(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】欠陥検査装置、及び欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/898 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
G01N21/898
(21)【出願番号】P 2019054099
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2018067826
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】竹島 幸弘
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-008170(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169242(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/045423(WO,A1)
【文献】特開2013-205091(JP,A)
【文献】特開2015-212646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0181873(US,A1)
【文献】特開平11-295240(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194874(WO,A1)
【文献】実開昭54-124592(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
D06H 3/00 - D06H 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
前記検査対象物を搬送する搬送部と、
前記検査対象物の輝度データを取得する複数の光学検査部と、
前記複数の光学検査部が取得した輝度データを解析処理する処理部と、
前記処理部による解析処理結果に基づいて、前記検査対象物の欠陥の有無を判定する判定部と
を備え、
前記複数の光学検査部の夫々は、前記検査対象物に検査光を照射する光源と、前記検査対象物の少なくとも搬送方向に直交する方向における検査領域の輝度を検知する検知部とを有し、前記光源による検査光の照射条件及び前記検知部による輝度の検知条件が、光学検査部毎に異なって
おり、
前記検査対象物は、裏面に支持ローラを当接させた状態で前記搬送部によって搬送される帯状物であり、
前記照射条件は、前記検査対象物の搬送方向に対する検査光の照射方向、検査光の指向角θa、及び前記検査対象物に対する検査光の照射角θb及びθb´を含み、
前記検知条件は、前記検査対象物に対する受光角θcを含み、
前記複数の光学検査部は、以下の(1)~(6):
(1)二つの光源によって、前記照射方向が前記検査対象物の搬送方向に沿った方向であり、θa≧30°、且つ一方の光源の照射角θbが30°≦θb<90°であり他方の光源の照射角θb´が180°-θb≦θb´≦190°-θbである照射条件で検査光を照射し、前記検査光の照射位置において、80°≦θc≦100°である検知条件で前記検査対象物の輝度を検知する第一光学検査部、
(2)前記照射方向が前記検査対象物の搬送方向に沿った方向であり、θa≦10°、且つ30°≦θb≦150°である照射条件で検査光を照射し、前記検査光の照射位置において、170°-θb≦θc≦190°-θbである検知条件で前記検査対象物の輝度を検知し、前記検査対象物における正反射光に光沢差を生じる欠陥を検出可能な輝度データを取得し、前記光源及び前記検知部の夫々に偏光フィルタを有し、前記偏光フィルタは、透過軸が前記検査対象物の搬送方向と直交する方向を向き、S波を含む直線偏光を透過させる第二光学検査部、
(3)前記検査対象物の裏面に支持ローラが存在する位置に、前記照射方向が前記検査対象物の搬送方向に沿った方向であり、θa≦10°、且つθb≦30°である照射条件で検査光を照射し、前記検査光の照射位置において、80°≦θc≦100°である検知条件で前記検査対象物の輝度を検知する第三光学検査部、
(4)前記照射方向が前記検査対象物の搬送方向と直交する方向であり、θa≦10°、且つθb≦30°である照射条件で検査光を照射し、前記検査光の照射位置において、80°≦θc≦100°である検知条件で前記検査対象物の輝度を検知する第四光学検査部、
(5)前記照射方向が前記検査対象物の搬送方向に沿った方向であり、θa≦10°、且つ20°≦θb≦80°である照射条件で検査光を照射し、前記検査光の照射位置において、θc<θbである検知条件で前記検査対象物の輝度を検知する第五光学検査部、
(6)前記検査対象物の裏面に支持ローラが存在しない位置に、前記照射方向が前記検査対象物の搬送方向に沿った方向であり、θa≦10°、且つθb≦30°である照射条件で検査光を照射し、前記検査光の照射位置において、80°≦θc≦100°である検知条件で前記検査対象物の輝度を検知する第六光学検査部、
からなる群より選ばれる前記第二光学検査部を含む少なくとも二つの光学検査部を含む欠陥検査装置。
【請求項2】
前記第一光学検査部は、前記検査対象物に付着した汚れ、前記検査対象物に生じた傷、及び前記検査対象物に付着した毛羽を検出可能な輝度データを取得し
、
前記第三光学検査部は、前記検査対象物の搬送方向に対し45~135°の角度で延伸する凹凸欠陥、及び点状の凹凸欠陥を検出可能な輝度データを取得し、
前記第四光学検査部は、前記検査対象物の搬送方向に対し-45~45°の角度で延伸する凹凸欠陥を検出可能な輝度データを取得し、
前記第五光学検査部は、前記検査対象物における散乱光に光沢差を生じる欠陥を検出可能な輝度データを取得し、
前記第六光学検査部は、前記検査対象物の搬送方向に対し45~135°の角度で延伸し、前記検査対象物が裏面から支持された場合に高低差が解消される凹凸欠陥、及び前記検査対象物が裏面から支持された場合に高低差が解消される点状の凹凸欠陥を検出可能な輝度データを取得する請求項
1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記照射条件は、検査光の波長を含み、
前記複数の光学検査部は、前記検査対象物の搬送方向に沿って配列し、
隣り合う二つの光学検査部は、検査光の波長が互いに異なっている
請求項1又は2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記照射条件は、検査光の照射タイミングを含み、
前記複数の光学検査部は、前記検査対象物の搬送方向に沿って配列し、
隣り合う二つの光学検査部は、交互に検査光を照射する
請求項1~3の何れか一項に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記複数の光学検査部への外部光の侵入を遮断する遮光部を更に備える
請求項1~4の何れか一項に記載の欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査対象物の欠陥を検査する欠陥検査装置、及び欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成皮革や布帛の製造工程で行われる欠陥検査は、長尺状の検査対象物を搬送する検反台と呼ばれる装置において、作業員による目視での流し検査によって実施されている。近年では省人化や欠陥の見逃し抑制を目的とした自動化技術の導入が進んでおり、検査精度の向上や検査時間の短縮のため、種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、炭素繊維布帛へ光を照射し、炭素繊維布帛の透過光及び反射光を撮影する炭素繊維布帛の検査装置があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の検査装置は、撮影した画像の解析によって炭素繊維布帛の欠陥を検出することで、人の目による検査に比べて検査精度を向上することができるとされている。
【0004】
また、青色波長光、緑色波長光、及び赤色波長光を異なる角度で照射し、カラーラインスキャンで撮影する検査装置があった(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2の織物検査装置は、織物の目飛び、糸抜け、糸釣り等の欠陥を検出することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-291535号公報
【文献】特開2003-138468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、合成皮革や布帛の製造工程で行われる欠陥検査では、検査対象物の汚れ、傷、毛羽、凹凸、正反射光に光沢差を生じる欠陥、及び散乱光に光沢差を生じる欠陥等の特徴の異なる様々な種類の欠陥を検出する必要がある。また、用途によっては、高精度な欠陥検査が求められる場合がある。特許文献1及び2の検査装置では、欠陥の種類に応じて異なる照射方向から光を照射した画像を取得しているが、欠陥検査の高精度化には、欠陥の種類毎にその特徴をより明確に検出できる画像を用いることが望まれる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、様々な種類の欠陥の有無を高精度に検査することができる欠陥検査装置、及び欠陥検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明にかかる欠陥検査装置の特徴構成は、
