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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】車両用の空調ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20230414BHJP
   B60H 3/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B60H1/00 102J
B60H1/00 102T
B60H1/00 102U
B60H3/00 F
B60H3/00 Z
B60H1/00 102A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019045225
(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2020147119
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(72)【発明者】
【氏名】長野 秀樹
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-094181(JP,A)
【文献】特開2017-013733(JP,A)
【文献】特開2003-226134(JP,A)
【文献】特開2008-254549(JP,A)
【文献】特開2009-248715(JP,A)
【文献】特開2005-096627(JP,A)
【文献】国際公開第2017/085954(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間(21)が形成され、送風ユニット(10)と接続されて送風ユニット(10)からの空気が流入する空気取入れ口(23)から複数の開口へ空気が通流するケース(22)と、前記複数の開口を開閉可能な複数のドアと、前記ケース(22)に装着されたイオン発生装置(40)とを備える車両用の空調ユニット(20)であって、
前記開口は、少なくとも、前記ケース(22)の上部に形成されたサイドベント開口(27)と、前記サイドベント開口(27)よりも後方に形成されたセンタベント開口(28)と、前記サイドベント開口(27)及び前記センタベント開口(28)よりも下方に開口するフット開口(29F,29R)と、を有し、
前記ケース(22)は、前記フット開口(29F,29R)が形成されて前記内部空間(21)と接続されたフット通路(29P)を有し、
前記サイドベント開口(27)は車室内に通じるサイドベントダクトが接続され、前記センタベント開口(28)は車室内に通じるセンタベントダクトが接続され、
前記ドアは、少なくとも、前記サイドベント開口(27)の開度を調整するサイドベントドア(27D)と、前記センタベント開口(28)の開度を調整するセンタベントドア(28D)と、前記内部空間(21)と前記フット通路(29P)との接続部分の開度を調整するフットドア(29D)と、を有し、
前記サイドベント開口(27)は閉塞されることがなく、
前記イオン発生装置(40)は、前記ケース(22)のうち、前記サイドベント開口(27)と前記センタベント開口(28)との間に形成され前記内部空間(21)に向けて突出する突出部(22T)に装着されることを特徴とする空調ユニット(20)。
【請求項2】
前記突出部(22T)は、前記サイドベント開口(27)と前記センタベント開口(28)とをつなぐ仮想線(V1)よりも前記内部空間(21)に向けて突出することを特徴とする請求項1に記載の空調ユニット(20)。
【請求項3】
前記イオン発生装置(40)は、前記センタベント開口(28)と前記フット通路(29P)とをつなぐ仮想線(V2)よりも前記サイドベント開口(27)に近接した位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調ユニット(20)。
【請求項4】
前記内部空間(21)に配置された冷却用熱交換器(31)と、この冷却用熱交換器(31)の下流側に配置された加熱用熱交換器(32)と、を有し、
