(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】電源回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
H02M3/28 C
H02M3/28 H
(21)【出願番号】P 2019206086
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 孝宣
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-223904(JP,A)
【文献】特開平4-208873(JP,A)
【文献】特開2008-086113(JP,A)
【文献】特開2013-078172(JP,A)
【文献】国際公開第2008/016050(WO,A1)
【文献】特開2002-267708(JP,A)
【文献】特開2016-100976(JP,A)
【文献】特開2009-195044(JP,A)
【文献】特開2000-350455(JP,A)
【文献】特開2019-129593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有寿命コンデンサと、前記有寿命コンデンサに直列に接続されたスイッチとで構成される直列回路を、複数、並列接続して構成された切り替え回路と、
前記切り替え回路を構成する複数のスイッチのオンオフ切り替えを行い、複数の有寿命コンデンサのいずれか1つを通電状態とする切り替え制御を実行する制御回路と
を備え、
前記制御回路は、
前記複数の有寿命コンデンサのそれぞれの寿命を示す指標となる物理量を監視し、監視結果に基づいて、前記複数の有寿命コンデンサのそれぞれについて寿命に到達しているか否かを判断し、
判断結果に基づいて、前記通電状態である有寿命コンデンサが寿命に到達する前に、寿命に到達していない他の有寿命コンデンサを通電状態とするように前記切り替え制御を実行し、
前記判断結果に基づいて、前記複数の有寿命コンデンサのうち、寿命に到達した有寿命コンデンサが存在する場合には、寿命に到達した当該有寿命コンデンサを通電状態としないように前記切り替え制御を実行する
電源回路。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記指標となる物理量として、前記複数の有寿命コンデンサに関する通電時間、経過時間、漏れ電流、ESR、静電容量の少なくともいずれか1つを監視し、
前記指標となる物理量に応じて、前記寿命に到達しているか否かを判断するためにあらかじめ設定された寿命判定条件と監視結果とを比較することで、前記複数の有寿命コンデンサのそれぞれについて前記寿命に到達しているか否かを判断する
請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記判断結果に基づいて、前記複数の有寿命コンデンサのうち、寿命に到達した有寿命コンデンサが存在する場合には、寿命に到達したことを知らせる報知信号を出力する
請求項1または2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記複数の有寿命コンデンサに関する使用環境温度、あるいは前記切り替え回路と並列に接続された負荷に供給される負荷電流の少なくともいずれかを実使用環境に応じた指標値として監視し、
監視した前記実使用環境に応じた指標値が、仕様で定めた許容値を超えている場合には、前記複数の有寿命コンデンサのそれぞれの寿命があらかじめ設定された想定寿命よりも短くなることを知らせる報知信号を出力する
請求項1から3のいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項5】
前記制御回路は、
前記複数の有寿命コンデンサの全てが、あらかじめ設定された想定寿命を超えた状態で、かつ、寿命に到達していないと判断した場合には、前記想定寿命に到達したことを知らせる報知信号を出力する
請求項1から4のいずれか1項に記載の電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有寿命コンデンサの長寿命化を図った電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載される電源回路は、平滑のためのコンデンサが必要不可欠である。一般的に、電源回路の平滑用コンデンサとしては、大容量または高耐圧を実現するために、電解コンデンサが用いられている。FA(Factory Automation)機器においては、電源の瞬停があっても動作を保証するため、静電容量の大きな電解コンデンサを電源断時のバックアップ用として用いている。
【0003】
