(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】導体の連結構造
(51)【国際特許分類】
H05K 7/12 20060101AFI20230414BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20230414BHJP
H01B 5/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
H05K7/12 D
F16B5/02 Y
H01B5/00
(21)【出願番号】P 2018237420
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】平島 光
(72)【発明者】
【氏名】木村 勇作
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-112719(JP,U)
【文献】特開2015-015367(JP,A)
【文献】実開平07-043557(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/12
F16B 5/02
H01B 5/00
H05K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの導体を互いに間隔をあけた状態でねじによって相互に連結する導体の連結構造であって、
電気的な絶縁性を有し、二つの導体の間に配される筒状のカラーと、
電気的な絶縁性を有し、第一導体及び前記カラーに順番に挿入されると共に前記ねじの軸部を前記第一導体側から挿通させる筒状部、及び、前記第一導体側に位置する前記筒状部の軸方向の第一端に一体に形成され、前記筒状部の外周よりも前記筒状部の径方向に張り出す環状のフランジ部を有する絶縁ブッシュと、を備え、
前記フランジ部は、前記筒状部の第一端に接続され、前記第一導体と共に前記ねじの頭部と前記カラーとの間に挟まれる内側フランジ部と、前記内側フランジ部の外周から前記径方向に張り出し、前記筒状部の軸方向における厚みが前記内側フランジ部よりも小さい外側フランジ部と、を備え
、
前記軸方向における前記外側フランジ部の厚みが、前記内側フランジ部の外周から前記径方向に離れるにしたがって小さくなる導体の連結構造。
【請求項2】
電気的な絶縁性を有する板状に形成され、前記第一導体と前記フランジ部との間に配されて前記径方向において前記フランジ部の外周よりも外側に延びる絶縁板を備える
請求項1に記載の導体の連結構造。
【請求項3】
二つの導体を互いに間隔をあけた状態でねじによって相互に連結する導体の連結構造であって、
電気的な絶縁性を有し、二つの導体の間に配される筒状のカラーと、
電気的な絶縁性を有し、第一導体及び前記カラーに順番に挿入されると共に前記ねじの軸部を前記第一導体側から挿通させる筒状部、及び、前記第一導体側に位置する前記筒状部の軸方向の第一端に一体に形成され、前記筒状部の外周よりも前記筒状部の径方向に張り出す環状のフランジ部を有する絶縁ブッシュと、を備え、
前記フランジ部は、前記筒状部の第一端に接続され、前記第一導体と共に前記ねじの頭部と前記カラーとの間に挟まれる内側フランジ部と、前記内側フランジ部の外周から前記径方向に張り出し、前記筒状部の軸方向における厚みが前記内側フランジ部よりも小さい外側フランジ部と、を備え
、
電気的な絶縁性を有する板状に形成され、前記第一導体と前記フランジ部との間に配されて前記径方向において前記フランジ部の外周よりも外側に延びる絶縁板を備える導体の連結構造。
【請求項4】
前記外側フランジ部は、前記軸方向における厚みが前記内側フランジ部よりも小さい板状に形成されている
請求項3に記載の導体の連結構造。
【請求項5】
前記第一導体に対向する前記外側フランジ部の対向面が、前記第一導体に対向する前記内側フランジ部の対向面と同一平面をなす
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の導体の連結構造。
【請求項6】
