(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】順次切替型バルク弾性波(BAW)遅延線サーキュレータ
(51)【国際特許分類】
H04B 1/56 20060101AFI20230414BHJP
H04B 1/52 20150101ALI20230414BHJP
【FI】
H04B1/56
H04B1/52
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019099036
(22)【出願日】2019-05-28
【審査請求日】2022-05-10
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517090646
【氏名又は名称】コーボ ユーエス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・フォレスト・キャンベル
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-529528(JP,A)
【文献】特表2007-529940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0331168(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0266399(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0054698(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/56
H04B 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信(TX)ポートと、
受信(RX)ポートと、
アンテナポートと、
第1のバルク弾性波(BAW)遅延線と、
第2のBAW遅延線と、
前記アンテナポート、前記第1のBAW遅延線及び前記第2のBAW遅延線の間で結合され、かつ、前記アンテナポートを前記第1のBAW遅延線または前記第2のBAW遅延線に選択的に接続するように構成されているアンテナ切替回路と、
TX/RX切替回路であって、
TXポートを前記第1のBAW遅延線または前記第2のBAW遅延線に選択的に接続し、
RXポートを前記第1のBAW遅延線または前記第2のBAW遅延線に選択的に接続するように構成されている、
前記TX/RX切替回路と、
を備え
、前記第1のBAW遅延線及び前記第2のBAW遅延線の各々が、前記アンテナ切替回路の切替え時間より大きい信号遅延時間を導入する、半導体ベースのサーキュレータ回路。
【請求項2】
前記半導体ベースのサーキュレータ回路が、全二重サーキュレータである、請求項1に記載の半導体ベースのサーキュレータ回路。
【請求項3】
前記TX/RX切替回路が、
前記TXポート、前記第1のBAW遅延線及び前記第2のBAW遅延線の間で結合され、かつ、前記TXポートを前記第1のBAW遅延線または前記第2のBAW遅延線に選択的に接続するように構成されているTXスイッチと、
前記RXポート、前記第1のBAW遅延線及び前記第2のBAW遅延線の間で結合され、かつ、前記RXポートを前記第1のBAW遅延線または前記第2のBAW遅延線に選択的に接続するように構成されているRXスイッチと、
を備える、請求項1に記載の半導体ベースのサーキュレータ回路。
【請求項4】
前記TXスイッチ及び前記RXスイッチが、
前記TXスイッチが前記TXポートを前記第1のBAW遅延線に結合するとき、前記RXスイッチが前記RXポートを前記第2のBAW遅延線に結合し、
前記TXスイッチが前記TXポートを前記第2のBAW遅延線に結合するとき、前記RXスイッチが前記RXポートを前記第1のBAW遅延線に結合するように、同時に切り替えられる、請求項3に記載の半導体ベースのサーキュレータ回路。
【請求項5】
前記アンテナ切替回路の前記切替え時間が、0.5ナノ秒(ns)~50nsである、請求項
1に記載の半導体ベースのサーキュレータ回路。
【請求項6】
前記アンテナ切替回路が半導体スイッチを備える、請求項1に記載の半導体ベースのサーキュレータ回路。
【請求項7】
前記アンテナ切替回路がガリウムヒ素(GaAs)トランジスタベースのスイッチを備える、請求項
6に記載の半導体ベースのサーキュレータ回路。
【請求項8】
前記アンテナ切替回路が窒化ガリウム(GaN)トランジスタベースのスイッチを備える、請求項
6に記載の半導体ベースのサーキュレータ回路。
【請求項9】
前記アンテナ切替回路がシリコンオンインシュレータ(SOI)を備える、請求項1に記載の半導体ベースのサーキュレータ回路。
【請求項10】
前記第1のBAW遅延線及び前記第2のBAW遅延線の各々が、BAW共振器を備える、請求項1に記載の半導体ベースのサーキュレータ回路。
【請求項11】
前記TXポートが、TX処理回路に結合され、
前記RXポートが、RX処理回路に結合される、請求項1に記載の半導体ベースのサーキュレータ回路。
【請求項12】
送信(TX)処理回路と、
受信(RX)処理回路と、
アンテナと、
前記アンテナと前記RX処理回路の間でRX信号を同時に交換し、前記TX処理回路と前記アンテナの間でTX信号を交換するように構成されているサーキュレータ回路であって、
第1のバルク弾性波(BAW)遅延線、
第2のBAW遅延線、
前記アンテナ、前記第1のBAW遅延線及び前記第2のBAW遅延線の間で結合されているアンテナ切替回路、及び
前記TX処理回路、前記RX処理回路、前記第1のBAW遅延線及び前記第2のBAW遅延線の間で結合されているTX/RX切替回路を備える、
前記サーキュレータ回路と、
を備え
、
前記第1のBAW遅延線及び前記第2のBAW遅延線の各々が、前記アンテナ切替回路の第1の切替え時間及び前記TX/RX切替回路の第2の切替え時間より大きい、信号遅延時間を導入する、無線周波数(RF)トランシーバ。
【請求項13】
第1の時間において、
前記アンテナ切替回路が、前記アンテナからの前記RX信号を前記第1のBAW遅延線に結合し、
前記TX/RX切替回路が、前記TX処理回路からの前記TX信号を前記第2のBAW遅延線に結合する、請求項1
2に記載のRFトランシーバ。
【請求項14】
前記第1の時間後の第2の時間において、
前記アンテナ切替回路が、前記第1のBAW遅延線からの前記TX信号を前記アンテナに結合し、
前記TX/RX切替回路が、前記第2のBAW遅延線からの前記RX信号を前記RX処理回路に結合する、請求項1
3に記載のRFトランジスタ。
【請求項15】
前記信号遅延時間は、前記第1の時間と前記第2の時間の間
に生じる、請求項1
4に記載のRFトランシーバ。
【請求項16】
送信(TX)処理回路を第1のバルク弾性波(BAW)遅延線に結合することと、
アンテナを
、アンテナ切替回路を用いて第2のBAW遅延線に結合することと、
