(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/10 20060101AFI20230414BHJP
C08L 63/02 20060101ALI20230414BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230414BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20230414BHJP
C08K 7/28 20060101ALI20230414BHJP
C08K 5/5435 20060101ALI20230414BHJP
C08K 5/31 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
C08L63/10
C08L63/02
C08L63/00 C
C08L75/04
C08K7/28
C08K5/5435
C08K5/31
(21)【出願番号】P 2019020782
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】598109187
【氏名又は名称】パーカーアサヒ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 祐一朗
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-530643(JP,A)
【文献】国際公開第2018/080747(WO,A1)
【文献】特表2011-529817(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163491(WO,A1)
【文献】特表2002-538253(JP,A)
【文献】特開2006-307104(JP,A)
【文献】特表2018-518554(JP,A)
【文献】特開平05-179060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08G59/00- 59/72
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂とカルボキシル基含有ニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂(NBR変性エポキシ樹脂)の混合物からなるエポキシ樹脂と、ブロックウレタン樹脂と、
ガラスバルーンと、シランカップリング剤と、を含む、
エポキシ樹脂組成物であって、無機充填剤を含んでいてもよく、その場合の無機充填剤は、炭酸カルシウム、タルク、ヒュームドシリカ、水酸化アルミニウム、ベントナイト、カオリン、またはカーボンブラックから選択されることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記シランカップリング剤は、エポキシ基を有するシランカップリング剤である、請求項
1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂組成物は更に、ジシアンジアミドを含む、請求項1
又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂組成物は更に、前記ジシアンジアミドの硬化促進剤としてウレア系触媒を含む、請求項
3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
自動車構造部材に塗布され、部材を接着させる目的で使用される、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車の構造部材用の接着剤として、エポキシ樹脂組成物が広く使用されている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、光重合性成分とゴム成分又はエポキシ樹脂とを、もしくはゴム変性エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物を含む、自動車の構造部材用の接着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-57447号公報
【文献】特表2010-523800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の構造用接着剤には、種々の充填剤を含有するが、比重の重い鉱物・金属系フィラーを使用することにより自動車車体が重くなり燃費の低減を妨げるという問題があった。特許文献2に記載される接着剤は、発泡性のマイクロバルーンを使用しているが、基材に対する密着性、強度、破壊状態が不十分であった。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、非膨張バルーンを使用することによって、接着剤の比重を低減し、基材に対する密着性、強度、破壊状態に優れたエポキシ樹脂組成物、特に、加熱硬化一液型エポキシ樹脂接着剤に好ましく用いられるエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のエポキシ樹脂組成物は、
少なくとも1種のエポキシ樹脂と、
ブロックウレタン樹脂と、非膨張バルーンと、シランカップリング剤と、
を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
接着剤の比重を低減し、基材に対する密着性、強度、破壊状態に優れたエポキシ樹脂組成物、特に、加熱硬化一液型エポキシ樹脂接着剤に好ましく用いられるエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0009】
本発明は、少なくとも1種のエポキシ樹脂、ブロックウレタン樹脂を主成分とし、非膨張バルーンと、シランカップリング剤を含むエポキシ樹脂組成物(以下、本実施形態に係る樹脂組成物と呼ぶ)である。
【0010】
以下、各々の成分について、詳細に説明する。
【0011】
≪エポキシ樹脂≫
