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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】レーダカバー
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20230414BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20230414BHJP
   B60R 13/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
G01S7/03 246
H01Q1/42
B60R13/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019140850
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021025776
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】太田 耕志朗
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-069713(JP,A)
【文献】特開2018-159584(JP,A)
【文献】特開2014-069634(JP,A)
【文献】特開2016-141355(JP,A)
【文献】特開2000-049522(JP,A)
【文献】特開2017-175515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 17/42
G01S 13/00 - 13/95
H01Q 1/42
B60R 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する透明部材と、前記透明部材を背面側から支持する支持部材と、前記透明部材と前記支持部材との間に配置されると共に前記透明部材を介して外部から視認可能な有色コアとを備えるレーダカバーであって、
前記有色コアは、
基部と、
前記基部の透明部材側表面の一部領域を露出させた状態で前記一部領域を除く前記透明部材側表面の他領域を覆う有色被膜と
を有することを特徴とするレーダカバー。
【請求項2】
前記基部は、少なくとも前記一部領域を含む部位が前記支持部材と異なる色であることを特徴とする請求項1記載のレーダカバー。
【請求項3】
前記基部の全体が前記支持部材と異なる同一色であることを特徴とする請求項2記載のレーダカバー。
【請求項4】
前記有色被膜は、
光沢を有する光輝性膜と、
前記光輝性膜と前記基部との間に配置された裏地層と
を有することを特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載のレーダカバー。
【請求項5】
前記基部は、前記一部領域を含む部位と他の部位とが異なる色であることを特徴とする請求項2記載のレーダカバー。
【請求項6】
前記透明部材の背面は、前記有色コアが配置された領域を除いて前記支持部材が直接固着されていることを特徴とする請求項1~5いずれか一項に記載のレーダカバー。
【請求項7】
透光性を有する透明部材と、前記透明部材を背面側から支持する支持部材と、前記透明部材と前記支持部材との間に配置されると共に前記透明部材を介して外部から視認可能な有色コアとを備えるレーダカバーの製造方法であって、
前記透明部材を形成する透明部材形成工程と、
前記有色コアを形成する有色コア形成工程と、
前記透明部材の背面側に前記有色コアを配置した状態で前記支持部材を形成する支持部材形成工程と
を有し、
前記有色コア形成工程は、
前記有色コアの基部を形成する基部形成工程と、
前記基部の透明部材側表面の一部領域を露出させた状態で前記一部領域を除く前記透明部材側表面の他領域を覆う有色被膜を形成する有色被膜形成工程と
を有する
ことを特徴とするレーダカバーの製造方法。
【請求項8】
前記有色被膜形成工程は、
前記基部の前記一部領域を含む前記透明部材側表面に対して前記有色被膜を形成する被覆工程と、
前記被覆工程にて形成された前記有色被膜の前記一部領域を覆う部位を除去する除去工程と
を有することを特徴とする請求項7記載のレーダカバーの製造方法。
【請求項9】
前記除去工程にて、レーザによって前記有色被膜の前記一部領域を覆う部位を切除することを特徴とする請求項8記載のレーダカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波等の電波を用いて車両の周囲の障害物等を検知するレーダユニットが車両に搭載されている。このようなレーダユニットは、エンブレム等の識別マークが形成されたレーダカバーに前方から覆われた状態で車両の内部に配置されている。
