(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 69/00 20060101AFI20230414BHJP
A01D 67/00 20060101ALI20230414BHJP
A01F 12/10 20060101ALI20230414BHJP
A01D 34/24 20060101ALI20230414BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
A01D69/00 302K
A01D67/00 D
A01F12/10 K
A01D34/24 102
A01B69/00 303Z
(21)【出願番号】P 2019215938
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
(72)【発明者】
【氏名】川畑 翔太郎
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-086668(JP,A)
【文献】特開2014-090679(JP,A)
【文献】特開2018-117581(JP,A)
【文献】特開2001-251922(JP,A)
【文献】特開2001-148929(JP,A)
【文献】特開2019-110790(JP,A)
【文献】実開平01-098536(JP,U)
【文献】特開2019-106928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 69/00
A01D 67/00
A01F 12/10
A01D 34/24
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動走行可能なコンバインであって、
圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部と、
前記刈取部により刈り取られた穀稈を挟持搬送するフィードチェーンと、
前記フィードチェーンにより挟持搬送されている穀稈を脱穀処理する脱穀装置と、
前記脱穀装置によって脱穀された穀粒を貯留する穀粒タンクと、
自動走行中に機体に対する前記刈取部の昇降を自動的に制御する昇降制御部と、
自動走行中に前記刈取部と前記フィードチェーンと前記脱穀装置との駆動を自動的に制御する駆動制御部と、を備え、
前記昇降制御部は、未刈領域から既刈領域への進入時に、前記刈取部を上昇させるように構成されており、
前記駆動制御部は、前記穀粒タンクから穀粒を排出するための排出地点へ向かって走行する際、未刈領域から既刈領域へ進入した時点から所定の第1期間に亘って前記フィードチェーン及び前記脱穀装置の駆動を継続すると共に前記第1期間が経過した時点で前記脱穀装置の駆動を停止する排出時制御を実行
し、
前記駆動制御部は、前記排出地点へ向かって走行しないときには、前記排出時制御を実行しないコンバイン。
【請求項2】
前記駆動制御部は、前記排出時制御において、前記第1期間が経過した時点で前記フィードチェーンの駆動を停止するように構成されている請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第1期間は、穀稈が前記刈取部により刈り取られてから前記フィードチェーンにおける搬送終点に達するまでに要する時間以上の長さを有する請求項1または2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記排出時制御において、未刈領域から既刈領域へ進入した時点から所定の第2期間に亘って前記刈取部の駆動を継続すると共に前記第2期間が経過した時点で前記刈取部の駆動を停止するように構成されており、
前記第2期間は前記第1期間以下の長さを有する請求項1から3の何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記駆動制御部の制御モードは、前記刈取部の高さが所定の基準高さに達した場合に前記フィードチェーンの駆動を停止する自動停止制御を実行する自動停止オンモードと、前記刈取部の高さが前記基準高さに達した場合に前記自動停止制御を実行しない自動停止オフモードと、の間で切替可能であり、
前記駆動制御部の制御モードが前記自動停止オンモードである場合、前記駆動制御部は、前記排出地点へ向かって走行する際、前記自動停止制御に優先して前記排出時制御を実行する請求項1から4の何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記穀粒タンクに貯留されている穀粒の量を検知する貯留量検知部と、
前記貯留量検知部による検知結果に基づいて前記排出地点へ向かって走行するか否かを決定する排出決定部と、を備える請求項1から5の何れか一項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部と、刈取部により刈り取られた穀稈を挟持搬送するフィードチェーンと、フィードチェーンにより挟持搬送されている穀稈を脱穀処理する脱穀装置と、を備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなコンバインとして、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。このコンバインは、脱穀装置によって脱穀された穀粒を貯留する穀粒タンクを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、コンバインの走行制御について詳述されていない。ここで、特許文献1に記載のコンバインを、自動走行可能に構成することが考えられる。さらに、この構成において、未刈領域から既刈領域への進入時に、刈取部が自動的に上昇するように構成することが考えられる。
【0005】
この構成によれば、コンバインが既刈領域で方向転換する際、畦畔に刈取部が干渉することを回避しやすい。
【0006】
この構成において、コンバインが、穀粒タンクから穀粒を排出するための排出地点へ向かって走行する際、未刈領域から既刈領域へ進入した時点でフィードチェーン及び脱穀装置の駆動が停止される構成が考えられる。その場合、フィードチェーン及び脱穀装置の駆動が停止した時点でフィードチェーンに挟持されており、且つ、脱穀処理されていない穀稈は、フィードチェーン及び脱穀装置の駆動が再開するまで、脱穀処理されない。
