(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】栄養食品用粉末キット、及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/17 20160101AFI20230414BHJP
【FI】
A23L33/17
(21)【出願番号】P 2021021749
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2021-02-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206439
【氏名又は名称】大川原化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】寒河江 豊昭
(72)【発明者】
【氏名】佐塚 正樹
(72)【発明者】
【氏名】根本 源太郎
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】混合濃厚流動食の粘度測定,山形県立米沢栄養大学紀要,2015年,第1,2号,pp.11-14
【文献】スプレードライヤーによる濃厚流動食の粉末化,山形県立米沢栄養大学紀要,2017年,第4号,pp.9-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L,A61K,A61P
JSTplus/JMEDplus/JST7580(JDreamIII)
メディカルオンライン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各喫食者が1日に必要なアミノ酸源の摂取量であって下記式(1)により算出される量の全量または一部のアミノ酸源を含む栄養食品の調製用材料であり、
少なくとも、1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)が異なる第1の粉末材料と第2の粉末材料の2つの粉末材料を備え、
前記第1の粉末材料と前記第2の粉末材料におけるアミノ酸源の配合量(g/kcal)の差は、0.010~0.065g/kcalであ
り、
前記第1の粉末材料におけるアミノ酸源の配合量(g/kcal)が、0.006g/kcalであり、前記第2の粉末材料におけるアミノ酸源の配合量(g/kcal)が、0.049g/kcalであるか、或いは、
前記第1の粉末材料におけるアミノ酸源の配合量(g/kcal)が、0.010g/kcalであり、前記第2の粉末材料におけるアミノ酸源の配合量(g/kcal)が、0.065g/kcalである、栄養食品用粉末キット。
式(1):アミノ酸源(g/日)=TEE÷(NPC/N×a+b)
(但し、式(1)中、TEEは、総エネルギー消費量(kcal/日)を示し、NPC/Nは、除アミノ酸源エネルギー/窒素(kcal/g)を示す。aは当該アミノ酸源中に占める窒素の割合を示し、bはアミノ酸源のカロリー(kcal/g)を示す。NPC=CE+FEである(但し、CEは、炭水化物とその誘導体の1g当たりのエネルギー量(kcal/g)を示し、FEは、脂質とその誘導体の1g当たりのエネルギー量(kcal/g)を示す)。)
【請求項2】
濃厚流動食用である、請求項
1に記載の栄養食品用粉末キット。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の栄養食品用粉末キットを用いた粉末栄養食品の調製方法であって、
前記第1の粉末材料と前記第2の粉末材料の配合割合を下記式(2)及び(3)によって算出し、算出された配合割合で前記第1の粉末材料と前記第2の粉末材料を混合する、粉末栄養食品の調製方法。
式(2):
前記第1の粉末材料の配合割合(%)=[(|前記第2の粉末材料の1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)-前記式(1)により算出されるアミノ酸源の摂取量(g)|)/|前記第1の粉末材料の1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)-前記第2の粉末材料の1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)|]×100
式(3):
前記第2の粉末材料の配合割合(%)=[(|前記第1の粉末材料の1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)-前記式(1)により算出されるアミノ酸源の摂取量(g)|)/|前記第1の粉末材料の1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)-前記第2の粉末材料の1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)|]×100