【0003】
レーダカバーは、レーダユニットにおいて送受信される電波を極力減衰させずに透過可能である必要がある。一方で、レーダカバーに形成されたエンブレム等の識別マークの質感を高めるためには、レーダカバーの一部に対して光沢を付与する必要がある。このため、レーダカバーでは、例えばレーダカバーの表面側に配置される透光部材の裏面に凹部を形成し、この凹部に電波を透過可能なインジウムの蒸着層やスパッタリング層を形成することで光沢を得つつ電波を透過可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-49522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、上述のようなレーダカバーにおいて、エンブレム等の識別マークの縁に沿った加飾を行う場合がある。また、正面から見て識別マークの内部に加飾を行うことも考えられる。このような場合には、一般的に透明部材の背面に印刷や塗装を施すことによって加飾を行う。しかしながら、透明部材の背面は必ずしも印刷や塗装に適した面になっているとは限らない。このため、印刷や塗装による加飾は施工不良が生じやすい。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、車両等に搭載されるレーダカバーにおいて、透明部材の背面に対して印刷や塗装を施すことなく加飾を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、透光性を有する透明部材と、上記透明部材を背面側から支持する支持部材と、上記透明部材と上記支持部材との間に配置されると共に上記透明部材を介して外部から視認可能な有色コアとを備えるレーダカバーであって、上記有色コアが、基部と、上記基部の透明部材側表面の一部領域を露出させた状態で上記一部領域を除く上記透明部材側表面の他領域を覆う有色被膜とを有するという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記基部が、少なくとも上記一部領域を含む部位が上記支持部材と異なる色であるという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記基部の全体が上記支持部材と異なる同一色であるという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、上記有色被膜が、光沢を有する光輝性膜と、上記光輝性膜と上記基部との間に配置された裏地層とを有するという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第2の発明において、上記基部が、上記一部領域を含む部位と他の部位とが異なる色であるという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第1~第5いずれかの発明において、上記透明部材の背面が、上記有色コアが配置された領域を除いて上記支持部材が直接固着されているという構成を採用する。
【0014】
第7の発明は、透光性を有する透明部材と、上記透明部材を背面側から支持する支持部材と、上記透明部材と上記支持部材との間に配置されると共に上記透明部材を介して外部から視認可能な有色コアとを備えるレーダカバーの製造方法であって、上記透明部材を形成する透明部材形成工程と、上記有色コアを形成する有色コア形成工程と、上記透明部材の背面側に上記有色コアを配置した状態で上記支持部材を形成する支持部材形成工程とを有し、上記有色コア形成工程が、上記有色コアの基部を形成する基部形成工程と、上記基部の透明部材側表面の一部領域を露出させた状態で上記一部領域を除く上記透明部材側表面の他領域を覆う有色被膜を形成する有色被膜形成工程とを有するという構成を採用する。
【0015】
第8の発明は、上記第7の発明において、上記有色被膜形成工程が、上記基部の上記一部領域を含む上記透明部材側表面に対して上記有色被膜を形成する被覆工程と、上記被覆工程にて形成された上記有色被膜の上記一部領域を覆う部位を除去する除去工程とを有するという構成を採用する。
【0016】