前記第一導体に対向する前記外側フランジ部の対向面は、前記軸方向において前記第一導体に対向する前記内側フランジ部の対向面よりも前記第一導体から離れて位置する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の導体の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導体の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電気機器では、二つの導体を、互いに電気的に絶縁した状態で、導電性を有するねじによって連結する連結構造が採用されている。
特許文献1には、絶縁素材からなる筒状のカラー及び絶縁ブッシュを用いることで、二つの導体(取り付け部)を電気的に絶縁した状態で連結する構造が開示されている。絶縁ブッシュは、筒状部と、その軸方向の一端に設けられて筒状部の外周から張り出す環状のフランジ部と、を有する。この構造では、二つの導体の間にカラーを挟み、絶縁ブッシュの筒状部を一方の導体側から一方の導体及びカラーに順番に挿入した上で、ねじを一方の導体側から絶縁ブッシュに挿通させ、ねじの先端を他方の導体に取り付けることで、二つの導体を連結する。二つの導体を連結した状態では、絶縁ブッシュのフランジ部が、ねじの頭部と一方の導体との間に介在する。すなわち、絶縁ブッシュのフランジ部によって、ねじの頭部と一方の導体との電気的な絶縁を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二つの導体の間で電位差が大きい場合には、ねじの頭部から一方の導体に至る絶縁距離(特に、ねじの頭部からフランジ部の表面に沿って一方の導体に至る沿面距離)を延長することが求められる。絶縁距離を延長するためには、例えば絶縁ブッシュのフランジ部の径寸法を大きくすることが考えられる。しかしながら、単に絶縁ブッシュのフランジ部の径寸法を大きくした場合、絶縁ブッシュの製造に要する絶縁材料の量が多くなってしまう、という問題がある。また、単に絶縁ブッシュのフランジ部の径寸法を大きくした場合には、絶縁ブッシュを含む電気機器の小型化を阻害する、という問題もある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、絶縁ブッシュの製造に要する絶縁材料の量を少なく抑えながら、ねじの頭部から導体に至る絶縁距離を延長できる導体の連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、二つの導体を互いに間隔をあけた状態でねじによって相互に連結する導体の連結構造であって、電気的な絶縁性を有し、二つの導体の間に配される筒状のカラーと、電気的な絶縁性を有し、第一導体及び前記カラーに順番に挿入されると共に前記ねじの軸部を前記第一導体側から挿通させる筒状部、及び、前記第一導体側に位置する前記筒状部の軸方向の第一端に一体に形成され、前記筒状部の外周よりも前記筒状部の径方向に張り出す環状のフランジ部を有する絶縁ブッシュと、を備え、前記フランジ部は、前記筒状部の第一端に接続され、前記第一導体と共に前記ねじの頭部と前記カラーとの間に挟まれる内側フランジ部と、前記内側フランジ部の外周から前記径方向に張り出し、前記筒状部の軸方向における厚みが前記内側フランジ部よりも小さい外側フランジ部と、を備え、前記軸方向における前記外側フランジ部の厚みが、前記内側フランジ部の外周から前記径方向に離れるにしたがって小さくなる導体の連結構造である。
【0007】
また、本発明の一態様は、二つの導体を互いに間隔をあけた状態でねじによって相互に連結する導体の連結構造であって、電気的な絶縁性を有し、二つの導体の間に配される筒状のカラーと、電気的な絶縁性を有し、第一導体及び前記カラーに順番に挿入されると共に前記ねじの軸部を前記第一導体側から挿通させる筒状部、及び、前記第一導体側に位置する前記筒状部の軸方向の第一端に一体に形成され、前記筒状部の外周よりも前記筒状部の径方向に張り出す環状のフランジ部を有する絶縁ブッシュと、を備え、前記フランジ部は、前記筒状部の第一端に接続され、前記第一導体と共に前記ねじの頭部と前記カラーとの間に挟まれる内側フランジ部と、前記内側フランジ部の外周から前記径方向に張り出し、前記筒状