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養食品用粉末キット、及びその調製方法に関する。更に詳しくは、本発明は、各喫食者が1日に必要なアミノ酸源が配合された栄養食品を簡単に調製することができ、更に、各喫食者が1日に必要なアミノ酸源を適切に摂取することができる栄養食品用粉末キット、及びこの栄養食品用粉末キットを用いた粉末栄養食品の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院では、例えば外科手術後の患者に対する補給的な食品として栄養食品(栄養補助食品)が提供されている。
【0003】
また、アスリートは、身体能力の向上やトレーニング後の身体疲労低減を目的として、通常の食事に加えて、栄養補助食品を摂取し、また、スポーツ愛好家やウォーキングなどを楽しむ中高年は、体重のコントロール等を目的とするために栄養補助食品を摂取することがある。
【0004】
更に、高齢者福祉施設でも、咀嚼障害や嚥下障害に起因する栄養の摂取不良へ対応すべく高エネルギーの食品である栄養食品が提供されている。
【0005】
このような栄養食品は、栄養学的にバランスの良い栄養組成とすることが必要であり、特にアミノ酸源(タンパク質)を配合することが重要であり、タンパク質を配合したものが報告されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
なお、タンパク質などのアミノ酸源は、十分なエネルギー投与がなければ、いくら投与してもエネルギー源として消費されてしまうので、タンパク質が合成されない。そのため、適切な摂取量とすることが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-210951号公報
【文献】特開2012-136471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の流動食や特許文献2に記載の栄養組成物などの栄養食は、アミノ酸源であるタンパク質の配合量が規定されているが、実際には、タンパク質の必要な摂取量は、各喫食者の状況に応じて異なる。
【0009】
つまり、具体的には、喫食者がアスリートであれば、タンパク質の必要な摂取量は多くなり、また、喫食者が病人である場合には、その症状によってもタンパク質の必要な摂取量は異なる。更には、熱傷の場合には、多くのタンパク質を摂取することがよいが、腎不全の場合には、タンパク質の摂取量は少なくすることがよい。
【0010】
このように、同じ栄養食であっても、喫食者の様々な状況によってタンパク質の必要な摂取量は異なってくる。このような点は、特許文献1,2では何ら考慮されていない。
【0011】
ここで、現代の栄養学で重要なのは、必要エネルギー量(即ち、総エネルギー消費量(以下、「TEE」(kcal)と記す場合がある))に対する栄養生化学的に適切なアミノ酸量である。
【0012】
すなわち、(1)生体内で必要なタンパク質を適切に生合成するためには、食物中のアミノ酸をエネルギー源に回さずに、効率よくタンパク質生合成の材料に使用しなければならない。(2)しかし、これまで、上記(1)のことを前提として定量的に2つ以上の食品を使ってアミノ酸源を調製する栄養生化学的な発想がなかった。(3)しかも、上記(2)のための一定エネルギーあたりのアミノ酸源の量を変化させている専用の食品(本明細書において「栄養食品用粉末キット」と称する)も存在していない。
【0013】
TEEのエネルギー源は、糖、脂質、アミノ酸(タンパク質、ぺプチド分解物を含む)である。なお、これら三つのエネルギー物質を三大栄養素という。この三大栄養素の中で、アミノ酸(タンパク質、ぺプチド分解物を含む)は、エネルギー物質であると同時にタンパク質構成物質でもある。これは生化学上の基本的な事実である(「イラストレイテッドハーパー生化学原書第30版 2016年」参照)。
【0014】
このようにアミノ酸がエネルギー物質であると同時にタンパク質構成物質であることは、TEEとアミノ酸量のアンバランスが起きた時、身体に必要なタンパク質の生合成阻害の発生などの大きな影響を与えることを意味している。そして、身体に必要なタンパク質の生合成阻害が発生すると、例えば、生理学的には筋肉量や免疫能などに大きく影響を与え、個体レベルでは成長不全や健康維持・疾病回復不全や疾病予防の減退などが生じることが想定される。
【0015】
これまで、TEEとアミノ酸量のアンバランスの問題を解決する日本での唯一の指針と言えるのは、「日本人の食事摂取基準」策定検討会発行の「日本人の食事摂取基準」である。
【0016】
しかし、「日本人の食事摂取基準」は、健常者の疫学調査を前提に作成されている。そのため、健常者のエネルギー量や栄養素量の目標値を示すことができてもTEEとアミノ酸量のアンバランスの問題を解決することはできないという状況にあった。また、世界的にもこれまでTEEとアミノ酸のバランスに関する知見は皆無である。
【0017】
そして、このような問題の影響による典型例は、「医療現場における喫食者への栄養処方に関するTEEとタンパク質量(またはアミノ酸量)の決定は、各学会の示すガイドラインに沿って行うこと(ガイドラインに沿って院内基準も作られる)が多かった」ことである。
【0018】
