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  • 特許-空調ダクトおよび空調ダクトの施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】空調ダクトおよび空調ダクトの施工方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20230414BHJP
   F16L 59/147 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
F24F13/02 H
F16L59/147
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019070440
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2020169752
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】595015926
【氏名又は名称】アスク・サンシンエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519118315
【氏名又は名称】アスク沖縄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(72)【発明者】
【氏名】後藤 久美
(72)【発明者】
【氏名】柏木 俊之
(72)【発明者】
【氏名】松岡 勝男
(72)【発明者】
【氏名】仲原 匡平
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-096570(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/056280(JP,A1)
【文献】再公表特許第2009/057779(JP,A1)
【文献】特開2007-212123(JP,A)
【文献】登録実用新案第3210492(JP,U)
【文献】特開2014-181494(JP,A)
【文献】特開平05-196196(JP,A)
【文献】特開2001-133027(JP,A)
【文献】特開2000-171085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
F16L 59/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置される空調ダクトであって、
角形のダクト本体と、
前記ダクト本体の外面を覆う発泡ゴム製の複数の断熱材と、
前記複数の断熱材の外面と、前記断熱材が隣接する前記断熱材と接触している接触部の外面とを覆うようにシリコーン樹脂を塗布してなるシリコーン樹脂膜と、
を備える空調ダクト。
【請求項2】
前記ダクト本体の上部に、前記シリコーン樹脂膜を覆う状態で保護板が取り付けられている
請求項1に記載の空調ダクト。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂膜は、アクリル樹脂を含有する膜である
請求項1または2に記載の空調ダクト。
【請求項4】
屋外に設置される空調ダクトの施工方法であって、
角形のダクト本体の外面に発泡ゴム製の複数の断熱材を貼り付けることにより、前記ダクト本体の外面を前記複数の断熱材によって覆う工程と、
前記複数の断熱材の外面にシリコーンコーティング材を塗布することにより、前記断熱材の外面と、前記断熱材が隣接する前記断熱材と接触している接触部の外面とをシリコーン樹脂膜によって覆う工程と、
を含む空調ダクトの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調ダクトに関し、特に、屋外に設置される空調ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
