(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/76 20230101AFI20230414BHJP
H04N 25/10 20230101ALI20230414BHJP
H04N 23/56 20230101ALI20230414BHJP
【FI】
H04N23/76
H04N25/10
H04N23/56
(21)【出願番号】P 2020049349
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 純
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-122847(JP,A)
【文献】特開2009-201094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/76
H04N 25/10
H04N 23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色成分の分光感度特性を有する撮像部から、単一波長の照明が照射された監視領域を撮像した撮影画像を取得する取得部と、
前記撮影画像に含まれる画像領域について、前記単一波長の照明に対する前記撮像部の分光感度の比率に応じて前記画像領域の画素値を補正する画素補正手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記画素補正手段は、前記分光感度と近似する比率になるように前記画像領域の画素値を補正することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像処理装置であって、
前記画素補正手段は、輝度値が低くなるように前記画像領域の画素値を補正することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記画素補正手段は、輝度値が低い前記画像領域よりも輝度値が高い前記画像領域の補正量を大きくすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記撮影画像と記憶した基準画像との差分から前記撮影画像に検知対象が存在するか否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記画素補正手段において補正される前の前記撮影画像の前記画像領域の画素値と、当該撮影画像の画像領域に対応する前記画素補正手段において補正された前記画像領域の画素値との差分を用いて前記検知対象が存在するか否かを判定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置であって、
前記判定手段は、前記画素補正手段において補正される前の前記撮影画像の前記画像領域の画素値の分散と、当該撮影画像の画像領域に対応する前記画素補正手段において補正された前記画像領域の画素値の分散との差分を用いて前記検知対象が存在するか否かを判定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の画像処理装置であって、
前記判定手段は、前記画素補正手段において補正される前の前記撮影画像の前記画像領域のエッジ強度と、当該撮影画像の画像領域に対応する前記画素補正手段において補正された前記画像領域のエッジ強度との差分を用いて前記検知対象が存在するか否かを判定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
コンピュータを、
複数の色成分の分光感度特性を有する撮像部が撮像した、単一波長の照明が照射された監視領域の撮影画像に含まれる画像領域について、前記単一波長の照明に対する前記撮像部の分光感度の比率に応じて前記画像領域の画素値を補正する画素補正手段として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視領域を撮像した画像を順次処理し、監視領域に検知対象が存在するか否かを判定する画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視領域をカメラにて撮像し、撮像した画像と基準画像とを比較して変化のある領域(変化領域)を求め、変化領域の大きさや形状などの画像特徴に基づいて侵入者等の検知対象の有無を判定する画像処理装置がある。
【0003】