このようなことから、各喫食者が1日に必要なエネルギー源およびアミノ酸源を適切に摂取することができ、更には、特に病院や高齢者福祉施設では、各喫食者が1日に必要なエネルギー源およびアミノ酸源が配合された栄養食品を簡単に調製することができる栄養食品用粉末キットの開発が切望されている。
【0019】
本発明の課題とするところは、上記の問題に鑑みて、各喫食者が1日に必要なエネルギー源およびアミノ酸源を適切に摂取することができ、更には、各喫食者(例えば、病人や高齢者を含む)が1日に必要なエネルギー源(代表例としてTEE)およびアミノ酸源が配合された栄養食品を簡単に調製することができる栄養食品用粉末キット、及びその調製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
[1] 各喫食者が1日に必要なアミノ酸源の摂取量であって下記式(1)により算出される量の全量または一部のアミノ酸源を含む栄養食品の調製用材料であり、
少なくとも、1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)が異なる第1の粉末材料と第2の粉末材料の2つの粉末材料を備え、
前記第1の粉末材料と前記第2の粉末材料におけるアミノ酸源の配合量(g/kcal)の差は、0.010~0.065g/kcalであり、
前記第1の粉末材料におけるアミノ酸源の配合量(g/kcal)は、0.006g/kcalまたは0.010g/kcalであり、
前記第2の粉末材料におけるアミノ酸源の配合量(g/kcal)は、0.049g/kcalまたは0.065g/kcalである、栄養食品用粉末キット。
式(1):アミノ酸源(g/日)=TEE÷(NPC/N×a+b)
(但し、式(1)中、TEEは、総エネルギー消費量(kcal/日)を示し、NPC/Nは、除アミノ酸源エネルギー/窒素(kcal/g)を示す。aは当該アミノ酸源中に占める窒素の割合を示し、bはアミノ酸源のカロリー(kcal/g)を示す。NPC=CE+FEである(但し、CEは、炭水化物とその誘導体の1g当たりのエネルギー量(kcal/g)を示し、FEは、脂質とその誘導体の1g当たりのエネルギー量(kcal/g)を示す)。)
【0022】
[2] 濃厚流動食用である、前記[1]に記載の栄養食品用粉末キット。
【0023】
[3] 前記[1]または[2]に記載の栄養食品用粉末キットを用いた粉末栄養食品の調製方法であって、
前記第1の粉末材料と前記第2の粉末材料の配合割合を下記式(2)及び(3)によって算出し、算出された配合割合で前記第1の粉末材料と前記第2の粉末材料を混合する、粉末栄養食品の調製方法。
式(2):
前記第1の粉末材料の配合割合(%)=[(|前記第2の粉末材料の1kcalに含まれるアミノ酸源の配合量(g)-前記式(1)により算出されるアミノ酸源の摂取量(g)|)/|前記第1の粉末材料の1kcalに含まれるアミノ酸源の配合量(g)-前記第2の粉末材料の1kcalに含まれるアミノ酸源の配合量(g)|]×100
式(3):
前記第2の粉末材料の配合割合(%)=[(|前記第1の粉末材料の1kcalに含まれるアミノ酸源の配合量(g)-前記式(1)により算出されるアミノ酸源の摂取量(g)|)/|前記第1の粉末材料の1kcalに含まれるアミノ酸源の配合量(g)-前記第2の粉末材料の1kcalに含まれるアミノ酸源の配合量(g)|]×100
【発明の効果】
【0026】
本発明の栄養食品用粉末キットによれば、各喫食者が1日に必要なエネルギー源およびアミノ酸源を適切に摂取することができ、更には、各喫食者(例えば、病人や高齢者を含む)が1日に必要なアミノ酸源が配合された栄養食品を簡単に調製することができるという効果を奏する。
【0027】
本発明の粉末栄養食品の調製方法によれば、各喫食者(例えば、病人や高齢者を含む)が1日に必要なエネルギー源およびアミノ酸源が配合された栄養食品を簡単に調製することができ、更には、調製した栄養食品によって、各喫食者が1日に必要なエネルギー源およびアミノ酸源を適切に摂取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】NPC/Nごとのタンパク量および疾患別・侵襲度別を示すグラフである。
【
図2】現代日本の臨床栄養学のあり様を端的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0031】
(1)栄養食品用粉末キット:
本発明の栄養食品用粉末キットの一の実施形態は、各喫食者が1日に必要なエネルギー源およびアミノ酸源の摂取量であって下記式(1)により算出される量の全量または一部のアミノ酸源を含む栄養食品の調製用の材料である。そして、この栄養食品用粉末キットは、少なくとも、1kcalに含まれるアミノ酸源の配合量(g)が異なる第1の粉末材料と第2の粉末材料の2つの粉末材料を備えるものである。
式(1):アミノ酸源(g/日)=TEE÷(NPC/N×a+b)