空調用設備の一つに空調ダクトがある。空調ダクトは、暖かい空気や冷たい空気を流すために用いられる。空調ダクトには、熱損失や結露を防ぐために断熱材が設けられることが多い。たとえば、特許文献1には、グラスウールなどのマット状繊維質保温材を主材とし、この保温材の一面に固着面外被材を、他面に化粧面外被材を貼着してなる空調ダクト用断熱材が記載されている。また、特許文献1には、角形のダクト本体に接着剤を用いて固着面外被材を貼り付けるとともに、固着面外被材の外側にマット状繊維質保温材と化粧面外被材とを積層し、空調ダクト用断熱材の合わせ目や繋ぎ目を目貼りテープで留めた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-171085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、アルミ粘着テープやアルミガラスクロス粘着テープなどの目貼りテープを使って断熱材の合わせ目や繋ぎ目を塞いでいるため、空調ダクトの振動に起因して目貼りテープの貼り付け部分にひび割れが生じやすいという欠点があった。また、断熱材の合わせ面や繋ぎ目ごとに目貼りテープを貼り付ける必要があるため、施工に手間がかかるという欠点もあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、ダクト自体の振動に起因するひび割れを抑制することができるとともに、断熱材の合わせ目や継ぎ目にテープを貼り付ける手間を省くことができる空調ダクトとその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、屋外に設置される空調ダクトであって、角形のダクト本体と、ダクト本体の外面を覆う発泡ゴム製の複数の断熱材と、複数の断熱材の外面と、断熱材が隣接する断熱材と接触している接触部の外面とを覆うようにシリコーン樹脂を塗布してなるシリコーン樹脂膜と、を備える。
【0007】
本発明に係る空調ダクトにおいては、ダクト本体の上部に、シリコーン樹脂膜を覆う状態で保護板が取り付けられていてもよい。
【0008】
本発明に係る空調ダクトにおいて、シリコーン樹脂膜は、アクリル樹脂を含有する膜であってもよい。
【0009】
本発明は、屋外に設置される空調ダクトの施工方法であって、角形のダクト本体の外面に発泡ゴム製の複数の断熱材を貼り付けることにより、ダクト本体の外面を複数の断熱材によって覆う工程と、複数の断熱材の外面にシリコーンコーティング材を塗布することにより、断熱材の外面と、断熱材が隣接する断熱材と接触している接触部の外面とをシリコーン樹脂膜によって覆う工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ダクト自体の振動に起因するひび割れを抑制することができるとともに、断熱材の合わせ目や継ぎ目にテープを貼り付ける手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る空調ダクトの縦断面図である。
図2図1の空調ダクトのII-II断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る空調ダクトの縦断面図である。
図4図3の空調ダクトのIV-IV断面図である。
図5】、図4のA部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る空調ダクトの縦断面図であり、図2は、図1の空調ダクトのII-II断面図である。
図1および図2に示すように、空調ダクト10は、角形のダクト本体11を備えている。角形のダクト本体とは、ダクト内が中空になっていて、ダクト中心軸C(図1参照)と直交する方向にダクト本体を断面したときの開口形状が多角形であるものをいう。本第1実施形態において、ダクト中心軸Cと直交する方向にダクト本体11を断面したときの開口形状が図2に示すように四角形になっている。
【0014】
空調ダクト10は、屋外に設置して用いられるものである。ダクト本体11は、耐候性を有する金属製の板によって構成されている。耐候性を有する金属製の板としては、たとえば、亜鉛メッキ鋼板、ガルバニウム鋼板、ステンレス鋼板、高耐食性メッキ鋼板などを挙げることができる。
【0015】
ダクト本体11の端部にはフランジ部12が一体に形成されている。空調ダクト10は、複数のダクト本体11を継手部分13で連結することにより、互いに連通する空気流路14を形成している。継手部分13では、フランジ部12同士を軸線Jの位置で突き合わせた状態でダクト本体11が連結されている。空気流路14は、空調用の空気や換気用の空気などを流すための流路であって、ダクト本体11の内面11bによって区画されている。
【0016】
一方、ダクト本体11の外面11aには接着層16を介して断熱材17が貼り付けられている。接着層16は接着剤によって形成されるもので、この接着剤の接着力によってダクト本体11の外面11aに断熱材17が貼り付けられている。断熱材17は、空気流路14を暖かい空気や冷たい空気が流れるときの熱損失および結露を防ぐために、ダクト本体11の外面11aを覆っている。断熱材17は、発泡ゴム製の断熱材である。発泡ゴムは、断熱性および弾性が高いという性質を有するとともに、透湿性および保水性が低いという性質を有する。断熱材17を構成する発泡ゴムとしては、たとえば、ニトリルゴム系のゴムスポンジを挙げることができる。また、接着層16を形成する接着剤としては、たとえば、湿気硬化形接着剤、触媒添加形接着剤、嫌気形接着剤を挙げることができる。接着剤の具体例としては、コニシ株式会社製のスーパーGライト(商品名)、アイカ工業株式会社製のエコエコボンド(登録商標)を挙げることができる。
