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  • 特許-塗装物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】塗装物
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/06 20060101AFI20230414BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20230414BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230414BHJP
   E04F 13/18 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B05D5/06 101B
B05D5/06 101A
B05D1/36 Z
B32B27/00 E
E04F13/18 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019062601
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020157271
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】313014077
【氏名又は名称】トクラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002033
【氏名又は名称】弁理士法人東名国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】紺野 良文
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-134390(JP,A)
【文献】特開平06-091224(JP,A)
【文献】特開平11-319698(JP,A)
【文献】特開2002-046199(JP,A)
【文献】実開平04-020552(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0144399(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 5/06
B05D 1/36
B32B 27/00
E04F 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物の表面に高低差を有する凸部を塗装して形成された斑点模様と、
前記凸部間の凹部となる被塗装物の表面及び前記凸部となる斑点模様の表面に塗装されたメタリック層とを備えた塗装物において、
前記メタリック層は、前記凹部、凸部の表面に倣って高低差を有する面に設けられていることを特徴とする塗装物。
【請求項2】
前記被塗装物の表面は艶消し調である一方、前記斑点模様は艶有りの凸部により構成されていることを特徴とする請求項1記載の塗装物。
【請求項3】
前記被塗装物の表面は塗装を施すことによって構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の塗装物。
【請求項4】
前記メタリック層の表面に透明層を更に備えていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の塗装物。
【請求項5】
前記塗装物は、キッチン、浴室、洗面台、家具の天板、壁面材若しくは扉面材であることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の塗装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装物に係り、例えば、キッチン、浴室、洗面化粧台、家具等の天板、壁面材、扉面材等として利用することに適した斑点模様付きの塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンや、洗面化粧台に用いられる天板は、その素材の表面或いは成形品の表面をそのまま表出させて利用する他、表面に塗装を施して、色、模様等の装飾が施されたものが利用されている。
このような塗装により模様を表出させた塗装物としては、例えば、特許文献1、2に記載されている。
特許文献1記載の塗装物は、素材の表面に塗装された着色ベース塗料層と、着色塗料を斑点状に塗装した多彩模様層とを備えて構成されている。ここで、着色ベース塗料層は、斑点模様層と共色、具体的には、着色ベース塗料層の色調が斑点模様層に比べて淡色なものとされている。
また、特許文献2には、金属やガラス等の表面に、透明な塗料を塗布した上で高粘度の塗料をスプレーガンで強制的に吹き付けて、細かな線と点が混ざった不規則な模様付けを行った塗装物が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-140750号公報
【文献】特開2002-45787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の塗装物は、着色ベース塗料層の露出部分と斑点模様との色調のバランスを統一して意匠性を向上させることが企図されている。
しかしながら、この塗装物にあっては、着色ベース塗料層にライトグレーやライトブラウン等の色を用いる一方、着色多彩模様層にホワイト、アイボリー、グレー、ダークグレー等の色を用いて上述の淡色となる関係を満たす共色としているだけのものである。そのため、斑点模様と、斑点間の着色ベース塗料層との見え方に相違が見られることにはなるが、全体としての意匠性は単調なものとならざるを得ない。しかも、斑点模様を多彩なものとしても、そのことが塗装物に奥行感や深み感等という意匠性に寄与することにはなっていない。更に、表面の全域において、見る角度や光源との相対位置に応じて見え方を異ならせる材料についての積極的な考察はなされていない。
