IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本化薬株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用安全装置 図1
  • 特許-車両用安全装置 図2
  • 特許-車両用安全装置 図3
  • 特許-車両用安全装置 図4
  • 特許-車両用安全装置 図5
  • 特許-車両用安全装置 図6
  • 特許-車両用安全装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】車両用安全装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/08 20060101AFI20230414BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B60R21/08 A
F16F7/00 J
B60R21/08 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019035845
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020138647
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】笹本 幸一
(72)【発明者】
【氏名】福島 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 展幸
(72)【発明者】
【氏名】大中 崇弘
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-004178(JP,B1)
【文献】特公昭48-041291(JP,B1)
【文献】特開昭48-035537(JP,A)
【文献】特開2003-341453(JP,A)
【文献】米国特許第05226672(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102020209765(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0107209(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0190513(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/06
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急時において乗員を保護するように展開可能な保護ネットと、
前記保護ネットの展開時に前記保護ネットを展開方向に案内可能に、前記保護ネットと接続されているガイド部と、
前記保護ネットを展開するための駆動力を前記保護ネットに付与可能なアクチュエータ部と、
を備え
前記ガイド部は、車両の内部において、前記車両のセンターピラーに略対向するように、一端が前記車両の床部に固定されていることを特徴とする車両用安全装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記車両の内部の少なくとも一部と一体化または接続固定されている棒状部材であり、
前記保護ネットの少なくとも一部には、前記棒状部材に対してスライド可能なスライド部材が設けられており、
前記アクチュエータ部は、発生させたガスによる圧力を利用して前記スライド部材を射出可能なガス発生器を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両用安全装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、テレスコピック型の筒状の伸縮部であり、
前記アクチュエータ部は、発生させたガスを供給可能に前記伸縮部の内部と接続されているガス発生器を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両用安全装置。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記車両の内部の少なくとも一部と一体化または接続固定されている棒状部材であり、
前記保護ネットの少なくとも一部には、前記棒状部材に対してスライド可能なスライド部材が設けられており、
前記スライド部材は、通常時において、前記保護ネットが展開しないように吊り下げることができるように、前記ガイド部の上部から途中までのいずれかの部分で係止部によって係止されているものであり、
前記アクチュエータ部は、前記係止部による係止を解除する係止解除機構を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両用安全装置。
【請求項5】
前記ガス発生器が、電気信号を受信して作動する点火器を含む火薬式であることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急時などにおいて、乗員を保護する車両用安全装置に関するものである。
【0002】
