(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
F16C 33/76 20060101AFI20230414BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20230414BHJP
F16C 19/54 20060101ALI20230414BHJP
F16C 35/063 20060101ALI20230414BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
F16C33/76 Z
F16C19/06
F16C19/54
F16C35/063
F16J15/447
(21)【出願番号】P 2018105544
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】内田 正
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-113907(JP,A)
【文献】特開2013-48005(JP,A)
【文献】米国特許第7952837(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00-19/56,33/30-33/66
F16C 33/72-33/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪と、内輪と、転動体と、を有する第1転がり軸受と、
外輪と、内輪と、転動体と、を有する第2転がり軸受と、
前記第1転がり軸受の内輪および前記第2転がり軸受の内輪に固定された円筒部を有するシャフトと、
前記シャフトの軸方向において、前記第1転がり軸受の内輪の一部に接触する内周側円盤面と、環状の面と、を有するハブキャップと、
前記シャフトの軸方向において、前記第1転がり軸受の外輪に設けられた第1シール部材と、前記第2転がり軸受の外輪に設けられた第2シール部材と、を備え、
前記第1シール部材と、前記第2シール部材はそれぞれ、外周側円盤部と、内周側円盤部と、を備え、
前記シャフトには、当該第2転がり軸受の内輪を保持するフランジ部が設けられており、
前記ハブキャップは前記シャフトに固定され、
前記シャフトの軸方向において、前記ハブキャップの環状の面と前記第1転がり軸受の内輪の他の一部との間には、
第1の環状の空間が形成され、
径方向において、前記ハブキャップの環状の面の内側に、前記ハブキャップの内周側円盤面があり、
径方向において、前記第1転がり軸受の内輪の前記他の一部の内側に、当該第1転がり軸受の内輪の前記一部があり、
前記ハブキャップの内周側円盤面と前記第1転がり軸受の内輪とが、軸方向視において重複しており、
前記ハブキャップの環状の面及び前記第1の環状の空間と前記第1転がり軸受の内輪の前記他の一部とが、軸方向視において重複しており、
径方向において、前記第1の環状の空間の内側に前記ハブキャップの内周側円盤面が位置しており、
前記シャフトの軸方向において、前記ハブキャップと前記第1シール部材とは対向しており、
径方向において、前記フランジ部は、内周側円盤面と、傾斜環状面と、を備え、
前記シャフトの軸方向において、前記フランジ部の内周側円盤面に前記第2
転がり軸受の内輪は接触しており、
前記シャフトの軸方向において、前記フランジ部の傾斜環状面と前記第2
転がり軸受の内輪との間には、
第2の環状の空間が形成されており、
前記第2の環状の空間と前記第2転がり軸受の内輪とが、軸方向視において重複しており、
前記径方向において、前記第2の環状の空間の内側に前記フランジ部の内周側円盤面が位置しており、
前記フランジ部の内周側円盤面と前記第2転がり軸受の内輪とが、軸方向視において重複しており、
前記ハブキャップと、前記第1シール部材と、前記第2シール部材と、で空気が流動する迷路を形成している、軸受装置。
【請求項2】
外輪と、内輪と、転動体と、を有する第1転がり軸受と、
外輪と、内輪と、転動体と、を有する第2転がり軸受と、
前記第1転がり軸受の内輪および前記第2転がり軸受の内輪に固定された円筒部を有するシャフトと、
前記シャフトの軸方向において、前記第1転がり軸受の内輪の一部に設けられた内周側円盤面と、環状の面と、を有するハブキャップと、
前記シャフトの軸方向において、前記第1転がり軸受の外輪に設けられた第1シール部材と、前記第2転がり軸受の外輪に設けられた第2シール部材と、を備え、
前記第1シール部材と、前記第2シール部材はそれぞれ、外周側円盤部と、内周側円盤部と、を備え、
前記シャフトには、当該第2転がり軸受の内輪を保持するフランジ部が設けられており、
前記ハブキャップは前記シャフトに固定され、
前記シャフトの軸方向において、前記ハブキャップの環状の面と前記第1転がり軸受の内輪の他の一部との間には、第1の環状の空間が形成され、
径方向において、前記ハブキャップの環状の面の内側に、前記ハブキャップの内周側円盤面があり、
径方向において、前記第1転がり軸受の内輪の前記他の一部の内側に、当該第1転がり軸受の内輪の前記一部があり、
前記ハブキャップの内周側円盤面と前記第1転がり軸受の内輪とが、軸方向視において重複しており、
前記ハブキャップの環状の面及び前記第1の環状の空間と前記第1転がり軸受の内輪の前記他の一部とが、軸方向視において重複しており、
径方向において、前記第1の環状の空間の内側に前記ハブキャップの内周側円盤面が位置しており、
前記シャフトの軸方向において、前記ハブキャップと前記第1シール部材とは対向しており、
径方向において、前記フランジ部は、内周側円盤面と、傾斜環状面と、を備え、
前記シャフトの軸方向において、前記フランジ部の内周側円盤面に前記第2転がり軸受の内輪は接触しており、
前記シャフトの軸方向において、前記フランジ部の傾斜環状面と前記第2転がり軸受の内輪との間には、第2の環状の空間が形成されており、