第1の遅延後、
前記アンテナ切替回路を用いて前記アンテナを前記第1のBAW遅延線に結合することと、
前記第1の遅延後、受信(RX)処理回路を前記第2のBAW遅延線に結合することと、
を含
み、前記第1のBAW遅延線及び前記第2のBAW遅延線の各々が、前記アンテナ切替回路の切替時間よりも大きい信号遅延時間を導入する、無線周波数(RF)トランシーバを動作する方法。
【請求項17】
前記第1の遅延中、第1のTX信号を前記第1のBAW遅延線に格納することと、
前記第1の遅延中、第1のRX信号を前記第2のBAW遅延線に格納することと、
をさらに含む、請求項1
6に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の遅延後の第2の遅延中、第2のTX信号を前記第1のBAW遅延線に格納することと、
前記第1の遅延後の前記第2の遅延中、第2のRX信号を前記第1のBAW遅延線に格納することと、
前記第2の遅延後、前記アンテナを前記第1のBAW遅延線に結合することと、
前記第2の遅延後、前記RX処理回路を前記第1のBAW遅延線に結合することと、
をさらに含む、請求項1
7に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の遅延後の第2の遅延中、第2のTX信号を前記第2のBAW遅延線に格納することと、
前記第1の遅延後の前記第2の遅延中、第2のRX信号を前記第1のBAW遅延線に格納することと、
前記第2の遅延後、前記アンテナを前記第2のBAW遅延線に結合することと、
前記第2の遅延後、前記RX処理回路を前記第1のBAW遅延線に結合することと、
をさらに含む、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線周波数(RF)サーキュレータに関し、より詳細には、半導体ベースのRFサーキュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数(RF)トランシーバシステムにおいて、単一アンテナ経由の同時信号送受信を可能にするために磁気サーキュレータが頻繁に用いられる。磁気サーキュレータは、信号を、送信(TX)ポート、アンテナポート、受信(RX)ポートの間で、TXポートとRXポートの間に隔離をもたらしながら、ルーティングする。磁気サーキュレータは永久磁石を含み、それは、信号を1方向に沿ってその材料を通過させて、信号がTXポートからアンテナポートにかつアンテナポートからRXポートに移動するようにする。
【0003】
磁気サーキュレータのサイズは、それを通って伝搬する信号の周波数に反比例するものであり、より低い周波数用途の場合、非常に大きくなり得る。したがって、広帯域RFトランシーバにおける磁気サーキュレータは、より大きい永久磁石を用いるので、巨大かつ高価になり得る。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、順次切替型バルク弾性波(BAW)遅延線サーキュレータに関する。サーキュレータ回路には、単一アンテナ経由の同時信号送受信のためのコンパクトで低コストな解決策を提供するために、半導体コンポーネントが実装される。例えば、サーキュレータ回路は、送信(TX)ポート、受信(RX)ポート及びアンテナポートを含み得る。アンテナ切替回路は、アンテナポートを2つ以上の遅延線に選択的に結合し、TXスイッチ及びRXスイッチは、遅延線をTXポート及びRXポートそれぞれに選択的に結合する。遅延線は、アンテナ切替回路、TXスイッチ及びRXスイッチが順次切り替えられ、TX信号をTXポートからアンテナポートにルーティングしRX信号をアンテナポートからRXポートにルーティングするのに十分な時間、TX信号及びRX信号を格納するためのメモリとして機能する。
【0005】
遅延線の各々は、対向する導電層の間に圧電膜を含むBAW遅延線であり、BAW共振器であってもよい。BAW遅延線は、少なくともアンテナ切替回路、TXスイッチ及びRXスイッチの切替え時間の間、TX信号及びRX信号それぞれを遅延させるコンパクトメモリを提供する。加えて、BAW遅延線は、サーキュレータ回路の性能、製造及びサイズを向上させるために、共通の半導体基板上に製造することができる。
【0006】
例示的な態様において、半導体ベースのサーキュレータ回路が提供される。半導体ベースのサーキュレータ回路は、TXポート、RXポート及びアンテナポートを含む。半導体ベースのサーキュレータ回路はまた、第1のBAW遅延線、第2のBAW遅延線、ならびにアンテナポートと第1のBAW遅延線及び第2のBAW遅延線の間で結合されているアンテナ切替回路も含む。アンテナ切替回路は、アンテナポートを第1のBAW遅延線または第2のBAW遅延線に選択的に接続するように構成されている。半導体ベースのサーキュレータはまた、TXポートを第1のBAW遅延線または第2のBAW遅延線に選択的に接続し、かつRXポートを第1のBAW遅延線または第2のBAW遅延線に選択的に接続するように構成されているTX/RX切替回路も含む。
【0007】
別の例示的な態様は、無線周波数(RF)トランシーバに関する。RFトランシーバは、TX処理回路、RX処理回路及びアンテナを含む。RFトランシーバはまた、アンテナとRX処理回路の間でRX信号を同時に交換し、TX処理回路とアンテナの間でTX信号を交換するように構成されているサーキュレータ回路も含む。サーキュレータ回路は、第1のBAW遅延線、第2のBAW遅延線、ならびにアンテナと第1のBAW遅延線及び第2のBAW遅延線の間で結合されているアンテナ切替回路を含む。サーキュレータ回路はまた、TX処理回路、RX処理回路、第1のBAW遅延線及び第2のBAW遅延線の間で結合されているTX/RX切替回路も含む。
【0008】
別の例示的な態様は、RFトランシーバを動作させる方法に関する。方法は、TX処理回路を第1のBAW遅延線に結合する動作及びアンテナを第2のBAW遅延線に結合する動作を含む。方法はまた、第1の遅延後、アンテナを第1のBAW遅延線に結合すること及び受信(RX)処理回路を第2のBAW遅延線に結合することも含む。
【0009】
当業者は、添付の図面の図と関連する好ましい実施形態の以下の詳細な説明を閲読することにより、本開示の範囲を理解し、そのさらなる態様を実現するだろう。
【0010】
本明細書に組み込まれその一部を形成する添付の図面の図は、開示のいくつかの態様を例示し、記載と併せて、開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】アンテナを送信(TX)回路及び受信(RX)回路に結合しているサーキュレータ回路を有する、全二重トランシーバの例示的なブロック図である。
【
図2-1】
図2A~
図2Hは、信号がTXポート及びアンテナポートに同時に入るときの例示的なバルク弾性波(BAW)遅延線ベースのサーキュレータ回路の動作の図である。
【
図2-2】