部の軸方向における厚みが前記内側フランジ部よりも小さい外側フランジ部と、を備え、電気的な絶縁性を有する板状に形成され、前記第一導体と前記フランジ部との間に配されて前記径方向において前記フランジ部の外周よりも外側に延びる絶縁板を備える導体の連結構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、絶縁ブッシュの製造に要する絶縁材料の量を少なく抑えながら、二つの導体を連結するねじの頭部から第一導体に至る絶縁距離を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る導体の連結構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る絶縁ブッシュを示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す導体の連結構造の分解斜視図である。
【
図4】
図1に示す導体の連結構造において、ねじの頭部から第一導体に至る沿面距離を示す図である。
【
図5】ねじの頭部から第一導体に至る沿面距離の比較例を示す図である。
【
図6】本発明の第二実施形態に係る導体の連結構造の第一例を示す断面図である。
【
図7】本発明の第二実施形態に係る導体の連結構造の第二例を示す断面図である。
【
図8】本発明の第三実施形態に係る導体の連結構造を示す断面図である。
【
図9】本発明の第四実施形態に係る導体の連結構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第一実施形態〕
以下、
図1~5を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1,3に示すように、本実施形態に係る導体の連結構造は、各種の電気機器に含まれるものであり、二つの導体1,2を互いに間隔をあけた状態でねじ3によって相互に連結する構造である。
【0011】
二つの導体1,2及びねじ3は、いずれも導電性を有する。各導体1,2の形状は、任意であってよい。本実施形態において、二つの導体1,2は、いずれも平板状に形成されている。二つの導体1,2のうち第一導体1には、貫通孔11が形成されている。貫通孔11には、ねじ3の軸部31や後述する絶縁ブッシュ5の筒状部51が挿通される。第二導体2には、ねじ3の軸部31(雄ねじ)に噛み合う雌ねじ孔21が形成されている。雌ねじ孔21は、図示例のように第二導体2を貫通してもよいが、例えば貫通しなくてもよい。
【0012】
導体の連結構造は、カラー4と、絶縁ブッシュ5と、を備える。カラー4及び絶縁ブッシュ5は、いずれも電気的な絶縁性を有する。カラー4及び絶縁ブッシュ5は、樹脂材料からなる。樹脂材料は、例えばポリカーボネート等であってよい。
【0013】
カラー4は、筒状に形成されている。カラー4は、その軸方向が二つの導体1,2の配列方向(
図1,3において上下方向)に向くように、二つの導体1,2の間に配される。カラー4の軸方向の第一端は、第二導体2に対向する第一導体1の対向面12のうち貫通孔11の周縁領域に接触する。一方、カラー4の軸方向の第二端は、第一導体1に対向する第二導体2の対向面22のうち雌ねじ孔21の周縁領域に接触する。このようにカラー4が二つの導体1,2の間に挟まれることで、二つの導体1,2は互いに所定の間隔をあけて位置する。
【0014】
カラー4の内径寸法は、ねじ3の軸部31の径寸法よりも大きい。このため、ねじ3の軸部31は、カラー4に挿入可能である。図示例において、カラー4の内径寸法は、第一導体1の貫通孔11の径寸法と同じであるが、例えば貫通孔11の径寸法と異なっていてもよい。
【0015】
図1~3に示すように、絶縁ブッシュ5は、筒状部51、及び、フランジ部52を有する。
筒状部51の内径寸法は、ねじ3の軸部31の径寸法よりも大きく、かつ、ねじ3の頭部32の径寸法よりも小さい。このため、筒状部51には、ねじ3の軸部31が挿入されるが、ねじ3の頭部32は挿入されない。筒状部51の外径寸法は、第一導体1の貫通孔11の径寸法やカラー4の内径寸法よりも小さい。筒状部51の軸方向の長さは、第一導体1の貫通孔11の軸方向の長さよりも大きく、かつ、カラー4及び貫通孔11の軸方向の長さを足し合わせた長さ以下である。