前記第2の環状の空間と前記第2転がり軸受の内輪とが、軸方向視において重複しており、
前記径方向において、前記第2の環状の空間の内側に前記フランジ部の内周側円盤面が位置しており、
前記フランジ部の内周側円盤面と前記第2転がり軸受の内輪とが、軸方向視において重複しており、
前記ハブキャップと、前記第1シール部材と、前記第2シール部材と、で空気が流動する迷路を形成している、軸受装置。
【請求項3】
前記ハブキャップは前記シャフトに接着されており、
前記
第1の環状の空間は、接着剤溜まり部である、請求項1
又は2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記第1転がり軸受の外輪の内周面に形成された溝内に、前記第1シール部材の外周側円盤部が収容され、
前記第1シール部材の外周側円盤部は、保持部材によって、前記第1転がり軸受の溝内に保持され、
前記第2転がり軸受の外輪の内周面に形成された溝内に、前記第2シール部材の外周側円盤部が収容され、
前記第2シール部材の外周側円盤部は、保持部材によって、前記第2転がり軸受の溝内に保持されている、請求項1
から3のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項5】
径方向において、前記第1シール部材の内周側円盤部の内面と前記第1転がり軸受の内輪との間、又は前記第2シール部材の内周側円盤部の内面と前記第2転がり軸受の内輪との間には、隙間が形成されている、請求項1から
4のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項6】
径方向において、前記ハブキャップと前記第1転がり軸受の外輪との間、又は前記フランジ部と前記第2転がり軸受の外輪との間には、隙間が形成されている、請求項1から
5のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項7】
前記第1シール部材の内周側円盤部の内面と前記第1転がり軸受の内輪との間に形成された隙間と、前記ハブキャップの環状の面と前記第1転がり軸受の内輪の前記他の一部との間に形成された前記
第1の環状の空間は、前記空気が流動する迷路の一部を形成している、請求項1から
6のいずれかに記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク駆動装置のスイングアームを揺動可能に支持するための軸受装置としてピボットアッシー軸受装置が用いられている。ピボットアッシー軸受装置においては、同軸に配列される2つの転がり軸受にスイングアームを揺動可能にするためのシャフトが支持されており、シャフトの先端側には円環状のハブキャップが固定されている。
【0003】
従来のこの種の軸受装置には、ハブキャップが転がり軸受の外輪と内輪と間を覆うようにシャフトに固定され、ハブキャップと外輪の内周面との間に狭い隙間(ラビリンス)が形成されているものがある。このラビリンスにより、転がり軸受の内部の空気流動を抑制してグリースの飛散の低減が図られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のハブキャップを備える軸受装置には、シャフトの先端側からハブキャップを圧入してハブキャップをシャフトに固定するものがある。このようなハブキャップが圧入される軸受装置においては、ハブキャップと内輪との干渉を避けて転がり軸受の内輪への圧痕の発生を防止するために、ハブキャップと内輪との間を広くする必要がある。このため、ハブキャップと内輪との干渉を避けつつ、ハブキャップと外輪の内周面との間に所望の幅のラビリンスを形成し、軸受装置で発生するパーティクルの拡散を抑制するために、シャフトの所望の位置にハブキャップを固定する必要がある。シャフトへのハブキャップの圧入によってシャフトの所望の位置にハブキャップを固定して所望の幅のラビリンスを形成することは難しい作業である。
【0006】
本発明の目的は、グリース等の潤滑剤の拡散を抑制することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る軸受装置は、外輪と、前記外輪の内周側に配設された内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配設された複数の転動体とを有する少なくとも1つの転がり軸受と、前記転がり軸受の前記内輪の内周面に固定されたシャフトと、前記シャフトの軸方向において前記内輪の一方側の端面と当接して前記シャフトの外周面に固定された中空円盤状のハブキャップとを備える。前記ハブキャップの外周面は前記外輪の内周面と対向しており、前記ハブキャップの外周面と前記外輪の内周面との間にラビリンスが形成されている。前記ハブキャップは、前記シャフトの外周面に接着される前記ハブキャップの内周面から半径方向外側へ延びる中空円盤状の面である内周側円盤面(第1面)と、前記内周側円盤面の外周側の縁から前記転がり軸受から離れる方向に傾いて半径方向外側へ延びる環状の面である傾斜環状面(第2面)と、前記傾斜環状面の外周側の縁から半径方向外側へ延びる中空円盤状の面である外周側円盤面(第3面)とを有している。前記内周側円盤面は、前記シャフトの軸方向において、前記転がり軸受の前記内輪の内周側の縁と、該内周側の縁と前記内輪の外周側の縁との間の途中までの部分と当接している。前記内輪の前記途中から前記内輪の外周側の縁までの部分と、少なくとも前記傾斜環状面における前記ハブキャップとの間には、所定の環状の空間である接着剤溜まり部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る軸受装置によれば、グリース等の潤滑剤の拡散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る軸受装置としてのピボットアッシー軸受装置を有するハードディスク駆動装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図2に示すピボットアッシー軸受装置の上側転がり軸受の上側の部分の近傍の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置の接着層の変形例の構成を概略的に示す拡大断面図である。