検査対象物の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
前記検査対象物を搬送する搬送部と、
前記検査対象物の輝度データを取得する複数の光学検査部と、
前記複数の光学検査部が取得した輝度データを解析処理する処理部と、
前記処理部による解析処理結果に基づいて、前記検査対象物の欠陥の有無を判定する判定部と
を備え、
前記複数の光学検査部の夫々は、前記検査対象物に検査光を照射する光源と、前記検査対象物の少なくとも搬送方向に直交する方向における検査領域の輝度を検知する検知部とを有し、前記光源による検査光の照射条件及び前記検知部による輝度の検知条件が、光学検査部毎に異なっていることにある。
【0009】
本構成の欠陥検査装置は、複数の光学検査部を備え、その夫々が光源と検知部とを有し、光源による検査光の照射条件及び検知部による輝度の検知条件が、光学検査部毎に異なっているため、欠陥の種類に応じて、照射条件及び検知条件が適した光学検査部によって検査対象物を検査することが可能となり、その結果、種類の異なる複数種類の欠陥を高精度に判定することができる。
【0010】
本発明に係る欠陥検査装置において、
前記検査対象物は、裏面に支持ローラを当接させた状態で前記搬送部によって搬送される帯状物であり、
前記照射条件は、前記検査対象物の搬送方向に対する検査光の照射方向、検査光の指向角θa、及び前記検査対象物に対する検査光の照射角θb及びθb´を含み、
前記検知条件は、前記検査対象物に対する受光角θcを含み、
前記複数の光学検査部は、以下の(1)~(6):
(1)二つの光源によって、前記照射方向が前記検査対象物の搬送方向に沿った方向であり、θa≧30°、且つ一方の光源の照射角θbが30°≦θb<90°であり他方の光源の照射角θb´が180°-θb≦θb´≦190°-θbである照射条件で検査光を照射し、前記検査光の照射位置において、80°≦θc≦100°である検知条件で前記検査対象物の輝度を検知する第一光学検査部、
(2)前記照射方向が前記検査対象物の搬送方向に沿った方向であり、θa≦10°、且つ30°≦θb≦150°である照射条件で検査光を照射し、前記検査光の照射位置において、170°-θb≦θc≦190°-θbである検知条件で前記検査対象物の輝度を検知する第二光学検査部、
(3)前記検査対象物の裏面に支持ローラが存在する位置に、前記照射方向が前記検査対象物の搬送方向に沿った方向であり、θa≦10°、且つθb≦30°である照射条件で検査光を照射し、前記検査光の照射位置において、80°≦θc≦100°である検知条件で前記検査対象物の輝度を検知する第三光学検査部、
(4)前記照射方向が前記検査対象物の搬送方向と直交する方向であり、θa≦10°、且つθb≦30°である照射条件で検査光を照射し、前記検査光の照射位置において、80°≦θc≦100°である検知条件で前記検査対象物の輝度を検知する第四光学検査部、
(5)前記照射方向が前記検査対象物の搬送方向に沿った方向であり、θa≦10°、且つ20°≦θb≦80°である照射条件で検査光を照射し、前記検査光の照射位置において、θc<θbである検知条件で前記検査対象物の輝度を検知する第五光学検査部、
(6)前記検査対象物の裏面に支持ローラが存在しない位置に、前記照射方向が前記検査対象物の搬送方向に沿った方向であり、θa≦10°、且つθb≦30°である照射条件で検査光を照射し、前記検査光の照射位置において、80°≦θc≦100°である検知条件で前記検査対象物の輝度を検知する第六光学検査部、
からなる群より選ばれる少なくとも二つの光学検査部を含むことが好ましい。
【0011】
本構成の欠陥検査装置によれば、上記の照射条件及び検知条件で輝度データを取得する第一光学検査部~第六光学検査部からなる群より選ばれる少なくとも二つの光学検査部を含むことで、種類の異なる少なくとも二種類の欠陥を高精度に判定することができる。
【0012】
本発明に係る欠陥検査装置において、
前記第一光学検査部は、前記検査対象物に付着した汚れ、前記検査対象物に生じた傷、及び前記検査対象物に付着した毛羽を検出可能な輝度データを取得し、
前記第二光学検査部は、前記検査対象物における正反射光に光沢差を生じる欠陥を検出可能な輝度データを取得し、
前記第三光学検査部は、前記検査対象物の搬送方向に対し45~135°の角度で延伸する凹凸欠陥、及び点状の凹凸欠陥を検出可能な輝度データを取得し、
前記第四光学検査部は、前記検査対象物の搬送方向に対し-45~45°の角度で延伸する凹凸欠陥を検出可能な輝度データを取得し、
前記第五光学検査部は、前記検査対象物における散乱光に光沢差を生じる欠陥を検出可能な輝度データを取得し、
前記第六光学検査部は、前記検査対象物の搬送方向に対し45~135°の角度で延伸し、前記検査対象物が裏面から支持された場合に高低差が解消される凹凸欠陥、及び前記検査対象物が裏面から支持された場合に高低差が解消される点状の凹凸欠陥を検出可能な輝度データを取得することが好ましい。
【0013】
本構成の欠陥検査装置によれば、第一光学検査部~第六光学検査部において、上記の種類の欠陥を検出可能な輝度データを取得することで、検査対象物に付着した汚れ、検査対象物に生じた傷、検査対象物に付着した毛羽、検査対象物における正反射光に光沢差を生じる欠陥、検査対象物の搬送方向に対し45~135°の角度で延伸する凹凸欠陥、点状の凹凸欠陥、検査対象物の搬送方向に対し-45~45°の角度で延伸する凹凸欠陥、検査対象物における散乱光に光沢差を生じる欠陥、検査対象物の搬送方向に対し45~135°の角度で延伸し、検査対象物が裏面から支持された場合に高低差が解消される凹凸欠陥、及び検査対象物が裏面から支持された場合に高低差が解消される点状の凹凸欠陥を高精度に判定することができる。
【0014】
本発明に係る欠陥検査装置において、
前記第二光学検査部は、前記光源及び前記検知部の夫々に偏光フィルタを有し、
前記偏光フィルタは、透過軸が前記検査対象物の搬送方向と直交する方向を向き、S波を含む直線偏光を透過させることが好ましい。
【0015】
本構成の欠陥検査装置によれば、第二光学検査部が、光源及び検知部の夫々に偏光フィルタを有することで、検査対象物の幅方向の端部における拡散光の割合を低減して、正反射光に光沢差を生じる欠陥が検査対象物の中央部と端部とで同等に強調された輝度データを得ることができる。また、正反射光に光沢差を生じる欠陥では、欠陥のないその周囲よりも、正反射光におけるS波の割合がより高いため、偏光フィルタが、透過軸が検査対象物の搬送方向と直交する方向を向き、S波を含む直線偏光を透過させることで、検査対象物の中央部と端部との何れにおいても、正反射光に光沢差を生じる欠陥のコントラストがさらに強調された輝度データを得ることができる。
【0016】
本発明に係る欠陥検査装置において、
前記照射条件は、検査光の波長を含み、
前記複数の光学検査部は、前記検査対象物の搬送方向に沿って配列し、
隣り合う二つの光学検査部は、検査光の波長が互いに異なっていることが好ましい。
【0017】
本構成の欠陥検査装置によれば、隣り合う二つの光学検査部の検査光が、互いに波長が異なるため、検査対象物に照射された検査光が互いに重なって肉眼ではコントラストが低下しても、夫々の光学検査部において、取得する輝度データから検査光の波長に対応したチャネル(成分)を取り出すことにより、コントラストを向上させることができる。そのため、狭い間隔で複数の光学検査部を配列させることが可能となり、欠陥検査装置の小型化が可能となる。
【0018】
本発明に係る欠陥検査装置において、
前記照射条件は、検査光の照射タイミングを含み、
前記複数の光学検査部は、前記検査対象物の搬送方向に沿って配列し、
隣り合う二つの光学検査部は、交互に検査光を照射することが好ましい。
【0019】
本構成の欠陥検査装置によれば、隣り合う二つの光学検査部が交互に検査光を照射するため、夫々の光学検査部において、検査対象物に照射された検査光が互いに影響することがなく、取得する輝度データのコントラストの低下を防止することができる。そのため、狭い間隔で複数の光学検査部を配列させることが可能となり、欠陥検査装置の小型化が可能となる。
【0020】
本発明に係る欠陥検査装置において、
前記複数の光学検査部への外部光の侵入を遮断する遮光部を更に備えることが好ましい。
【0021】
本構成の欠陥検査装置によれば、遮光部が複数の光学検査部への外部光の侵入を遮断することにより、複数の光学検査部は、夫々の照射条件及び検知条件を正確に反映した輝度データを取得することができる。その結果、複数種類の欠陥を高精度に判定することができる。
【0022】
上記課題を解決するための本発明にかかる欠陥検査方法の特徴構成は、
検査対象物の検査面の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、
前記検査対象物を搬送する搬送工程と、
前記検査対象物の検査面に検査光を照射し、前記検査対象物の少なくとも搬送方向に直交する方向における検査面の輝度を検知する光学検査工程と、
前記光学検査工程で取得した輝度データを解析処理する処理工程と、
前記処理工程による解析処理結果に基づいて、前記検査対象物の検査面の欠陥の有無を判定する判定工程と
を包含し、
前記光学検査工程は、検査光の照射条件及び輝度の検知条件が異なる状態で、複数回実行されることにある。
【0023】
