(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】バイタルサイン反応式操作システム
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20230414BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20230414BHJP
H04M 11/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
H04Q9/00 301D
H04M1/00 R
H04M11/00 301
H04Q9/00 331Z
(21)【出願番号】P 2019034351
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康史
(72)【発明者】
【氏名】中島 円
【審査官】小林 義晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200638(JP,A)
【文献】国際公開第2014/155497(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
H04M 1/00
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによるバイタルセンサの装着の有無に応じて、家庭用電気機器を操作し得る操作システムであって、
前記ユーザに装着された状態で、該ユーザのバイタルサイン計測値を計測する
前記バイタルセンサと、
前記バイタルセンサとは別体である家電機器用リモートコントローラと、を備え、
前記バイタルセンサは、計測した前記バイタルサイン計測値を送信する送信手段を
有し、
前記家電機器用リモートコントローラは、家庭用電気機器を操作し得るリモートコントローラ、受信手段、装着判定手段、及び操作制御手段を有し、
前記受信手段は、前記バイタルセンサによって取得された前記バイタルサイン計測値を受信し、
前記装着判定手段は、前記受信手段が受信した前記バイタルサイン計測値に基づいて、前記ユーザが前記バイタルセンサを装着した装着状態か、前記ユーザが前記バイタルセンサを装着していない未装着状態か、のいずれかを判定し、
前記操作制御手段は、前記装着判定手段が前記装着状態と判定したときは家庭用電気機器の操作が可能な状態に制御するとともに、前記装着判定手段が前記未装着状態と判定したときは家庭用電気機器の操作が不可能な状態に制御する、
ことを特徴とするバイタルサイン反応式操作システム。
【請求項2】
前記家電機器用リモートコントローラは、前記リモートコントローラに制御デバイスが取り付けられた構成であり、
前記制御デバイスは、前記受信手段、前記装着判定手段、及び前記操作制御手段がユニット化された構成である、
ことを特徴とする請求項1記載のバイタルサイン反応式操作システム。
【請求項3】
複数種類の家庭用電気機器の中から稼働させる家庭用電気機器を選定する機器選定手段を、さらに備え、
前記機器選定手段は、前記バイタルサイン計測値に基づいて、稼働させる家庭用電気機器を選定し、
前記操作制御手段は、前記機器選定手段によって選定された家庭用電気機器を稼働させる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のバイタルサイン反応式操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、家庭用電気機器(以下、「家電機器」という。)を操作する技術に関するものであり、より具体的には、ユーザがバイタルサイン計測装置を装着したときにのみ家電機器の操作が可能となるように制御するバイタルサイン反応式リモートコントローラと、これを用いたバイタルサイン反応式操作システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、これまでインターネットに接続されていなかった「モノ」が、インターネットに接続され、その情報が活用されるようになった。いわゆる「モノのインターネット」、IoT(Internet of Things)である。例えば、テレビやエアコンといった家電機器をインターネットに接続することで、従来利用されなかった情報(ユーザの生活様式など)を収集することができ、その結果、より多様かつ高度な解析、分析が可能となるわけである。
【0003】
IoTが急速に身近な存在となった背景には、スマートフォンをはじめとするセンシングデバイスや通信インフラ、クラウドサービスの高度化と低価格化がある。これにより、物流や農業、あるいは医療など種々の分野で活用されるようになった。このうち医療分野では、ウェアラブルデバイスによってユーザの健康状態を記録し、その情報を医師と共有する取り組みが行われている。また、医療に特化したIoMT(Internet of Medical Things)が提唱されており、あらゆる医療機器の情報をビッグデータとして収集し、新しい治療方法や医学的知見を獲得することも今後期待されている。
