】
図2Bは、試料表面222の屈折を打ち消すようにその位相を修正するSLMなどのアクティブ光学素子によって、波面240が既に補正されている場合を示す。その結果、試料220が存在しない場合、レンズを出る光線群210は理想的な焦点をもたらさない。しかしながら、試料が存在する場合、光線群210は、表面222で屈折し、焦点232が改善される。したがって、適応光学系を使用して入射波面を整形することによって、収差が相殺され、正確な集光およびサブマイクロメートル特徴の信頼性のある加工が可能になる。
【0072】
図3Aは、適応光学系収差補正を使用して50μmの深さでダイヤモンド内に集光させることによって生成された加工特徴310(左)を示す。特徴320(右側)は、同じ構造であるが、収差補正なしで作られたものである。レーザパルスエネルギーはいかなる加工をも見るために、大幅に増加されなければならなかった。加工レーザはz軸に沿って入射した。特徴310の作製は、特徴320の作製よりもはるかに良好に制御されることが分かるであろう。図3Bは、側面から同じ特徴を示す。本発明の収差補正技術を用いて生成される特徴は、伝播方向(すなわち、z方向)において著しく良好に制御されることが理解されるであろう。
【0073】
試料の界面が光軸に対して垂直である場合、収差は、球面収差に加えて、再集光効果(光軸に沿った焦点シフト)から成る。これらの効果の振幅は焦点深度に比例する。このタイプの球面収差は下記式で表される。
【0074】
【数2】
【0075】
この式は、開口数NAおよび浸漬媒体n1を有する対物レンズを使用して、屈折率n2の物質内の深さdnomに焦点を合わせるときの波長λの光に対する球面収差位相φSAを解析的に記述したものである。座標ρは、対物レンズの瞳における正規化された半径である。
【0076】
表面法線が光軸に対して傾斜している場合、コマ収差(波面傾斜を含み、横方向焦点シフトを引き起こす)などの他の収差が導入される。これらの効果は、焦点深度と表面傾斜角の両方に比例する。小さな表面傾斜による追加の収差は、次式で与えられる。
【0077】
【数3】
【0078】
θは瞳内の方位座標であり、ζは傾斜の配向を表す。この式は表面傾斜による収差成分を解析的に記述したもので、傾きは小さい角度tである。要素aおよびbは、値が屈折率およびNAに依存するスカラー係数である。
【0079】
球面収差とコマ収差との組み合わせは、焦点強度の低下と、加工効率及び精度に影響を及ぼす強度分布の歪みとを引き起こす。
【0080】
ダイヤモンド表面での屈折の影響は、ダイヤモンドの高屈折率(空気では1.0、浸漬油では約1.5に比べて屈折率2.4)のために強い。この収差修正の手段は、さもなければ不可能であった深さでの微細な特徴の生成を可能にする。収差補正は、液晶空間光変調器(SLM)を使用して容易に実施されるが、変形可能なミラーを使用して実施することもできる。
【0081】
静的補正方法は可能であるが、材料の組成物および位置のわずかな変化のために、静的補正が名目上類似する試料間の収差を補正するのに有効ではなく、代わりに微調整された適応収差補正が必要であることが、様々な試行から示されている。したがって、画一的なアプローチ(one-size-fits-all approach)は、本方法と同程度の制御を達成することができない。
【0082】
乾燥した対物レンズを用いてダイヤモンド深くに焦点を合わせると、収差補正の要求が高まる。油浸レンズを使用してレーザを集光すると、ドライレンズを用いる場合よりも屈折率コントラストが低くなるため、収差補正の要求は低くなる。しかしながら、この場合でも、実行可能な結果を得るためには補正が必要である。
【0083】
上記の式から計算された位相パターンを、空間光変調器(SLM)などの収差補正デバイス(すなわち、アクティブ光学素子)に与えて、試料によって誘発された収差を補正することができる。SLMは通常、1つの波長(または少数の波長)に制限された位相変調範囲を有するので、位相は通常、アクセス可能な範囲内にあるように折り返される。例えば、単一の波長のみがアクセス可能である場合、2πラジアンの位相が1つの波長に対応するので、適用される位相関数は2πを法とするφSAである。
【0084】