近年、自動運転技術が実用化されつつあるが、自動運転技術の実用化が確立された場合、走行中に操縦用のハンドルを握る必要はなくなり、車両内の座席配置なども従来とは異なって、自由度が増すと考えられている。自動運転中に運転以外の行為を指す言葉として、セカンダリアクティビティがある。セカンダリアクティビティ中に乗員の安全を確保する車両用安全装置が求められている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、斜突の際に乗員頭部の回転を抑制しつつ乗員を拘束するエアバッグ装置が開示されている。また、例えば、下記特許文献2には、車両に後突事故が生じたときに、最後部座席に着座している乗員の後方への移動に伴う、車両後端部への2次衝突を防止するエアバッグ装置が開示されている。このように、車両に事故が生じたときに乗員を保護する安全装置として、シートベルトとともにエアバッグ装置を用いることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-018790号公報
【文献】特開2011-148431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような座席配置などの自由度が増した場合において、従来のシートベルトをそのまま採用して車両搭乗時の快適性を追求したい場合、搭乗者の姿勢に制限をかけてしまうことになるので、従来のシートベルトをそのまま採用することは難しい。また、従来のシートベルトをそのまま採用する場合において車両搭乗時の快適性を追求するには、たとえば、シートベルトの張力を緩和することも考えられるが、この場合、衝突事故などにおいて車両が衝撃を受けると、衝突する向きによっては、シートベルト自体の搭乗者への加害性が大幅に向上してしまうことが考えられる。また、このようなシートベルトの張力を緩和した状態では、エアバッグシステムの効力も大幅に減少し、搭乗者を十分に保護できない可能性が高くなってしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両搭乗時の快適性を従来よりも確保しつつ、車両搭乗時の安全性も保持可能な車両用安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明の車両用安全装置は、緊急時(たとえば、車両が衝突を検知または予測したとき)において乗員を保護するように展開可能な保護ネットと、前記保護ネットの展開時に前記保護ネットを展開方向に案内可能に、前記保護ネットと接続されているガイド部と、前記保護ネットを展開するための駆動力を前記保護ネットに付与可能なアクチュエータ部と、を備え、前記ガイド部は、車両の内部において、前記車両のセンターピラーに略対向するように、一端が前記車両の床部に固定されていることを特徴とする。

【0010】
(2) 上記(1)の車両用安全装置においては、前記ガイド部は、前記車両内部の少なくとも一部と一体化または接続固定されている棒状部材であり、前記保護ネットの少なくとも一部には、前記棒状部材に対してスライド可能なスライド部材が設けられており、前記アクチュエータ部は、発生させたガスによる圧力を利用して前記スライド部材を射出可能なガス発生器を有していることが好ましい。
が好ましい。
【0011】
(3) 別の観点として、上記(1)の車両用安全装置においては、前記ガイド部は、テレスコピック型の筒状の伸縮部であり、前記アクチュエータ部は、発生させたガスを供給可能に前記伸縮部の内部と接続されているガス発生器を有しているものであってもよい。
【0012】
(4) 他の観点として、上記(1)の車両用安全装置においては、前記ガイド部は、前記車両内部の少なくとも一部と一体化または接続固定されている棒状部材であり、前記保護ネットの少なくとも一部には、前記棒状部材に対してスライド可能なスライド部材が設けられており、前記スライド部材は、通常時において、前記保護ネットが展開しないように吊り下げることができるように、前記ガイド部の上部から途中までのいずれかの部分で係止部によって係止されているものであり、前記アクチュエータ部は、前記係止部による係止を解除する係止解除機構を有しているものであってもよい。
【0013】
(5) 上記(2)または(3)の車両用安全装置においては、前記ガス発生器が、電気信号を受信して作動する点火器を含む火薬式であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両搭乗時の快適性を従来よりも確保しつつ、車両搭乗時の安全性も保持可能な車両用安全装置を提供できる。また、本発明によれば、エアバッグシステムなどと比較して、簡素な構造であるため、製造しやすいとともにコストを低減化でき、さらに軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る車両用安全装置を積載した車両の側面図である。
図2図1の車両の上視図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両用安全装置を示した一部断面図であって、作動前のものである。
図4図3の車両用安全装置において、作動後の状態を示した図である。
図5図3の車両用安全装置におけるロック部を説明するための一部拡大図である。