電子機器の寿命は長いことが求められる。その一方で、電子機器に搭載される電源回路は、電子機器が使用されている限り通電されており、出力電圧が不安定になった場合には、マイコン、アナログ回路等の正常動作が保証できなくなる。このため、電子機器に搭載される電源回路は、特に寿命が長いことが求められている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1における電源装置では、電解コンデンサの周囲温度を測定し、電解コンデンサの寿命と経過寿命を求めている。さらに、特許文献1における電源装置では、残余寿命を算出して寿命の判定を行い、残余寿命が少ない場合には、電解コンデンサを切り替える機能を備えている。
【0005】
また、特許文献2における電源装置では、平滑用電解コンデンサの突入電流を外部から測定している。さらに、特許文献2における電源装置では、突入電流の測定結果に基づいて平滑用電解コンデンサの寿命が確認された場合には、スイッチのオンオフにより冗長化コンデンサを使用する機能を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-78172号公報
【文献】特開2008-86113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
電源回路において平滑のために用いられるコンデンサは、有寿命コンデンサである。有寿命コンデンサの具体例である電解コンデンサは、電解液のドライアップなどにより摩耗劣化が進行して性能が低下する、有寿命部品である。このため、電解コンデンサの寿命が電源回路の寿命に直結することとなる。
【0008】
電解コンデンサは、一般的にアレニウス則にて寿命が算出でき、周囲温度によって劣化する。さらに、電解コンデンサは、リプル電流、ESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)等による発熱によって、摩耗劣化が加速される。特に、電源回路に用いられる平滑用コンデンサの場合には、トランス、コイル、スイッチング素子などの自己発熱に晒され、平滑によるリプル電流が常時印加されるため、寿命が短くなる問題があった。
【0009】
一方で、電解コンデンサは、無通電のまま長期間放置した場合には、陽極箔の酸化皮膜と電解液が反応することで、劣化が進行する特性がある。従って、電解コンデンサは、無通電でも経年劣化が進行する問題があった。
【0010】
しかしながら、特許文献1および特許文献2では、電解コンデンサの寿命を判定し、寿命の到達によって、電解コンデンサを切り替えている。このため、待機していた予備の電解コンデンサに関しては、無通電による経年劣化が進行してしまう課題があった。
【0011】
さらに、特許文献1および特許文献2では、予備の電解コンデンサに故障が発生していた場合に、そのような故障を切り替え前に検出していない。従って、主とする電解コンデンサが寿命に到達し、予備の電解コンデンサに切り替えた時点で、予備のコンデンサが故障していた場合には、機器の動作が前触れなく異常となる可能性があった。
【0012】
そして、このような課題は、電解コンデンサに限らず、電源回路において平滑のために用いられる有寿命コンデンサに対して、共通する課題である。
【0013】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、有寿命コンデンサの長寿命化を図った電源回路を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る電源回路は、有寿命コンデンサと、有寿命コンデンサに直列に接続されたスイッチとで構成される直列回路を、複数個、並列接続して構成された切り替え回路と、切り替え回路を構成する複数のスイッチのオンオフ切り替えを行い、複数の有寿命コンデンサのいずれか1つを通電状態とする切り替え制御を実行する制御回路とを備え、制御回路は、複数の有寿命コンデンサのそれぞれの寿命を示す指標となる物理量を監視し、監視結果に基づいて、複数の有寿命コンデンサのそれぞれについて寿命に到達しているか否かを判断し、判断結果に基づいて、通電状態である有寿命コンデンサが寿命に到達する前に、寿命に到達していない他の有寿命コンデンサを通電状態とするように切り替え制御を実行し、判断結果に基づいて、複数の有寿命コンデンサのうち、寿命に到達した有寿命コンデンサが存在する場合には、寿命に到達した当該有寿命コンデンサを通電状態としないように切り替え制御を実行するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有寿命コンデンサの長寿命化を図った電源回路を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電源回路の構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る電源装置に適用される電解コンデンサの寿命に関する説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態2において、監視結果に基づいて電解コンデンサの劣化診断および切り替え制御を実行する回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の電源装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0018】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電源回路の構成図である。