【0007】
そのため、穀粒の排出が終了した後、オペレータが収穫作業を再開しない場合には、上述のように脱穀処理されていない穀稈は、脱穀処理されないままとなってしまう。これにより、穀粒の収量が低下してしまう。
【0008】
そこで、コンバインが未刈領域から既刈領域へ進入した後、排出地点へ到達するまでの間、フィードチェーン及び脱穀装置が駆動し続ける構成が考えられる。この構成であれば、上述のように穀粒の収量が低下してしまう事態を回避できる。
【0009】
しかしながら、コンバインが未刈領域から既刈領域へ進入した後、コンバインが排出地点へ到達するまでの間、フィードチェーン及び脱穀装置が駆動し続けることにより、燃費が悪化する事態が想定される。
【0010】
本発明の目的は、穀粒の収量の低下を回避しやすく、且つ、燃費の良好なコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、自動走行可能なコンバインであって、圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部と、前記刈取部により刈り取られた穀稈を挟持搬送するフィードチェーンと、前記フィードチェーンにより挟持搬送されている穀稈を脱穀処理する脱穀装置と、前記脱穀装置によって脱穀された穀粒を貯留する穀粒タンクと、自動走行中に機体に対する前記刈取部の昇降を自動的に制御する昇降制御部と、自動走行中に前記刈取部と前記フィードチェーンと前記脱穀装置との駆動を自動的に制御する駆動制御部と、を備え、前記昇降制御部は、未刈領域から既刈領域への進入時に、前記刈取部を上昇させるように構成されており、前記駆動制御部は、前記穀粒タンクから穀粒を排出するための排出地点へ向かって走行する際、未刈領域から既刈領域へ進入した時点から所定の第1期間に亘って前記フィードチェーン及び前記脱穀装置の駆動を継続すると共に前記第1期間が経過した時点で前記脱穀装置の駆動を停止する排出時制御を実行し、前記駆動制御部は、前記排出地点へ向かって走行しないときには、前記排出時制御を実行しないことにある。
【0012】
本発明であれば、コンバインが排出地点へ向かって走行する際、コンバインが未刈領域から既刈領域へ進入した時点から所定の第1期間に亘ってフィードチェーン及び脱穀装置の駆動が継続される。これにより、コンバインが未刈領域から既刈領域へ進入した時点でフィードチェーンに挟持されている穀稈の全てが、排出地点へ向かう走行中に脱穀処理されやすい。そのため、コンバインが未刈領域から既刈領域へ進入した時点でフィードチェーンに挟持されている穀稈が脱穀処理されないことにより穀粒の収量が低下してしまう事態を回避しやすい。
【0013】
また、本発明であれば、コンバインが排出地点へ向かって走行する際、コンバインが未刈領域から既刈領域へ進入した時点から第1期間が経過した時点で、脱穀装置の駆動が停止する。そのため、コンバインが未刈領域から既刈領域へ進入してから排出地点へ到達するまでの間、脱穀装置が駆動し続ける構成に比べて、燃費が良好となる。
【0014】
従って、本発明であれば、穀粒の収量の低下を回避しやすく、且つ、燃費の良好なコンバインを実現できる。
【0015】
さらに、本発明において、前記駆動制御部は、前記排出時制御において、前記第1期間が経過した時点で前記フィードチェーンの駆動を停止するように構成されていると好適である。
【0016】
この構成によれば、コンバインが未刈領域から既刈領域へ進入してから排出地点へ到達するまでの間、フィードチェーンが駆動し続ける構成に比べて、燃費が良好となる。
【0017】
さらに、本発明において、前記第1期間は、穀稈が前記刈取部により刈り取られてから前記フィードチェーンにおける搬送終点に達するまでに要する時間以上の長さを有すると好適である。
【0018】
この構成によれば、コンバインが排出地点へ向かって走行する際、コンバインが未刈領域から既刈領域へ進入した時点で刈取部またはフィードチェーンにより搬送中である穀稈の全てが、第1期間の間に、搬送終点まで達する。そして、それらの穀稈は、搬送終点に達するまでの間に、脱穀処理される。
【0019】
従って、この構成によれば、コンバインが排出地点へ向かって走行する際、コンバインが未刈領域から既刈領域へ進入した時点で刈取部またはフィードチェーンにより搬送中である穀稈の全てが、第1期間の間に確実に脱穀処理される構成を実現できる。
【0020】
さらに、本発明において、前記駆動制御部は、前記排出時制御において、未刈領域から既刈領域へ進入した時点から所定の第2期間に亘って前記刈取部の駆動を継続すると共に前記第2期間が経過した時点で前記刈取部の駆動を停止するように構成されており、前記第2期間は前記第1期間以下の長さを有すると好適である。
【0021】
刈取部により刈り取られた穀稈の搬送経路において、刈取部は、フィードチェーンよりも上流側に位置する。そのため、穀稈が刈り取られてから、その穀稈が刈取部からフィードチェーンに受け渡されるまでに要する時間は、穀稈が刈り取られてから、その穀稈がフィードチェーンの搬送終端に達するまで要する時間に比べて短い。
【0022】
そのため、第2期間が第1期間よりも長い場合には、コンバインが排出地点へ向かって走行する際、コンバインが未刈領域から既刈領域へ進入した時点で刈取部により搬送中であった穀稈の全てがフィードチェーンに受け渡された後、刈取部により穀稈が搬送されていないにもかかわらず、刈取部の駆動が継続されてしまいがちである。
【0023】
ここで、上記の構成によれば、第2期間は第1期間以下の長さを有する。そのため、刈取部により穀稈が搬送されていないにもかかわらず刈取部の駆動が継続されてしまう事態を回避しやすい。これにより、燃費が良好となりやすい。
【0024】
さらに、本発明において、前記駆動制御部の制御モードは、前記刈取部の高さが所定の基準高さに達した場合に前記フィードチェーンの駆動を停止する自動停止制御を実行する自動停止オンモードと、前記刈取部の高さが前記基準高さに達した場合に前記自動停止制御を実行しない自動停止オフモードと、の間で切替可能であり、前記駆動制御部の制御モードが前記自動停止オンモードである場合、前記駆動制御部は、前記排出地点へ向かって走行する際、前記自動停止制御に優先して前記排出時制御を実行すると好適である。