【0017】
断熱材17は、図2に示すように、ダクト本体11の外周を4つの断熱材17-1,17-2,17-3,17-4で囲むように配置されている。4つの断熱材17-1,17-2,17-3,17-4のうち、断熱材17-1,17-4はダクト本体11の上下の2辺に対応して配置され、断熱材17-2,17-3はダクト本体11の左右の2辺に対応して配置されている。これにより、ダクト本体11の外面11aは、4つの断熱材17-1,17-2,17-3,17-4によって隙間なく覆われている。また、断熱材17は、ダクト本体11のフランジ部12を覆うように、継手部分13にも設けられている。
【0018】
断熱材17の外面17aはシリコーン樹脂膜18によって覆われている。シリコーン樹脂膜18は、シリコーンを主原料とする塗布膜である。本第1実施形態において、シリコーン樹脂膜18は、シリコーンを主原料とし、このシリコーンの配合率が100%またはそれに近いシリコーンコーティング材を用いて形成されている。シリコーン樹脂膜18は、断熱材17の外面17aをすべて覆っている。
【0019】
シリコーン樹脂膜18は、断熱材17を保護するための膜であって、耐久性、耐紫外線性、耐熱性、耐低温性、防水性、撥水性、透湿性および弾性を有する。シリコーン樹脂膜18の耐久性は、シリコーン樹脂膜18の性能を長期間維持にわたって維持する効果を奏する。シリコーン樹脂膜18の耐紫外線性は、紫外線による断熱材17の劣化を抑制する効果を奏する。シリコーン樹脂膜18の耐熱性および耐低温性は、温度の変化に対してシリコーン樹脂膜18の機能を維持する効果を奏する。シリコーン樹脂膜18の防水性および撥水性は、断熱材17への浸水を抑制する効果を奏する。シリコーン樹脂膜18の透湿性は、シリコーン樹脂膜18の剥がれを抑制する効果を奏する。シリコーン樹脂膜18の弾性は、断熱材17に対するシリコーン樹脂膜18の付着性を高める効果と、シリコーン樹脂膜18のひび割れを抑制する効果とを奏する。
【0020】
続いて、本発明の第1実施形態に係る空調ダクトの施工方法について説明する。
まず、空調ダクトの設置場所へとダクト本体11を搬送する前、または搬送した後に、ダクト本体11の外面11aに接着層16を介して断熱材17を貼り付ける。これにより、ダクト本体11の外面11aを断熱材17によって覆う。このとき、発泡ゴム製の断熱材17を用いれば、発泡ゴム自体の弾性により、ダクト本体11の外面11aに接着層16を介して断熱材17を隙間なく密着させることができる。このため、断熱材17による結露抑制の効果を高めることができる。
【0021】
次に、空調ダクトの設置場所において、断熱材17付きのダクト本体11を所定の位置に取り付ける。たとえば、空調ダクトの設置場所にダクト取付用の架台(図示せず)が設置されている場合は、この架台にダクト本体11を取り付ける。このとき、複数のダクト本体11を継手部分13で連結させることにより、所定の長さを有する空気流路14を形成する。また、継手部分13にも断熱材17を貼り付けておく。
【0022】
次に、断熱材17の外面17aにシリコーンコーティング材を塗布することにより、断熱材17の外面17aをシリコーン樹脂膜18によって覆う。シリコーンコーティング材の塗布方法としては、たとえば、スプレーガンを用いて塗る方法、刷毛を用いて塗る方法、または、ローラを用いて塗る方法を挙げることができる。また、ここで挙げた3つの塗布方法のうち少なくとも2つの塗布方法を併用することもできる。
以上で、空調ダクト10の施工が完了する。
【0023】
本発明の第1実施形態に係る空調ダクト10においては、ダクト本体11の外面11aを発泡ゴム製の断熱材17によって覆い、さらにその断熱材17の外面17aをシリコーン樹脂膜18によって覆う構成を採用している。これにより、空調ダクト10が振動した場合に、この振動に追従してシリコーン樹脂膜18が伸縮する。このため、空調ダクト10自体の振動に起因するひび割れを抑制することができる。また、断熱材17の外面17aをシリコーン樹脂膜18で覆うことにより、断熱材17の合わせ目や継ぎ目にテープを貼り付ける必要がない。このため、貼り付けの手間を省くことができる。
【0024】
