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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】ベッセル装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 3/02 20060101AFI20230414BHJP
   E02F 7/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B66C3/02 Z
E02F7/00 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021142345
(22)【出願日】2021-09-01
(65)【公開番号】P2022044565
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2020150022
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年5月31日に株式会社南鉄工所が、株式会社小野寺土木に、南伸吾及び佐藤宏幸が発明したベッセル装置を販売した。
(73)【特許権者】
【識別番号】592154020
【氏名又は名称】株式会社南鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】南 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏幸
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-119381(JP,U)
【文献】特開平11-171291(JP,A)
【文献】特開2003-012266(JP,A)
【文献】特開昭51-141157(JP,A)
【文献】実開昭58-030603(JP,U)
【文献】特開昭59-222791(JP,A)
【文献】特開平7-76483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-3/20
E02F 7/00-7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面開口部を備えたベッセル本体と、当該底面開口部を開閉する底蓋を備えたベッセル装置において、
前記ベッセル本体を昇降させる本体用アクチュエータと、前記底蓋を回動させる底蓋用アクチュエータと、当該本体用アクチュエータ及び底蓋用アクチュエータの一端側を連結する連結ブラケットを備え、
前記底蓋は前記底面開口部を開閉できるように前記ベッセル本体に回動可能に連結され、
前記本体用アクチュエータは、一端側が前記連結ブラケットに、他端側が前記ベッセル本体に連結され、
前記底蓋用アクチュエータは、一端側が前記連結ブラケットに、他端側が前記底蓋に連結され、
前記底蓋用アクチュエータが伸長すると底蓋が開方向に回動して前記底面開口部が開放され、
前記底蓋が開放された状態で本体用アクチュエータが伸長すると前記ベッセル本体が押し下げられ、当該ベッセル本体が押し下げられる動きに伴って前記底蓋が閉方向に回動して当該底蓋によってベッセル本体の底面開口部が閉じられる、
ことを特徴とするベッセル装置。
【請求項2】
請求項1記載のベッセル装置において、
伸長した本体用アクチュエータ及び底蓋用アクチュエータは、当該本体用アクチュエータ及び底蓋用アクチュエータに係る外力が取り除かれると収縮する、
ことを特徴とするベッセル装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のベッセル装置において、
本体用アクチュエータ及び底蓋用アクチュエータが油圧アクチュエータであり、
前記油圧アクチュエータは油圧回路に接続され、
前記油圧回路は、少なくとも本体用電磁弁、底蓋用電磁弁、第一のアキュムレータ及び第二のアキュムレータを備え、
伸長した本体用アクチュエータ及び底蓋用アクチュエータが収縮するときは、前記本体用電磁弁及び底蓋用電磁弁が閉じられた状態であり、
前記本体用アクチュエータ及び底蓋用アクチュエータが収縮する過程で第一のアキュムレータから排出される作動油は本体用アクチュエータの油室及び底蓋用アクチュエータの油室に供給され、当該本体用アクチュエータの他方の油室から排出される作動油は第二のアキュムレータに貯圧される、
ことを特徴とするベッセル装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のベッセル装置において、
本体用アクチュエータ及び底蓋用アクチュエータが油圧アクチュエータであり、
前記油圧アクチュエータは油圧回路に接続され、
