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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】アブソリュートエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20230414BHJP
   G01D 5/04 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
G01D5/245 110A
G01D5/245 110L
G01D5/04 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019067617
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165851
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】長田 靖夫
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-87774(JP,A)
【文献】特開2019-15536(JP,A)
【文献】特開2019-20188(JP,A)
【文献】特公昭35-10288(JP,B1)
【文献】特開平8-105739(JP,A)
【文献】特開昭57-196102(JP,A)
【文献】実開昭48-29841(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、
前記主軸の回転に従って回転する第1駆動歯車と、
前記第1駆動歯車と噛み合う第1従動歯車と、
前記第1従動歯車の回転に従って回転する第2駆動歯車と、
前記第2駆動歯車と噛み合う第2従動歯車と、
前記第2従動歯車の回転に従って回転する副軸ギアの回転数を特定する計数機構とを備え
前記計数機構は、
前記第2従動歯車の回転に従って回転する第3駆動歯車と、
前記第3駆動歯車と噛み合う第3従動歯車と、
前記第3従動歯車の回転に従って回転する第1カム部と、
前記第1カム部の回転に従って第1の位置と第2の位置との間を揺動する揺動部材と、
前記揺動部材が前記第1の位置にあるか前記第2の位置にあるかを検出する検出部とを備えていることを特徴とするアブソリュートエンコーダ。
【請求項2】
前記揺動部材は、
前記第1カム部と摺動可能となっており、前記第1カム部との摺動に従って揺動する第1揺動部と、
一方側の端部において前記第1揺動部と接続しており、他方側の端部において前記第1揺動部の揺動に従って前記第1の位置と前記第2の位置との間を揺動するマグネットを有する第2揺動部とを備え、
前記検出部は、前記マグネットが前記第1の位置にあるか前記第2の位置にあるかを検出するホール検出器であることを特徴とする請求項記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項3】
前記第3従動歯車の回転に従って回転する第2カム部を更に備え、
前記揺動部材は、
平面視において前記第1カム部および前記第2カム部を前記第1揺動部との間で挟み込むように延在し、前記第2カム部と摺動可能となっており、前記第2カム部との摺動に従って揺動する第3揺動部と、
前記第1揺動部と前記第3揺動部とを互いに引き付ける弾性部材とを備えていることを特徴とする請求項記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項4】
主軸の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、
前記主軸の回転に従って回転する第1駆動歯車と、
前記第1駆動歯車と噛み合う第1従動歯車と、
前記第1従動歯車の回転に従って回転する第2駆動歯車と、
前記第2駆動歯車と噛み合う第2従動歯車と、
前記第2従動歯車の回転に従って回転する副軸ギアの回転数を特定する計数機構とを備え、
前記計数機構は、
前記第2従動歯車の回転に従って回転する第3駆動歯車と、
前記第3駆動歯車と噛み合う第3従動歯車と、
前記第3従動歯車の回転に従って回転する第1カム部と、
前記第1カム部の回転に従って第1の位置と第2の位置との間をスライド移動するスライド部材と、
前記スライド部材が前記第1の位置の場合にオフとなり、前記第2の位置の場合にオンとなるスイッチ部とを備えていることを特徴とするアブソリュートエンコーダ。
【請求項5】
前記主軸の回転角度を検知する第1角度センサと、
前記副軸ギアの回転角度を検知する第2角度センサとを更に備えていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項6】
前記第1従動歯車および前記第2駆動歯車が設けられる中間ギアを更に備え、
前記主軸の回転軸線は、前記中間ギアの回転軸線に対してねじれの位置にあり、前記第2従動歯車の回転軸線と平行に設けられていることを特徴とする請求項1または4記載のアブソリュートエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブソリュートエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の制御機械装置において、可動要素の位置や角度を検出するために用いられるロータリーエンコーダが知られている。このようなロータリーエンコーダには、相対的な位置又は角度を検出するインクリメンタル型のエンコーダと、絶対的な位置又は角度を検出するアブソリュート型のエンコーダとが存在している。このようなアブソリュート型のエンコーダとして、例えば、歯車機構を備えた磁気式エンコーダ装置と、1枚の回転ディスクを利用して構成された光学式エンコーダ装置とを備えたアブソリュートエンコーダが開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-24572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のアブソリュートエンコーダにおいては、メインシャフト(主軸)の複数回の回転にわたる回転量を特定するために、磁気式エンコーダ装置を適切に配置する必要がある。しかしながら、従来のアブソリュートエンコーダにおいて、アブソリュートエンコーダを小型化した場合には、磁気干渉などの影響を考慮するとメインシャフトの磁気式エンコーダ装置の他に磁気式エンコーダ装置やサブシャフト(副軸)を複数配置することができない。このため、サブシャフトを増やすことにより検出可能なメインシャフトの回転量を増やすことができないという問題がある。
【0005】
一方で、磁気式エンコーダ装置の角度センサの検出精度や減速ギアのバックラッシュ、温度特性などの影響を考慮すると、1つの角度センサによって検出可能なメインシャフト(主軸)の回転量には限界があり、このため、検出可能なメインシャフトの回転量を増やすことができないという問題がある。このように、従来のアブソリュートエンコーダに対しては、アブソリュートエンコーダを小型化した場合であっても検出可能なメインシャフトの回転量を増やすことができる構造が求められていた。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アブソリュートエンコーダを小型化した場合であっても検出可能な主軸の回転量を増やすことができるアブソリュートエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るアブソリュートエンコーダは、主軸の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、前記主軸の回転に従って回転する第1駆動歯車と、前記第1駆動歯車と噛み合う第1従動歯車と、前記第1従動歯車の回転に従って回転する第2駆動歯車と、前記第2駆動歯車と噛み合う第2従動歯車と、前記第2従動歯車の回転に従って回転する副軸ギアの回転数を特定する計数機構とを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係るアブソリュートエンコーダにおいて、前記計数機構は、前記第2従動歯車の回転に従って回転する第3駆動歯車と、前記第3駆動歯車と噛み合う第3従動歯車と、前記第3従動歯車の回転に従って回転する第1カム部と、前記第1カム部の回転に従って第1の位置と第2の位置との間を揺動する揺動部材と、前記揺動部材が前記第1の位置にあるか前記第2の位置にあるかを検出する検出部とを備えている。
【0009】
本発明の一態様に係るアブソリュートエンコーダにおいて、前記揺動部材は、前記第1カム部と摺動可能となっており、前記第1カム部との摺動に従って揺動する第1揺動部と、一方側の端部において前記第1揺動部と接続しており、他方側の端部において前記第1揺動部の揺動に従って前記第1の位置と前記第2の位置との間を揺動するマグネットを有する第2揺動部とを備え、前記検出部は、前記マグネットが前記第1の位置にあるか前記第2の位置にあるかを検出するホール検出器である。
【0010】
本発明の一態様に係るアブソリュートエンコーダにおいて、前記第3従動歯車の回転に従って回転する第2カム部を更に備え、前記揺動部材は、平面視において前記第1カム部および前記第2カム部を前記第1揺動部との間で挟み込むように延在し、前記第2カム部と摺動可能となっており、前記第2カム部との摺動に従って揺動する第3揺動部材と、前記第1揺動部と前記第3揺動部とを互いに引き付ける弾性部材とを備えている。
【0011】
本発明の一態様に係るアブソリュートエンコーダにおいて、前記計数機構は、前記第2従動歯車の回転に従って回転する第3駆動歯車と、前記第3駆動歯車と噛み合う第3従動歯車と、前記第3従動歯車の回転に従って回転する第1カム部と、前記第1カム部の回転に従って第1の位置と第2の位置との間をスライド移動するスライド部材と、前記スライド部材が前記第1の位置の場合にオフとなり、前記第2の位置の場合にオンとなるスイッチ部とを備えている。
【0012】
本発明の一態様に係るアブソリュートエンコーダにおいて、前記主軸の回転角度を検知する第1角度センサと、前記副軸の回転角度を検知する第2角度センサとを更に備えている。
【0013】
本発明の一態様に係るアブソリュートエンコーダにおいて、前記第1従動歯車および前記第2駆動歯車が設けられる中間ギアを更に備え、前記主軸の回転軸線は、前記中間ギアの回転軸線に対してねじれの位置にあり、前記第2従動歯車の回転軸線と平行に設けられている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るアブソリュートエンコーダによれば、アブソリュートエンコーダを小型化した場合であっても検出可能な主軸の回転量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダの構成を概略的に示す斜視図である。