【0016】
フランジ部52は、筒状部51の軸方向の第一端に一体に形成されている。フランジ部52は、筒状部51の外周よりも筒状部51の径方向に張り出す環状に形成されている。フランジ部52の外径寸法は、第一導体1の貫通孔11の径寸法よりも大きい。フランジ部52は、内側フランジ部53と、外側フランジ部54と、を備える。
内側フランジ部53は、筒状部51の第一端に接続される。内側フランジ部53の外径寸法は、第一導体1の貫通孔11の径寸法やねじ3の頭部32の径寸法よりも大きい。
【0017】
本実施形態の内側フランジ部53は、小径部531及び大径部532を有する。小径部531と大径部532とは、筒状部51の第一端から筒状部51の軸方向に順番に並ぶ。小径部531及び大径部532の外径寸法は、互いに同じである。小径部531の内径寸法は、筒状部51の内径寸法と同様に、ねじ3の軸部31の径寸法よりも大きく、かつ、ねじ3の頭部32の径寸法よりも小さい。一方、大径部532の内径寸法は、小径部531の内径寸法及びねじ3の頭部32の径寸法よりも大きい。このため、ねじ3の軸部31がフランジ部52及び筒状部51に順番に挿入されると、ねじ3の頭部32は、大径部532の内側に収容されると共に、筒状部51の軸方向において大径部532側に向く小径部531の端面に接触する。
軸方向における小径部531の厚みは、小径部531が軸方向においてねじ3の頭部32と第一導体1との間に挟まれても耐える程度に厚く形成されるとよい。
【0018】
外側フランジ部54は、内側フランジ部53の外周から筒状部51の径方向に張り出す。筒状部51の軸方向における外側フランジ部54の厚みは、内側フランジ部53の厚みよりも小さい。
本実施形態の外側フランジ部54は、軸方向における厚みが内側フランジ部53の厚みよりも小さい板状に形成されている。外側フランジ部54の厚みは、筒状部51の径方向において一定である。本実施形態において、外側フランジ部54の厚みは、内側フランジ部53の小径部531や大径部532の厚みよりも小さい。
【0019】
また、外側フランジ部54のうち筒状部51の軸方向において筒状部51側に向く面57(以下、対向面57と呼ぶ。)は、内側フランジ部53のうち軸方向において筒状部51側に向く面55(以下、対向面55と呼ぶ。)と同一平面をなす。すなわち、外側フランジ部54は、軸方向において筒状部51側に位置する内側フランジ部53の第一端に位置する。このため、外側フランジ部54は、筒状部51の軸方向において、内側フランジ部53の対向面55と反対側に向く内側フランジ部53の反対側面56に対して段差を有するように位置する。
【0020】
本実施形態の導体の連結構造において、上記した絶縁ブッシュ5は、第一導体1及びカラー4に対して以下のように設けられる。
絶縁ブッシュ5の筒状部51は、第一導体1のうち対向面12と反対側に向く反対側面13から第一導体1の貫通孔11及びカラー4に順番に挿入される。ここで、絶縁ブッシュ5のフランジ部52の外径寸法は、貫通孔11の径寸法よりも大きい。このため、フランジ部52は、第一導体1の貫通孔11に挿入されない。この状態において、フランジ部52(内側フランジ部53及び外側フランジ部54)の対向面55,57は、第一導体1の反対側面13に対向する。また、筒状部51の軸方向の長さは、軸方向におけるカラー4及び貫通孔11の軸方向の長さを足し合わせた長さ以下である。このため、フランジ部52が第一導体1の反対側面13に押し付けられても、筒状部51の軸方向の第二端が第二導体2の対向面22に到達することはない。
【0021】
図1,3に示すように、本実施形態の導体の連結構造は、絶縁板6をさらに備える。絶縁板6は、電気的な絶縁性を有する板状に形成されている。絶縁板6の厚みは、図示例のように外側フランジ部54の厚みよりも薄くてもよいし、例えば外側フランジ部54の厚み以上であってもよい。絶縁板6は、第一導体1とフランジ部52との間に配される。この状態において、絶縁板6は、筒状部51の径方向においてフランジ部52の外周よりも外側に延びる。
【0022】