図2A~
図2Hは、信号がTXポート及びアンテナポートに同時に入るときの例示的なバルク弾性波(BAW)遅延線ベースのサーキュレータ回路の動作の図である。
【
図3-1】
図3Aは、3つのポート、2つの遅延線の構成を有する別の例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路の図である。
図3Bは、連続時間信号に対する
図3Aのアンテナ切替回路及びTX/RX切替回路の例示的な動作の図である。
図3Cは、4つのポート、2つの遅延線の構成を有する例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路の図である。
図3Dは、連続時間信号に対する
図3Cのアンテナ切替回路及びTX/RX切替回路の例示的な動作の図である。
【
図3-2】
図3Aは、3つのポート、2つの遅延線の構成を有する別の例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路の図である。
図3Bは、連続時間信号に対する
図3Aのアンテナ切替回路及びTX/RX切替回路の例示的な動作の図である。
図3Cは、4つのポート、2つの遅延線の構成を有する例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路の図である。
図3Dは、連続時間信号に対する
図3Cのアンテナ切替回路及びTX/RX切替回路の例示的な動作の図である。
【
図4】
図3Cの例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路の回路図である。
【
図5A】
図3C及び
図4の例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路の回路レイアウトである。
【
図6】
図4~
図5Bの例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路の応答特性の図である。
【発明の詳細な説明】
【0012】
以下に記載する実施形態は、当業者が実施形態を実施することを可能にするための必要な情報を表し、実施形態を実施するベストモードを例示する。添付の図面の図に照らして以下の記載を閲読することにより、当業者は開示の概念を理解し、本明細書中に特に取り上げられていないこれらの概念の応用を認識するだろう。これらの概念及び応用は、開示及び添付の特許請求の範囲内に存在することを理解すべきである。
【0013】
第1の、第2の、などの用語は、本明細書中で様々な要素を記載するのに用いられ得るが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、単にある要素を別の要素と区別するために用いられる。例えば、本開示の範囲から逸脱せずに、第1の要素は第2の要素と言ってもよく、同様に、第2の要素は第1の要素と言ってもよい。本明細書中で用いられる用語「及び/または」は、関連する列挙された項目のうち1つまたは複数の全ての組み合わせを含む。
【0014】
層、領域または基板などの要素が別の要素の「上に(on)」存在するまたは別の要素の「上へと(onto)」延在しているとされるとき、それは他の要素の上に直接存在し得るもしくは他の要素の上へと直接延在し得る、または介在要素も存在し得ると理解されるだろう。その一方、要素が別の要素の「上に直接(directly on)」存在するまたは「上へと直接(directly onto)」延在しているとされるとき、介在要素は存在しない。同様に、層、領域または基板などの要素が別の要素「上に(over)」存在するまたは別の要素「上に(over)」延在しているとされるとき、それは他の要素上に直接存在し得るもしくは直接延在し得る、または介在要素も存在し得ると理解されるだろう。その一方、要素が別の要素「上に直接(directly over)」存在するまたは別の要素「上に直接(directly over)」延在しているとされるとき、介在要素は存在しない。要素が別の要素に「接続される(connected)」または「結合される(coupled)」とされるとき、それは他の要素に直接接続もしくは結合され得る、または介在要素が存在し得ることがやはり理解されるだろう。その一方、要素が別の要素に「直接接続される(directly connected)」または「直接結合される(directly coupled)」とされるとき、介在要素は存在しない。
【0015】
「下に(below)」または「上に(above)」または「上部に(upper)」または「下部に(lower)」または「水平に(horizontal)」または「垂直に(vertical)」などの相対語は、図に例示されたような、ある要素、層または領域の、別の要素、層または領域に対する関係を記載するのに本明細書中で用いられ得る。これらの用語及び上述されたことは、図に表された方位に加えデバイスの様々な方位を網羅することを意図することが理解されるだろう。
【0016】
本明細書中で用いられる専門用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためのものであり、開示を限定する意図はない。本明細書中で用いられる単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が別途明確に記載しない限り、複数形も同様に含むことを意図する。本明細書中で用いられる「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」及び/または「含んでいる(including)」という用語は、記述された特徴、整数、段階、動作、要素及び/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、段階、動作、要素、構成要素及び/またはそれらの群の存在または追加を除外しないことがさらに理解されるだろう。
【0017】
別途定義されない限り、本明細書中で用いられる全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書中で用いられる用語は本明細書の文脈及び関連技術におけるそれらの意味と一貫する意味を有するとして解釈されるべきであり、本明細書中で明確に定義されない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されないであろうことがさらに理解されるであろう。
【0018】