このような画像処理装置では、夜間など監視領域が暗い場合であっても侵入者を検知できるように、撮影の際に監視領域を照らす照明装置を設けている。しかし、夜間は、この照明装置による光以外にも車のヘッドライト等の外乱光が監視領域内に射し込み、その光による物体からの反射や物体の影が監視領域内に写り込むことがある。画像処理装置では、画像中の変化領域の大きさや形状から人物を検知しているので、反射や影を人物と誤って検知したり、人物を正しく検知できなかったりすることがある。
【0004】
従来、照明を点灯して撮像した点灯画像と、照明を消灯して撮像した消灯画像との差分をとることで外乱光の影響を除去した点消灯差分画像影を生成し、この点消灯差分画像から検知対象物を検知する構成が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、点灯画像と消灯画像とを同時に撮像できず、撮像時刻に差が生ずるので移動する外乱光を除去できない場合がある。また、外乱光を除去できない影響により、実際には存在しない変化が撮像画像内に生じてしまい、誤検知や誤判定となる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、複数の色成分の分光感度特性を有する撮像部から、単一波長の照明が照射された監視領域を撮像した撮影画像を取得する取得部と、前記撮影画像に含まれる画像領域について、前記単一波長の照明に対する前記撮像部の分光感度の比率に応じて前記画像領域の画素値を補正する画素補正手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置である。
【0008】
本発明の1つの態様は、コンピュータを、複数の色成分の分光感度特性を有する撮像部が撮像した、単一波長の照明が照射された監視領域の撮影画像に含まれる画像領域について、前記単一波長の照明に対する前記撮像部の分光感度の比率に応じて前記画像領域の画素値を補正する画素補正手段として機能させることを特徴とする画像処理プログラムである。
【0009】
ここで、前記画素補正手段は、前記分光感度と近似する比率になるように前記画像領域の画素値を補正することが好適である。
【0010】
また、前記画素補正手段は、輝度値が低くなるように前記画像領域の画素値を補正することが好適である。
【0011】
また、前記画素補正手段は、輝度値が低い前記画像領域よりも輝度値が高い前記画像領域の補正量を大きくすることが好適である。
【0012】
また、前記撮影画像と記憶した基準画像との差分から前記撮影画像に検知対象が存在するか否かを判定する判定手段をさらに備え、前記判定手段は、前記画素補正手段において補正される前の前記撮影画像の前記画像領域の画素値と、当該撮影画像の画像領域に対応する前記画素補正手段において補正された前記画像領域の画素値との差分を用いて前記検知対象が存在するか否かを判定することが好適である。
【0013】
また、前記判定手段は、前記画素補正手段において補正される前の前記撮影画像の前記画像領域の画素値の分散と、当該撮影画像の画像領域に対応する前記画素補正手段において補正された前記画像領域の画素値の分散との差分を用いて前記検知対象が存在するか否かを判定することが好適である。
【0014】
また、前記判定手段は、前記画素補正手段において補正される前の前記撮影画像の前記画像領域のエッジ強度と、当該撮影画像の画像領域に対応する前記画素補正手段において補正された前記画像領域のエッジ強度との差分を用いて前記検知対象が存在するか否かを判定することが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外乱光の影響による誤検知や誤判定を低減した画像処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態における画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態における撮像部の分光感度の例を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における画素値の補正処理を説明する図である。
【
図4】本発明の実施の形態における撮影画像と補正画像の例を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態における画像処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態における画素補正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態における画像処理装置100は、