前記イオン発生装置(40)はイオン発生素子(40a)を有し、当該イオン発生素子(40a)は前記内部空間(21)において、前記加熱用熱交換器(32)の上方に形成される上側冷風バイパス(24a)と前記センタベント開口(28)とを直線的につないだ主流領域(A)に臨むよう配置されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の空調ユニット(20)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イオン発生装置を有し、イオンを含んだ調和空気を車両の室内に供給する車両用の空調ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の空調ユニットは、送風装置から送風された空気が通過する内部空間を有するケースと、内部空間に配置されて送風された空気を冷却する冷却用熱交換器と、冷却用熱交換器の下流側に配置されて送風された空気を加熱する加熱用熱交換器と、冷却用熱交換器から流出した空気を加熱用熱交換器へ向ける空気の割合を調整するミックスドアと、を有して構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で示される空調ユニットは、冷却用熱交換器と、加熱用熱交換器と、ミックスドアとによって温度調和された調和空気を、デフ開口部と、ベント開口部と、フット開口部を通じて車室内へと供給可能となっている。そしてベント開口部の近傍には、ステアリングメンバなどの周辺部材が配置されることがあり、十分な開口面積を確保するために、周辺部材を避けるようにサイドベント開口部とセンタベント開口部とを車両の前後方向で異なる位置に設ける構造が示されている。
【0004】
特許文献2で示される車両用の空調ユニットは、これも冷却用熱交換器と、加熱用熱交換器と、ミックスドアとによって温度調和された調和空気を、デフ開口部と、ベント開口部と、フット開口部を通じて車室内へと供給可能となっている。ベント開口部は、サイドベント開口部とセンタベント開口部を有している。そして、サイドベント開口部は、すべての吹出しモードにおいても完全に閉塞されることがなく、調和空気を車室内へ供給することが示されている。これにより、側面の窓ガラスの窓晴れ性を確保することが期待される。
【0005】
特許文献3で示される車両用の空調ユニットは、温度調和した空気を、デフ開口部と、ベント開口部と、フット開口部を通じて車室内へと供給可能となっている。そして、イオン発生装置でイオンを発生させて車室内に供給するにあたり、発生させたイオンが空気通路の内壁面に衝突して消失する確率を減らすためとして、ベント開口部の下流側に接続されるベントダクトにイオン発生装置を設ける構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-187996号公報
【文献】特開2007-083926号公報
【文献】特開2004-130917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2及び特許文献3の発明によれば、すべての吹出しモードにおいても完全に閉塞されることがなく常に調和空気が吹出されるサイドベント開口部と、その下流側のダクトにイオン発生装置を設けた車両用の空調ユニットが示唆される。しかしながら、ベントダクトは、生産コストの低減のため樹脂材料をブロー成型して生産されることが一般的である。このため、射出成型された樹脂製品と比較して材料の肉厚が薄く、局所的な強度が低い或いは変形が生じやすいなどの特性がある。すなわち、ベントダクトに貫通孔を設けてイオン発生装置を取り付けることは、イオン発生装置の安定した保持や調和空気の漏れ防止の観点で適切ではない。さらに、仮にベントダクトにイオン発生装置を取り付けたとしても、空調ユニットから離れた位置に取り付けられることになり、イオン発生装置へ電力供給を行うための長いハーネスが必要となって、コスト面でも好ましくない。
【0008】
そして、特許文献1に示されるようなサイドベント開口部とセンタベント開口部とを車両の前後方向で異なる位置に設けた空調ユニットも、ケースに直接的にイオン発生装置を設置することが望まれる。しかしながら、具板的にどの位置にイオン発生装置を設けると効率的にイオンを車室内に供給できるのか、十分な検討がなされていなかった。
【0009】
本発明は、サイドベント開口部とセンタベント開口部とが車両の前後方向で異なる位置に設けられ、常にサイドベント開口部を通じて調和空気を車室内に吹出す車両用の空調ユニットにおいて、イオン発生装置が適切に配置され、効率的にイオンを車室内に供給できる空調ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る空調ユニット(20)は、内部空間(21)が形成され、送風ユニット(10)と接続されて送風ユニット(10)からの空気が流入する空気取入れ口(23)から複数の開口へ空気が通流するケース(22)と、複数の開口を開閉可能な複数のドアと、ケース(22)に装着されたイオン発生装置(40)とを備え、開口は、少なくとも、ケース(22)の上部に形成されたサイドベント開口(