前記油圧回路は、少なくとも本体用電磁弁、底蓋用電磁弁、第一のアキュムレータ及び第二のアキュムレータを備え、
底蓋が開くときは、前記本体用電磁弁が閉じられ、前記底蓋用電磁弁が開かれた状態であり、
前記底蓋が開く過程で前記油圧アクチュエータの油室から排出される作動油は前記第一のアキュムレータに貯圧される、
ことを特徴とするベッセル装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載のベッセル装置において、
本体用アクチュエータ及び底蓋用アクチュエータが油圧アクチュエータであり、
前記油圧アクチュエータは油圧回路に接続され、
前記油圧回路は、少なくとも本体用電磁弁、底蓋用電磁弁、第一のアキュムレータ及び第二のアキュムレータを備え、
底蓋が閉じるときは、前記本体用電磁弁が開かれ、前記底蓋用電磁弁が閉じられた状態であり、
前記底蓋が閉じる過程で前記第二のアキュムレータから排出される作動油は前記本体用アクチュエータの一方の油室に供給され、当該本体用アクチュエータの他方の油室から排出される作動油は前記第一のアキュムレータに貯圧される、
ことを特徴とするベッセル装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のベッセル装置において、
コントローラと当該コントローラからの信号を受信可能な無線受信機を備え、
前記無線受信機はベッセル本体に搭載され、
前記コントローラからの信号が前記無線受信機で受信されると、当該信号に基づいて本体用アクチュエータ又は/及び底蓋用アクチュエータが動作する、
ことを特徴とするベッセル装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のベッセル装置において、
連結ブラケットに連結された吊り下げ手段と、
前記吊り下げ手段が所定方向に倒れるように誘導する誘導手段を備えた、
ことを特徴とするベッセル装置。
【請求項8】
請求項7記載のベッセル装置において、
誘導手段の取り付け位置を切り替えることによって、吊り下げ手段の倒れる方向を切り替えることができる、
ことを特徴とするベッセル装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載のベッセル装置において、
吊り下げ手段は、連結ブラケットに連結された吊りロッドと吊りハンガーを備え、
前記吊りロッドは吊りハンガーに揺動可能に連結された、
ことを特徴とするベッセル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックなどの搬送車輌の荷台に、土砂などの搬出物を投入する際に用いるベッセル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
掘削を伴う建設工事では大量の土砂が発生する。たとえば、構築物を上から下に向けて構築するいわゆる逆打ち工法では、地盤の掘削によって発生した土砂を地上に引き上げて搬送する必要がある。この工法では、土砂をショベルカーで掬い上げ、その土砂をクレーン車で吊られたベッセル装置に投入する。その後、土砂が投入されたベッセル装置をクレーン車で地上まで引きあげ、ベッセル装置内の土砂を地上で待機している搬送車輌(トラック)に排出し、その搬送トラックで所定の場所まで搬送する。
【0003】
従来、搬出する土砂を投入するベッセル装置として、箱型の本体の底面側に開閉式の蓋を備えたものが知られている(特許文献1及び2)。特許文献1記載のベッセル装置は、油圧シリンダとチェーンを用いて底蓋を開閉できるようにしたものであり、特許文献2記載のベッセル装置は油圧シリンダとワイヤを用いて底蓋を開閉できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2794529号公報
【文献】特開平7-76483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1及び2記載の従来のベッセル装置では、底面開口部を閉塞するために油圧シリンダで底蓋を引き上げる必要があり、底蓋の自重を引き上げるための動力源(油圧ポンプやエンジンなど)を搭載する必要がある。このような動力源を搭載すると、ベッセル装置の大型化や重量化、複雑化などを招く。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ベッセル装置の大型化や重量化、複雑化を解決することのできるベッセル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のベッセル装置は、底面開口部を備えたベッセル本体と、当該底面開口部を開閉する底蓋を備えたベッセル装置であって、ベッセル本体を昇降させる本体用アクチュエータと、底蓋を回動させる底蓋用アクチュエータと、本体用アクチュエータ及び底蓋用アクチュエータの一端側を連結する連結ブラケットを備えている。