【0025】
この構成によれば、コンバインが排出地点へ向かわない状況において、コンバインが未刈領域から既刈領域へ進入した際、自動停止制御が実行される。その結果、フィードチェーンの駆動が停止する。これにより、フィードチェーンにより搬送中の穀稈は、フィードチェーンに安定的に挟持されることとなる。そのため、コンバインが既刈領域において方向転換する際に、フィードチェーンにより挟持されている穀稈がこぼれ落ちにくい。
【0026】
しかも、この構成によれば、コンバインが排出地点へ向かって走行する際には、排出時制御が優先的に実行される。そのため、自動停止制御によって排出時制御が阻害されてしまうことはない。従って、コンバインが未刈領域から既刈領域へ進入した時点でフィードチェーンに挟持されている穀稈が脱穀処理されないことにより穀粒の収量が低下してしまう事態を、確実に回避しやすい。
【0027】
さらに、本発明において、前記穀粒タンクに貯留されている穀粒の量を検知する貯留量検知部と、前記貯留量検知部による検知結果に基づいて前記排出地点へ向かって走行するか否かを決定する排出決定部と、を備えると好適である。
【0028】
この構成によれば、効率的なタイミングで排出地点へ向かって走行するコンバインを実現しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図3】刈取走行経路に沿った渦巻き走行を示す図である。
【
図4】刈取走行経路に沿った往復走行を示す図である。
【
図5】制御部に関する構成を示すブロック図である。
【
図7】自動走行中の刈取部の高さの推移を示す図である。
【
図8】自動走行中の刈取部、フィードチェーン、脱穀装置の駆動状態の推移を示す図である。
【
図9】コンバインが排出地点へ向かって走行する例を示す図である。
【
図10】自動走行中の刈取部の高さの推移を示す図である。
【
図11】自動走行中の刈取部、フィードチェーン、脱穀装置の駆動状態の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、
図1に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」とする。
【0031】
また、
図3、
図4、
図9に示す矢印Nの方向を「北」、矢印Sの方向を「南」として、矢印Eの方向を「東」、矢印Wの方向を「西」とする。
【0032】
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、自脱型のコンバイン1は、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、刈取部H、藁排出装置17、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0033】
また、コンバイン1は、フィードチェーン3及び排出チェーン4を備えている。
【0034】
走行装置11は、コンバイン1における下部に備えられている。また、走行装置11は、エンジン2(
図5参照)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって自走可能である。
【0035】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上側に備えられている。運転部12には、コンバイン1の作業を監視するオペレータが搭乗可能である。尚、オペレータは、コンバイン1の機外からコンバイン1の作業を監視していても良い。
【0036】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14に接続している。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0037】
刈取部Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、刈取部Hは、バリカン型の切断装置15、及び、搬送装置16を有している。
【0038】
切断装置15は、圃場の植立穀稈Cの株元を切断する。そして、搬送装置16は、切断装置15により切断された穀稈Cを後側へ搬送する。
【0039】
この構成により、刈取部Hは、圃場の植立穀稈Cを刈り取る。コンバイン1は、刈取部Hによって圃場の植立穀稈Cを刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
【0040】
搬送装置16により搬送された穀稈Cは、第1位置Q1において、フィードチェーン3に受け渡される。そして、フィードチェーン3は、受け取った穀稈Cを後側へ挟持搬送する。尚、フィードチェーン3は、穀稈Cを水平姿勢で搬送する。そのため、
図1においては、フィードチェーン3により搬送されている穀稈Cの株元が示されている。
【0041】
即ち、フィードチェーン3は、刈取部Hにより刈り取られた穀稈Cを挟持搬送する。
【0042】
脱穀装置13は、フィードチェーン3により挟持搬送されている穀稈Cを脱穀処理する。穀粒タンク14は、脱穀装置13によって脱穀された穀粒を貯留する。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0043】
また、脱穀処理によって穀粒が分離された藁は、第2位置Q2において、フィードチェーン3から排出チェーン4へ受け渡される。即ち、第2位置Q2は、フィードチェーン3における搬送終点である。そして、排出チェーン4は、藁を藁排出装置17へ搬送する。
【0044】
藁排出装置17は、コンバイン1における後端部に備えられている。そして、藁排出装置17は、排出チェーン4により搬送された藁を機体後方に排出する。
【0045】
尚、本実施形態において、藁排出装置17は、藁をカッター(図示せず)によって細断処理した後に排出することが可能である。また、藁排出装置17は、藁を細断処理せずに排出することも可能である。
【0046】