第9の発明は、上記第8の発明において、上記除去工程にて、レーザによって上記有色被膜の上記一部領域を覆う部位を切除するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、透明部材と支持部材との間に有色コアが配置されている。また、有色コアの有色被膜は、有色コアの基部の透明部材側表面の一部を露出させている。このため、本発明によれば、従来は外部から視認されることがなかった有色コアの基部の一部を、透明部材を介して視認することが可能となる。したがって、本発明によれば、有色コアの基部を用いて加飾を行うことができ、透明部材の背面に印刷や塗装を行うことなく加飾を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)が本発明の一実施形態におけるレーダカバーを備えるラジエータグリルの正面図であり、(b)が本発明の一実施形態におけるレーダカバーの拡大正面図である。
図2】本発明の一実施形態におけるレーダカバーの模式的な断面図である。
図3】本発明の一実施形態におけるレーダカバーが備えるインナコアを模式的に示す拡大断面図である。
図4】本発明の一実施形態におけるレーダカバーの製造方法を説明するための模式図である。
図5】本発明の一実施形態におけるレーダカバーの製造方法を説明するための模式図である。
図6】本発明の一実施形態におけるレーダカバーの第1変形例が備えるインナコアを模式的に示す拡大断面図である。
図7】本発明の一実施形態におけるレーダカバーの第2変形例が備えるインナコアを模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係るレーダカバーの一実施形態について説明する。
【0020】
図1(a)は、本実施形態のレーダカバー10を備えるラジエータグリル1の正面図であり、図1(b)は、本実施形態のレーダカバー10の拡大正面図である。また、図2は、本実施形態のレーダカバー10の模式的な断面図である。
【0021】
ラジエータグリル1は、車両のエンジンルームに通じる開口を塞ぐように車両の前面に設けられており、エンジンルームへの通気を確保しかつエンジンルームへの異物の進入を防止している。ラジエータグリル1の中央には、エンジンルーム内に配置されるレーダユニットRに対向するようにしてレーダカバー10が設けられている。なお、ラジエータグリル1において、レーダカバー10を除く部位は、電波透過性を有する必要性がないことから、例えばクロム(Cr)によってめっき処理されている。
【0022】
レーダユニットR(図2参照)は、例えばミリ波を発信する発信部、反射波を受信する受信部、及び、演算処理を行う演算部等を有している。このレーダユニットRは、レーダカバー10を透過する電波の送受信を行い、受信した電波に基づいて車両の周囲状況を検知する。例えば、レーダユニットRは、障害物までの距離や障害物の相対速度等を算出して出力する。
【0023】
レーダカバー10は、レーダユニットRを車両の正面側から見て覆うように配置されている。このレーダカバー10は、図1(b)に示すように、車両の正面側から見て、車両メーカのエンブレムを示す図形や文字等を表す光輝領域10Aと、当該光輝領域10Aの視認性を向上させる黒色領域10Bと、光輝領域10Aを縁取る加飾領域10Cとを有する部品である。例えば、加飾領域10Cは、黒色領域10Bと異なる白の色が付与された領域である。このようなレーダカバー10は、図2に示すように、透明部材11と、インナコア12(有色コア)と、ベース部材13(支持部材)とを備えている。
【0024】
凹部11aは、インナコア12を収容する部位であり、収容されたインナコア12を車両の前方側から立体的に視認可能とする。この凹部11aは、車両メーカのエンブレム等の図形や文字等の形状に沿って設けられている。なお、後に詳説するが、本実施形態においてインナコア12は、金属あるいは金属調の光沢を有する光沢領域Raと、白色の白色領域Rbとを有している。このような凹部11aにインナコア12が収容されることによって、上述の光輝領域10A及び加飾領域10Cが形成される。つまり、光輝領域10A及び加飾領域10Cは、インナコア12が透明部材11の表面側から視認可能な領域である。
【0025】
このような透明部材11は、例えば、透明のPC(ポリカーボネート)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等の透明合成樹脂によって形成されており、1.5mm~10mm程度の厚さとされている。また、透明部材11の表側の面には、必要に応じて、傷付き防止のためのハードコート処理、又はウレタン系塗料のクリヤコート処理が施される。なお、耐傷性を備える透明合成樹脂であれば、これらの傷付き防止処理は不要である。
【0026】