【0004】
上記したとおり医療分野でも積極的にIoTが活用されており、これまでIoTに関する様々な技術が提案されている。例えば特許文献1では、バイタルサイン計測用のウェアラブルデバイスを装着したユーザが救護を要請できない状態に陥った場合に、自動的に医療機関や救急機関に通知する技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1でも提案しているように医療分野におけるIoTでは、ユーザのバイタルサインの共有が極めて有益となる。ここでバイタルサインとは、脈拍(あるいは心拍数)と呼吸、血圧、体温の数値情報(時間変化を含む)のことであり、通常このバイタルサインはウェアラブルのバイタルセンサによって取得される。つまり、バイタルサインを収集するためには、ユーザがバイタルセンサを装着する必要があり、しかもユーザの状態を把握するには比較的長い時間装着する必要がある。しかしながら、バイタルセンサを装着するとユーザにとって不自由なこともあり、特に高齢のユーザにとっては体力的にも負担に感じるケースもある。このようなバイタルセンサ装着による不都合は、自身の健康維持を図るという本来の目的を上回りやすく、すなわちユーザがバイタルセンサを装着するというモチベーションを維持するのは一般的に困難な傾向にある。
【0007】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわちユーザがバイタルセンサを装着するというモチベーションを維持することができるバイタルサイン反応式リモートコントローラと、これを用いた操作システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、ユーザの生活にとって特に重要なデバイスである家電機器に注目し、ユーザがバイタルセンサを装着したときに限り家電機器の操作を可能にする、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0009】
本願発明のバイタルサイン反応式リモートコントローラは、バイタルセンサ装着の有無に応じて家電機器を操作し得るリモートコントローラであって、受信手段と装着判定手段、操作制御手段を備えたものである。このうち受信手段は、バイタルセンサによって取得されたバイタルサイン計測値を受信する手段であり、装着判定手段は、バイタルサイン計測値に基づいて装着状態(ユーザがバイタルセンサを装着した状態)か未装着状態(ユーザがバイタルセンサを装着していない状態)のいずれかを判定する手段である。また操作制御手段は、装着判定手段が装着状態と判定したときは家電機器の操作が可能な状態に制御するとともに、未装着状態と判定したときは家電機器の操作が不可能な状態に制御する手段である。
【0010】
本願発明のバイタルサイン反応式リモートコントローラは、機器選定手段をさらに備えたものとすることもできる。この機器選定手段は、バイタルサイン計測値に基づいて、複数種類の家電機器の中から稼働させる家電機器を選定する手段である。この場合、操作制御手段は、機器選定手段によって選定された家電機器を稼働させる。
【0011】
本願発明のバイタルサイン反応式操作システムは、バイタルセンサ装着の有無に応じて家電機器を操作し得る操作システムであって、バイタルセンサと本願発明のバイタルサイン反応式リモートコントローラを備えたものである。このバイタルセンサは、装着された状態でユーザのバイタルサイン計測値を計測するセンサであり、計測したバイタルサイン計測値を送信する送信手段を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本願発明のバイタルサイン反応式リモートコントローラ、及びバイタルサイン反応式操作システムには、次のような効果がある。
(1)ユーザの生活にとって重要な家電機器を利用するため、必然的にユーザはバイタルセンサを装着するようになる。その結果、従前に比してバイタルサインがより収集されやすくなる。
(2)バイタルサインが収集される結果、ユーザの健康維持を図ることができ、異常時には迅速かつ適切な治療等を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本願発明のバイタルサイン反応式リモートコントローラとバイタルサイン反応式操作システムの主な構成を示すブロック図。
【
図2】本願発明のバイタルサイン反応式操作システムの主な処理の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明のバイタルサイン反応式リモートコントローラ、及びバイタルサイン反応式操作システムの実施形態の一例を、図を参照しながら説明する。
【0015】