また、運転部12には、通信端末(図示せず)が配置されている。通信端末は、種々の情報を表示可能に構成されている。本実施形態において、通信端末は、運転部12に固定されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、通信端末は、運転部12に対して着脱可能に構成されていても良いし、通信端末は、コンバイン1の機外に位置していても良い。
【0047】
ここで、コンバイン1は、
図2に示すように圃場における外周側の領域で穀物を収穫しながら周回走行を行った後、
図3及び
図4に示すように圃場における内側の領域で刈取走行を行うことにより、圃場の穀物を収穫するように構成されている。
【0048】
本実施形態においては、
図2に示す周回走行は手動走行により行われる。また、
図3及び
図4に示す内側の領域での刈取走行は、自動走行により行われる。即ち、コンバイン1は、自動走行可能である。
【0049】
尚、本発明はこれに限定されず、
図2に示す周回走行は自動走行により行われても良い。
【0050】
また、オペレータは、通信端末を操作することにより、エンジン2の回転速度を変更することができる。
【0051】
作物の状態によって、適切な作業速度は異なる。オペレータが通信端末を操作し、エンジン2の回転速度を適切な回転速度に設定すれば、作物の状態に適した作業速度で作業を行うことができる。
【0052】
〔制御部に関する構成〕
図5に示すように、コンバイン1は、動力伝達機構5及び制御部20を備えている。エンジン2から出力された動力は、動力伝達機構5及び走行装置11に分配される。
【0053】
動力伝達機構5は、刈取部H、フィードチェーン3、脱穀装置13に、それぞれ独立して動力を伝達可能に構成されている。また、動力伝達機構5は、刈取部Hへ動力を伝達する状態と、刈取部Hへ動力を伝達しない状態と、の間で状態変更可能に構成されている。また、動力伝達機構5は、フィードチェーン3へ動力を伝達する状態と、フィードチェーン3へ動力を伝達しない状態と、の間で状態変更可能に構成されている。また、動力伝達機構5は、脱穀装置13へ動力を伝達する状態と、脱穀装置13へ動力を伝達しない状態と、の間で状態変更可能に構成されている。
【0054】
制御部20は、自車位置算出部21、領域算出部22、経路算出部23、走行制御部24を有している。
【0055】
衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星からのGPS信号を受信する。そして、
図5に示すように、衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを自車位置算出部21へ送る。
【0056】
自車位置算出部21は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。算出されたコンバイン1の経時的な位置座標は、領域算出部22及び走行制御部24へ送られる。
【0057】
領域算出部22は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、
図3に示すように、外周領域SA(本発明に係る「既刈領域」に相当)及び作業対象領域CA(本発明に係る「未刈領域」に相当)を算出する。
【0058】
より具体的には、領域算出部22は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、圃場の外周側における周回走行でのコンバイン1の走行軌跡を算出する。そして、領域算出部22は、算出されたコンバイン1の走行軌跡に基づいて、コンバイン1が穀物を収穫しながら周回走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして算出する。また、領域算出部22は、算出された外周領域SAよりも圃場内側の領域を、作業対象領域CAとして算出する。
【0059】
例えば、
図2においては、圃場の外周側における周回走行のためのコンバイン1の走行経路が矢印で示されている。
図2に示す例では、コンバイン1は、3周の周回走行を行う。そして、この走行経路に沿った刈取走行が完了すると、圃場は、
図3に示す状態となる。
【0060】
図3に示すように、領域算出部22は、コンバイン1が穀物を収穫しながら周回走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして算出する。また、領域算出部22は、算出された外周領域SAよりも圃場内側の領域を、作業対象領域CAとして算出する。
【0061】
そして、
図5に示すように、領域算出部22による算出結果は、経路算出部23へ送られる。
【0062】
経路算出部23は、領域算出部22から受け取った算出結果に基づいて、
図3に示すように、作業対象領域CAにおける刈取走行のための走行経路である刈取走行経路LNを算出する。尚、
図3に示すように、本実施形態においては、刈取走行経路LNは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線である。また、複数のメッシュ線は直線でなくても良く、湾曲していても良い。
【0063】
図5に示すように、経路算出部23により算出された刈取走行経路LNは、走行制御部24へ送られる。
【0064】
走行制御部24は、走行装置11を制御可能に構成されている。そして、走行制御部24は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、経路算出部23から受け取った刈取走行経路LNと、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。より具体的には、走行制御部24は、
図3及び
図4に示すように、刈取走行経路LNに沿った自動走行によって刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0065】
〔コンバインによる収穫作業の流れ〕
以下では、コンバイン1による収穫作業の例として、コンバイン1が、
図2に示す圃場で収穫作業を行う場合の流れについて説明する。
【0066】
最初に、オペレータは、コンバイン1を手動で操作し、
図2に示すように、圃場内の外周部分において、圃場の境界線BDに沿って周回するように刈取走行を行う。