本構成の欠陥検査方法は、検査光の照射条件及び輝度の検知条件が異なる状態で、光学検査工程を複数回実行するため、欠陥の種類に応じて、照射条件及び検知条件を変えて検査対象物に光学検査工程を実施することが可能であり、その結果、種類の異なる複数種類の欠陥を高精度に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の欠陥検査装置の全体構成図である。
【
図2】
図2は、第一光学検査部の照射条件及び検知条件の説明図である。
【
図3】
図3は、第一光学検査部による検査対象物の搬送方向を上下方向に配した撮像イメージである。
【
図4】
図4は、第二光学検査部の照射条件及び検知条件の説明図である。
【
図5】
図5は、第二光学検査部による検査対象物の搬送方向を上下方向に配した撮像イメージである。
【
図6】
図6は、第三光学検査部の照射条件及び検知条件の説明図である。
【
図7】
図7は、第三光学検査部による検査対象物の搬送方向を上下方向に配した撮像イメージである。
【
図8】
図8は、第四光学検査部の照射条件及び検知条件の説明図である。
【
図9】
図9は、第四光学検査部による検査対象物の搬送方向を上下方向に配した撮像イメージである。
【
図10】
図10は、第五光学検査部の照射条件及び検知条件の説明図である。
【
図11】
図11は、第五光学検査部による検査対象物の搬送方向を上下方向に配した撮像イメージである。
【
図12】
図12は、第六光学検査部の照射条件及び検知条件の説明図である。
【
図13】
図13は、第六光学検査部による検査対象物の搬送方向を上下方向に配した撮像イメージである。
【
図14】
図14は、本発明の欠陥検査方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の欠陥検査装置、及び欠陥検査方法について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成に限定されることを意図しない。
【0026】
〔欠陥検査装置の全体構成〕
図1は、本発明の欠陥検査装置100の全体構成図である。欠陥検査装置100は、検査対象物Aの欠陥を検査する装置である。本実施形態では、検査対象物Aとして表面にシボを有する帯状の合成皮革を想定している。欠陥検査装置100は、検査対象物Aを搬送する搬送部10と、検査対象物の輝度データを取得する複数の光学検査部(第一光学検査部20A~第六光学検査部20F)と、複数の光学検査部から取得した輝度データを解析処理する処理部40と、処理部40による解析処理結果に基づいて、検査対象物Aの欠陥の有無を判定する判定部50とを備える。上記の各部は、例えば、コンピュータ等で構成される制御部60により統合的に制御される。
【0027】
搬送部10は、検査対象物Aを裏面側から支持しながら搬送する搬送ローラ(支持ローラ)11aを駆動するドライバ12と、検査対象物Aに接触させた回転体の回転を検知するエンコーダ13とを備える。エンコーダ13は、回転体が回転すると、その回転角度に応じたパルス信号を生成する。制御部60は、エンコーダ13が生成するパルス信号に基づいて、後に説明するラインセンサー33A~33Fが所定の周期で1ライン毎に撮像を行うための位置まで搬送ローラ11aが検査対象物Aを搬送するように、ドライバ12を制御する。
図1に示す欠陥検査装置100では、搬送部10による検査対象物Aの搬送方向をY方向とし、検査対象物Aの搬送方向に直交する方向(「幅方向」と称する場合もある。)をX方向とする。なお、
図1では、説明容易化のために、検査対象物Aの下面側に配された複数の搬送ローラ11aのうちの一つのみをドライバ12で駆動する欠陥検査対象物100を示しているが、二以上の搬送ローラ11aをドライバ12で駆動することで、検査対象物Aの搬送を安定させることができる。また、検査対象物Aの上面側には、検査対象物Aの搬送をより安定させるために、複数のガイドローラ11bが配されている。
【0028】
第一光学検査部20A~第六光学検査部20Fは、検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿って配列する。第一光学検査部20A~第六光学検査部20Fの夫々は、検査対象物Aに検査光を照射する光源21A~21Fと、検査対象物Aの搬送方向に直交する方向(X方向)における検査領域の輝度を検知する検知部30A~30Fとを有する。検査対象物Aの欠陥には、汚れ、傷、毛羽、点状の欠陥、凹凸欠陥、正反射光に光沢差を生じる欠陥、及び散乱光に光沢差を生じる欠陥等の様々な種類がある。第一光学検査部20A~第六光学検査部20Fの夫々は、異なる種類の欠陥を検出対象としており、光源21A~21Fによる検査光の照射条件、及び検知部30A~30Fによる輝度の検知条件は、光学検査部毎に、対象とする欠陥の検出に適したものに調整される。照射条件には、検査対象物Aの搬送方向に対する検査光の照射方向、検査光の指向角、検査対象物Aに対する検査光の照射角、照射位置における検査対象物Aの裏面への搬送ローラ11aの当接状態、検査光の色調(波長)、検査光の照射タイミング、照射距離、及び照射強度等が含まれる。検知条件には、検査対象物Aに対する受光角、撮影タイミング、受光距離、及び受光感度等が含まれる。
【0029】
第一光学検査部20A~第六光学検査部20Fの光源21A~21F、及び検知部30A~30Fは、後に説明する各光源による検査光の照射条件、及び各検知部による輝度の検知条件が相違するが、その他は類似する構成である。ここでは第一光学検査部20Aの光源21A、及び検知部30Aを用いて、光源21A~21F、及び検知部30A~30Fの共通する特徴を説明する。
【0030】
第一光学検査部20Aの光源21Aは、調光可能な高輝度LED照明を使用することができる。高輝度LED照明の電源は、調光方式の違いから定電流タイプとPWMタイプとが存在するが、後述するラインセンサー33Aのクロック数が大きい場合は、定電流タイプを使用することが好ましい。光源21Aは、調整部22Aによって検査光LAの照射状態が調整される。検査光LAの照射状態には、照射範囲、照射角、照射距離、照射強度、照射タイミング等が含まれる。また、光源21Aが可変照明である場合は、調整部22Aは照射光の色調(波長)を調整することも可能である。検査光LAの照射状態の調整は、調整部22が制御部60から指示を受けて行われる。光源21Aは、検査対象物Aより上方の位置に配置され、検査対象物Aの検査領域において、検査対象物Aの幅方向(X方向)の全幅に亘って検査光LAを照射する。
【0031】
検査光LAが照射された検査対象物Aは、第一光学検査部20Aのラインセンサー33Aにより表面の輝度が検知される。ラインセンサー33Aは、例えば、撮像素子(例えば、CCD、CMOS等のイメージセンサー)、出力アンプ、時系列で信号出力するための駆動回路、結像レンズ等を備えたカラーラインスキャンカメラが使用される。ラインセンサー33Aは、検査対象物Aの上方位置であって、光源21Aから検査光LAが照射される検査対象物Aの検査領域から受光可能な位置に設置され、検査光LAが照射されている検査対象物Aの幅方向(X方向)のライン画像を取得する。なお、ラインセンサー33Aの代わりに、搬送方向(Y方向)の一定範囲についても検知可能なエリアセンサーを用いることも可能である。
【0032】
第一光学検査部20Aの検知部30Aは、ラインセンサー33Aの撮影動作を調整する撮影動作調整部31Aと、ラインセンサー33Aで撮影した画像を認識する画像認識部32Aとを有する。ラインセンサー33Aの撮影タイミングは、制御部60によって決定される。すなわち、搬送部10のエンコーダ13のパルス信号に基づいて、検査光LAが照射された検査対象物Aの幅方向(X方向)の領域をラインセンサー33Aが所定の周期で1ライン毎に撮像するように、制御部60が検知部30Aの撮影動作調整部31Aを制御する。ラインセンサー33Aが撮像した検査対象物Aの幅方向1ライン毎の濃淡画像(ライン画像)は、検知部30Aの画像認識部32Aでデジタル信号の輝度データとして認識され、制御部60を介してデータ格納部70に格納される。検知部30Aの撮像動作調整部31Aは、上記ライン画像が所定のライン数に達するまで、ラインセンサー33Aの撮影動作を調整し、複数のデジタル輝度データを取得する。
【0033】
処理部40は、当該検知部30Aが取得した所定のライン数のデジタル輝度データに基づいて撮像画像を合成する。また、処理部40は、第二光学検査部20B~第六光学検査部20Fの検知部30B~30Fの夫々が取得した所定のライン数のデジタル輝度データについても、これらの複数のデジタル輝度データ基づいて撮像画像を合成する。ここで、ラインセンサー33が撮像する画像(デジタル輝度データ)は、撮像素子の感度ムラや照明方法により一様な輝度が得られない場合がある。そこで、処理部40において、デジタル輝度データに対してシェーディング補正を行うことにより、欠陥検出に適した一様な輝度画像に加工することができる。シェーディング補正とは、光学系や撮像系の特性による輝度ムラを含む画像に対して、一様な明るさとなるよう補正をかけることである。また、処理部40では、さらなる画像処理が行われ、欠陥検出の精度が高められる。画像処理には、特徴点抽出処理、平滑化処理、エッジ検出等、欠陥の有無を判定するための必要な処理が含まれる。以下、処理部40における画像処理によって撮像画像から生成される画像を「処理画像」と称する。
【0034】