図2図1に示すアブソリュートエンコーダの構成を、ケースを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
図3図2に示すアブソリュートエンコーダの構成を、基板、制御部およびコネクタを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
図4図3に示すアブソリュートエンコーダの構成において、別の角度から見た状態を概略的に示す斜視図である。
図5図4に示すアブソリュートエンコーダの構成を、モータを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
図6図5に示すアブソリュートエンコーダの構成を概略的に示す平面図である。
図7図1に示すアブソリュートエンコーダの構成において、モータを除いた状態で主軸ギアの中心を通り、かつ、中間ギアと直交する面で切断した状態を概略的に示す断面図である。
図8図7に示すアブソリュートエンコーダの構成において、マグネット、主軸ギアおよびモータの主軸を分解した状態を概略的に示す分解斜視図である。
図9図3に示すアブソリュートエンコーダの構成において、中間ギアの中心を通り、かつ、XY平面と平行な面で切断した状態を概略的に示す断面図である。
図10図6に示すアブソリュートエンコーダの構成において、中間ギアの中心を通り、かつ、XY平面と直交する面で切断した状態を概略的に示す部分断面図である。
図11図2に示すアブソリュートエンコーダの構成において、副軸ギアの中心を通り、かつ、中間ギアと直交する面で切断した状態を概略的に示す部分断面図である。
図12図11に示すアブソリュートエンコーダの構成において、マグネット、マグネットホルダ、副軸ギアおよびベアリングを分解した状態を概略的に示す分解斜視図である。
図13図2に示すアブソリュートエンコーダの構成において、副軸ギア、揺動カムおよび揺動部材軸の中心を通る面で切断した状態を概略的に示す断面図である。
図14図13に示すアブソリュートエンコーダの構成において、揺動カム軸および揺動カムを分解した状態を概略的に示す分解斜視図である。
図15図1に示すアブソリュートエンコーダの構成において、モータを除いた状態で、揺動部材軸およびマグネットの中心を通る面で切断した状態を概略的に示す断面図である。
図16図6に示すアブソリュートエンコーダの揺動カムおよび揺動部材の構成を概略的に示す部分平面図である。
図17図16に示すアブソリュートエンコーダの構成において、揺動部材軸、弾性部材、第3揺動部、第1揺動部および第2揺動部、マグネット並びにマグネットネジホルダを分解した状態を概略的に示す分解斜視図である。
図18図6に示すアブソリュートエンコーダの構成を、揺動部材を除いた状態で概略的に示す平面図である。
図19図19(a)は、図6に示すアブソリュートエンコーダの0番地における第1カム部に当接する第1揺動部および第2カム部に当接する第3揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図であり、図19(b)は、第1揺動部および第3揺動部の位置が図19(a)のときの第2揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図である。
図20図20(a)は、図6に示すアブソリュートエンコーダの25番地における第1カム部に当接する第1揺動部および第2カム部に当接する第3揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図であり、図20(b)は、第1揺動部および第3揺動部の位置が図20(a)のときの第2揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図である。
図21図21(a)は、図6に示すアブソリュートエンコーダの40番地における第1カム部に当接する第1揺動部および第2カム部に当接する第3揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図であり、図21(b)は、第1揺動部および第3揺動部の位置が図21(a)のときの第2揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図である。
図22図22(a)は、図6に示すアブソリュートエンコーダの44番地における第1カム部に当接する第1揺動部および第2カム部に当接する第3揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図であり、図22(b)は、第1揺動部および第3揺動部の位置が図22(a)のときの第2揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図である。
図23図23(a)は、図6に示すアブソリュートエンコーダの48番地における第1カム部に当接する第1揺動部および第2カム部に当接する第3揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図であり、図23(b)は、第1揺動部および第3揺動部の位置が図23(a)のときの第2揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図である。
図24図24(a)は、図6に示すアブソリュートエンコーダの50番地における第1カム部に当接する第1揺動部および第2カム部に当接する第3揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図であり、図24(b)は、第1揺動部および第3揺動部の位置が図24(a)のときの第2揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図である。
図25図25(a)は、図6に示すアブソリュートエンコーダの60番地における第1カム部に当接する第1揺動部および第2カム部に当接する第3揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図であり、図25(b)は、第1揺動部および第3揺動部の位置が図25(a)のときの第2揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図である。
図26図26(a)は、図6に示すアブソリュートエンコーダの80番地における第1カム部に当接する第1揺動部および第2カム部に当接する第3揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図であり、図26(b)は、第1揺動部および第3揺動部の位置が図26(a)のときの第2揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図である。
図27図27(a)は、図6に示すアブソリュートエンコーダの100番地における第1カム部に当接する第1揺動部および第2カム部に当接する第3揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図であり、図27(b)は、第1揺動部および第3揺動部の位置が図27(a)のときの第2揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図である。
図28図28(a)は、図6に示すアブソリュートエンコーダの106番地における第1カム部に当接する第1揺動部および第2カム部に当接する第3揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図であり、図28(b)は、第1揺動部および第3揺動部の位置が図28(a)のときの第2揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図である。
図29図29(a)は、図6に示すアブソリュートエンコーダの110番地における第1カム部に当接する第1揺動部および第2カム部に当接する第3揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図であり、図29(b)は、第1揺動部および第3揺動部の位置が図29(a)のときの第2揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図である。
図30図30(a)は、図6に示すアブソリュートエンコーダの120番地(=0番地)における第1カム部に当接する第1揺動部および第2カム部に当接する第3揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図であり、図30(b)は、第1揺動部および第3揺動部の位置が図30(a)のときの第2揺動部の位置を概略的に示す拡大平面図である。
図31図1に示すアブソリュートエンコーダの機能的構成を概略的に示すブロック図である。
図32図1に示すアブソリュートエンコーダの構成において、モータの主軸の回転数(=番地)とホール検出器Srの検出結果との関係を示すタイミングチャートである。
図33】本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダの変形例における計数機構のスライダ部材およびスイッチ部の構成を概略的に示す断面図である。
図34】本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダの変形例における計数機構のスライダ部材およびスイッチ部の構成を概略的に示す平面図である。
図35】本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダの変形例における計数機構の揺動カムおよび揺動部材の構成を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者は、アブソリュートエンコーダにおいて、主軸の複数回の回転(以下、複数回転という。)にわたる回転量(以下、主軸の回転量という。)を、主軸の回転に伴い減速回転する回転体の回転角度を取得することによって、特定し得ることを見出した。すなわち、回転体の回転角度を減速比で乗することにより、主軸の回転量を特定することができる。ここで、特定可能な主軸の回転量の範囲は、減速比に比例して増加する。例えば、減速比が100であれば、主軸100回転分の回転量を特定することができる。
【0017】
一方、必要な回転体の分解能は、減速比に比例して小さくなる。例えば、減速比が100であれば、主軸1回転あたり回転体に必要な分解能は360°/100=3.6°となり、±1.8°の検出精度が求められる。一方、減速比が60の場合、主軸1回転あたり回転体に必要な分解能は360°/60=6.0°となり、±3.0°の検出精度が求められる。この知見から、本発明者は、求められる検出精度を上げずに、特定可能な主軸の回転量を増加させることが可能なアブソリュートエンコーダの構成を案出した。以下、いくつかの実施の形態に基づき具体的な構成を説明する。