本開示は、順次切替型バルク弾性波(BAW)遅延線サーキュレータに関する。サーキュレータ回路には、単一アンテナ経由の同時信号送受信のためのコンパクトで低コストな解決策を提供するために、半導体コンポーネントが実装される。例えば、サーキュレータ回路は、送信(TX)ポート、受信(RX)ポート及びアンテナポートを含み得る。アンテナ切替回路は、アンテナポートを2つ以上の遅延線に選択的に結合し、TXスイッチ及びRXスイッチは、遅延線をTXポート及びRXポートそれぞれに選択的に結合する。遅延線は、アンテナ切替回路、TXスイッチ及びRXスイッチが順次切り替えられ、TX信号をTXポートからアンテナポートにルーティングしRX信号をアンテナポートからRXポートにルーティングするのに十分な時間、TX信号及びRX信号を格納するためのメモリとして機能する。
【0019】
遅延線の各々は、対向する導電層の間に圧電膜を含むBAW遅延線であり、BAW共振器であってもよい。BAW遅延線は、少なくともアンテナ切替回路、TXスイッチ及びRXスイッチの切替え時間の間、TX信号及びRX信号それぞれを遅延させるコンパクトメモリを提供する。加えて、BAW遅延線は、サーキュレータ回路の性能、製造及びサイズを向上させるために、共通の半導体基板上に製造することができる。
【0020】
この点で、
図1は、アンテナ14をTX処理回路16及びRX処理回路18に結合しているサーキュレータ回路12を有する全二重トランシーバ10の例示的なブロック図を示す。「全二重」トランシーバ10は、単一アンテナ14を用いて送信かつ受信を同時に行うことが可能である。サーキュレータ回路12は、信号を、TXポート20(TX処理回路16に結合されている)と、アンテナポート22(アンテナ14に結合されている)と、RXポート24(RX処理回路18に結合されている)の間で、TXポート20とRXポート24の間に隔離をもたらしながらルーティングする。例示を目的として、サーキュレータ回路12は、ポート20、22、24の1つに入り次の時計回りのポート20、22、24のみに向かうルーティング信号として示される。かくして、TXポート20に入るTX信号は、アンテナポート22にルーティングされ、アンテナポート22に入るRX信号は、RXポート24にルーティングされる。一般に、サーキュレータ回路12は、信号を次の時計回りのポート20、22、24のみに完全にルーティングするものではないが、少ない挿入損失で、TXポート20とRXポート24の間に所望量の隔離をもたらすことができる。
【0021】
TX処理回路16は、1つまたは複数の無線周波数(RF)送信信号(例えば、TX信号)を処理し、サーキュレータ回路12に転送する。例示的な態様では、TX処理回路16は、電力増幅器(PA)、アナログ-デジタル変換器、変調回路、及び/またはアンテナ14によって伝搬されるTX信号(複数可)を生成するための追加の処理回路を含む。
【0022】
RX処理回路18は、アンテナ14からサーキュレータ回路12を介して1つまたは複数のRF受信信号(例えば、RX信号)を受信かつ処理する。例示的な態様では、RX処理回路18は、低雑音増幅器(LNA)、リミッタまたは他の信号フィルタ(例えば、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ノッチフィルタ)、復調回路、アナログ―デジタル変調器、及び/またはRX信号(複数可)を調整かつ処理するための追加の処理回路を含む。
【0023】
上記のように、従来の磁気サーキュレータは、巨大かつ高価である。本明細書中に開示された態様は、BAW遅延線を有する順次切替型遅延線(SSDL)アーキテクチャに基づくサーキュレータ回路12を含むトランシーバ10(例えば、RFトランシーバ10)に関する。SSDLアーキテクチャに基づくサーキュレータ回路12は、順次アクティブ化されたスイッチがTX信号をTXポート20からアンテナポート22にルーティングし、RX信号をアンテナポート22からRXポート24にルーティングするのに十分な時間、TX信号及びRX信号を格納するためのメモリとして遅延線を用いる半導体ベースのデバイスである。BAW遅延線は、より高い信号性能を有するよりコンパクトな遅延線を提供する。
【0024】
BAW遅延線を有する例示的なSSDLサーキュレータ回路12の動作が、
図2A~2Hに関してさらに記載される。例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路12が、
図3A~
図5Bに関してさらに記載される。BAW遅延線ベースのサーキュレータ回路12の例示的な応答特性が、
図6に関してさらに記載される。
【0025】
図2A~
図2Hは、信号がTXポート20及びアンテナポート22に同時に入るときの例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路12の動作を示す。サーキュレータ回路12は、第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28を含む。アンテナ切替回路30は、アンテナポート22、第1のBAW遅延線26、第2のBAW遅延線28の間で結合される。アンテナ切替回路30は、アンテナポート22を第1のBAW遅延線26または第2のBAW遅延線28に選択的に接続するように構成されている。
【0026】
TX/RX切替回路32は、TXポート20、RXポート24、第1のBAW遅延線26、第2のBAW遅延線28の間で結合される。TX/RX切替回路32は、TXポート20を第1のBAW遅延線26または第2のBAW遅延線28に選択的に接続し、かつRXポート24を第1のBAW遅延線26または第2のBAW遅延線28に選択的に接続するように構成されている。TX/RX切替回路32は、TXスイッチ34及びRXスイッチ36を含む。TXスイッチ34及びRXスイッチ36は、同時に切り替えられるように構成されている。この点で、
図2A~
図2Eに示すように、TXスイッチ34がTXポート20を第1のBAW遅延線26に結合するとき、RXスイッチ36は、RXポート24を第2のBAW遅延線28に結合する。加えて、TXスイッチ34がTXポート20を第2のBAW遅延線28に結合するとき、RXスイッチ36は、RXポート24を第1のBAW遅延線26に結合する。
【0027】
第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28は、アンテナ切替回路30とTX/RX切替回路32の間で遅延線として機能する。したがって、第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28の各々は、サーキュレータ回路12を通過する信号に信号遅延時間τを導入する。信号遅延時間τは、アンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32が順次切り替えられ、信号を適切なポート20、22、24の間でルーティングする間の信号のメモリとして機能する。例示的な態様では、信号遅延時間τは、アンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32の切替え時間(例えば、アンテナ切替回路30、TXスイッチ34及びRXスイッチ36の最長切替え時間)よりも大きい。
【0028】