判定部50は、処理部40で生成された第一光学検査部20A~第六光学検査部20Fの夫々に対応する処理画像を元に、検査対象物Aの欠陥の有無を判定する。欠陥判定の手法としては、例えば、処理画像に対して空間フィルタ処理を実施し、さらに二値化処理により処理画像中で欠陥の可能性がある領域を抽出し、抽出された領域の面積に閾値を設定して欠陥か否かを判定する方法や、対照として欠陥の無い良品の検査画像(対照画像)を予め準備し、当該対照画像と処理部40で生成された処理画像とを比較し、両者の差分から欠陥か否かを判定する方法が挙げられる。なお、これらの手法による判定結果は、後に説明する出力部80のディスプレイ等に表示することができる。この場合、処理部40による処理画像とともに、判定部50による欠陥判定結果が出力部80に同時に表示されるため、検査対象物Aの欠陥の有無や欠陥の程度を目視で確認しながら容易に欠陥の有無を判断することが可能となる。その結果、合成皮革等の欠陥検出の精度、及び検査の信頼性が向上する。
【0035】
判定部50において、検査対象物Aに欠陥があると判断された場合、その判断結果が制御部60に送られる。あるいは、オペレーターが欠陥と認識した場合は、その判断結果が制御部60に送られる。その後、制御部60によって、搬送部10のエンコーダ13を通じて検査対象部Aの欠陥位置が特定され、欠陥検査装置100において作業するオペレーターが目視可能な領域(以下、「目視確認領域」称する。)に欠陥位置がある状態で、制御部60が搬送部10に停止信号を送信すると、ドライバ12が搬送ローラ11aを停止させる。また、オペレーターが検査対象物Aに欠陥があると認識した場合に停止ボタンの手動操作により判断結果が制御部60へ送られた場合は、オペレーターが認識した欠陥が目視確認領域にある状態で、制御部60が即時、搬送部10に停止信号を送信することで、ドライバ12が搬送ローラ11aを停止させる。目視確認領域で検査対象物Aの欠陥を含む部分が停止すると、オペレーターが検査対象物Aの欠陥を出力部80のディスプレイ等で確認し、マーキングや欠陥レベルの判定等の作業を行うことができる。オペレーターによる欠陥の判定が終了すると、あるいは、欠陥が無いと判断された場合は、オペレーターが検査再開ボタンを手動操作することで制御部60に再開信号を送信することができ、再開信号を受信した制御部60が搬送部10に搬送信号を送信し、検査対象物Aの搬送が開始又は継続される。
【0036】
出力部80は、ラインセンサー33A~33Fによって撮影された検査対象物Aの生画像の他、処理部40による画像処理後の画像、判定部50による判定結果等を表示することができる。出力部80は、ディスプレイやプリンタ等で構成することができる。オペレーターは、出力部80のディスプレイ等に表示された画像に基づいて、検査対象物Aの欠陥の有無の確認を行うことができる。
【0037】
遮光部90は、遮光材料からなるカバーである。遮光部90の内部に、第一光学検査部20A~第六光学検査部20Fの全体が配置される。遮光部90が第一光学検査部20A~第六光学検査部20Fへの外部光の侵入を遮断することにより、第一光学検査部20A~第六光学検査部20Fは、夫々の照射条件及び検知条件を正確に反映した輝度データを取得することができる。
【0038】
〔第一光学検査部における照射条件及び検知条件〕
第一光学検査部20Aは、検査対象物Aに付着した汚れ、検査対象物Aに生じた傷、検査対象物に付着した毛羽、及び直径が1.0mm未満の微細な点状の欠陥(以下、「点状欠陥」と称する。)を検出対象とする。第一光学検査部20Aでは、照射条件として、検査対象物の搬送方向に対する検査光の照射方向、検査光の指向角、検査対象物に対する検査光の照射角、及び照射位置における検査対象物Aの裏面への搬送ローラ11aの当接状態が調整され、検知条件として、検査対象物に対する受光角が調整される。
図2は、第一光学検査部20Aにおける照射条件及び検知条件の説明図である。
図2(a)は、拡散光の説明図である。
図2(b)は、第一光学検査部20AのY方向に沿った配置を示す模式図である。
【0039】
第一光学検査部20Aの光源21Aは、検査対象物Aの搬送方向と直交する方向(X方向)に沿って高輝度LEDを配列させた二つのLEDバー照明が使用され、上面視において検査光LAの照射方向が検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った方向となるように、検査対象物Aの上方に搬送方向(Y方向)の上手側と下手側に配置される。上面視とは、検査対象物Aの搬送方向に対し、垂直上方向から見える光景である。
【0040】
第一光学検査部20Aでは、検査光LAとして、光の拡散又は収束が一定範囲を超える拡散光を使用する。拡散光の照射は、例えば、光源21Aに拡散板を設けることで実施することができる。
図2(a)に示すように、検査光LAに用いる拡散光は、中心軸Pにおける光に対して強度が50%となる光の進行方向Qが成す角度を指向角θa1とすると、以下の条件(1):
θa1 ≧ 30° (1)
を満たすことが好ましく、さらには、以下の条件(1´):
θa1 ≧ 45° (1´)
を満たすことがより好ましい。θa1が30°を下回る場合、検査光LAが散乱しないため合成皮革のシボ等の微細な構造に散乱光が入り込まず、微細な構造の陰影によって汚れ、傷、毛羽、及び点状欠陥が輝度データにおいて目立たない可能性がある。
【0041】
図2(b)に示すように、二つの光源21Aは、検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが当接する位置に中心軸を向けて、搬送方向の上手側と下手側とから検査光LAを照射する。検査光LAの照射位置における検査対象物Aの接線Rと一方の光源21Aから照射する検査光LAの光軸とがなす角度を、検査対象物Aに対する照射角θb1とすると、以下の条件(2):
30° ≦ θb1 < 90° (2)
を満たすことが好ましく、さらには、以下の条件(2´):
40° ≦ θb1 ≦ 60° (2´)
を満たすことがより好ましい。θb1が上記の範囲にない場合、合成皮革のシボ等の微細な構造の陰影が及ぼす影響が強くなり、汚れ、傷、毛羽、及び点状欠陥が輝度データにおいて目立たない可能性がある。
【0042】
また、接線Rと他方の光源21Aから照射する検査光LAの光軸とがなす角度を、検査対象物Aに対する照射角θb1´とすると、以下の条件(3):
180° - θb1 ≦ θb1´ ≦ 190° - θb1 (3)
を満たすことが好ましく、さらには、以下の条件(3´):
180° - θb1 ≦ θb1´ ≦ 185° - θb1 (3´)
を満たすことがより好ましい。θb1´が上記の範囲にない場合、合成皮革のシボ等の微細な構造の陰影が及ぼす影響が強くなり、汚れ、傷、毛羽、及び点状欠陥が輝度データにおいて目立たない可能性がある。
【0043】
検知部30Aは、検査光LAの照射位置に中心軸を向けて検査対象物Aの上方に配置されたラインセンサー33Aによって、検査対象物Aの輝度を検知する。接線Rとラインセンサー33Aの中心軸とがなす角度を、検査対象物Aに対する受光角θc1とすると、以下の条件(4):
80° ≦ θc1 ≦ 100° (4)
を満たすことが好ましく、さらには、以下の条件(4´):
85° ≦ θc1 ≦ 95° (4´)
を満たすことがより好ましい。θc1が80°を下回る場合、又はθc1が100°を上回る場合は、ラインセンサー33Aが検査光LAの照射位置の垂直上方の位置から大きく外れ、低角度で受光することになるため、汚れ、傷、毛羽、及び点状欠陥とその周囲との輝度の差(コントラスト)が緩和される可能性がある。
【0044】
第一光学検査部20Aは、照射条件、及び検知条件として、検査光LAの照射方向を検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った方向に設定し、検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが当接する位置を照射位置とし、少なくとも条件(1)~(4)を満たすことにより、合成皮革のシボ等の微細な構造の陰影が及ぼす影響を抑えて、検査対象物Aの汚れ、傷、毛羽、及び点状欠陥とその周囲とのコントラストが明瞭な輝度データを取得することができる。
【0045】
図3は、第一光学検査部20Aによる検査対象物(合成皮革)Aの撮像イメージである。
図3の撮像イメージは、検査対象物Aの搬送方向を図の上下方向に配置したものであり、この撮像イメージでは、周囲とのコントラストが明瞭な白点状の傷が確認できる。すなわち、第一光学検査部20Aにおいて上記の照射条件、及び検知条件で輝度データを取得することで、検査対象物Aの汚れ、傷、毛羽、及び点状欠陥とその周囲とのコントラストが明瞭なものとなり、これらの欠陥を検出しやすくなる。
【0046】
〔第二光学検査部における照射条件及び検知条件〕
第二光学検査部20Bは、検査対象物Aにおいて正反射光に光沢差を生じる欠陥を検出対象とする。第二光学検査部20Bでは、照射条件として、検査対象物の搬送方向に対する検査光の照射方向、検査光の指向角、検査対象物に対する検査光の照射角、及び照射位置における検査対象物Aの裏面への搬送ローラ11aの当接状態が調整され、検知条件として、検査対象物に対する受光角が調整される。
図4は、第二光学検査部20Bの照射条件及び検知条件の説明図である。
図4(a)は、平行光の説明図である。
図4(b)は、第二光学検査部20BのY方向に沿った配置を示す模式図である。
【0047】