(但し、式(1)中、TEEは、総エネルギー消費量を示し、NPC/Nは、除アミノ酸源エネルギー/窒素(kcal/g)を示す。ここでNPCは除タンパク質エネルギー(kcal)でNはアミノ酸源由来の窒素量(g)であり、aは当該アミノ酸源中に占める窒素の割合を示し、bはアミノ酸源の1g当たりのカロリー(kcal/g)を示す。)
【0032】
このような栄養食品用粉末キットによれば、少なくとも、1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g/kcal)が異なる第1の粉末材料と第2の粉末材料の2つの粉末材料を備えるので、各喫食者が1日に必要なアミノ酸源が配合された栄養食品を簡単に調製することができる。更に、栄養食品用粉末キットによって調製した栄養食品を摂取することで、各喫食者(例えば、病人や高齢者を含む)が1日に必要なエネルギー源およびアミノ酸源を適切に摂取することができる。
【0033】
また、粉末材料は、液体材料より長期保存ができ、食品衛生上も有利である。
【0034】
更に、粉末材料は、液体材料より、容器の選択範囲も多く運搬も容易である。
【0035】
また、粉末材料は、液体の材料(特に粘度の高い材料)に比べて扱いが容易であり、計量が簡単である。更に、粉末であるので、高粘度の材料に比べて、混ぜ合わせることによって容易に均一な状態とすることができる。
【0036】
式(1)によれば、各喫食者において1日に必要なアミノ酸源の摂取量を適切に算出することができるのでこれを使用するとよい。式(1)は、TEEとNPC/Nでアミノ酸に消化できるタンパク質量を計算する式であり、本明細書においては、以下、「寒河江の式」と記す場合がある。
【0037】
喫食者は、性別・年齢・健康状態を問わず全ての個人を対象とすることができ、本発明では、病人や高齢者などを含む全ての個人に対してその栄養学上の目的ごとに適切な食事を提供することができる。具体的には、「成長期の学童のための適切な食事」や「アスリートが競技で最大限の力を発揮できるための適切な食事」や「術後患者の速やかな体力回復のための適切な食事」などを例示することができる。
【0038】
「アミノ酸源」は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質を含む概念である。例として、式(1)中、a=0.16、b=4(kcal/g)の場合は、タンパク質量を示す。また、a≦1、b=ペプチドのエネルギー(kcal/g)の場合、ペプチド量を示す。また、a≦1、b=アミノ酸のエネルギー(kcal/g)の場合、アミノ酸量を示す。
【0039】
ここで、上述したように、タンパク質などのアミノ酸源は、エネルギー源として消費されることにもなる。そのため、体内でのタンパク質の合成に使用されるためには、適切な量を摂取する必要がある。
【0040】
本発明の栄養食品用粉末キットは、適切な量のアミノ酸源を摂取することができることに加え、複数の粉末材料を備えることで迅速且つ簡便に所望の栄養食品を調製することができる。このように栄養食品を簡便に調製できることは、特に病院や高齢者福祉施設等では非常に重要である。
【0041】
具体的には、高齢者福祉施設では、高齢者の増加に伴い、必要とされる介護も多岐にわたっている。そして、栄養食品等の食事の提供についても、咀嚼・嚥下困難者用の食事に加えて、常食(通常の食事)や糖尿病患者用、腎臓病患者用の食事等の様々な食事を提供する必要がある。その結果、介護スタッフの負担が増加しているという状況がある。そのため、高齢者福祉施設では、栄養食品等の食事を用意する負担を軽減することが重要になっている。このような問題は、病院でも同様に生じている。
【0042】
このような問題に対しては、各喫食者のそれぞれに適したアミノ酸源を含有する栄養食品を予め多数準備しておくことも考えられる。つまり、単位エネルギー量当たりのアミノ酸源の含有量を少しずつ変化させ、含有量を細かく設定して多くのバリエーションを予め用意しておくことも考えられる。しかし、多くのバリエーションを予め用意することは、それらの保存場所を広く確保する必要がある。また、例えば入院している患者の状況によっては、保存されたまま使用されない栄養食品が生じることがある。つまり、アミノ酸源の含有量と患者が必要とする摂取量とが合わないと、使用されないので、例えば熱傷の患者が多い場合には、これに対応する栄養食品の消費が多く、その他の栄養食品の消費が少ない。このような結果として、廃棄される栄養食品が多く生じ、予め作製した栄養食品が無駄になってしまうことがある。
【0043】
なお、栄養成分(5大栄養素)と非栄養成分(食物繊維や機能性成分などの5大栄養素以外の成分)の含有量の多い栄養食品を予め用意し、これを水などで薄めて使用することも考えられるが、水などで薄めると、粘度が低下してしまい、高齢者や患者の状態によっては誤嚥などのリスクが高まるおそれがある。そのため、このような方法も採用し難い。
【0044】
このように、様々な要求に合わせて適切な栄養成分と非栄養成分の含有量の栄養食品を、迅速かつ簡単に調製できることは、特に病院や高齢者福祉施設では切望されており、本発明の栄養食品用粉末キットを採用することによってこの要望を満たすことができる。
【0045】