本実施形態に係る樹脂組成物における主成分の1つであるエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型のようなビスフェニル基を有するエポキシ化合物、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物、ナフタレン環を有するエポキシ化合物、フルオレン基を有するエポキシ化合物等の二官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型のような多官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ダイマー酸のような合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;N,N,N′,N′-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、N,N-ジグリシジルアニリンのようなグリシジルアミノ基を有する芳香族エポキシ樹脂;トリシクロデカン環を有するエポキシ化合物等が挙げられる。
【0012】
本実施形態に係る樹脂組成物におけるエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、カルボキシル基含有ニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。以下に、これらのエポキシ樹脂について、詳細に説明する。
【0013】
<ビスフェノールA型エポキシ樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物における主成分の1つである、ビスフェノールA型エポキシ樹脂について説明する。
【0014】
本実施形態に係る樹脂組成物が含有するエポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂である。ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有することで、接着剤としての強度も十分な樹脂組成物が得られる。
【0015】
本実施形態に係るビスフェノールA型エポキシ樹脂は、エポキシ当量が150以上260以下であるのが好ましい。また、本実施形態に係る樹脂組成物における、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の量は、20~80質量%であるのが好ましい。上記範囲とすることで、より耐衝撃性に優れる樹脂組成物が得られる。
【0016】
<カルボキシル基含有ニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物における主成分の1つである、カルボキシル基含有ニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂について説明する。
【0017】
本実施形態に係る樹脂組成物は、骨格がゴムであるエポキシ樹脂を含み、具体的には、カルボキシル基を含有するNBR(ニトリルブタジエンゴム)変性エポキシ樹脂を含む。NBR変性エポキシ樹脂を含有することで、耐熱性、耐衝撃性、柔軟性に優れる樹脂組成物が得られる。
【0018】
本実施形態に係るNBR変性エポキシ樹脂は、エポキシ当量が200以上500以下であるのが好ましい。また、本実施形態に係る樹脂組成物における、NBR変性エポキシ樹脂の量は、5~70質量%であるのが好ましい。上記範囲とすることで、より耐衝撃性、柔軟性に優れる樹脂組成物が得られる。
【0019】
NBR変性エポキシ樹脂を製造する際に使用されるエポキシ樹脂は、特に制限されず、従来公知のエポキシ樹脂を使用することができる。また、エポキシ樹脂は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用して使用しても良い。
【0020】
なお、本発明において、NBR変性エポキシ樹脂のエポキシ当量及び添加量は、製造時に用いる過剰のエポキシ樹脂を含むNBR変性エポキシ樹脂におけるエポキシ当量及び添加量とする。
【0021】
≪ブロックウレタン樹脂≫
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーが、活性メチレン化合物、オキシム化合物、フェノール化合物、ラクタム化合物や2級アミン化合物等でブロックされたブロックウレタン樹脂を含有する。
【0022】
<ポリヒドロキシ化合物>
ポリヒドロキシ化合物は、ヒドロキシル基を2個以上有する化合物であれば、その分子量及び骨格等は特に限定されず、比較的低分子の多価アルコール類、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
【0023】
多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、(1,3-または1,4-)ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,5-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの低分子ポリオール;ソルビトールなどの糖類;等が挙げられる。
【0024】
ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールとしては、上記多価アルコール類から導かれるものを使用しても良いし、以下に示す芳香族ジオール類、アミン類から導かれるものを使用しても良い。
【0025】
芳香族ジオール類としては、具体的には、例えば、レゾルシン(m-ジヒドロキシベンゼン)、キシリレングリコール、1,4-ベンゼンジメタノール、スチレングリコール、4,4′-ジヒドロキシエチルフェノール;下記に示すようなビスフェノールA構造(4,4′-ジヒドロキシフェニルプロパン)、ビスフェノールF構造(4,4′-ジヒドロキシフェニルメタン)、臭素化ビスフェノールA構造、水添ビスフェノールA構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールAF構造のビスフェノール骨格を有するもの;等が挙げられる。
【0026】
また、アミン類としては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられ、アルカノールアミン類としては、具体的には、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン等が挙げられる。