図1では、例として、電子機器の一次電源として、商用電源から直流電源を得るためのAC/DCコンバータ回路を用いる場合について説明する。本例では、二次側に複数の電解コンデンサを配設し、切り替えて使用するものとして説明する。
【0019】
図1に示したスイッチング電源において、一次側への印加電圧V
INは、商用電源1により供給される。印加電圧V
INは、ダイオードブリッジ2を介して整流され、入力電解コンデンサ3で平滑され、制御回路4にDC電源が供給される。制御回路4よってスイッチング素子5が駆動され、トランス6を介して絶縁した二次電源として電源出力V
OUTが生成される。電源出力V
OUTは、フィードバック回路12および絶縁回路7を介して制御回路4にフィードバックされ、安定化が図られている。
【0020】
トランス6の二次側に励起される矩形波は、ダイオード8で整流され、例えばスイッチ11aによってオンされた電解コンデンサ9aによって平滑化が行われることで、二次電源としての電源出力VOUTが生成される。スイッチ11aのオンオフは,制御回路20によって切り替え制御される。
【0021】
制御回路20は、温度に依存して抵抗値が変化する温度測定素子10aの抵抗値を測定することによって、電解コンデンサ9aの使用環境温度を推定する機能を備えている。同様に、制御回路20は、温度測定素子10bの抵抗値を測定することによって、電解コンデンサ9bの使用環境温度を推定する機能、および温度測定素子10cの抵抗値を測定することによって、電解コンデンサ9cの使用環境温度を推定する機能も備えている。なお、温度測定素子10a、10b、10cは、本実施の形態1に係る電源回路では必須の要件ではなく、実施の形態2において、機能を詳述する。
【0022】
なお、
図1に示した構成において、電解コンデンサ9aおよびスイッチ11aで構成された直列回路は、出力電圧V
OUTを平滑化するための第1の平滑化回路に相当する。そして、このような機能を備えた平滑化回路が、
図1では、第1の平滑化回路、第2の平滑化回路、および第3の平滑化回路として、並列接続されている。
【0023】
すなわち、第2の平滑化回路は、電解コンデンサ9bおよびスイッチ11bの直列回路として構成され、第3の平滑化回路は、電解コンデンサ9cおよびスイッチ11cの直列回路として構成されている。なお、本実施の形態1に係る電源回路の回路構成としては、
図1に例示したような平滑化回路を3並列として用いる場合に限定されない。平滑化回路は、使用環境等に応じて、2並列以上として構成されれば、有寿命コンデンサの長寿命化を図った電源回路を実現することができる。
【0024】
本実施の形態1に係る電源装置において長寿命化を図るための具体的な手法を説明する前に、有寿命コンデンサの1種である電解コンデンサの寿命について、図面を用いて説明する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る電源装置に適用される電解コンデンサの寿命に関する説明図である。
図2では、横軸を稼働時間、縦軸をコンデンサ寿命としており、稼働時間に対する電解コンデンサの寿命の推移が示されている。
【0025】
一般的に、電解コンデンサの寿命は、アレニウス則として示される下式(1)によって表される。
L=Ls×2^((Tmax-Ta)/10) (1)
ただし、L:寿命(Hour)
Ls:想定寿命(Hour)
Tmax:規定上限温度
Ta:周囲温度。
【0026】
上式(1)で求めた寿命の時間推移が、
図2中では曲線30aとして示されている。また、実使用においては、リプル電流に起因するジュール熱により自己発熱するため、負荷により摩耗劣化が加速される。実使用による寿命の時間推移が、
図2中では曲線30bとして示されている。また、
図2中では、電解コンデンサ9の摩耗劣化の度合が、両矢印31として模式的に示されている。
【0027】
電解コンデンサ9は、無通電で放置した場合には、陽極箔の酸化皮膜と電解液とが反応することで経年劣化する。特に、電解コンデンサ9は、高温環境下におかれた場合には、漏れ電流の増加、耐圧低下などのような、特性劣化が発生する。そして、漏れ電流の増加により、発熱が増える。このため、無通電による寿命の時間推移は、
図2中では、曲線30cとして示されている。
【0028】