図6図3の車両用安全装置におけるアクチュエータ部を説明するための一部拡大図である。
図7図3の車両用安全装置におけるアクチュエータ部の変形例を示す図であり、(a)は作動前の状態を示す簡略断面図、(b)は作動後の状態を示す簡略断面図である。
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る車両用安全装置10について、図1図5に基づいて説明する。図1および図2に示したように、車両用安全装置10は、車両100の内部の略中央部において、前方部と後方部との間に設けられている。
【0017】
図1図3に示すように、車両用安全装置10は、ガイド部1、2と、保護ネット3と、アクチュエータ部4、5と、を備えている。
【0018】
ガイド部1、2は、一端が車両100の床部6に固定され、他端にストッパー1a、2aが設けられた棒状部材であって、保護ネット3の移動方向をガイドすることができるようになっている。また、ガイド部1、2のそれぞれには、後述するスライド部材41、51が掛止してロックされるロック部11、12が設けられている。なお、ガイド部1、2の他端は、車両100の天井部に固定されていてもよい。
【0019】
ロック部11は、図5(a)に示したように、掛止部材11aと、ばね11bと、を備えている。なお、ロック部12は、ロック部11と同構成であるので、説明を省略する。
【0020】
掛止部材11aは、ガイド部1の上部の途中に設けられた開口部1cにおいて、ガイド部1の径方向に摺動可能に挿入されている。また、掛止部材11aは、ガイド部1の内側から外側に向かってばね11bによる付勢力が付勢され、一部が開口部1cから突出した状態となるように設けられている。また、掛止部材11aは、ガイド部1の内部に設けられた支持部材1d、1eによって、ガイド部1の径方向に摺動可能に支持されている。ばね11bは、ガイド部1の内部に設けられた軸1bに、巻きばね部分が巻きつけられるように設置されており、一方の棒状部分の先端がガイド部1の内壁に当接し、他方の棒状部分の先端が掛止部材11aに当接可能に設けられている。
【0021】
このような構成のロック部11は、通常時において図5(a)の状態となっているが、緊急時(たとえば、車両が衝突を検知または予測したとき)において後述するアクチュエータ部4のスライド部材41が射出された場合、ガイド部1の下部からスライドしてきたスライド部材41によって掛止部材11aはガイド部1の内部に押し込まれ、一時的に図5(b)の状態となる。そして、スライド部材41がさらに上方に移動して掛止部材11aを通過した後、掛止部材11aは図5(a)の状態に戻る。このとき、スライド部材41は、掛止部材11aの突出部分に掛止され、スライド部材41の位置がロックされた状態となる。
【0022】
保護ネット3は、通常時において、折り畳まれた状態で床部6の収納室6aに収納されている。後述するが、保護ネット3は、緊急時において、図4に示したように展開可能である。また、保護ネット3の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、アラミドなどの粘弾性樹脂からなる帯状部材を編んで網状にしたものである。
【0023】
アクチュエータ部4は、図6に示したように、リング状のスライド部材41と、リング状の押上部材42と、突出部43と、ガス発生器44と、を備えている。なお、アクチュエータ部5は、アクチュエータ部4と同構成であるため、説明を省略する。
【0024】
スライド部材41にはガイド部1が嵌挿されており、スライド部材41は、ガイド部1の延設方向にスライド可能となっている。なお、スライド部材41は、図6に示したように、通常時において、床部6の収納室6bに収納されている。また、スライド部材41は、保護ネット3の展開後に上部となる部分の角部の一方側に、紐状部材7を介して連結されている。なお、スライド部材41はリング状のものに限られず、ガイド部1に対してスライド可能な状態のものであれば、ガイド部1とともにどのような形状、構造、機構、仕組みであってもよい。
【0025】
押上部材42は、車両用安全装置10作動時にガス発生器44において発生させたガスの圧力を受けて、スライド部材41を押し上げて収納室6bから射出する際に使用されるものである。また、押上部材42は、通常時において、突出部43に支持されているとともに、スライド部材41を支持している。
【0026】
ガス発生器44は、内部の火薬が燃焼して押上部材42をガイド部1の長さ方向に押し出すことが可能なガスを発生させることができるものである。具体的に説明すると、ガス発生器44は、小型軽量のものであり、ガス発生剤が充填されたカップ体と、ガス発生剤を着火させるための点火器と、点火器を保持するホルダとを備えるものである。また、ガス発生器44は、たとえば、マイクロガスジェネレータなどが挙げられるが、ガスを発生させることができるのであれば、どのような装置であってもよい。なお、ガス発生剤は、点火器が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤(火薬または推進薬)である。
【0027】