本発明において、第1の粉末材料と第2の粉末材料は、それぞれ、1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)が異なるものである限り特に制限はなく、具体的な配合量(g/kcal)についても適宜設定することができる。
【0046】
なお、上記の通り、第1の粉末材料と第2の粉末材料におけるアミノ酸源の具体的な配合量(g/kcal)は、適宜設定することができるが、これらの差は、現在の栄養学上0.010~0.065g/kcal程度とすることがよく、本発明では、第1の粉末材料と第2の粉末材料におけるアミノ酸源の配合量(g/kcal)の差は、0.010~0.065g/kcalである。また、第1の粉末材料におけるアミノ酸源の具体的な配合量(g/kcal)は、0.010g/kcal程度とすることができ、第2の粉末材料におけるアミノ酸源の具体的な配合量(g/kcal)は、0.065g/kcal程度とすることができる。
【0047】
粉末材料には、第1の粉末材料と第2の粉末材料以外のその他の粉末材料を有していてもよい。改良のための各種の食品添加物も含むことができる。
【0048】
式(1)中のTEEは、総エネルギー消費量のことであり、日本人の食事摂取基準を見ると、様々な求め方が紹介されており、その中に記載のいずれかで求めることができる。なお、一例を挙げると、この総エネルギー消費量(kcal/日)は、基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベルによって算出することができる。なお、BEE(基礎エネルギー消費量)は、Harris-Benedictの式で以下のように計算できる。
男性:66.4730+13.7516×W+5.0033×H-6.7550×A
女性:655.0955+9.5634×W+1.8496×H-4.6756×A
【0049】
ここで、W:体重(kg)、H:身長(cm)、A:年齢(歳)である。また、身体活動レベルは、活動係数×ストレス係数で示すことができる。すなわち、総エネルギー消費量TEE(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×活動係数×ストレス係数で示される。
【0050】
式(1)中のNPC/Nは、除タンパク質エネルギー窒素比(即ち、非タンパク質カロリー/窒素の値)のことである。
【0051】
ここで、上述したように、タンパク質などのアミノ酸源は、十分なエネルギー投与がなければ、いくら投与してもエネルギー源として消費されてしまい、タンパク質が合成されないことになる。そのため、適切な摂取量とすることが重要となる。NPC/Nは、アミノ酸が有効にタンパク質に合成されるために必要な指標として、必要エネルギーに対してどれくらいの窒素(アミノ酸)を投与しなければいけないのかを表す値である。なお、健常時には、NPC/Nは、150~200程度である。
【0052】
式(1)中のaは、窒素割合のことであり、この窒素割合は、食品中に含まれるアミノ酸源中の窒素量(%)/100である。例えば、タンパク質の場合、a=0.16である。これは以下のようにして計算される。典型的なタンパク質中には、16%の窒素が含まれている。つまり、典型的なタンパク質量のa=16%÷100%=0.16である。なお、他の窒素割合も同様に求めることができる。
【0053】
式(1)中、NPCは、式:CE+FEで算出される値である。但し、当該式(1)中、CEは、炭水化物とその誘導体の1g当たりのエネルギー量(kcal/g)を示し、FEは、脂質とその誘導体の1g当たりのエネルギー量(kcal/g)を示す。
【0054】
このようにCE、FEを採用すると、各喫食者のTEEに応じて、より正確な量のアミノ酸源を摂取することができる。特にアスリートや病者の場合には、TEEに基づいて、より正確な量のアミノ酸源を摂取することが好ましい。
【0055】
本発明における「栄養食品」は、その種類等について特に制限はないが、経腸栄養食品を挙げることができ、特に経腸栄養食品の中でも濃厚流動食とすることができる。濃厚流動食とすることで、エネルギー源およびアミノ酸源の摂取量をより正確に調整することが望まれる患者に適切にエネルギー源およびアミノ酸源を摂取させることができる。濃厚流動食は、咀嚼障害や嚥下障害などによる栄養の摂取不良を解消するためのものであり、具体的には、カロリー値が1kcal/mL以上であり、タンパク質などのアミノ酸源等の栄養成分を含み、流動性を有する食品である。
【0056】
上記複数の粉末材料の作製方法は、特に制限はないが、それぞれの粉末材料について、例えば、所定のアミノ酸源等を含有する液体原料を調製した後、この液体原料をスプレードライヤーなどの乾燥機によって粉末化する方法を挙げることができる。
【0057】
粉末材料には、アミノ酸源以外にその他の栄養素を含有させることができる。このように、粉末材料には、アミノ酸源とエネルギー源を含有させることができる。
【0058】
ここで、以下に、「寒河江の式」の栄養生化学的な活用方法について説明する。
【0059】
まず、