曲線30cで示した無通電による劣化は,電圧の印加によって回復する。ただし、特性の劣化が進行していた場合には、自己発熱により電解コンデンサ9の防爆弁が開放され、故障する可能性がある。無通電に起因して特性の劣化が進行しているコンデンサを、通電状態に切り替えて使用した場合の寿命の時間推移が、
図2中では、曲線30dとして示されている。
【0029】
従来技術として、使用しているコンデンサの寿命を判定し、出力電圧の平滑化のために使用するコンデンサの切り替えを行うものはある。しかしながら、従来技術において、現在使用中のコンデンサを予備のコンデンサに切り替えるタイミングは、現在使用中のコンデンサが寿命になったと判定されたタイミングである。
【0030】
従って、従来技術では、切り替えを行った際の予備のコンデンサが、曲線30dのように、すでに寿命が劣化してしまっているおそれがある。本実施の形態1に係る制御回路20は、このような問題を解消するための、電解コンデンサの切り替え制御を実現するものであり、以下に詳細に説明する。
【0031】
本実施の形態1に係る制御回路20は、診断対象となる複数の電解コンデンサ9のそれぞれに関する通電時間、経過時間、漏れ電流、ESR、静電容量のいずれか1つ以上を、電解コンデンサ9の寿命を示す指標となる物理量として監視し、電解コンデンサ9の劣化状態および異常状態を判断する機能を備えている。
【0032】
制御回路20は、電解コンデンサ9の劣化状態に応じて、電源回路で使用される電解コンデンサ9を切り替える。すなわち、制御回路20は、電解コンデンサ9が寿命を迎える前に、使用する電解コンデンサ9を切り替える切り替え制御を実行する。
【0033】
さらに、制御回路20は、切り替え制御を実行する際には、すでに寿命に到達したと判断した電解コンデンサ、および異常になったと判断した電解コンデンサ9を平滑化処理に使用しないように、切り替え対象から除外する。
【0034】
また、制御回路20は、すでに寿命に到達したと判断した電解コンデンサ9、あるいは異常になったと判断した電解コンデンサ9が存在することを、報知信号として外部に通知することができる。
【0035】
以上のように、本実施の形態1によれば、平滑化処理に使用する電解コンデンサが寿命を迎える前に、寿命に到達していない他の電解コンデンサに順次切り替え、それぞれの電解コンデンサの無通電期間を短くするように、切り替え制御を行っている。この結果、温度上昇による摩耗劣化の進行を抑制するとともに、無通電期間を短くすることで、無通電で進行する経年劣化を回復させることを可能とし、複数の電解コンデンサのそれぞれの寿命を延長させることができる。
【0036】
さらに、万一いずれかの電解コンデンサに異常が発生した場合であっても、他の電解コンデンサが残余寿命を残している。このため、正常なコンデンサを確実に1つ以上残して電源回路の継続使用を可能にした状態として、電源回路の寿命を残したまま、1つの電解コンデンサで発生した故障を通知できる。従って、ユーザは、電源回路の運転を継続しながら、電解コンデンサのいずれかの異常を認識し、保守交換を行うことができる。
【0037】
なお、上述した実施の形態1では、制御回路20を、A/Dコンバータ回路とマイコンとによって構成することができるが、制御回路20の構成は、これに限定されるものではない。例えば、制御回路20は、A/Dコンバータの代わりにコンパレータなどで測定判断しても良い。また、制御回路20は、マイコンの代用としてFPGA(Field Programmable Gate Array)などで論理演算しても良いし、CR部品によるタイマで判断制御しても良い。
【0038】
さらに、上述した実施の形態1では、トランスの二次側に接続されたコンデンサの寿命を監視し、切り替え制御を行っているが、切り替え制御の対象は、二次側に限定されるものではない。コンデンサの寿命検知場所およびコンデンサの切り替えは、一次側でも良く、一次側、二次側などの部位を問わない。
【0039】
実施の形態2.
本実施の形態2では、監視結果に基づいて電解コンデンサの劣化診断および切り替え制御を実行する具体的な構成について、詳細に説明する。より具体的には、電解コンデンサ9の寿命を示す指標となる物理量として静電容量を用いる場合を例に、詳細に説明する。
【0040】
図3は、本発明の実施の形態2において、監視結果に基づいて電解コンデンサの寿命診断および切り替え制御を実行する回路構成図である。
図3において、電解コンデンサ9は、先の
図1で示した複数の電解コンデンサ9a、9b、9cのうちの1つの電解コンデンサを代表して示したものである。また、
図3において、電解コンデンサ9に直列に接続されたスイッチ11は、先の
図1で示した複数のスイッチ11a、11b、11cのうちの1つのスイッチを代表して示したものである。
【0041】
さらに、
図3では、放電回路13とスイッチ14とを直列接続した回路が、スイッチ11と並列に接続されている。
【0042】
また、
図3において、温度測定素子10は、先の