【0018】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。各実施形態、変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ100の構成を概略的に示す斜視図である。図2は、図1に示すアブソリュートエンコーダ100の構成を、ケース3を除いた状態で示す斜視図である。図1では、アブソリュートエンコーダ100のケース3および基板5が透過して示されており、図2では、アブソリュートエンコーダ100の基板5が透過して示されている。
【0020】
以下、XYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は水平な左右方向に対応し、Y軸方向は水平な前後方向に対応し、Z軸方向は鉛直な上下方向に対応する。Y軸方向およびZ軸方向はそれぞれX軸方向に直交する。X軸方向は左側あるいは右側と、Y軸方向は前側あるいは後側と、Z軸方向は上側あるいは下側と表記することがある。この図において、Z軸方向で上側から視た状態を平面視と、Y軸方向で前側から視た状態を正面視と、X軸方向で左右側から視た状態を側面視という。このような方向の表記はアブソリュートエンコーダ100の使用姿勢を制限するものではなく、アブソリュートエンコーダ100は任意の姿勢で使用されうる。
【0021】
アブソリュートエンコーダ100は、既述したように、モータ1の主軸1aの複数回転にわたる回転量を特定して出力するアブソリュート型のエンコーダである。本発明の実施の形態では、アブソリュートエンコーダ100はモータ1のZ軸方向の上側の端部に設けられている。本発明の実施の形態では、アブソリュートエンコーダ100は、平面視で略矩形状を有し、正面視および側面視で主軸1aの延在方向であるZ軸方向に薄い横長の矩形状を有している。つまり、アブソリュートエンコーダ100はZ軸方向に偏平な直方体形状を有している。
【0022】
アブソリュートエンコーダ100は内部構造を収容する中空角筒状のケース3を備えている。ケース3は、少なくともモータ1の主軸1aの一部と、主軸ギア20と、中間ギア22とを包囲する複数(例えば4つ)の外壁部3aを含んでいる。ケース3の外壁部3aの上側の端部に蓋部3bが固定されている。蓋部3bは、平面視で略矩形状を有し、Z軸方向に薄い板状の部材である。
【0023】
モータ1は、一例として、ステッピングモータやDCブラシレスモータであってもよい。一例として、モータ1は波動歯車装置などの減速機構を介して産業用などのロボットを駆動する駆動源として適用されてもよい。モータ1の主軸1aはZ軸方向の両側に突出している。アブソリュートエンコーダ100はモータ1の主軸1aの回転量をデジタル信号として出力する。
【0024】
モータ1の形状は、平面視で略矩形状を有し、Z軸方向においても略矩形状を有している。つまり、モータ1は略立方体形状を有している。平面視においてモータ1の外形を構成する4つの外壁部のそれぞれの長さは25mmであり、すなわち、モータ1の外形は、平面視で25mm角である。また、モータ1に設けられるアブソリュートエンコーダ100は、モータ1の外形形状に合わせて25mm角である。
【0025】
図1,2においては、基板5がケース3と共にアブソリュートエンコーダ100内部を覆うように設けられている。基板5は、平面視で略矩形状を有し、Z軸方向に薄い板状のプリント配線基板である。また、コネクタ70は基板5に接続されており、アブソリュートエンコーダ100と外部装置(不図示)を接続するためのものである。
【0026】
図3は、図2に示すアブソリュートエンコーダ100の構成を、基板5、制御部110およびコネクタ70を除いた状態で概略的に示す斜視図である。図4は、図3に示すアブソリュートエンコーダ100の構成を、別の角度から見た状態を概略的に示す斜視図である。図5は、図4に示すアブソリュートエンコーダ100の構成を、モータ1を除いた状態で概略的に示す斜視図である。図6は、図5に示すアブソリュートエンコーダ100の構成を概略的に示す平面図である。
【0027】
アブソリュートエンコーダ100は、モータ1の主軸1aの複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュート型のエンコーダである。アブソリュートエンコーダ100は、主軸ギア20と、第1ウォームギア部20h(第1駆動歯車)と、中間ギア22と、第1ウォームホイール部22d(第1従動歯車)と、第2ウォームギア部22e(第2駆動歯車)と、副軸ギア24と、第2ウォームホイール部24b(第2従動歯車)と、マグネットMpと、角度センサSpと、マグネットMqと、角度センサSqと、制御部110と、計数機構30とを含んでいる。
【0028】
モータ1の主軸1aは、モータ1の出力軸であり、アブソリュートエンコーダ100に回転が入力される入力軸である。主軸ギア20は、モータ1の主軸1aに固定され、主軸1aと一体にモータ1の軸受部材によって回転可能に支持される。第1ウォームギア部20hは、モータ1の主軸1aの回転に従って回転するように、主軸ギア20の外周に双方の中心軸が略一致するように設けられる。第1ウォームホイール部22dは中間ギア22に設けられ、第1ウォームホイール部22dは、第1ウォームギア部20hと噛み合い、第1ウォームギア部20hの回転に伴い回転するように設けられる。第1ウォームホイール部22dは、中間ギア22の外周に双方の中心軸が略一致するように設けられる。第1ウォームホイール部22dと第1ウォームギア部20hとの軸角は90°に設定される。
【0029】
第1ウォームホイール部22dの外径に特別な制限はないが、この図の例では、第1ウォームホイール部22dの外径は第1ウォームギア部20hの外径より小さく設定されている。これにより、アブソリュートエンコーダ100では、第1ウォームホイール部22dの外径が大きい場合に比べて、Z軸方向の寸法を小さく抑えることができる。
【0030】
第2ウォームギア部22eは中間ギア22に設けられ、第1ウォームホイール部22dの回転に従って回転する。第2ウォームギア部22eは、中間ギア22の外周に双方の中心軸が略一致するように設けられる。第2ウォームホイール部24bは、第2ウォームギア部22eと噛み合い、第2ウォームギア部22eの回転に伴い回転するように設けられる。第2ウォームホイール部24bは副軸ギア24に設けられ、副軸ギア24の外周に双方の中心軸が略一致するように設けられる。第2ウォームホイール部24bと第2ウォームギア部22eとの軸角は90°に設定される。第2ウォームホイール部24bの回転軸線は、第1ウォームギア部20hの回転軸線と平行に設けられる。
【0031】
角度センサSqは、第2ウォームホイール部24b、すなわち副軸ギア24の回転角度を検知する。マグネットMqは、副軸ギア24の上面に双方の中心軸が略一致するように固定される。マグネットMqの上面には副軸ギア24の回転軸線に対して垂直な方向に2極の磁極が設けられる。角度センサSqは、その下面が隙間を介してマグネットMqの上面にZ軸方向に対向するように設けられる。
【0032】
一例として、角度センサSqは、アブソリュートエンコーダ100の基板支持部材(図示せず)や後述するベース2などに支持された基板5に固定される。角度センサSqは、マグネットMqの磁極を検知し、磁極に応じてマグネットMqの回転角度を特定し、制御部110に出力する。制御部110は、角度センサSqから取得した回転角度に基づき副軸ギア24の回転角度から主軸1aの回転量を特定して出力する。制御部110は、一例としてモータ1の主軸1aの回転量をデジタル信号として出力するようにしてもよい。
【0033】
マグネットMpは、主軸ギア20の上面に双方の中心軸が略一致するように固定される。マグネットMpの上面には主軸ギア20の回転軸線に対して垂直な方向に2極の磁極が設けられる。角度センサSpは、主軸ギア20の回転角度を検知する。角度センサSpは、その下面が隙間を介してマグネットMpの上面にZ軸方向に対向するように設けられる。
【0034】
一例として、角度センサSpは、角度センサSqと同面に角度センサSqが固定された基板5に固定されている。角度センサSpは、マグネットMpの磁極を検知し、磁極に応じて主軸1aの回転角度であるマグネットMpの回転角度を特定し、制御部110に出力する。制御部110は、角度センサSpから取得した回転角度に基づき主軸ギア20の回転角度から主軸1aの回転角度を特定する。主軸1aの回転角度の分解能は角度センサSpの分解能に対応する。
【0035】
このように構成されたアブソリュートエンコーダ100は、角度センサSqの検知した回転角度に応じて主軸1aの複数回の回転にわたる回転量を特定するとともに、角度センサSpの検知した回転角度に応じて主軸1aの回転角度を特定することができる。
【0036】
制御部110は、角度センサSp、Sqから取得した各回転角度およびホール検出器Srから取得した副軸ギア24の回転量に基づき主軸1aの回転量を特定する。
【0037】
計数機構30は、第2ウォームホイール部24bの回転に従って回転する副軸ギア24の回転量を特定する。計数機構30は、第1平ギア部31(第3駆動歯車)と、揺動カム33と、第2平ギア部32(第3従動歯車)と、第1カム部33a(後述)と、揺動部材35と、検出部40(後述)とを含んでいる。第1平ギア部31は、第2ウォームホイール部24bと双方の中心軸が略一致するように副軸ギア24の外周に設けられる。第1平ギア部31は、第2ウォームホイール部24bの回転に従って一体に回転する。
【0038】
第2平ギア部32は、第1平ギア部31と噛み合い、第1平ギア部31の回転に従って回転するように設けられる。第2平ギア部32は、揺動カム33の外周に双方の中心軸が略一致するように設けられる。第2平ギア部32の回転軸線は、第1ウォームギア部20hの回転軸線および第1平ギア部31の回転軸線と平行に設けられる。第1カム部33aは、第2平ギア部32の回転に従って回転する。第1カム部33aは、揺動カム33に双方の中心軸が略一致するように設けられる。すなわち、第1カム部33aおよび第2平ギア部32の回転軸線は、揺動カム33の回転軸線と略一致するように設けられる。
【0039】
揺動部材35は、第1カム部33aの回転に従って第1の位置と第2の位置との間を揺動する。揺動部材35は、略鋏状の部材である。揺動部材35は、第1揺動部36と、第2揺動部37とを含んでいる。第1揺動部36は、第1カム部33aと摺動可能となっており、第1カム部33aとの摺動に従って揺動する。第2揺動部37は、一方側の端部である左側端37aにおいて第1揺動部36と一体に形成されており、他方側の端部である右側端37bにおいて第1揺動部36の揺動に従って第1の位置L1(後述)と第2の位置L2(後述)との間を揺動するマグネットMr(後述)を有している。
【0040】