図1に示すように、照明部10、撮像制御部12、撮像部14、記憶部16、画像処理部18及び出力部20にて構成されている。画像処理装置100の一部は、コンピュータによって構成することができる。本実施の形態では、画像処理装置100として各部を一体的に説明するが、照明部10、撮像制御部12、撮像部14、記憶部16、画像処理部18及び出力部20を別の装置として構成してもよい。この場合、通信技術を駆使して必要な制御信号等を相互に通信すればよい。
【0018】
画像処理装置100は、監視空間を有する監視対象物件(店舗、オフィス、マンション、倉庫、家屋、屋外等)に設けられる。本実施の形態では、監視空間への侵入者を検知対象として検知する例を説明する。ただし、検知対象は、人間に限定されるものでなく、移動して監視空間に侵入したり、運び込まれたりするおそれがある物体であればよい。
【0019】
照明部10は、夜間等であっても撮像部14にて監視領域に生じた変化を画像から検出できるように、少なくとも撮像部14の撮像範囲を照らすことができる照明用LED等の照明装置である。照明部10は、撮像制御部12による制御にしたがい点灯または消灯が可能である。
【0020】
照明部10は、単一波長の光源を用いるものとする。照明部10の光源の波長は、特に限定されるものではなく、例えば、可視光領域の波長としてもよいし、近赤外領域の波長としてもよい。照明部10は、照明用LEDとすることができる。
【0021】
照明部10は、画像処理装置100に内蔵されていてもよいし、外部に備えられていてもよい。例えば、監視空間である部屋の照明にて照明部10を代用してもよい。この場合、照明は単一波長の光を照射できるものであることが必要である。
【0022】
撮像制御部12は、照明部10を消灯及び点灯させる制御を行う。また、撮像制御部12は、撮像部14の撮像タイミングや露光制御を実行する。例えば、昼間は照明部10を消灯した状態として、撮像部14によって監視空間の撮像を行うように制御を行う。また、夜間は照明部10を点灯した状態として、撮像部14によって監視空間の撮像を行うように制御を行う。なお、昼間であっても照明部10を点灯して、後述する画素補正手段18bにより照明部10以外の外乱光の影響を軽減させた画像を生成してもよい。
【0023】
撮像部14は、光学系、CCD素子又はC-MOS素子等の撮像素子、光学系部品、アナログ/デジタル変換器等を含んで構成される。撮像部14は、撮像制御部12からの制御に基づき、監視すべき領域を順次撮像し、撮像したデジタル画像を記憶部16に出力する。
【0024】
撮像部14では、外乱光による影響を受ける状況下において照明部10を監視空間に照射して、照明部10の単一波長の光の画像を撮像できる構成とする。例えば、照明部10が赤外光を照射する場合、昼間は、カラー画像を撮影するため赤外光をカットするカットフィルタを光路内に挿入して画像を撮影できる構成とする。一方夜間は、当該カットフィルタが光路外に外され、照明部10の単一波長の光を含む画像を撮影できる構成とする。
【0025】
なお、撮像部14は、画像処理装置100の外部に設けてもよい。この場合、画像処理装置100は、外部に設けられた撮像部14から撮像画像を受信する構成(取得部)とすればよい。
【0026】
記憶部16は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ、ハードディスク等のメモリ装置で構成される。記憶部16は、撮像部14及び画像処理部18からアクセス可能である。記憶部16には、撮影画像16a、補正画像16b、背景画像16c及び分光感度情報16dが記憶される。なお、図示しないが、記憶部16には、撮像部14の設置高・俯角などの各種カメラパラメータ、画像処理装置100の各処理を実現するための各種プログラムやパラメータなどを記憶させてもよい。
【0027】
撮影画像16aは、撮像部14にて撮像した画像であって、現時点の処理対象となる画像である。撮影画像16aは、撮像部14から撮影される都度に記憶部16に記憶される。本実施の形態では、撮影画像16aは、照明部10を点灯させた状態で撮像部14により撮像した画像とする。
【0028】
補正画像16bは、後述する画素補正手段18bによって撮影画像16aの画素値を補正した画像である。補正画像16bは、撮影画像16aから外乱光の影響を軽減させた画像である。
【0029】