底蓋は底面開口部を開閉できるようにベッセル本体に回動可能に連結されている。本体用アクチュエータは、一端側が連結ブラケットに、他端側がベッセル本体に連結され、底蓋用アクチュエータは、一端側が連結ブラケットに、他端側が底蓋に連結されている。底蓋用アクチュエータが伸長すると底蓋が開方向に回動して底面開口部が開放され、底蓋が開放された状態で本体用アクチュエータが伸長するとベッセル本体が押し下げられ、ベッセル本体が押し下げられる動きに伴って底蓋が閉方向に回動して底蓋によってベッセル本体の底面開口部が閉じられるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のベッセル装置は、本体用アクチュエータでベッセル本体を押し下げることによって底蓋を閉じるように構成され、底蓋を引き上げるための動力源が必要ないため、ベッセル装置の大型化や重量化、複雑化などの課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のベッセル装置の使用状態の一例を示す説明図。
図2】本発明のベッセル装置の底蓋が閉じた状態の斜視図。
図3】本発明のベッセル装置の底蓋が開いた状態の斜視図。
図4】(a)は本発明のベッセル装置の一例を示す正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の背面図、(d)は(a)の左側面図。
図5】本発明のベッセル装置の底蓋の開閉制御系統の一例を示すもの。
図6】エアブリーザを省略したベッセル装置の一例を示す説明図。
図7図5に示す開閉制御系統における作動油の流れの説明図であって、(a)は底蓋を開くときの作動油の流れを示すもの、(b)は底蓋を閉じるときの作動油の流れを示すもの、(c)は伸長した本体用アクチュエータ及び底蓋用アクチュエータを収縮させるときの作動油の流れを示すもの。
図8】本発明のベッセル装置の動作説明図であって、(a)は底蓋を閉じた状態を示すもの、(b)は底蓋を開けた状態を示すもの、(c)はベッセル本体用のシリンダを伸ばして底蓋を閉じた状態を示すもの、(d)はベッセル装置を接地させてシリンダを縮めた状態を示すもの、(e)は吊り具を下げた状態を示すもの。
図9】(a)は誘導手段の一例を示す説明図、(b)は誘導手段を付け替える場合の説明図。
図10】(a)はベッセル本体の傾きを吸収する構造を備えたベッセル装置の一例を示す説明図、(b)は(a)のb部拡大説明図、(c)は上連結片の丸孔の説明図、(d)は下連結片の長孔の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
本発明のベッセル装置1の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。本発明のベッセル装置1は、搬送対象物を搬送車輌へ投入するのに用いる装置である。たとえば、図1のような逆打ち工法が行われる現場で、ショベルカーAで掘削した土砂をトラックBで搬送するにあたり、当該土砂をトラックBに投入する際にクレーン車CのフックC1に吊り下げて使用することができる。
【0011】
一例として図2及び図3に示すベッセル装置1は、上下に開口部を備えた角筒状のベッセル本体10と、ベッセル本体10の底面側の開口部(以下「底面開口部」という)16を開閉する一対の観音開きの底蓋20を備えている。
【0012】
この実施形態のベッセル本体10は、正面部11、右側面部12、背面部13及び左側面部14が連続する四角筒状であり、上面には土砂を投入するための上面開口部15が、底面には土砂を排出するための底面開口部16が設けられている。
【0013】
前記一対の底蓋20のうち、一方の底蓋(以下「第一底蓋」という)20aは右側面部12に、他方の底蓋(以下「第二底蓋」という)20bは左側面部14に取り付けられている。両底蓋20は、いずれもヒンジ金具21によって回動可能に取り付けられ、両底蓋20を閉じることによってベッセル本体10の底面開口部16を閉塞することができ、両底蓋20を開けることによって底面開口部16を開放できるように構成されている。
【0014】
図2及び図3では省略しているが、この実施形態のベッセル装置1には、ベッセル本体10昇降用の油圧アクチュエータ(以下「本体用アクチュエータ」という)30と、底蓋20開閉用の油圧アクチュエータ(以下「底蓋用アクチュエータ」という)40が設けられている。この実施形態では、本体用アクチュエータ30及び底蓋用アクチュエータ40として油圧シリンダを用いている。
【0015】
