(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】受信装置、送信装置、通信方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 72/0446 20230101AFI20230414BHJP
H04B 7/022 20170101ALI20230414BHJP
【FI】
H04W72/0446
H04B7/022
(21)【出願番号】P 2020046245
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-01-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)(出願人による申告)令和元年度、総務省「異システム間の周波数共用技術の高度化に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】堅岡 良知
(72)【発明者】
【氏名】菅野 一生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利則
(72)【発明者】
【氏名】石川 博康
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/109540(WO,A1)
【文献】特開2018-117335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
H04B7/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置から送信された信号を受信する受信装置であって、
信号を受信する受信手段と、
前記送信装置との間での通信中のフレームにおいて、データを含まないブランクフレームの設定を行う設定手段と、
前記ブランクフレームに対応する期間において他のシステムの信号のチャネルを推定する推定手段と、
前記チャネルに基づいて、前記受信手段において受信した信号に含まれる前記他のシステムからの干渉成分を除去する除去手段と、
前記干渉成分が除去された信号に基づいて、前記送信装置から送信されたデータの復調を行う復調手段と、
を有
し、
前記設定手段は、前記送信装置から送信される信号のフレームと、前記他のシステムからの信号のフレームとのうちの長い方のフレームが2つ分以上の長さの前記ブランクフレームを設定する、ことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記送信装置から送信された信号の無線品質に基づいて、前記ブランクフレームを設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記無線品質は、前記送信装置からの信号の受信成功率に基づく、ことを特徴とする請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記ブランクフレームの設定のための制御信号を前記送信装置との間で通信する、ことを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項5】
受信装置へ信号を送信する送信装置であって、
前記受信装置において除去されるべき他のシステムからの信号について前記受信装置がチャネルを推定するために用いられる、前記受信装置との間での通信中のフレームにおいてデータを含まないブランクフレームの設定を行う設定手段と、
前記ブランクフレームにおいて信号を送信せず、当該ブランクフレームを除くフレームにおいて前記受信装置へ信号を送信する送信手段と、
を有
し、
前記設定手段は、前記送信手段によって送信される信号のフレームと、前記受信装置において除去されるべき他のシステムからの信号のフレームとのうちの長い方のフレームが2つ分以上の長さの期間として前記ブランクフレームを設定する、ことを特徴とする送信装置。
【請求項6】
前記設定手段は、前記送信手段によって送信された信号の前記受信装置における無線品質に基づいて、前記ブランクフレームを設定する、ことを特徴とする請求項
5に記載の送信装置。
【請求項7】
前記無線品質は、前記送信手段からの信号の前記受信装置における受信成功率に基づく、ことを特徴とする請求項
6に記載の送信装置。
【請求項8】
前記無線品質は、複数の前記受信装置へそれぞれ送信された信号について、当該複数の前記受信装置のうち受信に成功した当該受信装置の数に基づく、ことを特徴とする請求項
6に記載の送信装置。
【請求項9】
前記設定手段は、前記ブランクフレームの設定のための制御信号を前記受信装置との間で通信する、ことを特徴とする請求項
5から
8のいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項10】
送信装置から送信された信号を受信する受信装置によって実行される通信方法であって、
前記送信装置との間での通信中のフレームにおいて、データを含まないブランクフレームの設定を行うことと、