はじめに、本願発明の概要について説明する。本願発明は、ユーザがバイタルセンサを装着したときにのみ、家電機器の操作を可能にするという技術である。より詳しくは、ユーザがバイタルセンサを装着した状態(以下、「装着状態」という。)であると判定したときに家電機器用のリモコンを操作できる状態(以下、「操作可状態」という。)に制御し、ユーザがバイタルセンサを装着していない状態(以下、「未装着状態」という。)であると判定したときにはリモコンを操作できない状態(以下、「操作不可状態」という。)に制御するわけである。ここでバイタルセンサとは、バイタルサインを計測するものであって、ユーザの手首等に装着するいわゆるウェアラブル形式のものである。またバイタルサインとは、既述したとおり脈拍(あるいは心拍数)と呼吸、血圧、体温の数値情報(時間変化を含む)のことである。なお便宜上、バイタルセンサによって計測されたバイタルサインのことを「バイタルサイン計測値」ということとする。
【0016】
以下、本願発明について詳しく説明する。なお本願発明は、バイタルサインを利用するものであるが、脈拍と呼吸、血圧、体温の中から選択される1又は2以上のものをバイタルサインとすることができる。また本願発明で操作対象となる家電機器としては、テレビやエアコン、照明、冷蔵庫のほか、固定電話や携帯電話、ファクシミリといった通信機器や、パーソナルコンピュータやオートロックなどが挙げられる。
【0017】
図1は、本願発明のバイタルサイン反応式リモートコントローラ100とバイタルサイン反応式操作システム300の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように本願発明のバイタルサイン反応式操作システム300は、バイタルサイン反応式リモートコントローラ100とバイタルセンサ200を含んで構成される。そしてバイタルサイン反応式リモートコントローラ100は、家電機器を操作する通常の操作手段に加え、受信手段101と装着判定手段102、操作制御手段103を含んで構成され、さらに機器選定手段104やバイタルサイン記憶手段105、基準値記憶手段106を含んで構成することもできる。
【0018】
バイタルサイン反応式リモートコントローラ100は、既製(市販)のリモートコントローラを利用することができる。この場合、既製のリモートコントローラに、本願発明として必要な各手段(受信手段101と装着判定手段102、操作制御手段103、機器選定手段104など)を追加する加工を行う。あるいは、本願発明として必要な各手段をユニット化した「制御デバイス」を製造し、この制御デバイスを既製のリモートコントローラに取り付けたものを、バイタルサイン反応式リモートコントローラ100として用いることもできる。
【0019】
また、バイタルサイン反応式リモートコントローラ100は、既製のリモートコントローラを利用することなく、専用のものとして製造することもできる。この場合、スマートフォンを利用し、さらに学習リモコンとして機能させるとよい。
【0020】
図1では、バイタルサイン記憶手段105と基準値記憶手段106をバイタルサイン反応式リモートコントローラ100(あるいは制御デバイス)内に設けるように示しているが、これに限らずバイタルサイン反応式リモートコントローラ100の外部に(つまり別体として)設けることもできる。この場合、バイタルサイン記憶手段105と基準値記憶手段106は、ネットワーク(LAN:Local Area Network)に置かれたデータベースサーバや、インターネット経由で保存するクラウドサーバに構築するとよい。
【0021】
バイタルセンサ200は、既述したとおりウェアラブル形式のものであり、例えば腕時計のようにユーザの手首に装着される。なおバイタルセンサ200は、バイタルサインのうち脈拍、呼吸、血圧、体温のうちいずれかを計測するものでもよいし、2以上を計測するものでもよい。あるいは、ユーザの状態を示す数値情報であれば、脈拍と呼吸、血圧、体温以外のものを計測するものでもよい。またバイタルセンサ200は、取得したバイタルサイン計測値を送信する送信手段を具備している。この送信手段から送信されたバイタルサイン計測値は、バイタルサイン反応式リモートコントローラ100の受信手段101で受信される。ここでの送受信は近距離無線通信が用いられ、例えば、赤外線通信やWiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、BLE(BluetoothLowEnergy)など従来用いられている種々の規格を利用することができる。
【0022】
図2は、本願発明のバイタルサイン反応式操作システム300の主な処理の流れを示すフロー図である。以下、この図を参照しながらバイタルサイン反応式操作システム300の主な処理の流れについて説明する。
【0023】
バイタルセンサ200の電源がONの状態であれば、定期的(あるいは連続的)にバイタルサインが計測され、計測されたバイタルサイン計測値が送信される(Step100)。そして送信されたバイタルサイン計測値は、バイタルサイン反応式リモートコントローラ100の受信手段101で受信され(Step200)、バイタルサイン記憶手段105に記憶される。このとき、バイタルサイン計測値とともにバイタルセンサ200によって計測された時刻もあわせて(紐づけて)記憶される。
【0024】