図2に示す例では、コンバイン1は、3周の周回走行を行う。この周回走行が完了すると、圃場は、
図3に示す状態となる。
【0067】
領域算出部22は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、
図2に示す周回走行でのコンバイン1の走行軌跡を算出する。そして、
図3に示すように、領域算出部22は、算出されたコンバイン1の走行軌跡に基づいて、コンバイン1が植立穀稈Cを刈り取りながら周回走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして算出する。また、領域算出部22は、算出された外周領域SAよりも圃場内側の領域を、作業対象領域CAとして算出する。
【0068】
次に、経路算出部23は、領域算出部22から受け取った算出結果に基づいて、
図3に示すように、作業対象領域CAにおける刈取走行経路LNを設定する。
【0069】
そして、オペレータが自動走行開始ボタン(図示せず)を押すことにより、
図3に示すように、刈取走行経路LNに沿った自動走行が開始される。このとき、走行制御部24は、刈取走行経路LNに沿った自動走行によって刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0070】
作業対象領域CAにおける自動走行が開始されると、
図3に示すように、まず、コンバイン1は、作業対象領域CAにおける外周部分において、作業対象領域CAの外形に沿って周回するように刈取走行を行う。このとき、コンバイン1は、刈取走行経路LNに沿った走行と、αターンによる方向転換と、を繰り返す。これにより、コンバイン1は、作業対象領域CAにおける外周部分を渦巻き状に刈取走行する。
【0071】
尚、以下では、この渦巻き状の刈取走行を、「渦巻き走行」と称する。
【0072】
図3においては、αターンによる方向転換が3回しか行われていないが、αターンによる方向転換は、4回以上行われても良い。即ち、渦巻き走行は、
図3に示すケースよりも長い走行距離に亘って行われても良い。例えば、渦巻き走行は、コンバイン1が2周するまで行われても良い。
【0073】
渦巻き走行が完了すると、コンバイン1は、刈取走行経路LNに沿って前進しながら行われる刈取走行と、Uターンによる方向転換と、を繰り返すことにより、作業対象領域CAの全体を網羅するように刈取走行を行う。
【0074】
尚、以下では、前進しながらの刈取走行及びUターンによる方向転換を繰り返す走行を、「往復走行」と称する。
【0075】
即ち、走行制御部24は、渦巻き走行の後に往復走行に移行するように、コンバイン1の走行を制御する。
【0076】
本実施形態においては、
図2から
図4に示すように、圃場外に運搬車CVが駐車している。そして、外周領域SAにおいて、運搬車CVの近傍位置には、排出地点PPが設定されている。排出地点PPは、穀粒タンク14から穀粒を排出するための地点である。
【0077】
運搬車CVは、コンバイン1が穀粒タンク14から穀粒排出装置18を介して排出した穀粒を収集し、運搬することができる。穀粒排出の際、コンバイン1は排出地点PPに停車し、穀粒排出装置18によって穀粒を運搬車CVへ排出する。
【0078】
そして、作業対象領域CAにおける全ての刈取走行経路LNに沿った刈取走行が完了すると、圃場の全体が収穫済みとなる。
【0079】
尚、本実施形態では、
図6に示すように、作業対象領域CAにおいて、刈取走行が完了した部分は外周領域SAとなる。
【0080】
〔刈取部の昇降制御に関する構成〕
図5に示すように、制御部20は、昇降制御部25を有している。また、
図1及び
図5に示すように、コンバイン1は、刈取シリンダ31を備えている。
【0081】
昇降制御部25は、自動走行中に、刈取シリンダ31を自動的に制御するように構成されている。これにより、昇降制御部25は、自動走行中に機体に対する刈取部Hの昇降を自動的に制御する。
【0082】
詳述すると、
図5に示すように、自車位置算出部21により算出されたコンバイン1の経時的な位置座標は、昇降制御部25へ送られる。昇降制御部25は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、圃場におけるコンバイン1の走行軌跡を算出する。そして、昇降制御部25は、算出されたコンバイン1の走行軌跡に基づいて、外周領域SAと、作業対象領域CAと、を経時的に算出する。
【0083】
さらに、昇降制御部25は、自動走行中に、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標と、経時的に算出された外周領域SA及び作業対象領域CAと、に基づいて、コンバイン1が作業対象領域CAから外周領域SAへ進入したか否かを経時的に判定する。
【0084】
コンバイン1が作業対象領域CAから外周領域SAへ進入したと判定された場合、昇降制御部25は、刈取シリンダ31を伸び方向に制御する。これにより、刈取部Hは、機体に対して上昇する。
【0085】
即ち、昇降制御部25は、作業対象領域CAから外周領域SAへの進入時に、刈取部Hを上昇させるように構成されている。
【0086】
〔自動停止制御に関する構成〕
図5に示すように、制御部20は、駆動制御部26を有している。駆動制御部26は、コンバイン1の自動走行中に、動力伝達機構5における動力伝達状態を自動的に制御するように構成されている。これにより、駆動制御部26は、自動走行中に刈取部Hとフィードチェーン3と脱穀装置13との駆動を自動的に制御する。
【0087】
また、コンバイン1は、モード選択ボタン32を備えている。本実施形態において、モード選択ボタン32は、運転部12に設けられている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、モード選択ボタン32は、コンバイン1の外部に設けられていても良い。
【0088】
モード選択ボタン32は、人為操作可能なボタンである。そして、オペレータがモード選択ボタン32を操作すると、操作に応じた信号が駆動制御部26へ送られる。この信号に応じて、駆動制御部26の制御モードは、自動停止オンモードと、自動停止オフモードと、の間で切り替わる。
【0089】