検出部40は、揺動部材35が第1の位置L1にあるか第2の位置L2にあるかを検出する。検出部40は、マグネットMrが第1の位置L1にあるか第2の位置L2にあるかを検出するホール検出器Srである。一例として、ホール検出器Srは、アブソリュートエンコーダ100のベース2の底部2bに固定されている。ホール検出器Srは、マグネットMrの位置に応じてマグネットMrが第1の位置L1にあるか第2の位置L2にあるかを検出し、制御部110に出力する。なお、ホール検出器Srに限らず、他の磁気センサを用いてもよい。
【0041】
マグネットMrは、第1の位置L1においてホール検出器Srの検出素子の位置SrCとマグネットMrの中心軸MrCとが略一致するように、第2揺動部37の右側端37bに固定される。また、マグネットMrは、第2の位置L2においてマグネットMrの中心軸MrCがホール検出器Srの検出素子の位置SrCよりも後側にずれている。
【0042】
ホール検出器Srは、マグネットMrが第1の位置L1に位置している場合にマグネットMrからの磁束を検知し、マグネットMrが第2の位置L2に位置している場合にマグネットMrからの磁束を検知しない。ホール検出器Srは、マグネットMrが第1の位置L1に位置している場合に、その上面が隙間を介してマグネットMrの下面にZ軸方向において対向するように設けられており、マグネットMrの中心軸MrCとホール検出器Srの検出素子の位置SrCとがZ軸に平行な同一直線上に位置している。
【0043】
主軸1aに設けられた主軸ギア20を構成する第1ウォームギア部20hの条数は3であり、第1ウォームホイール部22dの歯数は18である。つまり、第1ウォームギア部20hと第1ウォームホイール部22dは、減速比が18/3=6の第1変速機構11を構成する。第1ウォームギア部20hが6回転するとき第1ウォームホイール部22dは1回転する。第1ウォームホイール部22dと第2ウォームギア部22eは同軸上に設けられて中間ギア22を構成しており、一体となって回転することから、第1ウォームギア部20hが6回転するとき、すなわち主軸1aおよび主軸ギア20が6回転するとき、中間ギア22は1回転する。
【0044】
第2ウォームギア部22eの条数は2であり、第2ウォームホイール部24bの歯数は20である。つまり、第2ウォームギア部22eと第2ウォームホイール部24bは減速比が20/2=10の第2変速機構15を構成する。第2ウォームギア部22eが10回転するとき第2ウォームホイール部24bは1回転する。第2ウォームホイール部24bは副軸ギア24、マグネットホルダ25、およびマグネットMqと一体となって回転する事から、中間ギア22を構成する第2ウォームギア部22eが10回転するとき、マグネットMqは1回転する。以上より、主軸1aが60回転すると、中間ギア22が10回転し、副軸ギア24およびマグネットMqが1回転する。つまり、角度センサSqは、主軸1aの60回転分の回転量を特定することができる。
【0045】
第2ウォームホイール部24bと同軸に設けられた第1平ギア部31の歯数は17であり、第2平ギア部32の歯数は34である。つまり、第1平ギア部31と第2平ギア部32は減速比が34/17=2の第3変速機構17を構成する。第1平ギア部31が2回転するとき第2平ギア部32は1回転する。第2平ギア部32と第1カム部33aは同軸上に設けられて揺動カム33を構成しており、一体となって回転することから、第2平ギア部32の回転によって第1カム部33aを回転させる。第1カム部33aが1回転するとき、揺動部材35は1回揺動する、つまり、揺動部材35は1回往復する。したがって、揺動部材35の第2揺動部37の右側端27bに設けられたマグネットMrは、第1平ギア部31が1回転すると、第2平ギア部32(第1カム部33a)が半回転し、第1の位置L1から第2の位置L2に移動する。その後、さらに第1平ギア部31が1回転すると、第2平ギア部32(第1カム部33a)が半回転し、マグネットMrは第1の位置L1に戻る。つまり、第1平ギア部31が1回転すると、マグネットMrは、ホール検出器Srから一旦離れる方向に移動し、その後、第1平ギア部31がさらに半回転すると、マグネットMrは、ホール検出器Srに近づく方向に移動する。
【0046】
これらの計数機構30の作用により、副軸ギア24が1回転すると揺動カム33が半回転し、マグネットMrは第1の位置L1から第2の位置L2に移動する。その後、副軸ギア24がさらに1回転するとマグネットMrは第2の位置L2から第1の位置L1に戻る。つまり、ホール検出器Srは、副軸ギア24が1回転目であるか2回転目であるかを後述する図32のタイミングチャートに基づき特定することができる。マグネットMrが第1の位置L1にある場合、副軸ギア24は1回転目であり、マグネットMrが第2の位置L2にある場合、副軸ギア24は2回転目である。そして、制御部110は、角度センサSqから取得した回転角度およびホール検出器Srから取得した副軸ギア24の回転量に基づき、主軸1aの回転量を特定することができる。したがって、アブソリュートエンコーダ100は、これらの計数機構30の作用により、主軸1aの回転量を特定することができる。
【0047】
このように構成された本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ100は、主軸1aの角度センサSrの他に副軸ギア24の角度センサSqしか配置できないような小型のアブソリュートエンコーダ100であっても、計数機構30の作用により検出可能な主軸1aの回転量を2倍に増やすことができる。このため、アブソリュートエンコーダ100では、アブソリュートエンコーダ100を小型化した場合であっても検出可能な主軸1aの回転量の範囲を一層大きくすることができる。
【0048】
なお、計数機構30のホール検出器Srは、角度センサSpおよび角度センサSqのように回転角度を検出するものではないため、他のマグネットなどからの磁気の影響を比較的受けにくくなっている。また、アブソリュートエンコーダ100では、計数機構30の作用により主軸1aの検出可能な回転量を増やしているため、角度センサの数を増やすことなく、また、1つの角度センサあたりの主軸1aの検出可能な回転量を増やすこともなく、さらに、計数機構30により、各回転体、各ギアの減速比を増やす必要がないため、要求される検出精度をあげることなく、総合的に検出可能な主軸1aの回転量を増やすことができる。
【0049】
以下、アブソリュートエンコーダ100の構成について具体的に説明する。
【0050】
図1~6に示すように、アブソリュートエンコーダ100は、ベース2と、ケース3と、基板5とを含んでいる。ベース2は、各回転体、各歯車および各部材を回転可能に支持する基台である。ベース2は、底部2bと、複数(例えば2個)の支柱2cとを含んでいる。ベース2に配設される支柱2cは基板5を支持する。基板5は、主に角度センサSp、Sqおよび制御部110を有している。
【0051】
底部2bは、アブソリュートエンコーダ100のモータ1側に面する板状の部分であり、X軸方向およびY軸方向に延在している。支柱2cは、底部2bからZ軸方向でモータ1から遠ざかる方向に突出する略円柱状の部分である。ベース2の底部2bには、中空角筒状のケース3が複数の固定具(図示せず)によって固定される。固定具は例えばねじであってもよい。支柱2cの突出端には、基板5が例えばねじ(図示せず)を用いて固定される。
【0052】
また、アブソリュートエンコーダ100は、主軸ギア20と、第1ウォームギア部20hと、中間ギア22と、第1ウォームホイール部22dと、第2ウォームギア部22eと、副軸ギア24と、第2ウォームホイール部24bと、マグネットMp、Mqと、角度センサSp、Sqと、制御部110と、計数機構30とを含んでいる。
【0053】
続いて、アブソリュートエンコーダ100が備える複数の部品のそれぞれについて具体的に説明する。
【0054】
(主軸ギア)
図7は、図1に示すアブソリュートエンコーダの構成において、モータ1を除いた状態で主軸ギア20の中心を通り、かつ、中間ギア22と直交する面で切断した状態を概略的に示す断面図である。図8は、図7に示すアブソリュートエンコーダ100の構成において、マグネットMp、主軸ギア20およびモータ1の主軸1aを分解した状態を概略的に示す分解斜視図である。
【0055】
図7に示すように、主軸ギア20は、モータ1の主軸1aと同軸に設けられる筒状部材である。主軸ギア20は、筒状の第1筒状部20aと、第1筒状部20aと同軸に第1筒状部20aのZ軸方向上側に設けられる筒状の第2筒状部20bとを備えている。
【0056】
また、主軸ギア20は、第2筒状部20bの径方向内側に設けられる第1筒状部20aと第2筒状部20bをつなぐ連通部20cと、第2筒状部20bの径方向外側に設けられる第1ウォームギア部20hとを備えている。このように連通部20cを形成することで、連通部20cが、モータ1の主軸1aに主軸ギア20を圧入する際の空気の逃げ道として機能する。
【0057】
連通部20cの内径は、第1筒状部20aの内径および第2筒状部20bの内径よりも小さくなっている。連通部20cのZ軸方向下側の端面である底面20dと、第1筒状部20aの内周面とに囲まれる空間は、主軸ギア20をモータ1の主軸1aの端部に固定するための圧入部20eである。圧入部20eは、第1筒状部20aの軸方向下側の端部からZ軸方向上側に向かって窪む窪みである。圧入部20eには、モータ1の主軸1aが圧入され、主軸ギア20はモータ1の主軸1aと一体となって回転する。第1ウォームギア部20hは、主軸ギア20のギア部である。
【0058】
連通部20cのZ軸方向上側の端面である底面20fと、第2筒状部20bの内周面とに囲まれる空間は、マグネットMpを固定するためのマグネット保持部20gである。マグネット保持部20gは、第2筒状部20bのZ軸方向上側の端部からZ軸方向下側に向かって窪む窪みである。マグネット保持部20gには、マグネットMpが圧入されている。マグネット保持部20gに圧入されたマグネットMpは、外周面が第2筒状部20bの内周面に接し、下面が底面20fに接する。これにより、マグネットMpのZ軸方向の位置決めがなされると共に、Z軸方向と直交する方向の位置決めがなされる。マグネットMpのZ軸方向は、モータ1の主軸1aの中心軸方向に等しい。
【0059】
第1ウォームギア部20hは、螺旋状に形成された歯部により構成され、中間ギア22の第1ウォームホイール部22dと噛み合う。第1ウォームホイール部22dは、中間ギア22のギア部である。第1ウォームギア部20hは、例えば、ポリアセタール樹脂で形成されている。第1ウォームギア部20hは、第1駆動歯車の一例である。
【0060】
図8に示すように、マグネットMpは、主軸ギア20のマグネット保持部20gの内部に圧入される略円柱状の永久磁石であり、上面および下面を有している。上面は、角度センサSqの表面から一定距離を隔てて、向き合っている。下面は、主軸ギア20のマグネット保持部20gの底面20fと接し、主軸ギア20の中心軸GmC方向における位置(Z軸方向における位置)を規定している。