インナコア12は、透明部材11の凹部11aに収容された状態にて、透明部材11とベース部材13との間に配置されている。図3は、インナコア12を模式的に示す拡大断面図である。この図に示すように、インナコア12は、基部12aと、有色被膜12bとを備えている。基部12aは、例えば射出成形によって形成された樹脂成形品であり、例えばABS、PC又はPET等の合成樹脂によって形成されている。この基部12aは、透明部材11の凹部11aを埋設する凸状の形状とされており、透明部材11の凹部11aに嵌合可能とされている。
【0027】
このような基部12aの透明部材側表面12a1(透明部材11側の表面であり、凹部11aの内壁面に有色被膜12bを介して対向配置される表面)には、透明部材11を介して外部から視認可能な有色被膜12bが設けられている。つまり、基部12aは、外部から視認可能な有色被膜12bの土台となるものであり、有色被膜12bを支持している。
【0028】
また、本実施形態において基部12aは、全体が白色とされている。つまり、基部12aは、全体が白色の樹脂材料によって形成されることにより、全体が同一色とされている。なお、本実施形態においてベース部材13は、黒色とされている。つまり、本実施形態において基部12aは、全体がベース部材13と異なる色とされている。
【0029】
有色被膜12bは、金属光沢あるいは金属調光沢を有する被膜であり、基部12aの透明部材側表面12a1の正面側から見た縁部領域12a2(一部領域)を露出させた状態で、透明部材側表面12a1を覆うように設けられている。有色被膜12bは、外部から金属光沢あるいは金属調光沢を有すると視認される領域(光沢領域Ra)を形成している。また、基部12aの有色被膜12bによって覆われていない領域は、基部12aがむき出しとされており、外部から白色として視認される白色領域Rbを形成している。このように、本実施形態のレーダカバー10は、基部12aの透明部材側表面12a1の縁部領域12a2を露出させた状態で縁部領域12a2を除く透明部材側表面12a1の他領域を覆う有色被膜12bを有している。
【0030】
図3の部分拡大図に示すように、有色被膜12bは、ベースコート層12b1(裏地層)と、光輝性膜12b2と、トップコート層12b3とを備えている。ベースコート層12b1は、基部12aと光輝性膜12b2との間に配置されており、基部12aと光輝性膜12b2との密着性を向上させるためのコーティング層である。また、本実施形態においてベースコート層12b1は、光輝性膜12b2を透過した外光を吸収し、光輝領域10Aが白ボケすることを抑制する裏地層としても機能する。このため、ベースコート層12b1は、基部12aと異なる色とされ、白色とされた基部12aよりも暗い色(光吸収率が高い色)とされている。具体的には、本実施形態においてベースコート層12b1は黒色とされている。
【0031】
光輝性膜12b2は、金属光沢(金属色)あるいは金属調光沢(金属調色)を有しかつ電波透過性を有する薄膜である。この光輝性膜12b2は、例えば真空蒸着やスパッタリングによって形成されるインジウム(In)からなる金属製の薄膜であり、多数の微細な隙間を有する不連続膜とされている。また、光輝性膜12b2は、半導体と金属とを含む合金によって形成された薄膜とすることもできる。具体的には、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)等の半導体と、アルミニウム(Al)やクロム(Cr)等の金属との合金によって光輝性膜12b2を形成することができる。このような合金によって形成された光輝性膜12b2は、金属と比較して自由電子の少ない半導体を含んでおり、電磁波を透過する性質を有している。また、光輝性膜12b2は、金属調光沢を有する塗料によって形成することも可能である。
【0032】
トップコート層12b3は、光輝性膜12b2を覆うように光輝性膜12b2上に形成されており、光輝性膜12b2を保護するためのものである。このトップコート層12b3は、例えば透明(着色透明を含む)な合成樹脂を用いたクリヤー塗装によって形成されている。また、トップコート層12b3は、酸化ケイ素(SiOx)からなる透明セラミックコート層とすることもできる。この場合には、クリヤー塗装等によって形成される樹脂からなるトップコート層と比較して高い耐熱性を有すると共に、高い電波透過性を有する。
【0033】