図1中、X軸上矢印で示された「健常時」の範囲は、上述した「日本人の食事摂取基準」で目標値としての示される範囲である。すなわち、「日本人の食事摂取基準」の三大栄養素量とエネルギー量は、この「寒河江の式」で示すことが可能である。寒河江の式では、個人ごとのNPC/N(即ち、「糖由来エネルギー量と脂質由来エネルギー量に対する窒素比」)の値が設定されれば、TEEとNPC/Nの関係図(
図1参照)からTEEに対して摂取すべきタンパク質の適正量が計算できる。
図1は、式(1)がNPC/NとTEEの関係で傷病の喫食者の栄養処方に対応できることを示す説明図である。Y軸において、/100kcalは、設定エネルギー100kcalを示す。例えば、計算値としてTEEを用いた場合、/TEE100kcalである。
【0060】
TEEに対して摂取すべきタンパク質の適正量の計算方法は、以下(イ)~(ニ)の順とすることができる。
(イ)TEEを計算する。
(ロ)NPC/Nを健常者・病者に合わせた矢印の範囲で設定するか、或いは、尿検査(窒素出納)や血液検査のデータに基づいて設定する。
(ハ)NPC/Nの値をもとに
図1のY軸からタンパク質量A(g/100kcal)を読み取る。
(ニ)TEEに対する適正タンパク質量を算出する。即ち、TEEに対する適正タンパク質量(g/日)=TEE(kcal/日)×A/100(g/kcal)となる。
【0061】
次に、TEEに対して摂取すべきタンパク質の適正量の計算方法についての具体的な手順を以下の(a)~(d)に示す。
【0062】
(a)ある任意の日、健常者の甲さんは、基礎代謝、ストレス係数、活動係数から、TEEが2000kcal/日と計算できた。
(b)TEEを計算した日と同日の甲さんのNPC/Nについて、以下の(i)または(ii)から設定する。
ここでは、下記(ii)の考え方をして、甲さんの尿検査で窒素出納=0とするNPC/Nを180と想定した。
(i)臨床栄養学上の典型的な想定値を用いる(X軸上矢印で示された各範囲での病態などに合わせた想定である。ここで、甲さんは健常者なので、NPC/N=150~200のいずれかの値に設定する)
(ii)血液検査や尿検査(甲さんの窒素出納を-≦0≦+のどこにしたいのか医学的視点で決まる)で設定する。
(c)NPC/N=180(g/kcal)としたことから、
図1からタンパク質量は100kcal当たり3.05gである。
(d)上記(a)と(c)から、本日の甲さんのTEE 2000kcalでの適正タンパク質量は、2000(kcal/日)×3.05/100(g/kcal)=20×3.05(g/日)=61(g/日)となる。
【0063】
つまり、甲さんのこの日の生活活動には、2000kcal/日のエネルギーと61g/日のタンパク質を取る必要があるということになる。
【0064】
なお、上記エネルギー量とタンパク質量を実際に甲さんが摂取したならば、甲さんの窒素出納が見かけ上0となり、筋肉量が減ることもなければ増えることもない。
【0065】
もし、甲さんが多少筋肉量を増やしたいならば、栄養生化学の理論上、TEEをそのままに、61g/日以上のタンパク質を取ることが推奨される。ただし、腎臓などに負担が掛からないようにすべきであり、上限値はある。
【0066】
また、仮に甲さんが、筋肉量を減らしたい場合、例えば、TEEは2000kcal/日としたまま、摂取するタンパク質量を61g/日以下にすればよい。
【0067】
上記の例示のように「寒河江の式」を基に作成した
図1を使えば、TEEに対する適切なタンパク質量またはアミノ酸量を含む喫食者個別の栄養処方が分かることになる。
【0068】
次に、
図2には、現代日本の臨床栄養学のあり様を端的に示す。
図2に示すように、管理栄養士は、医療の頂点にある医師(M.D.(Doctor of Medicine)とその基にいる看護師(RN(Registered Nurse)に栄養学的な提案をすることが医療に関わることが求められる。そして、管理栄養士の提案は、「医師の琴線に触れる提案であるべき」である。
図2中、矢印は各分野からのM.D.やRNへのSuggestion(提案)を示している。
【0069】
管理栄養士がSuggestionのために知るべき技術の中には、栄養調製法の選択であり、具体的には、栄養公式に基づく現場で簡便に使える様々な簡易な栄養調製法の理解が必要である。そして、その技術のアドバンスは、TEEに対する適切なアミノ酸源量の理論的根拠になる「寒河江の式」と簡易な栄養調製法の根拠となる公式の理解である。ここで、栄養調製法の選択は、管理栄養士としてのニーズでどの栄養調製法を使うかが決まる。ここでいうニーズとは、喫食者の身体状態によって必要になる栄養である。よって、そのニーズで、必要な栄養調製法を選べばよいということになる。
【0070】
(2)粉末栄養食品の調製方法:
本発明の栄養食品用粉末キットを用いて、粉末栄養食品を調製することができる。この方法は、具体的には、第1の粉末材料と第2の粉末材料の配合割合を下記式(2)及び(3)によって算出し、算出された配合割合で第1の粉末材料と第2の粉末材料を混合する。
式(2):