前記ブランクフレームに対応する期間において他のシステムの信号のチャネルを推定することと、
前記チャネルに基づいて、受信した信号に含まれる前記他のシステムからの干渉成分を除去することと、
前記干渉成分が除去された信号に基づいて、前記送信装置から送信されたデータの復調を行うことと、
を含
み、
前記ブランクフレームの前記設定において、前記送信装置から送信される信号のフレームと、前記他のシステムからの信号のフレームとのうちの長い方のフレームが2つ分以上の長さの前記ブランクフレームが設定される、ことを特徴とする通信方法。
【請求項11】
受信装置へ信号を送信する送信装置によって実行される通信方法であって、
前記受信装置において除去されるべき他のシステムからの信号について前記受信装置がチャネルを推定するために用いられる、前記受信装置との間での通信中のフレームにおいてデータを含まないブランクフレームの設定を行うことと、
前記ブランクフレームにおいて信号を送信せず、当該ブランクフレームを除くフレームにおいて前記受信装置へ信号を送信することと、
を含
み、
前記ブランクフレームの前記設定において、送信される信号のフレームと、前記受信装置において除去されるべき他のシステムからの信号のフレームとのうちの長い方のフレームが2つ分以上の長さの期間として前記ブランクフレームが設定される、ことを特徴とする通信方法。
【請求項12】
送信装置から送信された信号を受信する受信装置に備えられたコンピュータに、
前記送信装置との間での通信中のフレームにおいて、データを含まないブランクフレームの設定を行わせ、
前記ブランクフレームに対応する期間において他のシステムの信号のチャネルを推定させ、
前記チャネルに基づいて、受信した信号に含まれる前記他のシステムからの干渉成分を除去させ、
前記干渉成分が除去された信号に基づいて、前記送信装置から送信されたデータの復調を行わせる、
ためのプログラム
であって、
前記ブランクフレームの前記設定において、前記送信装置から送信される信号のフレームと、前記他のシステムからの信号のフレームとのうちの長い方のフレームが2つ分以上の長さの前記ブランクフレームが設定される、ことを特徴とするプログラム。
【請求項13】
受信装置へ信号を送信する送信装置に備えられたコンピュータに、
前記受信装置において除去されるべき他のシステムからの信号について前記受信装置がチャネルを推定するために用いられる、前記受信装置との間での通信中のフレームにおいてデータを含まないブランクフレームの設定を行わせ、
前記ブランクフレームにおいて信号を送信せず、当該ブランクフレームを除くフレームにおいて前記受信装置へ信号を送信させる、
ためのプログラム
であって、
前記ブランクフレームの前記設定において、送信される信号のフレームと、前記受信装置において除去されるべき他のシステムからの信号のフレームとのうちの長い方のフレームが2つ分以上の長さの期間として前記ブランクフレームが設定される、ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信のチャネル推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の用途が多様化し、様々なシステムにおいて無線通信機能が用いられるようになっている。一方で、周波数リソースは限られており、複数のシステムが周波数帯域を共用することが想定される。複数の無線システムが共通の周波数帯域を共用する場合、これらのシステム間の無線信号が干渉してしまいうる。非特許文献1には、逐次的に信号成分を分離することにより、信号成分間の干渉成分を除去する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】G. J. Foschini、「Layered space-time architecture for wireless communication in a fading environment when using multi-element antennas」、Bell Labs Tech. J.、pp. 41-59、1996年8月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
干渉除去は、十分なチャネル推定精度が得られることによって、正確な干渉信号のレプリカを生成することができる。ここで、同一のシステム内においては、例えば、チャネル推定のための参照信号が相互に干渉しないように配置することにより、高精度なチャネル推定を行うことができる。一方、異なるシステム間では、相互に干渉しないように参照信号を配置することは困難であり、チャネル推定精度の向上ができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、周波数共用システムにおいてチャネル推定精度を向上させる技術を提供する。
【0006】