焦点(つまり光学的ピーク強度)を光軸に沿ってシフトさせるが、その形状を変化させない別の収差モードまたは構成要素であるデフォーカス、を球面収差項が含むことに留意することによって、SLMに適用される位相パターンは、単純化することができる。補正からデフォーカス成分を除去することにより、位相補正の大きさを小さくすることができ、SLMをより効果的に収差補正に用いることができる。球面収差のデフォーカス成分は、適当な量だけ試料を並進させることによって補正してもよい。同様に、傾斜した試料のコマ収差は、「傾斜」収差、すなわち焦点の横方向シフトを引き起こす一定の位相勾配を含む。この場合も、位相パターンがSLMに与えられる前に、この傾きは位相パターンから除去することができる。横方向のシフトは、試料の並進によって補償することができる。
【0085】
解析式を直接使用する代わりに、収差を一連の基底関数と見なすことができる。一般に、ゼルニケ多項式がこの目的のために使用される。したがって、収差は、収差モードの総和と記述することができる。例えば、球面収差は、ゼルニケ多項式による展開として表すことができる。これらのような機能を使用することは、未知の収差の測定及び補正のためのフィードバックシステムの設計を助ける。
【0086】
本明細書に記載される方法は、非平坦な表面を通して焦点を合わせることにさらに関連する。これには、曲面を通ること、またはエッジの近傍を通ること/横切ることが含まれる。この場合も、表面トポグラフィの正確な事前測定を使用して、最適に近い開始位相パターンを予測することができ、集光フィードバックを使用した後続の最適化のための良好な開始点として使用することができる。エッジを横切ってまたはエッジの近くで加工することは、瞳セグメント化を含む。ここで説明する方法は、セグメント化された瞳における球面収差およびコマ収差を補正するための位相を設定するために採用することができる。曲面を通して焦点を合わせるには、球面収差、非点収差およびコマ収差の組合せの補正が必要である。
【0087】
[集光の適応制御]
試料内の異なる位置(特に深さ)間および異なる試料間で一貫した加工品質を維持するために、収差補正およびパルスエネルギーの適切な組み合わせを維持することができる適応制御システムを実施することが必要である。これは、集光領域から、波面およびエネルギーを制御するデバイスへのフィードバックの方法を使用することができる。
【0088】
上述のような材料表面からの反射に基づく表面位置および傾きの第1の測定は、球面収差およびコマ収差を打ち消すのに必要な補正の予測を提供する。一実施形態では、全てが同じ軸上にあるわけではない3つの点での最良の光学焦点の位置の測定が相対的な試料傾斜に関する情報を提供することができる。これは、試料、例えばダイヤモンド内の特定の深さにおけるコマ収差及び球面収差の予測収差補正を可能にすることができる。
【0089】
焦点における加工プロセスの顕微鏡による観察によって、より細かい補正を行うことができる。測定の組み合わせも可能である。透過型顕微鏡を用いて、焦点における吸収の変化、または屈折率変化による光学的位相の変化を観察することが可能である。これは、材料がレーザパルスによって改質される程度を示し、収差補正およびパルスエネルギーの最適化のためのフィードバック信号を提供することができる。別のフィードバック信号は、焦点からのフォトルミネセンス又はプラズマ発光によって提供することができる。
【0090】
収差モードの係数(特に球面収差およびコマ収差)およびパルスエネルギーが探索空間内の未知の座標として考慮されるアルゴリズムを使用して、最適化プロセスに必要とされる測定の数(したがって、かかる期間)を低減することができる。
【0091】
最適化プロセスは、収差成分およびパルスエネルギーに関連するコスト関数f(あるいはgは最大化されるべきメリット関数であってもよい)の最小化として数学的に表すことができ、まとめて記号Pで表す。Pの最適値は、
【数4】
(このコスト関数は最小化される)あるいは、
【数5】
(このメリット関数は最大化される)のいずれかによって与えられる。関数fまたはgは、測定値の組み合わせとして定義することができる。例えば、レーザ加工中に生成される集光プラズマの強度は全収差内容に依存し、その結果、補正されたシステムは、集光プラズマ放出において最大を示す。あるいは、加工レーザは、試料に含まれる固有の欠陥から光ルミネセンス(PL)を非線形に励起するために、構造的改質の閾値未満で使用されてもよい。検出されたPLは、収差が最小化されたときに最大化される。同様に、共焦点顕微鏡におけるルミネセンスまたは蛍光発光は、収差が補正される場合に最大化される。したがって、これらのシグナルは、コスト/メリット関数の最適化を可能にするフィードバック機構として使用することができる。
【0092】