【0027】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、上記多価アルコール類、上記芳香族ジオール類、上記アミン類として例示した化合物から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド(テトラメチレンオキサイド)、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキサイドおよびスチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。
【0028】
このようなポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
【0029】
同様に、ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記多価アルコール類、上記芳香族ジオール類、上記アミン類のいずれかと、多塩基性カルボン酸との縮合物;ラクトン系ポリオール;ポリカーボネートポリオール;等が挙げられる。上記ラクトン系ポリオールとしては、具体的には、例えば、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、ε-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを適当な重合開始剤で開環重合させたもので両末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0030】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素-炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;等が挙げられる。
【0031】
これらのポリヒドロキシ化合物は、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
【0032】
<ポリイソシアネート化合物>
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0033】
ポリイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;TDI(例えば、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI))、MDI(例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′-MDI)、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′-MDI))、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような脂環式ポリイソシアネート;等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
【0034】
<ブロック剤>
ブロックウレタンのブロック剤としては、マロン酸ジエステル、アセト酢酸エステル等の活性メチレン化合物、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム等のオキシム化合物、ノニルフェノール、ビスフェノールA等のフェノール化合物(モノ、ジ体)、ε-カプロラクタム等のラクタム化合物、ジシクロヘキシルアミン等の2級アミン化合物が挙げられる。ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネートとの反応により、末端に遊離のイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーが得られる。このウレタンプレポリマーに、これらのブロック剤を反応させることでブロックウレタン樹脂を得ることができる。
【0035】
ブロック剤の添加量としては、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物の合計に対して、5~30質量%とすることが好ましい。
【0036】
<触媒>
ブロックウレタン樹脂を合成する反応に好適である触媒は市販されており、例えば、アルミニウム、錫、亜鉛、チタン、マンガン、ビスマス又はジルコニウムをベースとする金属又は遷移金属化合物、例えばジブチルチンジラウレート、亜鉛オクトエート、チタンテトラブチレート又はジルコニウムオクトエート等が挙げられる。
【0037】
また、本実施形態に係る樹脂組成物における、ブロックウレタン樹脂の量は、3~50質量%であるのが好ましい。上記範囲とすることで、高温においても優れた強度及び耐久性を有する樹脂組成物が得られる。
【0038】
≪その他の成分≫
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記説明した主成分以外の成分として、下記に挙げる非膨張バルーン、シランカップリング剤、硬化剤、硬化促進剤等のその他の成分を含む。各々の成分について、下記に詳細に説明する。
【0039】
<非膨張バルーン>
本実施形態に係る非膨張バルーンとしては、ガラスバルーン、樹脂バルーンが好ましく用いられる。樹脂バルーンは、PET、ナイロン、ポリウレタン、ポリオレフィン、PVC、および他の架橋ポリマーから成る、比較的非弾性の材料で構成される。
非膨張バルーンを用いることにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の軽量化が可能となる。
【0040】
<シランカップリング剤>
本実施形態に係るシランカップリング剤としては、エポキシ基を有するものが有効であり、例えば2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、シロキサンオリゴマー骨格中にエポキシ基とアルコキシシラン基を複数有するもの、が好ましく用いられる。
これらは、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
【0041】
<硬化剤>
本実施形態に係る硬化剤としては、通常エポキシ樹脂の硬化剤として用いられるものをそのまま使用することができる。
【0042】