装着判定手段102は、定期的(あるいは連続的)にバイタルサイン記憶手段105に記憶されたバイタルサイン計測値を読み出す(Step300)。さらに装着判定手段102は、読み出したバイタルサイン計測値に基づいて、ユーザが装着状態にあるか、あるいは未装着状態にあるかの判定を行う(Step400)。
【0025】
装着状態か未装着状態かの判定は、2段階の個別判定によって行われる。まず第1段階では、読み出したバイタルサイン計測値の計測時刻に基づく判定が行われる。通常、バイタルサイン記憶手段105には複数のバイタルサイン計測値が記憶されており、そのバイタルサイン計測値のうち最新の計測時刻が現在時刻よりも古い場合は、現在は未装着状態であると反映する。つまり、一定の時間バイタルサイン計測値が送信されることがなかったということは、一定時間バイタルセンサ200の電源がOFFの状態とされていると考えるわけである。なお、最新の計測時刻が現在時刻よりも古いか否かは、最新の計測時刻と現在時刻との時間差を閾値(あらかじめ設定)と照らし合わせることで、すなわち時間差が閾値を上回るときに「古い」と判定するとよい。
【0026】
第1段階で最新の計測時刻が現在時刻よりも古くないと判定されれば、次の第2段階の個別判定に進む。ここでは、読み出したバイタルサイン計測値と、あらかじめ設定した許容範囲とを照らし合わせる。この許容範囲は、一般的な人のバイタルサインの最低値~最高値で設定するとよい。バイタルサイン計測値がこの許容範囲内にあれば、そのバイタルサイン計測値は人(ユーザ)が示すものであって正常にバイタルセンサを装着していると判定するわけである。一方、バイタルサイン計測値がこの許容範囲内にないときは、バイタルセンサの電源はONの状態であるが人が装着していない(例えば、テーブル上に置いてある)と判定する。なお第2段階の個別判定で許容範囲と照らし合わせるバイタルサイン計測値は、1点の値(データ)でもよいし、所定期間における時間変化とすることもできる。
【0027】
第1段階、第2段階の個別判定でともに「装着状態」と判定された場合は(Step400のYes)、操作制御手段103がバイタルサイン反応式リモートコントローラ100を「操作可状態」に制御する(Step501)。一方。第1段階、第2段階の個別判定のうちいずれかで「未装着状態」と判定された場合は(Step400のNo)、操作制御手段103がバイタルサイン反応式リモートコントローラ100を「操作不可状態」に制御し(Step502)、引き続きバイタルサイン計測値を読み出していく(Step300)。
【0028】
「操作可状態」に制御する(Step501)と、バイタルサイン計測値と、あらかじめ設定した基準範囲とを照らし合わせる(Step600)。この基準範囲は、健康な人のバイタルサインの最低値~最高値で設定される。バイタルサイン計測値がこの基準範囲内にあれば、そのバイタルサイン計測値を示す人(ユーザ)は正常(健康状態)であると判定でき、バイタルサイン計測値がこの許容範囲内にないときは、そのバイタルサイン計測値を示す人(ユーザ)は体調異常の可能性があると判定できる。
【0029】
バイタルサイン計測値と基準範囲とを照らし合わせた結果、基準範囲内にある(Step600のYes)場合、引き続きバイタルサイン計測値を読み出していく(Step300)。一方、基準範囲外である(Step600のNo)ときは、機器選定手段104が、基準範囲外となったバイタルサインの種類(脈拍、呼吸、血圧、体温など)に応じて、稼働させるべき家電機器(以下、「要稼働機器」という。)を選定する。例えば、バイタルサインとして体温に異常が認められたときはエアコンなどを要稼働機器として選定し、バイタルサインとして血圧に異常が認められたときは固定電話などの通信機器を要稼働機器として選定する。
【0030】
機器選定手段104によって要稼働機器が選定されると、操作制御手段103がその要稼働機器を稼働させる(Step700)。例えば、上記のように体温に異常が認められたケースでは、エアコンの電源をON状態にするとともに体温に応じて暖房又は冷房の運転処理を実行させ、血圧に異常が認められたケースでは、固定電話や携帯電話で関係者(家族や救急施設など)に連絡する処理を実行させる。この場合、多種の家電機器を操作することができるよう、バイタルサイン反応式リモートコントローラ100は学習リモコンを利用するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本願発明のバイタルサイン反応式リモートコントローラ、及びバイタルサイン反応式操作システムは、独居の高齢者や介護を要する者のほか、病院や介護施設を利用している者に対して特に有効に利用することができる。高齢者や介護を必要とする者の健康維持を継続させ得ることを考えれば、本願発明は産業上利用できるうえに高齢化が進む我が国にとって社会的にも貢献が期待できる発明といえる。
【符号の説明】
【0032】
100 バイタルサイン反応式リモートコントローラ
101 受信手段
102 装着判定手段
103 操作制御手段
104 機器選定手段
105 バイタルサイン記憶手段
106 基準値記憶手段
200 バイタルセンサ
300 バイタルサイン反応式操作システム