本発明の一態様による受信装置は、送信装置から送信された信号を受信する受信装置であって、信号を受信する受信手段と、前記送信装置との間での通信中のフレームにおいて、データを含まないブランクフレームの設定を行う設定手段と、前記ブランクフレームに対応する期間において他のシステムの信号のチャネルを推定する推定手段と、前記チャネルに基づいて、前記受信手段において受信した信号に含まれる前記他のシステムからの干渉成分を除去する除去手段と、前記干渉成分が除去された信号に基づいて、前記送信装置から送信されたデータの復調を行う復調手段と、を有し、前記設定手段は、前記送信装置から送信される信号のフレームと、前記他のシステムからの信号のフレームとのうちの長い方のフレームが2つ分以上の長さの前記ブランクフレームを設定する。
【0007】
本発明の一態様による送信装置は、受信装置へ信号を送信する送信装置であって、前記受信装置において除去されるべき他のシステムからの信号について前記受信装置がチャネルを推定するために用いられる、前記受信装置との間での通信中のフレームにおいてデータを含まないブランクフレームの設定を行う設定手段と、前記ブランクフレームにおいて信号を送信せず、当該ブランクフレームを除くフレームにおいて前記受信装置へ信号を送信する送信手段と、を有し、前記設定手段は、前記送信手段によって送信される信号のフレームと、前記受信装置において除去されるべき他のシステムからの信号のフレームとのうちの長い方のフレームが2つ分以上の長さの期間として前記ブランクフレームを設定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、周波数共用システムにおいてチャネル推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ブランクフレームの設定を説明する図である。
【
図3】各装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図6】送信装置によって実行される処理の流れの例を示す図である。
【
図7】受信装置によって実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本無線通信システムは、一例において、セルラ通信システムを含んで構成される。セルラ通信システムは、例えば、第5世代(5G)のシステムやロングタームエボリューション(LTE)のシステムなど、任意の世代のセルラ通信システムであり、基地局装置101と端末装置102とを含んで構成される。このシステムにおいて、セルラ通信システムは、他システムと同一の周波数を共用するものとする。ここで、他システムとは、例えば、固定無線アクセスシステム等のセルラ通信システムと異なるシステムであってもよいし、例えば、基地局装置101を含んだセルラ通信システムと管理主体の異なる別のセルラ通信システムであってもよい。
【0012】
周波数リソースが共用される無線通信システムにおいては、システム間の干渉が問題となる。例えば、
図1では、基地局装置101が端末装置102へ送信した信号に対して、他システムAの送信装置111が他システムAの受信装置112へ送信した信号が干渉しうることを示している。同様に、
図1では、端末装置102が基地局装置101へ送信した信号に対して、他システムBの送信装置121が他システムBの受信装置122へ送信した信号が干渉しうることを示している。
【0013】
このような干渉が発生するシステムでは、一例として、干渉キャンセラを用いて信号から干渉成分を除去することにより、希望信号の復調・復号時の性能を改善することができる。例えば、逐次型干渉キャンセラ(SIC)によれば、まず、受信信号に対して干渉信号成分の復調・復調が実行され、その結果得られたデータが再度符号化・変調され、得られた変調信号にチャネル推定値が乗算されることにより、干渉信号のレプリカが生成される。そして、この干渉信号のレプリカが、受信信号から減算されることにより、その受信信号から干渉信号成分が除去される。なお、干渉信号成分が除去された信号から、希望信号の復調・復号を実行し、その結果に基づいて希望信号のレプリカを生成して、受信信号から減算することにより、希望信号成分が除去された信号を得ることができる。そして、この希望信号成分が除去された信号に基づいて、干渉信号の復調・復号やレプリカ生成を実行して、干渉信号のレプリカをより高精度に生成することもできる。例えば、送信対象データがターボ符号や畳み込み符号などで符号化されている場合などに、これらの処理を繰り返すことにより、希望信号と干渉信号の復調・復号精度を向上させることができる。
【0014】
一方、干渉キャンセラが十分な干渉抑圧機能を発揮するには、高精度なチャネル推定が可能であることが要求される。ここで、基地局装置101や端末装置102が受信する干渉信号が同一のシステムからの信号である場合、そのシステム内で、例えば参照信号が送信されるべき無線リソース(時間・周波数リソース)を調整することができる。しかしながら、基地局装置101や端末装置102が受信する干渉信号が他システムからの信号である場合、そのような調整を行うことができない。このため、他システムからの信号についてのチャネル推定を高精度に行うことができない。