背景画像16cは、過去の撮影画像16aのうち侵入者等が抽出されていない画像であり、後述する画像処理部18の背景画像生成手段18eにて適宜更新される。
【0030】
分光感度情報16dは、撮像部14における撮像素子の分光感度を示す情報である。分光感度は、光の波長に対して撮像素子の感度がどのように変わるのか表したものである。分光感度情報16dは、少なくとも照明部10から照射される単一波長の光に対する撮像部14の撮像素子の分光感度を含む情報とする。
【0031】
例えば、撮像部14のカラーフィルターを有する撮像素子の各画素が赤(R)、緑(G)、青(B)の光を分光する場合、各画素は
図2に示すような分光感度を示す。
図2では、実線が赤(R)の感度、一点鎖線が緑(G)の感度、破線が青(B)の感度の例を示している。そこで、この分光感度特性に応じて、照明部10から照射される光の波長に対する撮像部14の分光感度(複数の色成分の分光感度特性)が分光感度情報16dとして記憶される。
【0032】
撮像部14の撮像素子の分光感度が不明な場合、照明部10の光のみを照射した環境でカラーチャートの撮像を行い、照明部10の光の波長に対する分光感度を算出して分光感度情報16dとして記憶させればよい。
【0033】
また、撮像部14の撮像素子に対する複数の波長の分光感度特性を分光感度情報16dとして記憶しておき、照明部10から照射される光の波長に応じて当該波長に対応する分光感度を読み出して用いるようにしてもよい。この場合、照明部10が照射する光の波長を示す情報を記憶部16に記憶させておき、記憶部16から当該情報を読み出して照明部10の波長に対応した分光感度を用いるようにしてもよい。
【0034】
なお、本実施の形態では、撮像素子が赤(R)、緑(G)、青(B)の光を分光する例を説明するが、これに限定されない。例えば、撮像部14がシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の撮像素子を有するCMY系である場合、CMY系の分光感度を分光感度情報16dとして記憶させればよい。また、撮像部14は、赤(R)、緑(G)、青(B)のように3つの色成分を分光するものだけではなく、照明部10から照射される光の波長に対して2つ以上の色成分を分光するものであればよい。
【0035】
画像処理部18は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)又はMCU(Micro Control Unit)等の演算装置により構成される。画像処理部18は、記憶部16に記憶されている画像処理プログラムを読み出して実行することによって、画像処理装置100としての機能を実現する。
【0036】
画像処理部18は、撮像部14で撮影された画像を順次処理する。なお処理する画像は、1フレーム毎に撮影時間順に処理してもよいし、数フレームおきに処理を行ってもよい。
【0037】
画像処理部18は、判定領域設定手段18a、画素補正手段18b、特徴量算出手段18c、判定手段18d及び背景画像生成手段18eとして機能する。
【0038】
判定領域設定手段18aは、記憶部16に記憶された撮影画像16a中に侵入者が存在するか否かを判定する対象となる判定領域を設定する。具体的には、先ず、撮影画像16aと背景画像16c(基準画像)との間にて輝度差分の処理を実行し、所定の閾値以上の差分のある変化領域を抽出する。判定領域設定手段18aは、抽出された変化領域に対して、カメラパラメータ等を用いて算出される物体の大きさや位置関係を考慮して、単一物体(一人の人物)による変化領域として統合した領域を判定領域として設定する。
【0039】
なお、判定領域の設定方法は、これに限られるものではない。補正画像16bと背景画像16cとの差分処理によって抽出した領域を判定領域としてもよい。また、時間的に隣り合う撮影画像16aのフレーム間差分処理によって抽出した領域を判定領域として設定する方法、検知対象である人物画像を学習した学習識別器によって人物領域とされた領域を判定領域として設定する方法、人物テンプレートとのマッチング処理にて類似するとされた領域を判定領域として設定する方法など種々の方法を採用してもよい。
【0040】