第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28は、目的信号周波数範囲内の信号遅延時間τを導入するように構成されている。例示的な態様では、第1のBAW遅延線26及び/または第2のBAW遅延線28は、アンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32の切替え時間よりも大きな信号遅延時間τを生成することができる。BAW遅延線26、28はまた、アンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32と共通の半導体基板上に構築することもでき、コンパクトなサーキュレータ回路12をもたらす。いくつかの例では、BAW遅延線26、28は、必須ではないがBAW共振器を含む。
【0029】
より詳細には、
図2A~
図2Hは、TXポート20に入る周期Tの周期パルスTX信号をルーティングするサーキュレータ回路12の順次切替えを示す。サーキュレータ回路12の順次切替えはまた、同時にアンテナポート22に入る周期Tの周期パルスRX信号をルーティングする。
【0030】
この点で、
図2Aは、TX信号の第1のパルス38がTXポート20に入り、RX信号の第1のパルス40がアンテナポート22に入るときの、第1の時間t=0におけるサーキュレータ回路12を表す。第1の時間t=0において、TX/RX切替回路32(例えば、TXスイッチ34)は、TXポート20を第1のBAW遅延線26に結合する。加えて、アンテナ切替回路30は、アンテナポート22を第2のBAW遅延線28に結合する。TX信号の第1のパルス38は、
図2Bに表すように時間t=T/3において、第1のBAW遅延線26を通って適切にルーティングされる。TX信号の第1のパルス38は、信号遅延時間τ中に第1のBAW遅延線26を通って移動する(例えば格納される)。同様に、RX信号の第1のパルス40は、信号遅延時間τ中に第2のBAW遅延線28を通って移動する(例えば格納される)。
【0031】
続いて時間t=2T/3における
図2Cを参照すると、第1のパルス38、40がそれぞれBAW遅延線26、28を通って移動している間に、アンテナ切替回路30は、アンテナポート22を変更し第1のBAW遅延線26に結合する。このようにして、
図2Dに表すように、時間t=Tまでに、第1のBAW遅延線26の信号遅延時間τにより、アンテナ切替回路30がTX信号の第1のパルス38を適切にルーティングする(例えば、
図1のアンテナ14によって放射される)ことが可能になっている。RX信号の第1のパルス40は、TX/RX切替回路32を変えることなく(RXスイッチ36は既にRXポート24を第2のBAW遅延線28に結合している)、RXポート24にルーティングされる(例えば、
図1のRX処理回路18によって処理される)。
【0032】
加えて、時間t=T(
図2D)において、TX信号の第2のパルス42は、TXポート20に入り、RX信号の第2のパルス44は、アンテナポート22に入る。TX/RX切替回路32はTXポート20を第1のBAW遅延線26に結合するので、TX信号の第2のパルス42は、第1のBAW遅延線26を通って移動する(例えば、格納される)。さらに、アンテナ切替回路30はアンテナポート22を第1のBAW遅延線26に結合するので、RX信号の第2のパルス44は、第1のBAW遅延線信26を通って移動する(例えば、格納される)。かくして、
図2Eを参照すると、時間t=4T/3において、第2のパルス42、44の両方は、信号遅延時間τ中、第1のBAW遅延線26を通って移動する。
【0033】
続いて時間t=5T/3における
図2Fを参照すると、第2のパルス42、44が第1のBAW遅延線26を通って移動している間に、TX/RX切替回路32は変化する。TX/RX切替回路32は、同時に、TXスイッチ34を切り替えてTXポート20を第2のBAW遅延線28に結合し、かつRXスイッチ36を切り替えてRXポート24を第1のBAW遅延線26に結合する。このようにして、
図2Gに表すように、時間t=2Tまでに、第1のBAW遅延線26の信号遅延時間τにより、TX/RX切替回路32がRX信号の第2のパルス44を適切にルーティングする(例えば、
図1のRX処理回路18によって処理される)ことが可能になっている。TX信号の第2のパルス42は、アンテナ切替回路30を変えることなく(アンテナ切替回路30は既にアンテナポート22を第1のBAW遅延線26に結合している)、アンテナポート22にルーティングされる(例えば、
図1のアンテナ14によって放射される)。
【0034】
加えて、時間t=2T(
図2G)において、TX信号の第3のパルス46は、TXポート20に入り、RX信号の第3のパルス48は、アンテナポート22に入る。TX/RX切替回路32はTXポート20を第2のBAW遅延線28に結合するので、TX信号の第3のパルス46は、
図2Hに表すように時間t=7T/3において、信号遅延時間τ中、第2のBAW遅延線28を通って移動する(例えば、格納される)。さらに、アンテナ切替回路30はアンテナポート22を第1のBAW遅延線26に結合するので、RX信号の第3のパルス48は、信号遅延時間τ中、第1のBAW遅延線26を通って移動する(例えば、格納される)。
【0035】
TX信号及びRX信号を適切にルーティングするための
図2A~
図2Hに関して上記したプロセスのために、アンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32は、ルーティングされる各パルス38、40、42、44、46、48が到達する前に、状態を完全に変化させる。すなわち、BAW遅延線26、28の信号遅延時間τは、アンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32の切替え時間よりも長い必要がある。抵抗性遅延線に基づく(例えば送信線を通る)他のSSDLアーキテクチャが提案されているが、これらのアーキテクチャは、より低い信号性能を伴う過度に大きな遅延線を必要とする。
【0036】
この点で、
図2A~
図2Hに示されたサーキュレータ回路12の切替えタイミング(例えば、T/3、4T/3など)は周期TのパルスTX信号及びパルスRX信号に対する例示的なものであることを理解すべきである。他の例では、切替えのタイミングは、アンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32の各々が、次の信号パルスがそれぞれの切替回路に入る前に切替えを完了する限り、変わり得る。
【0037】
本明細書中に開示された態様では、BAW遅延線26、28は、より高い信号性能を有するコンパクトなSSDL遅延線を提供する。
図2A~
図2Hに示されたサーキュレータ回路12の例示的な動作は、
図3A~