27)と、サイドベント開口(27)よりも後方に形成されたセンタベント開口(28)と、サイドベント開口(27)及びセンタベント開口(28)よりも下方に開口するフット開口(29F,29R)と、を有し、ケース(22)は、フット開口(29F,29R)が形成されて内部空間(21)と接続されたフット通路(29P)を有し、サイドベント開口(27)は車室内に通じるサイドベントダクトが接続され、センタベント開口(28)は車室内に通じるセンタベントダクトが接続され、ドアは、少なくとも、サイドベント開口(27)の開度を調整するサイドベントドア(27D)と、センタベント開口(28)の開度を調整するセンタベントドア(28D)と、内部空間(21)とフット通路(29P)との接続部分の開度を調整するフットドア(29D)と、を有し、サイドベント開口(27)は閉塞されることがなく、イオン発生装置(40)は、ケース(22)のうち、サイドベント開口(27)とセンタベント開口(28)との間に形成され内部空間(21)に向けて突出する突出部(22T)に装着されることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明に係る空調ユニット(20)は、 突出部(22T)は、サイドベント開口(27)とセンタベント開口(28)とをつなぐ仮想線(V1)よりも内部空間(21)に向けて突出することが好ましい(請求項2)。ベントモードやバイレベルモードなどの、センタベント開口から調和空気を吹き出すモードのときに、空気流が突出部(22T)の近傍を通過し、イオン発生装置が発生したイオンを内部空間(21)に滞留させることなく車室内に供給することができる。
【0012】
本発明に係る空調ユニット(20)は、イオン発生装置(40)は、センタベント開口(28)とフット通路(29P)とをつなぐ仮想線(V2)よりもサイドベント開口(27)に近接した位置に配置されていることが好ましい(請求項3)。上側ミックス空間25aに到達した空気は、サイドベント開口(27)へ向けて空気流(Fw2)として流れる際に突出部(22T)の近傍を通過し、イオン発生装置が発生したイオンを内部空間(21)に滞留させることなく車室内に供給することができる。
【0013】
本発明に係る空調ユニット(20)は、内部空間(21)に配置された冷却用熱交換器(31)と、この冷却用熱交換器(31)の下流側に配置された加熱用熱交換器(32)と、を有し、イオン発生装置(40)はイオン発生素子(40a)を有し、当該イオン発生素子(40a)は内部空間(21)において、加熱用熱交換器(32)の上方に形成される上側冷風バイパス(24a)とセンタベ ント開口(28)とを直線的につないだ主流領域(A)に臨むよう配置されることが好ましい(請求項4)。ベントモードのとき、センタベント開口から吹き出される空気流が突 出部(22T)の近傍を通過し、イオン発生装置が発生したイオンを内部空間(21)に滞留させることなく車室内に供給することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、サイドベント開口部とセンタベント開口部とが車両の前後方向で異なる位置に設けられ、常にサイドベント開口部を通じて調和空気を車室内に吹出す車両用空調装置において、イオン発生装置が適切に配置され、効率的にイオンを車室内に供給できる車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る空調ユニットを備える車両用空調装置を示す概略斜視図である。
図2】本実施形態に係る空調ユニットの概略断面図である。
図3図2に示す空調ユニットの、ベントモードの状態を説明するための断面概略図である。
図4図2に示す空調ユニットの、ベントモードの状態を説明するための断面概略図である。
図5図2に示す空調ユニットの、バイレベルモードの状態を説明するための概略断面図である。
図6図2に示す空調ユニットの、フットモードの状態を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して本発明の一態様を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。本明細書および図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0017】
図1は、本実施形態に係る空調ユニット20を備える車両用空調装置1を示す概略斜視図である。図2は、図1に示される空調ユニット20の概略断面図である。この車両用空調装置1は車室内空間(図示せず)の前方に配置されるもので、送風ユニット10と、その下流側に配置された空調ユニット20とを備える。