本実施形態の導体の連結構造において、ねじ3は前述した二つの導体1,2、及び絶縁ブッシュ5に対して以下のように設けられる。ねじ3の軸部31は、第一導体1側から絶縁ブッシュ5の筒状部51に挿通される。さらに、ねじ3の軸部31の先端部は、第二導体2の雌ねじ孔21に噛み合う。これにより、内側フランジ部53、第一導体1及びカラー4が、ねじ3の頭部32と第二導体2との間に挟まれる。また、第一導体1及び内側フランジ部53が、ねじ3の頭部32とカラー4との間に挟まれる。また、絶縁板6が、フランジ部52と第一導体1との間に挟まれる。また、ねじ3の頭部32が、内側フランジ部53の大径部532の内側に収容され、小径部531の端面に押し付けられる。
以上のようにねじ3が設けられることで、二つの導体1,2が相互に連結される。
【0023】
以上のように構成される本実施形態の導体の連結構造及び絶縁ブッシュ5によれば、内側フランジ部53の外周に外側フランジ部54が形成されている。このため、フランジ部52が外側フランジ部54を含まない場合と比較して、フランジ部52の外径寸法が大きくなる。これにより、ねじ3の頭部32から第一導体1に至る絶縁距離(特に、ねじ3の頭部32からフランジ部52の表面に沿って第一導体1に至る沿面距離)を延長することができる。以下、この点について、
図4,5を参照して具体的に説明する。
【0024】
図5に示すように、フランジ部52が内側フランジ部53のみによって構成された絶縁ブッシュ5Zを用いた導体の連結構造では、ねじ3の頭部32から第一導体1に至る沿面距離をなす経路が、内側フランジ部53の外周における第一経路R1と、内側フランジ部53の対向面55における第二経路R2と、を含む。
なお、導体の連結構造が絶縁板6を含まない場合、沿面距離をなす経路は、第一経路R1を含むが、第二経路R2を含まない。
【0025】
これに対し、
図4に示すように、本実施形態の絶縁ブッシュ5を用いた導体の連結構造では、ねじ3の頭部32から第一導体1に至る沿面距離をなす経路には、前述した第一経路R1及び第二経路R2に加え、外側フランジ部54の表面における第三経路R3も含まれる。第三経路R3は、第四経路R4と第五経路R5とを足し合わせた経路である。第四経路R4は、内側フランジ部53の外周から外側フランジ部54の対向面57と反対側に向く外側フランジ部54の反対側面58に沿って外側フランジ部54の外縁まで延びる。第五経路R5は、外側フランジ部54の対向面57に沿って外側フランジ部54の外縁から内縁まで延びる。本実施形態の導体の連結構造では、フランジ部52が外側フランジ部54を含まない場合と比較して、第三経路R3の分だけ沿面距離を延長することができる。
なお、本実施形態の導体の連結構造が絶縁板6を含まない場合、沿面距離をなす経路は、第一経路R1及び第四経路R4を含むが、第二経路R2及び第五経路R5を含まない。この場合であっても、フランジ部52が外側フランジ部54を含まない
図5の構成と比較して、第四経路R4の分だけ沿面距離を延長することができる。
【0026】
また、本実施形態の導体の連結構造によれば、二つの導体1,2の配列方向におけるカラー4の長さ及び筒状部51の長さ(特にカラー4に挿入される筒状部51の長さ)をそれぞれ調整することで、ねじ3の軸部31から筒状部51の外周面に沿って第一導体1に至る沿面距離R6、及び、カラー4の内周面や外周面に沿って第一導体1から第二導体2に至る沿面距離R7を、ねじ3の頭部32から第一導体1に至る沿面距離と同等とすることができる。以上により、第一導体1と第二導体2との絶縁距離を確保することができる。
【0027】
また、本実施形態の導体の連結構造及び絶縁ブッシュ5によれば、外側フランジ部54の厚みが内側フランジ部53よりも小さい。これにより、絶縁ブッシュ5を製造するための絶縁材料あるいは樹脂材料の量を少なく抑えることができる。
したがって、本実施形態の導体の連結構造及び絶縁ブッシュ5によれば、絶縁ブッシュ5の製造に要する材料を少なく抑えながら、ねじ3の頭部32から第一導体1に至る絶縁距離を確保することができる。
【0028】
また、絶縁ブッシュ5における外側フランジ部54の厚みが内側フランジ部53よりも小さいことで、絶縁ブッシュ5を含む電気機器の小型化を図ることができる。以下、この点について説明する。