ベース部材13は、透明部材11の背面に固着され、透明部材11を背面側から支持する部位である。本実施形態においてベース部材13は、黒色の樹脂材料から形成されており、凹部11aが設けられた領域を除いてベース部材13の背面と固着されている。つまり、透明部材11の背面は、インナコア12が配置された領域を除いて、ベース部材13と固着されている。また、ベース部材13は、エンジンルーム側に突出する係合部13aを有している。この係合部13aは、先端部が爪状に成形されており、当該先端部が例えばラジエータグリル本体に係止される。このように透明部材11の裏側の面に対して固着されたベース部材13は、透明部材11の外側から視認可能とされており、上述の黒色領域10Bを形成している。このベース部材13は、光輝領域10A以外の領域を黒色に視認させ、相対的に光輝領域10Aの視認性を向上させる。
【0034】
このようなベース部材13は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、AES(アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合合成樹脂)、ASA(アクリロニトリル・スチレン・アクリレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、有色のPC、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂、又はこれらの複合樹脂からなり、0.5mm~10mm程度の厚さとされている。
【0035】
なお、本実施形態においては、有色被膜12bが除去された領域を埋設するように透明部材11が凹部11aの内壁面から突出する突出部11bを有している。ただし、有色被膜12bは、視認可能とするために図面上では便宜上厚く図示しているに過ぎず、実際には極めて薄い膜である。このため、透明部材11が凹部11aの内壁面から突出する突出部11bを設けていなくても良い。
【0036】
続いて、本実施形態のレーダカバー10の製造方法について、図4及び図5を参照して説明する。図4及び図5は、本実施形態のレーダカバー10の製造方法について説明するための概略図である。まず、図4(a)に示すように、透明部材11を形成する。例えば、透明部材11は、樹脂材料を射出成形することによって形成される。この射出成形により、凹部11aを有する透明部材11を形成することができるため、後工程により凹部11aを形成する必要はない。なお、必要に応じて、透明部材11の表面側(車両外側に向く面)あるいは全面には、耐久性等を向上させるためのハードコート処理を施しても良い。この図4(a)に示す工程は、透明部材11を形成する透明部材形成工程である。
【0037】
次に、図4(b)に示すように、インナコア12の基部12aを形成する。例えば、基部12aは、射出成形により形成される。より詳細には、基部12aは、金型の内部空間に対して溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を冷却して硬化させることによって形成される。この図4(b)に示す工程は、インナコア12の基部12aを形成する基部工程である。
【0038】
続いて、図4(c)に示すように、ベースコート層12b1を形成する。この図4(c)に示す工程は、本実施形態において裏地層として機能するベースコート層12b1を基部12aの表面に形成する裏地層形成工程である。なお、図4(c)に示すように、ここでは、ベースコート層12b1は、基部12aの透明部材側表面12a1の前面に対して形成される。例えば、水よりも高い粘度とされたベースコート層形成材料をスピンコート法等によって基部12aの表面に成膜し、乾燥させることでベースコート層12b1が形成される。
【0039】
次に、図4(d)に示すように、光輝性膜12b2を形成する。ここでは、ベースコート層12b1上に、例えば真空蒸着あるいはスパッタリングによって光輝性膜12b2を形成する。このような図4(d)に示す工程は、ベースコート層12b1上に光輝性膜12b2を形成する光輝性膜形成工程である。
【0040】
次に、図4(e)に示すように、トップコート層12b3を形成する。例えば、光輝性膜12b2の表面に対してクリヤー塗装を行い、その後乾燥させることにより、トップコート層12b3を形成する。
【0041】
このような図4(c)~図4(e)に示す工程によって、基部12aの透明部材側表面12a1の全域に対して有色被膜12bが形成される。つまり、図4(c)~図4(e)に示す工程は、基部12aの縁部領域12a2を含む透明部材側表面12a1に対して有色被膜12bを形成する被覆工程である。
【0042】
次に、図4(f)に示すように、有色被膜12bの基部12aの縁部領域12a2を覆った部位を除去する。例えば、有色被膜12bに対してレーザを照射して、有色被膜12bの縁部領域12a2を覆った部位を切除する。レーザを用いることによって短時間でかつ正確に有色被膜12bの一部を除去できるが、除去方法はレーザ照射に限られるものではない。例えば、カッター等によって有色被膜12bの一部を除去するようにしても良い。このような図4(f)に示す工程は、被覆工程で形成された有色被膜12bの縁部領域12a2を覆う部位を除去する除去工程である。