【0018】
送風ユニット10は、外気導入口11a、内気導入口11b、およびフィルタ脱着部12が形成されたインテーク部13と、スクロールハウジング14とを有する。インテーク部13の内部にはフィルタ(図示せず)の他、内外気切換ドア(図示せず)が配置されて、送風ユニット10が吸引する空気について車両の外気と内気との比率の調整が可能とされている。スクロールハウジング14の内部には、多数のブレードを有するインペラとこのインペラを駆動するモータとで構成される送風ファン(図示せず)が配置されている。インペラが回転駆動されることで、外気導入口11a及び/又は内気導入口11bから吸引された空気は、フィルタの通過時に清浄化され、スクロールハウジング14を経由して、空調ユニット20へと送られる。
【0019】
空調ユニット20は、内部空間21が形成されたケース22、この内部空間21に配置された冷却用熱交換器31、冷却用熱交換器31の下流側に配置された加熱用熱交換器32、加熱用熱交換器32の上流側に配置された板状のエアミックスドア33a,33b、このエアミックスドア33a,33bを駆動する駆動ピニオン34a,34b、デフロスタドア26D、サイドベントドア27D、センタベントドア28D、フットドア29D、及びイオン発生装置40を有して構成される。フロントフット開口29Fには、図示しないフロントフットダクトが接続される。リアフット開口29Rには、図示しないリアフットダクトが接続される。
【0020】
ケース22は、送風ユニット10と接続されて送風ユニット10からの空気が流入する空気取入れ口23と、内部空間21に流入した空気を吹き出す各開口、すなわちフロントウインドウへ通じるデフロスト開口26、インストルメントパネルのサイドベント吹出口へ通じるサイドベント開口27、インストルメントパネルのセンタベント吹出口へ通じるセンタベント開口28、前席用フット吹出口に通じるフロントフット開口29F、及び後席用フット吹出口に通じるリアフット開口29R、とを有して構成されている。各開口は、図1に示されるように、左右方向に略対称となるように形成されている。
【0021】
デフロスト開口26は、空調ユニット20の上方に向けて開口する。サイドベント開口27は車両前後方向においてデフロスト開口26よりも後方に配置され、空調ユニット20の上方に向けて開口する。センタベント開口28はサイドベント開口27よりも車両前後方向の後方に配置され、空調ユニット20の斜め上方に向けて開口する。フロントフット開口29Fは、デフロスト開口26、サイドベント開口27、センタベント開口28よりも車両上下方向の下方に配置されて、左右方向に向けて開口する。リアフット開口29Rは、フロントフット開口29Fよりも車両上下方向の下方に配置され、空調ユニット20の下方に向けて開口する。
【0022】
リアフット開口29Rは、内部空間21から延びるフット通路29Pの下流端に設けられる。フロントフット開口29Fは、フット通路29Pのうち左右方向に分岐して延びた分岐部29Vの下流端に設けられる。
【0023】
デフロストドア26Dは、本実施形態では片持ち式ドアとして示される。デフロスト開口26の近傍に設けられ、図示しない駆動手段により回動位置が調整されて、デフロスト開口26の開度を調整する。これにより、デフロスト開口26を通過する空気の量が調整される。
【0024】
サイドベントドア27Dは、本実施形態ではロータリ式ドアとして示される。サイドベント開口27の近傍に設けられ、図示しない駆動手段により回動位置が調整されて、サイドベント開口27の開度を調整する。これにより、サイドベント開口27を通過する空気の量が調整される。
【0025】
センタベントドア28Dは、本実施形態ではロータリ式ドアとして示される。センタベント開口28の近傍に設けられ、図示しない駆動手段により回動位置が調整されて、センタベント開口28の開度を調整する。これにより、センタベント開口28を通過する空気の量が調整される。
【0026】
フットドア29Dは、本実施形態ではバタフライドアとして示される。フロントフット開口29Fの近傍に設けられ、図示しない駆動手段により回動位置が調整されて、内部空間21と接続したフット通路29Pの開口部分の開度を調整する。これにより、フロントフット開口29F及びリアフット開口29Rを通過する空気の量が調整される。
【0027】
冷却用熱交換器31は、内部空間21を横断するように配置され、図示しない冷凍サイクルと接続されており、空気取入れ口23から流入した空気を冷却することが可能である。
【0028】