例えば、外側フランジ部54が内側フランジ部53と同様に厚い絶縁ブッシュでは、外側フランジ部54を折り曲げることができない。このため、フランジ部52を第一導体1の反対側面13に配した状態では、外側フランジ部54が、第一導体1の反対側面13に沿う方向における第一導体1の端から突出してしまうことがある。この場合、電気機器の他の構成部品(例えば筐体の壁部など)を、第一導体1の端に対して間隔をあけて配置する必要がある。その結果として、電気機器の小型化を図ることができない。すなわち、絶縁ブッシュのフランジ部52が電気機器の小型化を阻害してしまう。
これに対し、外側フランジ部54の厚みが内側フランジ部53よりも小さい本実施形態の絶縁ブッシュ5では、外側フランジ54を折り曲げることができる。このため、外側フランジ部54のうち第一導体1の端から突出する部分を折り曲げて、第一導体1の端と電気機器の他の構成部品との隙間に挿入することができる。これにより、第一導体1と他の構成部品との間隔を小さくすることができる。その結果として、電気機器の小型化を図ることができる。
【0029】
また、本実施形態の導体の連結構造及び絶縁ブッシュ5によれば、外側フランジ部54の対向面57が、内側フランジ部53の対向面55と同一平面をなす。このため、ねじ3によってフランジ部52を第一導体1に押し付けた状態では、外側フランジ部54が内側フランジ部53と共に第一導体1に押し付けられる。すなわち、外側フランジ部54と第一導体1との間に空間(隙間)が生じない。これにより、仮に外側フランジ部54に外力が作用しても、内側フランジ部53と外側フランジ部54との接続部分に応力がかかることを防止できる。したがって、外側フランジ部54を外力から保護することができる。
【0030】
また、本実施形態の導体の連結構造及び絶縁ブッシュ5によれば、外側フランジ部54は、筒状部51の軸方向における厚みが内側フランジ部53よりも小さい板状に形成されている。これにより、絶縁ブッシュ5の製造に要する材料をさらに少なく抑えることができる。
【0031】
また、本実施形態の導体の連結構造によれば、第一導体1とフランジ部52との間に配された絶縁板6がフランジ部52の外周よりも外側に延びている。この場合には、ねじ3の頭部32から第一導体1に至る絶縁距離を延長することができる。この絶縁距離は、ねじ3の頭部32から第一導体1の反対側面13に至る空間距離又は沿面距離である。
【0032】
〔第二実施形態〕
次に、
図6,7を参照して本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態においては、第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0033】
図6,7に示すように、本実施形態の絶縁ブッシュ5B,5Cにおけるフランジ部52B,52Cは、第一実施形態と同様に、内側フランジ部53と、外側フランジ部54B,54Cと、を備える。内側フランジ部53は、第一実施形態と同様に形成されている。また、外側フランジ部54B,54Cは、第一実施形態と同様に、筒状部51の軸方向における厚みが内側フランジ部53の厚みよりも小さい板状に形成されている。
ただし、本実施形態の絶縁ブッシュ5B,5Cでは、外側フランジ部54B,54Cの対向面57が、筒状部51の軸方向において内側フランジ部53の対向面55よりも筒状部51や第一導体1から離れて位置する。内側フランジ部53の対向面55と外側フランジ部54B,54Cの対向面57とは、例えば筒状部51の軸方向において所定の間隔(例えば1mm以上)をあけて位置するとよい。
【0034】
図6に示す第一例の絶縁ブッシュ5Bでは、外側フランジ部54Bが、内側フランジ部53の反対側面56と同一平面をなす。すなわち、外側フランジ部54Bは、筒状部51の軸方向において筒状部51と反対側に位置する内側フランジ部53の第二端に位置する。このため、外側フランジ部54Bは、筒状部51の軸方向において、内側フランジ部53の対向面55に対して段差を有するように位置する。
一方、