この実施形態では、本体用アクチュエータ30として、ベッセル本体10の正面部11側に本体第一アクチュエータ30aが、背面部13側に本体第二アクチュエータ30bが設けられている。この実施形態では、両本体アクチュエータ30は、同期して動作するようにしてある。図示は省略しているが、本体第一アクチュエータ30a及び本体第二アクチュエータ30bの外側には、土砂や雨水よけのカバーを設けてある。これにより砂詰まりや発錆等による動作不良を最小限に抑えることができる。カバーは必要に応じて設ければよく、不要な場合には省略することができる。
【0016】
この実施形態では、底蓋用アクチュエータ40として、第一底蓋20aを回動させる二基の底蓋第一アクチュエータ40a、40bと、第二底蓋20bを回動させる二基の底蓋第二アクチュエータ40c、40dが設けられている。この実施形態では、四基の底蓋用アクチュエータ40が同期して動作するようにしてある。
【0017】
前記本体第一アクチュエータ30aは、シリンダボトムが第一連結ブラケット(第一吊りブラケット)51aに連結され、ロッドトップがベッセル本体10の正面部11に突設された本体第一フランジ17aにピンで連結されている。
【0018】
同様に、前記本体第二アクチュエータ30bは、シリンダボトムが第二連結ブラケット(第二吊りブラケット)51bに連結され、ロッドトップがベッセル本体10の背面部13に突設された本体第二フランジ17bにピンで連結されている。
【0019】
前記ベッセル本体10は、両本体用アクチュエータ30のロッドがシリンダチューブから押し出されて伸長すると降下し、ロッドがシリンダチューブ内に引き戻されて収縮すると上昇するように構成されている。
【0020】
前記底蓋第一アクチュエータ40aは、ロッドトップが第一吊りブラケット51aに、シリンダボトムが第一底蓋20aに上向きに突設された底蓋第一フランジ22aに連結されている。同様に、底蓋第二アクチュエータ40cは、ロッドトップが第一吊りブラケット51aに連結され、シリンダボトムが第一底蓋20aに上向きに突設された底蓋第三フランジ22cに連結されている。
【0021】
前記底蓋第一アクチュエータ40bは、ロッドトップが第二吊りブラケット51bに、シリンダボトムが第二底蓋20bに上向きに突設された底蓋第二フランジ22bに連結されている。同様に、底蓋第二アクチュエータ40dは、ロッドトップが第二吊りブラケット51bに、シリンダボトムが第二底蓋20bに上向きに突設された底蓋第四フランジ22dに連結されている。両底蓋20は連結する底蓋用アクチュエータ40のロッドがシリンダチューブから押し出されて伸長すると開き、ロッドがシリンダチューブ内に引き戻されて収縮すると閉じるように構成されている。
【0022】
図示は省略しているが、本体第一アクチュエータ30a、底蓋第一アクチュエータ40a及び底蓋第二アクチュエータ40cの外側には緩衝装置(バンパー)が設けられ、本体第一アクチュエータ30a、底蓋第一アクチュエータ40a及び底蓋第二アクチュエータ40cの損傷を防止できるようにしてある。本体第二アクチュエータ30b、底蓋第一アクチュエータ40b及び底蓋第二アクチュエータ40dの外側にも同様のバンパーが設けられている。
【0023】
前記第一吊りブラケット51aと第一吊りロッド52aはその間に配置された第一つなぎブラケット57aを介して連結され、前記第二吊りブラケット51bと第二吊りロッド52bはその間に配置された第二つなぎブラケット57bを介して連結されている。
【0024】
第一吊りロッド52aと第二吊りロッド52bのそれぞれの外周には、衝撃吸収手段58(第一衝撃吸収手段58a及び第二衝撃吸収手段58b)が設けられている。衝撃吸収手段58を設けることで、ベッセル装置1を着地させる際に生じる吊りハンガー53の質量による衝撃荷重を吸収し、吊りハンガー53の挙動を穏やかにすることができる。この実施形態では、衝撃吸収手段58としてばねを用いる場合を一例としているが、衝撃収集手段58はばね以外であってもよい。
【0025】
前記第一吊りロッド52aと第二吊りロッド52bは吊りハンガー53で連結されている。吊りハンガー53の上面には係止ブラケット54が設けられ、当該係止ブラケット54にはクレーン車C(図1)のフックC1を係止するための係止環55が設けられている。この実施形態では、第一吊りロッド52a、第二吊りロッド52b、吊りハンガー53、係止ブラケット54及び係止環55で吊り下げ手段が構成されている。吊り下げ手段はその一部を省略することもできる。吊り下げ手段はこれ以外の構成とすることもできる。
【0026】
図4(a)~(d)に示すように、この実施形態のベッセル装置1には、無線受信機61、バッテリ62、電磁弁63、アキュムレータ64、圧力計65が搭載されている。図示しないリモートコントローラを用いて底蓋20の開閉操作を行うと、本体用アクチュエータ30及び両底蓋用アクチュエータ40が動作して、底蓋20が開閉するようにしてある。操作には非リモートのコントローラを用いることもできる。コントローラはクレーン車Cの操縦席に取り付け、クレーン車Cの操縦者が操作できるようにしてもよい。