硬化剤の具体例としては、例えばジシアンジアミド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、2-n-ヘプタデシルイミダゾールのようなイミダゾール誘導体、イソフタル酸ジヒドラジド、N,N-ジアルキル尿素誘導体、N,N-ジアルキルチオ尿素誘導体、テトラヒドロ無水フタル酸のような酸無水物、イソホロンジアミン、m-フェニレンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、メラミン、グアナミン、三フッ化ホウ素錯化合物、トリスジメチルアミノメチルフェノールなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
【0043】
上記の硬化剤の中でも、ジシアンジアミドを好適に使用することができる。ジシアンジアミドは、室温で安定に貯蔵でき、かつ、加熱により溶融し活性化することで急速に硬化する機能を有する潜在性硬化剤である。そのため、ジシアンジアミドを使用することで、高温においても優れた強度及び耐久性を有する樹脂組成物が得られる。
【0044】
本実施形態に係る樹脂組成物中における、硬化剤の含有量は、特に限定されず、各硬化剤毎の最適量を好ましく用いることができる。
【0045】
<硬化促進剤>
本実施形態に係る硬化促進剤は、硬化剤として好適に用いられるジシアンジアミドの硬化反応を促進する効果を有する。本実施形態の組成物に用いられる硬化促進剤は、ジシアンジアミドの硬化反応を促進する効果を有するものであれば特に限定されるものではなく、従来公知の硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤の具体例としては、脂肪族ジメチルウレア、芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用して使用しても良い。
【0046】
<更にその他の成分>
本実施形態に係る樹脂組成物は、その用途に応じて、更に無機充填剤、有機もしくは高分子充填剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、滑剤、摺動性付与剤、界面活性剤、着色剤等を含有していてもよい。これらは、1種類を単独で含有していても良いし、2種類以上を併用して含有していても良い。その他の成分の具体例としては、炭酸カルシウム、タルク、ワレストナイト、ヒュームドシリカ、水酸化アルミニウム、酸化カルシウム、ベントナイト、カオリン、カーボンブラック等が挙げられる。
【0047】
≪エポキシ樹脂組成物の製造方法≫
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法で製造することができる。例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、NBR変性エポキシ樹脂及びブロックウレタン樹脂、非膨張バルーン、シランカップリング剤、並びに必要に応じてその他の成分を、室温で均質に混練することで得ることができる。
【0048】
≪実施例≫
以下に、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0049】
(実施例1のエポキシ樹脂組成物の製造)
所定量のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量=190)、NBR変性エポキシ樹脂(HyPox RA 1340 CVC社製)、コロネート2532(ブロックウレタン樹脂、東ソー社製)、ガラスバルーン(S38 3M社製)、ジシアンジアミド、1-フェニル-3,3-ジメチル尿素、及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを均一に混錬してエポキシ樹脂組成物を得た。各々の成分の添加量(重量部)は表1に示す通りである。
【0050】
(実施例2のエポキシ樹脂組成物の製造)
所定量のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量=190)、NBR変性エポキシ樹脂(HyPox RA 1340 CVC社製)、コロネート2532(ブロックウレタン樹脂、東ソー社製)、樹脂バルーン(EMC40 三共精粉社製)、ジシアンジアミド、1-フェニル-3,3-ジメチル尿素、及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを均一に混錬してエポキシ樹脂組成物を得た。各々の成分の添加量(重量部)は表1に示す通りである。
【0051】
(比較例1のエポキシ樹脂組成物の製造)
所定量のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量=190)、NBR変性エポキシ樹脂(HyPox RA 1340 CVC社製)、コロネート2532(ブロックウレタン樹脂、東ソー社製)、ガラスバルーン(S38 3M社製)、ジシアンジアミド、及び1-フェニル-3,3-ジメチル尿素を均一に混錬してエポキシ樹脂組成物を得た。各々の成分の添加量(重量部)は表1に示す通りである。
【0052】
(比較例2のエポキシ樹脂組成物の製造)
所定量のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量=190)、NBR変性エポキシ樹脂(HyPox RA 1340 CVC社製)、コロネート2532(ブロックウレタン樹脂、東ソー社製)、発泡マイクロバルーン(マツモトマイクロスフェアー MFL-81GTA、松本油脂製薬社製)、ジシアンジアミド、1-フェニル-3,3-ジメチル尿素、及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを均一に混錬してエポキシ樹脂組成物を得た。各々の成分の添加量(重量部)は表1に示す通りである。
【0053】
【0054】
(評価)
各実施例及び各比較例で得られた組成物を、軟鋼板の表面に塗布して所定の温度(180℃)、所定の時間(30分)で硬化させ、引張り剪断強度試験およびT型剥離強度試験に供した。試験は、下記の条件で実施した。
【0055】
引張り剪断強度試験:JIS K-6850に準拠
テストスピード 50mm/min
塗布膜厚 0.2mm
塗膜面積 13×25mm
T型剥離強度試験:JIS K-6854に準拠
テストスピード 50mm/min
塗布膜厚 0.2mm
塗膜面積 25×75mm
とし、その他の条件については表1に示す。
【0056】
各評価についての結果について、表1に示す。
【0057】
各実施例において、引張り剪断強度およびT型剥離強度は、良好であった。一方、比較例1及び比較例2において、実施例に対して低い強度となった。したがって、実施例におけるエポキシ樹脂組成物は、優れた強度を有することがわかった。