加熱用熱交換器32は、内部空間21のうち冷却用熱交換器31よりも下流側に配置され、図示しない熱媒体サイクルと接続されており、そこを通過する空気を加熱することが可能である。加熱用熱交換機32は、エンジンの冷却水が流れるものに限らず、高温高圧の冷媒であっても良い。あるいは、熱媒体サイクルに替えて電気回路と接続されて、電気発熱素子により空気を加熱する電気ヒータであってもよい。
【0029】
加熱用熱交換器32は、本実施形態では、内部空間21の上下方向の中央付近に配置される。この配置により内部空間21には、加熱用熱交換器32の上方には上側冷風バイパス24aが、加熱用熱交換器32の下方には下側冷風バイパス24bが、それぞれ形成される。
【0030】
エアミックスドア(上側エアミックスドア33a、下側エアミックスドア33b)は、冷却用熱交換器31の下流側かつ加熱用熱交換器32の上流側に配置される板状の部材である。エアミックスドア33a、33bの上流側の面には、駆動ピニオン34a,34bと噛み合うラック部が形成されており、駆動ピニオン34a,34bが回転駆動するのに応じて、図2中の点線に沿ってスライド移動が可能とされている。上側エアミックスドア33aは、ケース22に設けられた上側当接部22aとシート部22sとの間をスライド可能とされ、内部空間21の上側部分を流れる空気について、上側冷風バイパス24aに流れる空気と加熱用熱交換器32へ流れる空気との比率を調整する。下側エアミックスドア33bは、ケース22に設けられた下側当接部22bとシート部22sとの間をスライド可能とされ、内部空間21の下側部分を流れる空気について、下側冷風バイパス24bに流れる空気と加熱用熱交換器32へ流れる空気との比率を調整する。
【0031】
図2に示されるように、上側エアミックスドア33aが上側当接部22aとシート部22sとの中間位置にあるとき、内部空間21の上側部分を流れる空気は、上側冷風バイパス24aと加熱用熱交換器32とに振り分けられてそれぞれ通流し、上側ミックス空間25aで混合される。下側エアミックスドア33bが下側当接部22bとシート部22sとの中間位置にあるとき、内部空間21の下側部分を流れる空気は、下側冷風バイパス24bと加熱用熱交換器32とに振り分けられてそれぞれ通流し、下側ミックス空間25bで混合される。
【0032】
イオン発生装置40は、図示しない電気ハーネスを経由して電力の供給を受けると、針状のイオン発生素子40aに電力が供給されて、周囲の空気にイオンを供給する。
【0033】
本実施形態では、イオン発生装置40は、サイドベント開口27とセンタベント開口28との間の、内部空間21に向かって(内側に向かって)突出した突出部22Tに装着されている。サイドベント開口27はロータリ式のサイドベントドア27Dにより開閉される。ケース22の大型化を避けるために、サイドベント開口27の後方部分はサイドベントドア27Dの軌跡に沿って形成される。センタベント開口28もロータリ式のセンタベントドア28Dにより開閉される。ここでも、ケース22の大型化を避けるために、センタベント開口28の前方部分はセンタベントドア28Dの軌跡に沿って形成される。このため、サイドベント開口27とセンタベント開口28との間は、前後方向に沿ってみたとき、突出部となる。イオン発生装置40をケース22に装着するうえで、突出部22Tに装着することは好ましい。突出部22Tはケース22の異なる面が接合された部分であり、強度が高く、イオン発生装置40を安定して取り付けることができる。
【0034】
上側ミックス空間25a及び下側ミックス空間25bで混合され、温度調和された空気は、各開口(デフロスト開口26,サイドベント開口27,センタベント開口28,フロントフット開口29F,およびリアフット開口29R)を経由してケース22から流出し、ノズル或いはダクトを経由して、車室内に吹き出される。
【0035】
続いて、空調ユニット20の内部の、空気の流れを説明する。
【0036】
<ベントモード>
図3は、図2に示す空調ユニットの、ベントモードの状態を説明するための断面概略図である。冷風を吹き出すモードであり、エアミックスドアはフルクールの位置にあることが多い。すなわち、上側エアミックスドア33aはシート部22sと当接する位置とされ、下側エアミックスドア33bはシート部22sと当接する位置とされる。デフロストドア26Dは、デフロスト開口を閉塞する。サイドベントドア27Dは、サイドベント開口27を開放する。センタベントドア28Dは、センタベント開口28を開放する。フットドア29Dは、内部空間21からフット通路29Pに通じる開口を閉塞する。
【0037】