【0061】
マグネットMpの中心軸MpC(マグネットMpの中心を表す軸または磁極の境界の中心を通る軸)は、主軸ギア20の中心軸GmCおよびモータ1の主軸1aの中心軸MoCと一致している。このように各中心軸を一致させることで、より高精度に回転角又は回転量を検出することが可能となっている。
【0062】
なお、本発明の実施の形態においては、マグネットMpの2つの磁極(N/S)は、マグネットMpの中心軸MpCに対して垂直な平面(XY平面)内で隣り合うように形成されることが望ましい。これにより、さらに回転角又は回転量の検出精度が向上する。なお、マグネットMpは、例えばフェライト系、Nd(ネオジム)-Fe(鉄)-B(ホウ素)系などの磁性材料から形成される。マグネットMpは、例えば樹脂バインダを含むゴム磁石、ボンド磁石などであってもよい。
【0063】
(中間ギア)
図9は、図3に示すアブソリュートエンコーダ100の構成において、中間ギア22の中心を通り、かつ、XY平面と平行な面で切断した状態を概略的に示す断面図である。図10は、図6に示すアブソリュートエンコーダの構成において、中間ギア22の中心を通り、かつ、XY平面と直交する面で切断した状態を概略的に示す部分断面図である。
【0064】
図9,10に示すように、中間ギア22は、ベース2の底部2bのZ軸方向上側において、中間ギア軸23によって回転自在に支持されている。中間ギア軸23は、XY平面に平行である。また、中間ギア軸23は、平面視でX軸方向およびY軸方向のそれぞれとは平行ではない。すなわち、中間ギア軸23は、X軸方向およびY軸方向のそれぞれが伸びる方向に対して斜めとなっている。中間ギア軸23が、X軸方向およびY軸方向のそれぞれが伸びる方向に対して斜めであることは、中間ギア軸23がベース2の外周面に対して斜めに伸びていることを意味している。
【0065】
図9に示すように、ベース2の外周面は、YZ平面に平行な右側外周面2dおよび左側外周面2eと、XZ平面に平行で右側外周面2dおよび左側外周面2eに隣接する後側外周面2fおよび前側外周面2gとにより構成される。右側外周面2dは、ベース2のX軸方向右側に設けられる側面である。左側外周面2eは、ベース2のX軸方向左側に設けられる側面である。後側外周面2fは、ベース2のY軸方向後側に設けられる側面である。前側外周面2gは、ベース2のY軸方向前側に設けられる側面である。
【0066】
アブソリュートエンコーダ100を平面視した寸法は、一例として25mm角のモータ1の寸法に合わせられている。そのため、XY平面に平行に配置される中間ギア22が、ベース2の外周面に対して斜めに伸びるように設けられることによって、水平方向へのアブソリュートエンコーダ100の寸法を小さくすることができる。なお、水平方向とは、モータ1の主軸1aの中心軸と直交する方向に等しく、またXY平面と平行な方向に等しい方向である。
【0067】
中間ギア22は、第1ウォームホイール部22d、第2ウォームギア部22e、右側摺動部22a、左側摺動部22bおよび貫通孔22cを有している。中間ギア22は、中間ギア軸23に沿って貫通する貫通孔22cの内部に、中間ギア軸23が挿通される円筒状の部材である。貫通孔22cは、中間ギア22の内周面によって囲まれる空間である。貫通孔22cには、中間ギア軸23が摺動可能に挿通され、中間ギア22は、中間ギア軸23によって回転自在に支持される。中間ギア22は、金属、樹脂などで一体的に成型された部材であり、ここでは一例として、ポリアセタール樹脂で形成されている。
【0068】
第1ウォームホイール部22dは、主軸ギア20の第1ウォームギア部20hが噛み合う歯車である。第1ウォームホイール部22dは、第1従動歯車の一例であり、かつ、中間ギア22のギア部である。第1ウォームホイール部22dは、ベース2の底部2bの中央寄りの箇所に設けられている。また、第1ウォームホイール部22dは、中間ギア22の円筒部の外周部に設けられる複数の歯によって構成される。
【0069】
第1ウォームホイール部22dの外径は、第1ウォームギア部20hの外径よりも小さくなっている。第1ウォームホイール部22dの中心軸は、ベース2の底部2bと平行であるため、第1ウォームホイール部22dの外径が小さくなることにより、アブソリュートエンコーダ100のZ軸方向(高さ方向)における小型化が可能である。
【0070】
第2ウォームギア部22eは、螺旋状に形成された歯部によって構成され、第1ウォームホイール部22dと同軸上に隣接して設けられる。また、第2ウォームギア部22eは、中間ギア22の円筒部の外周部に設けられている。第2ウォームギア部22eが、副軸ギア24に設けられた第2ウォームホイール部24bと噛み合うことによって、中間ギア22の回転力が副軸ギア24に伝達される。
【0071】
第2ウォームギア部22eは、第2駆動歯車の一例であり、かつ、中間ギア22のギア部である。第2ウォームホイール部24bは、副軸ギア24のギア部である。第2ウォームホイール部24bの中心軸と第2ウォームギア部22eの中心軸とは、第2ウォームホイール24bの中心軸に垂直、かつ、第2ウォームギア部22eの中心軸に垂直な方向から見たとき、互いに直交している。
【0072】
第2ウォームギア部22eの外径は、アブソリュートエンコーダ100のZ軸方向(高さ方向)における小型化を可能にするために、可能な範囲で小さい値に設定されている。
【0073】
中間ギア22の右側摺動部22aは、中間ギア22の一端側、すなわち中間ギア22のX軸方向右側に設けられている。中間ギア22の右側摺動部22aは、板バネ51の一端51aに当接されている。板バネ51は、弾性部材の一例であり、例えば金属製である。
【0074】
板バネ51の一端51aは、板バネ51から二股状に分かれた2つの分岐体で構成されている(例えば図4を参照)。板バネ51の一端51aを構成する2つの分岐体の間には、中間ギア軸23の直径より大きな隙間が形成されている。そのため、2つの分岐体は、中間ギア軸23と接触しないように中間ギア軸23を跨いでいる。板バネ51の他端51bは、ベース2の壁部52にねじ53によって固定される。
【0075】
板バネ51の一端51aは、中間ギア22が組み付けられた後に中間ギア22の右側摺動部22aと向き合う位置に設けられる。中間ギア22の右側摺動部22aは、板バネ51の一端51aに当接し押圧されることによって、中間ギア軸23の中心軸に沿って、中間ギア軸23の右側端23aから中間ギア軸23の左側端23bに向かう方向に付勢される。この状態で中間ギア22が回転したとき、中間ギア22の右側摺動部22aは、板バネ51の一端51aと当接しながら摺動する。
【0076】
中間ギア22の左側摺動部22bは、中間ギア22の他端側、すなわち中間ギア22のX軸方向左側に設けられている。中間ギア22の左側摺動部22bは、壁部54に当接されている。壁部54は、中間ギア22の位置を規定している。中間ギア22は、板バネ51によって、中間ギア軸23の右側端23aから中間ギア軸23の左側端23bに向かう方向に付勢されているため、中間ギア22の左側摺動部22bも同方向に付勢されて壁部54に当接する。その結果、付勢力が壁部54に伝えられ、中間ギア22は、中間ギア軸23の右側端23aから中間ギア軸23の左側端23bに向かう方向に安定して支持される。この状態で中間ギア22が回転したとき、中間ギア22の左側摺動部22bは、壁部54と当接しながら摺動する。
【0077】
壁部54および壁部55は、中間ギア軸23を介して中間ギア22を回転自在に保持する保持部の一例である。壁部54は、壁部55と対をなすように、ベース2の底部2bからZ軸方向でモータ1から遠ざかる方向に突出する略直方体状の部分である。壁部54は、平面視で、X軸方向左側かつY軸方向後側に設けられている。また、壁部55は、平面視で、X軸方向右側かつY軸方向中央付近に設けられている。
【0078】
壁部54、壁部55および中間ギア軸23は、中間ギア22を回転自在に保持する保持部として機能する。中間ギア軸23は、円柱棒状の部材であり、右側端23aおよび左側端23bを有している。中間ギア軸23の左側端23bは、ベース2の壁部54に形成された孔に圧入された上で、固定具54aより固定されている。
【0079】
一方、中間ギア軸23の右側端23aは、壁部55に形成された孔に挿入された上で固定具55aより位置決めされていればよく、中間ギア軸23の右側端23aが壁部55の孔に圧入される必要はない。このように中間ギア軸23の右側端23aが壁部55の孔に圧入ではなく挿入されることによって、中間ギア軸23の右側端23aが壁部55の孔に圧入される場合に比べて、中間ギア軸23の組み立てが容易になる。
【0080】
このように、中間ギア22は、第1ウォームホイール部22dおよび第2ウォームギア部22eを備えており、主軸ギア20の回転軸線は、中間ギア22の回転軸線に対してねじれの位置にあり、第2ウォームホイール部24bの回転軸線と平行に設けられている。この構成によれば、角度センサSqの検出結果に応じて主軸ギア20の複数回の回転にわたる回転量を特定することができる。中間ギア22の回転軸線が、主軸ギア20および副軸ギア24の回転軸線に対してねじれの位置にあり正面視で直交するため、アブソリュートエンコーダ100は屈曲した伝達経路を構成して薄型化することができる。
【0081】
(副軸ギア)
図11は、図2に示すアブソリュートエンコーダ100の構成において、副軸ギア24の中心を通り、かつ、中間ギア22と直交する面で切断した状態を概略的に示す部分断面図である。図12は、図11に示すアブソリュートエンコーダ100の構成において、マグネットMq、マグネットホルダ25、副軸ギア24およびベアリング2iを分解した状態を概略的に示す分解斜視図である。
【0082】
図11に示すように、副軸ギア24は、マグネットホルダ25の軸部25bに圧入されて固定される円筒状の部材である。副軸ギア24は、第2ウォームホイール部24bと、計数機構30の第1平ギア部31と、貫通孔24aとを備えている。副軸ギア24は、金属又は樹脂で一体的に成型された部材であり、ここでは一例として、ポリアセタール樹脂で形成されている。
【0083】
第2ウォームホイール部24bは、中間ギア22の第2ウォームギア部22eが噛み合う歯車である。第2ウォームホイール部24bは、第2従動歯車の一例である。第2ウォームホイール部24bは、副軸ギア24の上側の円筒部の外周部に設けられる複数の歯によって構成される。中間ギア22が回転することによって、中間ギア22の回転力は、中間ギア22の第2ウォームギア部22eと第2ウォームホイール部24bを介して、副軸ギア24に伝達される。
【0084】
第1平ギア部31は、平歯状に形成された歯部によって構成され、第2ウォームホイール部24bの下側に第2ウォームホイール部24bと同軸上に隣接して設けられる。また、第1平ギア部31は、副軸ギア24の下側の円筒部の外周部に設けられている。副軸ギア24の下側の円筒部の外周部の半径は、副軸ギア24の上側の円筒部の外周部よりも小さくなっている。