【0043】
このような図4(c)~図4(f)に示す工程によって、基部12aの透明部材側表面12a1の縁部領域12a2を露出させた状態で、縁部領域12a2を除く透明部材側表面12a1の他領域を覆う有色被膜12bが形成される。つまり、図4(c)~図4(f)は、基部12aの透明部材側表面12a1の縁部領域12a2を露出させた状態で、縁部領域12a2を除く透明部材側表面12a1の他領域を覆う有色被膜12bを形成する有色被膜形成工程である。
【0044】
また、図4(b)~図4(f)に示す工程によってインナコア12が形成される。つまり、図4(b)~図4(f)に示す工程は、インナコア12を形成するインナコア形成工程(有色コア形成工程)である。なお、インナコア12の形成は、図4(a)で示した透明部材11の形成を待って行う必要はない。図4(a)で示した透明部材11の形成工程と並行して、インナコア12を形成することによって、レーダカバー10の製造時間を短縮することができる。
【0045】
次に、図5(g)に示すように、インナコア12を透明部材11の凹部11aに嵌合する。次に、図5(h)に示すように、ベース部材13を形成する(支持部材形成工程)。ここでは、凹部11aにインナコア12が設置された透明部材11を、射出成形用の金型の内部に配置し、透明部材11の背面側に溶融した樹脂を射出するインサート成形を行うことで、ベース部材13を形成する。このようなベース部材13は、インサート成形時の熱により透明部材11と溶着され、インナコア12を覆うように配置される。これによって、インナコア12が透明部材11に対して当接状態で固定される。
【0046】
以上のような工程で本実施形態のレーダカバー10が製造される。このような本実施形態のレーダカバー10は、透光性を有する透明部材11と、透明部材11を背面側から支持するベース部材13と、透明部材11とベース部材13との間に配置されると共に透明部材11を介して外部から視認可能なインナコア12とを備えている。また、インナコア12は、基部12aと、基部12aの透明部材側表面12a1の縁部領域12a2を露出させた状態で縁部領域12a2を除く透明部材側表面12a1の他領域を覆う有色被膜12bとを有している。
【0047】
このような本実施形態のレーダカバー10においては、透明部材11とベース部材13との間にインナコア12が配置されている。また、インナコア12の有色被膜12bは、インナコア12の基部12aの透明部材側表面12a1の一部を露出させている。このため、本実施形態のレーダカバー10によれば、従来は外部から視認されることがなかったインナコア12の基部12aの一部を、透明部材11を介して視認することが可能となる。したがって、本実施形態のレーダカバー10によれば、インナコア12の基部12aを用いて加飾を行うことができ、透明部材11の背面に印刷や塗装を行うことなく加飾を行うことが可能となる。
【0048】
また、本実施形態のレーダカバー10においては、インナコア12の基部12aが、ベース部材13と異なる色とされている。このように、少なくとも縁部領域12a2を含む部位がベース部材13と異なる色であることによって、縁部領域12a2を視覚的に認識しやすくすることが可能となる。ただし、インナコア12の形状等によっては、縁部領域12a2の色がベース部材13と同一であったとしても、縁部領域12a2を視覚的に認識することが可能となる場合もある。このため、インナコア12の色をベース部材13と同一の色とする構成を採用することも考えられる。
【0049】
また、本実施形態のレーダカバー10においては、基部12aの全体がベース部材13と異なる同一色とされている。このため、基部12aを一種類の樹脂によって形成することができる。したがって、本実施形態のレーダカバー10によれば、基部12aの形成を容易に行うことが可能となる。
【0050】
また、本実施形態のレーダカバー10においては、有色被膜12bが、光沢を有する光輝性膜12b2と、光輝性膜12b2と基部12aとの間に配置されたベースコート層12b1とを有している。このように有色被膜12bを複数層に形成することによって、有色被膜12bを多機能とすることが可能となる。例えば、本実施形態においては、ベースコート層12b1が裏地層として機能している。このため、光輝性膜12b2によって光沢を有し、ベースコート層12b1によってベースコート層12b1に入射した外光が反射することを防止することができる。
【0051】