空気取入れ口23から流入した空気は冷却用熱交換器31を通流し、冷風となる。内部空間21の上側部分を流れる空気は、すべてが上側冷風バイパス24aを流れ、上側ミックス空間25aに到達する。そして、一部はサイドベント開口27を経由してケース22から流出し、残りはセンタベント開口28を経由してケース22から流出する。内部空間21の下側部分を流れる空気は、すべてが下側冷風バイパス24bを流れ、下側ミックス空間25bに到達する。そして、センタベント開口28を経由してケース22から流出する。
【0038】
このとき、イオン発生装置40が起動されているとイオンEが発生し、上側ミックス空間25aからセンタベント開口28へと流れる空気流Fw1とともに、車室内へ吹き出される。なお、図中の黒丸はプラスイオンを、白丸はマイナスイオンを示す。
【0039】
ここで、イオン発生装置40は、サイドベント開口27とセンタベント開口28とをつなぐ仮想線V1よりも、上側ミックス空間25aに向けて突出した位置に配置されている。このため、上側ミックス空間25aからセンタベント開口28へと流れる空気流Fw1がイオン発生装置40の近傍を確実に流れるので、イオンEがケース22の内部に滞留することなく、車室内へと供給される。
【0040】
また、イオン発生装置40のイオン発生素子40aは、図4に示されるように、上側冷風バイパス24aとセンタベント開口28とを直線的につなぐ主流領域Aに臨むよう配置されていることが好ましい。ベントモードのときにセンタベント開口28から吹き出される空気流は、上側冷風バイパス24aを通過した空気流が主成分となる。イオン発生素子40aが主流領域Aに配置されていることで、上側冷風バイパス24aからセンタベント開口28へ向かう空気流によって、発生したイオンEを車室内に効果的に供給することができる。
【0041】
<バイレベルモード>
図5は、図2に示す空調ユニットの、バイレベルモードの状態を説明するための断面概略図である。温度調和された空気を吹き出すモードであり、エアミックスドアは可動範囲の中間の位置にあることが多い。ずなわち、上側エアミックスドア33aは上側当接部22aとシート部22sとの中間位置とされ、下側エアミックスドア33bは下側当接部22bとシート部22sとの中間位置とされる。デフロストドア26Dは、デフロスト開口を閉塞する。サイドベントドア27Dは、サイドベント開口27を部分的に開放する。センタベントドア28Dは、センタベント開口28を部分的に開放する。フットドア29Dは、内部空間21からフット通路29Pに通じる開口を部分的に開放する。
【0042】
空気取入れ口23から流入した空気は冷却用熱交換器31を通流し、冷風となる。内部空間21の上側部分を流れる空気は、一部が冷風として上側冷風バイパス24aを流れ、残りが加熱用熱交換器32を流れ、温風となって上側ミックス空間25aにて合流する。そして、混合しつつ、サイドベント開口27を経由してケース22から流出する成分、センタベント開口28を経由してケース22から流出する成分、フロントフット開口29Fから流出する成分に別れて、ケース22から流出する。内部空間21の下側部分を流れる空気は、一部が冷風として下側冷風バイパス24bを流れ、残りが加熱用熱交換器32を流れ、温風となって下側ミックス空間25bに到達する。そして、混合しつつ、フロントフット開口29F或いはリアフット開口29Rを経由してケース22から流出する。
【0043】
このとき、イオン発生装置40が起動されているとイオンEが発生し、上側ミックス空間25aからセンタベント開口28へと流れる空気流Fw1とともに、車室内へ吹き出される。
【0044】
ここでも、イオン発生装置40は、サイドベント開口27とセンタベント開口28とをつなぐ仮想線V1よりも、上側ミックス空間25aに向けて突出した位置に配置されている。このため、上側ミックス空間25aからセンタベント開口28へと流れる空気流Fw1がイオン発生装置40の近傍を確実に流れるので、イオンEがケース22の内部に滞留することなく、車室内へと供給される。
【0045】
イオン発生装置40は、上側ミックス空間25aの上側に配置されている。センタベント開口28から流出する空気流Fw1が上側エアミックス空間25aを通過するとき、イオン発生装置40が発生したイオンEは、空気流Fw1の上方から空気流Fw1と混ざる。このためイオンEは、空気流Fw1よりも下方に位置するフット通路29Pへと向かう空気流に混合することが防止又は抑制され、センタベント開口から車室内の上方に向けて吹き出される空気によって、車室内に効果的に供給される。
【0046】
<フットモード>
図6は、図2に示す空調ユニットの、フットモードの状態を説明するための断面概略図である。温風を吹き出すモードであり、エアミックスドアはフルホットの位置にあることが多い。すなわち、上側エアミックスドア33aは上側当接部22aと当接する位置とされ、下側エアミックスドア33bは当接部22bと当接する位置とされる。デフロストドア26Dは、デフロスト開口を閉塞する。サイドベントドア27Dは、サイドベント開口27を部分的に開放する。センタベントドア28Dは、センタベント開口28を閉塞する。フットドア29Dは、内部空間21からフット通路29Pに通じる開口を開放する。