図3Dに関して記載された例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路12のように、連続時間信号に拡張することができる。例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路12の設計及び実装は、
図4~
図5Bに関して記載される。
【0038】
図3Aは、3つのポート、2つの遅延線の構成を有する別の例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路12を示す。したがって、サーキュレータ回路12は、アンテナ切替回路30とTX/RX切替回路32の間に第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28を含む。
【0039】
アンテナ切替回路30は、アンテナポート22を第1のBAW遅延線26または第2のBAW遅延線28に選択的に接続するように構成されている。TX/RX切替回路32は、同時に切り替えられるTXスイッチ34及びRXスイッチ36を含む。TXスイッチ34は、TXポート20を第1のBAW遅延線26または第2のBAW遅延線28に選択的に結合する。RXスイッチ36は、TXスイッチ34がTXポート20を第1のBAW遅延線26に結合するときにRXスイッチ36がRXポート24を第2のBAW遅延線28に結合するように、TXスイッチ34と同時に切り替えられる。RXスイッチ36はまた、TXスイッチ34がTXポート20を第2のBAW遅延線28に結合するときに、RXポート24を第1のBAW遅延線26に結合する。サーキュレータ回路12は、
図2A~
図2Hに関して上記したようにアンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32を同時に切り替えることによって、TX信号及びRX信号を適切なポート20、22、24の間でルーティングするように構成されている。
【0040】
図3Bは、連続時間信号に対する
図3Aのアンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32の例示的な動作を示す。
図3Bに表すように、BAW遅延線26、28の各々に対する信号遅延時間τ=Tである。アンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32の各々は、信号遅延時間の2倍の率(2T)で位置を変える。TX/RX切替回路32の切替えは、アンテナ切替回路30と1つの信号遅延時間(T)ずれている。アンテナ切替回路30、TXスイッチ34及びRXスイッチ36の切替え時間は、切替えが、ルーティングされる次の信号がBAW遅延線26、28を通って伝搬する間に完了するように、信号遅延時間(T)よりも小さい。
【0041】
図3Cは、4つのポート、2つの遅延線の構成を有する例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路12を示す。したがって、サーキュレータ回路12は、アンテナ切替回路30とTX/RX切替回路32の間に第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28を含む。
図3Aの例示的なサーキュレータ回路12とは異なり、アンテナ切替回路30は、第1のBAW遅延線26、第2のBAW遅延線28、アンテナポート22、負荷インピーダンス50の間で結合される。
【0042】
アンテナ切替回路30は、同時に切り替えられる第1のアンテナスイッチ52及び第2のアンテナスイッチ54を含む。第1のアンテナスイッチ52は、アンテナポート22を第1のBAW遅延線26または第2のBAW遅延線28に選択的に結合する。第2のアンテナスイッチ54は、第1のアンテナスイッチ52がアンテナポート22を第1のBAW遅延線26に結合するとき、第2のアンテナスイッチ54が負荷インピーダンス50を第2のBAW遅延線28に結合するように、第1のアンテナスイッチ52と同時に切り替えられる。第2のアンテナスイッチ54はまた、第1のアンテナスイッチ52がアンテナポート22を第2のBAW遅延線28に結合するとき、負荷インピーダンス50を第1のBAW遅延線26に結合する。
【0043】
負荷インピーダンス50は、グラウンドへのパスを設け隔離ポート20、24に反射する信号が再度サーキュレータ回路12に入ることを防止することによって、TXポート20とRXポート24の隔離を向上させることができる。負荷インピーダンス50の値は、TXポート20とRXポート24の隔離を最適化するように設定することができる。負荷インピーダンス50は、抵抗負荷、容量性負荷、誘導負荷及び/または能動負荷であり得る。場合によっては、負荷インピーダンス50を省略し、その代わりに、第2のアンテナスイッチ54がグラウンドへの直接パスを提供することができる。
【0044】
図3Dは、連続時間信号に対する
図3Cのアンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32の例示的な動作を示す。
図3Dに表すように、BAW遅延線26、28の各々に対する信号遅延時間τ=Tである。アンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32の各々は、信号遅延時間の2倍の率(2T)で位置を変える。TX/RX切替回路32の切替えは、アンテナ切替回路30と1つの信号遅延時間(T)ずれている。第1のアンテナスイッチ52、第2のアンテナスイッチ54、TXスイッチ34及びRXスイッチ36の切替え時間は、切替えが、ルーティングされる次の信号がBAW遅延線26、28を通って伝搬する間に完了するように、信号遅延時間(T)よりも小さい。
【0045】
図4は、
図3Cの例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路12の回路図を示す。サーキュレータ回路12は、アンテナ切替回路30とTX/RX切替回路32の間に第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28を含む。より詳細には、TX/RX切替回路32は、同時に切り替えられるTXスイッチ34及びRXスイッチ36を含む。TXスイッチ34は、TXポート20を第1のBAW遅延線26または第2のBAW遅延線28に選択的に結合する。RXスイッチ36は、RXポート24を第1のBAW遅延線26または第2のBAW遅延線28に選択的に結合する。
【0046】
TXスイッチ34は、さらに、第1のTXスイッチング素子68及び第2のTXスイッチング素子70を含み、それらの各々は、金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)または別の適切なトランジスタであってもよい。第1のTXスイッチング素子68は、TXポート20と第2のBAW遅延線28の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW1-Aに結合されている。第2のTXスイッチング素子70は、TXポート20と第1のBAW遅延線26の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW1-Bに結合されている。
