IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中央可鍛工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-軸受装置の製造方法 図1
  • 特許-軸受装置の製造方法 図2
  • 特許-軸受装置の製造方法 図3
  • 特許-軸受装置の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】軸受装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 19/00 20060101AFI20230414BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20230414BHJP
   F16C 35/02 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B22D19/00 P
B22D19/00 W
F16C17/02 Z
F16C35/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019085759
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020179421
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】593209080
【氏名又は名称】中央可鍛工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達也
(72)【発明者】
【氏名】黒田 茂伸
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-017327(JP,A)
【文献】特開昭59-209470(JP,A)
【文献】特開平07-284906(JP,A)
【文献】特許第6271578(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 19/00- 19/08
F16C 35/00- 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材を支持する有機質支持材を用いて、鋳型に接触しないように該芯材を該鋳型に配置する工程と、該芯材が配置された該鋳型に、該鋳造品を形成する鋳造品形成材を熔融させて流し込む工程と、を含む軸受装置の製造方法であって、
該芯材を該鋳型に配置する工程は、円筒状の該芯材の前端部と後端部に該有機質支持材を接着させる工程と、該鋳型の軸受部を成型する円筒状にくりぬかれた外壁型部の中に、該有機質支持材が接着された該芯材を配置して固定する工程と、を含む、ことを特徴とする軸受装置の製造方法。
【請求項2】
前記有機質支持材が硬化型合成樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の軸受装置の製造方法。
【請求項3】
前記硬化型合成樹脂が反応硬化型合成樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の軸受装置の製造方法。
【請求項4】
前記反応硬化型合成樹脂が2液混合反応型エポキシ樹脂接着剤であることを特徴とする請求項3に記載の軸受装置の製造方法。
【請求項5】
前記芯材が炭素鋼板であり、前記鋳造品形成材が鋳鉄であることを特徴とする請求項1に記載の軸受装置の製造方法。
【請求項6】
前記炭素鋼板が炭素工具鋼鋼材(JIS G 4401:2009)であり、前記鋳鉄が球状黒鉛鋳鉄品(JIS G 5502:2001)であることを特徴とする請求項5に記載の軸受装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材を備える鋳造品の製造方法及び芯材を備える軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造品は、例えば、車両、船舶、航空機など(以下、車両等とする。)の部品や建築資材として様々な形態で使用され、車両等の部品や建築資材では、耐久性の観点から強度の向上が求められる。鋳造品の強度向上対策の一つとして、鋳造品を補強する芯材を備えることによって、鋳造品を補強する方法がある。このような鋳造品の製造方法として、従来、下記特許文献1において、芯材を金型にセットし、金型に鋳造品形成材を流し込むことによって製造される鋳造品の製造方法が知られている。