【
図5】
図2に示す本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置の接着剤溜まり部の変形例の構成を概略的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る軸受装置としてのピボットアッシー軸受装置1を有するハードディスク駆動装置100の構成を概略的に示す斜視図である。
図1に示すように、ピボットアッシー軸受装置1は、ハードディスク駆動装置100のハウジング101の底部101aに固定されており、スイングアーム102を揺動可能に支持している。このハードディスク駆動装置100では、スイングアーム102の先端に配置された磁気ヘッド103が、回転している磁気ディスク104上を移動することによって、磁気ディスク104に情報を記録し、また、磁気ディスク104に記録されている情報を読み出すようになっている。
【0012】
図2は、本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1の構成を概略的に示す断面図である。
図3は、
図2に示すピボットアッシー軸受装置1の上側転がり軸受10aの上側の部分の近傍の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
【0013】
以下、説明の便宜上、
図2におけるピボットアッシー軸受装置1の軸Y1の方向(以下、軸Y1の方向及びこれと平行な方向を含め軸方向ともいう)における一方(矢印a方向)を上側とし、他方(矢印b方向)を下側とする。また、
図2におけるピボットアッシー軸受装置1の軸Y1に直交して延在する半径方向における一方(矢印c方向)を内周側とし、他方(矢印d方向)を外周側とする。以下の説明において、各部材の位置関係や方向を上下を用いて説明するときは、あくまで図面における位置関係や方向を示し、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。
【0014】
本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1は、
図2に示すように、少なくとも1つの転がり軸受10a(上側転がり軸受10a)と、シャフト30と、ハブキャップ50とを備える。上側転がり軸受10aは、外輪11aと、外輪11aの内周側(矢印c方向)に配設された内輪12aと、外輪11aと内輪12aとの間に配設された複数の転動体13aとを有する。シャフト30は、転がり軸受10aの内輪12aの内周面12aiに固定される。ハブキャップ50は、中空円盤状であり、シャフト30の軸方向において内輪12aの一方側の上端面12auと当接してシャフト30の外周面31xに固定されている。
【0015】
ハブキャップ50の外周面50xは外輪11aの内周面11aiと対向しており、ハブキャップ50の外周面50xと外輪11aの内周面11aiとの間に所定の幅の環状の隙間であるラビリンスL1が形成されている。
【0016】
ハブキャップ50は、内周側円盤面51と、傾斜環状面52と、外周側円盤面53とを有する。内周側円盤面51は、シャフト30の外周面31xに接着されるハブキャップ50の内周面50iから半径方向外側へ延びる中空円盤状の面である。傾斜環状面52は、内周側円盤面51の外周側(矢印d方向)の縁から転がり軸受10aから離れる方向に傾いて半径方向外側へ延びる環状の面である。外周側円盤面53は、傾斜環状面52の外周側(矢印d方向)の縁から半径方向外側へ延びる中空円盤状の面である。
【0017】
内周側円盤面51は、シャフト30の軸方向(矢印ab方向)において、転がり軸受10aの内輪12aの内周側(矢印c方向)の縁と内輪12aの外周側(矢印d方向)の縁との間の途中までの部分と当接している。内輪12aの上述の途中から内輪12aの外周側(矢印d方向)の縁までの部分と、少なくとも傾斜環状面52におけるハブキャップ50との間には、所定の環状の空間である接着剤溜まり部70が形成されている。
【0018】
このように、ハブキャップ50は、内輪12aの上端面12auと当接してシャフト30の外周面31xに接着して固定される。これにより、所望のラビリンスL1を形成することができ、パーティクルの拡散を抑制することができる。また、ハブキャップ50をシャフト30に接着して固定するにあたり、接着剤が転がり軸受10aの内部に入り込むおそれがあるが、接着剤溜まり部70によって留まらせることができる。これにより、接着剤が転がり軸受10aの内部に入り込んで転がり軸受10aの回転不良等の不具合を引き起こすことが防止される。以下、ピボットアッシー軸受装置1の構成について具体的に説明する。
【0019】
ピボットアッシー軸受装置1は、2つの転がり軸受10a、10bを有しており、具体的には、軸方向(矢印ab方向)において上側(矢印a方向)に配設された上側転がり軸受10aと、軸方向において上側転がり軸受10aよりも下側(矢印b方向)に並んで配設された下側転がり軸受10bとを有している。上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bは、例えば、同じ種類の玉軸受である。
【0020】
なお、ピボットアッシー軸受装置1は、1つの転がり軸受を有していてもよく、又は2つ以上の任意の数の転がり軸受を軸方向に並んで有していてもよい。また、転がり軸受は、玉軸受以外の軸受であってもよく、各々別の種類の軸受であってもよく、同種の異なる形態の軸受であってもよい。上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bは、同軸に配設されており、軸Y1を中心軸(回転軸)としている。