【0015】
本実施形態では、このような事情に鑑み、基地局装置101と端末装置102のうちの送信側の装置(送信装置)が、受信側の装置(受信装置)との通信中のフレームにおいて、データを含まないブランクフレームの設定を行う。なお、ここでの「通信中」は、例えば、基地局装置101と端末装置102との間でいつでもユーザデータを含んだデータフレームが送受信可能な状態を指す。例えば、基地局装置101と端末装置102との間での通信に無線リソースが割り当てられた最初のフレームがブランクフレームである場合、実際に通信は行われていないが通信中であると呼ぶ。また、ブランクフレームは、少なくともデータを含まず、一方で、例えば、制御チャネルや参照信号を含んでもよい。すなわち、制御チャネルや参照信号までも含まれない無信号期間が設定されるようにしてもよいし、通信制御のための最小限の情報は送信されるようにしてもよい。なお、「フレーム」は「サブフレーム」と読み替えられてもよい。
【0016】
このようにブランクフレームが設定されると、受信装置は、そのブランクフレームに対応する期間において、干渉信号成分のみを受信することとなる。なお、受信装置は、例えば送信装置との間で、ブランクフレームの設定のための制御信号を通信することにより、どのフレームをブランクフレームとするかの設定を共有する。例えば、基地局装置101がブランクフレームを設定して、その設定を端末装置102へ通知する。なお、端末装置102が、ブランクフレームを設定して、その設定を基地局装置101へ通知してもよい。送信装置は、その共有された設定に従ってブランクフレームにおいてデータを送信しないようにし、受信装置は、その共有された設定に従ってブランクフレームにおいて干渉信号のチャネル推定を実行するようにする。ブランクフレームにおいては、例えば干渉信号のチャネル推定以外の機能をオフとする。すなわち、希望信号の受信処理のための各処理と、干渉信号のレプリカ生成のための処理のうちチャネル推定を除いた処理については実行されない。受信装置は、受信した干渉信号に基づいて、その干渉信号のチャネル推定を高精度に行うことができる。なお、受信装置は、干渉信号に関する参照信号の配置などの情報について、事前に取得しうる。例えば、受信装置が基地局装置101である場合、例えば他システムとの間でシステムの情報を交換するネットワークノードから、その情報を取得しうる。また、受信装置が端末装置102である場合、基地局装置101からの(例えば報知信号と個別信号との少なくともいずれかによる)シグナリングによって、その情報を取得してもよい。
【0017】
なお、ブランクフレームは、希望信号のフレームと干渉信号のフレームとのうちの長い法のフレームが2つ分以上の長さに設定される。これにより、少なくとも1フレーム分の干渉信号を、希望信号がない状態で受信することができるようになり、干渉信号のチャネル推定精度を向上させることができる。例えば、
図2(A)に示すように、例えば、干渉信号のフレーム長が、希望信号のフレーム長より長い場合、干渉信号の2フレーム分以上の長さに対応する個数の希望信号のフレームをブランクフレームとして設定する。また、
図2(B)に示すように、希望信号のフレーム長が、干渉信号のフレーム長より長い場合、希望信号の2つのフレームをブランクフレームとして設定する。なお、
図2(A)及び
図2(B)に示すように、ブランクフレームは、連続した複数個のフレームにおいて設定される。なお、
図2(A)及び
図2(B)は、フレーム長の長い方の2フレーム分を基準としてブランクフレームとして設定されるべきフレームの数を決定する場合の例を示しているが、例えば、3フレーム分など、より多くの数をブランクフレームとしてもよい。
【0018】
また、ブランクフレームの生成要否は、例えば、受信装置における無線品質に基づいて決定されうる。例えば、受信装置における希望信号の信号対雑音及び干渉電力比が所定値を下回る場合に、ブランクフレームが生成されうる。また、例えば、受信装置における、希望信号の受信成功率(信号の受信回数に対する希望信号の受信成功回数の比)が所定値を下回った場合に、干渉信号の除去が十分に有効に動作していない可能性があるため、ブランクフレームを設定して干渉信号のチャネル推定を行うようにしうる。これにより、干渉信号のチャネル推定を高精度に実行することができるようになる。受信装置は、例えば、サイクリック・リダンダンシ・チェック(CRC)を用いて、復調・復号後の信号に誤りがあるかを判定し、誤りがない場合に受信に成功したと判定する。この場合、ブランクフレームを生成するか否かを、送信装置と受信装置とのいずれが決定してもよい。例えば、基地局装置101は、受信装置として動作する場合(すなわち、上りリンクで通信する場合)に、送信装置として動作する端末装置102から送信された信号についての受信成功率を特定し、その端末装置102にブランクフレームを設定させるかを決定しうる。また、基地局装置101は、送信装置として動作する場合(すなわち、下りリンクで通信する場合)に、受信装置として動作する端末装置102におけるHARQ(複合自動再送要求)の再送要求の回数をカウントすることにより、または、端末装置102からのHARQのACKを受信したか否かによって受信に成功した回数を特定することによって、受信成功率を特定し、その端末装置102へ送信する信号においてブランクフレームを設定するかを決定しうる。