この鋳造品の製造方法によって製造された鋳造品は、芯材が金型にセットされた部分の表面が芯材から形成され、その他の部分の表面が鋳造品形成材から形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-166051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両等では、部品としての鋳造品に様々な振動や荷重が掛かる。しかしながら、特許文献1に記載の従来の製造方法によって製造された鋳造品は、芯材が金型にセットされた部分の表面が芯材から形成され、その他の部分の表面が鋳造品形成材から形成されているため、鋳造品の表面に、芯材と鋳造品形成材との界面が存在する。材料の界面が存在する鋳造品は、単一の材料から鋳造され材料の界面が存在しない鋳造品と比して、振動や荷重などに対する機械的強度が劣るおそれがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、機械的強度の向上を図ることができる鋳造品の製造方法及び軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鋳造品の製造方法は、芯材を備える鋳造品の製造方法であって、
該芯材を支持する有機質支持材を用いて、鋳型に接触しないように該芯材を該鋳型に配置する工程と、
該芯材が配置された該鋳型に、該鋳造品を形成する鋳造品形成材を熔融させて流し込む工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の鋳造品の製造方法によれば、有機質支持材によって、芯材が、該鋳型に接触しないように、つまり、鋳造品の表面に露出しない内部の位置に配置される。鋳型に鋳造品形成材が流し込まれるとき、流し込まれる鋳造品形成材が熔融した高温の状態であるため、芯材を支持する有機質支持材は、鋳造品形成材と接触することによって焼失される。焼失された有機質支持材の設置された位置も含めて鋳型に鋳造品形成材が流し込まれるため、鋳造品は、芯材が表面に露出することなく、埋設されるものとすることができる。芯材を備える鋳造品は、その表面において、単一の材料である鋳造品形成材から形成され、材料の界面が存在しないため、機械的強度の向上を図ることができる。
【0008】
ここで、上記鋳造品の製造方法において、前記有機質支持材が硬化型合成樹脂であるものとすることができる。
【0009】
これによれば、硬化型合成樹脂は、硬化前の状態では流動性を有し芯材の固定が容易であり、硬化型合成樹脂が硬化することによって、芯材を容易に支持することができる。また、鋳造品形成材の熱によって、硬化型合成樹脂が流動性を有する状態に戻ることがないため、硬化型合成樹脂は、焼失されるまで芯材を支持することができる。
【0010】
また、上記鋳造品の製造方法において、前記芯材の表面に、前記有機質支持材を付着させ、該有機質支持材を介在させることによって、該芯材を前記鋳型に接触しないように配置するものとすることができる。
【0011】
これによれば、鋳型に接触しないように該芯材を該鋳型に配置する工程は、有機質支持材の硬化を待つことなく、有機質支持材が付着した芯材を、鋳型に接触しないように配置するだけで済むため、鋳造品の製造効率に優れるものとすることができる。
【0012】
また、上記鋳造品の製造方法において、前記芯材が炭素鋼板であり、前記鋳造品形成材が鋳鉄である構成とすることができる。
【0013】
これによれば、炭素鋼から形成された芯材の強度が鋳鉄から形成された鋳造品形成材の強度より大きいため、鋳造品の強度を高めることができる。
【0014】
また、本発明に係る軸受装置は、ベアリングを介してシャフトが挿通される円筒状の軸受部と、該軸受部を被固定部に固定するボルトが挿入されるボルト孔形成部を備える台座部と、該軸受部と該台座部とを一体に連結するブラケットと、を備える軸受装置であって、
該軸受部の周方向に、該軸受部を補強する芯材が該軸受部の表面に露出しない状態で埋設されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の軸受装置によれば、円筒状の軸受部に、軸受部を補強する芯材が埋設されているため、振動や荷重を受けやすい軸受部の機械的強度の向上を図ることができる。
【0016】
ここで、上記軸受装置において、前記軸受部が鋳鉄から形成され、前記芯材が炭素鋼から形成されているものとすることができる。
【0017】