【0047】
空気取入れ口23から流入した空気は冷却用熱交換器31を通流する。このとき冷却用熱交換器31では必ずしも冷凍サイクルが稼働されず、そのような場合は空気の温度が変更されない。内部空間21の上側部分を流れる空気は、すべてが加熱用熱交換器32を流れ、温風となって上側ミックス空間25aに到達する。内部空間21の下側部分を流れる空気は、すべてが加熱用熱交換器32を流れ、温風となって下側ミックス空間25bに到達する。そして、サイドベント開口27、フロントフット開口29F、およびリアフット開口29Rを経由して、ケース22から流出する。
【0048】
このとき、イオン発生装置40が起動されているとイオンEが発生し、上側ミックス空間25aからサイドベント開口27へと流れる空気流Fw2や、下側ミックス空間25bからサイドベント開口27へと流れる空気流Fw3とともに、車室内へ吹き出される。
【0049】
ここで、イオン発生装置40は、内部空間21からフット通路29Pに通じる開口とセンタベント開口28との間のケース後面22mを延長した仮想線V2よりも、サイドベント開口27に近接した位置に配置されている。このため、空気流Fw2や空気流Fw3がイオン発生装置40の後方から前方に向けて流れるので、イオンEがケース22の内部に滞留することなく、車室内へと供給される。
【0050】
<その他の吹出しモード>
ここまで、ベントモード、バイレベルモード、フットモードを説明したが、本実施形態の空調ユニット20は、これらの3つの吹出しモード以外の吹出しモード(その他の吹出しモード)を可能とされていることが好ましい。その他の吹出しモードとしては、図示しないが、デフロスト開口26を開放し、サイドベント開口27、センタベント開口28、および内部空間21からフット通路29Pに通じる開口を閉塞するデフロストモードや、デフロスト開口26、サイドベント開口27、及び内部空間21からフット通路29Pに通じる開口をいずれも部分的に開放し、センタベント開口28を閉塞するデフフットモードなどが挙げられる。いずれの吹出しモードであってもサイドベント開口27は完全には閉塞されずに、車室内の快適な温度の維持、側面の窓の結露の防止、或いは車室内の換気を目的として調和空気の吹き出しが可能とされている。
【0051】
デフロスト吹出しモードのときは、加熱用熱交換器32を流出した温風が下側ミックス空間25b及び上側ミックス空間25aを通過してデフロスト開口26及びサイドベント開口27へと通流するが(図示せず)、イオン発生装置40がセンタベント開口28とフット通路29Pとをつなぐ仮想線V2よりもサイドベント開口27に近接した位置に配置されていれば、イオンEは、内部空間21に滞留することなく温風によって効果的に車室内に供給される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る車両用空調装置は、工業的に製造することができ、また商取引の対象とすることができるから、経済的価値を有して産業上利用することが出来る発明である。
【符号の説明】
【0053】
1 車両用空調装置
10 送風ユニット
11a 外気導入口
11b 内気導入口
12 フィルタ脱着部
13 インテーク部
14 スクロールハウジング
20 空調ユニット
21 内部空間
22 ケース
22a 上側当接部
22b 下側当接部
22s シート部
22T 突出部
23 空気取入れ口
24a 冷風バイパス(上側冷風バイパス)
24b 冷風バイパス(下側冷風バイパス)
25a ミックス空間(上側ミックス空間)
25b ミックス空間(下側ミックス空間)
26 デフロスタ開口
26D デフロスタドア
27 サイドベント開口
27D サイドベントドア
28 センタベント開口
28D センタベントドア
29D フットドア
29F フロントフット開口
29R リアフット開口
29P フット通路
31 冷却用熱交換器
32 加熱用熱交換器
33a エアミックスドア(上側エアミックスドア)
33b エアミックスドア(下側エアミックスドア)
34a 駆動ピニオン(上側駆動ピニオン)
34b 駆動ピニオン(下側駆動ピニオン)
40 イオン発生装置
40a イオン発生素子
A 主流領域
E イオン
Fw1,Fw2,Fw3 空気流
V1,V2 仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6