画素補正手段18bは、撮像部14の撮像素子の分光感度に応じて撮影画像16aの画素値を補正して補正画像16bを生成する処理を行う。照明部10からの単一波長の光のみが照射された監視空間を撮像した撮影画像16aでは、物体は単一波長の光のみを反射するため各画素の色成分の画素値の相対的な比率(例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの色成分の値の相対的な比率)は光量や物体の反射率に関係なく撮像部14の分光感度で決定されて一定となる。画素補正手段18bでは、この特性を用いて撮影画像16aから外乱光の影響を軽減した補正画像16bを生成する。なお、各画素の色成分(RGB)の値をグレースケール等の輝度の画素値に変換した画像を撮影画像16aとする場合、撮像部14の撮像素子の分光感度に応じて補正した各画素の色成分の値を用いてグレースケール変換した画像が補正画像16bである。
【0041】
なお、以下の説明において、各画素における赤(R)、緑(G)、青(B)の画素値の相対的な比率をRGB比率と示す。
【0042】
外乱光が入射した場合、監視空間は照明光と外乱光とによって照らされるため、照明光のみの状態と比べると画素値が外乱光分高くなり、各画素のRGB比率が分光感度の比率とは異なる画像が撮影される。そのため、画素値のRGB比率と撮像部14の分光感度の比率とに基づいて各画素の画素値(各画素の色成分の画素値)を補正し、外乱光によって撮影画像16aに現れた影などによる変化を軽減させる。すなわち、撮影画像16aの各画素について、分光感度情報16dとして記憶された照明部10の波長に対応する分光感度の比率に基づいて画素値を補正する。
【0043】
例えば、照明部10の波長が750nmであり、750nmに対応する撮像部14の分光感度比率が赤(LR):緑(LG):青(LB)=4:2:1であるとする。また、
図3(a)に示すように、撮影画像16aにおける補正対象の画素の画素値が赤(R)、緑(G)、青(B)=100,120,100とする。このとき、後述の補正処理の演算負荷を低減するため、分光感度の比率の端数を切り上げたり、切り捨ててもよい。例えば、分光感度の比率がLR:LG:LB=4.1:2.2:0.8の場合、LR:LG:LB=4:2:1としてもよい。
【0044】
このような場合、補正対象の画素の画素値と撮像部14の分光感度比率との比の最小値を求める。すなわち、R/LR、G/LG、B/LB=25,60,100であるので、その最小値であるR/LR=25を求める。そして、最小値であるR/LR=25を基準として、他の画素値を撮像部14の分光感度比率に合わせる補正を行う。具体的には、撮影画像16aにおける補正対象とした画素に対応する補正画像16bの画素の画素値を赤(R)、緑(G)、青(B)=(LR*(R/LR))、(LG*(R/LR))、(LB*(R/LR))=100,50,25とする。以上の処理によって、補正画像16bの画素の画素値は赤(R)、緑(G)、青(B)についてそれぞれ0、(G-LG*(R/LR))、(B-LB*(R/LR))だけ外乱光が軽減される。
【0045】
撮影画像16aに含まれる全ての画素について同様の補正処理を施すことによって補正画像16bが得られる。
【0046】
なお、補正処理は上記処理に限られず、例えば、画素のRGB比率を撮像部14の分光感度の比率に近づけるような処理としてもよい。分光感度の比率が赤(LR):緑(LG):青(LB)=4:2:1で、画素のRGBの画素値が赤(R)、緑(G)、青(B)=100,120,130であるとすると、補正後の画素のRGBの画素値を赤(R)、緑(G)、青(B)=(LR*(R+G+B)/(LR+LG+LB)),(LG*(R+G+B)/(LR+LG+LB)),(LB*(R+G+B)/(LR+LG+LB))=200,100,50に補正する。なお、外乱光の光量によっては、各画素の輝度値が高くなりすぎ、さらに輝度値が高くなるような補正処理を行うと、補正画像16bが明るくなりすぎてしまい後述する判定手段18dでの処理に影響を与える可能性があるため、輝度値が低くなるよう補正を行うのが好適である。また、RGBの画素値が分光感度の比率と全く同じになる必要はなく、分光感度の比率に近似する値となればよく、RGBの画素値が分光感度の比率と比較して前後5%以内の差異であればよい。例えば、分光感度の比率が赤(LR):緑(LG):青(LB)=1:1:1のとき、補正後のRGBの画素値が赤(R)、緑(G)、青(B)=100,104,98のようになってもよい。
【0047】
なお、撮影画像16aの全画素を補正の対象とせず、判定領域設定手段18aで抽出された判定領域についてのみ補正処理を施してもよい。この場合、補正画像16bを生成せず、判定領域毎に補正判定領域を生成して補正判定領域の画素値を記憶部16に記憶させておけばよい。これによって、補正処理の演算負荷を低減することができる。
【0048】