【0085】
第1平ギア部31が、揺動カム33の第2平ギア部32と噛み合うことによって、副軸ギア24の回転力が揺動カム33に伝達される。第1平ギア部31は、第3駆動歯車の一例であり、かつ、副軸ギア24のギア部である。第2平ギア部32は、揺動カム33のギア部である。第2平ギア部32の中心軸と第1平ギア部31の中心軸とは、互いにZ軸方向に平行に延在している。
【0086】
貫通孔24aは、円筒状の副軸ギア24の中心軸に沿って貫通する孔である。貫通孔24aには、マグネットホルダ25の軸部25bが圧入され、副軸ギア24はマグネットホルダ25と一体となって回転する。
【0087】
マグネットホルダ25は、マグネット保持部25a、軸部25bを有している。マグネットホルダ25は、金属又は樹脂で一体的に成型された部材であり、ここでは一例として、非磁性のステンレス鋼で形成されている。ベース2に形成されたベアリングホルダ部2hの内周面に、2つのベアリング2iの外輪が圧入されている。マグネットホルダ25の軸部25bは円柱状の部材である。軸部25bは、副軸ギア24の貫通孔24aに圧入されており、軸部25bの下部は、2つのベアリング2iの内輪に挿入されている。したがって、マグネットホルダ25は、2つのベアリング2iによってベース2に対して軸支され、副軸ギア24と一体となって回転する。
【0088】
また、マグネットホルダ25の上端にはマグネット保持部25aが設けられる。マグネット保持部25aは、有底円筒状の部材である。マグネット保持部25aは、マグネットホルダ25の上端面から下側に向かって窪む窪みを有している。マグネットMqの外周面は、マグネット保持部25aの内周面に接している。これにより、マグネット保持部25aにマグネットMqが固定されている。
【0089】
ベース2に形成されたベアリングホルダ部2hに配設された2つのベアリング2iによってマグネットホルダ25の軸部25bが軸支されることで、マグネットホルダ25の傾きを防止することができる。そして、2つのベアリング2iは、軸部25bのZ軸方向においてできるだけ距離を離して配置すると、よりマグネットホルダ6の傾きを防止する効果が大きくなる。
【0090】
図12に示すように、マグネットMqは、マグネットホルダ25のマグネット保持部25aの内部に圧入される略円柱状の永久磁石であり、上面および下面を有している。マグネットMqの上面は、角度センサSpの下面から一定距離を隔てて、向き合っている。マグネットMqの中心軸MqC(マグネットMqの中心を表す軸又は磁極の境界の中心を通る軸)は、マグネットホルダ25の中心軸SC、副軸ギア24の中心軸GsCおよびベアリング2iの中心軸BCと一致している。このように各中心軸を一致させることで、より高精度に回転角又は回転量を検出することが可能となっている。
【0091】
なお、本発明の実施の形態においては、マグネットMqの2つの磁極(N/S)は、マグネットMqの中心軸MqCに対して垂直な平面(XY平面)内で隣り合うように形成されることが望ましい。これにより、さらに回転角又は回転量の検出精度が向上する。なお、マグネットMqは、例えばフェライト系、Nd(ネオジム)-Fe(鉄)-B(ホウ素)系などの磁性材料から形成される。マグネットMqは、例えば樹脂バインダを含むゴム磁石、ボンド磁石などであってもよい。
【0092】
(揺動カム)
図13は、図2に示すアブソリュートエンコーダ100の構成において、副軸ギア24、揺動カム33および揺動部材軸42の中心を通る面で切断した状態を概略的に示す断面図である。図14は、図13に示すアブソリュートエンコーダ100の構成において、揺動カム軸34および揺動カム33を分解した状態を概略的に示す分解斜視図である。
【0093】
図13,14に示すように、揺動カム33は、揺動カム軸34軸支されて回転する円筒状の部材である。揺動カム33は、第2平ギア部32と、第1カム部33aと、第2カム部33bと、貫通孔33cとを備えている。揺動カム33は、金属又は樹脂で一体的に成型された部材であり、ここでは一例として、ポリアセタール樹脂で形成されている。
【0094】
第2平ギア部32は、副軸ギア24の第1平ギア部31が噛み合う歯車である。第2平ギア部32は、第3従動歯車の一例である。第2平ギア部32は、揺動カム33の下側の円筒部の外周部に設けられる複数の平歯によって構成される。副軸ギア24が回転することによって、副軸ギア24の回転力は、副軸ギア24の第1平ギア部31と第2平ギア部32を介して、揺動カム33に伝達される。
【0095】
第1カム部33aは、第2平ギア部32の回転に従って回転する。第1カム部33aは、略扇状に形成された扇状部によって構成され、第2平ギア部32の上側に第2平ギア部32と同軸上に隣接して設けられる。また、第1カム部33aは、揺動カム33の第1カム部33aの外周部に摺動面33dを有している。第1カム部33aの扇状部の外周部の半径は、第2平ギア部32の円筒部の外周部よりも小さくなっている。第1カム部33aが、揺動部材35の第1揺動部36と摺動することによって、揺動カム33の回転力が揺動部材35の第1揺動部36に伝達される。
【0096】
第2カム部33bは、第2平ギア部32の回転に従って回転する。第2カム部33bは、第1カム部33aと異なる形状の略扇状に形成された扇状部によって構成され、第1カム部33aの上側に第1カム部33aと同軸上に隣接して設けられる。また、第2カム部33bは、揺動カム33の第2カム部33bの外周部に摺動面33eを有している。第2カム部33bの扇状部の外周部の半径は、第1カム部33aの扇状部の外周部の半径の外周部よりも小さくなっている。第2カム部33bが、揺動部材35の第3揺動部38と摺動することによって、揺動カム33の回転力が揺動部材35の第3揺動部38に伝達される。
【0097】
貫通孔33cは、揺動カム33の中心軸に沿って貫通する円筒状の孔である。貫通孔33cには、揺動カム軸34に挿入されている。揺動カム軸34は、金属又は樹脂により形成された円柱棒状部材であり、ここでは一例として、非磁性のステンレス鋼で形成されている。揺動カム軸34の下側端34aは、ベース2に形成された揺動カム軸ホルダ部2jの内周面に圧入されて固定されている。揺動カム33は、揺動カム軸34の上側端34bにおいて、固定具34cよりZ軸方向に移動しないように制限されている。従って、揺動カム軸34は、揺動カム軸ホルダ部2jによってベース2に対して軸支され、揺動カム33は揺動カム軸34の中心軸周りに回転する。
【0098】
(揺動部材)
図13は、図2に示すアブソリュートエンコーダ100の構成において、副軸ギア24、揺動カム33および揺動部材軸42の中心を通る面で切断した状態を概略的に示す断面図である。図15は、図1に示すアブソリュートエンコーダ100の構成において、モータ1を除いた状態で揺動部材軸42およびマグネットMrの中心を通る面で切断した状態を概略的に示す断面図である。
【0099】
図16は、図6に示すアブソリュートエンコーダ100の揺動カム33および揺動部材35の構成を概略的に示す拡大平面図である。図17は、図16に示すアブソリュートエンコーダ100の構成において、揺動部材軸42、弾性部材39、第3揺動部38、第1揺動部36および第2揺動部37、マグネットMr並びにマグネットネジホルダ41を分解した状態を概略的に示す分解斜視図である。
【0100】
図13,15~17に示すように、揺動部材35は、揺動部材軸42に挿入されて揺動される略鋏状の部材である。揺動部材35は、第1揺動部36と、第2揺動部37と、第3揺動部38と、弾性部材39と、マグネットMrとを備えている。第1揺動部36は、第1カム部33aと摺動可能となっており、第1カム部33aとの摺動に従って揺動する。
【0101】
第2揺動部37は、左側端37aにおいて第1揺動部36へと延びており、右側端37bにおいて第1揺動部36の揺動に従って第1の位置L1と第2の位置L2との間を揺動するマグネットMrを有している。第3揺動部38は、平面視において第1カム部33aおよび第2カム部33bを第1揺動部36との間で挟み込むように延在し、第2カム部33bと摺動可能となっており、第2カム部33bとの摺動に従って揺動する。弾性部材39は、第1揺動部36と第3揺動部38とを互いに引き付ける。
【0102】
具体的に、第1揺動部36は、揺動カム33の第1カム部33aが摺動するための略矩形状の棒状部材である。第1揺動部36は、前後方向において斜めに延在している。第1揺動部36の後側端36aには、第1カム部33aの摺動面33dが摺動するための摺動面36bが第1揺動部36のX軸方向右側の側面に設けられている。また、第1揺動部36の後側端36aには、第1揺動部36の上面からZ軸方向上側に向かって突出する略円柱状の部分である、弾性部材39を取り付けるための弾性部材取付部36cが設けられている。
【0103】
第1揺動部36の前側端36dには、第2揺動部37がX軸方向右側に向かって延在している。第1揺動部36は、第1揺動部36の前側端36dにおいて第2揺動部37の左側端37aと金属又は樹脂で一体的に成型されて略L字状の部材として形成されている。第1揺動部36および第2揺動部37は、ここでは一例として、ポリアセタール樹脂で形成されている。第2揺動部37は、第1揺動部36の左右方向の揺動に従って前後方向に揺動する略矩形状の棒状部材である。
【0104】
第2揺動部37の右側端37bには、Z軸方向下側にマグネットMrを有し、外周面にネジ部を有するマグネットネジホルダ41と、Z軸方向に沿って貫通する円筒状の孔であり、内周面にマグネットネジホルダ41と螺合するねじ溝部を有するネジ孔37cが設けられている。マグネットネジホルダ41は、ネジ孔37cに螺合されている。
【0105】
このため、マグネットネジホルダ41を回転させるとマグネットネジホルダ41がネジ孔37cに螺合し、マグネットネジホルダ41はZ軸方向に移動する。マグネットMrがZ軸方向に移動することで、マグネットMrとホール検出器Srとの距離を調整することができ、ホール検出器Srに加えられる磁束の強さを変更することができる。これにより、ホール検出器SrがマグネットMrを検出する閾値を調整することができる。
【0106】
第2揺動部37の左側端37aには、Z軸方向に沿って貫通する円筒状の孔である貫通孔37dが形成されている。貫通孔37dは、揺動部材軸42に挿入されている。
【0107】
マグネットMrは、マグネットネジホルダ41の下側の窪みに圧入される略円柱状の永久磁石であり、上面および下面を有している。マグネットMrの下面は、後述するホール検出器Srの上面から一定距離を隔てて、向き合っている。マグネットMrの中心軸MrC(マグネットMrの中心を表す軸)は、マグネットネジホルダ41の中心軸MsC、ネジ孔37cの中心軸ShCおよびホール検出器Srの中心軸SrCと一致している。このように各中心軸を一致させることで、より高精度に回転角又は回転量を検出することが可能となっている。