自動停止オンモードとは、刈取部Hの高さが所定の基準高さH1に達した場合に自動停止制御を実行する制御モードである。自動停止制御とは、フィードチェーン3の駆動を停止する制御である。尚、本実施形態における自動停止制御では、刈取部Hと、フィードチェーン3と、脱穀装置13と、の駆動が停止される。
【0090】
自動停止オフモードとは、刈取部Hの高さが所定の基準高さH1に達した場合に自動停止制御を実行しない制御モードである。
【0091】
即ち、駆動制御部26の制御モードは、刈取部Hの高さが所定の基準高さH1に達した場合にフィードチェーン3の駆動を停止する自動停止制御を実行する自動停止オンモードと、刈取部Hの高さが基準高さH1に達した場合に自動停止制御を実行しない自動停止オフモードと、の間で切替可能である。
【0092】
以下では、自動停止制御について詳述する。
【0093】
コンバイン1の自動走行中に、昇降制御部25は、刈取シリンダ31の制御量を示す信号を駆動制御部26へ送る。駆動制御部26は、この信号に基づいて、刈取部Hの高さが基準高さH1に達したか否かを判定する。そして、制御モードが自動停止オンモードであり、且つ、刈取部Hの高さが基準高さH1に達したと判定された場合、駆動制御部26は、自動停止制御を実行する。
【0094】
図6では、コンバイン1が作業対象領域CAから外周領域SAへ進入する様子が示されている。このとき、駆動制御部26の制御モードは、自動停止オンモードであるとする。
図6に示すように、コンバイン1が作業対象領域CAから外周領域SAへ進入した時点で、昇降制御部25は、刈取部Hを上昇させ始める。
【0095】
その後、刈取部Hの高さが基準高さH1に達すると、駆動制御部26は、自動停止制御を実行する。これにより、刈取部Hと、フィードチェーン3と、脱穀装置13と、の駆動が停止される。
【0096】
その後、刈取部Hは、可動域において最も高い位置まで上昇する。可動域において最も高い位置まで上昇したときの刈取部Hの高さは、高さH2である。尚、高さH2は、基準高さH1よりも高い。
【0097】
その後、コンバイン1が外周領域SAから作業対象領域CAへ進入するまでの間に、駆動制御部26は、刈取部Hと、フィードチェーン3と、脱穀装置13と、の駆動を再開する。
【0098】
尚、
図6に示す例において、仮に、駆動制御部26の制御モードが自動停止オフモードである場合には、刈取部Hの高さが基準高さH1に達しても、駆動制御部26は、自動停止制御を実行しない。
【0099】
以下では、自動停止制御について、
図4で示した自動走行を例に挙げ、
図7及び
図8を参照して説明する。尚、この例では、駆動制御部26の制御モードが自動停止オンモードであるとする。
【0100】
図4に示す例では、コンバイン1は、往復走行を行っている。より具体的には、まず、コンバイン1は、作業対象領域CAに進入し、刈取走行経路LNに沿って西へ向かって刈取走行を行う。そして、コンバイン1は、位置P1を通過する。このときの時刻を、時刻t1とする。
【0101】
そして、コンバイン1は、位置P2に到達する。コンバイン1は、位置P2から外周領域SAに進入しながら、Uターンを行う。これにより、コンバイン1は、位置P3、P4を通過する。その後、コンバイン1は、作業対象領域CAに進入し、刈取走行経路LNに沿って東へ向かって刈取走行を行う。
【0102】
図7では、
図4に示す例における時刻t1以降の刈取部Hの高さの推移が示されている。また、
図8では、
図4に示す例における時刻t1以降の刈取部Hの駆動状態と、フィードチェーン3の駆動状態と、脱穀装置13の駆動状態と、の推移が示されている。
【0103】
尚、コンバイン1が位置P2、P3、P4に到達したときの時刻を、それぞれ、時刻t2、t3、t4とする。
【0104】
時刻t1において、コンバイン1は刈取走行を行っている。即ち、刈取部Hと、フィードチェーン3と、脱穀装置13と、は何れも駆動している。そして、このとき、刈取部Hの高さは、所定の刈取高さである。この刈取高さは、基準高さH1よりも低い。また、この刈取高さは、オペレータによって変更可能である。
【0105】
時刻t2に、コンバイン1は位置P2に到達する。このとき、コンバイン1は、作業対象領域CAから外周領域SAに進入する。この時点で、昇降制御部25は、刈取部Hを上昇させ始める。
【0106】
時刻t3に、コンバイン1は位置P3に到達する。このとき、刈取部Hの高さは、基準高さH1に達する。その結果、駆動制御部26は、自動停止制御を実行する。これにより、刈取部Hと、フィードチェーン3と、脱穀装置13と、の駆動が停止される。
【0107】
その後、時刻t4に、刈取部Hの高さは、高さH2に達する。
【0108】
〔排出決定部に関する構成〕
図5に示すように、制御部20は、排出決定部27を有している。また、コンバイン1は、貯留量検知部33を備えている。貯留量検知部33は、穀粒タンク14に貯留されている穀粒の量を検知する。本実施形態において、貯留量検知部33は、ロードセルにより構成されている。貯留量検知部33による検知結果は、排出決定部27へ送られる。
【0109】
排出決定部27は、貯留量検知部33による検知結果に基づいて排出地点PP(
図3参照)へ向かって走行するか否かを決定する。排出地点PPへ向かって走行することが決定されると、排出決定部27は、所定の信号を走行制御部24へ送る。走行制御部24は、この信号に応じて、コンバイン1が排出地点PPへ向かって走行するように走行装置11を制御する。
【0110】
〔排出時制御に関する構成〕
図5に示すように、自車位置算出部21により算出されたコンバイン1の経時的な位置座標は、駆動制御部26へ送られる。駆動制御部26は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、圃場におけるコンバイン1の走行軌跡を算出する。そして、駆動制御部26は、算出されたコンバイン1の走行軌跡に基づいて、外周領域SAと、作業対象領域CAと、を経時的に算出する。
【0111】
さらに、駆動制御部26は、自動走行中に、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標と、経時的に算出された外周領域SA及び作業対象領域CAと、に基づいて、コンバイン1が作業対象領域CAから外周領域SAへ進入したか否かを経時的に判定する。