【0019】
また、送信装置が、複数の受信装置のそれぞれに対して信号を送信している場合、その複数の受信装置のうちの、信号の受信に成功した受信装置の数に基づいて、ブランクフレームを設定するか否かを判定しうる。例えば、信号の送信先の受信装置の数に対する信号の受信に成功した受信装置の数の比が所定値を下回る場合に、ブランクフレームを設定すると決定される。例えば、送信装置として動作する基地局装置101は、下りリンクで複数の端末装置102に信号を送信し、その信号の受信に成功した端末装置102の数に応じて、その受信成功率が低い場合に、ブランクフレームを設定すると決定しうる。なお、基地局装置101は、複数の端末装置102のそれぞれが受信に成功したか否かを、例えば、その複数の端末装置102からのHARQの再送要求やACKによって、特定することができる。基地局装置101は、例えば、複数の端末装置102のうち、再送要求を送信した端末装置102の数が所定数を超える場合に、ブランクフレームを設定することを決定しうる。
【0020】
以下では、このような処理を実行する送信装置及び受信装置の構成と、処理の流れの例について説明する。
【0021】
(装置構成)
図3に、本実施形態に係る通信装置(基地局装置101又は端末装置102)のハードウェア構成例を示す。通信装置は、一例において、プロセッサ301、ROM302、RAM303、記憶装置304、及び通信回路305を含んで構成される。プロセッサ301は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM302や記憶装置304に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、通信装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM302は、通信装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM303は、プロセッサ301がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置304は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路305は、無線通信用の回路を含んで構成される。なお、
図3では、1つの通信回路305が図示されているが、通信装置は、複数の通信回路を有しうる。
【0022】
図4に、送信装置の機能構成例を示す。送信装置は、例えば、変調符号化部401、フレーム制御部402、ブランクフレーム制御部403、ブランクフレーム設定部404、および、RF部405を有する。これらの機能は、例えば、通信回路305に組み込まれたプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現されうる。なお、これらの機能の一部が、例えばプロセッサ301がROM302等に記憶されたプログラムを実行することによって実現されてもよい。また、
図4は、送信装置の機能を概念的に示したものであり、
図4に示すような機能分担が行われる必要はない。なお、送信装置は、例えば、基地局装置101および端末装置102の両方に実装される。
【0023】
変調符号化部401は、送信データ系列を誤り訂正符号化し、符号化されたビット列を変調して出力する。フレーム制御部402は、変調されたシンボル系列を取得し、そのシンボル系列をフレーム内にマッピングして、送信データ系列を送信するための送信対象フレームを生成する。ブランクフレーム制御部403は、受信装置との通信中のフレームの中で事前に定められたタイミング及び数のフレームをブランクフレームとするための制御を実行する。例えば、ブランクフレーム制御部403が、フレーム制御部402にブランクフレームとすべきフレームのフレーム番号を出力し、フレーム制御部402は、そのフレーム番号のフレームについては、無信号期間や、制御信号及び参照信号のみの送信とすることによって、データを含まないブランクフレームを出力する。すなわち、フレーム制御部402は、ブランクフレームにおいては、変調符号化部401の出力シンボル系列のマッピングを行わない。ブランクフレーム設定部404は、ブランクフレームを生成するか否かの決定、ブランクフレームのタイミングや長さの設定などを行う。なお、定期的にブランクフレームが設定されることが事前に取り決められている場合は、ブランクフレーム設定部404は省略されてもよい。ブランクフレーム設定部404は、上述のように、例えば無線品質に基づいてブランクフレームを生成するか否かを決定する。また、ブランクフレーム設定部404は、例えば、他システムからの干渉信号のフレーム長と、自装置が送信するフレームのフレーム長とに基づいて、