最適化プロセスの実施には、種々の方法が可能である。屈折率およびNAが既知で傾斜した平坦な表面を通るレーザ加工のために最適化される必要がある未知のパラメータの最小数は3つ、すなわち、球面収差の1つの係数、およびコマ収差の2つ(すなわち、2つの直交コマ成分)である。したがって、この方法は、3次元最適化問題と見なすことができる。パルスエネルギーの形式の別の変数を考慮することができ、次いで、この変数は、プロセスを4次元最適化に拡張する。さらなる未知数がある場合、最適化プロセスにおいて、より多くの変数(次元)を考慮しなければならない。
【0093】
適応的最適化は、加工されたすべての位置についてポイント毎に実施することができるが、加工領域にわたってより少ない最適化測定を実施し、この領域にわたってパラメータの補間を実施することがより実用的である可能性が高い。この領域は、直線または曲線、横方向平面、または3次元に広がることができる。充分な表面測定により、適切に補正された集光(すなわち、充分に大きなストレール比)を達成することができる。しかしながら、最適化手順は、各新たな試料に対して実行されてもよい。
【0094】
[大規模マーキングの説明]
大きな縮尺の構造およびマーキングも可能である。これには、英数字、バーコード、QRコード(登録商標)、またはイメージを作成するための点状の特徴や連続した線が含まれる場合がある。そのような特徴は、回折素子、ホログラム、または回折格子を形成するために一緒にグループ化され得る。深さの範囲および面積は、使用される石のサイズまでとすることができる(典型的には横方向のxおよびy方向に3mm、伝播z方向に1mmの範囲)。特徴のサイズは、(x方向およびy方向に)横切って5μmまで、伝播z方向に20μmであってもよい。実際には、より大きなフィーチャが確実に生成される場合、より小さなスケールの改質の組み合わせをつなぎ合わせることによって達成することができる。周囲の試料(例えば、ダイヤモンド)にかかる応力負荷を管理して、大規模な不規則な裂け目が形成されるのを回避するために、大きな特徴を生成するときに注意を払わなければならない。これは、光学的に見ると大きく見えるが、ダイヤモンドからグラファイトへの体積変換が最小限である特徴を形成するように互いにリンクされた小さな(~1μmスケール)特徴のまばらなアレイによって達成することができる。
【0095】
[典型的な実装の概略図]
図4は、適応加工システムのための例示的な構成を示す。例えば、収差または位置の検出を補助するために、追加の収差補正を実行するために、または、システムを平行化して複数の集光を使用するために、追加の構成要素を追加することができる。
【0096】
レーザシステム400は、レーザ410、偏光子420、空間光変調器(SLM)430、高NA対物レンズ440、および3次元並進ステージ450を含む。試料460は、システム400の焦点にあるステージ450上に配置される。
【0097】
試料460は、ダイヤモンドであり、レーザ410による改質のためにレーザシステム400内に配置される。次いで、試料460が測定されて、補正の決定を通知する。特に、レーザが入射する試料460の表面が測定され、横方向からのその傾きが決定される。横方向とは、レーザの一次伝播方向に垂直な2D平面である。これは、対物レンズの主平面に平行な平面でもある。
【0098】
試料460の表面の傾きは、それによってレーザ集光に生じる予想コマ収差を決定するために使用される。次に、予想される収差は、ゼルニケモードに関して特徴付けられ、SLMに伝達される。SLMは、レーザを修正して収差を打ち消すために必要な位相補正を表示するように修正される。
【0099】
レーザシステムのパルスエネルギーも補正に基づいて決定される。レーザは、必要なパルスエネルギーに設定され、次いで、ダイヤモンド試料を改質するために使用される。
【0100】
改質後、試料の改質領域を、透過顕微鏡を使用して測定する。決定された補正は、このさらなる測定によって得られたフィードバックに基づいて精緻化される。改良された補正はSLMに適用され、試料はレーザ改質される。
【実施例
【0101】
ダイヤモンドはレーザ加工システムに搭載される。対物レンズは、LEDからの反射光を最大にすることによってダイヤモンド表面を最初に見つけるために、軸方向に(すなわち、z方向に)移動される。ダイヤモンドは、横方向(x-y)において、加工のための所望の位置に移動される。
【0102】