【0021】
上側転がり軸受10aは、
図2及び
図3に示すように、軸Y1を中心とした中空円筒状に軸方向に延在している外輪11aと、外輪11aの内周側(矢印c方向)に配設されており、軸Y1を中心とした中空円筒状に軸方向に延在している内輪12aと、外輪11a及び内輪12aの間に配設された複数の転動体13aとを有している。各転動体13aは、外輪11aの内周面11aiの軸方向における中央部分と、内輪12aの外周面12axの軸方向における中央部分との間において軸Y1周りに等間隔に転動可能に保持器14aにより保持されている。
【0022】
上側転がり軸受10aにおける外輪11aの軸方向の長さは、上側転がり軸受10aの内輪12aの軸方向の長さよりも長くなっている。このため、シャフト30において、外輪11aの軸方向における下側の端面である下側端面11abは、後述する下側転がり軸受10bの外輪11bの軸方向における上側の端面である上側端面11buに当接するようになっている。一方、シャフト30において、上側転がり軸受10aの内輪12aの軸方向における下側の端面である下側端面12abは、後述する下側転がり軸受10bの内輪12bの軸方向における上側の端面である上側端面12buと離間するようになっている。
【0023】
また、上側転がり軸受10aは、上側転がり軸受10aの一方側(上側)の端部(上側端部10au)において外輪11aと内輪12aとの間を閉塞するためのシール部材15aと、シール部材15aの外周側(矢印d方向)の縁部(外周側円盤部16a)においてシール部材15aを外輪11aに保持させる保持部材19a(例えば、スナップリング)とを有している。シール部材15aの内周面(内周側円盤部18aの内周面18ai)と内輪12aの外周面12axとの間には、所定の幅を有する環状の隙間であるシール隙間S1が形成されている。
【0024】
上側転がり軸受10aの上側端部10auにおいて、外輪11aの内周面11aiには、外輪11aの内周面11aiから外周側に凹む環状の溝である周溝20aが形成されている。シール部材15aの外周側の端部が、周溝20a内に収容され、シール部材15aが、保持部材19aによって周溝20a内に保持されように、周溝20aが形成されている。
【0025】
シール部材15aの内周側円盤部18aの内周面18aiは、半径方向において内輪12aの外周面12axに対向している。シール隙間S1は、シール部材15aの内周側円盤部18aの内周面18aiと内輪12aの外周面12axとの間に形成された、半径方向において所定の幅を有する軸Y1を中心とする円環状の隙間である。
【0026】
下側転がり軸受10bは、上側転がり軸受10aと同様の構成をしており、ピボットアッシー軸受装置1において、上側転がり軸受10aとは軸Y1方向において対称に配設されている。具体的には、
図2に示すように、下側転がり軸受10bは、軸Y1を中心とした中空円筒状に軸方向に延在している外輪11bと、外輪11bの内周側に配設されており、軸Y1を中心とした中空円筒状に軸方向に延在している内輪12bと、外輪11b及び内輪12bの間に配設された複数の転動体13bとを有している。各転動体13bは、外輪11bの内周面11biの軸方向における中央部分と、内輪12bの外周面12bxの軸方向における中央部分との間において軸Y1周りに等間隔に転動可能に保持器14bにより保持されている。
【0027】
下側転がり軸受10bにおける外輪11bの軸方向の長さは、下側転がり軸受10bの内輪12bの軸方向の長さよりも長くなっている。このため、シャフト30において、外輪11bの上側端面11buは、上側転がり軸受10aの外輪11aの下側端面11abに当接するようになっている。一方、下側転がり軸受10bの内輪12bの上側端面12buは、上側転がり軸受10aの内輪12aの下側端面12abと離間するようになっている。
【0028】
また、下側転がり軸受10bは、下側転がり軸受10bの他方側(下側)の端部(下側端部10bb)において外輪11bと内輪12bとの間を閉塞するためのシール部材15bと、シール部材15bの外周側の縁部(外周側円盤部16b)においてシール部材15bを外輪11bに保持させる保持部材19bとを有している。シール部材15bの内周面(内周側円盤部18bの内周面18bi)と内輪12bの外周面12bxとの間には、所定の幅を有する環状の隙間であるシール隙間S2が形成されている。
【0029】
下側転がり軸受10bの下側端部10bbにおいて、外輪11bの内周面11biには、外輪11bの内周面11biから外周側に凹む環状の溝である周溝20bが形成されている。シール部材15bの外周側の端部が、周溝20b内に収容され、シール部材15bが、保持部材19bによって周溝20b内に保持されるように、周溝20bが形成されている。
【0030】
シール部材15bの内周側円盤部18bの内周面18biは、半径方向において内輪12bの外周面12bxに対向している。シール隙間S2は、シール部材15bの内周側円盤部18bの内周面18biと内輪12bの外周面12bxとの間に形成された、半径方向において所定の幅を有する軸Y1を中心とする円環状の隙間である。
【0031】
図2に示すように、ピボットアッシー軸受装置1において、シャフト30は、軸方向に延在している中空円筒状の基体部分である円筒部31と、円筒部31の軸方向の下側における端部である下側端部31bにおいて外周面31xから外周側に向かって突出する円盤状の部分であるフランジ部32とを有している。円筒部31及びフランジ部32は、同軸に配設されており、軸Y1を中心軸としている。円筒部31及びフランジ部32は一体に形成されている。
【0032】