図7に示す第二例の絶縁ブッシュ5Cでは、外側フランジ部54Cが、筒状部51の軸方向において内側フランジ部53の両端の間に位置する。このため、外側フランジ部54Cは、筒状部51の軸方向において、内側フランジ部53の対向面55及び反対側面56の両方に対して段差を有するように位置する。
【0035】
第二実施形態の絶縁ブッシュ5B,5C及びこれを含む導体の連結構造によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態の絶縁ブッシュ5B,5C及び導体の連結構造によれば、外側フランジ部54B,54Cの対向面57が、筒状部51の軸方向において内側フランジ部53の対向面55よりも筒状部51や第一導体1から離れて位置する。このため、導体の連結構造が絶縁板6を含まない場合に、ねじ3の頭部32から第一導体1の反対側面13に至る沿面距離を延長することができる。
【0036】
例えば、第一実施形態の絶縁ブッシュ5では、外側フランジ部54の対向面57が内側フランジ部53の対向面55と同一平面をなす。このため、導体の連結構造が絶縁板6を含まない場合、ねじ3の頭部32から第一導体1に至る沿面距離をなす経路には、内側フランジ部53の外周における第一経路R1と、外側フランジ部54の反対側面58における第四経路R4が含まれる(
図4参照)。
【0037】
これに対し、
図6,7に示すように、第二実施形態の絶縁ブッシュ5B,5Cでは、導体の連結構造が絶縁板6を含まない場合であっても、ねじ3の頭部32から第一導体1に至る沿面距離をなす経路は、前述した第一経路R1及び第四経路R4に加え、外側フランジ部54B,54Cの対向面57における第五経路R5をさらに含む。なお、
図7に示す第二例の絶縁ブッシュ5B,5Cにおける第一経路R1は、外側フランジ部54B,54Cによって二つに分割される。第二実施形態の導体の連結構造では、第一実施形態と比較して、第五経路R5の分だけ沿面距離を延長することができる。
【0038】
〔第三実施形態〕
次に、
図8を参照して本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態においては、第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0039】
図8に示すように、本実施形態の絶縁ブッシュ5Dにおけるフランジ部52Dは、第一実施形態と同様に、内側フランジ部53と、外側フランジ部54Dと、を備える。内側フランジ部53は、第一実施形態と同様に形成されている。筒状部51の軸方向における外側フランジ部54Dの厚みは、第一実施形態と同様に、内側フランジ部53の厚みよりも小さい。
【0040】
ただし、本実施形態の絶縁ブッシュ5Dにおいては、筒状部51の軸方向における外側フランジ部54Dの厚みが、内側フランジ部53の外周から筒状部51の径方向に離れるにしたがって小さくなる。具体的に、外側フランジ部54Dの対向面57は、第一実施形態と同様に、内側フランジ部53の対向面55と同一平面をなす。すなわち、外側フランジ部54Dの対向面57は、内側フランジ部53の外周から筒状部51の径方向にのみ延びている。
【0041】
一方、外側フランジ部54Dの反対側面58Dは、筒状部51の径方向において内側フランジ部53の外周から離れるにしたがって、筒状部51の軸方向において外側フランジ部54Dの対向面57に近づくように傾斜している。また、外側フランジ部54Dの反対側面58Dは、内側フランジ部53の反対側面56に連なるように形成されている。すなわち、外側フランジ部54Dの反対側面58Dと内側フランジ部53の反対側面56との間には段差がない。
【0042】
第三実施形態の絶縁ブッシュ5D及びこれを含む導体の連結構造によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第三実施形態の絶縁ブッシュ5D及び導体の連結構造によれば、筒状部51の軸方向における外側フランジ部54Dの厚みが、内側フランジ部53の外周から筒状部51の径方向に離れるにしたがって小さくなる。このため、第一実施形態のように外側フランジ部54(