なお、本第1実施形態においては、断熱材17付きのダクト本体11を取り付けた後に、断熱材17の外面17aにシリコーンコーティング材を塗布してシリコーン樹脂膜18を形成することとしたが、シリコーンコーティング材の塗布を複数回に分けて行ってもよい。たとえば、ダクト本体11を取り付けた後ではシリコーンコーティング材の塗布が困難な部分が存在する場合は、ダクト本体11を取り付ける前にその部分にシリコーンコーティング材を塗布し、ダクト本体11を取り付けた後に残りの部分にシリコーンコーティング材を塗布してもよい。
【0025】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。本第2実施形態においては、上記第1実施形態の場合と同様の部分、または、対応する部分に同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
図3は、本発明の第2実施形態に係る空調ダクトの縦断面図である。また、図4は、図3の空調ダクトのIV-IV断面図であり、図5は、図4のA部を拡大した図である。
図3図5に示すように、ダクト本体11の上部には、継手部分13を含めて、保護板21が取り付けられている。保護板21は、シリコーン樹脂膜18を覆う状態でダクト本体11の上部に取り付けられている。保護板21は、好ましくは、金属製の板によって構成される。具体的には、保護板21は、たとえば、厚さが0.3mm以上0.4mm以下のカラー鉄板によって構成される。カラー鉄板は、亜鉛鉄板の表面に塗料を塗布して色付けしたものである。
【0027】
保護板21は、図4に示すように、天板部21aと、2つの側板部21bとを一体に備えている。2つの側板部21bは、それぞれ天板部21aとの境界で直角に曲げられている。また、2つの側板部21bは、それぞれネジ24を用いて固定されている。本第2実施形態において、ネジ24は、図5に示すように、ネジ部24aとドリル部24bとを一体に有するテックスビスによって構成されている。また、ネジ24には、山座金28と、ゴム製のパッキン29とが付属している。ネジ24のネジ部24aは、シリコーン樹脂膜18、断熱材17、接着層16およびダクト本体11にねじ込まれている。ネジ24のドリル部24bは、ダクト本体11の内面11bから空気流路14側に突き出している。また、ドリル部24bは樹脂層25によって覆われている。本第2実施形態においては、樹脂層25がシリコーン樹脂膜18と同じ材質、すなわちシリコーン樹脂によって構成されている。
【0028】
空調ダクト10を施工する場合は、断熱材17の外面17aをシリコーン樹脂膜18により覆った後で、保護板21をネジ24を用いて取り付ける。その際、ネジ24を締め付けると、ゴム製のパッキン29が側板部21bの外面に密着する。このため、ネジ24を用いて保護板21を取り付けた状態では、パッキン29によって防水性が保持される。また、図3に示すように、空調ダクト10の継手部分13にはコーキング材26が塗布される。コーキング材26は、防水を目的として保護板21の継ぎ目に塗布される。
【0029】
本発明の第2実施形態に係る空調ダクト10においては、ダクト本体11の上部にシリコーン樹脂膜18を覆うように保護板21を取り付けた構成を採用している。これにより、ダクト本体11の上部において、断熱材17およびシリコーン樹脂膜18が保護板21によって保護される。このため、空調ダクト10の天井部分に落下物などが衝突した場合に、衝突による衝撃を保護板21で受けることにより、断熱材17のダメージを低減することができる。また、空調ダクト10の施工を完了した後、空調ダクト10の上に重量物が乗る可能性がある場合に、重量物の重さを保護板21で受けることにより、断熱材17の座屈を抑制することができる。空調ダクト10の上に乗る可能性がある重量物には作業員が含まれる。
【0030】
なお、上記第1実施形態および第2実施形態においては、シリコーンの純度が高いシリコーン樹脂膜18によって断熱材17の外面17aを覆うようにしたが、シリコーンの純度が高いとシリコーン樹脂膜18の表面が汚れやすいという難点がある。この対策として、シリコーン樹脂膜18は、アクリル樹脂を含有する膜によって構成してもよい。アクリル樹脂を含有するシリコーン樹脂膜18を採用した場合は、シリコーン樹脂膜18の表面に汚れが付きにくくなる。このため、空調ダクト10の美観を維持することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 空調ダクト、11 ダクト本体、11a 外面、17 断熱材、17a 外面、18 シリコーン樹脂膜、21 保護板。
図1
図2
図3
図4
図5