【0047】
RXスイッチ36は、さらに、第1のRXスイッチング素子72及び第2のRXスイッチング素子74を含み、それらの各々は、MOSFETまたは別の適切なトランジスタであってもよい。第1のRXスイッチング素子72は、RXポート24と第1のBAW遅延線26の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW1-Aに結合されている。第2のRXスイッチング素子74は、RXポート24と第2のBAW遅延線28の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW1-Bに結合されている。
【0048】
切替え制御信号SW1-A及びSW1-Bは、TXスイッチ34及びRXスイッチ36の同時切替えを可能にする。一般に、切替え制御信号SW1-Bは、切替え制御信号SW1-Aの論理逆数である(ロジックハイはスイッチング素子68、70、72、74のスイッチング閾値を上回り、ロジックローはスイッチング閾値を下回る)。この点で、切替え制御信号SW1-Aが高く切替え制御信号SW1-Bが低いとき、第1のTXスイッチング素子68及び第1のRXスイッチング素子72はアクティブであり、第2のTXスイッチング素子70及び第2のRXスイッチング素子74は非アクティブである。したがって、TXスイッチ34は、TXポート20を第2のBAW遅延線28に結合し、RXスイッチ36は、RXポート24を第1のBAW遅延線26に結合する。
【0049】
切替え制御信号SW1-Bが高く、切替え制御信号SW1-Aが低いとき、第2のTXスイッチング素子70及び第2のRXスイッチング素子74はアクティブであり、第1のTXスイッチング素子68及び第1のRXスイッチング素子72は非アクティブである。したがって、TXスイッチ34は、TXポート20を第1のBAW遅延線26に結合し、RXスイッチ36は、RXポート24を第2のBAW遅延線28に結合する。
【0050】
アンテナ切替回路30は、同時に切り替えられる第1のアンテナスイッチ52及び第2のアンテナスイッチ54を含む。第1のアンテナスイッチ52は、アンテナポート22を第1のBAW遅延線26または第2のBAW遅延線28に選択的に結合する。第2のアンテナスイッチ54は、負荷インピーダンス50を第1のBAW遅延線26または第2のBAW遅延線28に選択的に結合する。
【0051】
第1のアンテナスイッチ52は、さらに、第1のアンテナスイッチング素子76及び第2のアンテナスイッチング素子78を含み、それらの各々は、MOSFETまたは別の適切なトランジスタであってもよい。第1のアンテナスイッチング素子76は、アンテナポート22と第1のBAW遅延線26の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW2-Aに結合されている。第2のアンテナスイッチング素子78は、アンテナポート22と第2のBAW遅延線28の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW2-Bに結合されている。
【0052】
第2のアンテナスイッチ54は、さらに、第3のアンテナスイッチング素子80及び第4のアンテナスイッチング素子82を含み、それらの各々は、MOSFETまたは別の適切なトランジスタであってもよい。第3のアンテナスイッチング素子80は、負荷インピーダンス50と第2のBAW遅延線28の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW2-Aに結合されている。第4のアンテナスイッチング素子82は、負荷インピーダンス50と第1のBAW遅延線26の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW2-Bに結合されている。
【0053】
切替え制御信号SW2-A及びSW2-Bは、第1のアンテナスイッチ52及び第2のアンテナスイッチ54の同時切替えを可能にする。一般に、切替え制御信号SW2-Bは、切替え制御信号SW2-Aの論理逆数である(ロジックハイはアンテナスイッチング素子76、78、80、82のスイッチング閾値を上回り、ロジックローはスイッチング閾値を下回る)。この点で、切替え制御信号SW2-Aが高く切替え制御信号SW2-Bが低いとき、第1のアンテナスイッチング素子76及び第3のアンテナスイッチング素子80はアクティブであり、第2のアンテナスイッチング素子78及び第4のアンテナスイッチング素子82は非アクティブである。したがって、第1のアンテナスイッチ52は、アンテナポート22を第1のBAW遅延線26に結合し、第2のアンテナスイッチ54は、負荷インピーダンス50を第2のBAW遅延線28に結合する。
【0054】
切替え制御信号SW2-Bが高く切替え制御信号SW2-Aが低いとき、第2のアンテナスイッチング素子78及び第4のアンテナスイッチング素子82はアクティブであり、第1のアンテナスイッチング素子76及び第3のアンテナスイッチング素子80は非アクティブである。したがって、第1のアンテナスイッチ52は、アンテナポート22を第2のBAW遅延線28に結合し、第2のアンテナスイッチ54は、負荷インピーダンス50を第1のBAW遅延線26に結合する。
【0055】
切替え制御信号SW1-A、SW1-B、SW2-A及びSW2-Bは、制御回路から受信され得る。いくつかの例では、制御回路は、
図4に表すように、サーキュレータ回路12と分離してもよい。他の例では、制御回路は、サーキュレータ回路12の別のコンポーネントであってもよい。制御回路は、サーキュレータ回路12が、
図2A~
図2Hに関して記載されたような順次切替え動作を行うように、切替え制御信号SW1-A、SW1-B、SW2-A及びSW2-Bを生成し得る。したがって、制御回路は、プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または他のプログラム可能論理デバイス、個別ゲートもしくはトランジスタロジック、個別ハードウェアコンポーネント、または本明細書中に開示された機能を行うように設計されたそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0056】
図5Aは、
図3C及び