一般的にガス発生器は、非火薬式と火薬式とに大別できる。非火薬式の主流は、二酸化炭素や窒素等のガスを封入したガスボンベに、針等の鋭利部材と圧縮したバネとを連結して、バネ力を利用して鋭利部材を飛ばし、ボンベを封止している封板に衝突させてガスを放出させるものである。このとき、バネの圧縮力を解放するために、サーボモータ等の駆動源が通常使用される。次に、火薬式の場合であるが、点火器単体でもよいし、点火器とガス発生剤とを備えたものでもよい。また、火薬の力で小型のガスボンベにおける封板を開裂させ、内部のガスを外部へと排出するハイブリッド型、ストアード型のガス発生器を使用してもよい。この場合、ガスボンベ内の加圧ガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素、二酸化炭素などの不燃性のガスから少なくとも一つ以上から選ばれる。また、加圧ガスが放出される際、確実に膨張させるために火薬式の発熱体をガス発生器に備えていてもよい。さらにガス発生器には、必要に応じてフィルタまたは/およびガス流量を調整するオリフィスを備えてもよい。
【0028】
ガス発生剤としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤が形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等又はこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジン、硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、又は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダ、スラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダ、又は、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。また、ニトロセルロースを主成分としたシングルベース火薬、ダブルベース火薬、トリプルベース火薬を用いてもよい。
【0029】
また、ガス発生剤の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状又は多孔筒形状等)の成形体も利用される。また、ガス発生剤の形状の他にもガス発生剤の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズおよび充填量を適宜選択することが好ましい。
【0030】
次に、本実施形態における車両用安全装置10の動作について説明する。なお、アクチュエータ部4の動作について説明するが、アクチュエータ部5はアクチュエータ部4の動作と同様であるので、説明を省略することがある。
【0031】
まず、車両100の前方が衝突事故に遭遇した場合に、車両100に搭載されている制御部(CPU、ROM、RAMなどを有したコンピュータ(図示せず))からガス発生器44の作動信号が発信され、ガス発生器44が作動する。次に、図3の状態から、ガス発生器44の作動によりガスが発生し、そのガス圧によって押上部材42がスライド部材41を押し上げ、収納室6bからスライド部材41がガイド部1の上部方向へ射出される。
【0032】
そして、ロック部11に到達したスライド部材41は、掛止部材11aをガイド部1の内部に押し込み、一時的に図5(b)の状態にする。続いて、スライド部材41がさらに上方に移動して掛止部材11aを通過した後、掛止部材11aは図5(a)の状態に戻る。続いて、スライド部材41は、ストッパー1aによって上方への移動を止められた後、掛止部材11aの突出部分に掛止され、スライド部材41の位置がロックされた状態となる。スライド部材51およびロック部12の動作もスライド部材41およびロック部11と同様の動作をするので、保護ネット3は、図4に示した状態となる。
【0033】
したがって、後部にいる搭乗者が、事故の衝撃で車両100の前方に移動することになっても、図4に示した状態の保護ネット3により、車両100の外部への放出および装備品との衝突を防止するとともに、衝突時の衝撃を吸収することができる。
【0034】
以上のように、本実施形態における車両用安全装置10では、車両搭乗時の快適性を従来よりも確保しつつ、車両搭乗時の安全性も保持可能な車両用安全装置を提供することができる。また、車両用安全装置10によれば、エアバッグシステムなどと比較して、簡素な構造であるため、製造しやすいとともにコストを低減化でき、さらに軽量化することができる。
【0035】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。たとえば、上記実施形態におけるガイド部1、2およびアクチュエータ部4、5の代わりに、図7に示したテレスコピック型のガイド部でもあるアクチュエータ部104を用いてもよい。以下、具体的に説明する。なお、本変形例において、特に説明がない限り、下2桁が同じ数字の符号は、上記実施形態と同様の部位であるので、説明を省略することがある。
【0036】