これによれば、炭素鋼から形成された芯材の引張強さが鋳鉄から形成された軸受部の引張強さより大きいため、振動や荷重を受けやすい軸受部の機械的強度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鋳造品の製造方法によれば、芯材を鋳造品の内部の埋設される位置に配置することができ、芯材を備える鋳造品は、芯材が表面に露出することなく埋設されるものとすることができる。このため、本発明の鋳造品は、その表面において、単一の材料である鋳造品形成材から形成され、材料の界面が存在しないため、機械的強度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態の鋳造品の製造方法によって製造された軸受装置の正面図である。
図2図1のII-II線位置の断面図である。
図3】本発明の実施形態の鋳造品の製造方法に使用する鋳型の断面図であり、図1の軸受装置のIII-III線位置に相当する鋳型の断面図である。
図4図3の鋳型に鋳造品形成材を流し込むイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る鋳造品の製造方法を図面に基づいて説明する。実施形態では、図1及び図2に示すように、鋳造品として、車両等用のシャフト(図示せず)が円環状のベアリング(図示せず)を介して車両等側に固定される軸受装置1の製造方法を例にして説明する。もちろん、本発明の鋳造品は軸受装置に限定されるものではなく、歯車、車輪、エンジンブロック、トランスミッションケース及びブレーキディスクなどの車両等の部品、マシニングセンタ、旋盤及びドリルなどの加工器具、釜、鍋及び刃物などの日用品、並びに、耐震補強梁部材、耐震ダンパ部材及び取手類などの建築資材など、あらゆる鋳造品に適応することができるものである。
【0021】
実施形態の鋳造品としての軸受装置1の製造方法は、図3に示す鋳型5を用いて、図1及び図2に示す、円筒状の軸受部4と、台座部25と、軸受部4と台座部25とを一体に連結するブラケット2と、から構成される軸受装置1を鋳造によって製造する方法である。軸受部4の外壁部22の中の周方向には、軸受部4を補強する芯材3が埋設されている。
【0022】
実施形態の鋳造品としての軸受装置1は、組成的に、軸受部4、台座部25及びブラケット2を形成する鋳造品形成材8としての鋳鉄と、軸受装置1の軸受部4を強度的に補う芯材3としての炭素鋼板と、から形成される。鋳鉄は、原料となる鋳鉄品を熔融させて、後に述べる鋳型5内に流し込み、鋳型5内で冷えて固まることにより鋳鉄となる。
【0023】
鋳造品形成材8の鋳鉄は、炭素を2.5~4.5質量%含有するものであり、芯材3の炭素鋼板は、炭素を0.7~1.5質量%含有するものである。炭素含有量の違いによる鉄の性質の違いから、炭素鋼板の芯材3は、鋳造品形成材8(鋳鉄)より引張強さ及び伸度が勝るため、軸受部4を強度的に補うことができる。また、芯材3の炭素鋼板の融点は1400℃以上であり、熔融した鋳鉄(1300~1380℃)に被覆されることによって、芯材3が熔融することはない。なお、鋳鉄の比重と炭素鋼板の比重はほぼ同じであり、鋳鉄の熱膨張率と炭素鋼板の熱膨張率はほぼ同じである。軸受部4、台座部25及びブラケット2を形成する鋳造品形成材8(鋳鉄)には、球状黒鉛鋳鉄品FCD400(JIS G 5502:2001)を使用し、芯材3(炭素鋼板)には、炭素工具鋼鋼材SK85(JIS G 4401:2009)を使用した。
【0024】
芯材3を固定する有機質支持材7には、反応硬化型合成樹脂の2液混合反応型エポキシ樹脂接着剤を使用した。2液混合反応型エポキシ樹脂接着剤は、主剤のエポキシ樹脂と硬化剤のポリアミドとが混合されて構成されるものであり、接着剤として使用したときに、硬化が早いため、芯材3を短時間で固定することができる。エポキシ樹脂接着剤は、加熱されることにより、硬化時間をより短縮することができる。エポキシ樹脂接着剤からなる有機質支持材7は、鋳鉄の溶融点より低い約500℃で燃焼・焼失する。有機質支持材7としての2液混合反応型エポキシ樹脂接着剤には、2液混合反応型エポキシ系接着剤セメダイン1500(セメダイン株式会社製)を使用した。
【0025】
鋳型5は、軸受装置1の形状に対応した型枠を用いた。鋳型5は、図3及び図4に示すように、熔融した鋳造品形成材8を流し込む湯口62と、鋳造品形成材8が流れる湯道63と、軸受装置1が成形される型部6と、を備え、脱型のため、上型51と下型52とに分割可能な形状となっている。鋳型5は、軸受装置1の上下方向(図1)が水平方向、軸受装置1の前後方向(図2)が鉛直方向となるように、型部6が形成されている。図3及び図4は、軸受装置1の図1に示すIII-III位置に相当する鋳型の断面図であるため、軸受部4を成型する外壁型部65の型部6のみが図面に現れているが、図面の手前側には、図示しないが、ブラケット2と台座部25を成型する型部が設けられているものである。
【0026】