シャフト30の円筒部31は、上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bに隙間嵌めされるようになっている。上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bは接着剤が固まって形成された接着層40によってシャフト30に固定されている。シャフト30の外周面31xと上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bの内輪12a,12bの内周面12ai、12biとの間には、接着剤が固まって形成された接着層40が形成されている。具体的に、接着層40は、内輪12a,12bの内周面12ai、12biとこれらが対向するシャフト30の外周面31xの部分との間の全体に形成されている。接着層40を形成する接着剤には、例えば、アクリル系嫌気性接着剤、エポキシ系熱硬化性接着剤、紫外線硬化型アクリル系嫌気性接着剤等が用いられている。
【0033】
フランジ部32は、下側転がり軸受10bに対向する部分に、内周側円盤面33と、傾斜環状面34と、外周側円盤面35とを有している。内周側円盤面33は、円筒部31の外周面31xから外周側に延びる軸Y1を中心とした中空円盤状の面である。傾斜環状面34は、内周側円盤面33の外周側の縁から下側転がり軸受10bから離れる方向に傾いて外周側に延びる軸Y1を中心とした環状の面である。外周側円盤面35は、傾斜環状面34の外周側の縁から外周側に延びる軸Y1を中心とした中空円盤状の面である。
【0034】
ピボットアッシー軸受装置1の組み立て状態において、フランジ部32の内周側円盤面33は、下側転がり軸受10bにおける内輪12bの下側端面12bbと当接している。フランジ部32の外周側円盤面35は、シール部材15bの内周側円盤部18bにおける下側端面18bbと離間している。
【0035】
フランジ部32の外周側の端面である外周面32xは、半径方向において、外輪11bの下側段差面20bbsに対向している。フランジ部32の外周面32xと外輪11bの下側段差面20bbsとの間には、半径方向において所定の幅を有する環状の隙間であるラビリンスL2が形成されている。下側段差面20bbsは、外輪11bにおいて周溝20bの下側に延びる軸Y1を中心とする円筒状の面であり、外輪11bの内周面11biよりも外周側において延びている。
【0036】
ピボットアッシー軸受装置1において、上側転がり軸受10aの上側には、
図3に示すように、シャフト30の外周面31xから軸Y1を中心とした中空円盤状に外周側に延在している環状のハブキャップ50が設けられている。ハブキャップ50は、シャフト30と同軸に配設されており、軸Y1を中心軸としている。また、ハブキャップ50は、上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bと同軸に配設されている。
【0037】
ハブキャップ50の上側端面50uは、半径方向に延在する環状の平坦面である。このため、ピボットアッシー軸受装置1は、シャフト30の先端側(上側)に取り付けられるハードディスク駆動装置100の上側(矢印a方向)のカバー(図示せず)との干渉を防止することができる。
【0038】
ハブキャップ50の内周面50iの直径は、シャフト30の円筒部31における外周面31xの直径よりも大きくなっている。例えば、ハブキャップ50の内周面50iの直径は、シャフト30の円筒部31における外周面31xの直径よりも僅かに大きくなっている。すなわち、ハブキャップ50は、シャフト30の円筒部31に隙間嵌めされるようになっている。ハブキャップ50の内周面50iとシャフト30の外周面31xとの間には、接着剤が固まって形成された接着層60が形成されており、接着層60によってハブキャップ50はシャフト30に固定されている。具体的には、接着層60は、ハブキャップ50の内周面50iとこの内周面50iと対向するシャフト30の外周面31xの部分との間の全体に形成されている。接着層60を形成する接着剤には、例えば、アクリル系嫌気性接着剤、エポキシ系熱硬化性接着剤、紫外線硬化型アクリル系嫌気性接着剤等が用いられている。
【0039】
ハブキャップ50は、上側転がり軸受10aに対向する側において、内周側円盤面51と、傾斜環状面52と、外周側円盤面53とを有する。内周側円盤面51は、内周面50iから半径方向外側へ延びる中空円盤状の面である。傾斜環状面52は、内周側円盤面51の外周側の縁から上側転がり軸受10aから離れる方向に傾いて半径方向外側へ延びる環状の面である。外周側円盤面53は、傾斜環状面52の外周側の縁から半径方向外側へ延びる中空円盤状の面である。
【0040】
ピボットアッシー軸受装置1の組み立て状態において、ハブキャップ50の内周側円盤面51は、上側転がり軸受10aの内輪12aの上側端面12auの一部に当接している。具体的には、内輪12aの上側端面12auにおいて、上側転がり軸受10aの内輪12aの内周側の縁と、この内周側の縁と内輪12aの外周側の縁との間の途中(位置P1)までの部分と、内周側円盤面51は当接している。
【0041】
ハブキャップ50の傾斜環状面52は、例えば、軸Y1を中心とする円錐面状の面である。傾斜環状面52は、内輪12aの上側端面12auにおける位置P1から斜め上方に外周側に延びており、傾斜環状面52の外周側の縁は、半径方向において、内輪12aの上側端面12auの外周側の縁に達しておらず、半径方向において、上側端面12auにおける位置P2の位置まで延びている。傾斜環状面52は、上下方向において、内輪12aの上側端面12auから離間している。なお、傾斜環状面52の外周側の縁は、半径方向において、内輪12aの上側端面12auの外周側の縁に達していてもよく、上側端面12auの外周側の縁よりも外周側に延びていてもよい。
【0042】