また、撮影画像16aの全画素を補正対象とするのではなく、監視空間に入射している外乱光の影響を受けていると考えられる画素のみ補正対象としてもよい。例えば、各画素の画素値からRGB比率を求めて、その画素値のRGB比率と分光感度の比率が異なる画素に対してのみ補正処理を行うようにしてもよい。これによって、補正処理の演算負荷を低減することができる。なお、RGB比率と分光感度の比率が異なるか否かを判定する際、分光時のノイズを考慮して、RGBの画素値が分光感度の比率と比較して、前後5%以内の差異であれば、同じ比率としてみなしてもよい。例えば、分光感度の比率が赤(LR):緑(LG):青(LB)=1、1、1のとき、RGBの画素値が赤(R)、緑(G)、青(B)=100,104,98の場合、同じ比率としてよい。
【0049】
また、記憶部16にオフセット値を記憶させておき、監視空間に入射している外乱光の影響を受けていると考えられる画素の画素値を当該オフセット値分減少させてから補正処理を行ってもよい。これは、上記の補正処理では、外乱光の影響が最小限除去されるだけであり、通常は各画素値にはそれ以上の外乱光の影響が及んでいるのでオフセット値を減算することでその影響を低減するものである。
【0050】
なお、オフセット値は、一定値としてもよいし、撮影画像16aに応じて変更される値としてもよい。例えば、処理対象である撮影画像16a全体の平均輝度値に応じてオフセット値を変更してもよい。この場合、例えば、平均輝度値が高いほどオフセット値を大きくするようにしてもよい。また、例えば、平均輝度値が所定の基準値以上である場合にはオフセット値を第1の値とし、基準値未満である場合には第1の値よりも小さい第2の値にするようにしてもよい。また、例えば、判定領域毎に平均輝度値が高いほどオフセット値を大きくするようにしてもよい。また、例えば、判定領域毎に平均輝度値が所定の基準値以上である場合にはオフセット値を第1の値とし、基準値未満である場合には第1の値よりも小さい第2の値にするようにしてもよい。
【0051】
画素補正手段18bの補正処理によって、撮影画像16aから外乱光の影響を低減させた補正画像16bを得ることができる。例えば、
図4(a)に示すように、監視空間に外乱光の影響によって何らかの物体の影S1及び影S2が写り込んでいる場合、撮影画像16aにおいて影S1及び影S2の部分は外乱光の反射が少ない画像領域となり、影S1及び影S2以外の部分は外乱光の反射が多い画像領域となる。したがって、補正処理によって外乱光の影響を低減させることで、影S1及び影S2の画像領域とそれら以外の画像領域とのコントラストが低減され、
図4(b)に示すような補正画像16bが得られる。
【0052】
特徴量算出手段18cは、各判定領域に対して、判定領域が人物である可能性を示す特徴量である人属性値要素を算出する手段である。特徴量算出手段18cは、人属性値要素として、例えば、人属性値要素1「実面積」、人属性値要素2「長短軸比」、人属性値要素3「長軸角度絶対値」を判定領域から算出する。特徴量算出手段18cは、算出した人属性値要素を判定手段18dに出力する。
【0053】
「実面積」は、判定領域に外接する矩形について、その画像内の位置と記憶部16に記憶された設置高・俯角情報等のカメラパラメータに基づいて実空間での高さ×幅から面積を算出した値であり、判定領域が人物の大きさとしての妥当性を示す。「長短軸比」は、判定領域を楕円近似したときの画像内の短軸長と長軸長との比(短軸長÷長軸長)を算出した長短軸比であり、判定領域が人物の形状としての妥当性を示す。「長軸角度絶対値」は、判定領域を楕円近似したときに、水平方向(X軸方向)を0度とした場合の長軸の傾きを算出した長軸角度絶対値であり、判定領域が人物の姿勢としての妥当性を示す。
【0054】
判定手段18dは、特徴量算出手段18cから入力された人属性値要素を用いて判定領域毎に「人らしさ」を表す人属性値(検知対象属性)を算出し、人属性値を用いて各判定領域が人物によるものか否かの判定を行う。
【0055】
特徴量算出手段18cから入力された人属性値要素1「実面積」、人属性値要素2「長短軸比」、人属性値要素3「長軸角度絶対値」をそれぞれメンバーシップ関数に適用して人属性値を算出する。ここでは、特徴量を人物である可能性が高いほど1に近づき、低いほど0に近づくように正規化した人属性値要素として求めている。
【0056】
人属性値要素1「実面積」は、4000平方センチメートル以下は人物の可能性が低いとして「0」、4000平方センチメートル~6000平方センチメートルは直線的に人物の可能性を0から1の間で高くし、6000平方センチメートル以上では人物の可能性が高いとして「1」とするメンバーシップ関数である。