【0005】
また、特許文献2においては、特許文献1と同様に、模様のある部分と模様のない部分との材質的な違いを表出させただけである。
【0006】
[発明の目的]
本発明の目的は、全体的に輝度が高められた高質感を付与することができるとともに、見る位置や角度等によって異なる美観を表出させる等、意匠性に多様性が付与された塗装物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、斑点模様を構成する凸部と凸部間の凹部との間に、陰影のコントラストを明瞭に生じさせるとともに、メタリック層を通じてそれを目視できるようにして奥行感や深み感等を際立たせることのできる塗装物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲記載の構成を採用したものである。具体的には、被塗装物の表面に高低差を有する凸部を塗装して形成された斑点模様と、
前記凸部間の凹部となる被塗装物の表面及び前記凸部となる斑点模様の表面に塗装されたメタリック層とを備えた塗装物において、
前記メタリック層は、前記凹部、凸部の表面に倣って高低差を有する面に設けられる、という構成を採っている。
【0008】
本発明において、前記被塗装物の表面は艶消し調である一方、前記斑点模様は艶有りの凸部により構成されることが好ましい。ここで、艶消し調とは、60度光沢度において、20%以下のもの、好ましくは10%以下のものについて用いられる。
【0009】
また、前記被塗装物の表面は塗装を施すことによって構成されている。
【0010】
更に、前記メタリック層の表面に透明層を更に備えた構成を採ることができる。
【0011】
また、前記塗装物は、キッチン、浴室、洗面台、家具の天板、壁面材若しくは扉面材として利用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、斑点模様の凸部と、凸部間の凹部がメタリック層で塗装されることで、当該メタリック層に含まれるアルミフレーク(微細アルミ粒子)等の光反射材が凸部と凹部の面に倣うように配向され光を多方面に反射させることができるようになり、輝度が高められた高質感の塗装物を提供可能となる。
また、光反射材の配向を通じて、見る位置や角度等によって明暗等が異なる美観を表出するようになり、意匠的な多様性を備えた塗装物を提供することができる。
また、被塗装物の表面が艶消し調であれば、斑点模様を艶有りとして凸部と凸部間の凹部との間に陰影のコントラストを明確にすることができる。また、メタリック層を透かして斑点模様、被塗装物の表面を見えるようにして奥行感や深み感等を際立たせることもできる。
更に、透明層を設けた構成によれば、斑点模様の保護が図れるとともに、外観に濡れ色が付与された意匠性を表出させることができる。
なお、塗装物が天板や壁面材等に適用される構成では、当該天板等が適用されるキッチン等の全体的な質感向上に有効に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は実施例に係る塗装物の概略断面図、(B)は、その一部拡大断面図、(C)は、メタリック層内における光反射材の配向例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図1に示す塗装物の各層厚みは、明細書の理解を容易にする目的で示したものであり、実際の厚みは、以下に説明する数値の範囲内で決定されるものである。
図1に示されるように、模様付きの塗装物10は、板状の被塗装物11と、当該被塗装物11の表面に塗布された凸状の斑点模様12と、これら被塗装物11及び斑点模様12の表面を覆うように塗装されたメタリック層14と、当該メタリック層14の表面に塗装された透明層16とを構成されている。
【0015】
被塗装物11は、特に限定されるものではないが、板状の基材11Aと、当該基材11Aに塗布されて被塗装物11の表面を構成するベース層11Bとにより構成されている。本実施形態では、基材11Aとして人造大理石が用いられているが、その他の樹脂成形板、金属板、木製板等を採用することができる。
基材11Aを構成する人造大理石は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を染料や顔料によって着色するとともに、プラスチック材等を粉砕して様々な色、形状、大きさとされた粒体の他、人造大理石、天然石等を粉砕して得られる粒体、各種添加剤を配合することにより形成されている。熱硬化性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、熱硬化型アクリル系樹脂などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。
なお、本実施形態における基材11Aの好ましい板厚としては、1mm~50mmのもの、さらに好ましくは3mm~20mmが例示できる。
【0016】
前記ベース層11Bは艶消し調に設けられている。このベース層11Bは、樹脂成分及び着色顔料をシンナー、水等の溶剤に混合、分散させたものが好適に用いられている。樹脂成分として、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使用できる。また、着色顔料として、樹脂成分を着色できるものであればよく、各種の着色用顔料を用いることができる。
ベース層11Bの塗布は、エアスプレ-により行うことができるが、その他の手段、例えば、ローラー等によるものであってもよい。
ベース層は、艶消し塗料による塗装の他、サンドペーパー等で表面を荒して艶消し調にすることができる。
なお、ベース層11Bは必ずしも設けることを要しない。この場合には、基材11Aを構成する人造大理石の表面が艶消し調のものであれば足りる。