ハブキャップ50の外周側円盤面53は、半径方向に延びる平面上に広がる円盤面であり、傾斜環状面52の外周側の縁から外周側に向かって延びている。外周側円盤面53は、
図3に示すように、半径方向において、内輪12aの上側端面12auにおける位置P2から外周側に延びている。つまり、外周側円盤面53の一部は、上下方向において、内輪12aの上側端面12auに対向しており、内輪12aの上側端面12auから離間している。
【0043】
なお、外周側円盤面53は、半径方向において、内輪12aの上側端面12auにおける位置から延びていなくてもよい。つまり、外周側円盤面53は、半径方向において、内輪12aの外周面12axよりも外周側から延びていてもよく、上下方向において、内輪12aの上側端面12auに対向していなくてもよい。
【0044】
ハブキャップ50の外周面50xは、半径方向において、外輪11aにおける上側段差面20ausに対向している。ハブキャップ50の外周面50xと外輪11aの上側段差面20ausとの間には、半径方向において所定の幅を有する円環状の隙間であるラビリンスL1が形成されている。上側段差面20ausは、外輪11aにおいて周溝20aの上側に延びる軸Y1を中心とする円筒状の面であり、外輪11aの内周面11aiよりも外周側において延びている。
【0045】
ハブキャップ50は傾斜環状面52及び外周側円盤面53を有しており、
図3に示すように、内輪12aの上側端面12auにおいて位置P1から内輪12aの外周側の縁(外周面12ax)までの部分と、ハブキャップ50との間には、空間である接着剤溜まり部70が形成されている。具体的に、接着剤溜まり部70は、上側転がり軸受10aの内輪12aの上側端面12auのうち、ハブキャップ50の内周側円盤面51が当接していない上側端面12auの環状の一部と、ハブキャップ50の傾斜環状面52と、ハブキャップ50の外周側円盤面53のうち内輪12aの上側端面12auに上下方向において対向する部分との間に囲まれた円環状の空間である。
【0046】
そして、傾斜環状面52は、外周側に向かうに連れて内輪12aの上側端面12auから上側に離れていく傾斜面であり、接着剤溜まり部70の軸Y1に沿う断面における断面形状は内周側に尖ったくさび形状となっている。このため、毛細管現象によって、内輪12aとハブキャップ50との間を通って溢れ出ようとする接着剤を、接着剤溜まり部70の内周側のくさび形状部に留めるようとすることができる。また、接着剤溜まり部70では、内輪12aの上側端面12auと、これと上下方向において対向する外周側円盤面53との間に囲まれた空間を設けて、上側転がり軸受10aの内部(外輪11aと内輪12aとの間)からくさび形状部を離間させている。このため、接着剤が上側転がり軸受10aの内部に入り込むことをより確実に防止することができる。
【0047】
ピボットアッシー軸受装置1の組み立て状態において、上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bは、
図2に示すように、それぞれ外輪11a,11b及び内輪12a,12b間において転動体13a,13bに所定の予圧を加えられた状態で、軸方向に並んで位置決めされている。具体的には、シャフト30に下側転がり軸受10bが嵌め込まれ、そして、上側転がり軸受10aが嵌め込まれ、下側転がり軸受10bの内輪12bがシャフト30のフランジ部32に保持され、下側転がり軸受10b上に上側転がり軸受10aが保持される。
【0048】
軸方向における上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bの外輪11a,11bの長さは、軸方向における上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bの内輪12a,12bの長さよりも長くなっている。このため、上側転がり軸受10aの外輪11aは、下側転がり軸受10bの外輪11bに当接し、これにより、下側転がり軸受10b上に上側転がり軸受10aが保持される。この時、上側転がり軸受10aの内輪12aは、下側転がり軸受10bの内輪12bから離間している。そして、この状態で上側転がり軸受10aの内輪12aに下側に向かう予圧が加えられ、この状態で、上側転がり軸受10aの内輪12aがシャフト30に接着される。これにより、外輪11a,11b及び内輪12a,12bそれぞれの間において転動体13a,13bに所定の予圧が加えられた状態で、上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bがシャフト30に固定される。
【0049】
また、上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bがシャフト30に固定された状態で、上側からシャフト30にハブキャップ50が嵌め込まれてシャフト30にハブキャップ50が接着されて固定される。ハブキャップ50は、内周側円盤面51が上側転がり軸受10aの内輪12aにおける上側端面12auに当接した状態で接着固定される。
【0050】
上述のように、本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1において、上側転がり軸受10aの内輪12aの上側端面12auの位置P1から内輪12aの外周面12axまでの部分と、ハブキャップ50との間には、環状の空間である接着剤溜まり部70が形成されている。このため、ハブキャップ50の接着の際に、ハブキャップ50の内周面50iとシャフト30の外周面31xとの間から漏れた接着剤が上側転がり軸受10aの内輪12aとハブキャップ50との間を通って外輪11aと内輪12aの間から上側転がり軸受10aの内部に入り込もうとした場合であっても、接着剤を接着剤溜まり部70において留まらせることができる。このため、ハブキャップ50の内周面50iとシャフト30の外周面31xとの間の接着のための接着剤が上側転がり軸受10aの内部に入り込むことを防止することができる。接着剤溜まり部70は、外輪11aと内輪12aの間から離れた位置に、内周側に向かって尖ったくさび状の断面形状を有している。このため、毛細管現象によって、内輪12aとハブキャップ50との間を通って溢れ出た接着剤を、外輪11aと内輪12aの間から離間した接着剤溜まり部70の内周側の部分に留めることができる。このため、ハブキャップ50の内周面50iとシャフト30の外周面31xとの間の接着のための接着剤が上側転がり軸受10aの内部に入り込むことをより確実に防止することができる。