アクチュエータ部104は、床部106に固定された土台130に直接結合されている筒状部材121と、筒状部材121に内挿され、長さ方向にスライド可能な筒状部材122と、筒状部材122に内挿され、長さ方向にスライド可能なピストン部123と、ピストン部123の先端に設けられ、保護ネット103の上部と紐状部材107を介して接続されている蓋部124と、を備えている。
【0037】
アクチュエータ部104は、上述した筒状部材121、122およびピストン部123の構成により、長さ方向に伸縮自在となっている。以下、筒状部材121、122およびピストン部123のそれぞれについて詳述する。
【0038】
筒状部材121は、土台130側の端部に底部を有した筒状部材である。なお、筒状部材121の底部の略中央には、アクチュエータ部104の内部方向に噴出するガスを発生させるガス発生器144が固設されている。筒状部材122は、単筒の管状部材である。筒状部材121、122は、軽金属、軽金属合金、プラスチック、または樹脂で形成されたものであり、テレスコピック構造となるように連結されている。また、筒状部材121、122は、筒状部材121の内径と、筒状部材122の外径とが略一致するように形成されている。なお、軽金属の例としては、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、チタン、アルカリ金属、アルカリ土類金属などである。以下、同様である。ここで、筒状部材121、122は、可撓性材料が選択されていることが好ましい。ここで、可撓性材料とは、ゴムまたはカーボンなどからなる材料のことであり、力によって撓むような材料であれば、どのようなものであってもよい。
【0039】
ピストン部123は、軽金属、軽金属合金、プラスチック、または樹脂で形成されたものであり、中空状のものであり、先端が蓋部124によって閉塞されている。また、ピストン部123は、筒状部材122との間でテレスコピック構造となるように連結されている。また、筒状部材122とピストン部123とは、筒状部材122の内径と、ピストン部123の外径とが略一致するように形成されている。ここでピストン部123は、可撓性がある材料が選択されていることが好ましい。
【0040】
ガス発生器144は、内部の火薬が燃焼してピストン部123を長さ方向(図7(a)の矢印方向)に押し出すことが可能なガスを発生させることができるものである。なお、ガス発生器144と、筒状部材121、122と、ピストン部123と、蓋部124とで、パイロアクチュエータを構成している。
【0041】
次に、アクチュエータ部104の動作について説明する。まず、車両100の前方が衝突事故に遭遇した場合に、車両100に搭載されている制御部(CPU、ROM、RAMなどを有したコンピュータ(図示せず))からガス発生器144の作動信号が発信され、ガス発生器144が作動する。次に、図7(a)の状態から、ガス発生器144の作動によりガスが発生し、そのガス圧によってピストン部123が図7(a)の矢印方向に移動し伸び切った後、続いて、筒状部材122がテレスコピック式に伸長する。そして、筒状部材122が伸び切った場合、アクチュエータ部104の伸長動作は完了し、アクチュエータ部104内にガスおよび空気が充満した空間125が形成される(図7(b)参照)。
【0042】
なお、アクチュエータ部104が伸長しきった場合、この状態を保持すべく、蓋部124を天井部で把持できる機構を備えていてもよいし、筒状部材121、122とピストン部123とが伸長しきった状態でロック(固定)されるように、筒状部材121、122間および筒状部材122・ピストン部123間においてロック機構を備えていてもよい。
【0043】
このような本変形例の構成においても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0044】
また、上記実施形態においては、車両内の床部側から天井部側に向けて保護ネットを張るものであったが、これに限られない。たとえば、天井部に保護ネットを収納しておき、緊急時において、上記実施形態と同様に、天井部側から床部側に保護ネットをガイド部に案内させつつ、重力落下させるまたはガス発生器、ばねなどを使用して落下させることとしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、車両用安全装置を車両内のほぼ中央部に設けたものを例示したが、これに限られず、車両内の様々な位置に設けることが可能である。
【0046】
また、上記実施形態においては、駆動力としてガス発生器を用いたが、巻きばねなどの弾性体を用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ガイド部
1a、2a ストッパー
1b 軸
1c 開口部
1d、1e 支持部材
2 ガイド部
3、103 保護ネット
4、5、104 アクチュエータ部
6 床部
6a、6b 収納室
7、8、107 紐状部材
10 車両用安全装置
11、12 ロック部
11a 掛止部材
11b ばね
41、51 スライド部材
42 押上部材
43 突出部
44、144 ガス発生器
100 車両
106 床部
121、122 筒状部材
123 ピストン部
124 蓋部
125 空間
130 土台

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7