【0112】
また、上述した通り、排出地点PPへ向かって走行することが決定されると、排出決定部27は、所定の信号を走行制御部24へ送る。走行制御部24は、この信号に応じて、コンバイン1が排出地点PPへ向かって走行するように走行装置11を制御する。このとき、走行制御部24は、コンバイン1が排出地点PPへ向かって走行することを示す信号を、駆動制御部26へ送る。
【0113】
そして、駆動制御部26は、この信号を走行制御部24から受け取った後、コンバイン1が作業対象領域CAから外周領域SAへ進入したと判定された場合、排出時制御を実行する。
【0114】
排出時制御とは、作業対象領域CAから外周領域SAへ進入した時点から所定の第1期間TB1に亘ってフィードチェーン3及び脱穀装置13の駆動を継続すると共に第1期間TB1が経過した時点で脱穀装置13の駆動を停止する制御である。
【0115】
即ち、駆動制御部26は、穀粒タンク14から穀粒を排出するための排出地点PPへ向かって走行する際、作業対象領域CAから外周領域SAへ進入した時点から所定の第1期間TB1に亘ってフィードチェーン3及び脱穀装置13の駆動を継続すると共に第1期間TB1が経過した時点で脱穀装置13の駆動を停止する排出時制御を実行する。
【0116】
また、駆動制御部26は、排出時制御において、第1期間TB1が経過した時点でフィードチェーン3の駆動を停止するように構成されている。
【0117】
また、駆動制御部26は、排出時制御において、作業対象領域CAから外周領域SAへ進入した時点から所定の第2期間TB2に亘って刈取部Hの駆動を継続すると共に第2期間TB2が経過した時点で刈取部Hの駆動を停止するように構成されている。
【0118】
尚、
図10に示すように、第2期間TB2は、第1期間TB1以下の長さを有する。本実施形態においては、第2期間TB2の長さは、第1期間TB1の長さよりも短い。
【0119】
また、駆動制御部26は、自動停止制御に優先して排出時制御を実行するように構成されている。即ち、駆動制御部26の制御モードが自動停止オンモードである場合、及び、自動停止オフモードである場合、の何れの場合においても、コンバイン1が排出地点PPへ向かって走行する際、駆動制御部26は、自動停止制御に優先して排出時制御を実行する。
【0120】
即ち、駆動制御部26の制御モードが自動停止オンモードである場合、駆動制御部26は、排出地点PPへ向かって走行する際、自動停止制御に優先して排出時制御を実行する。
【0121】
また、
図4、
図7、
図8に示すように、駆動制御部26の制御モードが自動停止オンモードである場合において、コンバイン1が排出地点PPへ向かって走行しないときには、駆動制御部26は、自動停止制御を実行する。
【0122】
また、駆動制御部26の制御モードが自動停止オフモードである場合において、コンバイン1が排出地点PPへ向かって走行しないときには、駆動制御部26は、自動停止制御と排出時制御との何れも実行しない。
【0123】
以下では、排出時制御について、
図9で示す自動走行を例に挙げ、
図10及び
図11を参照して説明する。尚、この例では、駆動制御部26の制御モードが自動停止オンモードであるとする。
【0124】
図9に示す例では、コンバイン1は、刈取走行を行った後、排出地点PPへ向かって走行する。より具体的には、まず、コンバイン1は、作業対象領域CAにおいて、刈取走行経路LNに沿って西へ向かって刈取走行を行う。そして、コンバイン1は、位置P11を通過する。このときの時刻を、時刻t11とする。
【0125】
次に、コンバイン1は、位置P12に到達する。コンバイン1は、位置P12から外周領域SAに進入しながら、南側へ方向転換を行う。また、コンバイン1は、位置P12から排出地点PPへ向かって走行する。これにより、コンバイン1は、位置P13、P14、P15、P16を通過し、排出地点PPに到達する。
【0126】
図10では、
図9に示す例における時刻t11以降の刈取部Hの高さの推移が示されている。また、
図11では、
図9に示す例における時刻t11以降の刈取部Hの駆動状態と、フィードチェーン3の駆動状態と、脱穀装置13の駆動状態と、の推移が示されている。
【0127】
尚、コンバイン1が位置P12、P13、P14、P15、P16に到達したときの時刻を、それぞれ、時刻t12、t13、t14、t15、t16とする。
【0128】
時刻t11において、コンバイン1は刈取走行を行っている。即ち、刈取部Hと、フィードチェーン3と、脱穀装置13と、は何れも駆動している。そして、このとき、刈取部Hの高さは、所定の刈取高さである。この刈取高さは、上述の通り、基準高さH1よりも低い。また、この刈取高さは、上述の通り、オペレータによって変更可能である。
【0129】
時刻t12に、コンバイン1は位置P12に到達する。このとき、コンバイン1は、作業対象領域CAから外周領域SAに進入する。この時点で、昇降制御部25は、刈取部Hを上昇させ始める。
【0130】
また、この時点で、駆動制御部26は、排出時制御を実行する。即ち、この時点から、駆動制御部26は、第1期間TB1に亘ってフィードチェーン3及び脱穀装置13の駆動を継続する。また、この時点から、駆動制御部26は、第2期間TB2に亘って刈取部Hの駆動を継続する。
【0131】
尚、この例において、第1期間TB1の長さは、時刻t12から時刻t16までの時間長さに等しい。また、第2期間TB2の長さは、時刻t12から時刻t15までの時間長さに等しい。
【0132】
時刻t13に、刈取部Hの高さは、基準高さH1に達する。しかしながら、この例では、コンバイン1が排出地点PPへ向かって走行している。そのため、駆動制御部26は、自動停止制御に優先して排出時制御を実行する。そして、時刻t13では、まだ、第1期間TB1及び第2期間TB2は何れも経過していない。従って、このとき、自動停止制御は実行されない。
【0133】
時刻t14に、刈取部Hの高さは、高さH2に達する。
【0134】
時刻t15に、第2期間TB2が経過する。この時点で、駆動制御部26は、刈取部Hの駆動を停止する。
【0135】
時刻t16に、第1期間TB1が経過する。この時点で、駆動制御部26は、フィードチェーン3及び脱穀装置13の駆動を停止する。