【0051】
また、本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1は、ハブキャップ50の外周面50xと、上側転がり軸受10aの外輪11aの内周面11aiの上側段差面20ausとの間にラビリンスL1が形成されている。このため、上側転がり軸受10aで用いられているグリース等の潤滑剤が気化又は微粒子化することによって、上側転がり軸受10aからパーティクル(汚染粒子)が発生した場合であっても、ラビリンスL1によりパーティクルが上側転がり軸受10aから外部に拡散されることを抑制することができる。
【0052】
また、シャフト30のフランジ部32の外周面32xと、下側転がり軸受10bの外輪11bの下側段差面20bbsとの間にラビリンスL2が形成されているため、ハブキャップ50と上側転がり軸受10aとの間のラビリンスL1と同様に、下側転がり軸受10bで用いられているグリース等の潤滑剤が気化又は微粒子化することによって、下側転がり軸受10bからパーティクルが発生した場合であっても、ラビリンスL2によりパーティクルが下側転がり軸受10bから外部に拡散されることを抑制することができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0054】
例えば、本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1においては、上側転がり軸受10aの内輪12aの上側端面12auの外周側の一部とハブキャップ50との間に接着剤溜まり部70が形成されている場合を一例に本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、
図4に示すように、他の接着剤溜まり部71が形成されていてもよい。
【0055】
図4は、本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1の他の接着剤溜まり部71の構成を概略的に示す拡大断面図である。ピボットアッシー軸受装置1は、接着剤溜まり部70に加えて、接着剤溜まり部71を有していてもよい。本変形例においては、上側転がり軸受10aの上側端部10auにおける内輪12aの内周側の角に環状の傾斜面12acを有しており、傾斜面12acはシャフト30との間に接着剤溜まり部71としての環状の空間を形成している。傾斜面12acは、内輪12aの上側端面12auから下側に斜めに内周側に延びている。
【0056】
具体的には、接着剤溜まり部71は、ハブキャップ50の内周側円盤面51における、上側転がり軸受10aの内輪12aの傾斜面12acに対向する少なくとも一部と、上側転がり軸受10aの内輪12aの傾斜面12acと、シャフト30の外周面31xとによって囲まれた円環状の空間である。上側転がり軸受10aの内輪12aの傾斜面12acは、ハブキャップ50の傾斜環状面52よりも内周側に位置している。
【0057】
このように、本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1の変形例は、上側転がり軸受10aの上側端部10auにおける内輪12aの傾斜面12acが、ハブキャップ50及びシャフト30との間に接着剤溜まり部71を形成している。このため、接着剤が接着剤溜まり部70に到達する前に、接着剤を接着剤溜まり部71において留まらせることができ、ハブキャップ50の内周面50iとシャフト30の外周面31xとの間の接着剤が上側転がり軸受10aの内部に入り込むことをより防止することができる。
【0058】
また、本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1においては、ハブキャップ50の内周面50iとシャフト30の外周面31xとの間に接着層60が形成されている場合を一例に本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、
図4に示すように、接着層61が形成されていてもよい。
【0059】
図4は、本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1の接着層60の変形例の構成を概略的に示す拡大断面図である。
図1に示すピボットアッシー軸受装置1の変形例としての接着層61においては、ハブキャップ50の内周面50iとシャフト30の外周面31xとの間の接着層60に加えて、ハブキャップ50の上側端面50u(内周側円盤面51とは反対側の面)とシャフト30の外周面31xとの間に接着層62が形成されている。接着層62は、ハブキャップ50の上側端面50uの内周側の一部にまで広がっている。また、
図4に示すピボットアッシー軸受装置1の接着層60の他の変形例では、接着層61として、接着層60,62に加えて、接着剤溜まり部71に接着層63が形成されている。
【0060】
このように、本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1の変形例は、接着層61として、接着層60と、接着層60とつながる接着層62とを備えている。このため、シャフト30とハブキャップ50との接着面積を増大することができ、より強固にハブキャップ50をシャフト30に固定することができる。また、接着層62にハブキャップ50の抜け止めの機能を持たせることができる。