【0027】
図5に示すように、無線受信機61はDCコンバータ66を介してバッテリ62に接続され、バッテリ62から供給される電源がDCコンバータ66で変換(たとえば、18Vから24Vに変換)されて無線受信機61に供給される。
【0028】
前記無線受信機61には、電磁弁63として底蓋20用の電磁弁(以下「底蓋用電磁弁」という)63aとベッセル本体10用の電磁弁(以下「本体用電磁弁」という)63bが接続されている。
【0029】
前記底蓋用電磁弁63aは油路により底蓋用アクチュエータ40に接続されている。各底蓋用アクチュエータ40には、外部からの粉塵の侵入を防止するためのエアブリーザ67が接続されている。エアブリーザ67は省略することもできる。この場合、油路の大気開放をやめてベッセル本体10の気密空間に接続することができる。これにより、シリンダ内への粉塵や水蒸気の侵入を遮断し、シリンダ内部の劣化を遅らせることができる。
【0030】
前記底蓋用電磁弁63aは、底蓋用アクチュエータ40のシリンダの伸び動作を制御する第一のアキュムレータ(以下「伸び制御アキュムレータ」という)64aに接続されている。伸び制御アキュムレータ64aと底蓋用電磁弁63aの間の油路には、作動油の流量を調整するための第一可変絞り弁68a、圧力が過大になったときに自動で圧力を開放する第一リリーフ弁69a及び作動油の逆流を防止する第一逆止弁70aが接続されている。
【0031】
前記本体用電磁弁63bは、油路により本体用アクチュエータ30及び底蓋用アクチュエータ40のシリンダの伸び動作を制御する伸び制御アキュムレータ64aに接続されている。底蓋用電磁弁63aと伸び制御アキュムレータ64aの間の油路には、作動油の流量を調整するための第二可変絞り弁68b、圧力が過大になったときに自動で圧力を開放する第二リリーフ弁69b及び作動油の逆流を防止する第二逆止弁70bが接続されている。
【0032】
また、各本体用アクチュエータ30は、本体用アクチュエータ30の縮み動作を制御する第二のアキュムレータ(以下「縮み制御アキュムレータ」という)64bに接続されている。各本体用アクチュエータ30と縮み制御アキュムレータ64bの間の各油路には、作動油の流量を調整するための逆止弁付き可変絞り弁71a、71bが設けられている。
【0033】
(動作)
この実施形態のベッセル装置1の動作を、図7(a)~(c)を参照して説明する。ここでは、底蓋20が開く際の動作、開いた底蓋20が閉じる際の動作、底蓋20が閉じたあと本体用アクチュエータ30及び底蓋用アクチュエータ40を初期状態(収縮した状態)に戻す際の動作に分けて説明する。なお、開閉制御系統の具体的な構成は図5と同じであるため、図7(a)~(c)では符号を省略する。
【0034】
(1)底蓋が開く際の動作
無線受信機61で底蓋20を開く信号が受信されると、底蓋用電磁弁63aが開いて底蓋用アクチュエータ40から作動油が排出され、底蓋用アクチュエータ40のロッドが押し出される。底蓋用アクチュエータ40のロッドが押し出されると、この動作に伴って底蓋用アクチュエータ40に連結された底蓋20が開方向に回動して、ベッセル本体10の底面開口部16が開放される。この過程において、底蓋用アクチュエータ40から排出された作動油は、第一可変絞り弁68aを通って伸び制御アキュムレータ64aに貯蓄(貯圧)される(図7(a)参照)。
【0035】
(2)底蓋が閉じる際の動作
無線受信機61で底蓋20を閉じる信号が受信されると、本体用電磁弁63bが開き、縮み制御アキュムレータ64b内の作動油が逆止弁付き可変絞り弁71a、71bを通って本体用アクチュエータ30の一方の油室に導入され、その導入された作動油によって本体用アクチュエータ30のロッドが押し出される。本体用アクチュエータ30のロッドが押し出されると、この動作に伴って底蓋用アクチュエータ40に連結されたベッセル本体10が降下し、相対的に底蓋20が閉方向に回動してベッセル本体10の底面開口部16が閉じられる。この過程において、本体用アクチュエータ30の他方の油室から排出される作動油は第二可変絞り弁68bを通って、伸び制御アキュムレータ64aに貯蓄(貯圧)される(図7(b)参照)。
【0036】
(3)本体用アクチュエータと底蓋用アクチュエータを初期状態に戻す際の動作