また、本実施形態のレーダカバー10においては、透明部材11の背面が、インナコア12が配置された領域を除いてベース部材13が直接固着されている。このような本実施形態のレーダカバー10においては、インナコア12が配置された領域を除いた全部の領域にてベース部材13を視認することが可能であり、印刷層や塗料層を全く必要とせずに黒色領域10Bを形成することができる。
【0052】
また、本実施形態のレーダカバー10の製造方法においては、インナコア形成工程が、インナコア12の基部12aを形成する基部形成工程と、基部12aの透明部材側表面12a1の縁部領域12a2を露出させた状態で縁部領域12a2を除く透明部材側表面12a1の他領域を覆う有色被膜12bを形成する有色被膜形成工程とを有している。このため、上述のように透明部材11の背面に印刷や塗装を行うことなく加飾が施されたレーダカバー10を製造することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態のレーダカバー10の製造方法においては、有色被膜12b形成工程が、基部12aの縁部領域12a2を含む透明部材側表面12a1に対して有色被膜12bを形成する被覆工程と、被覆工程にて形成された有色被膜12bの縁部領域12a2を覆う部位を除去する除去工程とを有している。このような本実施形態のレーダカバー10によれば、有色被膜12bを形成する場合に、マスクを用いる必要がなくなる。
【0054】
さらに、本実施形態のレーダカバー10の製造方法においては、除去工程にて、レーザによって有色被膜12bの縁部領域12a2を覆う部位を切除する。このため、短時間でかつ正確に有色被膜12bの一部を除去できる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態においては、インナコア12の基部12aが同一材料によって同一色とされた構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。図6は、本発明のレーダカバーの第1変形例が備えるインナコア12の模式的な断面図である。この図に示すように、縁部領域12a2を含む露出部位12a3と、有色被膜12bに被覆された他の部位(被覆部位12a4)とを異なる色とすることも可能である。例えば、露出部位12a3を白色とし、被覆部位12a4を黒色とすることも可能である。このような場合には、被覆部位12a4によって光輝性膜12b2を透過した外光を吸収できるため、ベースコート層12b1を黒色とする必要がない。なお、本変形例で示すような露出部位12a3と被覆部位12a4との色が異なる基部12aは、樹脂の二色成形等によって形成することが可能である。
【0057】
また、上記実施形態においては、基部12aの透明部材側表面12a1のうち縁部領域12a2を外部から視認可能に露出させる構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。図7は、本発明のレーダカバーの第2変形例が備えるインナコア12の模式的な断面図である。この図に示すように、基部12aの透明部材側表面12a1のうち中央領域12a5を外部から視認可能に露出させる構成を採用することも可能である。このような場合には、正面側から見て中央領域12a5が有色被膜12bに囲まれるため、基部12aとベース部材13とが同一色であっても基部12aを明確に視認することが可能である。
【0058】
また、上記実施形態においては、縁部領域12a2が有色被膜12b以外の被膜でも覆われていない構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、縁部領域12a2を透明な層で覆うことは可能である。このような構成を採用することによって、例えば縁部領域12a2を保護することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1……ラジエータグリル、10……レーダカバー、10A……光輝領域、10B……黒色領域、10C……加飾領域、11……透明部材、11a……凹部、11b……突出部、12……インナコア(有色コア)、12a……基部、12a1……透明部材側表面、12a2……縁部領域、12a3……露出部位、12a4……被覆部位、12a5……中央領域、12b……有色被膜、12b1……ベースコート層(裏地層)、12b2……光輝性膜、12b3……トップコート層、13……ベース部材(支持部材)、R……レーダユニット、Ra……光沢領域、Rb……白色領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7