【0017】
前記斑点模様12は、ベース層11Bと同様に、樹脂成分及び着色顔料をシンナー、水等の溶剤に混合、分散させた塗料で塗装することにより設けられている。この斑点模様12は艶有りの凸部を点在させる状態で、ベース層11Bの面内全域に設けられている。凸部間はベース層11Bが表出した凹部を形成する。斑点模様12を構成する凸部の大きさは、1mm~50mm、高さは、5μm~70μmとすることが好ましい。凸部の大きさが1mm未満では模様が目立たなくなって斑点模様を設ける効果が低下するためであり、50mmを超えると凸部と凹部との面積バランスが悪くなって意匠性を低下させるためである。また、高さが5μm未満では、凸部と凹部とによる陰影のコントラストが目立たなくなり、70μmを超えると、塗装物10の表面が極端にざらついてしまい好ましくない。さらに好ましくは、凸部の大きさは、2mm~30mm、高さは、10μm~50μmとするとよい。
斑点模様12は、[図1](A)、(B)では、凸部が一つずつ独立したものが示されているが、実際には、[図1](C)に示されているとおり、凸部が重なり合う場合や面方向につながる場合もある。
なお、斑点模様12は、スプレーガンを用いて塗布することが好ましいものとされるが、これに限定されるものではなく、ローラー等を用いた他の塗装手段を用いることもできる。例えば、凸部に対応する多数の穴を備えたマスキングシートをベース層11B上に配置し、塗料を含浸したローラーをシート上で転動させた後、当該シートを除去する方法等も採用できる。この場合には、斑点模様12の位置が共通化ないしは規格化された塗装物を提供でき、スプレー塗布に要求される熟練度を必要とすることはない。
斑点模様12の塗料の粘度は、アネスト岩田株式会社製の粘度カップNK-2にて滴下時間が9秒~12秒になるように調整する。これにより、スプレーガンを用いて斑点模様12を塗布した際に、上記大きさ、高さを有する凸部を無理なく形成することができる。なお、凸部を大きく形成するためには12秒~18秒に調整することが好ましい。
また、斑点模様12は、公知のアルミフレーク等の光反射材を添加したメタリック塗料で塗装することにより設けられてもよい。
【0018】
前記メタリック層14は、本実施形態では、アルミフレーク(アルミ粒子)14Aを透明樹脂に混合した公知のメタリック塗料を用いて形成されている。アルミ粒子14Aは概して鱗片状をなし、図1(C)に例示されるように、鱗片の長手方向が凸部上面に倣うように配向されている。
なお、メタリック層は、2μm~15μm程度の厚さで塗布することができる。得られる塗装物に全体的に高い輝度を表出させるためには、凸部、凹部全体の70%以上がアルミ粒子で隠蔽されるように塗布することが好ましい。また、奥行方向に見える奥行感若しくは深み感を得るためには、凸部、凹部全体の5%以上が奥行方向に透かして見えるように塗布することが好ましい。
【0019】
前記透明層16は、アクリル、ウレタン、シリコン樹脂等を用いたクリア塗料、若しくは半透明のクリア塗料を塗装することによって形成され、これにより、メタリック層14の表面保護を行うとともに、濡れ色を付与することができるようになっている。本実施形態では、透明層16を形成するクリア塗料として、ガラスビーズ16Aが添加されたものが採用されており、当該ガラスビーズ16Aにより、表面硬度が高められるようになっている。
【0020】
次に、実施例について説明する。
[実施例1]
板厚10mmの人造大理石を#240のペーパー研磨で荒らしたものを基材として用い、その表面に黒色塗料(カシュー株式会社製ストロンTXL No30 1分艶有 黒(改))をスプレーガンで塗布して乾燥硬化させ、厚み約10μmの艶消し調となるベース層を形成した。
ベース層の表面に黒色塗料(カシュー株式会社製ストロンTXL No30 1分艶有 黒(改))をアネスト岩田株式会社製の粘度カップNK-2にて滴下時間が10秒程度になるように調整してスプレーガンで塗布を行った。これにより大きさ2mm~30mm、高さ約10μm~50μmの凸部からなる斑点模様を形成した。
斑点模様の乾燥硬化後、アルミ粒子入りメタリック塗料(カシュー株式会社製ストロンTXL No30 高輝度シルバーSB)でベース層及び斑点模様の表面を塗装し、厚さ約3μm前後のメタリック層を形成し、次いで、その表面にガラスビーズ入りクリア塗料を塗布して厚さ約20μmの透明層を形成した。
なお、メタリック層は凸部、凹部全体の90%を覆う範囲をアルミ粒子で隠蔽するように塗布し、残り10%の範囲は奥行方向に透かして見えるように塗布した。
【0021】
得られた塗装物を目視観察したところ、全体的に高い輝度を表出するとともに、メタリック層を透かして凸部と、凸部間の凹部が奥行方向に見える奥行感若しくは深み感と、表面を見る位置の変化によって見え方が異なる多様性を有する意匠性を認めることができた。
【0022】
[比較例1]
実施例1と同様の条件で被塗装物を形成するとともに、実施例1と同一の黒色塗料を用いて斑点模様を有する塗装物を得た。
この塗装物を目視観察したところ、輝度が無く、艶消し面となるベース層に、艶のある斑点模様が分散して見える状態が認められるだけで、奥行感ないし深み感を認めることはできなかった。
【0023】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施形態に対し、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
また、上記に開示した塗装物の塗装条件すなわち材料、色、大きさ、厚み、高さなどは、任意に、或いは、それらの相互関係において変化し得るものであり、これらに関する上記の限定は、本発明の目的を達成することができるかぎり変更することを妨げない。
【符号の説明】
【0024】
10…塗装物、11…被塗装物、12…斑点模様、14…メタリック層、16…透明層
図1