図1で示した複数の温度測定素子10a、10b、10cのうちの1つの温度測定素子を代表して示したものである。
【0043】
さらに、制御回路20は、電圧測定回路21、抵抗値測定回路22、およびマイコン23を含んで構成されている。電圧測定回路21は、フィルタ21a、増幅・レベル変換回路21b、およびA/Dコンバータ21cを備えて構成されている。そして、電圧測定回路21は、電解コンデンサ9の両端電圧を測定し、測定結果をマイコン23に出力する。
【0044】
抵抗値測定回路22は、温度に依存して抵抗値が変化する温度測定素子10の抵抗値を測定し、測定結果をマイコン23に出力する。
【0045】
マイコン23は、電圧測定回路21による電解コンデンサ9の両端電圧の測定結果、および抵抗値測定回路22による温度測定素子10の抵抗値の測定結果に基づいて、スイッチ11およびスイッチ14のオンオフ切り替えを行う。
【0046】
電解コンデンサ9は、スイッチ11がオンすると、導通状態となり、有効となることで、二次電源の電源出力VOUTの平滑化の役割を果たす。また、電解コンデンサ9は、スイッチ14がオンすると、放電回路13によって電荷が放電される。
【0047】
マイコン23は、電解コンデンサ9の容量を測定する場合には、スイッチ11をオフとし、スイッチ14をオンとするように切り替え制御を実施することで、電解コンデンサ9を放電させた状態とする。この結果、マイコン23は、電圧測定回路21による電解コンデンサ9の両端電圧の測定結果を、時系列データとして得ることができる。
【0048】
一例として、放電回路13による放電を定電流放電とみなした場合には、マイコン23は、下式(2)によって電解コンデンサ9の静電容量を算出できる。
C=I×(T2-T1)/(V1-V2) (2)
ただし、C:静電容量
I:放電電流
T1:V1の放電開始からの時間
T2:V2の放電開始からの時間
V1:測定開始電圧
V2:測定終了電圧
【0049】
上式(2)で示された静電容量Cは、有寿命コンデンサである電解コンデンサ9の寿命を示す指標となる物理量の1つに相当する。そこで、マイコン23は、静電容量Cの監視結果に基づいて、電解コンデンサ9が寿命に到達しているか否かを判断する。より具体的には、マイコン23は、寿命に到達しているか否かを判断するためにあらかじめ設定された静電容量に関する寿命判定条件と、静電容量Cの監視結果とを比較することで、有寿命コンデンサ9について寿命に到達しているか否かを判断することができる。
【0050】
マイコン23は、監視結果である静電容量Cが、寿命判定条件よりも大きな値を示している場合には、監視対象である電解コンデンサ9が寿命に到達していないと判断できる。一方、マイコン23は、監視結果である静電容量Cが、寿命判定条件以下の値を示している場合には、監視対象である電解コンデンサ9の劣化が進行し、電解コンデンサ9が寿命に到達したと判断できる。
【0051】
このようにして、マイコン23は、複数の電解コンデンサ9a~9cのそれぞれについて、静電容量Cの監視結果に基づいて、寿命に到達しているか否かを判断できる。なお、上述した例では、電解コンデンサ9の電圧測定結果に基づいて静電容量Cを求め、電解コンデンサが寿命に到達したか否かを判断する場合について説明した。しかしながら、寿命を示す指標となる物理量として、静電容量以外にも、電解コンデンサ9の通電時間、経過時間、漏れ電流、ESR、等を用いることもできる。
【0052】
そして、マイコン23は、複数の電解コンデンサ9a~9cのそれぞれについての、寿命に到達しているか否かの判断結果に応じて、通電状態である電解コンデンサ9xが寿命に到達する前に、寿命に到達していない他の電解コンデンサ9yを通電状態とするように切り替え制御を実行する。
【0053】
すなわち、マイコン23は、電解コンデンサ9xを通電状態から非通電状態に切り替えるためには、電解コンデンサ9xに対応して設けられたスイッチ11をオフ状態に切り替えるとともに、電解コンデンサ9xに対応して設けられたスイッチ14もオフ状態にする。同様に、マイコン23は、電解コンデンサ9yを非通電状態から通電状態に切り替えるためには、電解コンデンサ9yに対応して設けられたスイッチ11をオン状態に切り替えるとともに、電解コンデンサ9yに対応して設けられたスイッチ14をオフ状態にする。
【0054】
換言すると、マイコン23は、静電容量Cを計測する際には、スイッチ11をオフ状態とし、スイッチ14をオン状態とする。一方、マイコン23は、いずれか1つの電解コンデンサ9yを通電状態としたい場合には、電解コンデンサ9yに直列に接続されたスイッチ11のみをオン状態として、他のスイッチ11をオフ状態とする。
【0055】
なお、マイコン23は、非通電状態から通電状態に切り換える電解コンデンサ9を、あらかじめ決まった順番に従って、特定することができる。ただし、マイコン23は、寿命に到達したと判断した電解コンデンサ9を、通電状態に切り換える対象から除外して、切り替え制御を実行する。