底蓋20が閉じられたあと、底蓋20が閉まったベッセル装置1が接地してクレーンによる吊り下げが解除される(本体用アクチュエータ30及び底蓋用アクチュエータ40に係る外力が取り除かれる)と、伸び制御アキュムレータ64a内の作動油が各逆止弁70a、70bを通って底蓋用アクチュエータ40の一方の油室と本体用アクチュエータ30の一方の油室のそれぞれに導入され、各アクチュエータ30、40のロッドが押し戻される。各本体用アクチュエータ30では、一方の油室に導入された作動油によってロッドが押し戻されると、他方の油室から作動油が排出され、排出された作動油が逆止弁付き可変絞り弁71a、71bを通って縮み制御アキュムレータ64b内に貯蓄(貯圧)される(図7(c)参照)。
【0037】
(使用方法)
本発明のベッセル装置1の使用方法の一例を、図8(a)~(e)を参照して説明する。ここでは、前記実施形態のベッセル装置1を用いる場合を一例とする。図8(a)は底蓋20が閉塞した状態のベッセル本体10に土砂が投入された状態を示すものである。
【0038】
図8(a)の状態で、リモートコントローラから送信された底蓋20を開く信号が無線受信機61で受信されると、四本の底蓋用アクチュエータ40が伸長し、両底蓋20が開放されてベッセル本体10内の土砂が排出される(図8(b))。
【0039】
土砂の排出が完了したのち、図8(b)の状態で、リモートコントローラから送信された底蓋20を閉じる信号が無線受信機61で受信されると、二本の本体用アクチュエータ30が伸長してベッセル本体10が降下し、この動作に伴って両底蓋20が回転してベッセル本体10の底面開口部16が閉じられる(図8(c))。
【0040】
図8(c)の状態から、クレーンによってベッセル装置1を接地させ、クレーンの吊荷重が低くなると、本体用アクチュエータ30及び底蓋用アクチュエータ40のすべてが自動的に縮む動作を開始し、全アクチュエータが収縮する(図8(d))。このとき、アキュムレータ64に蓄えられた作動油は、閉じられた状態の電磁弁を迂回し、逆止弁を通過して油圧シリンダに充填される。電磁弁が閉じられているため、油圧シリンダが縮んだ状態で保持され、これにより底蓋20を閉じた状態で維持することができる。
【0041】
図8(d)のように、全アクチュエータが収縮すると、ベッセル本体10への土砂の投入を行える状態となる(図8(e))。
【0042】
(その他の実施形態)
前記実施形態は一例であり、本発明のベッセル装置は前記実施形態以外の構成とすることもできる。たとえば、本発明のベッセル装置1では、第一吊りロッド52a及び第二吊りロッド52bに連結された吊り下げ手段が所定方向(例えば、図9(a)の左方向又は右方向)に倒れるように誘導する誘導手段56を設けることもできる。誘導手段56には、たとえば、図9(a)に示すような引きばね56を用いることができる。
【0043】
図9(a)は第一吊りロッド52a側に設けられた引きばね56(以下「第一引きばね56a」という)を示すものである。図9(a)に示すように、第一引きばね56aの上端側を第一吊りロッド52aに、下端側を第一連結ブラケット51aの図中左端寄りの位置に連結することによって、吊りハンガー53を同図中左側に誘導できるようにしてある。吊りハンガー53を同図中右側に誘導したい場合には、第一引きばね56aの下端側を第一連結ブラケット51aの図中右端寄りの位置に連結すればよい。
【0044】
第一引きばね56aの端部は固定することもできるが、図9(b)に示すように、下端側の連結位置を変えられるようにすることもできる。このようにすることで、現場に応じて吊りハンガー53の倒す方向を変えることができるため、作業性が向上する。具体的には、図9(b)のように、図中左端寄りの位置に連結された第一引きばね56aの下端側を第一連結ブラケット51aの図中右端寄りの位置に付け替えることで、吊りハンガー53の倒す方向を同図中右側に誘導することができる。
【0045】
図9(a)(b)には第一吊りロッド52a側だけを示しているが、第二吊りロッド52bと第二連結ブラケット51bの間にも同様の引きばね56(以下「第二引きばね56b」という)が設けられている(図10(a)参照)。引きばね56を第一吊りロッド52a側と第二吊りロッド52bの双方に設けることで、吊りハンガー53のぐらつきを防止することができる。引きばね56は、第一吊りロッド52a側と第二吊りロッド52b側のいずれか一方にのみ設けることもできる。
【0046】
ここでは誘導手段56として引きばね56を用いる場合を一例としているが、誘導手段56は吊りハンガー53を特定の方向に誘導できるものであれば引きばね56以外であってもよい。たとえば、ゴムやガスダンパ、錘等で代替することもできる。また、誘導手段56は第一吊りロッド52aや第二吊りロッド52bを引っ張ることによって特定方向に誘導するもののほか、これらを押すことによって特定方向に誘導するようなものであってもよい。
【0047】