【0057】
人属性値要素2「長短軸比」は、0.5以下の場合は、太った人物を含めて人物の可能性が高く「1」とし、0.5から0.75になるほど人物の形状として崩れるので直線的に人物の可能性を1から0の間で低くなるようにし、0.75以上の場合はもはや人物の形状に程遠いとして「0」とするメンバーシップ関数である。
【0058】
人属性値要素3「長軸角度絶対値」は、50度以下の場合は、歩行等している人物である可能性が低く「0」とし、50度から75度に近づくほど歩行等している人物の可能性が1から0の間で高くなるようにし、75度以上の場合は歩行等する人物の可能性が高いとして「1」とするメンバーシップ関数である。なお、本実施の形態にて紹介する人属性値要素のメンバーシップ関数は本実施例の設定であって、他の実施例においては、実験・経験・設置場所・検知対象によって適宜設計されるものである。
【0059】
判定手段18dは、複数の人属性値要素を用いて、判定領域毎に「人らしさ」を表わす人属性値を算出する。例えば、各人属性値要素を乗算して、人属性値=人属性値要素1×人属性値要素2×人属性値要素3として求める。人属性値の算出は、乗算に限られるものではなく、各要素の重み付け和とする等、目的に応じて種々の算出方法を用いてもよい。
【0060】
判定手段18dは、さらに、撮影画像16aと補正画像16bにて対応する判定領域毎に、画素補正手段18bにおいて画素値が補正された補正画像16bと画素値を補正する前の撮影画像16aとを比較して画素値の差分に応じて人属性値を補正する。画素値の差分は、補正前と補正後の画素値の差や商から求めればよく、差分を得られる方法であれば種々の算出方法を用いてよい。
【0061】
画素値の差分を示す量として、撮影画像16aと補正画像16bとの間におけるエッジ成分の差分、エッジ成分の分散の差分、輝度値の分散の差分等が挙げられる。
【0062】
例えば、撮影画像16aと補正画像16bそれぞれの画像についてエッジを抽出したエッジ画像において、判定領域毎に、撮影画像16aと補正画像16bとの間におけるエッジ成分(エッジ強度)の差分が所定の評価基準値以上である場合にその判定領域の人属性値を小さくする。評価基準値未満の場合、人属性値はそのままの値とする。すなわち、撮影画像16aと補正画像16bの間において画素値の変化が大きい画素は外乱光の影響を受けて判定領域とされている可能性が高いので人物である可能性を示す人属性値を小さくする。
【0063】
同様に、撮影画像16aと補正画像16bとの間の輝度値の分散の差、輝度値の平均値の差、輝度値の最大値と最小値の幅の差のいずれかが所定の評価基準値以上である場合にその判定領域の人属性値を小さくし、評価基準値未満の場合には人属性値はそのままの値としてもよい。
【0064】
このように人属性値を補正した後、すべての判定領域について人属性値が所定の判定基準値以上であるか否かを判定する。人属性値が判定基準値以上である判定領域は人であると判定し、人属性値が判定基準値未満である判定領域は人でないと判定する。なお、画素値の差が評価基準値以上である場合、その判定領域の影らしさを大きくし、影であると判定してもよい。
【0065】
本実施の形態では、説明を簡単にするために、3つの人属性値要素にて説明したが、これに限られるものではなく、種々の特徴量を利用しても良い。また、人らしさを示す人属性値の算出方法は、人属性値要素1「実面積」、人属性値要素2「長短軸比」、人属性値要素3「長軸角度絶対値」を用いる方法に限定されない。
【0066】
また、人属性値を用いず、撮影画像16aと補正画像16bとの差のみに基づいて判定領域が人物に該当するか否かを判定する処理としてもよい。
【0067】
例えば、判定領域毎に、撮影画像16aと補正画像16bとの間におけるエッジ成分の差が所定の評価基準値以上である(エッジ強度の減少が大きい)場合にその判定領域の非人属性値を大きくする。評価基準値未満の場合、非人属性値は0とする。同様に、撮影画像16aと補正画像16bとの間の輝度値の分散の差、エッジ成分の分散の差のいずれかが所定の評価基準値以上である場合にその判定領域の非人属性値を大きくし、評価基準値未満の場合には非人属性値は0としてもよい。
【0068】