【0108】
なお、本発明の実施の形態においては、マグネットMrは、例えばフェライト系、Nd(ネオジム)-Fe(鉄)-B(ホウ素)系などの磁性材料から形成される。マグネットMrは、例えば樹脂バインダを含むゴム磁石、ボンド磁石などであってもよい。ホール検出器SrによるマグネットMrの検出は、角度センサSp,SqによるマグネットMp,Mqの検出よりも検出精度が求められないため、小型で磁束密度の低いマグネットを使用することができる。このため、磁気干渉などの影響を抑えながらモータ1の主軸1aの検出可能な回転量を増やすことができる。
【0109】
第3揺動部38は、揺動カム33の第2カム部33bが摺動するための略矩形状の湾曲した棒状部材である。第3揺動部38は、前後方向において斜めに延在している。第3揺動部38の後側端38aには、第2カム部33bの摺動面33eが摺動するための摺動面38bが第3揺動部38のX軸方向左側の側面に設けられている。
【0110】
また、第3揺動部38の前後方向における中央部分には、第3揺動部38の上面からZ軸方向上側に向かって突出する略円柱状の部分である、弾性部材39を取り付けるための弾性部材取付部38cが設けられている。第3揺動部38の前側端38dには、Z軸方向に沿って貫通する円筒状の孔である貫通孔38eが形成されている。貫通孔38eは、第1揺動部36および第2揺動部37の上側において揺動部材軸42に挿入されている。
【0111】
揺動部材軸42は、金属又は樹脂により形成された円柱棒状部材であり、ここでは一例として、非磁性のステンレス鋼で形成されている。揺動部材軸42の下側端42aは、ベース2に形成された揺動部材軸ホルダ部2kの内周面に圧入されて固定されている。第1揺動部36、第2揺動部37および第3揺動部38は、揺動部材軸42の上側端42bにおいて、固定具42cよりZ軸方向に移動しないように制限されている。したがって、揺動部材軸42は、揺動部材軸ホルダ部2kによってベース2に対して軸支され、第1揺動部36、第2揺動部37および第3揺動部38は、揺動部材軸42の中心軸周りに揺動する。
【0112】
弾性部材39は、左右方向において第1揺動部36と第3揺動部38との間に配置されている。弾性部材39は、例えば引っ張りばねであり、弾性部材39の一端が第1揺動部36の弾性部材取付部36cに、弾性部材39の他端が第3揺動部38の弾性部材取付部38cに取り付けられており、弾性部材取付部36cおよび弾性部材取付部38cを左右方向に互いに近づく方向に引っ張っている。
【0113】
これにより、第1揺動部36および第3揺動部38は、左右方向に互いに近づく方向に付勢される。これにより、第1揺動部36の追従性を向上させ、揺動部材35の高精度な運動が可能となる。特に、揺動カム33が高速回転した場合であっても、揺動部材35の追従性を確保することができる。なお、第1揺動部36と第3揺動部38との間に配置された弾性部材39の長さは、常に一定となっており、弾性部材39の付勢力も常に一定となっている。
【0114】
図18は、図6に示すアブソリュートエンコーダ100の構成を、揺動部材35を除いた状態で概略的に示す平面図である。検出部40は、揺動部材35が第1の位置L1にあるか第2の位置L2にあるかを検出する。検出部40は、マグネットMrが第1の位置L1にあるか第2の位置L2にあるかを検出するホール検出器Srである。
【0115】
具体的に、ホール検出器Srは、アブソリュートエンコーダ100のベース2の底部2bに基板に実装された状態で固定されている。ホール検出器Srは、X軸方向右側かつY軸方向前側に配置されており、マグネットMrの下面と、一定距離を隔てて、向き合っている。ホール検出器Srの中心軸SrCは、ホール検出器Srの中心よりも前側にずれている。ホール検出器Srの中心軸SrCは、第1の位置L1においてマグネットMrの中心軸MrCと一致している。ホール検出器Srは、マグネットMrが第1の位置L1に位置している場合にマグネットMrを検知し、マグネットMrが第2の位置L2に位置している場合にマグネットMrを検知しない。
【0116】
続いて、アブソリュートエンコーダ100の揺動カム33および揺動部材35の動作について具体的に説明する。
【0117】
図19(a)~図30(a)は、図6に示すアブソリュートエンコーダの0~120番地における第1カム部33aに当接する第1揺動部36および第2カム部33bに当接する第3揺動部38の位置を概略的に示す拡大平面図である。例えば、0番地は主軸の回転数が0回転目であり、ホール検出器Srの中心軸SrCとマグネットMrの中心軸MrCが一致する位置となり、例えば50番地は主軸の回転数が50回転目であり、50番地を境にホール検出器Srからの信号が反転するである。図19(b)~図30(b)は、第1揺動部36および第3揺動部38の位置が図19(a)~図30(a)のとき第2揺動部37の位置を概略的に示す拡大平面図である。なお、図19~30においては、揺動カム33および揺動部材35の動作を確認するために、弾性部材39が除かれて示されている。また、図19~30においては、マグネットMrの動作を確認するために、マグネットMrが除かれてマグネットMrの中心軸MrCのみが示されている。
【0118】
上述したように、アブソリュートエンコーダ100は、主軸1aが60回転すると、中間ギア22が10回転し、副軸ギア24が1回転する。また、アブソリュートエンコーダ100は、副軸ギア24が2回転するとき揺動カム33が1回転し、揺動部材35が1回往復してマグネットMrが第1の位置L1から第2の位置L2に移動し、その後、第2の位置L2から第1の位置L1に戻る。したがって、アブソリュートエンコーダ100は、主軸1aの120回転分の回転量を特定することができ、これらの回転量における各ギアおよび揺動部材35の位置を0~120番地として示すことができる。
【0119】
図19は、アブソリュートエンコーダ100の0番地における第1カム部33aに当接する第1揺動部36と、第2カム部33bに当接する揺動ギア33および揺動部材35の位置を示しており、主軸1aが0回転のときの揺動カム33および揺動部材35の位置を示している。すなわち、図19は、揺動カム33および揺動部材35の基準位置を示している。このとき、図19(b)に示すように、マグネットMrの中心軸MrCとホール検出器Srの中心軸SrCとが第1の位置L1において略一致している。
【0120】
図20(a)~図21(a)に示すように、揺動カム33が0番地から25番地、40番地に移動すると、揺動カム33が右回りに回転する。このとき、揺動カム33の第2カム部33bの摺動面33eが揺動部材35の第3揺動部38の摺動面38bを摺動すると共に、揺動カム33の第1カム部33aが揺動部材35の第1揺動部36の摺動面36bを摺動する。ここで、揺動部材35の第1揺動部36および第3揺動部38の位置は変わらず、揺動部材35の第2揺動部37の位置も変わらない。したがって、図20(b)~図21(b)においては、マグネットMrの中心軸MrCとホール検出器Srの中心軸SrCとが第1の位置L1において略一致したままである。
【0121】
図22(a)~図24(a)に示すように、揺動カム33が40番地から44番地、48番地、50番地に移動すると、揺動カム33が更に右回りに回転する。このとき、揺動部材35の第1揺動部36の摺動面36bが揺動カム33の第1カム部33aを押圧し、揺動部材35の第1揺動部36が揺動部材軸42周りに左回りに回動する。第1揺動部36が揺動部材軸42周りに左回りに回動すると、弾性部材39の付勢力により揺動部材35の第3揺動部38が揺動部材軸42周りに左回りに回動して第3揺動部38の摺動面38bが揺動カム33の第2カム部33bを押圧する。また、第1揺動部36が揺動部材軸42周りに左回りに回動すると、第2揺動部37が揺動部材軸42周りに左回りに回動する。したがって、図22(b)~図24(b)においては、マグネットMrの中心軸MrCが第1の位置L1から第2の位置L2に向かって後側に移動する。
【0122】
図25(a)に示すように、揺動カム33が50番地から60番地に移動すると、揺動カム33が更に右回りに回転する。このとき、揺動部材35の第1揺動部36の摺動面36bが揺動カム33の第1カム部33aを更に押圧し、揺動部材35の第1揺動部36が揺動部材軸42周りに更に左回りに回動する。第1揺動部36が揺動部材軸42周りに更に左回りに回動すると、弾性部材39の付勢力により揺動部材35の第3揺動部38が揺動部材軸42周りに更に左回りに回動して第3揺動部38の摺動面38bが揺動カム33の第2カム部33bを更に押圧する。また、第1揺動部36が揺動部材軸42周りに更に左回りに回動すると、第2揺動部37が揺動部材軸42周りに更に左回りに回動する。したがって、図25(b)においては、マグネットMrの中心軸MrCが第2の位置L2に移動する。
【0123】
図26(a)~図27(a)に示すように、揺動カム33が60番地から80番地、100番地に移動すると、揺動カム33が更に右回りに回転する。このとき、揺動カム33の第1カム部33aの摺動面33dが揺動部材35の第1揺動部36の摺動面36bを摺動すると共に、揺動カム33の第2カム部33bが揺動部材35の第3揺動部38の摺動面38bを摺動する。ここで、揺動部材35の第1揺動部36および第3揺動部38の位置は変わらず、揺動部材35の第2揺動部37の位置も変わらない。したがって、図26(b)~図27(b)においては、マグネットMrの中心軸MrCが第2の位置L2に留まったままである。
【0124】
図28(a)~図29(a)に示すように、揺動カム33が100番地から106番地、110番地に移動すると、揺動カム33が更に右回りに回転する。このとき、揺動部材35の第3揺動部38の摺動面38bが揺動カム33の第2カム部33bを押圧し、揺動部材35の第3揺動部38が揺動部材軸42周りに右回りに回動する。第3揺動部38が揺動部材軸42周りに右回りに回動すると、弾性部材39の付勢力により揺動部材35の第1揺動部36が揺動部材軸42周りに右回りに回動して揺動部材35の第1揺動部36の摺動面36bが揺動カム33の第1カム部33aを押圧する。第1揺動部36が揺動部材軸42周りに右回りに回動すると、第2揺動部37が揺動部材軸42周りに右回りに回動する。したがって、図28(b)~図29(b)においては、マグネットMrの中心軸MrCが第2の位置L2から第1の位置L1に向かって前側に移動する。
【0125】