また、本発明のベッセル装置1では、図9(a)に示すように、吊りハンガー53にベッセル本体10の上周縁に当接する緩衝部材53aを設けることができる。吊りハンガー53に緩衝部材53aを設けることで、吊りハンガー53を倒した際の衝撃を緩和し、ベッセル本体10や吊りハンガー53の欠損や劣化を防止することができる。
【0048】
緩衝部材53aは吊りハンガー53のうち、吊りハンガー53を倒した際にベッセル本体10の上周縁に対向する面に設けることができる。緩衝部材53aは吊りハンガー53の両面に設けることもできる。いずれの場合も、緩衝部材53aは吊りハンガー53の各面に一又は二以上ずつ設けることができる。緩衝部材53aは吊りハンガー53に設ける代わりに又は吊りハンガー53に設けるとともに、ベッセル本体10の上周縁に設けることもできる。
【0049】
また、本発明のベッセル装置1では、図10(a)に示すように、吊りハンガー53の第一吊りロッド52a及び第二吊りロッド52bとの連結部分を、ベッセル本体10の傾きを吸収できるような構造とすることができる。
【0050】
図10(a)~(d)に示す吊りハンガー53は、第一吊りロッド52a及び第二吊りロッド52bとの連結に用いる二枚の連結片(以下、上側の連結片を「上連結片53b」と、下側の連結片を「下連結片53c」という)を備えている。
【0051】
図10(c)に示すように上連結片53bには丸孔53dが、図10(d)に示すように下連結片53cには長孔53eが設けられている。丸孔53dと長孔53eの双方を通過した第一吊りロッド52a及び第二吊りロッド52bのそれぞれは、丸孔53dを通過した上端部がナット締めされている。
【0052】
このような丸孔53dと長孔53eを備えた連結片を用いた場合、ベッセル本体10が図10(a)のような傾斜面に接地されて傾いても、第一吊りロッド52a及び第二吊りロッド52bは長孔53eの分だけ揺動(長孔53eの長さ方向への移動)することができ、ベッセル本体10の傾きを吸収することができる。
【0053】
揺動範囲を広げるため、下連結片53cには長孔53eの代わりに第一吊りロッド52a及び第二吊りロッド52bよりも大径の大穴を設けることもできる。この場合、第一吊りロッド52a及び第二吊りロッド52bが横方向や前後方向、斜め方向などにも揺動できるため、ベッセル本体10の傾きをより効果的に吸収することができる。
【0054】
本発明は、前記実施形態の構造及び形状のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形、変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のベッセル装置1は、掘削作業に伴い発生した土砂のほか、水害などの災害時に発生する堆積土砂や木材(流木)の搬出など、各種物品の搬出に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 ベッセル装置
10 ベッセル本体
11 正面部
12 右側面部
13 背面部
14 左側面部
15 上面開口部
16 底面開口部
17a 本体第一フランジ
17b 本体第二フランジ
20 底蓋
20a 第一底蓋
20b 第二底蓋
21 ヒンジ金具
22a 底蓋第一フランジ
22b 底蓋第二フランジ
22c 底蓋第三フランジ
22d 底蓋第四フランジ
30 本体用アクチュエータ
30a 本体第一アクチュエータ
30b 本体第二アクチュエータ
40 底蓋用アクチュエータ
40a、40b 底蓋第一アクチュエータ
40c、40d 底蓋第二アクチュエータ
51a 第一連結ブラケット(第一吊りブラケット)
51b 第二連結ブラケット(第二吊りブラケット)
52a 第一吊りロッド(吊りロッド)
52b 第二吊りロッド(吊りロッド)
53 吊りハンガー
53a 緩衝部材
53b 上連結片
53c 下連結片
53d 丸孔
53e 長孔
54 係止ブラケット
55 係止環
56 誘導手段(引きばね)
56a 第一引きばね
56b 第二引きばね
57a 第一つなぎブラケット
57b 第二つなぎブラケット
58 衝撃吸収手段
58a 第一衝撃吸収手段
58b 第二衝撃吸収手段
61 無線受信機
62 バッテリ
63 電磁弁
63a 底蓋用電磁弁
63b 本体用電磁弁
64 アキュムレータ
64a 第一のアキュムレータ(伸び制御アキュムレータ)
64b 第二のアキュムレータ(縮み制御アキュムレータ)
65 圧力計
66 DCコンバータ
67 エアブリーザ
68a 第一可変絞り弁
68b 第二可変絞り弁
69a 第一リリーフ弁
69b 第二リリーフ弁
70a 第一逆止弁
70b 第二逆止弁
71a、71b 逆止弁付き可変絞り弁
A ショベルカー
B トラック
C クレーン車
C1 フック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10