図2(A)及び
図2(B)を用いて説明したように、ブランクフレームとする期間を決定しうる。ブランクフレーム設定部404は、受信装置との間で、決定した設定を共有する。なお、ブランクフレーム設定部404は、受信装置から設定を受信して、ブランクフレーム制御部403に受け渡してもよい。RF部405は、生成されたフレームについて一般的な送信機が実行する各種処理を実行してRF信号の形式に変換して送信する。
【0024】
図5に、受信装置の機能構成例を示す。受信装置は、例えば、RF部501、自システム信号処理部511、他システム信号処理部521、ブランクフレーム制御部531、および、ブランクフレーム設定部532を含む。自システム信号処理部511は、復調部512、チャネル推定部513、および復号部514を含む。他システム信号処理部521は、復調部522、チャネル推定部523、復号部524、およびレプリカ生成部525を含む。これらの機能は、例えば、通信回路305に組み込まれたプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現されうる。なお、これらの機能の一部が、例えばプロセッサ301がROM302等に記憶されたプログラムを実行することによって実現されてもよい。また、
図5は、受信装置の機能を概念的に示したものであり、
図5に示すような機能分担が行われる必要はない。なお、受信装置は、例えば、基地局装置101および端末装置102の両方に実装される。
【0025】
RF部501は、受信したRF信号に対して一般的な送信機が実行する各種処理を実行して、例えばベースバンドの波形を出力する。この波形は、例えば、他システム信号処理部521と、(例えば遅延器を介して)加算器502に入力される。他システム信号処理部521の復調部522は、入力された波形に基づいて、干渉信号の復調を行う。この復調は、チャネル推定部523によって推定されたチャネル推定値を用いて実行される。チャネル推定値を用いた復調方法については、例えば波形を示す値をチャネル推定値により除算する方法を用いてもよいし他の当業者に知られた一般的な手法を用いてもよい。チャネル推定部523は、干渉信号のチャネルを推定する。例えば、チャネル推定部523は、他システムの信号の参照信号が存在する時間・周波数位置を事前に把握しておき、その位置における受信信号の値に基づいて、干渉信号のチャネル推定を行う。なお、本実施形態では、チャネル推定部523は、例えば、ブランクフレームの期間においてのみ、干渉信号のチャネル推定を行うようにしうる。これにより、高精度なチャネル推定値を得ることができ、復調部522による復調の精度も向上させることができる。なお、この場合、チャネル推定部523は、直前のブランクフレームの間に推定したチャネル推定値を、次のブランクレームにおいてチャネルを推定するまで保持しておくようにしうる。これにより、ブランクフレーム以外の期間にチャネル推定を行うことによるチャネル推定値の精度劣化を防ぐことができる。復調部522による復調で得られたビット列は、復号部524に入力され、そのビット列に対して誤り訂正復号が実行される。復号部524の復号の結果は、レプリカ生成部525に入力される。レプリカ生成部525は、復号の結果得られたビット列を、送信装置が用いたのと同じ符号化方式を用いて誤り訂正符号化し、その誤り訂正符号化された系列を変調する。そして、レプリカ生成部525は、変調されたシンボル系列に対してチャネル推定部523で推定されたチャネル推定値を乗算することにより、干渉信号のレプリカを生成する。生成されたレプリカは加算器502へ入力される。
【0026】
加算器502では、タイミングがそろえられた受信信号と干渉信号のレプリカとが入力され、受信信号から干渉信号が減算された結果の波形が出力される。復調部512は、この波形に対して復調処理を実行する。なお、この復調処理の際には、チャネル推定部513によって推定されたチャネル推定値が用いられる。チャネル推定部513は、希望信号の参照信号が送信されている時間・周波数の位置の、受信信号から干渉信号が減算された結果の波形を抽出して、チャネル推定値を取得する。このとき、レプリカ生成部525によって生成されたレプリカ信号が高精度であれば、干渉信号成分が高精度に除去されるため、高精度にチャネル推定を行うことができ、復調部512における復調精度も向上させることができる。最終的に、復調部512による復調で得られたビット列は、復号部514へ入力され、誤り訂正復号が行われて、希望信号のデータが抽出される。なお、復号後のデータに対してはCRCチェックなどが実行され、必要に応じてHARQの再送要求やACKの送信が行われる。
【0027】
ブランクフレーム制御部531は、送信装置がブランクフレームとして設定したフレームにおいて、他システム信号処理部521のチャネル推定部523のみが動作するようにして、自システム信号処理部511や他システム信号処理部521のチャネル推定部523以外の機能部が動作しないように制御を行う。これにより、チャネル推定部523による干渉信号のチャネル推定精度を向上させることができる。