第1の粉末材料の配合割合(%)=[(|前記第2の粉末材料の1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)-前記式(1)により算出されるアミノ酸源の摂取量(g)|)/|前記第1の粉末材料の1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)-前記第2の粉末材料の1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)|]×100
式(3):
第2の粉末材料の配合割合(%)=[|(第1の粉末材料の1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)-式(1)により算出されるアミノ酸源の摂取量(g)|)/|第1の粉末材料の1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)-第2の粉末材料の1kcal当たりのアミノ酸源の配合量(g)|]×100
【0071】
このような方法によれば、複数の粉末材料を所定の割合で混ぜるだけで迅速かつ簡便に粉末栄養食品を調製することができる。例えば、医療や介護の現場では、上述の通り流動食等の調製の手間を軽減することが望まれる。このような状況において、粉末材料を用いると、液体の材料(特に粘度の高い材料)に比べて扱いが容易であり、計量が簡単である。また、粉末であるので、高粘度の材料に比べて、混ぜ合わせることにより容易に均一な状態とすることができる。また、調製した粉末栄養食品を喫食する場合、液状とすることが多く、医療や介護の現場では簡便に液状とした栄養食品の調製が必要となるため、調製された粉末栄養食品は、素早く水に溶解させることが可能となる特性が必要となる。このように、調製した粉末栄養食品には様々な粉体物性が要求され、その作製方法は、特に制限はないが、所定のアミノ酸源等を含有する液体原料を調製した後、この液体原料をスプレードライヤーなどの乾燥機によって粉末化する方法が有効である。
【0072】
複数の粉末材料を混合する方法は、特に制限はなく適宜採用することができる。
【0073】
粉末栄養食品の調製方法(混合方式(以下、「X算」と記す場合がある))の有用性について以下に説明する。
【0074】
第1の粉末材料としてA製品(1.0gタンパク質/100kcal)、第2の粉末材料としてB製品(3.5gタンパク質/100kcal)のように、タンパク質量が異なる粉末材料(濃厚流動食の材料)を用意する。そして、喫食者である患者に(1日の栄養設定で)必要なアミノ酸源量g/TEEが48g/2000kcalであるとする。即ち、1日にエネルギーが2000kcalと、48gのアミノ酸源量が必要な患者がいるとする。
【0075】
ここで、この必要なアミノ酸源量は、式(1)から、より具体的な式(4):アミノ酸源量(g/日)=設定エネルギー/(B+C×A)として計算できるアミノ酸源量である。
【0076】
上記式(4)中、設定エネルギーは、TEEに代表される個人ごと設定される任意のエネルギー量(kcal/日)である。Aは、除アミノ酸源エネルギー/N=糖と脂質のエネルギー/N(kcal/g)である。なお、糖と脂質のエネルギーの単位はkcalであり、Nはアミノ酸源由来の窒素量で単位は「g」である。Bは、1gアミノ酸源当たりのエネルギー量(kcal/g)であり、Cは、当該アミノ酸源中に占める窒素の割合(例えばケルダール法における窒素-タンパク質換算係数から計算可能な値など)である。
【0077】
具体的には、TEEが1kcal当たりの必要なアミノ酸源量を計算すると、ここでアミノ酸源には食事中のタンパク質がそれにあたるので、アミノ酸源量=タンパク質量として計算すると、タンパク質量48g/2000kcal=0.024g/kcalであり、A製品1kcalのタンパク質量1.0g/100kcal=0.010g/kcalであり、B製品1kcalのタンパク質量3.5g/100kcal=0.035g/kcalである。
【0078】
式(2)に基づいてA製品(第1の粉末材料)の使用割合を計算すると、以下のようになる。即ち、A製品の使用割合(%)=|(B製品のタンパク質量g/kcal-TEEのタンパク質量g/kcal)|/|(B製品のタンパク質量g/kcal-A製品のタンパク質量g/kcal)|×100である。具体的には、A製品の使用割合(%)は、|(0.035g/kcal-0.024g/kcal)|/|(0.035g/kcal-0.010g/kcal)|×100=44%である。
【0079】
式(3)に基づいてB製品(第2の粉末材料)の使用割合を計算すると、以下のようになる。即ち、B製品の使用割合(%)=|(A製品のタンパク質量g/kcal-TEEのタンパク質量g/kcal)|/|(B製品のタンパク質量g/kcal-A製品のタンパク質量g/kcal)|×100である。具体的には、B製品の使用割合(%)は、|(0.010g/kcal-0.024g/kcal)|/|(0.035g/kcal-0.010g/kcal)|×100=56%である。
【0080】