第二光学検査部20Bの光源21Bは、検査対象物Aの搬送方向と直交する方向(X方向)に沿って高輝度LEDを配列させたLEDバー照明が使用され、上面視において検査光LBの照射方向が検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った方向となるように、検査対象物Aの上方に配置される。
【0048】
第二光学検査部20Bでは、検査光LBとして、光の拡散又は収束が一定範囲内に収まる平行光を使用する。すなわち、平行光は、完全な平行状態である必要はなく、例えば、一定の散乱性を有する通常の光をロッドレンズ及びスリットに通して得られる疑似平行光を使用することも可能である。
図4(a)に示すように、検査光LBに用いる平行光は、中心軸Pにおける光に対して強度が50%となる光の進行方向Qが成す角度を指向角θa2とすると、以下の条件(5):
θa2 ≦ 10° (5)
を満たすことが好ましく、さらには、以下の条件(5´):
θa2 ≦ 5° (5´)
を満たすことがより好ましい。θa2が10°を上回る場合、検査光LBが散乱するため、検査光LBの照射位置における正反射光の光沢差が緩和される可能性がある。
【0049】
図4(b)に示すように、光源21Bは、検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが当接する位置に中心軸を向けて、検査光LBを照射する。検知部30Bは、検査光LBの照射位置に中心軸を向けて検査対象物Aの上方に配置されたラインセンサー33Bによって、検査対象物Aの表面における検査光LBの正反射光の輝度を検知する。ラインセンサー33Bによって、検査光LBの正反射光の輝度を検知するためには、検査光LBの照射位置における検査対象物Aの接線Rと検査光LBの光軸とがなす角度を、検査対象物Aに対する照射角θb2とし、接線Rとラインセンサー33Bの中心軸とがなす角度を、検査対象物Aに対する受光角θc2とすると、以下の条件(6)、(7):
30° ≦ θb2 ≦ 150° (6)
170° - θb2 ≦ θc2 ≦ 190° - θb2 (7)
を満たすことが好ましく、さらには、以下の条件(6´)、(7´):
60° ≦ θb2 ≦ 120° (6´)
175° - θb2 ≦ θc2 ≦ 185° - θb2 (7´)
を満たすことがより好ましい。θb2が30°を下回る場合、又はθb2が150°を上回る場合は、検査光LBが検査対象物Aに対して低角度で照射されることになるため、合成皮革のシボ等の微細な構造の陰影が強くなり、正反射光に光沢差を生じる欠陥が輝度データにおいて目立たない可能性がある。θc2が上記の範囲にない場合、検査光LBの照射位置における正反射光をラインセンサー33Bが受光することが困難になる。
【0050】
第二光学検査部20Bは、照射条件、及び検知条件として、検査光LBの照射方向を検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った方向に設定し、検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが当接する位置を照射位置とし、少なくとも条件(5)~(7)を満たすことにより、合成皮革のシボ等の微細な構造の陰影が及ぼす影響を抑えて、検査対象物Aの表面における正反射光のコントラストが明瞭な輝度データを取得することができる。
【0051】
なお、光源21Bから照射する検査光LBが完全な平行状態ではなく指向角θa2が検査対象物Aの搬送方向(Y方向)にやや広がりのある疑似平行光である場合、ラインセンサー33Bによる輝度データでは、検査対象物Aの幅方向(X方向)の端部に近いほど正反射光に対する拡散光の割合が多くなり、正反射光に光沢差を生じる欠陥が目立たなくなる傾向がある。このような場合、光源21B、及びラインセンサー33Bの夫々に、透過軸を一致させた偏光フィルタを設けることが好ましい。光源21B、及びラインセンサー33Bに透過軸を一致させた偏光フィルタを設けることにより、検査対象物Aの幅方向(X方向)の端部における拡散光の割合を低減して、正反射光に光沢差を生じる欠陥が検査対象物Aの中央部と端部とで同等に強調された輝度データを得ることができる。また、光源21Bに設ける偏光フィルタは、検査光LBがS波を含む直線偏光となるように、その透過軸がLEDバー照明の長手方向、即ち検査対象物Aの搬送方向と直交する方向(X方向)を向くように調整され、ラインセンサー33Bに設ける偏光フィルタは、S波を含む直線偏光を透過させるように、その透過軸が検査対象物Aの搬送方向と直交する方向(X方向)に向くように調整されることが好ましい。このように、光源21B、及びラインセンサー33Bに設ける偏光フィルタの透過軸を調整することにより、検査対象物Aの中央部と端部との何れにおいても、正反射光に光沢差を生じる欠陥のコントラストがさらに強調された輝度データを得ることができる。S波を含む直線偏光を透過するように偏光フィルタの透過軸を調整することで、正反射光に光沢差を生じる欠陥のコントラストがさらに強調されるのは、検査対象物の表面における正反射光はS波を多く含むが、正反射光に光沢差を生じる欠陥では、欠陥のないその周囲よりも、正反射光におけるS波の割合がより高いためと考えられる。
【0052】
図5は、第二光学検査部20Bによる検査対象物(合成皮革)Aの撮像イメージである。
図5の撮像イメージは、検査対象物Aの搬送方向を図の上下方向に配置したものであり、この撮像イメージでは、周囲と光沢が異なる領域が確認できる。すなわち、第二光学検査部20Bにおいて上記の照射条件、及び検知条件で輝度データを取得することで、検査対象物Aにおいて正反射光に光沢差を生じる欠陥とその周囲とのコントラストが明瞭なものとなり、この欠陥を検出しやすくなる。
【0053】
〔第三光学検査部における照射条件及び検知条件〕
第三光学検査部20Cは、検査対象物Aの表面に生じる凹凸欠陥、主に、検査対象物Aの搬送方向に直交する方向(X方向)に延伸する凹凸欠陥、及び点状の凹凸欠陥を検出対象とする。すなわち、第三光学検査部20Cが検出対象とするのは、厳密に搬送方向に直交する方向(X方向)に延伸する凹凸欠陥だけではなく、搬送方向に対し45~135°の角度で延伸する凹凸欠陥を検出対象とすることも可能である。凹凸欠陥は、合成皮革の製造工程中にゴミや虫が混入した場合や、裏布に結び目が発生した場合等に発生し得る。第三光学検査部20Cでは、照射条件として、検査対象物の搬送方向に対する検査光の照射方向、検査光の指向角、検査対象物に対する検査光の照射角、及び照射位置における検査対象物Aの裏面への搬送ローラ11aの当接状態が調整され、検知条件として、検査対象物に対する受光角が調整される。
図6は、第三光学検査部20Cの照射条件及び検知条件の説明図である。
【0054】
第三光学検査部20Cの光源21Cは、検査対象物Aの搬送方向と直交する方向(X方向)に沿って高輝度LEDを配列させたLEDバー照明が使用され、上面視において検査光LCの照射方向が検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った方向となるように、検査対象物Aの上方に配置される。
【0055】
第三光学検査部20Cでは、検査光LCとして、第二光学検査部20Bにおける検査光LBと同様の平行光を使用する。すなわち、検査光LCにおいても指向角θa2が、上記の条件(5)を満たすことが好ましく、さらには、上記の条件(5´)を満たすことがより好ましい。検査光LCにおいて指向角θa2が10°を上回る場合、検査光LCが散乱するため、本来は検査対象物Aの表面に凹凸欠陥の陰影が発生する箇所に散乱光が入り込み、凹凸欠陥の陰影が弱められる虞がある。
【0056】
図6に示すように、光源21Cは、検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが当接する位置に中心軸を向けて、検査光LCを照射する。検査光LCの照射位置における検査対象物Aの接線Rと検査光LCの光軸とがなす角度を、検査対象物Aに対する照射角θb3とすると、以下の条件(8):
θb3 ≦ 30° (8)
を満たすことが好ましく、さらには、以下の条件(8´):
θb3 ≦ 20° (8´)
を満たすことがより好ましい。θb3が30°を上回る場合、検査光LCが検査対象物Aに対して高角度で照射されることになるため、検査対象物Aの表面に凹凸欠陥の陰影が発生しにくくなり、凹凸欠陥が十分に強調されない可能性がある。
【0057】
検知部30Cは、検査光LCの照射位置に中心軸を向けて検査対象物Aの上方に配置されたラインセンサー33Cによって、検査対象物Aの輝度を検知する。接線Rとラインセンサー33Cの中心軸とがなす角度を、検査対象物Aに対する受光角θc3とすると、以下の条件(9):
80° ≦ θc3 ≦ 100° (9)
を満たすことが好ましく、さらには、以下の条件(9´):
85° ≦ θc3 ≦ 95° (9´)
を満たすことがより好ましい。θc3が80°を下回る場合、又はθc3が100°を上回る場合は、ラインセンサー33Cが検査光LCの照射位置の垂直上方の位置から大きく外れ、低角度で受光することになるため、検査対象物Aの表面に発生した凹凸欠陥の陰影が輝度データにおいて目立たないものになる可能性がある。
【0058】
第三光学検査部20Cは、照射条件、及び検知条件として、検査光LCの照射方向を検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った方向に設定し、検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが当接する位置を照射位置とし、少なくとも条件(5)、(8)、及び(9)を満たすことにより、検査対象物Aの凹凸欠陥の陰影(コントラスト)を強調した輝度データを取得することができる。