【0056】
また、マイコン23は、静電容量Cの監視結果から、それぞれの電解コンデンサ9a~9cの劣化の進行具合を判断し、電圧の印加によって回復する限界に近づいている電解コンデンサを優先的に通電状態に切り換えるべき対象として選定することも可能である。
【0057】
マイコン23は、正常なコンデンサが確実に1つ以上残っているものの、いずれかの電解コンデンサに関して、寿命に到達した、あるいは故障が発生したと判断した場合には、故障予測信号S301をオン状態として、外部に通知することができる。
【0058】
すなわち、マイコン23は、故障予測信号S301を報知信号として出力することで、現時点では、電源装置を継続運転することが可能であるが、想定寿命よりも前にすでに使用できない電解コンデンサが発生し、想定寿命に到達する前に電源装置を継続運転できなくなるおそれがあることを、外部に通知することができる。
【0059】
また、マイコン23は、静電容量Cの監視結果から、全ての電解コンデンサが、あらかじめ設定された想定寿命に到達している場合には、想定寿命到達信号S302をオン状態として、外部に通知することができる。
【0060】
すなわち、マイコン23は、想定寿命到達信号S302を報知信号として出力することで、現時点では、電源装置を継続運転することが可能であるが、すでに、いずれの電解コンデンサも想定寿命に到達していることを、外部に通知することができる。
【0061】
また、マイコン23は、あらかじめ設定された想定寿命を超えて使用が継続した場合には、停止信号S303をオン状態として、外部に通知することができる。
【0062】
すなわち、マイコン23は、想定寿命到達信号S302を報知信号として出力することで、電源装置を使用している外部機器を停止させ、外部機器において電源故障に伴う異常動作などが発生してしまう状況を未然に回避することができる。
【0063】
実施の形態3.
本実施の形態3では、電源装置の実使用環境に応じて、報知信号を出力する、あるいは寿命判定条件等を変更することができる構成について説明する。
【0064】
先の
図1あるいは
図3に示したように、制御回路20は、温度測定素子10aによる計測結果に基づいて、電解コンデンサ9が設置されている環境の周囲温度(すなわち、使用環境温度)を、実使用環境の1つのデータとして取得することができる。
【0065】
また、図示はしていないが、制御回路20は、電源装置からの電源出力VOUTが供給される負荷に流れる負荷電流の計測結果を取得することで、この負荷電流を、実使用環境に応じた指標値として取得することができる。
【0066】
そして、制御回路20は、取得した周囲温度が、仕様で定めた周囲温度の許容値を超えている場合、あるいは取得した負荷電流が、仕様で定めた負荷電流の許容値を超えている場合には、以下のような対応を取ることができる。
(対応1)寿命判定条件を厳しく設定するように補正し、寿命に到達したか否かを、実使用環境に即して、より厳しく判定する。
(対応2)実使用環境が仕様値を超えていることを報知信号として通知し、電解コンデンサの寿命が短くなるおそれがあることを事前に知らせる。
(対応3)実使用環境に応じて、複数の電解コンデンサの数を増加させる設計変更を施す。
【0067】
以上のように、実施の形態3によれば、実使用環境を考慮した上で、有寿命コンデンサの長寿命化を図った電源回路を実現することができる。
【0068】
実施の形態1~3により詳述した本発明に係る電源装置は、プラント、FA機器をはじめとする産業用機器など、高信頼が要求される機器の電源回路において適用可能である。本発明に係る電源装置を適用した産業用機器では、寿命の到達をもって、有寿命コンデンサを定期交換し、万一いずれかの有寿命コンデンサが想定寿命よりも前に故障する可能性がある場合には、故障予告をもって予備品の手配、あるいは予防交換を行うことで、稼働中の故障を防止することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 商用電源、2 ブリッジダイオード、3 入力コンデンサ、4 制御回路、5 スイッチング素子、6 トランス、7 絶縁回路、8 ダイオード、9、9a、9b、9c 電解コンデンサ、10、10a、10b、10c 温度測定素子、11、11a、11b、11c スイッチ、12 フィードバック回路、13 放電回路、14 コンデンサ放電スイッチ、20 制御回路、21 電圧測定回路、21a フィルタ(FIL)、21b 増幅・レベル変換回路、21c A/Dコンバータ、22 抵抗値測定回路、23 マイコン、30a 曲線(アレニウス則による予測寿命曲線)、30b 曲線(実使用による寿命曲線)、30c 曲線(無通電の寿命曲線)、30d 曲線(コンデンサ切替後の寿命曲線)、31 コンデンサの摩耗劣化、S301 故障予測信号(報知信号)、S302 想定寿命到達信号(報知信号)、S303 停止信号(報知信号)。