表面軸(z)位置の精密な位置決めは、低いパルスエネルギー(バルクグラファイト化閾値よりかなり低い、例えば30nJ未満)を有するレーザを使用して達成される。試料表面は、ダイヤモンドを100nmステップで軸方向に平行移動させることによって見出される。油浸レンズを使用している場合は、レーザが浸漬油を沸騰させなくなる位置までダイヤモンドを移動させる。空気レンズを使用する場合、ダイヤモンドは、レーザがもはやダイヤモンド表面上にいかなるマークも生じさせなくなるまで移動される。さらに、x方向に0.2mmずつ、y方向に0.2mmずつ、2種類の測定を行った。これらの測定は、試料の領域をカバーし、局所的な表面傾斜を決定するために使用される。
【0103】
次いで、ダイヤモンドは加工のために所望の深さまで軸方向に平行移動され、実際の加工深さは平行移動深さよりも、高NA油レンズの場合には約2倍、高NAエアレンズの場合には約2.7倍大きいことに留意されたい。これは、SLMが上述のように、ダイヤモンドの軸方向並進によってより単純に打ち消されるデフォーカスを除いて、試料界面での屈折によって引き起こされるすべての収差を補正するために使用されるからである。
【0104】
収差補正は、表面測定に基づいてSLMに適用される。補正は、平行移動された軸方向深さに基づく球面収差補正、ならびに、測定されたxおよびy表面傾斜に基づくxおよびy方向のコマ収差を表す。所定のパルスエネルギー(例えば、パルス持続時間250fsの780nm波長光を使用する1.4NA油レンズに対して100nJ)が使用され、5パルスのバーストがダイヤモンド内に発射される。透過型顕微鏡を用いて、所望の点でダイヤモンドの改質が成功したことを検証する。好ましい加工は、約0.5μm(横方向)×約1μm(軸方向)の寸法を有するべきであり、透過型顕微鏡で見ると暗く見える。
【0105】
また、収差は加工を見るために、結像において補償される必要がある。次いで、ダイヤモンドは、改質が見えなくなる点まで、より低いパルスエネルギーおよび/またはドーズ量で依然として改質され得ることが検証される。次に、所望のパターンが、所望のようにダイヤモンド内に作製される。試料に傾斜がある場合、ダイヤモンドの横方向の動きに軸方向の動きが加わり、加工されたポイントがダイヤモンド表面の下に一定の深さを保つようになる。3D加工設計が必要とされる場合、SLM上に表示される位相パターンは、平行移動ステージからのフィードバックに基づいて加工中に自動的に更新される。
【0106】
ダイヤモンドがパルスの第1のバーストで照射されたときに、改質が見えない場合、試料は横方向にわずかな距離(例えば、5μm)だけ平行移動され、SLMに適用される収差モードは、各設定に対して適用されるレーザのバーストを用いて系統的に調整される。ダイヤモンドは、各バースト間で軸方向に平行移動され、ダイヤモンドが必要に応じて改質されるかどうかをチェックする。一旦、正しい位相がSLM上に表示されると、加工はさらなる適応補正を必要とせずに、上述のように直接的に実行される。
【0107】
可視ダイヤモンド改質以外のSLM位相を最適化するために、他の測定基準を使用することができ、例えば、レーザ集光によって引き起こされるダイヤモンドからの非線形フォトルミネセンスを最適化して、収差を補正することができる。この測定のために、レーザパルスエネルギーは、加工がないことを確実にするために(例えば、上述の条件を使用して20nJ未満のパルスエネルギー)低減され、または理想的には、より高い繰返し率および低いパルスエネルギー(80MHzの繰返し率および20nJ未満のパルスエネルギー)を有するレーザに切り替えることによって低減される。集光の特性を測定し、それに影響を及ぼす収差を決定することができる。次いで、集光のストレール比を改善するために、補正を決定し、アクティブ光学素子に適用することができる。適応補正のこのような手順の必要性は、表面の正確な測定が与えられた場合にはまれである。
【0108】
上記の方法はファイバを改質するためにフェムト秒赤外線製造レーザを使用することができるが、本技法は任意の波長または任意のパルス幅の加工システムに適用することもできる。例えば、紫外線(UV)および連続波(CW)システムを使用することができる。典型的には、加工レーザが試料の屈折率の増加を誘発する。しかし、いくつかの材料では、レーザは屈折率の低下を誘発することがある。加工された光学素子は、書込みレーザとは異なる波長で動作することができる。素子は、光学素子の任意の動作波長に合わせて製造されてもよい。
【符号の説明】
【0109】
210 光線群
220 試料
230 歪んだ焦点
232 改善された焦点
240 波面
250 高開口数(NA)レンズ
400 レーザシステム
410 レーザ
420 偏光子
430 空間光変調器(SLM)
440 高NA対物レンズ
450 3次元並進ステージ
460 試料
図1
図2
図3
図4