以下に、実施形態の鋳造品の製造方法について説明する。実施形態の鋳造品の製造方法は、有機質支持材7を用いて、鋳型5に接触しないように芯材3を鋳型5に固定する工程と、鋳型5に鋳造品形成材8を熔融させて流し込む工程と、を含む。
【0027】
鋳型5に接触しないように芯材3を鋳型5に固定する工程は、先ず、円筒状に加工された芯材3の前端部と後端部(鋳型5に固定する際の上端部と下端部)に、有機質支持材7のエポキシ樹脂接着剤を、それぞれ軸受部4を成型する外壁型部65の形状に合わせて接着させ、硬化させた。接着に先立って、エポキシ樹脂接着剤は、主剤のエポキシ樹脂と硬化剤のポリアミドとを混合し、芯材3は、円筒状に加工し、加熱(予熱)を施した。芯材3が予熱されることにより、エポキシ樹脂接着剤の硬化を促進することができる。次に、軸受装置1の円筒状の軸受部4の外壁部22の壁内となる位置(図1)に相当する、図3の鋳型5における、軸受部4を成型する円筒状にくりぬかれた外壁型部65の中に、有機質支持材7のエポキシ樹脂接着剤が備えられた芯材3を配置して固定した。芯材3の前端部と後端部(鋳型5に固定する際の上端部と下端部)に、有機質支持材7のエポキシ樹脂接着剤が備えられているため、芯材3と鋳型5の間にエポキシ樹脂接着剤が介され、芯材3は、鋳型5に接触しないように鋳型5に固定される。
【0028】
鋳型5に鋳造品形成材8を熔融させて流し込む工程では、図3及び図4に示すように、芯材3が配置された鋳型5に、湯口62から1350℃に加熱され熔融した鋳造品形成材8としての鋳鉄を流し込む。このとき、鋳鉄は、鋳型5の下部側(軸受装置の後部側)から上部側(前部側)に向けて充填される。鋳型5の下部側から充填された鋳鉄は、下部側の有機質支持材7を燃焼・気化させるため、有機質支持材7が充填されていた部位にも鋳鉄が流れ込む。鋳鉄が次々に流し込まれることによって、鋳型5の内部の下側から鋳鉄が充填され、最後に鋳型5の上部側に充填される。なお、鋳鉄は、ブラケット2及び台座部25を成型する型部6にも充填される。充填された鋳鉄は、上部側の有機質支持材7を燃焼・気化させ、有機質支持材7が充填されていた部位にも鋳鉄が流れ込む。このとき、芯材3は、有機質支持材7に固定されていない状態となるが、鋳鉄の比重と炭素鋼板の比重はほぼ同じであるため、芯材3が軸受装置1の円筒状の軸受部4の中心部から動く(ずれる)ことはない。なお、芯材3の融点は、鋳鉄の融点よりも高いため、芯材3が熔融することはない。また、芯材3が予熱されていることによって、鋳型5に流し込まれた鋳造品形成材8が芯材3との接触によって急冷されることを抑制し、鋳造品の鋳造品形成材8は、全体が均一に冷却され、歪みの発生が抑えられ、鋳造品の強度を高めることができる。
【0029】
冷却後に鋳造品形成材8(鋳鉄)が固化することによって、鋳造品形成材8と芯材3は、軸受部4に芯材3が埋設された軸受装置1となり、鋳型5から脱型され、湯口62と湯道63を埋めている鋳鉄が除去されることにより軸受装置1が完成する。
【0030】
軸受装置1は、図1及び図2に示すように、車両等用のシャフト(図示せず)が円環状のベアリング(図示せず)を介して車両等側に固定される軸受装置であり、シャフトを通したベアリングが軸受部4のベアリング収容部41に収容され、車両等側の被固定部に台座部25がボルト(図示せず)によって固定される。
【0031】
軸受装置1は、円筒状の軸受部4と、台座部25と、軸受部4と台座部25とを一体に連結するブラケット2と、から構成され、軸受部4の外壁部22の壁部内には、軸受部4を補強する芯材3が埋設されている。軸受部4、台座部25及びブラケット2を形成する鋳造品形成材8(鋳鉄)には、先に述べたように、球状黒鉛鋳鉄品FCD400を使用した。
【0032】
軸受部4は、図1及び図2に示すように、円環状のベアリング収容部41を有する。ベアリングを形成する金属は、軸受部4を形成している金属種類と同じ種類の金属を使用する。ベアリングを形成する金属と軸受部4を形成している金属とが同じ種類であることにより、軸受部4とベアリングは、熱膨張率が同じとなるため温度変化に対して安定となり、振動の原因となる軸受部4とベアリングの隙間の発生を抑制することができ、また、電極電位の差による電荷移動がし難いため、錆の発生を抑制することができる。実施形態において、金属が同じ種類であるとは、金属を構成する元素のうち、最も多く含有されている金属元素の種類が同じであることをいう。実施形態のベアリングには、鉄合金から形成されたものを使用した。
【0033】
軸受部4のベアリング収容部41の内径は、収容されるベアリングの外径よりも小さく(狭く)形成される。ベアリング収容部41の内部がベアリングの外径に合わせて正確に切削され、且つ、位置精度を確保することができるようにマージン(切削代)を残しているためである。
【0034】