【0059】
図7は、第三光学検査部20Cによる検査対象物(合成皮革)Aの撮像イメージである。
図7(a)の撮像イメージでは、合成皮革の接着層への異物の混入により生じた凹凸欠陥の陰影が確認できる。
図7(b)及び(c)の撮像イメージは、検査対象物Aの搬送方向を図の上下方向に配置したものであり、
図7(b)の撮像イメージでは、搬送方向に対して約40°の角度で延伸する凹凸欠陥の陰影が確認でき、
図7(c)の撮像イメージでは、搬送方向に直交する方向に延伸する凹凸欠陥であるミシン目痕の陰影が確認できる。すなわち、第三光学検査部20Cにおいて上記の照射条件、及び検知条件で輝度データを取得することで、主に検査対象物Aの搬送方向に直交する方向(X方向)に延伸する凹凸欠陥、及び点状の凹凸欠陥の陰影が明瞭なものとなり、この欠陥を検出しやすくなる。
【0060】
〔第四光学検査部における照射条件及び検知条件〕
第四光学検査部20Dは、検査対象物Aの表面に生じる凹凸欠陥、主に、検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に延伸する凹凸欠陥を検出対象とする。すなわち、第四光学検査部20Dが検出対象とするのは、厳密に搬送方向(Y方向)に延伸する凹凸欠陥だけではなく、搬送方向に対し-45~45°の角度で延伸する凹凸欠陥を検出対象とすることも可能である。検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に延伸する凹凸欠陥は、合成皮革等の製造工程の一つである接着層塗布工程における接着層不良によって発生し得る。例えば、塗工機のブレード部分に異物が付着すると、検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿って接着層厚みが周囲より薄くなる部分が発生し、当該部分で表皮が浮き上がり、検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に延伸する凹凸欠陥となって現れる。第四光学検査部20Dでは、照射条件として、検査対象物の搬送方向に対する検査光の照射方向、検査光の指向角、検査対象物に対する検査光の照射角、及び照射位置における検査対象物Aの裏面への搬送ローラ11aの当接状態が調整され、検知条件として、検査対象物に対する受光角が調整される。
図8は、第四光学検査部20Dの照射条件及び検知条件の説明図である。
図8(a)は、第四光学検査部20DのX方向に沿った配置を示す模式図である。
図8(b)は、第四光学検査部20DのY方向に沿った配置を示す模式図である。
【0061】
第四光学検査部20Dの光源21Dは、二つの高輝度LED照明が使用され、上面視において検査光LDの照射方向が検査対象物Aの搬送方向に直交する方向(X方向)に沿った方向となるように、検査対象物Aの幅方向の中心を基準として検査対象物Aの両側の対称な位置に配置される。
【0062】
第四光学検査部20Dでは、検査光LDとして、第二光学検査部20Bにおける検査光LBと同様の平行光を使用する。すなわち、検査光LDにおいても指向角θa2が、上記の条件(5)を満たすことが好ましく、さらには、上記の条件(5´)を満たすことがより好ましい。検査光LDにおいて指向角θa2が10°を上回る場合、検査光LDが散乱するため、本来は検査対象物Aの表面に凹凸欠陥の陰影が発生する箇所に散乱光が入り込み、凹凸欠陥の陰影が弱められる虞がある。
【0063】
光源21Dは、検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが当接する位置に中心軸を向けて、検査光LDを照射する。
図8(a)に示すように、検査光LDの照射位置における検査対象物Aの接線Rと検査光LDの光軸とがなす角度を、検査対象物Aに対する照射角θb4とすると、以下の条件(10):
θb4 ≦ 30° (10)
を満たすことが好ましく、さらには、以下の条件(10´):
θb4 ≦ 20° (10´)
を満たすことがより好ましい。θb4が30°を上回る場合、検査光LDが検査対象物Aに対して高角度で照射されることになるため、検査対象物Aの表面に凹凸欠陥の陰影が発生しにくくなり、凹凸欠陥が十分に強調されない可能性がある。
【0064】
検知部30Dは、検査光LDの照射位置に中心軸を向けて検査対象物Aの上方に配置されたラインセンサー33Dによって、検査対象物Aの輝度を検知する。
図8(b)に示すように、接線Rとラインセンサー33Dの中心軸とがなす角度を、検査対象物Aに対する受光角θc4とすると、以下の条件(11):
80° ≦ θc4 ≦ 100° (11)
を満たすことが好ましく、さらには、以下の条件(11´):
85° ≦ θc4 ≦ 95° (11´)
を満たすことがより好ましい。θc4が80°を下回る場合、又はθc4が100°を上回る場合は、ラインセンサー33Dが検査光LDの照射位置の垂直上方の位置から大きく外れ、低角度で受光することになるため、検査対象物Aの表面に発生した凹凸欠陥の陰影が輝度データにおいて目立たないものになる可能性がある。
【0065】
第四光学検査部20Dは、照射条件、及び検知条件として、検査光LDの照射方向を検査対象物Aの搬送方向に直交する方向(X方向)に沿った方向に設定し、検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが当接する位置を照射位置とし、少なくとも条件(5)、(10)、及び(11)を満たすことにより、検査対象物Aの凹凸欠陥の陰影(コントラスト)を強調した輝度データを取得することができる。
【0066】
図9は、第四光学検査部20Dによる検査対象物(合成皮革)Aの撮像イメージである。
図9の撮像イメージは、検査対象物Aの搬送方向を図の上下方向に配置したものであり、この撮像イメージでは、搬送方向(Y方向)に延伸する凹凸欠陥の陰影が確認できる。すなわち、第四光学検査部20Dにおいて上記の照射条件、及び検知条件で輝度データを取得することで、主に検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に延伸する凹凸欠陥の陰影が明瞭なものとなり、この欠陥を検出しやすくなる。
【0067】
〔第五光学検査部における照射条件及び検知条件〕
第五光学検査部20Eは、検査対象物Aにおいて散乱光に光沢差を生じる欠陥を検出対象とする。第五光学検査部20Eでは、照射条件として、検査対象物の搬送方向に対する検査光の照射方向、検査光の指向角、検査対象物に対する検査光の照射角、及び照射位置における検査対象物Aの裏面への搬送ローラ11aの当接状態が調整され、検知条件として、検査対象物に対する受光角が調整される。
図10は、第五光学検査部20Eの照射条件及び検知条件の説明図である。
【0068】
第五光学検査部20Eの光源21Eは、検査対象物Aの搬送方向と直交する方向(X方向)に沿って高輝度LEDを配列させたLEDバー照明が使用され、上面視において検査光LEの照射方向が検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った方向となるように、検査対象物Aの上方に配置される。
【0069】
第五光学検査部20Eでは、検査光LEとして、第二光学検査部20Bにおける検査光LBと同様の平行光を使用する。すなわち、検査光LEにおいても指向角θa2が、上記の条件(5)を満たすことが好ましく、さらには、上記の条件(5´)を満たすことがより好ましい。検査光LEにおいて指向角θa2が10°を上回る場合、検査光LEの照射位置における散乱光の光沢差が緩和される可能性がある。
【0070】
図10に示すように、光源21Eは、検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが当接する位置に中心軸を向けて、検査光LEを照射する。検知部30Eは、検査光LEの照射位置に中心軸を向けて検査対象物Aの上方に配置されたラインセンサー33Eにおいて、検査対象物Aの表面における検査光LEの散乱光の輝度を暗視野観察で検知する。ラインセンサー33Eにおいて、暗視野観察で散乱光の輝度を検知するためには、検査光LEの照射位置における検査対象物Aの接線Rと検査光LEの光軸とがなす角度を、検査対象物Aに対する照射角θb5とし、接線Rとラインセンサー33Eの中心軸とがなす角度を、検査対象物Aに対する受光角θc5とすると、以下の条件(12)及び(13):
20° ≦ θb5 ≦ 80° (12)
θc5 < θb5 (13)
を満たすことが好ましく、さらに受光角θc5は、以下の条件(12´):
40° ≦ θb5 ≦ 50° (12´)
を満たすことがより好ましい。θb5、及びθc5が上記の範囲にない場合、検査光LEの照射位置における散乱光の輝度を暗視野観察で検知することが困難になることや、散乱光に光沢差を生じる欠陥が十分に強調されないことがある。
【0071】
第五光学検査部20Eは、照射条件、及び検知条件として、検査光LEの照射方向を検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った方向に設定し、検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが当接する位置を照射位置とし、少なくとも条件(5)、(12)、及び(13)を満たすことにより、暗視野観察を実施し、検査対象物Aの表面における散乱光のコントラストが明瞭な輝度データを取得することができる。