【0061】
また、本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1の他の変形例としての接着層61は、接着層60(第1接着層)に加えて接着層62(第2接着層)及び接着層63が(第3接着層)を備えている。本他の変形例においては、接着層60の上側において接着層62が、また、接着層60の下側において接着層63が、接着層60に夫々つながっている。このため、接着層62及び接着層63によりハブキャップ50を挟み込むように接着することができ、より強固にハブキャップ50をシャフト30に固定することができる。
【0062】
接着層61の接着剤として、紫外線硬化型アクリル系嫌気性接着剤を用いる場合、接着層60及び接着層63は嫌気性により硬化し、接着層62は紫外線照射により硬化する。このため、より簡易にハブキャップ50をシャフト30に固定することができる。
【0063】
また、本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1においては、ハブキャップ50の傾斜環状面52が円錐面状の面である場合を一例に本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、
図5に示すように、接着剤溜まり部72が形成されていてもよい。
【0064】
図5は、
図2に示す本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1の接着剤溜まり部70の変形例の構成を概略的に示す拡大断面図である。ピボットアッシー軸受装置1の接着剤溜まり部70の変形例では、ハブキャップ50の傾斜環状面52が接着剤溜まり部70から凹む曲面である凹曲面となっている。具体的に、ハブキャップ50の傾斜環状面52は、ハブキャップ50の内部側に凹む曲面である。傾斜環状面52は、内周側円盤面51及び外周側円盤面53との間に角部を有しておらず滑らかに接続している。
【0065】
また、本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1においては、軸方向における上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bの外輪11a,11bの長さが軸方向における上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bの内輪12a,12bの長さよりも長くなっている場合を一例に本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、上側転がり軸受10の外輪11aと内輪12aの軸方向における長さは同じであり、下側転がり軸受10bの外輪11bと内輪12bの長さは同じであってもよい。この場合、上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bの軸方向における外輪11aと外輪11bとの間にスペーサを設けてもよい。具体的には、上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bは、外輪11a,11b同士が軸方向においてスペーサを介して当接しており、内輪12a,12b同士が軸方向において離間している。
【0066】
また、本発明の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1は、上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bを軸Y1方向において所定の間隔に保持するスリーブを有していないが、本発明はこれに限られず、上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bを軸Y1方向において所定の間隔に保持するスリーブを有していてもよい。このスリーブは、外輪11a,11bを保持する。この場合、上側転がり軸受10の外輪11aと内輪12aの軸方向における長さは同じであり、下側転がり軸受10bの外輪11bと内輪12bの長さは同じであってもよい。
【0067】
このように、本発明に係るピボットアッシー軸受装置においては、ピボットアッシー軸受装置の組み立て状態において、上側転がり軸受10a及び下側転がり軸受10bがそれぞれ所定の予圧を加えられつつ軸方向(矢印ab方向)に並んで位置決めされていればよい。
【符号の説明】
【0068】
1…ピボットアッシー軸受装置、10a…上側転がり軸受、10au…上側端部、10b…下側転がり軸受、10bb…下側端部、11a,11b…外輪、11ab…下側端面、11ai,11bi…内周面、11bu…上側端面、12a、12b…内輪、12ab,12bb…下側端面、12ac…傾斜面、12ai,12bi…内周面、12au,12bu…上側端面、12ax,12bx…外周面、13a,13b…転動体、14a,14b…保持器、15a,15b…シール部材、16a,16b…外周側円盤部、18a,18b…内周側円盤部、18ai,18bi…内周面、19a,19b…保持部材、20a,20b…周溝、20aus…上側段差面、20bbs…下側段差面、30…シャフト、31…円筒部、31b…下側端部、31x…外周面、32…フランジ部、32x…外周面、33…内周側円盤面、34…傾斜環状面、35…外周側円盤面、40…接着層、50…ハブキャップ、50i…内周面、50x…外周面、50u…上側端面、51…内周側円盤面、52…傾斜環状面、53…外周側円盤面、60~63…接着層、70~72…接着剤溜まり部、100…ハードディスク駆動装置、101…ハウジング、101a…底部、102…スイングアーム、103…磁気ヘッド、104…磁気ディスク、L1,L2…ラビリンス、S1,S2…シール隙間、Y1…軸