【0028】
ブランクフレーム設定部532は、ブランクフレームを送信装置に生成させるか否かの決定、ブランクフレームのタイミングや長さの設定などを行う。なお、定期的にブランクフレームが設定されることが事前に取り決められている場合は、ブランクフレーム設定部532は省略されてもよい。ブランクフレーム設定部532は、上述のように、例えば無線品質に基づいてブランクフレームを送信装置に生成させるか否かを決定する。また、ブランクフレーム設定部532は、例えば、他システムからの干渉信号のフレーム長と、自装置が受信するフレームのフレーム長とに基づいて、
図2(A)及び
図2(B)を用いて説明したように、ブランクフレームとする期間を決定しうる。ブランクフレーム設定部532は、送信装置との間で、決定した設定を共有する。なお、ブランクフレーム設定部532は、送信装置から設定を受信して、ブランクフレーム制御部531に受け渡してもよい。
【0029】
(処理の流れ)
図6を用いて、送信装置によって実行される処理の流れの例について概説する。なお、各処理の詳細については上述の通りであるため、ここでは説明を繰り返さない。
【0030】
まず、送信装置は、ブランクフレームの設定を実行する(S601)。例えば、受信装置との間で設定に関する情報を通信することにより、送信装置と受信装置とで共通の設定が認識されるようにする。なお、事前に設定が決定されている場合などは、S601の処理は省略されうる。また、
図6の例では、一度設定がなされた後は、S601の処理が実行されないような例を示しているが、この設定は例えば定期的に実行されてもよい。送信装置は、受信装置と接続して通信を行っている際に、これから送信するフレームがブランクフレームとして設定されているかを判定する(S602)。送信装置は、ブランクフレームとして設定されているフレームに対して(S602でYES)、ユーザデータを含まないブランクフレームを生成し(S603)、ブランクフレームとして設定されていないフレームに対して(S602でNO)、ユーザデータを含んだデータフレームを生成する(S604)。そして、送信装置は、生成したフレームを送信する(S605)。その後、送信装置は、例えば受信装置との接続が切断されるまで、同様の処理を繰り返し実行しうる。
【0031】
続いて、
図7を用いて、受信装置によって実行される処理の流れの例について概説する。なお、各処理の詳細については上述の通りであるため、ここでは説明を繰り返さない。
【0032】
まず、受信装置は、ブランクフレームの設定を実行する(S701)。例えば、送信装置との間で設定に関する情報を通信することにより、送信装置と受信装置とで共通の設定が認識されるようにする。なお、事前に設定が決定されている場合などは、S701の処理は省略されうる。また、
図7の例では、一度設定がなされた後は、S701の処理が実行されないような例を示しているが、この設定は例えば定期的に実行されてもよい。
【0033】
受信装置は、受信した無線信号について、例えば希望信号のフレーム番号などに基づいて、現在受信しているフレームがブランクフレームとして設定されたフレームであるかを判定する(S702)。そして、受信装置は、そのフレームがブランクフレームである期間において(S702でYES)、干渉信号のチャネル推定を実行する(S703)。一方、受信装置は、ブランクフレーム以外の期間においては、例えば、S703で推定されたチャネル推定値に基づいて干渉信号の復調・復号を実行し(S704)、その結果とチャネル推定値を用いて干渉信号のレプリカを生成する(S705)。そして、受信装置は、受信信号から、生成したレプリカ信号を減算し(S706)、減算後の信号から、希望信号の復調・復号を行う(S707)。
【0034】
なお、本実施形態では、干渉信号が先に復調・復号される例を示しているが、これに限られない。例えば、希望信号と干渉信号の電力を比較して、その電力比に基づいて、先に復調・復号が行われる信号を決定してもよい。この場合、例えば、希望信号が復調・復号された後に、希望信号のレプリカが生成され、受信信号から減算される。そして、その減算後の信号に対して、S703で推定したチャネル推定値を用いて干渉信号の復調・復号を行う。そして、その干渉信号のレプリカを生成して、受信信号から減算し、その減算結果に基づいて、再度、希望信号の復調・復号を行う。このように、繰り返し処理が実行される場合は、干渉信号が先に復調・復号される必要はない。
【0035】
以上のようにして、ブランクフレームを設定し、受信装置において干渉信号だけが受信される期間を設けることにより、干渉信号のチャネル推定とレプリカとを高精度化することができ、受信信号から干渉信号の影響を高精度に除去することが可能となる。
【0036】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。