【0136】
ところで、
図1には、第1搬送時間TA1と、第2搬送時間TA2と、が示されている。第1搬送時間TA1は、圃場の植立穀稈Cが切断装置15により切断されてから、その穀稈Cが第1位置Q1に達するまでに要する時間である。
【0137】
また、第2搬送時間TA2は、圃場の植立穀稈Cが切断装置15により切断されてから、その穀稈Cが第2位置Q2に達するまでに要する時間である。
【0138】
即ち、第2搬送時間TA2は、穀稈Cが刈取部Hにより刈り取られてからフィードチェーン3における搬送終点に達するまでに要する時間に相当する。
【0139】
そして、本実施形態において、第1期間TB1は、第2搬送時間TA2以上の長さを有している。即ち、第1期間TB1は、穀稈Cが刈取部Hにより刈り取られてからフィードチェーン3における搬送終点に達するまでに要する時間以上の長さを有する。
【0140】
また、本実施形態において、第2期間TB2は、第1搬送時間TA1以上の長さを有している。即ち、第2期間TB2は、穀稈Cが刈取部Hにより刈り取られてからフィードチェーン3に受け渡されるまでに要する時間以上の長さを有する。
【0141】
以上で説明した構成であれば、コンバイン1が排出地点PPへ向かって走行する際、コンバイン1が作業対象領域CAから外周領域SAへ進入した時点から所定の第1期間TB1に亘ってフィードチェーン3及び脱穀装置13の駆動が継続される。これにより、コンバイン1が作業対象領域CAから外周領域SAへ進入した時点でフィードチェーン3に挟持されている穀稈Cの全てが、排出地点PPへ向かう走行中に脱穀処理されやすい。そのため、コンバイン1が作業対象領域CAから外周領域SAへ進入した時点でフィードチェーン3に挟持されている穀稈Cが脱穀処理されないことにより穀粒の収量が低下してしまう事態を回避しやすい。
【0142】
また、以上で説明した構成であれば、コンバイン1が排出地点PPへ向かって走行する際、コンバイン1が作業対象領域CAから外周領域SAへ進入した時点から第1期間TB1が経過した時点で、脱穀装置13の駆動が停止する。そのため、コンバイン1が作業対象領域CAから外周領域SAへ進入してから排出地点PPへ到達するまでの間、脱穀装置13が駆動し続ける構成に比べて、燃費が良好となる。
【0143】
従って、以上で説明した構成であれば、穀粒の収量の低下を回避しやすく、且つ、燃費の良好なコンバイン1を実現できる。
【0144】
尚、以上に記載した実施形態は一例に過ぎないのであり、本発明はこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0145】
〔その他の実施形態〕
(1)走行装置11は、ホイール式であっても良いし、セミクローラ式であっても良い。
【0146】
(2)上記実施形態においては、経路算出部23により算出される刈取走行経路LNは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、経路算出部23により算出される刈取走行経路LNは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線でなくても良い。例えば、経路算出部23により算出される刈取走行経路LNは、渦巻き状の走行経路であっても良い。また、刈取走行経路LNは、別の刈取走行経路LNと直交していなくても良い。また、経路算出部23により算出される刈取走行経路LNは、互いに平行な複数の平行線であっても良い。
【0147】
(3)上記実施形態においては、オペレータは、コンバイン1を手動で操作し、
図2に示すように、圃場内の外周部分において、圃場の境界線BDに沿って周回するように刈取走行を行う。しかしながら、本発明はこれに限定されず、コンバイン1が自動で走行し、圃場内の外周部分において、圃場の境界線BDに沿って周回するように刈取走行を行うように構成されていても良い。また、このときの周回数は、3周以外の数であっても良い。例えば、このときの周回数は2周であっても良い。
【0148】
(4)自車位置算出部21、領域算出部22、経路算出部23、走行制御部24、昇降制御部25、駆動制御部26、排出決定部27のうち、一部または全てがコンバイン1の外部に備えられていても良いのであって、例えば、コンバイン1の外部に設けられた管理サーバに備えられていても良い。
【0149】
(5)駆動制御部26は、排出時制御において、第1期間TB1が経過した時点でフィードチェーン3の駆動を停止しないように構成されていても良い。
【0150】
(6)第1期間TB1の長さは、穀稈Cが刈取部Hにより刈り取られてからフィードチェーン3における搬送終点に達するまでに要する時間の長さよりも短くてもよい。
【0151】
(7)駆動制御部26の制御モードは、自動停止オフモードに切り替えることができないように構成されていても良い。
【0152】
(8)駆動制御部26は、自動停止制御を実行する機能を有していなくても良い。
【0153】
(9)上記実施形態においては、フィードチェーン3及び脱穀装置13及び刈取部Hが、時間に基づいて制御される。しかしながら、フィードチェーン3及び脱穀装置13及び刈取部Hは、走行距離に基づいて制御されても良い。例えば、駆動制御部26により実行される排出時制御は、コンバイン1が排出地点PPへ向かって走行する際、作業対象領域CAから外周領域SAへ進入した地点から所定の第1距離を走行するまでの間、フィードチェーン3及び脱穀装置13の駆動を継続すると共に、この第1距離を走行した時点で脱穀装置13の駆動を停止する制御であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部と、刈取部により刈り取られた穀稈を挟持搬送するフィードチェーンと、フィードチェーンにより挟持搬送されている穀稈を脱穀処理する脱穀装置と、を備えるコンバインに利用可能である。
【符号の説明】
【0155】
1 コンバイン
3 フィードチェーン
13 脱穀装置
14 穀粒タンク
25 昇降制御部
26 駆動制御部
27 排出決定部
33 貯留量検知部
C 穀稈
CA 作業対象領域(未刈領域)
H 刈取部
H1 基準高さ
PP 排出地点
SA 外周領域(既刈領域)
TB1 第1期間
TB2 第2期間