このように非人属性値を評価した後、すべての判定領域について非人属性値が0より大きい判定基準値以上であるか否かを判定する。非人属性値が判定基準値以上である判定領域は人ではないと判定し、非人属性値が判定基準値未満である判定領域は人であると判定する。なお、非人属性値を影らしさとし、影らしさが判定基準値以上である判定領域は影であると判定してもよい。
【0069】
背景画像生成手段18eは、撮像部14にて撮影された撮影画像16aと判定手段18dの判定結果を用いて、背景画像16cを更新する。具体的には、背景画像生成手段18eは、人物が存在していないと判定手段18dが判定した撮影画像16aを記憶部16の背景画像16cとして上書き更新して記憶する。
【0070】
なお、判定手段18dにて人物が存在していないと判定する毎に更新せず、数フレーム毎や一定時間毎に取得した撮影画像16aにて更新するようにしてもよい。また、判定領域設定手段18aにて変化領域が所定面積以下である撮影画像16aにて更新するようにしてもよい。
【0071】
出力部20は、判定手段18dで監視領域内に侵入者がいると判定された場合、異常信号を警報部(図示しない)に出力し、ブザーの鳴動や警告灯の表示などにより周囲に異常の発生を通知する構成とすることができる。また、インターネット等の通信網を介して遠隔の監視センタ(図示しない)に出力することによって、異常の発生を監視センタに通知する構成としてもよい。
【0072】
次に、
図5のフローチャートを参照しつつ、画像処理装置100における画像補正処理を説明する。
【0073】
まず、撮影画像16aと背景画像16cとの差分処理によって判定領域を抽出する(ステップS10)。この抽出処理にて判定領域が抽出されたか否かを判定し、判定領域が抽出された場合にはステップS14に処理を移行させ、判定領域が抽出されなかった場合には処理を終了させる(ステップS12)。
【0074】
次に、画素補正処理を行う(ステップS14)。画素補正処理は、
図6のフローチャートに沿って行われる。まず、記憶部16に予め記憶されている分光感度情報16dが読み出される(ステップS40)。次ぎに、分光感度情報16dを用いて、撮影画像16aの各画素について画素値の補正処理が行われる(ステップS42)。当該ステップでの処理は、上記の画素補正手段18bにおける処理である。なお、撮影画像16aの全画素を補正の対象とせず、判定領域設定手段18aで抽出された判定領域についてのみ補正処理を施してもよい。そして、補正後の画素値からなる補正画像16bを生成する(ステップS44)。なお、撮影画像16aの全画素を補正の対象としかなった場合、補正画像16bを生成せず、判定領域設定手段18aで抽出された判定領域についてのみ補正後の判定領域を生成してもよい。画素補正処理が終了すると、メインルーチンのステップS16に処理が戻される。
【0075】
次に、判定領域毎に人属性値を算出する(ステップS16)。そして、判定領域毎に撮影画像16aと補正画像16bの画素値の差が所定の評価基準値以上であるか否かを判定する(ステップS18)。撮影画像16aと補正画像16bの画素値の差が所定の評価基準値以上である判定領域があれば当該判定領域の人属性値を低く補正する(ステップS18で「はい」,ステップS20)。撮影画像16aと補正画像16bの画素値の差が所定の評価基準値未満であれば人属性値はそのままの値にする(ステップS18で「いいえ」,ステップS22)。
【0076】
判定領域毎に人属性値が所定の判定基準値以上であるか否かを判定する(ステップS22)。判定領域の人属性値が所定の判定基準値以上であれば、当該判定領域は人によるものであると判定し(ステップS24)、異常を検知した旨等の警報を出力する(ステップS28)。判定領域の人属性値が所定の判定基準値未満であれば、当該判定領域は人によるものではないと判定する(ステップS26)。
【0077】
以上のように、本実施の形態によれば、外乱光の影響による誤検知や誤判定を低減した画像処理装置を提供することができる。特に、撮像部14に特定の波長を通さないカットフィルタを使用しなくとも、フィルタの挿抜による撮像部の耐久年数の制限を設けることなく、外乱光の影響を低減できる。例えば、照明部10として赤外線を使用すれば、撮像部14に可視光のカットフィルタを用いなくても可視光の外乱光の影響を低減できる。
【符号の説明】
【0078】
10 照明部、12 撮像制御部、14 撮像部、16 記憶部、16a 撮影画像、16b 補正画像、16c 背景画像、16d 分光感度情報、18 画像処理部、18a 判定領域設定手段、18b 画素補正手段、18c 特徴量算出手段、18d 判定手段、18e 背景画像生成手段、20 出力部、100 画像処理装置。