図30(a)に示すように、揺動カム33が110番地から120番地に移動すると、揺動カム33が更に右回りに回転して0番地に戻る。このとき、揺動部材35の第3揺動部38の摺動面38bが揺動カム33の第2カム部33bを更に押圧し、揺動部材35の第3揺動部38が揺動部材軸42周りに更に右回りに回動する。第3揺動部38が揺動部材軸42周りに更に右回りに回動すると、弾性部材39の付勢力により揺動部材35の第1揺動部36が揺動部材軸42周りに更に右回りに回動して揺動部材35の第1揺動部36の摺動面36bが揺動カム33の第1カム部33aを更に押圧する。第1揺動部36が揺動部材軸42周りに更に右回りに回動すると、第2揺動部37が揺動部材軸42周りに更に右回りに回動する。したがって、図30(b)においては、マグネットMrの中心軸MrCが第1の位置L1に移動し、マグネットMrの中心軸MrCとホール検出器Srの中心軸SrCとが第1の位置L1において略一致している。
【0126】
なお、本発明の実施の形態においては、揺動カム33が左回りに回転してもよく、揺動カム33が左回りした場合においても、上述の場合と同様に揺動部材35を揺動部材軸42周りに回動してマグネットMrの中心軸MrCを移動することができる。
【0127】
続いて、アブソリュートエンコーダ100の制御部110の構成について具体的に説明する。
【0128】
(制御部)
図31は、図1に示すアブソリュートエンコーダ100の機能的構成を概略的に示すブロック図である。図31に示す制御部110の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組み合わせによって種々の形態で実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0129】
制御部110は、回転角取得部111、回転角取得部112、マグネット有無検出部113、テーブル処理部114、回転量特定部115および出力部116を備えている。回転角取得部111は、角度センサSpから出力された信号をもとに主軸ギア20の回転角度Apを取得する。回転角度Apは、主軸ギア20の回転角度を示す角度情報である。
【0130】
回転角取得部112は、角度センサSqから出力された信号をもとに副軸ギア24の回転角度Aqを取得する。回転角度Aqは、副軸ギア24の回転角度を示す角度情報である。マグネット有無検出部113は、ホール検出器Srから出力された信号をもとにマグネットMrの検出情報Arを取得する。検出情報Arは、マグネットMrが検出されているか否かの情報である。
【0131】
テーブル処理部114は、回転角度Aqと、検出情報Arと、回転角度Aqおよび検出情報Arに対応する主軸ギア20の回転数とを格納した対応関係テーブル114aを参照して、取得した回転角度Aqおよび検出情報Arに対応する主軸ギア20の回転数を特定する。回転量特定部115は、テーブル処理部114によって特定された主軸ギア20の回転数と、取得した回転角度Aqおよび検出情報Arとに応じて主軸ギア20の複数回転にわたる回転量を特定する。出力部116は、特定された主軸ギア20の複数回転にわたる回転量を、当該回転量を示す情報に変換して出力する。
【0132】
図32は、図1に示すアブソリュートエンコーダ100の構成において、モータ1の主軸1aの回転数(番地)とホール検出器Srの検出結果との関係を示すタイミングチャートである。このタイミングチャートは、便宜上、副軸ギア24が2回転、すなわち主軸1aが120回転した場合のマグネット有無検出部113から出力される電圧の変化を模式的に示したものである。図32に示すように、副軸ギア24の角度センサSqから求めた主軸1aの回転数が0~39回転となった場合、制御部110のテーブル処理部114は、ホール検出器Srの検出結果であるマグネット有無検出部113から電圧値LOの検出情報Arを受信すると、回転角度Apに対応する主軸1aの回転数をそのまま主軸1aの回転数として特定する。これを図32における主軸1aの回転数が0~39番地となる領域R1とする。
【0133】
一方、副軸ギア24の角度センサSqから求めた主軸1aの回転数が0~39回転となった場合でも、制御部110のテーブル処理部114がホール検出器Srの検出結果であるマグネット有無検出部113から電圧値HIの検出情報Arを受信した場合は、回転角度Aqに対応する主軸1aの回転数に60回転分加算した回転数を、主軸1aの回転数として特定する。これを主軸1aの回転数が60~99番地となる領域R3とする。なお、制御部110のテーブル処理部114は、副軸ギア24の角度センサSqから求めた主軸1aの回転数が40~59回転となった場合、マグネット有無検出部113からの電圧値がホール検出器Srの感度とマグネットMrの強さ、ギア等の機械的な精度、電気的なスレッショルドレベルの設定により不確定となり、電圧値LoからHIへの反転位置が変化することがあるため、マグネット有無検出部113から電圧値の検出情報Arは考慮せず、回転角度Aqに対応する主軸1aの回転数をそのまま主軸1aの回転数として特定する。これを主軸1aの回転数が40~59番地となる領域R2とする。
【0134】
また、制御部110のテーブル処理部114は、主軸1aの回転数が100番地を超える図32に示す領域R4内である場合、上述した領域R2と同様の理由によりマグネット有無検出部113からの電圧値が不確定となるため、主軸1aの回転数が図32に示す領域R4については、使用しない領域となっている。以上のように、誤判定を避けるため、副軸ギア24の角度センサSqから求めた主軸1aの回転数が0~39回転まで、すなわち実際の主軸1aの回転数が0~99回転となる範囲のみを使うように設定している。
【0135】
このように、制御部110は図32のタイミングチャートから、99番地、すなわち主軸の99回転分までを安定して判定可能となる。したがって、アブソリュートエンコーダ100は、これらの計数機構30の作用により、主軸1aの99回転分の回転量と359.99°(360°未満)の回転角度を特定することができる。なお、図32のタイミングチャートにおける領域R1~R4の範囲はホール検出器Srの感度やマグネットMrの強さなどに応じて適宜設定することが可能であり、検出可能な回転数についても99回転に限らず、任意に設定することができる。
【0136】
なお、上述したように、マグネットネジホルダ41およびネジ孔37cによりマグネットMrとホール検出器Srとの距離を調整することで、ホール検出器Srの電圧値の閾値を調整することができる。
【0137】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題および効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0138】
例えば、アブソリュートエンコーダ100として、揺動部材35およびホール検出器Srを有している場合を一例に本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、図33,34に示すように、スライド部材60およびスイッチ部61を有していてもよい。
【0139】
この場合、スライド部材60は、揺動カム33の第1カム部33aの回転に従って第1の位置L1と第2の位置L2との間をスライド移動する。そして、スイッチ部61は、スライド部材60が第1の位置L1の場合にオフとなり、第2の位置L2の場合にオンとなる。アブソリュートエンコーダ100の変形例では、スライド部材60およびスイッチ部61によって、アブソリュートエンコーダ100を小型化した場合に検出可能な主軸1aの回転量の範囲を一層大きくすることができる。
【0140】
また、アブソリュートエンコーダ100として、揺動部材35が第1揺動部36、第2揺動部37および第3揺動部38を有している場合を一例に本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、図35に示すように、揺動部材35は種々の形態であってもよい。また、スイッチ部61をマグネットとホール検出器やリードリレーなどに置き換えることも可能である。
【0141】
例えば、図35に示すように、揺動部材35は矩形状の棒状部材であり、左右方向における中央部分に設けられた揺動部材軸42により揺動自在に軸支されている。揺動部材35は、揺動カム33第1カム部33aの回転に従って第1の位置L1と第2の位置L2との間を揺動し、ホール検出器Sr(図示せず)は、揺動部材35のマグネットMrが第1の位置L1にあるか第2の位置L2にあるかを検出する。このような構成であっても、アブソリュートエンコーダ100を小型化した場合に検出可能な主軸1aの回転量の範囲を一層大きくすることができる。
【符号の説明】
【0142】
1…モータ、1a…主軸、2…ベース、2b…底部、2c…支柱、2d…右側外周面、2e…左側外周面、2f…後側外周面、2g…前側外周面、2h…ベアリングホルダ部、2i…ベアリング、2j…揺動カム軸ホルダ部、2k…揺動部材軸ホルダ部、3…ケース、3a…外壁部、3b…蓋部、5…基板、11…第1変速機構、15…第2変速機構、17…第3変速機構、20…主軸ギア、20a…第1筒状部、20b…第2筒状部、20c…連通部、20d…底面、20e…圧入部、20f…底面、20g…マグネット保持部、20h…第1ウォームギア部、22…中間ギア、22a…右側摺動部、22b…左側摺動部、22c…貫通孔、22d…第1ウォームホイール部、22e…第2ウォームギア部、23…中間ギア軸、23a…右側端、23b…左側端、24…副軸ギア、24a…貫通孔、24b…第2ウォームホイール部、25…マグネットホルダ、25a…マグネット保持部、25b…軸部、30…計数機構、31…第1平ギア部、32…第2平ギア部、33…揺動カム、33a…第1カム部、33b…第2カム部、33c…貫通孔、33d,33e…摺動面、34…揺動カム軸、34a…下側端、34b…上側端、34c…固定具、35…揺動部材、36…第1揺動部、36a…後側端、36b…摺動面、36c…弾性部材取付部、36d…前側端、37…第2揺動部、37a…左側端、37b…右側端、37c…ネジ孔、37d…貫通孔、38…第3揺動部、38a…後側端、38b…摺動面、38c…弾性部材取付部、38d…前側端、38e…貫通孔、39…弾性部材、40…検出部、41…マグネットネジホルダ、42…揺動部材軸、42a…下側端、42b…上側端、51…板バネ、51a…一端、51b…他端、52,54,55…壁部、53…ねじ、54,55…壁部、54a,55a…固定具、60…スライド部材、61…スイッチ部、100…アブソリュートエンコーダ、110…制御部、111,112…回転角取得部、113…マグネット有無検出部、114…テーブル処理部、114a…対応関係テーブル、115…回転量特定部、116…出力部、Ap,Aq…角度情報、Ar…検出情報、BC…ベアリングの中心軸、GmC…主軸ギアの中心軸、GsC…副軸ギアの中心軸、L1…第1の位置、L2…第2の位置、MoC…モータの主軸の中心軸、Mp,Mq,Mr…マグネット、MpC,MqC,MrC…マグネットの中心軸、MsC…マグネットネジホルダの中心軸、R1~R4…領域、SC…マグネットホルダの中心軸、ShC…ネジ孔の中心軸、Sp,Sq…角度センサ、Sr…ホール検出器、SrC…ホール検出器の中心軸
図1
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