ブラケット2は、軸受部4と台座部25とを一体に連結する部材であり、軸受部4の下から台座部25へ接続される脚部23が形成される。
【0035】
図1及び図2に示すように、脚部23には、強度を高めるため、左右の端部に、脚部23に対して直交する(シャフト軸に対して平行な)梁24が形成されている。台座部25は、軸受部4に貫通されるシャフトの中心軸と平行する平板状に形成され、台座部25には、車両等側の被固定部にボルトによって固定されるボルト孔形成部26が設けられ、車両等の被設置部に対してボルト孔形成部26を介してボルト止めがされるようになっている。
【0036】
軸受部4の外壁部22の内部には、軸受部4を補強する芯材3が周方向に、軸受部4の表面に露出しない状態で埋設されている。芯材3は、ブラケット2の軸受部4を強度的に補う材料であり、実施形態では、先に述べたように、芯材3には炭素工具鋼鋼材SK85を使用した。芯材3は、軸受部4の外壁部22の内部に配置され、軸受部4を形成する鋳造品形成材8に被覆されることによって、軸受部4内に、軸受部4の表面に露出しない状態で埋設され、軸受部4を強度的に補う。軸受装置1は、軸受装置1(軸受部4)の表面において、単一の材料である鋳造品形成材8から鋳造され、材料の界面が存在しないため、機械的強度の向上が図られる。
【0037】
また、芯材3は、軸受部4の外壁部22の周方向の内部に埋設されているため、受ける応力が小さい。このため、大荷重を受けて外壁部22に破損が生じた際であっても、芯材3が破断することなく残るため、外壁部22そのものの破断を防止することができる。
【0038】
なお、実施形態の軸受装置1は、その構成を以下のような形態に変更しても実施することができる。
【0039】
芯材3の成形に使用した炭素鋼板として、実施形態では、炭素工具鋼鋼材SK85を使用したが、JIS G 4401:2009に規定された炭素工具鋼鋼材(SK140、SK120、SK105、SK95、SK90、SK80、SK75)も使用することができる。また、炭素鋼板として、高炭素鋼のピアノ線やJIS G 4801:2011に規定されたばね鋼鋼材(SUP6、SUP7、SUP9、SUP9A、SUP10、SUP11A、SUP12、SUP13)なども使用することができる。これらは、鋳造品形成材8の鋳鉄と比較して、引張強度等の機械的強度に優れる。
【0040】
芯材3は、実施形態では、円筒状に加工されたものを使用したが、平板状の炭素鋼板を円筒状に曲げて両端部を重ねたもの、平板状の炭素鋼板を円筒状に曲げて両端部を重ねないもの、又は、ワイヤー形状のピアノ線を螺旋状に巻いたもの、なども使用することができる。
【0041】
軸受装置1の成形に使用した鋳造品形成材8の鋳鉄として、実施形態では、球状黒鉛鋳鉄品FCD400を使用したが、JIS G 5502:2001に規定された球状黒鉛鋳鉄品(FCD350、FCD500、FCD450、FCD600、FCD700、FCD800)も使用することができる。
【0042】
芯材3をブラケット2の形成型枠に固定する有機質支持材7は、実施形態では反応硬化型合成樹脂の2液混合反応型エポキシ樹脂を使用したが、反応硬化型合成樹脂として、湿気硬化型ウレタン樹脂、2液混合反応型ウレタン樹脂、紫外線硬化型ウレタン樹脂、湿気硬化型アクリレート樹脂、2液混合反応型アクリレート樹脂、紫外線硬化型アクリレート樹脂、湿気硬化型シリコーン樹脂、2液混合反応型シリコーン樹脂なども使用することができる。また、溶媒が揮発して乾燥固化する硬化型合成樹脂であっても有機質支持材7として使用することができ、硬化型合成樹脂として、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリレート樹脂、スチレン樹脂などの汎用の硬化型合成樹脂も使用することができる。また、有機質支持材7として、木材又はダンボール紙などの紙材を用いて、芯材3を鋳型5に接触しないように配置・固定することもできる。
【0043】
また、実施形態の軸受装置1の製造方法では、鋳型5の外壁型部65の中に、有機質支持材7のエポキシ樹脂接着剤が備えられた芯材3を配置して固定したが、鋳型5の外壁型部65の上側部と下側部のそれぞれの周方向に均等に分けた3~6カ所に、又は、全周に亘って、有機質支持材7のエポキシ樹脂接着剤を配置させ、エポキシ樹脂接着剤が備えられていない芯材3を配置して固定することもできる。
【符号の説明】
【0044】
1…軸受装置、2…ブラケット、3…芯材、4…軸受部、5…鋳型、6…型部、7…有機質支持材、8…鋳造品形成材、22…外壁部、23…脚部、24…梁、25…台座部、26…ボルト孔形成部、41…芯材本体、51…上型、52…下型、62…湯口、63…湯道、65…外壁型部。
図1
図2
図3
図4