【0072】
図11は、第五光学検査部20Eによる検査対象物(合成皮革)Aの撮像イメージである。
図11の撮像イメージは、検査対象物Aの搬送方向を図の上下方向に配置したものであり、この撮像イメージでは、周囲と光沢が異なる領域が確認できる。すなわち、第五光学検査部20Eにおいて上記の照射条件、及び検知条件で輝度データを取得することで、暗視野観察が可能となり、散乱光に光沢差を生じる欠陥とその周囲とのコントラストが明瞭なものとなり、この欠陥を検出しやすくなる。
【0073】
〔第六光学検査部における照射条件及び検知条件〕
第六光学検査部20Fは、検査対象物Aの表面に生じる凹凸欠陥、主に、検査対象物Aの搬送方向に直交する方向(X方向)に延伸し、且つ検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが当接する場合に搬送ローラ11aによる支持によって高低差が解消される凹凸欠陥を検出対象とする。すなわち、第六光学検査部20Fが検出対象とするのは、厳密に搬送方向に直交する方向(X方向)に延伸する凹凸欠陥だけではなく、搬送方向に対し45~135°の角度で延伸する凹凸欠陥を検出対象とすることも可能である。また、第六光学検査部20Fは、検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが当接する場合に高低差が解消される点状の凹凸欠陥を検出対象とする。検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが当接する場合に高低差が解消される凹凸欠陥には、例えば、接着層の不良による表皮の浮きによる凹凸欠陥の一部が含まれる。第六光学検査部20Fでは、照射条件として、検査対象物の搬送方向に対する検査光の照射方向、検査光の指向角、検査対象物に対する検査光の照射角、及び照射位置における検査対象物Aの裏面への搬送ローラ11aの当接状態が調整され、検知条件として、検査対象物に対する受光角が調整される。
図12は、第六光学検査部20Fの照射条件及び検知条件の説明図である。
【0074】
第六光学検査部20Fの光源21Fは、検査対象物Aの搬送方向と直交する方向(X方向)に沿って高輝度LEDを配列させたLEDバー照明が使用され、上面視において検査光LFの照射方向が検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った方向となるように、検査対象物Aの上方に配置される。
【0075】
第六光学検査部20Fでは、検査光LFとして、第二光学検査部20Bにおける検査光LBと同様の平行光を使用する。すなわち、検査光LFにおいても指向角θa2が、上記の条件(5)を満たすことが好ましく、さらには、上記の条件(5´)を満たすことがより好ましい。検査光LFにおいて指向角θa2が10°を上回る場合、検査光LFが散乱するため、本来は検査対象物Aの表面に凹凸欠陥の陰影が発生する箇所に散乱光が入り込み、凹凸欠陥の陰影が弱められる虞がある。
【0076】
第六光学検査部20Fにおける照射条件及び検知条件は、上記の第三光学検査部20Cにおける照射条件及び検知条件とは、照射位置における検査対象物Aの裏面への搬送ローラ11aの当接状態が相違し、
図12に示すように、光源21Fは、ガイドローラ11bと搬送ローラ11aの間の位置、即ち、検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが存在しない位置に中心軸を向けて、検査光LFを照射する。検査光LFの照射位置における検査対象物Aの接線Rと検査光LFの光軸とがなす角度を、検査対象物Aに対する照射角θb6とすると、以下の条件(14):
θb6 ≦ 30° (14)
を満たすことが好ましく、さらには、以下の条件(14´):
θb6 ≦ 20° (14´)
を満たすことがより好ましい。θb6が30°を上回る場合、検査光LFが検査対象物Aに対して高角度で照射されることになるため、検査対象物Aの表面に凹凸欠陥の陰影が発生しにくくなり、凹凸欠陥が十分に強調されない可能性がある。
【0077】
検知部30Fは、検査光LFの照射位置に中心軸を向けて検査対象物Aの上方に配置されたラインセンサー33Fによって、検査対象物Aの輝度を検知する。接線Rとラインセンサー33Fの中心軸とがなす角度を、検査対象物Aに対する受光角θc6とすると、以下の条件(15):
80° ≦ θc6 ≦ 100° (15)
を満たすことが好ましく、さらには、以下の条件(15´):
85° ≦ θc6 ≦ 95° (15´)
を満たすことがより好ましい。θc6が80°を下回る場合、又はθc6が100°を上回る場合は、ラインセンサー33Fが検査光LFの照射位置の垂直上方の位置から大きく外れ、低角度で受光することになるため、検査対象物Aの表面に発生した凹凸欠陥の陰影が輝度データにおいて目立たないものになる可能性がある。
【0078】
第六光学検査部20Fは、照射条件、及び検知条件として、検査光LFの照射方向を検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った方向に設定し、検査対象物Aの裏面に搬送ローラ11aが存在しない位置を照射位置とし、少なくとも条件(5)、(14)、及び(15)を満たすことにより、高低差が解消される凹凸欠陥であっても、検査対象物Aの凹凸欠陥の陰影(コントラスト)を強調した輝度データを取得することができる。
【0079】
図13は、第六光学検査部20Fによる検査対象物(合成皮革)Aの撮像イメージである。
図13(a)の撮像イメージでは、合成皮革の接着層の不良による凹凸欠陥の陰影が確認できる。
図13(b)の撮像イメージは、検査対象物Aの搬送方向を図の上下方向に配置したものであり、搬送方向に直交する方向(X方向)に延伸する微細な凹凸欠陥の陰影が確認できる。これらの凹凸欠陥は、搬送ローラ11a上の位置では高低差が解消されるため、第三光学検査部20Cでは、輝度データに明瞭な陰影が生じない。すなわち、第六光学検査部20Fにおいて上記の照射条件、及び検知条件で輝度データを取得することで、主に検査対象物Aの搬送方向に直交する方向(X方向)に延伸する凹凸欠陥の陰影が明瞭なものとなり、この欠陥を検出しやすくなる。
【0080】
〔第一実施形態〕
本実施形態は、第一光学検査部20A~第六光学検査部20Fにおける照射条件としてさらに、検査光の波長を調整した欠陥検査装置100により、合成皮革を検査対象物Aとして検査を行うものである。具体的には、検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った配列位置が、搬送方向の上手側から数えて奇数番目である第一光学検査部20A、第三光学検査部20C、及び第五光学検査部20Eの光源21A、21C、及び21Eには、緑色LED照明を用いる。検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った配列位置が、搬送方向の上手側から数えて偶数番目である第二光学検査部20B、第四光学検査部20D、及び第六光学検査部20Fの光源21B、21D、及び21Fには、赤色LED照明を用いる。本実施形態で使用する光源、ラインセンサー、及び合成皮革の仕様は、以下のとおりである。
【0081】
<光源>
・照明装置:高輝度LED照明(赤色、緑色、青色)
・照明形状:直線状
・発光面照度:60万ルクス
・冷却方式:自然放熱
・光線:疑似平行光、拡散光、集光調整可能
・電源:定電流方式
<ラインセンサー>
・画素数:2048画素、4096画素
・画素サイズ:14μm(2048画素)、10μm(4096画素)
・最大ラインレート:31.8kHz(2048画素)、17.5kHz(4096画素)
・データフォーマット:8ビット、12ビット
・ダイナミックレンジ:58dB
・センサー構造:3ライン
・インターフェース:カメラリンク(MDRx2)
・露光時間:各色に応じて変更
<合成皮革>
・色:ブラック、ブラウン、ベージュ、ホワイト
・厚み:0.9~1.2mm
【0082】
欠陥検査装置100において、搬送方向(Y方向)に沿った配列位置が隣り合う二つの光学検査部の光源、例えば、光源21A及び光源21Bは、互いの照射位置が搬送方向(Y方向)において隣り合うため、夫々の照射位置において互いの検査光が影響し合うことがある。この場合、検知部30A及び30Bで取得する輝度データを用いた撮像画像のコントラストは肉眼では低下するが、本実施形態の欠陥検査装置100で得られた撮像画像は、検査光LA及び検査光LBの波長が互いに異なるため、夫々の撮像画像において対応する検査光の波長に対応したチャネル(成分)を取り出すことにより、コントラストを向上させることができる。この結果、夫々の光学検査部において、検出対象とする欠陥の検出が容易なものとなる。なお、隣り合う二つの光学検査部において照射する検査光は、ピーク波長が離れるように選択されることが好ましい。本実施形態では、検査光LA、LC、及びLEとして緑色光(ピーク波長:555nm)、検査光LB、LD、及びLFとして赤色光(ピーク波長:660nm)を使用しているが、青色光(ピーク波長470nm)と赤色光(ピーク波長:660nm)との組み合わせであれば、ピーク波長の差がより大きくなるため、さらに明確な輝度データを得ることができる。
【0083】
〔第二実施形態〕