ここで、A製品とB製品は、単位カロリー当たりのアミノ酸源量(ここではタンパク質量)が異なるものであり、かつ、アミノ酸源量(ここではタンパク質量)はA製品<B製品である。なお、単位カロリーは、設定カロリー(例えば100kcal)にも変更できる。
【0081】
上記のように、設定エネルギーとして例えばTEEが分かっていて、TEEに対する必要タンパク質量が明らかであれば、単位kcal当たりで換算したそれぞれの製品のタンパク質量(g)をTEE 1kcal当たりの必要タンパク質量(g/kcal)で減ずれば、A製品とB製品の使用量(g)を算出できる。そして、このA製品やB製品の使用量(g)を0.025g(A製品とB製品の変化量を示す値(0.035g/kcal-0.010g/kcal)で割り、百分率に直すため100倍とすれば、A製品とB製品の使用割合が計算できる。この手法(X算)を使えば、簡便に、必要とするエネルギー量とタンパク質量に合わせることができる。
【0082】
(3)栄養食品の摂取方法:
粉末栄養食品の調製方法で調製した粉末栄養食品は、以下のように摂取することができる。即ち、粉末栄養食品の調製方法で調製した粉末栄養食品を、1日のうちに経口摂取する。
【0083】
このような摂取方法によれば、栄養食品を簡単に調製することができるとともに、各喫食者が1日に必要なエネルギー源およびアミノ酸源を適切に摂取することができる。
【0084】
更には、上述した調製した粉末栄養食品に、液体飲料を添加して得られる液状化栄養食品を経口摂取する方法であってもよい。このように液状化栄養食品とすることで、摂取し易くなる。
【0085】
液体飲料は、粉末状の粉末栄養食品を液状とすることができるものである限り特に制限はないが、液体飲料としては、具体的には、水、白湯などを挙げることができる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0087】
(実施例1)
単位エネルギー当たりのタンパク質量が異なる二種類の粉末化濃厚流動食を混合して得られる混合粉末化濃厚流動食の栄養学的な有用性についての結果を以下に示す。
【0088】
(1)「ボランティアによる飲用試験」
健常者4名(男性1名、女性3名)により、粉末化濃厚流動食A(0.6g/100kcal)、粉末化濃厚流動食B(4.9g/100kcal)を用いて、飲用試験を行った。スケジュールと摂取方法は、以下の通りとした。
【0089】
摂取期間は、4日間とし、朝食は、混合粉末化濃厚流動食と普通食とし、昼食と夕食は、普通食とした。朝食のエネルギー量とタンパク質量は表1の通りとした。昼食と夕食は、各人の1日に必要なTEEとタンパク質量を普通食で摂取した。
【0090】
【0091】
表1のTEEは、青年を想定し典型的な、Harris-Benedictの式でBEEを算出し、日常の活動量を参考にLongの式を用いて1日当たりのエネルギー量(TEE)とした。表1の各人の1日必要量のタンパク質量の計算は、NPC/N=175(健常者の平均値)として行った。表1の粉末化濃厚流動食の調製における粉末化濃厚流動食A(0.6g/100kcal)、粉末化濃厚流動食B(4.9g/100kcal)の混合比(%)は、上記式(2)および(3)を用いて計算した。結果を表2に示す。
【0092】
【0093】
(結果)
1日の必要総エネルギー量(TEE)とNPC/Nに基づく1日に必要なタンパク質量(g)が喫食で充足されていれば、窒素出納に有意差は見られないことになる。今回、4日間で摂取試験を行ったが、粉末化濃厚流動食摂取時と普通食の尿中窒素量をノンパラメトリックなデータの検定手法であるWilcoxon signed-rank testにて経腸栄養剤の飲用期間と非飲用期間に有意差は認められなかった。
【0094】
濃厚流動食投与の身体的変化として、腹部膨満感、下痢・便秘、嘔吐反射を惹起する場合がある。しかし、今回の試験では何れも「変化なし」であった。
【0095】
以上をまとめると、2種類の粉末化濃厚流動食の代謝は、普通食摂取時と同様の代謝が認められた。安全性の面では、経腸栄養剤の副作用とし腹部膨満感、下痢・便秘、嘔吐反射が特徴としてあるが、何れも「変化なし」であり、本実施例の栄養食品用粉末キットの安全性が認められた。よって、「寒河江の式」に基づいて単位エネルギー当たりタンパク質量が異なる二種類の粉末化濃厚流動食の混合流動食の飲用は、栄養学的に安全で有効な手段であると示された。
【0096】
以上のように、各喫食者が1日に必要なアミノ酸源が配合された栄養食品を簡単に調製することができ、更には、栄養食品用粉末キットによって調製した栄養食品を摂取することで、各喫食者が1日に必要なエネルギー源およびアミノ酸源を適切に摂取することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の栄養食品用粉末キットは、病院や高齢者福祉施設などで提供する栄養食品を調製するための材料として利用することができる。また、本発明の粉末栄養食品の調製方法は、病院や高齢者福祉施設などで提供する栄養食品の調製方法として採用することができる。また、栄養食品の摂取方法は、病院や高齢者福祉施設などで提供する栄養食品の摂取方法として採用することができる。