図1参照)が板状に形成される場合と比較して、内側フランジ部53と外側フランジ部54Dとの接続部分の強度を確保することができる。したがって、仮に外側フランジ部54Dに外力が作用して、内側フランジ部53と外側フランジ部54Dとの接続部分に応力がかかっても、当該接続部分に欠陥が生じることを抑制できる。
【0043】
〔第四実施形態〕
次に、
図9を参照して本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態においては、第一、第三実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0044】
図9に示すように、本実施形態の絶縁ブッシュ5Eにおけるフランジ部52Eは、第一、第三実施形態と同様に、内側フランジ部53と、外側フランジ部54Eと、を備える。内側フランジ部53は、第一実施形態と同様に形成されている。筒状部51の軸方向における外側フランジ部54Eの厚みは、第一実施形態と同様に、内側フランジ部53の厚みよりも小さい。また、筒状部51の軸方向における外側フランジ部54Eの厚みは、第三実施形態と同様に、内側フランジ部53の外周から筒状部51の径方向に離れるにしたがって小さくなる。
【0045】
ただし、本実施形態の絶縁ブッシュ5Eにおいては、外側フランジ部54Eの反対側面58が、内側フランジ部53の反対側面56と同一平面をなす。すなわち、外側フランジ部54Eの反対側面58は、内側フランジ部53の外周から筒状部51の径方向にのみ延びている。
【0046】
一方、外側フランジ部54Eの対向面57Eは、筒状部51の径方向において内側フランジ部53の外周から離れるにしたがって、筒状部51の軸方向において外側フランジ部54Eの反対側面58に近づくように傾斜している。また、外側フランジ部54Eの対向面57Eは、内側フランジ部53の対向面55に連なるように形成されている。すなわち、外側フランジ部54Eの対向面57Eと内側フランジ部53の対向面55との間には段差がない。
【0047】
第四実施形態の絶縁ブッシュ5E及びこれを含む導体の連結構造によれば、第一、第三実施形態と同様の効果を奏する。
また、第四実施形態の絶縁ブッシュ5E及び導体の連結構造によれば、第二実施形態と同様に、外側フランジ部54Eの対向面57Eが、筒状部51の軸方向において内側フランジ部53の対向面55よりも筒状部51や第一導体1から離れて位置する。このため、導体の連結構造が絶縁板6を含まない場合に、ねじ3の頭部32から第一導体1の反対側面13に至る沿面距離を延長することができる。
【0048】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0049】
本発明の絶縁ブッシュにおいて、外側フランジ部の厚みが内側フランジ部の外周から筒状部の径方向に離れるにしたがって小さくなる構成では、例えば、外側フランジ部の対向面及び反対側面の両方が第三、第四実施形態と同様に傾斜してもよい。
【0050】
本発明の絶縁ブッシュにおいて、外側フランジ部の厚みが内側フランジ部の外周から筒状部の径方向に離れるにしたがって小さくなる構成では、例えば第二実施形態と同様に、外側フランジ部が、内側フランジ部の対向面や反対側面に対して、筒状部の軸方向において段差を有するように位置してもよい。
【0051】
本発明の絶縁ブッシュにおいて、内側フランジ部は、例えば小径部のみによって構成されてよい。すなわち、内側フランジ部には、ねじの頭部を収容する収容凹部が形成されなくてもよい。
【0052】
本発明の導体の連結構造において、第二導体には、雌ねじ孔を形成する代わりに、ねじの軸部を挿通させる貫通孔が形成されてもよい。この場合、二つの導体をねじによって連結する際には、ねじの軸部を第二導体の貫通孔に挿通させた上で、軸部の先端部にナットを取り付ければよい。
【符号の説明】
【0053】
1 第一導体
2 第二導体
3 ねじ
31 軸部
32 頭部
4 カラー
5,5B,5C,5D,5E 絶縁ブッシュ
51 筒状部
52,52B,52C,52D,52E フランジ部
53 内側フランジ部
54,54B,54C,54D,54E 外側フランジ部
55 対向面
56 反対側面
57,57E 対向面
58,58D 反対側面