図4の例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路12の回路レイアウトを示す。サーキュレータ回路12は、TXポート20、アンテナポート22及びRXポート24を含むコンポーネントが配置される回路基板84を含む。例示的な態様では、回路基板84は、プリント配線板、フレキシブル回路基板、またはアンテナ切替回路30、TX/RX切替回路32、第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28が搭載された同様の基板である。別の例では、回路基板84は、プリント配線板、フレキシブル回路基板、または、アンテナ切替回路30、TX/RX切替回路32、第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28が形成されている同様の基板がある半導体基板(例えば、ガリウムヒ素(GaAs)基板または窒化ガリウム(GaN)基板)であってもよい。
【0057】
図5Bを参照すると、
図5Aの回路レイアウトの追加の図が示される。
図5Bに表されるように、サーキュレータ回路12は、アンテナ切替回路30とTX/RX切替回路32の間に第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28を含む。より詳細には、TX/RX切替回路32は、第1のTXスイッチング素子68及び第2のTXスイッチング素子70を含む。第1のTXスイッチング素子68は、TXポート20(
図5Aを参照)と第2のBAW遅延線28の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW1-Aに結合されている。第2のTXスイッチング素子70は、TXポート20と第1のBAW遅延線26の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW1-Bに結合されている。
【0058】
TX/RX切替回路32は、さらに、第1のRXスイッチング素子72及び第2のRXスイッチング素子74を含む。第1のRXスイッチング素子72は、RXポート24(
図5Aを参照)と第1のBAW遅延線26の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW1-Aに結合されている。第2のRXスイッチング素子74は、RXポート24と第2のBAW遅延線28の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW1-Bに結合されている。切替制御信号SW1-A及びSW1-Bは、
図2A~
図2H及び
図4に関して上記したように、第1のTXスイッチング素子68、第2のTXスイッチング素子70、第1のRXスイッチング素子72及び第2のRXスイッチング素子74の同時切替えを可能にし得る。
【0059】
アンテナ切替回路30は、第1のアンテナスイッチング素子76及び第2のアンテナスイッチング素子78を含む。第1のアンテナスイッチング素子76は、アンテナポート22(
図5Aを参照)と第1のBAW遅延線26の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW2-Aに結合されている。第2のアンテナスイッチング素子78は、アンテナポート22と第2のBAW遅延線28の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW2-Bに結合されている。
【0060】
アンテナ切替回路30は、さらに、第3のアンテナスイッチング素子80及び第4のアンテナスイッチング素子82を含む。第3のアンテナスイッチング素子80は、負荷インピーダンス50と第2のBAW遅延線28の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW2-Aに結合されている。第4のアンテナスイッチング素子82は、負荷インピーダンス50と第1のBAW遅延線26の間で結合され、そのゲートは切替え制御信号SW2-Bに結合されている。切替制御信号SW2-A及びSW2-Bは、
図2A~
図2H及び
図4に関して上記したように、第1のアンテナスイッチング素子76、第2のアンテナスイッチング素子78、第3のアンテナスイッチング素子80及び第4のアンテナスイッチング素子82の同時切替えを可能にし得る。
【0061】
例示的な態様では、アンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32は、第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28に対するより短い信号遅延時間τを可能にするより高い切替え速度(例えば、より短い切替え時間)をもたらすために、GaAs及び/またはGaNトランジスタで形成され得る。例えば、GaAsまたはGaNを用いたアンテナ切替回路30及びTX/RX切替回路32の切替え時間は、0.5ナノ秒(ns)~2nsであり得る。より高電力のサーキュレータ回路12の用途では、切替え時間は、2ns~50nsであり得る。
【0062】
この点で、
図6は、
図4~
図5Bの例示的なBAW遅延線ベースのサーキュレータ回路12の応答特性を示す。サーキュレータ回路12のSSDL線は、第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28を組み込む。例示的な態様では、各BAW遅延線26、28の信号遅延時間τは、10nsを超え得る。例示的な実施形態では、第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28は、3.00ミリメートル(mm)×2.50mmのサイズ(例えば、
図5Bに示すような実装面積)のGaAsまたはGaNスイッチモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)上にフリップチップ搭載されている。
図6にさらに示すように、この実装例は、挿入損失86が1.25デシベル(dB)~1.75dB、TXポート20とRXポート24の間の隔離88が20dBより大きい状態で、20メガヘルツ(MHz)帯域にわたって13ns~16nsの遅延を提供する。
【0063】
加えて、BAW遅延線26、28を組み込んでいるサーキュレータ回路12は、より高いQ値を達成し得(より低い挿入損失をもたらす)、より大きいRF帯域にわたって動作し得、より大きい電力信号を扱い得る。例えば、10nsより大きい信号遅延時間τで、第1のBAW遅延線26及び第2のBAW遅延線28の実装面積は、1.50mm×1.50mm~2.25mm×2.25mmのサイズであり得る。サーキュレータ回路12は、10GHzまでのRF帯域にわたって動作し得る。加えて、サーキュレータ回路12は、TXポート20とRXポート24の間に30dB~60dBの隔離を提供しながら、1.0~1.5dBの挿入損失をもたらし得る。
【0064】
当業者は、本開示の好ましい実施形態に対する改良及び変更を理解するだろう。そうした改良及び変更の全ては、本明細書中に開示された概念及びそれに続く特許請求の範囲内にあるとみなされる。