本実施形態は、第一光学検査部20A~第六光学検査部20Fにおける照射条件としてさらに、検査光の照射タイミングを調整した欠陥検査装置100により、検査対象物Aの検査を行うものである。具体的には、検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った配列位置が、搬送方向の上手側から数えて奇数番目である第一光学検査部20A、第三光学検査部20C、及び第五光学検査部20Eの光源21A、21C、及び21Eと、検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った配列位置が、搬送方向の上手側から数えて偶数番目である第二光学検査部20B、第四光学検査部20D、及び第六光学検査部20Fの光源21B、21D、及び21Fとは、交互に検査光を照射する。
【0084】
ラインセンサー33A~33Fの撮影タイミングは、夫々が対応する光源の照射タイミングと同期しており、検査対象物Aが搬送される方向に1ライン毎に撮影が実行される。このため、第二実施形態で得られる撮像画像の搬送方向における分解能は、第一実施形態で得られる撮像画像の搬送方向における分解能の1/2となる。
【0085】
第二実施形態では、搬送方向(Y方向)に沿った配列位置が隣り合う二つの光学検査部、例えば、第一光学検査部20A及び第二光学検査部20Bが交互に検査光を照射するため、検査対象物Aに照射される検査光LA及びLBが互いに影響することがなく、検知部30A及び30Bにおいて取得する輝度データのコントラストの低下を防止することができる。この結果、夫々の光学検査部において、検出対象とする欠陥の検出が容易なものとなる。
【0086】
〔欠陥検査方法〕
以下、本発明の欠陥検査方法について説明する。本発明の欠陥検査装置が検査対象とする合成皮革は、通常ロール状に巻回された状態で出荷される。そこで、合成皮革の欠陥検査を行うにあたっては、合成皮革をロールから一旦引き出す必要がある。ロール状の合成皮革が欠陥検査装置にセットされると、合成皮革が回転しながらロールから搬送方向に引き出され、別のローラに巻き取られながら再びロールが形成される。このとき、搬送途中の合成皮革に対して、下記の各工程により欠陥の有無が判定される。なお、欠陥検査方法は、
図1の欠陥検査装置100を用いて行われる。
【0087】
図14は、本発明の欠陥検査方法のフローチャートである。欠陥検査方法は、主に、搬送工程、光学検査工程、処理工程、及び判定工程を経て実施される。
図14のフローチャートにおいて、各ステップを記号「S」で示してある。
【0088】
<搬送工程:S1>
初めに、搬送工程として、検査対象物Aを搬送する。検査対象物Aを欠陥検査装置100に設置した後、搬送ローラ11aを回転させると、検査対象物Aが搬送されることで検査対象物Aに接触させた回転体が回転し、その回転角度に応じたパルス信号がエンコーダ13によって生成される。エンコーダ13が生成したパルス信号に基づき、搬送ローラ11aが検査対象物Aを所定の位置まで搬送する(S1)。さらに、搬送ローラ11から発信されるパルス信号に基づいて、ラインセンサー33が所定の周期で1ライン毎に撮像を行うための検査対象物Aの位置をエンコーダ13に設定する。検査対象物Aを巻き取る速さ(搬送速度)は、エンコーダ13のパルス信号に基づき、制御部60がドライバ12を制御して調整される。
【0089】
<光学検査工程:S2~S7>
次に、光学検査工程として、制御部60は、エンコーダ13が生成したパルス信号に基づき、検査対象物Aの搬送量をライン数としてカウントし、ライン数が奇数であるか否かを判断する(S2)。ライン数が奇数である場合(S2:Yes)、検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った配列位置が搬送方向の上手側から数えて奇数番目である第一光学検査部20A、第三光学検査部20C、及び第五光学検査部20Eにおいて、検査光を照射し(S3)、検査対象物Aの幅方向(X方向)における輝度を検知し(S4)、その後、S7に処理を進める。S3では、第一光学検査部20A、第三光学検査部20C、及び第五光学検査部20Eの光源21A、21C、及び21Eから、検査光LA、LC、及びLEを検査対象物Aに照射する。S4は、搬送部10のエンコーダ13のパルス信号に基づいて、検査光LA、LC、及びLEが照射された検査対象物Aの幅方向(X方向)の領域をラインセンサー33A、33C、及び33Eが所定の周期で1ライン毎に撮像するように、制御部60が検知部30A、30C、及び30Eの撮影動作調整部31A、31C、及び31Eを制御しながら行われる。各ラインセンサーが撮像した検査対象物Aの幅方向1ライン毎の濃淡画像(ライン画像)は、検知部30A、30C、及び30Eの画像認識部32A、32C、及び32Eでデジタル信号の輝度データとして認識され、制御部60を介してデータ格納部70に格納される。
【0090】
S2の判断において、ライン数が偶数である場合(S2:No)、検査対象物Aの搬送方向(Y方向)に沿った配列位置が搬送方向の上手側から数えて偶数番目である第二光学検査部20B、第四光学検査部20D、及び第六光学検査部20Fにおいて、検査光を照射し(S5)、検査対象物Aの幅方向(X方向)における輝度を検知し(S6)、その後、S7に処理を進める。S5では、第二光学検査部20B、第四光学検査部20D、及び第六光学検査部20Fの光源21B、21D、及び21Fから、検査光LB、LD、及びLFを検査対象物Aに照射する。S6は、搬送部10のエンコーダ13のパルス信号に基づいて、検査光LB、LD、及びLFが照射された検査対象物Aの幅方向(X方向)の領域をラインセンサー33B、33D、及び33Fが所定の周期で1ライン毎に撮像するように、制御部60が検知部30B、30D、及び30Fの撮影動作調整部31B、31D、及び31Fを制御しながら行われる。各ラインセンサーが撮像した検査対象物Aの幅方向1ライン毎の濃淡画像(ライン画像)は、検知部30B、30D、及び30Fの画像認識部32B、32D、及び3Fでデジタル信号の輝度データとして認識され、制御部60を介してデータ格納部70に格納される。S3及びS5での検査光の照射条件、及びS4及びS6での輝度の検知条件の詳細は、欠陥検査装置100についての説明と重複するため、その説明を省略する。
【0091】
S7においては、制御部60は、データ格納部70に格納されたライン画像の数をカウントし、所定のライン数まで達したか否かを判断する。ライン画像が所定のライン数に達していない場合(S7:No)は、搬送工程(S1)に戻り、検査対象物Aを搬送しながら光学検査工程(S2~S7)における検査対象物Aへの検査光の照射及び輝度の検知が継続される。ライン画像が所定のライン数に達した場合(S7:Yes)は、次の処理工程に進む。
【0092】
<処理工程:S8~S10>
次に、処理工程として、光学検査工程で第一光学検査部20A~第六光学検査部20Fの夫々が取得した所定のライン数のデジタル輝度データを解析処理する。解析処理を行うにあたり、初めに、処理部40が、光学検査工程で第一光学検査部20A~第六光学検査部20Fの夫々が取得した所定のライン数のデジタル輝度データに基づいて撮像画像を合成する(S8)。ここで、合成皮革のような幅広の検査対象物Aを検査する場合、ラインセンサー33A~33Fが撮像する画像(デジタル輝度データ)は、撮像素子の感度ムラや照明方法により一様な輝度が得られないことがある。そこで、処理工程では、この感度ムラや、検査対象物Aとは無関係のノイズを除去するために、合成画像に各種画像処理を行う。先ず、生の画像にシェーディング補正(S9)を行うことにより、感度ムラや輝度ムラを除去し、一様な輝度画像に加工する。次に、処理画像に対して空間フィルタ処理(S10)を行うことにより、画像のノイズを軽減したり、エッジを強調する。
【0093】
<判定工程:S11~S12>
最後に、判定工程として、処理工程による解析処理結果に基づいて、検査対象物Aの欠陥の有無を判定する。欠陥判定は、例えば、空間フィルタ処理後、二値化処理(S11)により処理画像中で欠陥の可能性がある領域を抽出し、抽出された領域の面積に閾値を設定して欠陥か否かを判定する(S12)。また、別の欠陥判定として、対照として欠陥の無い良品の検査画像(対照画像)を予め準備し、当該対照画像と処理画像とを比較し、両者の差分から欠陥か否かを判定することも可能である。検査対象物Aに欠陥が無いと判定された場合(S12:No)は、搬送工程(S1)に戻り、光学検査工程(S2~S7)、処理工程(S8~S10)、及び判定工程(S11~S12)が繰り返される。検査対象物Aに欠陥があると判定された場合(S12:Yes)は、検査対象物Aの搬送が自動又は手動で停止され、オペレーターが検査対象物Aの欠陥をディスプレイ等で確認し、マーキングや欠陥レベルの判定等の作業を行って検査が終了する。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の欠陥検査装置、及び欠陥検査方法は、合成皮革の検査に適するものであるが、布帛、壁紙、断熱材、吸音材、包装フィルム、プラスチックフィルム、家具の天板等の検査においても利用可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 搬送部
11a 搬送ローラ(支持ローラ)
20A~F 光学検査部(第一光学検査部~第六光学検査部)
21A~F 光源
30A~F 検知部
40 処理部
50 判定部
100 欠陥検査装置
A 検査対象物
LA~LF 検査光